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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 一部申し立て 2項進歩性  C04B
管理番号 1318074
異議申立番号 異議2016-700013  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-08 
確定日 2016-08-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第5750060号発明「セラミックス円筒形スパッタリングターゲット材およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5750060号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5750060号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成24年1月18日に特許出願され、平成27年5月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許のうち、請求項1?5に係る特許について、特許異議申立人南郷誠治により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年3月10日付けで取消理由を通知し、平成28年5月11日付けで意見書が提出されたものである。


2.本件発明
特許第5750060号の請求項1?5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである。


3.取消理由の概要
当審において、請求項1?5に係る特許に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

(1)本件特許の請求項1,5に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)本件特許の請求項1?5に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。


刊行物1:Thermal Spray as a sputter target production method”GLASS CANADA Vol.21,No.2 April 2009 page.7-9


4.刊行物1の記載及び刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「Thermal spray as a sputter target production method」(当審訳「スパッタターゲット製造方法としての溶射」)に関して、以下の事項が記載されている。
「ITO targets - ・・・
Rotating cylindrical ITO targets have been developed by several manufacturing methods. All of the targets are designed as single piece components, with the bonding of the ITO layer to the backing tube generated during the target production process. The obtained densities vary between 92 per cent and more than 99 per cent of the theoretical value for ITO.
Large size prototype targets of 1700mm in length and up to 4-mm layer thickness have been produced for sputter deposition testing on polymer web in different roll coaters.」(9ページ中欄14行-右欄5行)
(当審訳:「ITOターゲット - ・・・
回転式の円筒形ITOターゲットは、いくつかの製造方法によって開発されている。ターゲットのすべては単一部品として設計され、ターゲット製造工程において製造されたバッキングチューブにITO層がボンディングされている。得られた密度は、ITOの理論値の92%と99%超の間の値である。
長さが1700mm、層厚が最大4mmの大型プロトタイプのターゲットが、異なるロールコーターでポリマーウェブ上へのスパッタ成膜試験用に製造されている。」)
これによれば、刊行物1には、「長さが1700mmであり、密度がITO理論値の92%から99%超の間の値をとり、一体品のITOからなる円筒形スパッタリングターゲット」の発明が記載されていると認められる。


5.判断
(1)請求項1
本件特許の請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比する。

本件特許の請求項1に係る発明は、円筒形スパッタリングターゲット材において「長さが750mm以上かつ相対密度が99%以上」であることを特定事項として含む。
一方、刊行物1に記載された発明の円筒形スパッタリングターゲットは、「長さが1700mm」であって、「密度がITO理論値の92%から99%超の間の値」である。
すると、刊行物1に記載された発明の円筒形スパッタリングターゲットは、長さが750mm以上の点で、本件特許の請求項1に係る発明と一致している。
しかし、刊行物1は、これまでに製造されたITOターゲットの「密度がITO理論値の92%から99%超の間の値」であることを示すにとどまり、ITOスパッタリングターゲットがどのような長さの場合に、密度がITO理論値の99%超となるかは何ら記載されていないから、刊行物1に記載された発明の「長さが1700mm」の円筒形スパッタリングターゲットは、密度がITO理論値の99%以上の値であるとまではいえない。
よって、本件特許の請求項1に係る発明は、「相対密度が99%以上」である点で、少なくとも刊行物1に記載された発明と相違するから、本件特許の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明ではない。

また、刊行物1に記載された発明の円筒形スパッタリングターゲットは、具体的にどのような条件下で製造するのかは明らかにされていないから、刊行物1の記載に基づいて、長さが1700mmの円筒形スパッタリングターゲットを、密度がITO理論値の99%以上となるように製造することは、当業者が容易になし得るものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)請求項2?5
本件特許の請求項2?5に係る発明は、請求項1を引用し、請求項1の発明特定事項を全て含む。
よって、上記(1)と同様の理由により、本件特許の請求項5に係る発明は、刊行物1に記載された発明ではないし、また、本件特許の請求項2?5に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


6.むすび
したがって、上記取消理由によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-29 
出願番号 特願2012-7975(P2012-7975)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C04B)
P 1 652・ 113- Y (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小川 武  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 後藤 政博
中澤 登
登録日 2015-05-22 
登録番号 特許第5750060号(P5750060)
権利者 三井金属鉱業株式会社
発明の名称 セラミックス円筒形スパッタリングターゲット材およびその製造方法  
代理人 特許業務法人SSINPAT  

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