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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B64D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B64D
管理番号 1318097
異議申立番号 異議2015-700084  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-13 
確定日 2016-07-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第5788401号発明「ベッドに転換可能なシート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5788401号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5788401号の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、2010年(平成22年)12月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年12月2日(FR)仏国)に国際出願されたものであって、平成27年8月7日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人鈴木好憲により平成27年10月13日(平成27年10月14日受付)に1件目の特許異議の申立て(以下、「異議1」という。)がされ、さらに、同申立人により平成28年3月31日(平成28年4月1日受付)に2件目の特許異議の申立て(以下、「異議2」という。)がされたものである。

第2 本件特許発明
特許第5788401号の請求項1ないし19に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものであり、 請求項1ないし19に係る特許発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明19」という。)は、以下のとおりである。

「 【請求項1】
少なくとも2つのシート(3、3’)を備えるブロック(2)であって、少なくとも2つの隣接するシート(3)が、各シートの要素(31、32、33)を相対移動させることによって、前記シートの占有者が座る位置にある椅子構成と、前記シートの要素がベッド平面(35)を形成し、前記シートの占有者の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド構成に個々に転換可能であり、前記ブロック内では、前記2つのシート(3)が、隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる、ブロック(2)において、
前記少なくとも2つのシート(3)の各々が、前記ベッド構成の前記シートの前方および前記ベッド平面の延長上に位置する空間、すなわち前記シートの前記ベッド平面(35)の延長上のいわゆる足領域(41)に関連付けられ、
前記ベッド構成の前記少なくとも2つのシート(3)の各々の長手方向軸(34)が、前記シートの前方の前記ブロックの対称の垂直平面内に位置する収束点に向かって収束し、それによって前記ブロックの前記少なくとも2つのシートの前記足領域(41)が、垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされ、
前記少なくとも2つのシート(3)が前記ベッド構成であるとき、前記少なくとも2つのシートの一方の前記ベッド平面(35)が、前記ブロックが客室内に取り付けられたときの客室床部に対応する基準表面に対して、前記少なくとも2つのシートの他方の前記ベッド平面とは異なる高さに位置することを特徴とする、ブロック(2)。
【請求項2】
実質的に前記少なくとも2つのシート(3)のシート背もたれ(32)間の後方部分内に、前記少なくとも2つのシートが前記椅子構成であるとき、実質的に垂直の柱(4)によって占有された分離空間を含み、前記柱が、当該の前記ブロック(2)の後方に、同じ方向でかつ同じ軸を実質的に有して、後方の類似のブロックのベッドの所望の長さL0未満であるブロックピッチXと呼ばれる、前記2つのブロック間を分離する距離を離して置かれた前記類似のブロックの前記シートの足領域(41)を垂直投影面においてカバーする、請求項1に記載のブロック。
【請求項3】
前記ベッド構成の前記ベッド平面(35)が、前記シート(3、3’)の少なくとも1つにおける前記椅子構成の前記シートのシートクッション(31)の位置の垂直的に上方にある、請求項2に記載のブロック。
【請求項4】
前記ベッド構成の前記ベッド平面(35)が、前記シート(3)の少なくとも1つにおける前記椅子構成の前記シートのシートクッション(31)の位置の垂直的に下方にある、請求項2に記載のブロック。
【請求項5】
前記少なくとも2つのシート(3)が前記ベッド構成であるとき、前記2つのシートの一方の前記ベッド平面(35)が、前記椅子構成の前記シートのシートクッション(31)の位置の垂直的に上方にあり、他方のシートの前記ベッド平面(35)が、前記シートクッション(31)の位置の下方にある、請求項2に記載のブロック。
【請求項6】
前記柱(4)が、互いから分離され、前記ブロック(2)の後方の方向に開口する2つの足領域(41)を含み、各足領域(41)は、実質的に水平面の足のせ表面(42)を含み、前記2つの足領域(41)は、前記足のせ表面(42)の一方が、前記ブロック(2)の前記シート(3)の1つの前記ベッド平面(35)の高さに位置し、前記足のせ表面の他方が、前記ブロックのもう1つのシートの前記ベッド平面(35)の高さに対応する異なる高さに位置するように垂直にずらされる、請求項2から5のいずれか1項に記載のブロック。
【請求項7】
前記ベッド構成のシートの前記ベッド平面(35)が、前記シートのシートクッション(31)、前記シートの前記シート背もたれ(32)、前記シートのレッグレスト(33)および/または1つまたは複数の移動可能なパネルによって決定され、前記平面は、当該の前記ブロック(2)の前方に位置する類似のブロックの、またはそのような類似のブロックの柱に類似した特性を有する単独の柱の足領域(41)の足のせ表面(42)によって延ばされ、前記シートクッション、シート背もたれ、レッグレスト、移動可能なパネルおよび足のせ領域は、実質的に水平かつ同じ平面内で位置合わせされて前記ベッドを形成する、請求項6に記載のブロック。
【請求項8】
前記ベッド構成のシート(3、3’)の前記ベッド平面(35)が、前記シートの前記シートクッション(31)、前記シートの前記シート背もたれ(32)、および前記シートのレッグレスト(33)によって決定され、前記レッグレストは、当該の前記ブロック(2)の前方に置かれる類似のブロックの前記柱(4、4’)の、またはそのような類似のブロックの柱に類似した特性を有する単独の柱の中空の空間を貫通する足領域(41)の足のせ表面(42)を少なくとも部分的に形成し、前記シートクッション、シート背もたれおよびレッグレストは、実質的に水平にかつ同じ平面内で位置合わせされて前記ベッドを形成する、請求項2から5のいずれか1項に記載のブロック。
【請求項9】
2つの隣接するシート(3、3’)の前記ベッド平面(35)は、前記2つのシートがいずれも前記ベッド構成であるとき、約330mmの距離だけ垂直にずらされる、請求項7または8に記載のブロック。
【請求項10】
前記柱(4)に、前記ブロックのための技術装置および/または当該の前記ブロック(2)の後方に位置するブロックの前記シートの前記占有者が使用することができる快適性を提供する装置または娯楽装置(43)を組み入れる、請求項2から9のいずれか1項に記載のブロック。
【請求項11】
2つのシート(3、3’)間の閉構造(24)が、前記ベッド位置への転換中、前記シートクッションが下げられるシートに対応する前記閉構造の側に位置する側部トリムパネル(241)を備え、前記側部トリムパネルは、前記シートクッションが下げられる前記シートが前記ベッド構成であるとき、取り外し可能である、請求項2から10のいずれか1項に記載のブロック。
【請求項12】
後方部分内に、前記ブロックを固定することを意図した床部のレベルと、最も低いベッドの高さとの間に、前記ブロックの幅を横切る、保管空間を形成するくぼみ(23)を含む、請求項2から11のいずれか1項に記載のブロック。
【請求項13】
収束する長手方向軸(34)を備えた2つのシート(3)によって形成された、請求項2から12のいずれか1項に記載のブロック。
【請求項14】
3つのシート(3、3’)によって形成され、2つの隣接するシート(3)は、収束する長手方向軸(34)を有し、第3のシート(3’)は、前記ブロック内の前記第3のシートに最も近い前記シート(3)の前記長手方向軸に実質的に平行な長手方向軸(34’)を有し、前記第3のシートに最も近い前記シート(3)は、前記シートが前記ベッド構成に転換されるときに上昇するシートクッションを有するシートである、請求項2から12のいずれか1項に記載のブロック。
【請求項15】
少なくとも2つのシート(3、3’)の少なくとも2つのブロック(2)の少なくとも1列を有する、乗客を輸送するための客室(1)または客室の一部であって、前記ブロック内では、ブロック(2)の各シート(3)は、前記シートの要素(31、32、33)の相対移動により、前記シートの占有者が座る位置にある椅子構成と、前記シートの前記要素がベッド平面を形成し、前記シートの占有者の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド構成に個々に転換可能であり、前記ブロック内では、前記シート(3、3’)は隣り合わせで配置されて実質的に同じ方向に向けられ、前記少なくとも2つのブロックは、前記シートの向きの同じ方向で前後に配置され、かつブロックの列の方向に、前記ブロック(2)の各々の基準点間の距離を特徴付けるピッチXだけ分離される、客室(1)または客室の一部において、前記客室は、ブロック(2)の前記シート(3、3’)の各々が、前記シート(3、3’)の向きの方向において直前の別のブロックの後に続く場合、前記ベッド構成において各シート(3)のベッド平面(35)は、前記シートの前方の、前記シートの直前の前記ブロックの内側の、前記直前のブロックの前記シート(3、3’)のシート背もたれ(32)間の柱(4)または第2の柱(4’)と呼ばれる、内蔵された空間内に位置する足領域(41)によって延ばされること、および前記ベッド構成のブロック(2)の2つの隣接するシート(3)の前記ベッド平面(35)が、前記客室(1)の床部上方で異なる高さにあり、それにより、前記柱(4)の内側の前記異なる高さに応じて配置された前記2つのシートの前記足領域(41)が、前記柱内で重ねられることを特徴とする、客室(1)または客室の一部。
【請求項16】
前記客室(1)の床部の垂直的に最も近くに位置するベッド平面を有するブロック(2)のシート(3、3’)が、ブロック(2)の、通路が接する側に位置する、請求項15に記載の客室。
【請求項17】
ブロックの少なくとも1列の前記ブロック(2)の前記ピッチXが、前記ベッド構成において、当該の前記ブロック(2)に応じてさまざまな長さL0を有するベッドを形成するよう変更される、請求項16に記載の客室。
【請求項18】
ブロックの列における最も前方のブロック(2)には、前記列の前記シート(3)の向きの方向の前方に、ブロック(2)の柱(4)に類似する内蔵された柱(4e)が前に置かれる、請求項15から17のいずれか1項に記載の客室。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか1項に記載の客室または客室の一部を備える、乗客を輸送するための車両であって、陸上、海上、または空路で乗客を輸送する分野の1つに属する、車両。」

第3 申立理由の概要
1 異議1
(1)特許異議申立人は、異議1において、下記の甲第1ないし3号証を提出し、請求項1及び15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、請求項1及び15に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。(以下、「異議理由1-1」という。)
その内容として、請求項1、15に係る発明は、以下アないしオに示した理由で当業者が容易に発明をすることができた旨主張している。

ア 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由1-1-1」という。)
イ 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由1-1-2」という。)
ウ 請求項15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由1-1-3」という。)
エ 請求項15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由1-1-4」という。)
オ 請求項15に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由1-1-5」という。)

(2)また、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。(以下、「異議理由1-2」という。)

・甲第1号証:特表2009-534248号公報
・甲第2号証:米国特許出願公開第2009/0243358号明細書
・甲第3号証:米国特許出願公開第2007/0241235号明細書

2 異議2
(1)特許異議申立人は、異議2において、下記の甲第1ないし11号証を提出し、請求項1ないし19に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、請求項1ないし19に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。(以下、「異議理由2-1」という。)
その内容として、特に請求項1、15に係る発明は、以下アないしケに示した理由で当業者が容易に発明をすることができた旨主張している。
ア 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証の記載事項を単独でもしくは甲第7ないし11号証に記載された周知技術と共に適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-1」という。)
イ 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-2」という。)
ウ 請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-3」という。)
エ 請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に甲第5号証に記載された技術事項を単独でもしくは甲第3号証や甲第6号証に記載された周知技術と共に適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-4」という。)
オ 請求項15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証の記載事項を単独でもしくは甲第7ないし11号証に記載された周知技術と共に適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-5」という。)
カ 請求項15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-6」という。)
キ 請求項15に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-7」という。)
ク 請求項15に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に甲第2号証に記載された技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-8」という。)
ケ 請求項15に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に甲第5号証に記載された技術事項を単独でもしくは甲第3号証や甲第6号証に記載された周知技術と共に適用することにより当業者が容易に発明をすることができた。(以下、「異議理由2-1-9」という。)

(2)また、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。(以下、「異議理由2-2」という。)

・甲第1号証:特表2009-534248号公報(異議1における甲第1号証と同じ)
・甲第2号証:米国特許出願公開第2009/0243358号明細書(異議1における甲第2号証と同じ)
・甲第3号証:米国特許出願公開第2007/0241235号明細書(異議1における甲第3号証と同じ)
・甲第4号証:特表2009-538251号公報
・甲第5号証:特表2009-513419号公報
・甲第6号証:米国特許出願公開第2007/0241233号明細書
・甲第7号証:米国特許第2775996号明細書
・甲第8号証:特表昭62-502395号公報
・甲第9号証:米国特許出願公開第2003/0030306号明細書
・甲第10号証:米国特許第3057662号明細書
・甲第11号証:米国特許出願公開第2009/006612号明細書

第4 特許異議申立理由についての検討
上記第3のとおり、異議1における甲第1ないし3号証は、異議2における甲第1ないし3号証と同一文献であり、異議理由1-1及び1-2は、異議理由2-1及び2-2に実質的に含まれているので、それらはまとめて、以下検討する。
1 各証拠に記載された発明及び技術事項
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の段落【0032】及び【図4】?【図9】の記載から、シート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bを相対移動させるということができる。

イ 段落【0029】、【0032】及び【図9】の記載から、シートユニット10A、10Bが平坦となった状態では、脚収納部26A、26Bは平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面の延長上に関連付けられているということができる。

ウ 段落【0033】には「角度“A”と角度“B”の大きさは等しく」と記載されているので、当該段落及び【図9】の記載から、平坦形態の2つの乗客シートユニット10A、10Bの各々は、旅客機の縦軸Lに対して同じ角度で配置されているということができる。

エ 【図4】から脚収納部26A、26Bの足置面28A、28Bの床部からの高さが同じとなっていることが看取でき、甲第1号証全体をみても平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面の床からの高さを隣接するシートユニット間で高さを変えることの記載はなく、段落【0032】の「シートユニット10Bは完全倒置状態の「平坦」または「横臥」姿勢である。着座する乗客は頭部がほんの少々身体から上昇した位置にある完全倒置姿勢となる。この姿勢で足置面28Bは、レッグレスト面18B、シート背部面12Bおよびシート底部面16Bと整合状態であり、集合的に寝台面を形成している。」(下線は当審で付与。)という記載と併せみると、平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面の床部からの高さは同一ということができる。

オ そして、【図1】、【図12】の記載から、少なくとも2つのシート対11は、乗客シートユニット10A、10Bの向きの同じ方向で前後に配置されていることが看取できる。さらに、シート対11同士は所定の間隔で分離されていることが看取できるから、シート対11の列の方向に、前記シート対11の各々の基準点間の距離を特徴付けるピッチだけ分離されているということができる。

カ よって、甲第1号証の【特許請求の範囲】、段落【0001】、【0021】、【0027】?【0035】及び【図1】?【図12】の記載によれば、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されているといえる。
「2つの乗客シートユニット10A、10Bを備えるシート対11であって、2つの隣接する乗客シートユニット10A、10Bが、各乗客シートユニット10A、10Bのシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bを相対移動させることによって、前記乗客シートユニット10A、10Bの乗客が座る位置にある直立形態と、前記シート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bが平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面を形成し、前記乗客シートユニット10A、10Bの乗客の頭部がほんの少々身体から上昇した位置にある完全倒置姿勢になる平坦形態に個々に転換可能であり、前記シート対11内では、前記2つの乗客シートユニット10A、10Bが、隣り合わせで配置される、シート対11において、
前記2つの乗客シートユニット10A、10Bの各々が、前記平坦形態の前記乗客シートユニット10A、10Bの前方および前記ベッド平面の延長上に位置する空間、すなわち前記シートの前記平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面の延長上の脚収納部26A、26Bに関連付けられ、
前記平坦形態の前記2つの乗客シートユニット10A、10Bの各々は、旅客機の縦軸Lに対して同じ角度で配置され、
前記2つの乗客シートユニット10A、10Bが前記平坦形態であるとき、前記2つの乗客シートユニット10A、10Bの平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面が、前記シート対11が旅客機キャビン44内に取り付けられたときの旅客機キャビン44床部に対応する基準表面に対して同じ高さに位置するシート対。」

キ また、同様に甲第1号証には次の発明ないし技術(以下、「甲1-2発明」ないし「甲1技術」という。)が記載されているといえる。
「2つの乗客シートユニット10A、10Bを備える少なくとも2つのシート対11の少なくとも1列を有する、乗客を輸送するための旅客機キャビン44または旅客機キャビン44の一部であって、前記シート対11内では、シート対11の各乗客シートユニット10A、10Bは、前記乗客シートユニット10A、10Bのシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bの相対移動により、前記乗客シートユニット10A、10Bの乗客が座る位置にある直立形態と、前記乗客シートユニット10A、10Bの前記シート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bが平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面を形成し、前記乗客シートユニット10A、10Bの乗客の頭部がほんの少々身体から上昇した位置にある完全倒置姿勢になる平坦形態に個々に転換可能であり、前記シート対11内では、前記乗客シートユニット10A、10Bは隣り合わせで配置されて、前記少なくとも2つのシート対11は、前記乗客シートユニット10A、10Bの向きの同じ方向で前後に配置され、かつシート対11の列の方向に、前記シート対の各々の基準転換の距離を特徴付けるピッチだけ分離される、旅客機キャビン44または旅客機キャビン44の一部において、前記平坦形態の前記2つの乗客シートユニット10A、10Bの各々は、旅客機の縦軸Lに対して同じ角度で配置され、前記旅客機キャビン44は、シート対11の前記乗客シートユニット10A、10Bの各々が、前記乗客シートユニット10A、10Bの向きの方向において直前の別のブロックの後に続く場合、前記平坦形態において各乗客シートユニット10A、10Bの平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面は、前記乗客シートユニット10A、10Bの前方の、前記乗客シートユニット10A、10Bの直前の前記シート対11の内側の、前記直前のシート対11の前記乗客シートユニット10A、10Bの間の中央操作部13と呼ばれる、内蔵された空間内に位置する脚収納部26A、26Bによって延ばされること、および前記平坦形態のシート対11の2つの隣接する乗客シートユニット10A、10Bの平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面が、前記旅客機キャビン44の床部上方で同じ高さにあり、それにより、前記中央操作部13の内側の前記同じ高さに応じて配置された前記2つの乗客シートユニット10A、10Bの前記脚収納部26A、26Bが、前記中央操作部13に設けられている、旅客機キャビン44または旅客機キャビン44の一部。」

(2)甲第2号証について(当審で翻訳した用語等を用いて認定を行った。)
ア 甲第2号証の段落【0046】?【0049】及びFIG.6A?FIG.9の記載から、各シートのシートバック、シートベースを相対移動させるということができる。

イ 同記載から、各シートが略水平フルフラットベッドとなった状態では、乗客の体は実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びる状態になっていることは明らかといえる。

ウ 同記載から、2つの後方下側シート584の各々が、略水平フルフラットベッドの前記後方下側シート584の前方および前記略水平就寝面の延長上の後方下側フットレスト526に関連付けられているということができ、同様に、2つの上側シート502の各々が、略水平フルフラットベッドの上側シート502の前方および略水平就寝面の延長上の上側フットレスト508に関連付けられ、2つの前方下側シート586の各々が、略水平フルフラットベッドの前方下側シート586の後方および略水平就寝面の延長上の前方下側フットレスト538に関連付けられているということができる。

エ 同記載から、略水平フルフラットベッドの状態で、後方下側フットレスト526は上側シート502のシートベース210の垂直投影面において下方に重ねて配置され、前方下側フットレスト538は上側フットレスト508の垂直投影面において下方に重ねて配置されているということができる。

オ 同記載から、2つの上側シート502、2つの後方下側シート584、2つの前方下側シート586が略水平フルフラットベッドであるとき、各2つのシート同士における略水平就寝面は、キャビンフロア204に対して同じ高さであり、2つの前方下側シート586及び2つの後方下側シート584よりも2つの上側シート502が高く配置されるということができる。また、2つの上側シート502、2つの後方下側シート584、2つの前方下側シート586における隣接する2つのシートの高さは同じということができる。

カ よって、甲第2号証の段落【0010】、【0030】、【0043】?【0049】及びFIG.6A?FIG.9の記載によれば、甲第2号証には次の技術事項ないし発明(以下、「甲2技術」ないし「甲2-1発明」という。)が記載されているといえる。
「2つの上側シート502とを備える中央シートモジュール501と、前記上側シート502と同じ方向に向けられる2つの後方下側シート584を備える後方下側シートモジュール503と、前記上側シート502と反対方向に向けられる2つの前方下側シート586を備える前方下側シートモジュール505とを備え、
前記2つの上側シート502、前記2つの後方下側シート584、前記2つの前方下側シート586のそれぞれのシートバック、シートベースを相対移動させることによって、前記各シートの乗客が座る位置にある着座位置と、前記各シートのシートバック、シートベースが略水平就寝面を形成し、各シートの乗客の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びる略水平フルフラットベッドに個々に転換可能であり、前記各シートモジュール内では、前記各2つのシートが隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられるシートモジュールにおいて、
前記2つの後方下側シート584の各々が、前記略水平フルフラットベッドの前記後方下側シート584の前方および前記略水平就寝面の延長上の後方下側フットレスト526に関連付けられ、
前記2つの上側シート502の各々が、前記略水平フルフラットベッドの前記上側シート502の前方および前記略水平就寝面の延長上の上側フットレスト508に関連付けられ、
前記2つの前方下側シート586の各々が、前記略水平フルフラットベッドの前記前方下側シート586の後方および前記略水平就寝面の延長上の前方下側フットレスト538に関連付けられ、
前記略水平フルフラットベッドの状態で、前記後方下側フットレスト526は前記上側シート502のシートベース210の垂直投影面において下方に重ねて配置され、前記上側フットレスト508は前記前方下側フットレスト538の垂直投影面において上方に重ねて配置され、
前記各シートは長手方向に沿って、あるいは、互いに角度を付けて配置し、
前記2つの上側シート502、2つの後方下側シート584、2つの前方下側シート586が前記略水平フルフラットベッドであるとき、各2つのシート同士における前記略水平就寝面は、キャビンフロア204に対して同じ高さであり、2つの前方下側シート586及び2つの後方下側シート584よりも2つの上側シート502が高く配置されるシートモジュール。」

キ また、同様に甲第2号証には次の発明(以下、「甲2-2発明」という。)が記載されているといえる。
「2つの上側シート502とを備える中央シートモジュール501と、前記上側シート502と同じ方向に向けられる2つの後方下側シート584を備える後方下側シートモジュール503と、前記上側シート502と反対方向に向けられる2つの前方下側シート586を備える前方下側シートモジュール505とを有する、乗客を輸送するための客室または客室の一部であって、前記シートモジュール内では、前記2つの上側シート502、前記2つの後方下側シート584、前記2つの前方下側シート586のそれぞれのシートバック、シートベースを相対移動により、前記各シートの乗客が座る位置にある着座位置と、前記各シートの前記シートバック、シートベースが略水平就寝面を形成し、前記各シートの乗客の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びる略水平フルフラットベッドに個々に転換可能であり、前記各シートモジュール内では、前記各シートは隣り合わせで配置されて実質的に同じ方向に向けられ、前記中央シートモジュール501と前記後方下側シートモジュール503は、前記シートの向きが同じ方向で前後に配置され、前記前方下側シートモジュール505と中央シートモジュール501とは、前記シートの向きが反対方向で前後に配置され、かつシートモジュールの列の方向に、前記シートモジュールの各々の基準点間の距離を特徴付けるピッチだけ分離される、客室または客室の一部において、前記客室は、シートモジュールの前記シートの各々が、前記シートの向きの方向において直前の別のシートモジュールの後に続く場合、前記略水平フルフラットベッドにおいて各後方下側シート584の略水平就寝面は、前記後方下側シート584の前方の、前記上側シート502の支持シェル514に内蔵された空間内に位置する後方下側フットレスト526によって延ばされ、各上側シート502の略水平就寝面は、パーティションフットレストアセンブリ506に内蔵された空間内に位置する上部フットレスト508によって延ばされること、および前記略水平フルフラットベッドのシートモジュールの2つの隣接するシートの前記略水平就寝面が、前記客室のキャビンフロア204上方で同じ高さにある客室または客室の一部。」

(3)甲第3号証について(当審で翻訳した用語等を用いて認定を行った。)
甲第3号証の段落【0002】、【0008】、【0023】、【0024】、【0027】、【0028】及びFIG.4?FIG.7の記載によれば、甲第3号証には次の技術事項(以下、「甲3技術」という。)が記載されているということができる。
「3つのシート110、120、110を備える航空機シート構造100であって、
2つの端シート110の間にそれらより前方になるように高位置中間シート120を配置し、
高位置中間シート120のシート部124は、端シート110のそれよりも高く構成されている航空機シート構造。」

(4)甲第4号証について
ア 甲第4号証の段落【0023】及び【図4a】?【図4d】の記載から、座席3のシートバック3a、シートパン3b、補助面3cを相対移動させるということができる。

イ 段落【0023】、【0024】及び【図4d】の記載から、座席3がベッド位置となったときには、乗客の体は実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びる状態になっていることは明らかといえる。

ウ 同記載から、シート3がベッド位置となった状態では、周辺体5の端部5aは就寝するのに適した平坦な表面の延長上に関連付けられているということができる。

エ 段落【0031】及び【図7】の記載から、少なくとも2つの座席対は、座席3の向きの同じ方向で前後に配置され、かつ座席対の列の方向に、座席対の各々の基準点間の距離を特徴付けるピッチだけ分離されているということができる。

オ 段落【0024】及び【図7】の記載から、座席対の座席3の各々が、座席3の向きの方向において直前の別の座席対の後に続く場合、ベッド位置において各座席3の就寝するのに適した平坦な表面は、座席3の前方の、座席3の直前の座席対の内側の、直前の座席対の座席3のシートバック3a間の周辺体5の端部5aによって延ばされるということができる。

カ よって、甲第4号証の段落【0017】?【0019】、【0023】、【0024】、【0030】、【0031】及び【図4a】?【図4d】、【図7】の記載によれば、甲第4号証には次の発明(以下、「甲4-1発明」という。)が記載されているということができる。
「2つの座席3を備える座席対であって、2つの隣接する座席3が、各座席3のシートバック3a、シートパン3b、補助面3cを相対移動させることによって前記座席3の乗客が座る位置にある座位位置と、前記座席3のシートバック3a、シートパン3b、補助面3cが就寝するのに適した平坦な表面を形成し、前記座席3の乗客の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド位置に個々に転換可能であり、前記座席対内では、前記2つの座席3が、隣り合わせで配置される、座席対において、
前記2つの座席3の各々が、前記ベッド位置の前記座席3の前方および前記就寝するのに適した平坦な表面の延長上に位置する空間、すなわち前記シートの前記就寝するのに適した平坦な表面の延長上の周辺体5の端部5aに関連付けられ、
前記ベッド位置の前記2つの座席3が前方に向かって相互に内向きに傾斜している、座席対。」

キ また、同様に甲第4号証には次の発明(以下、「甲4-2発明」という。)が記載されているということができる。
「2つの座席3の少なくとも2つの座席対の1列を有する、乗客を輸送するための客室または客室の一部であって、前記座席対内では、座席対の各座席3は、前記座席3のシートバック3a、シートパン3b、補助面3cの相対移動により、前記座席3の乗客が座る位置にある座位位置と、前記座席3の前記シートバック3a、シートパン3b、補助面3cが就寝するのに適した平坦な表面を形成し、前記座席3の乗客の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド位置に個々に転換可能であり、前記座席対内では、前記座席3は隣り合わせで配置され、前記少なくとも2つの座席対は、前記座席3の向きの同じ方向で前後に配置され、かつ座席対の列の方向に、前記座席対の各々の基準点間の距離を特徴付けるピッチだけ分離される、客室または客室の一部において、前記客室は、座席対の前記座席3の各々が、前記座席3の向きの方向において直前の別の座席対の後に続く場合、前記ベッド位置において各座席3の就寝するのに適した平坦な表面は、前記座席3の前方の、前記座席3の直前の前記座席対の内側の、前記直前の座席対の前記座席3のシートバック3a間の周辺体5の端部5aによって延ばされ、前記ベッド位置の前記2つの座席3が前方に向かって相互に内向きに傾斜している、客室または客室の一部。」

(5)甲第5号証について
ア 甲第5号証の段落【0034】、【0037】?【0041】及び【図3】の記載から、座席20の座席背部26、クッション28、脚部支持パッド30を相対移動させるということができる。

イ 段落【0034】及び【図3】の記載から、座席20がベッド位置にあるときの座席背部26、クッション28、脚部支持パッド30により形成される面は「ベッド平面」といえるものである。
また、座席20がベッド位置となったときには、乗客の体は実質的に平坦にかつ実質的に前下がりの状態に伸びるようになっていることは明らかといえる。

ウ 段落【0034】、【0037】?【0041】及び【図3】、【図4】の記載から、第1列の直後列のベッド位置における座席20のプラットフォーム40は、第1列のベッド位置における座席20の座席背部26と垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされているということができる。
また、第1列の直後列のベッド位置における座席20の脚部支持パッド30及びクッション28の、第1列のベッド位置における座席20の座席背部26と垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされる範囲の前後方向の範囲は、第1列のベッド位置における座席20の座席背部26よりも航空機の床21に対して低くなっているということができる。

エ そして、段落【0031】、【図1】、【図2】の記載から、少なくとも2つの座席列は、座席20の向きの同じ方向で前後に配置されていることが看取できる。

オ よって、甲第5号証の【請求項1】、段落【0031】、【0034】、【0037】?【0041】及び【図1】?【図8】の記載によれば、甲第5号証には次の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されているということができる。
「前後方向に2つ及び3つで交互に設けられる座席20を備える座席列であって、前後方向に2つ及び3つで交互に設けられる座席20が、各座席20の座席背部26、クッション28、脚部支持パッド30を相対移動させることによって、前記座席20の乗客が座る位置にある直立位置と、前記座席20の座席背部26、クッション28、脚部支持パッド30がほぼ平坦なベッド平面を形成し、前記座席20の乗客の体が実質的に平坦にかつ実質的に前下がりの状態に伸びるベッド位置に個々に転換可能であり、前記座席列では、前記2つの座席が、隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる、座席列において、
前記前後方向に2つ及び3つで交互に設けられる座席20の各々が、前記ベッド位置の前記座席20の前記脚部パッド30の前記クッション28から最も遠い縁部に隣接し、かつ前記脚部パッド30とほぼ同じ高さを有し寝台プラットフォームの延長部として機能するプラットフォーム40を有し、
第1列の直後列のベッド位置における座席20のプラットフォーム40は、第1列のベッド位置における座席20の座席背部26と垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされ、また、第1列の直後列のベッド位置における座席20の脚部支持パッド30及びクッション28の、第1列のベッド位置における座席20の座席背部26と垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされる範囲の前後方向の範囲は、第1列のベッド位置における座席20の座席背部26よりも航空機の床21に対して低くなっている、座席列。」

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1-1発明及び甲2技術(及び甲第7ないし11号に記載の技術事項)について
(ア)本件特許発明1と甲1-1発明とを対比すると、後者の「乗客シートユニット10A、10B」は前者の「シート」に相当し、以下同様に、「シート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18B」は「要素」に、「乗客」は「占有者」に、「直立形態」は「椅子構成」に、「平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面」は「ベッド平面」に、「頭部がほんの少々身体から上昇した位置にある完全倒置姿勢になる」は「体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びる」に、「平坦形態」は「ベッド構成」に、「脚収納部26A、26B」は「足領域」に、「旅客機キャビン44」は「客室」に相当する。
また、甲1-1発明における「シート対11」が備えられた箇所は、本件特許発明1の「ブロック」に相当するということができる。

(イ)甲1-1発明の「前記平坦形態の前記2つの乗客シートユニット10A、10Bの各々は、旅客機の縦軸Lに対して同じ角度で配置され」については、甲第1号証の【図9】の記載から、乗客シートユニット10A、10Bの各々の長手方向軸は、前方のシート対が備えられた箇所で収束することが看取されることから、本件特許発明1の「前記ベッド構成の前記少なくとも2つのシートの各々の長手方向軸が、前記シートの前方の前記ブロックの対称の垂直平面内に位置する収束点に向かって収束し」に相当するということができる。

(ウ)甲1-1発明の「2つの乗客シートユニット10A、10B」と本件特許発明1の「少なくとも2つのシート」とは、「2つのシート」という限度で一致するといえ、同様に「2つの隣接する乗客シートユニット10A、10B」と「少なくとも2つの隣接するシート」とは、「2つの隣接するシート」の限度で一致するといえる。

(エ)本件特許発明1の「2つのシート」が「実質的に同じ方向に向けられる」という事項について検討するに、「2つのシート」の長手方向軸は、前方の収束点に向かって収束するような角度を有するものであるから、厳密に方向が同じということではなく、「2つのシート」の両方とも前方に向けられる程度の意味と解される。してみると、甲1-1発明も当該事項を有しているといえる。

(オ)以上のことから、本件特許発明1と甲1-1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「2つのシートを備えるブロックであって、2つの隣接するシートが、各シートの要素を相対移動させることによって、前記シートの占有者が座る位置にある椅子構成と、前記シートの要素がベッド平面を形成し、前記シートの占有者の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド構成に個々に転換可能であり、前記ブロック内では、前記2つのシートが、隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる、ブロックにおいて、
前記2つのシートの各々が、前記ベッド構成の前記シートの前方および前記ベッド平面の延長上に位置する空間、すなわち前記シートの前記ベッド平面の延長上のいわゆる足領域に関連付けられ、
前記ベッド構成の前記2つのシートの各々の長手方向軸が、前記シートの前方の前記ブロックの対称の垂直平面内に位置する収束点に向かって収束し、それによって前記ブロックの前記少なくとも2つのシートの前記足領域を有する、ブロック。」

<相違点1>
「シート」に関し、本件特許発明1が「少なくとも2つの」あるいは「少なくとも2つの隣接する」ものであるのに対し、甲1-1発明では「2つの」あるいは「2つの隣接する」ものである点。

<相違点2>
「足領域」、「ベッド平面」に関し、本件特許発明1は、「足領域」が「垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされ」るものであり、一方の「ベッド平面」の客室床部に対応する基準表面からの高さは、「他方の前記ベッド平面とは異なる高さに位置する」ものであるのに対し、甲1-1発明では、「脚収納部26A、26B」(足領域)は垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされておらず、「平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面」(ベッド平面)の高さも同じである点。

(カ)上記<相違点1>について検討する。
本件特許発明1において「少なくとも2つ」ということは、「2つ」である場合も包含しているので、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。

(キ)上記<相違点2>について検討する。
a 甲第2号証には、上記1(2)カで述べた甲2技術が記載されており、本件特許発明1の「足領域」に相当する甲2技術の事項について検討する。

b まず、甲2技術の「後方下側シート584」において「足領域」に相当するのは、「後方下側フットレスト526」が配置されている領域であるが、それは「後方下側シート584」の前方に配置された「上側シート502」の「シートベース210の垂直投影面において下方に重ねて配置され」るものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「後方下側シート584」 とその前方に配置された「上側シート502」におけるものである。

c 次に、「上側シート502」において「足領域」に相当するのは、「上側フットレスト508」が配置されている領域であるが、それは「上側シート502」の前方に反対方向に向けられた配置された「前方下側シート586」の「垂直投影面において上方に重ねて配置され」るものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「上側シート502」 とその前方に配置された「前方下側シート586」におけるものである。

d さらに、「前方下側シート586」において「足領域」に相当するのは、「前方下側フットレスト538」が配置されている領域であるが、それは「前方下側シート586」の後方に反対方向に向けられて配置された「上側シート502」の「上側フットレスト508」の「垂直投影面において下方に重ねて配置され」るものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「前方下側シート586」とその後方に配置された「上側シート502」におけるものである。

(ク)したがって、甲1-1発明に甲2技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明1の事項を有するものとはならず、甲1-1発明において当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(ケ)また、異議申立人は「ベッド長さより実質的に小さいシート間のピッチを有するベッド構成のために「ベッド平面が異なる高さに位置」し、ベッドが「重ね合わされている」構成は、甲7記載事項乃至甲10記載事項にある通り、周知の技術である。甲11号証にも、甲11記載事項にある通り、「ベッド平面が異なる高さに位置」し、上部シートと下部シートを交互に配置することで乗客により隔離された空間を提供することが開示されてる。」とし、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された技術を甲第7ないし11号証に記載された周知技術と共に適用することにより当業者が容易に発明することができた旨も主張するが、甲第7ないし11号証に記載されるものは、いずれも「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる」シートにおいて、その「ベッド平面」の高さを異ならせるものではなく、また、同シートにおいて、「足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされる」ものでもないため、上記甲第7ないし11号に記載の技術を甲1-1発明に甲2技術と共に適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明1の事項を有するものとはならず、甲1-1発明において当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(コ)小活
以上検討したとおり、甲1-1発明に甲2技術を適用したとしても、当業者が本件特許発明1を容易に発明することができたということはできない。また、甲1-1発明に甲2技術と共に甲第7ないし11号証に記載の技術を適用したとしても、当業者が本件特許発明1を容易に発明することができたということはできない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由1-1-1及び2-1-1の理由並びに証拠方法によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

イ 本件特許発明1と甲1-1発明及び甲3技術について
(ア)本件特許発明1と甲1-1発明との一致点相違点は、上記ア(エ)で述べたとおりであり、上記<相違点1>の判断については、上記ア(オ)で述べたとおりである。

(イ)上記<相違点2>について検討する。
a 甲第3号証には、上記1(3)で述べた甲3技術が記載されており、以下甲1-1発明への適用の容易性等について検討する。

b 甲1-1発明は、旅客機キャビン内でスペース的に効率的な伸縮式設置を可能にする斜配置形態の寝台式シート装置を提供することを解決しようとする課題としているものと認める(甲第1号証の段落【0005】)。そして、「平坦形態の前記2つの乗客シートユニット10A、10Bの各々は、旅客機の縦軸Lに対して同じ角度で配置され」るようにすると共に、「平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面」(ベッド平面)と、その延長上の「脚収納部26A、26B」(足領域)を関連付けることにより当該課題を解決しているものである。

c 一方、甲3技術は、中間シートの乗客が窮屈と感じないように、中間シートを「高位置中間シート」とし、「端シート110」より前方かつ高く配置しているものと認める(甲第3号証の段落【0002】、【0024】)。
そして、甲第3号証には、「3つのシート110、120、110」が「ベッド構成」に転換されることの記載はなく、「ベッド構成」という前提がないので当然甲3技術は「足領域」に相当する事項を有していない。

d してみると、甲1-1発明と甲3技術はそもそもの課題が異なる上、甲1-1発明では、乗客シートユニット10A、10Bを旅客機の縦軸Lに対して同じ角度で配置することにより乗客同士の間隔を有するものであるので、隣の乗客と近接することにより窮屈と感じるような問題は元々生じないようなものであり、しかも「ベッド構成」に転換することの言及のない甲3技術を甲1-1発明に適用する動機付けは存在しないというべきである。
また、適用したとしても直接得られるのは、「直立形態」(椅子構成)のときに「シート底部16A、16B」の座面の高さが異なるというものにとどまり、「平坦形態」(ベッド構成)としたときの「平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18B」(ベッド平面)の高さが異なるというものは少なくとも直接は得られず、加えて、本件特許発明1の「前記ブロックの前記少なくとも2つのシートの前記足領域が、垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされ」という事項を得ることはできない。

(ウ)したがって、甲1-1発明に甲3技術を適用する動機付けはなく、また、甲1-1発明に甲3技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明1の事項を有するものとはならず、甲1-1発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(エ)小活
以上検討したとおり、甲1-1発明に甲3技術を適用することは当業者にとって容易とはいえず、仮に適用したとしても、当業者が本件特許発明1を容易に発明することができたということはできない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由1-1-2及び2-1-2の理由並びに証拠方法によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

ウ 本件特許発明1と甲4-1発明及び甲2技術について
(ア)本件特許発明1と甲4-1発明とを対比すると、後者の「座席3」は前者の「シート」に相当し、以下同様に、「乗客」は「乗客」に、「客室」は「客室」に、「各座席3のシートバック3a、シートパン3b、補助面3c」は「各シートの要素」に、「座位位置」は「椅子構成」に、「就寝するのに適した平坦な表面」は「ベッド平面」に、「ベッド位置」は「ベッド構成」に相当する。
また、甲4-1発明における「座席対」が備えられた箇所は、本件特許発明1の「ブロック」に相当するということができ、同様に「周辺体5の端部5a」に足を載せることができる領域は、「足領域」に相当するということができる。

(イ)甲4-1発明の「前記ベッド位置の前記2つの座席が前方に向かって相互に内向きに傾斜している」については、甲第4号証の【図7】の記載から、隣り合う座席3の各々の長手方向軸は、前方の座席対が備えられた箇所で収束することが看取されることから、本件特許発明1の「前記ベッド構成の前記少なくとも2つのシートの各々の長手方向軸が、前記シートの前方の前記ブロックの対称の垂直平面内に位置する収束点に向かって収束し」に相当するということができる。

(ウ)甲4-1発明の「2つの座席3」と、本件特許発明1の「少なくとも2つのシート」とは、「2つのシート」という限度で一致するといえ、同様に「2つの隣接する座席3」と「少なくとも2つの隣接するシート」とは、「2つの隣接するシート」の限度で一致するといえる。

(エ)本件特許発明1の「2つのシート」が「実質的に同じ方向に向けられる」という事項については、上記ア(エ)と同様の理由により、甲4-1発明も当該事項を有しているといえる。

(オ)以上のことから、本件特許発明1と甲4-1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
少なくとも2つのシートを備えるブロックであって、少なくとも2つの隣接するシートが、各シートの要素を相対移動させることによって、前記シートの占有者が座る位置にある椅子構成と、前記シートの要素がベッド平面を形成し、前記シートの占有者の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド構成に個々に転換可能であり、前記ブロック内では、前記2つのシートが、隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる、ブロックにおいて、
前記少なくとも2つのシートの各々が、前記ベッド構成の前記シートの前方および前記ベッド平面の延長上に位置する空間、すなわち前記シートの前記ベッド平面の延長上のいわゆる足領域に関連付けられ、
前記ベッド構成の前記少なくとも2つのシートの各々の長手方向軸が、前記シートの前方の前記ブロックの対称の垂直平面内に位置する収束点に向かって収束する、ブロック」

<相違点1>
「シート」に関し、本件特許発明1が「少なくとも2つの」あるいは「少なくとも2つの隣接する」というものであるのに対し、甲4-1発明では「2つの」あるいは「2つの隣接する」ものである点。

<相違点2>
「足領域」、「ベッド平面」に関し、本件特許発明1は、「足領域」が「垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされ」るものであり、一方の「ベッド平面」の客室床部に対応する基準表面からの高さは、「他方の前記ベッド平面とは異なる高さに位置する」ものであるのにに対し、甲4-1発明では、「周辺体5の端部5a」に足を載せることができる領域(足領域)が重ね合わされるものではなく、「就寝するのに適した平坦な表面」(ベッド平面)の高さの関係が明らかでない点。

(カ)上記<相違点1>について検討する。
本件特許発明1において「少なくとも2つ」ということは、「2つ」である場合も包含しているので、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。

(キ)上記<相違点2>について検討する。
a 甲第2号証には、上記1(2)カで述べた甲2技術が記載されており、本件特許発明1の「足領域」に相当する甲2技術の事項について検討する。

b まず、「後方下側シート584」において「足領域」に相当するのは、「後方下側フットレスト526」に足が載せられる領域であるが、それは「後方下側シート584」の前方に配置された「上側シート502」の「シートベース210の垂直投影面において下方に重ねて配置され」るものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「後方下側シート584」 とその前方に配置された「上側シート502」におけるものである。

c 次に、「上側シート502」において「足領域」に相当するのは、「上側フットレスト508」に足が載せられる領域であるが、それは「上側シート502」の前方に反対方向に向けられた配置された「前方下側シート586」の「垂直投影面において上方に重ねて配置され」るものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「上側シート502」 とその前方に配置された「前方下側シート586」におけるものである。

d さらに、「前方下側シート586」において「足領域」に相当するのは、「前方下側フットレスト538」に足が載せられる領域であるが、それは「前方下側シート586」の後方に反対方向に向けられて配置された「上側シート502」の「上側フットレスト508」の垂直投影面において下方に重ねて配置されるものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「前方下側シート586」とその後方に配置された「上側シート502」におけるものである。

(ク)したがって、甲4-1発明に甲2技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明1の事項を有するものとはならず、甲4-1発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(ケ)小活
以上検討したとおり、甲4-1発明に甲2技術を適用したとしても、当業者が本件特許発明1を容易に発明することができたということはできない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由2-1-3の理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

エ 本件特許発明1と甲4-1発明及び甲5技術(及び甲第3号証や甲第6号証に記載の技術事項)について
(ア)本件特許発明1と甲4-1発明との一致点相違点は、上記ウ(エ)で述べたとおりであり、上記<相違点1>の判断については、上記ウ(オ)で述べたとおりである。

(イ)上記<相違点2>について検討する。
a 甲第5号証には、上記1(5)オで述べた甲5技術が記載されており、本件特許発明1の「足領域」に相当する甲5技術の事項について検討する。

b 甲5技術において「足領域」に相当するのは、「プラットフォーム40」に足を載せることができる領域であるが、それはその前の列のベッド位置における座席20の座席背部26と垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる」シート(乗客P2、P3のための座席20)の足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、甲第5号証には、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」乗客P2、P3のための「座席20」を両方ともベッド位置にしたときにその「ベッド平面」の高さが異なっていることの記載はなく、また自明ともいえないので、甲5技術において、当該高さが異なっているということはできない。

(ウ)したがって、甲4-1発明に甲5技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明1の事項を有するものとはならず、甲4-1発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(エ)また、異議申立人は「仮に「平面が異なる高さに位置」がその全体を異なる高さに配置することを意味したとしても、甲3記載事項や甲6記載事項にある通り、「平面が異なる高さに位置」し、シートが横方向に「重ね合わされている」構成は周知の技術である。」とし、甲4-1発明に甲5技術を甲第3号証や甲第6号証に記載された周知技術と共に適用することにより当業者が容易に発明することができた旨も主張する。
しかしながら、甲4-1発明は、2つの座席3が前方に向かって相互に内向きに傾斜していることにより乗客同士の間隔を有するものであるので、上記(1)イ(イ)で述べたことと同様に、甲4-1発明に甲3技術を適用する動機付けは存在しないというべきである。
また、甲3技術や甲第6号証に記載の技術事項は、いずれも「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいて、その「ベッド平面」の高さを異ならせるものではなく、また、同シートにおいて、「足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされる」ものでもないため、甲4-1発明に甲5技術と共に甲3技術や甲第6号証に記載の技術事項を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明1の事項を有するものとはならず、甲4-1発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(ケ)小活
以上検討したとおり、甲4-1発明に甲5技術を適用したとしても、当業者が本件特許発明1を容易に発明することができたということはできない。また、甲4-1発明に甲5技術と共に甲3技術を適用する動機付けはなく、甲4-1発明に甲5技術と共に甲3技術や甲第6号証に記載の技術事項を適用したとしても、当業者が本件特許発明1を容易に発明することができたということはできない。

したがって、異議申立人が主張する異議理由2-1-4の理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

オ 本件特許発明1と甲2-1発明について
(ア)本件特許発明1と甲2-1発明とを対比すると、後者の「後方下側シート584」、「上側シート502」、「前方下側シート586」は前者の「シート」に相当し、以下同様に、「後方下側シート584」、「上側シート502」、「前方下側シート586」の「それぞれのシートバック、シートベース」は「各シートの要素」に、「乗客」は「占有者」に、「着座位置」は「椅子構成」に、「略水平就寝面」は「ベッド平面」に、「略水平フルフラットベッド」は「ベッド構成」に相当する。
また、甲2-1発明における「後方下側シートモジュール503」、「中央シートモジュール501」、「前方下側シートモジュール505」が備えられた箇所は、本件特許発明1の「ブロック」に相当するということができ、同様に「後方下側フットレスト526」、「上側フットレスト508」、「前方下側フットレスト538」に足を載せることができる領域は、「足領域」に相当するということができる。

(イ)甲2-1発明の「2つの後方下側シート584」、「2つの上側シート502」、「2つの前方下側シート586」と本件特許発明1の「少なくとも2つのシート」とは、「2つのシート」の限度で一致するといえ、同様に「2つのシートが隣り合わせで配置され」と「少なくとも2つの隣接するシート」とは、「2つの隣接するシート」の限度で一致するといえる。

(ウ)以上のことから、甲2-1発明における「後方下側シート584」を基本のシートとすると、本件特許発明1と甲2-1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「2つのシートを備えるブロックであって、2つの隣接するシートが、各シートの要素を相対移動させることによって、前記シートの占有者が座る位置にある椅子構成と、前記シートの要素がベッド平面を形成し、前記シートの占有者の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド構成に個々に転換可能であり、前記ブロック内では、前記2つのシートが、隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に向けられる、ブロックにおいて、
前記2つのシートの各々が、前記ベッド構成の前記シートの前方および前記ベッド平面の延長上に位置する空間、すなわち前記シートの前記ベッド平面の延長上のいわゆる足領域に関連付けられる、ブロック。」

<相違点1>
「シート」の数に関し、本件特許発明1が「少なくとも2つの」あるいは「少なくとも2つの隣接する」ものであるのに対し、甲2-1発明では「2つの」あるいは「2つの隣接する」ものである点。

<相違点2>
「シート」の配置に関し、本件特許発明1が「前記ベッド構成の前記2つのシートの各々の長手方向軸が、前記シートの前方の前記ブロックの対称の垂直平面内に位置する収束点に向かって収束し」というものであるのに対し、甲2-1発明では、「各シートは長手方向に沿って、あるいは、互いに角度を付けて配置し」というものである点。

<相違点3>
「足領域」、「ベッド平面」に関し、本件特許発明1は、「足領域」が「垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされ」るものであり、一方の「ベッド平面」の客室床部に対応する基準表面からの高さが「他方の前記ベッド平面とは異なる高さに位置する」ものであるのに対し、甲2-1発明では、「後方下側フットレスト526」に足を載せることができる領域(足領域)は、「後方下側シート584」の前方に配置された「上側シート502」の「シートベース210の垂直投影面において下方に重ねて配置され」るものであり、「ベッド平面」の客室床部に対応する基準表面からの高さは同じである点。

(エ)上記<相違点1>について検討する。
本件特許発明1において「少なくとも2つ」ということは、「2つ」である場合も包含しているので、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。

(オ)上記<相違点2>について検討する。
甲2-1発明の「各シートは長手方向に沿って、あるいは、互いに角度を付けて配置し」という事項における「互いに角度を付けて」ということについて検討するに、甲第2号証の段落【0057】やその他の箇所をみても、互いに角度を付けるのは、隣り合わせで配置したシート間のことであるのか、前後に配置したシート間のことであるのか判然とせず、仮に隣り合わせで配置したシート間のことであり、互いに角度を付けたことにより、2つのシートの各々の長手方向軸が収束点に向かって収束するものだとしても、その「収束点」が「前記シートの前方の前記ブロックの対称の垂直平面内に位置する」ものであるのかまでは明らかでない(例えば、収束点が前方のブロックから外れる位置にあるようなものも取り得る。)。
したがって、甲2-1発明は、上記相違点2に係る本件特許発明1の事項を有するとはいえない。

(カ)そして、甲2-1発明における「上側シート584」を基本のシートとしても、「前方下側シート586」を基本のシートとしても、実質的な相違点ではない上記相違点1はさておき、上記相違点2に加え、上記相違点3と同様に「足領域」に相当する事項が「垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされる」ものではないということや、「足領域」に相当する事項や「ベッド平面」に相当する事項の高さが同じであるという相違点が生じるものである。(上記ア(カ)も参照。)

(キ)小活
以上検討したとおり、本件特許発明1と甲2-1発明との間には、相違点が存在することから、本件特許発明1は甲2-1発明であるということはできない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由2-2の理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(2)本件特許発明15について
ア 本件特許発明15と甲1-2発明及び甲2技術(及び甲第7ないし11号に記載の技術)について
(ア)本件特許発明15と甲1-2発明とを対比すると、後者の「乗客シートユニット10A、10B」は前者の「シート」に相当し、以下同様に、「乗客」は「乗客」及び「占有者」に、「旅客機キャビン44」は「客室」に、「シート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18B」は「要素」に、「直立形態」は「椅子構成」に、「平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面」は「ベッド平面」に、「頭部がほんの少々身体から上昇した位置にある完全倒置姿勢になる」は「体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びる」に、「平坦形態」は「ベッド構成」に、「シート背部12A、12B」は「シート背もたれ」に、「脚収納部26A、26B」は「足領域」に相当する。
また、甲1-2発明における「シート対11」が備えられた箇所は、本件特許発明15の「ブロック」に相当するということができる。さらに、甲1-2発明における「中央操作部13」は全体として柱形状をなしているといえ、その位置はシート背面部12A、12B間にあるといえることから、甲1-2発明における「乗客シートユニット10A、10Bの間の中央操作部13」は、本件特許発明15の「シートの背もたれ間の柱」に相当するということができる。

(イ)甲1-2発明の「2つの乗客シートユニット10A、10B」と本件特許発明15の「少なくとも2つのシート」とは、「2つのシート」という限度で一致するといえる。

(ウ)以上のことから、本件特許発明15と甲1-2発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「2つのシートの少なくとも2つのブロックの少なくとも1列を有する、乗客を輸送するための客室または客室の一部であって、前記ブロック内では、ブロックの各シートは、前記シートの要素の相対移動により、前記シートの占有者が座る位置にある椅子構成と、前記シートの前記要素がベッド平面を形成し、前記シートの占有者の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド構成に個々に転換可能であり、前記ブロック内では、前記シートは隣り合わせで配置されて実質的に同じ方向に向けられ、前記少なくとも2つのブロックは、前記シートの向きの同じ方向で前後に配置され、かつブロックの列の方向に、前記ブロックの各々の基準点間の距離を特徴付けるピッチだけ分離される、客室または客室の一部において、前記客室は、ブロックの前記シートの各々が、前記シートの向きの方向において直前の別のブロックの後に続く場合、前記ベッド構成において各シートのベッド平面は、前記シートの前方の、前記シートの直前の前記ブロックの内側の、前記直前のブロックの前記シートのシート背もたれ間の柱と呼ばれる、内蔵された空間内に位置する足領域によって延ばされる、客室または客室の一部。」

<相違点1>
「シート」に関し、本件特許発明15が「少なくとも2つの」ものであるのに対し、甲1-2発明では「2つの」ものである点。

<相違点2>
「ベッド平面」、「足領域」に関し、本件特許発明15が「前記ベッド構成のブロックの2つの隣接するシートの前記ベッド平面が、前記客室の床部上方で異なる高さにあり、それにより、前記柱の内側の前記異なる高さに応じて配置された前記2つのシートの前記足領域が、前記柱内で重ねられる」ものであるのに対し、甲1-2発明では、「平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面」(ベッド平面)は同じ高さであり、それに応じて「脚収納部26A、26B」(足領域)も同じ高さに配置されるものであり、重ねられるものではない点。

(エ)上記<相違点1>について検討する。
上記(1)ア(オ)で述べたことと同様に、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。

(オ)上記<相違点2>について検討する。
甲2技術の適用については、上記(1)ア(カ)で述べたことと同様に、甲1-2発明に甲2技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明15の事項を有するものとはならず、甲1-2発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(カ)したがって、甲1-2発明に甲2技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明15の事項を有するものとはならず、甲1-2発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(キ)また、異議申立人の甲第7ないし11号証についての主張についても、上記(1)ア(ク)で検討したことと同様であり、甲1-2発明に甲2技術と共に甲第7ないし11号証に記載の技術事項を適用したとしても、甲1-2発明において、相違点2に係る本件特許発明15の事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(ク)小活
以上検討したとおり、甲1-2発明に甲2技術を適用したとしても、当業者が本件特許発明15を容易に発明することができたということはできない。また、甲1-2発明に甲2技術と共に甲第7ないし11号証に記載の技術事項を適用したとしても、当業者が本件特許発明15を容易に発明することができたということはできない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由1-1-3及び2-1-5の理由並びに証拠方法によっては、本件請求項15に係る特許を取り消すことはできない。

イ 本件特許発明15と甲1-2発明及び甲3技術について
(ア)本件特許発明15と甲1-2発明との一致点、相違点は上記ア(エ)のとおりであり、上記<相違点1>の判断については、上記ア(オ)で述べたとおりである。

(イ)上記<相違点2>について検討する。
甲3技術の適用の容易性等については、上記(1)イ(イ)で検討したことと同様であり、甲1-2発明に甲3技術を適用する動機付けはなく、また、適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明15の事項を有するものとはならず、甲1-2発明において当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということができない。

(ウ)小活
以上検討したとおり、甲1-2発明に甲3技術を適用することは当業者にとって容易とはいえず、また、適用したとしても、当業者が本件特許発明15を容易に発明することができたということができない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由2-1-6の理由及び証拠方法によっては、本件請求項15に係る特許を取り消すことはできない。

ウ 本件特許発明15と甲2-2発明及び甲1技術について
(ア)本件特許発明15と甲2-2発明とを対比すると、後者の「後方下側シート584」、「上側シート502」、「前方下側シート586」は前者の「シート」に相当し、以下同様に、「後方下側シート584」、「上側シート502」、「前方下側シート586」の「それぞれのシートバック、シートベース」は「各シートの要素」に、「乗客」は「占有者」に、「着座位置」は「椅子構成」に、「略水平就寝面」は「ベッド平面」に、「略水平フルフラットベッド」は「ベッド構成」に相当する。
また、甲2-2発明における「後方下側シートモジュール503」、「中央シートモジュール501」、「前方下側シートモジュール505」が備えられた箇所は、本件特許発明15の「ブロック」に相当するということができ、同様に「後方下側フットレスト526」、「上側フットレスト508」、「前方下側フットレスト538」に足を載せることができる領域は、「足領域」に相当するということができる。

(イ)甲2-2発明の「2つの後方下側シート584」、「2つの上側シート502」、「2つの前方下側シート586」と本件特許発明15の「少なくとも2つのシート」とは、「2つのシート」の限度で一致するといえ、同様に「各2つのシートが隣り合わせで配置され」と「2つの隣接するシート」とは、「2つの隣接するシート」に相当するといえる。

(ウ)以上のことから、甲2-2発明における「後方下側シート584」を基本のシートとすると、本件特許発明15と甲2-2発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「2つのシートの少なくとも2つのブロックの少なくとも1列を有する、乗客を輸送するための客室または客室の一部であって、前記ブロック内では、ブロックの各シートは、前記シートの要素の相対移動により、前記シートの占有者が座る位置にある椅子構成と、前記シートの前記要素がベッド平面を形成し、前記シートの占有者の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド構成に個々に転換可能であり、前記ブロック内では、前記シートは隣り合わせで配置されて実質的に同じ方向に向けられ、前記少なくとも2つのブロックは、前記シートの向きの同じ方向で前後に配置され、かつブロックの列の方向に、前記ブロックの各々の基準点間の距離を特徴付けるピッチだけ分離される、客室または客室の一部において、前記客室は、ブロックの前記シートの各々が、前記シートの向きの方向において直前の別のブロックの後に続く場合、前記ベッド構成において各シートのベッド平面は、前記シートの前方の、内蔵された空間内に位置する足領域によって延ばされる客室または客室の一部。」

<相違点1>
「シート」に関し、本件特許発明15が「少なくとも2つの」というものであるのに対し、甲2-2発明では「2つの」ものである点。

<相違点2>
「足領域」、「ベッド平面」に関し、本件特許発明15は、「足領域」が「前記直前のブロックの前記シートのシート背もたれ間の柱と呼ばれる、内蔵された空間内に位置する」ものであり、「2つの隣接するシート」の「ベッド平面」が「客室の床部上方で異なる高さにあり」というもので、さらに「足領域」は「前記異なる高さに応じて配置された」ものであり「柱内で重ねられる」ものであるのに対し、甲2-2発明では、「後方下側フットレスト526」に足を載せることができる領域(足領域)が「上側シート502の支持シェル514に内蔵された空間内に位置する」ものであり、「2つの後方下側シート584」による「2つの隣接するシート」の「略水平就寝面」(ベッド平面)は同じ高さに配置されているもので、さらに「後方下側フットレスト526」に足を載せることができる領域(足領域)は同じ高さに配置されたものであり、重ねられてもいない点。

(エ)上記<相違点1>について検討する。
上記(1)オ(エ)で述べたことと同様に、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。

(オ)上記<相違点2>について検討する。
甲1技術については、「脚収納部26A、26B」(足領域)は「中央操作部13」(柱)に配置されてはいるものの、その高さは同じであり、「中央操作部13」内で重ね合わされているものではないし、「平坦なシート背部12A、12B、シート底部16A、16B、レッグレスト18A、18Bからなる面」(ベッド平面)も同じ高さにあるものである。
したがって、甲2-2発明に甲1技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明15の事項を有するものとはならず、甲2-2発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(カ)そして、甲2-2発明における「上側シート584」を基本のシートとしても、「前方下側シート586」を基本のシートとしても、本件特許発明15とは「足領域」の位置の違いや高さが同じであること、「ベッド平面」の高さが同じであるという相違点が生じ、上記(オ)と同様の理由により、甲2-2発明において当該相違点に係る事項を有するものとすることは、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。(上記(1)ア(カ)も参照。)

(キ)小活
以上検討したとおり、甲2-2発明に甲1技術を適用したとしても、当業者が本件特許発明15を容易に発明することができたということはできない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由2-1-7の理由及び証拠方法によっては、本件請求項15に係る特許を取り消すことはできない。

エ 本件特許発明15と甲4-2発明及び甲2技術について
(ア)本件特許発明15と甲4-2発明とを対比すると、後者の「座席3」は前者の「シート」に相当し、以下同様に、「乗客」は「占有者」に、「客室」は「客室」に、「各座席3のシートバック3a、シートパン3b、補助面3c」は「各シートの要素」に、「座位位置」は「椅子構成」に、「就寝するのに適した平坦な表面」は「ベッド平面」に、「ベッド位置」は「ベッド構成」に、「シートバック3a」は「シート背もたれ」に相当する。
また、甲4-2発明における「座席対」が備えられた箇所は、本件特許発明15の「ブロック」に相当するということができ、同様に「周辺体5の端部5a」に足を載せることができる領域は、「足領域」に相当するということができる。

(イ)甲4-2発明の「2つの座席3」と、本件特許発明15の「少なくとも2つのシート」とは、「2つのシート」という限度で一致するといえる。

(ウ)以上のことから、本件特許発明15と甲4-2発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「少なくとも2つのシートの少なくとも2つのブロックの少なくとも1列を有する、乗客を輸送するための客室または客室の一部であって、前記ブロック内では、ブロックの各シートは、前記シートの要素の相対移動により、前記シートの占有者が座る位置にある椅子構成と、前記シートの前記要素がベッド平面を形成し、前記シートの占有者の体が実質的に平坦にかつ実質的に水平に伸びるベッド構成に個々に転換可能であり、前記ブロック内では、前記シートは隣り合わせで配置されて実質的に同じ方向に向けられ、前記少なくとも2つのブロックは、前記シートの向きの同じ方向で前後に配置され、かつブロックの列の方向に、前記ブロックの各々の基準点間の距離を特徴付けるピッチだけ分離される、客室または客室の一部において、前記客室は、ブロックの前記シートの各々が、前記シートの向きの方向において直前の別のブロックの後に続く場合、前記ベッド構成において各シートのベッド平面は、前記シートの直前の前記ブロックの内側の足領域によって延ばされる、客室または客室の一部。」

<相違点1>
「シート」に関し、本件特許発明15が「少なくとも2つの」ものであるのに対し、甲4-2発明では「2つの」ものである点。

<相違点2>
「足領域」、「ベッド平面」に関し、本件特許発明15は、「足領域」が「前記直前のブロックの前記シートの直前の前記ブロックの内側の、前記直前のブロックの前記シートのシート背もたれ間の柱または第2の柱と呼ばれる、内蔵された空間内に位置する」ものであり、「2つの隣接するシート」の「ベッド平面」が「客室の床部上方で異なる高さにあり」というもので、さらに「足領域」は「前記異なる高さに応じて配置された」ものであり「柱内で重ねられる」ものであるのに対し、甲4-2発明では、「足領域」は「前記直前の座席対の前記座席3のシートバック3a間の周辺体5の端部5aに位置する」ものであって「柱」に相当する部材はなく、「2つの隣接する座席3」の「ベッド平面」高さの関係も明らかでなく、さらに「足領域」は重ねられるものでもない点。

(エ)上記<相違点1>について検討する。
上記(1)ウ(オ)で述べたことと同様に、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。

(オ)上記<相違点2>について検討する。
a 甲第2号証には、上記1(2)カで述べた甲2技術が記載されており、本件特許発明1の「足領域」に相当する甲2技術の事項について検討する。

b まず、「後方下側シート584」において「足領域」に相当するのは、「後方下側フットレスト526」に足が載せられる領域であるが、それは「後方下側シート584」の前方に配置された「上側シート502」の「シートベース210の垂直投影面において下方に重ねて配置され」るものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「後方下側シート584」 とその前方に配置された「上側シート502」におけるものである。

c 次に、「上側シート502」において「足領域」に相当するのは、「上側フットレスト508」に足が載せられる領域であるが、それは「上側シート502」の前方に反対方向に向けられた配置された「前方下側シート586」の「垂直投影面において上方に重ねて配置され」るものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「上側シート502」 とその前方に配置された「前方下側シート586」におけるものである。

d さらに、「前方下側シート586」において「足領域」に相当するのは、「前方下側フットレスト538」に足が載せられる領域であるが、それは「前方下側シート586」の後方に反対方向に向けられて配置された「上側シート502」の「上側フットレスト508」の垂直投影面において下方に重ねて配置されるものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートの足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものではない。
そして、「ベッド平面」の高さは、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいては同じ高さであって、高さが異なるのは、「前方下側シート586」とその後方に配置された「上側シート502」におけるものである。

e また、「上側シート502のシートベース210」は、2つの「上側シート502」のシートバック(シート背もたれ)間に配置されるものでないため、本願特許発明15の「シート背もたれ間の柱」に相当するとはいえず、さらに、「足領域」に相当する「前方下側フットレスト538」に足が載せられる領域のそれぞれは「上側シート502のシートベース210」内で重ねられるものでもない。

(カ)したがって、甲4-2発明に甲2技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明15の事項を有するものとはならず、甲4-2発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(キ)小活
以上検討したとおり、甲4-2発明に甲2技術を適用したとしても、当業者が本件特許発明15を容易に発明することができたということはできない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由2-1-8の理由及び証拠方法によっては、本件請求項15に係る特許を取り消すことはできない。

オ 本件特許発明15と甲4-2発明及び甲5技術(及び甲第3号証や甲第6号証に記載の技術事項)について
(ア)本件特許発明15と甲4-2発明との一致点相違点は、上記エ(ウ)で述べたとおりであり、上記<相違点1>の判断については、上記エ(エ)で述べたとおりである。

(イ)上記<相違点2>について検討する。
a 甲第5号証には、上記1(5)オで述べた甲5技術が記載されており、本件特許発明15の「足領域」に相当する甲5技術の事項について検討する。

b 甲5技術において「足領域」に相当するのは、「プラットフォーム40」に足を載せることができる領域であるが、それはその前の列のベッド位置における座席20の座席背部26と垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされるものであり、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」乗客P2、P3のための「座席20」(2つの隣接するシート)の足領域が重ねられるものではない。
そして、甲第5号証には、「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」乗客P2、P3のための「座席20」を両方ともベッド位置にしたときにその「ベッド平面」の高さが異なっていることの記載はなく、また自明ともいえないので、甲5技術において、当該高さが異なっているということはできない。

(ウ)したがって、甲4-2発明に甲5技術を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明15の事項を有するものとはならず、甲4-2発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(エ)また、異議申立人は「仮に「平面が異なる高さに位置」がその全体を異なる高さに配置することを意味したとしても、甲3記載事項や甲6記載事項にある通り、「平面が異なる高さに位置」し、シートが横方向に「重ね合わされている」構成は周知の技術である。」とし、甲4-2発明に甲5技術を甲第3号証や甲第6号証に記載された周知技術と共に適用することにより当業者が容易に発明することができた旨も主張する。
しかしながら、甲4-2発明は、2つの座席3が前方に向かって相互に内向きに傾斜していることにより乗客同士の間隔を有するものであるので、上記(1)イ(イ)で述べたことと同様に、甲4-2発明に甲3技術を適用する動機付けは存在しないというべきである。
また、甲3技術や甲第6号証に記載の技術事項は、いずれも「隣り合わせで配置され、実質的に同じ方向に設けられる」シートにおいて、その「ベッド平面」の高さを異ならせるものではなく、また、同シートにおいて、「足領域が垂直投影面において少なくとも部分的に重ね合わされる」ものでもないため、甲4-2発明に甲5技術と共に甲3技術や甲第6号証に記載の技術事項を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明15の事項を有す
るものとはならず、甲4-2発明において、当該事項を有するものとすることは、当業者にとって容易になし得たということはできない。

(オ)小活
以上検討したとおり、甲4-2発明に甲5技術を適用したとしても、当業者が本件特許発明15を容易に発明することができたということはできない。また、甲4-2発明に甲5技術と共に甲3技術を適用する動機付けはなく、甲4-2発明に甲5技術と共に甲3技術や甲第6号証に記載の技術事項を適用したとしても、当業者が本件特許発明15を容易に発明することができたということはできない。
したがって、異議申立人が主張する異議理由2-1-9の理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(3)本件特許発明2ないし14及び16ないし19について
本件特許発明2ないし14及び19は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むのであり、本件特許発明16ないし19は、本件特許発明15の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(1)、(2)と同様の理由により、特許異議申立人主張の容易想到の理由によっては、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

第5 むすび
以上検討したとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-05 
出願番号 特願2012-541488(P2012-541488)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B64D)
P 1 651・ 113- Y (B64D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 黒田 暁子  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 尾崎 和寛
一ノ瀬 覚
登録日 2015-08-07 
登録番号 特許第5788401号(P5788401)
権利者 イーズ.ソゲルマ
発明の名称 ベッドに転換可能なシート  
代理人 押田 良隆  

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