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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1318014
審判番号 不服2015-12028  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-24 
確定日 2016-08-30 
事件の表示 特願2013-111691「電気光学装置及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月17日出願公開、特開2013-214082、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、平成20年5月27日に出願した特願2008-137915号(優先権主張平成19年8月9日)の一部を平成25年5月28日に新たな特許出願としたものであって、平成26年2月13日付けで拒絶理由が通知され、同年4月18日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年10月17日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年12月18日付けで意見書が提出されたが、平成27年3月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
本件は、これに対して、平成27年6月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成28年5月11日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月6日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年7月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明は、次のとおりのものである。

「第1方向に延在するデータ線と、
該データ線に電気的に接続されたトランジスタと、
該トランジスタに対応して設けられた画素電極と、
前記トランジスタの半導体層と重なるように設けられた遮光部と、
前記トランジスタの半導体層と電気的に接続された第1中継層と、
前記第1中継層と前記画素電極との間の層に設けられ、前記第1中継層と前記画素電極とを電気的に接続する第2中継層と、を備え、
前記遮光部は、前記第1方向に延在する第1遮光部と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する第2遮光部と、該第1及び第2遮光部の各々から延設され、画素の開口領域の隅に張り出した第3遮光部とを有し、
前記第1中継層と前記第2中継層とを電気的に接続する第1コンタクトホールは、前記第2遮光部と重なるように設けられ、
前記第2中継層と前記画素電極とを電気的に接続する第2コンタクトホールは、前記第3遮光部と重なるように設けられ、
前記トランジスタは、前記トランジスタのチャネル領域と前記データ線とが平面視で重なるように設けられている
ことを特徴とする電気光学装置。」


第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2004-170919号公報
引用文献2:特開平10-10574号公報
引用文献3:特開平10-31235号公報

引用文献1に記載された発明に、引用文献2、3に記載された発明/周知技術を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
【0082】
(第1実施形態)
第一に、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の画素部における構成について、図1から図4を参照して説明する。ここに図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。なお、図3は、図2のうち要部、具体的には、データ線、シールド層及び画素電極間の配置関係を示すために、主にこれらのみを抜き出した平面図である。図4は、図2のA-A´断面図である。なお、図4においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0083】
図1において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0084】
また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0085】
画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0086】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。この蓄積容量70は、走査線3aに並んで設けられ、固定電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量電極300を含んでいる。
【0087】
以下では、上記データ線6a、走査線3a、TFT30等による、上述のような回路動作が実現される電気光学装置の、実際の構成について、図2から図4を参照して説明する。
【0088】
まず、図2において、画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられており(点線部9a´により輪郭が示されている)、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。データ線6aは、後述するようにアルミニウム膜等を含む積層構造からなり、走査線3aは、例えば導電性のポリシリコン膜等からなる。また、走査線3aは、半導体層1aのうち図中右上がりの斜線領域で示したチャネル領域1a´に対向するように配置されており、該走査線3aはゲート電極として機能する。すなわち、走査線3aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、チャネル領域1a´に走査線3aの本線部がゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0089】
次に、電気光学装置は、図2のA-A´線断面図たる図4に示すように、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなるTFTアレイ基板10と、これに対向配置される、例えばガラス基板や石英基板からなる対向基板20とを備えている。
【0090】
TFTアレイ基板10の側には、図4に示すように、前記の画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる。他方、対向基板20の側には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。このうち対向電極21は、上述の画素電極9aと同様に、例えばITO膜等の透明導電性膜からなり、前記の配向膜16及び22は、例えば、ポリイミド膜等の透明な有機膜からなる。このように対向配置されたTFTアレイ基板10及び対向基板20間には、後述のシール材(図20及び図21参照)により囲まれた空間に液晶等の電気光学物質が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した電気光学物質からなる。シール材は、TFT基板10及び対向基板20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のスペーサが混入されている。
【0091】
一方、TFTアレイ基板10上には、前記の画素電極9a及び配向膜16の他、これらを含む各種の構成が積層構造をなして備えられている。この積層構造は、図4に示すように、TFTアレイ基板10から順に、下側遮光膜11aを含む第1層、TFT30及び走査線3a等を含む第2層、蓄積容量70及びデータ線6a等を含む第3層、シールド層400等を含む第4層、前記の画素電極9a及び配向膜16等を含む第5層(最上層)からなる。また、第1層及び第2層間には下地絶縁膜12が、第2層及び第3層間には第1層間絶縁膜41が、第3層及び第4層間には第2層間絶縁膜42が、第4層及び第5層間には第3層間絶縁膜43が、それぞれ設けられており、前述の各要素間が短絡することを防止している。また、これら各種の絶縁膜12、41、42及び43には、例えば、TFT30の半導体層1a中の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続するコンタクトホール等もまた設けられている。以下では、これらの各要素について、下から順に説明を行う。
【0092】
まず、第1層には、下側遮光膜11aが設けられている。この下側遮光膜11aは、平面的にみて格子状にパターニングされており、これにより各画素の開口領域を規定する(図2参照)。下側遮光膜11aの走査線3aとデータ線6aが交差する領域では、画素電極9aの角を角取りするように突出した領域が形成されている。
【0093】
そして、本実施形態においては特に、この下側遮光膜11aは、その下層にメタル層M1、その上層にメタル層M1の酸化を防ぐバリア層B1を備えた二層構造からなる。これにより、積層構造中、この下側遮光膜11aよりも上の構成要素を形成する際に高温処理工程(例えば、後述のTFT30を形成する際のアニール処理等)が行われるとしても、その上層にはバリア層B1が備えられているので、メタル層M1の酸化を未然に防止することが可能となる。なお、この下側遮光膜11aについては、その電位変動がTFT30に対して悪影響を及ぼすことを避けるために、画像表示領域からその周囲に延設して定電位源に接続するとよい。
【0094】
次に、第2層として、TFT30及び走査線3aが設けられている。TFT30は、図4に示すように、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、その構成要素としては、上述したようにゲート電極として機能する走査線3a、例えばポリシリコン膜からなり走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a´、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0095】
なお、TFT30は、好ましくは図4に示したようにLDD構造をもつが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造をもってよいし、走査線3aの一部からなるゲート電極をマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。また、本実施形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極を、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。このようにデュアルゲート、あるいはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース及びドレイン領域との接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。さらに、TFT30を構成する半導体層1aは非単結晶層でも単結晶層でも構わない。単結晶層の形成には、貼り合わせ法等の公知の方法を用いることができる。半導体層1aを単結晶層とすることで、特に周辺回路の高性能化を図ることができる。
【0096】
以上説明した下側遮光膜11aの上、かつ、TFT30の下には、例えばシリコン酸化膜等からなる下地絶縁膜12が設けられている。下地絶縁膜12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能のほか、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用のTFT30の特性変化を防止する機能を有する。
【0097】
そして、本実施形態においては特に、この下地絶縁膜12には、平面的にみて半導体層1aの両脇にチャネル長と同じ幅、もしくは、チャネル長より長い溝(コンタクトホール状に形成された溝)12cvが掘られており、この溝12cvに対応して、その上方に積層される走査線3aは下側に凹状に形成された部分を含んでいる(図2では、複雑化を避けるため不図示とした。図5参照。)。また、この溝12cv全体を埋めるようにして、走査線3aが形成されていることにより、該走査線3aには、これと一体的に形成された水平的突出部3bが延設されるようになっている。これにより、TFT30の半導体層1aは、図2によく示されているように、平面的に見て側方から覆われるようになっており、少なくともこの部分からの光の入射が抑制されるようになっている。なお、水平的突出部3bは、半導体層1aの片側だけでもよい。なお、この溝12cv並びにこの上に積層される走査線3a及び水平的突出部3bについては、後に図5以降を参照しながら、改めて詳しく触れることとする。
【0098】
さて、前述の第2層に続けて第3層には、蓄積容量70及びデータ線6aが設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに電気的に接続された画素電位側容量電極としての第1中継層71と、固定電位側容量電極としての容量電極300とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。この蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。また、本実施形態に係る蓄積容量70は、図2の平面図を見るとわかるように、画素電極9aの形成領域にほぼ対応する光透過領域には至らないように形成され、換言すれば、遮光領域内に収まるように形成されている。すなわち、蓄積容量70は、隣接するデータ線6a間の走査線3aに重なる領域と、走査線3aとデータ線6aが交差する角部で下側遮光膜11が画素電極9aの角を角取りする領域に形成されている。これにより、電気光学装置全体の画素開口率は比較的大きく維持され、これにより、より明るい画像を表示することが可能となる。
【0099】
より詳細には、第1中継層71は、例えば導電性のポリシリコン膜からなり画素電位側容量電極として機能する。ただし、第1中継層71は、金属又は合金を含む単一層膜又は多層膜から構成してもよい。多層膜の場合は、下層を光吸収性の導電性のポリシリコン膜、上層を光反射性の金属又は合金にするとよい。また、この第1中継層71は、画素電位側容量電極としての機能のほか、コンタクトホール83、85及び89を介して、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能をもつ。この第1中継層71は、図2に示すように、後述する容量電極300の平面形状と略同一の形状を有するように形成されている。
【0100】
容量電極300は、蓄積容量70の固定電位側容量電極として機能する。第1実施形態において、容量電極300を固定電位とするためには、固定電位とされたシールド層400とコンタクトホール87を介して電気的接続が図られることによりなされている。
【0101】
ただし、後述するように、容量電極300とデータ線6aとを別々の層として形成する形態では、好ましくは例えば、該容量電極300を、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設し定電位源と電気的に接続する等という手段をとることにより、該容量電極300を固定電位に維持するようにしてもよい。ちなみに、ここに述べた「定電位源」としては、データ線駆動回路101に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位源でも構わない。
【0102】
そして、本実施形態では特に、この容量電極300と同一膜として、データ線6aが形成されている。ここに「同一膜」とは、同一層として、あるいは製造工程段階において同時に形成されていることを意味している。ただし、容量電極300及びデータ線6a間は平面形状的に連続して形成さているのではなく、両者間はパターニング上分断されている。
【0103】
具体的には、図2に示すように、容量電極300は、走査線3aの形成領域に重なるように、すなわち図中X方向に沿って分断されつつ形成されており、データ線6aは、半導体層1aの長手方向に重なるように、すなわち図中Y方向に延在するように形成されている。より詳しくは、容量電極300は、走査線3aに沿って延びる本線部と、図2中、半導体層1aに隣接する領域において該半導体層1aに沿って図中上方に突出した突出部(図中略台形状のように見える部分)と、後述するコンタクトホール85に対応する個所が僅かに括れた括れ部とを備えている。このうち突出部は、蓄積容量70の形成領域の増大に貢献する。
【0104】
他方、データ線6aは、図2中Y方向に沿って直線的に延びる本線部を有している。なお、半導体層1aの図2中上端にある高濃度ドレイン領域1eは、蓄積容量70の突出部の領域に重なるように、右方に90度直角に折り曲がるような形状を有しているが、これはデータ線6aを避けて、該半導体層1aと蓄積容量70との電気的接続を図るためである(図4参照)。
【0105】
本実施形態では、以上のような形状が呈されるようにパターニング等が実施されて、容量電極300及びデータ線6aが同時に形成されることになる。
【0106】
また、これら容量電極300及びデータ線6aは、図4に示すように、下層に導電性のポリシリコンからなる層、上層にアルミニウムからなる層の二層構造を有する膜として形成されている。このうちデータ線6aについては、後述する誘電体膜75の開口部を貫通するコンタクトホール81を介して、TFT30の半導体層1aと電気的に接続されることとなるが、該データ線6aが上述のような二層構造をとり、また前述の第1中継層71が導電性のポリシリコン膜からなることにより、該データ線6a及び半導体層1a間の電気的接続は、直接には、導電性のポリシリコン膜によって実現されることになる。すなわち、下から順に、第1中継層のポリシリコン膜、データ線6aの下層のポリシリコン膜及びその上層のアルミニウム膜ということになる。したがって、両者間の電気的接続を良好に保つことが可能となる。本実施形態では、データ線6aと容量線300は、導電性ポリシリコン層とアルミニウム層の二層構造としたが、下層から順に導電性ポリシリコン層、アルミニウム層、窒化チタン層の三層構造にしてもよい。
この構成によれば、窒化チタン層はコンタクトホール87の開口時のエッチングの突き抜けを防止するバリアメタルとして機能する。
【0107】
また、容量電極300及びデータ線6aは、光反射性能に比較的優れたアルミニウムを含み、且つ、光吸収性能に比較的優れたポリシリコンを含むことから、遮光層として機能し得る。すなわち、これらによれば、TFT30の半導体層1aに対する入射光(図4参照)の進行を、その上側で遮ることが可能である。
【0108】
誘電体膜75は、図4に示すように、例えば膜厚5?200nm程度の比較的薄いHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄いほどよい。そして、本実施形態においては特に、この誘電体膜75は、図4に示すように、下層に酸化シリコン膜75a、上層に窒化シリコン膜75bというように二層構造を有するものとなっている。上層の窒化シリコン膜75bは遮光領域(非開口領域)内で収まるようにパターンニングされている。これにより、比較的誘電率の大きい窒化シリコン膜75bが存在することにより、蓄積容量70の容量値を増大させることが可能となる他、それにもかかわらず、酸化シリコン膜75aが存在することにより、蓄積容量70の耐圧性を低下せしめることがない。このように、誘電体膜75を二層構造とすることにより、相反する二つの作用効果を享受することが可能となる。また、着色性のある窒化シリコン75bは光が透過する領域に形成されないようにパターンニングされているので、透過率が低下することを防止できる。また、窒化シリコン膜75bが存在することにより、TFT30に対する水の浸入を未然に防止することが可能となっている。これにより、本実施形態では、TFT30におけるスレッショルド電圧の上昇という事態を招来することがなく、比較的長期の装置運用が可能となる。なお、本実施形態では、誘電体膜75は、二層構造を有するものとなっているが、場合によっては、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜等というような三層構造や、あるいはそれ以上の積層構造を有するように構成してもよい。
【0109】
以上説明したTFT30ないし走査線3aの上、かつ、蓄積容量70ないしデータ線6aの下には、例えば、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはNSGからなる第1層間絶縁膜41が形成されている。そして、この第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続するコンタクトホール81が開孔されている。また、第1層間絶縁膜41には、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと蓄積容量70を構成する第1中継層71とを電気的に接続するコンタクトホール83が開孔されている。
【0110】
なお、これら二つのコンタクトホールのうち、コンタクトホール81の形成部分では、前述の誘電体膜75が形成されないように、換言すれば、該誘電体膜75に開口部が形成されるようになっている。これは、該コンタクトホール81においては、第1中継層71を介して、高濃度ソース領域1b及びデータ線6a間の電気的導通を図る必要があるためである。ちなみに、このような開口部が誘電体膜75に設けられていれば、TFT30の半導体層1aに対する水素化処理を行うような場合において、該処理に用いる水素を、該開口部を通じて半導体層1aにまで容易に到達させることが可能となるという作用効果を得ることも可能となる。
【0111】
また、本実施形態では、第1層間絶縁膜41に対しては、約1000℃の焼成を行うことにより、半導体層1aや走査線3aを構成するポリシリコン膜に注入したイオンの活性化を図ってもよい。
【0112】
さて、前述の第3層に続けて第4層には、遮光性のシールド層400が形成されている。このシールド層400は、平面的にみると、図2及び図3に示すように、図2中X方向及びY方向それぞれに延在するように格子状に形成されている。該シールド層400のうち図2中Y方向に延在する部分については特に、データ線6aを覆うように、且つ、該データ線6aよりも幅広に形成されている。また、図2中X方向に延在する部分については、後述の第3中継電極402を形成する領域を確保するために、各画素電極9aの一辺の中央付近に切り欠き部を有している。さらには、図2中XY方向それぞれに延在するシールド層400の交差部分の角部においては、前述の容量電極300の略台形状の突出部に対応するように、略三角形状の部分が設けられている。シールド層400は、下側遮光膜11aと同じ幅でもよいし、下側遮光膜11aより幅が広くても、あるいは幅が狭くてもよい。
このシールド層400は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されることで、固定電位とされている。なお、ここに述べた「定電位源」としては、データ線駆動回路101に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位源でも構わない。
【0113】
このように、データ線6aの全体を覆うように形成されているとともに(図3参照)、固定電位とされたシールド層400の存在によれば、該データ線6a及び画素電極9a間に生じる容量カップリングの影響を排除することが可能となる。すなわち、データ線6aへの通電に応じて、画素電極9aの電位が変動するという事態を未然に回避することが可能となり、画像上に該データ線6aに沿った表示ムラ等を発生させる可能性を低減することができる。本実施形態においてはまた、シールド層400は格子状に形成されているから、走査線3aが延在する部分についても無用な容量カップリングが生じないように、これを抑制することが可能となっている。また、シールド層400における上述の三角形状の部分は、容量電極300と画素電極9aとの間に生じる容量カップリングの影響を排除することが可能であり、これによっても、上述と略同様な作用効果が得られることになる。
【0114】
また、第4層には、このようなシールド層400と同一膜として、本発明にいう「中継層」の一例たる第2中継層402が形成されている。この第2中継層402は、後述のコンタクトホール89を介して、蓄積容量70を構成する第1中継層71及び画素電極9a間の電気的接続を中継する機能を有する。なお、これらシールド層400及び第2中継層402間は、前述の容量電極300及びデータ線6aと同様に、平面形状的に連続して形成されているのではなく、両者間はパターニング上分断されるように形成されている。
【0115】
他方、上述のシールド層400及び第2中継層402は、下層にアルミニウムからなる層、上層に窒化チタンからなる層の二層構造を有している。これにより、まず、窒化チタンはコンタクトホール89の開口時のエッチングの突きぬけの防止のバリアメタルとして作用効果が期待される。また、第2中継層402において、下層のアルミニウムからなる層は、蓄積容量70を構成する第1中継層71と接続され、上層の窒化チタンからなる層は、ITO等からなる画素電極9aと接続されるようになっている。この場合、とりわけ後者の接続は良好に行われることになる。この点、仮に、アルミニウムとITOとを直接に接続してしまう形態をとると、両者間において電蝕が生じてしまい、アルミニウムの断線、あるいはアルミナの形成による絶縁等のため、好ましい電気的接続が実現されないこととは対照的である。このように、本実施形態では、第2中継層402と画素電極9aとの電気的接続を良好に実現することができることにより、該画素電極9aに対する電圧印加、あるいは該画素電極9aにおける電位保持特性を良好に維持することが可能となる。
【0116】
さらには、シールド層400及び第2中継層402は、光反射性能に比較的優れたアルミニウムを含み、且つ、光吸収性能に比較的優れた窒化チタンを含むことから、遮光層として機能し得る。すなわち、これらによれば、TFT30の半導体層1aに対する入射光(図2参照)の進行を、その上側でさえぎることが可能である。なお、このようなことについては、既に述べたように、上述の容量電極300及びデータ線6aについても同様にいえる。本実施形態においては、これらシールド層400、第2中継層402、容量電極300及びデータ線6aが、TFTアレイ基板10上に構築される積層構造の一部をなしつつ、TFT30に対する上側からの光入射を遮る上側遮光膜(あるいは、「積層構造の一部」を構成しているという点に着目すれば「内蔵遮光膜」)として機能しうる。なお、この「上側遮光膜」ないし「内蔵遮光膜」なる概念によれば、上述の構成のほか、走査線3aや第1中継層71等もまた、それに含まれるものとして考えることができる。要は、最も広義に解する前提の下、TFTアレイ基板10上に構築される不透明な材料からなる構成であれば、「上側遮光膜」ないし「内蔵遮光膜」と呼びうる。
【0117】
以上説明した前述のデータ線6aの上、かつ、シールド層400の下には、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはNSGからなる第2層間絶縁膜42が形成されている。この第2層間絶縁膜42には、前記のシールド層400と容量電極300とを電気的に接続するためのコンタクトホール87、及び、第2中継層402と第1中継層71とを電気的に接続するためのコンタクトホール85がそれぞれ開孔されている。なお、第1実施形態においては、前記の第2中継層402が形成されていることにより、画素電極9a及びTFT30間の電気的接続は、三つのコンタクトホール83、85及び89を介して、、すなわち、三つの層間絶縁膜41、42及び43を介して行われるようになっている。このように、比較的短小なコンタクトホールを連結して、画素電極9a及びTFT30間の電気的接続を図るようにすれば、比較的長大なコンタクトホールによりそれを実現するよりも、該短小なコンタクトホールの製造容易性により、より低コストに、且つ、より信頼性高く電気光学装置の製造を行うことができるという利点が得られる。
【0118】
なお、第2層間絶縁膜42に対しては、第1層間絶縁膜41に関して前述したような焼成を行わないことにより、容量電極300の界面付近に生じるストレスの緩和を図るようにしてもよい。
【0119】
最後に、第5層には、上述したように画素電極9aがマトリクス状に形成され、該画素電極9a上に配向膜16が形成されている。この画素電極9aは、角部がカットされた形状でもよい。そして、この画素電極9a下には、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはBPSGからなる第3層間絶縁膜43が形成されている。この第3層間絶縁膜43には、画素電極9a及び前記の第2中継層402間を電気的に接続するためのコンタクトホール89が開孔されている。また、本実施形態では特に、第3層間絶縁膜43の表面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等により平坦化されており、その下方に存在する各種配線や素子等による段差に起因する液晶層50の配向不良を低減する。ただし、このように第3層間絶縁膜43に平坦化処理を施すだけでなく、TFTアレイ基板10、下地絶縁膜12、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42のうち少なくとも一つに溝を掘って、データ線6a等の配線やTFT30等を埋め込むことにより、平坦化処理を行ってもよい。または、第3層間絶縁膜43の平坦化処理をせずに、上述した溝だけで平坦化処理を行ってもよい。」

(イ)「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



上記記載事項イの図2から、「コンタクトホール85」は「下側遮光膜11a」のY方向と直交するX方向に延在する部分と重なる構成、及び、「コンタクトホール89」は「下側遮光膜11a」のY方向と直交するX方向に延在する部分のみと重なっていて、「画素電極9a」の角を角取りするように突出した領域とは重なっていない構成を、それぞれ、読み取ることができる。

すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されており、
下側遮光膜11aが、平面的にみて格子状にパターニングされており、これにより各画素の開口領域を規定しており、下側遮光膜11aの走査線3aとデータ線6aが交差する領域では、画素電極9aの角を角取りするように突出した領域が形成されており、
第1中継層71が、コンタクトホール83、85及び89を介して、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能をもち、
第2中継層402と第1中継層71とを電気的に接続するためのコンタクトホール85、画素電極9a及び前記の第2中継層402間を電気的に接続するためのコンタクトホール89が開孔されていて、
コンタクトホール85は、下側遮光膜11aのY方向と直交するX方向に延在する部分と重なっており、
コンタクトホール89は、下側遮光膜11aのY方向と直交するX方向に延在する部分のみと重なっていて、画素電極9aの角を角取りするように突出した領域とは重なっておらず、
データ線6aは、チャネル領域1a’を含む半導体層1aの長手方向に重なるように、Y方向に延在するように形成されている、
電気光学装置。」

イ 引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細を図面に基づいて説明する。図1は本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の主要部を示す平面図、図2は図1のA-A'線で示された部分の断面図である。図1及び図2ではスッチング素子としてコプラナー型TFTの例を示しており、以下の実施の形態でも同様にスッチング素子としてコプラナー型TFTを例として説明する。そのため以下の説明ではデータ信号配線はソース配線と呼び、走査信号配線はゲート配線と呼ぶ。本発明では絶縁性基板1上に金属薄膜等により遮光膜2を所定の形状に形成し、その上にベースコート膜3を堆積する。さらにその上方に半導体薄膜4、絶縁膜5、金属薄膜等を順に積層し、スイッチング素子と同時にソース配線11及びゲート配線6を形成して行く。その上に平坦化膜13を介して画素電極15を形成する。ここで、画素電極15の端部は平面視で遮光膜2と重なるように位置し、ソース配線付近では平面視でソース配線に間隔sだけ離間し、重ならないように形成されている。上記画素電極15の端部と遮光膜2が平面視で重なる大きさは、アライメントずれが生じた場合にも実質的に光漏れがない大きさに設定される。また上記間隔sは、アライメントずれを考慮して設定されているが、アライメントずれのない理想的な場合は間隔sを0に近づけることができる。
【0021】(実施の形態1)次に本発明の実施の形態1の詳細を説明する。図3(a)?(e)は本発明の製造方法の詳細を工程順に示す断面図であり、図4(a)?(e)は図3(a)?(e)に対応する平面図である。図5はスイッチング素子を形成した後、対向基板を貼り合わせて構成した液晶表示装置の断面図であり、図4(a)のB-B'線の断面図である。
【0022】本発明の実施の形態では、透明かつ絶縁性基板の例としてガラス基板を用いて説明する。石英等を使用することも可能であるが、より大面積で、かつ安価な基板を用いようとする場合にはガラス基板の方が有利である。
【0023】図3(a)及び図4(a)に示すように、まず初めにガラス基板等の絶縁性基板1上にスパッタリング法等により金属薄膜等を100?200nm、例えば約150nmの膜厚で堆積させ、TFTとソース配線及びゲート配線の形成予定領域を含み、それらより数μm大きく、例えば2?5μm大きくなるように、所定形状にパターニングして遮光膜2を形成する。金属薄膜は後工程での熱処理等に対する耐久性や遮光性の観点から、高融点金属等を用いることが望ましい。本発明の実施の形態ではTaを用いた。Ta以外にMo、W、Cr等を使用することも可能である。続いて遮光膜2が形成された絶縁性基板1の全面に減圧CVD法、プラズマCVD法またはスパッタリング法等によりSiO_(2)膜を300nm程度堆積させ、絶縁性基板からの不純物の拡散防止用としてベースコート膜3を形成する。
【0024】次に図3(b)及び図4(b)に示すように、スイッチング素子の活性層4aとなる半導体薄膜として、減圧CVD法またはプラズマCVD法等によりノンドープ非晶質シリコン薄膜を10?100nm、例えば約50nmの膜厚で堆積させる。本発明の実施の形態では、その後この非晶質シリコン薄膜にエキシマレーザー等を照射してあるいは熱処理工程を経て、結晶化させ多結晶シリコン薄膜を形成する工程を有しているが、その工程に関する記載は省略する。続いて半導体膜はTFTを形成するのに必要な大きさ、形状にパターニングされる。この実施の形態では、ゲート配線をまたぎ、縦長に形成される。パターニングされた活性層4aは遮光膜2からはみ出さない位置に形成される。
【0025】次に図3(c)及び図4(c)に示すように、活性層4aの上方にSiO_(2)膜等からなるゲート絶縁膜5を全面に堆積させる。続いてスパッタリング法等により金属薄膜を堆積させ、所定の形状にパターニングしてゲート配線及びゲート電極6を形成する。この実施の形態では、ゲート電極はゲート配線の一部が使用され、図示のとおり一直線状に形成される。ゲート配線及びゲート電極6には低抵抗の配線材料であるAl系の金属を用いることができる。耐熱性等を考慮してAl-Ti等のAl合金を用いることが望ましい。この他にTa、Mo、W、Cr等も使用可能である。次に活性層4aにイオン注入法、レーザードーピング法、あるいはプラズマドーピング法等を用いて、Nチャネルトランジスタを作成するときにはP^(+)、Pチャネルトランジスタを作成するときにはB^(+)をドーピングしてソース領域及びドレイン領域7を形成する。その後の不純物の活性化工程に関する記載は省略する。
【0026】次に図3(d)及び図4(d)に示すように、ゲート配線及びゲート電極6の上方を含む全面に層間絶縁膜8を堆積させる。層間絶縁膜8には段差被覆性のよい有機シランを材料としたプラズマCVD法等によるSiO_(2)膜を数百nm?数μm堆積させる方法が知られている。また、他には窒化シリコン膜を用いることもできる。続いて層間絶縁膜8及びゲート絶縁膜5にコンタクトホール9を開口する。続いてスパッタリング法等により金属薄膜を堆積させ、所定の形状にパターニングしてソース配線より分岐して形成されたソース電極10、ソース配線11及びドレイン電極12を同時に形成する。ソース電極10とソース配線11は電気的に接続されており、ソース電極10はソース配線11から延在されている。ソース電極10、ソース配線11及びドレイン電極12はゲート配線及びゲート電極6と同様にAl系の金属で形成する。Al系の金属以外に高融点金属を用いても良い。高融点金属はAlに比べて段差被覆性に優れている。
【0027】次に図3(e)及び図4(e)に示すように、ポリイミド樹脂またはアクリル樹脂等からなる平坦化膜13を形成する。平坦化膜13はポリイミド樹脂またはアクリル樹脂を基板上に塗布することにより形成することが可能であり、本発明の実施の形態では1?3μm程度の膜厚に形成した。続いてドレイン電極12の上方の平坦化膜13にコンタクトホール14を開口し、ITO等からなる透明導電膜を堆積させ、ドレイン電極に電気的に接続させると共に所定の形状にパターニングして画素電極15を形成する。画素電極15の端部は遮光膜2に平面視で数μm、例えば2?5μm程度重なるように形成されると共にソース配線11に絶縁膜を介して平面視で1?3μm離間し、重ならないように形成される。
【0028】以上、本発明の実施の形態におけるスイッチング素子の製造方法はその一例を示したものであり、これに限定されるものではない。また本発明の実施の形態ではスイッチング素子の活性層に多結晶シリコン薄膜を用いたが、非晶質シリコン薄膜を用いても差し支えない。
【0029】次に図5に示すように、カラーフィルタ17及び対向電極18を形成した対向基板16を貼り合わせ、基板1と対向基板16の周囲をシール材でシールして、基板間に液晶19を充填する。
【0030】本発明の実施の形態では画素電極15の端部をソース配線11から離間して形成したため、画素電極15とソース配線11が容量結合することがなく良好な表示品位を保つことができる。また、スイッチング素子を形成した基板側に遮光膜2を設け、遮光膜2上に画素電極15の端部が重なるようにしたため、対向基板16側にブラックストライプを形成する必要がない。従って対向基板を貼り合わせる際の位置ずれによる光漏れ等の不良が発生することがなく、対向基板16を貼り合わせる際の位置ずれを考慮したマージンを設ける必要もないため、開口率を極めて大きくすることができる。
【0031】本実施の形態において、遮光膜2に電位が印加されていない場合にはソース配線及びゲート配線が容量結合する等の悪影響が懸念されるため、遮光膜2には一定の電位が印加されていることが望ましい。尚、図5ではアクティブマトリクス基板と対向基板の内面に設けられる配向膜および両基板の外面に設けられる偏光板は図示していない。」

(イ)「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】



ウ 引用文献3には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0013】
【実施例】
〔実施例1〕 図1に本実施例の作製工程断面図、図2に本実施例の作製工程平面図をそれぞれ示す。基板1としては透明なガラス基板、例えば、本実施例ではコーニング7059を用いる。基板1上にはスパッタ法によってタンタル膜を100?3000Å、例えば、1000Å形成し、これを公知のフォトリソグラフィー法によって加工して、遮光膜2を得る。この段階で上方より見た様子を図2(A)に示す。同図に示すように、遮光膜2のパターンは画素を分離するパターンである。なお遮光膜2は図示しないコモン電極に延在し、そこには液晶パネル外から適当な電位が与えられる。(図2(A))
【0014】次に、公知のプラズマCVD法によって厚さ500?5000Å、例えば、2500Åの酸化珪素膜3を堆積する。酸化珪素膜3はTFTの下地絶縁膜として機能する。(図1(A))
次いで、公知のプラズマCVD法もしくは減圧CVD法により厚さ100?1500Å、例えば、500Åの非晶質珪素膜を堆積し、公知の熱アニール法もしくはレーザーアニール法等の手段によってこれを結晶化させる。さらに、公知のフォトリソグラフィー法によって、結晶化した珪素膜を島状に分離し、活性層(島状領域)4を得る。
【0015】次に、公知のプラズマCVD法により、厚さ500?3000Åの酸化珪素膜5を堆積する。酸化珪素膜5はTFTのゲイト絶縁膜として機能する。さらに、厚さ2000?8000Å、例えば、6000Åのアルミニウム(もしくはアルミニウム合金)膜をスパッタ法によって堆積し、これを公知のフォトリソグラフィー法によって加工し、ゲイト電極と配線(ゲイトバスライン)6を形成する。(図1(B))
【0016】図2(B)にはこの段階で上方より見た様子を示す。同図に示されるようにゲイトバスライン6は平行に複数形成され、それらは先に形成されたタンタルの遮光膜のパターン2上に存在する。また、活性層4は、その一部15が先に形成された遮光膜のパターン2と重なるように形成される。(図2(B))
【0017】次いで、公知の不純物拡散技術、例えば、イオンドーピング法によりゲイトバスライン6をマスクとして、活性層4にN型の不純物を導入する。ドーピング後は熱アニール法もしくはレーザーアニール法によって、再結晶化をおこなう。かくして、ソース7、ドレイン8が得られる。なお、以下の記述でドレインとは単に画素電極の接続される方の不純物領域のことを意味する。次に公知のプラズマCVD法により厚さ3000?8000Å、例えば、5000Åの窒化珪素膜9を堆積する。窒化珪素膜9は第1の層間絶縁物として機能する。窒化珪素の代わりに酸化珪素を用いてもよい。(図1(C))
【0018】次いで、窒化珪素膜9にソース7およびドレイン8に通じるコンタクトホールを形成し、公知のスパッタ法によりアルミニウム合金膜もしくはアルミニウムとチタンの多層膜を堆積し、これを公知のフォトリソグラフィー法により加工し、ソースバスライン10、ドレイン電極11を形成する。図2(C)にはこの段階で上方より見た様子を示す。同図に示されるようにソースバスライン10は平行に複数形成され、また、個々の活性層4と各1つのコンタクトを有する。また、ソースバスライン10は先に形成されたタンタルの遮光膜のパターン2上に存在する。(図2(C))
【0019】その後、公知のプラズマCVD法により厚さ3000?8000Å、例えば、5000Åの酸化珪素膜12を堆積する。酸化珪素膜12は第2の層間絶縁物として機能する。酸化珪素の代わりに窒化珪素を用いてもよい。(図1(D))
次に、ポリイミド膜を塗布し、表面の平坦化をおこなう。この工程でポリイミド膜13が形成される。次いで、ポリイミド膜13をエッチングして、ドレイン電極11に通じるコンタクトホールを形成する。
【0020】そして、公知のスパッタ法によって、透明導電性被膜、例えば、インディウム錫酸化物被膜を500?2000、例えば、1000Å堆積し、これを公知のフォトリソグラフィー法を用いて加工し、画素電極14を得る。画素電極は遮光膜2と重なるようにパターンを形成する。かくすることにより漏光を防止することができる。(図1(E))
かくして、アクティブマトリクス回路が完成する。本実施例では、TFTがNチャネル型であり、かつ、TFTのチャネルの下に遮光膜2が形成されている。TFTに印加される電位がいかなる場合にも遮光膜2によってON状態とならないためには、遮光膜2にはTFTのソースもしくはドレインに印加される可能性のある最低電位よりも低い電位を付与することが望まれる。
【0021】かくして、遮光膜2とドレイン8(活性層4)との間に容量が形成され、かつ、この容量は画素電極と並列に存在するので、画素容量の補助容量(保持容量)となる。もちろん、遮光膜2が存在するため、TFTのチャネルに光が入射することが防止され、TFTの特性が安定する。
【0022】〔実施例2〕 図3を用いて本実施例を説明する。本実施例のTFT作製工程自体は実施例1と同じであるが、遮光膜、各バスライン、活性層等の配置が異なる。図3の番号は実施例1のものに対応する。まず、実施例1と同様にタンタルで遮光膜のパターン2を形成する。これを図3(A)に示す。(図3(A))
【0023】次いで、活性層4とゲイトバスライン6を形成する。ここで、ゲイトバスライン6と活性層4は共に遮光膜2の内側に配置される。(図3(B))
さらに、データバスライン10、ドレイン電極11を形成する。ここでも、データバスライン10、ドレイン電極11は遮光膜2の内側に配置される。(図3(C))
かくして、活性層、ゲイトバスライン、データバスライン、ドレイン電極のいずれもが遮光膜2の内側に形成され、これらは遮光膜2によって遮光される。」

(イ)「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】



(2)対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「Y方向」、「X方向」、「コンタクトホール85」、「コンタクトホール89」、「下側遮光膜11aの・・画素電極9aの角を角取りするように突出した領域」が、それぞれ、本願発明の「第1方向」、「第2方向」、「第1コンタクトホール」、「第2コンタクトホール」、「第3遮光部」に相当するから、
「第1方向に延在するデータ線と、
該データ線に電気的に接続されたトランジスタと、
該トランジスタに対応して設けられた画素電極と、
前記トランジスタの半導体層と重なるように設けられた遮光部と、
前記トランジスタの半導体層と電気的に接続された第1中継層と、
前記第1中継層と前記画素電極との間の層に設けられ、前記第1中継層と前記画素電極とを電気的に接続する第2中継層と、を備え、
前記遮光部は、前記第1方向に延在する第1遮光部と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する第2遮光部と、該第1及び第2遮光部の各々から延設され、画素の開口領域の隅に張り出した第3遮光部とを有し、
前記第1中継層と前記第2中継層とを電気的に接続する第1コンタクトホールは、前記第2遮光部と重なるように設けられ、
前記トランジスタは、前記トランジスタのチャネル領域と前記データ線とが平面視で重なるように設けられている
電気光学装置。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明では、「前記第2中継層と前記画素電極とを電気的に接続する第2コンタクトホールは、前記第3遮光部と重なるように設けられ」ているのに対して、引用発明では、「コンタクトホール89は、下側遮光膜11aのY方向と直交するX方向に延在する部分のみと重なっていて、画素電極9aの角を角取りするように突出した領域とは重なって」いない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2(実施の形態1)には、「ドレイン電極12」と「画素電極15」とを電気的に接続する「コンタクトホール14」が「遮光膜2」の画素の開口の隅に張り出した部分と重なる構成を有する「液晶表示装置」が、
引用文献3(実施例2)には、「ドレイン電極11」と「画素電極14」とを電気的に接続するコンタクトホールが「遮光膜2」の画素の開口の隅に張り出した部分と重なる構成を有する「液晶表示装置」が、
それぞれ、記載されているように、ドレイン電極(本願発明の「第1中継層」及び「第2中継層」という記載に合わせると、中継層ということができる。)と画素電極とを電気的に接続するコンタクトホールが、遮光膜の画素の開口の隅に張り出した部分と重なる構成を有する「液晶表示装置」は周知である。
しかし、引用文献2、3にも、ドレイン電極(中継層)と画素電極とを電気的に接続するコンタクトホールが遮光膜の画素の開口の隅に張り出した部分と重なる構成の目的、作用、効果は記載されていないように、該周知の構成が、目的、作用、効果と対応して把握される技術思想として、周知であるとはいえない。
すると、引用発明に、該周知の構成を採用する動機付けはない。

また、仮に、引用発明に、該周知の構成を採用しようとしても、引用発明と、引用文献2及び引用文献3の周知の「液晶表示装置」において、ドレイン電極(中継層)、画素電極、これらを接続するコンタクトホール以外の構成では、例えば、引用発明では、中継層として、「第1中継層」及び「第2中継層」の2層を有するのに対して、周知の「液晶表示装置」は1層のみ有すること、また、チャネル領域が、引用発明では、「データ線6aは、チャネル領域1a’を含む半導体層1aの長手方向に重なる」のに対して、周知の「液晶表示装置」では、「ソース配線11」及び「ソースバスライン」(本願発明の「データ線」に相当)とは平面視で重ならないように設けられていること等の多くの点で異なっているから、単純に、採用することができないことは明らかである。

また、他に、本願発明の上記相違点に係る構成が公知であることを示す証拠もない。
すると、上記相違点は、引用発明に、引用文献2、3に記載された発明/周知技術を採用することにより当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

(4)小括
したがって、本願発明は、上記相違点において、当業者が引用発明、引用文献2、3に記載された発明/周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



ア 請求項1の「かつ、前記画素電極と重ならないように設けられ、」と記載される構成は、本願の発明の詳細な説明に記載したものではない。

イ 請求項3の「前記第1コンタクトホールは、平面視で前記画素電極と前記画素電極と隣り合う他の画素電極との間に設けられている」と記載される構成は、本願の発明の詳細な説明に記載したものではない。

ウ 請求項4の「前記トランジスタの半導体層と前記第1中継層とを電気的に接続する第3コンタクトホールを備え、前記第3コンタクトホールは、平面視で前記画素電極と前記画素電極と隣り合う他の画素電極との間に設けられている」と記載される構成は、本願の発明の詳細な説明に記載したものではない。

(2)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項4の「前記トランジスタの半導体層と前記第1中継層とを電気的に接続する第3コンタクトホールを備え、前記第3コンタクトホールは、平面視で前記画素電極と前記画素電極と隣り合う他の画素電極との間に設けられている」が示す構成が不明確である。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年7月6日付けの手続補正により、請求項1は、「第1コンタクトホールは、前記第2遮光部と重なり、かつ、前記画素電極と重ならないように設けられ、」が「第1コンタクトホールは、前記第2遮光部と重なるように設けられ、」に補正され、また、請求項3及び4は削除された。
これにより、当審拒絶理由はいずれも解消された。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-15 
出願番号 特願2013-111691(P2013-111691)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09F)
P 1 8・ 537- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐竹 政彦関根 裕  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松川 直樹
発明の名称 電気光学装置及び電子機器  
代理人 鈴野 幹夫  

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