• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1318370
審判番号 不服2015-17471  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-25 
確定日 2016-09-06 
事件の表示 特願2013-518969「特に太陽光発電システム用の、ケーブルコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月19日国際公開、WO2012/007099、平成25年 9月 5日国内公表、特表2013-534705、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年6月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年7月16日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月21日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月23日に手続補正がされ、平成27年5月15日付け(発送日:同年5月26日)で拒絶査定(以下「原査定」という)がされ、これに対し、平成27年9月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、当審において平成28年3月3日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という)が通知され、平成28年6月6日に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、平成28年6月6日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「コンタクトハウジング(2)と、
少なくとも1つのコネクタハウジング(3)と、
を備え、
前記コネクタハウジング(3)が、前記コンタクトハウジング(2)に接続可能であり、また、導体(6)を有する少なくとも1本のケーブル(4)を収容する役割を果たす、太陽光発電システム(100)用のケーブルコネクタ(1)において、
前記コネクタハウジング(3)は、前記導体(6)と接続されるべき前記ケーブル(4)を収容するように設けられ、接続されるべき前記ケーブル(4)の前記導体(6)と接触させるためのコンタクトニードル(7)が前記コンタクトハウジング(2)に配置され、ばね式部品(8)が前記導体(6)と前記コンタクトニードル(7)を取り囲み、前記導体とコンタクトニードルを一緒にばね弾性的に圧迫するように意図されており、
前記コンタクトハウジング(2)は雌ねじを有し、前記コネクタハウジング(3)は雄ねじを有し、前記コンタクトニードル(7)は、前記雌ねじと前記雄ねじの螺合動作により、前記導体(6)の中に押し込まれることを特徴とするケーブルコネクタ(1)。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
(1) 理由1(新規性)
本願の請求項1、2、5?9、11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2) 理由2(進歩性)
本願の請求項1?11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物:特開2007-19020号公報
(1)について
請求項1に記載された発明は、刊行物に記載された発明である。
(2)について
電気的な接続エレメントを太陽光発電システム用として用いることは、周知の技術事項である。
また、平成27年4月23日に手続補正された、請求項12に係る発明については、審査を行っていない。

2 原査定の理由の判断
2-1 理由1(新規性)について
(1) 刊行物
上記刊行物:特開2007-19020号公報(特に、【請求項1】、段落【0001】、【0010】?【0018】、図1?7、図8a、及び図8bを参照。)には、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、電気的なリッツ線導体のための接続装置に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ケーシング10と、
軸方向で摺動可能な滑り部材20と、
を備え、
滑り部材20が、ケーシング10の別個の室11内に挿入され、また、滑り部材20に、個別導体8を有するリッツ線導体7が挿入されるようになっている、別個の室に列状で間隔をあけて配置された複数のピンコンタクトを備えたコネクタケーシングにおける電気的なリッツ線導体のための接続装置において、
滑り部材20は、リッツ線導体7とリッツ線導体7の個別導体8が挿入される貫通孔24を備え、
リッツ線導体7の個別導体8と接続するためのピンコンタクト50の緊締ショルダ54が、ケーシング10の別個の室11内に配置され、
緊締スリーブ40が、リッツ線導体7の個別導体8とピンコンタクト50の緊締ショルダ54を取り囲み、緊締スリーブ40と緊締ショルダ54との間に挿入されたリッツ線導体8に対して、緊締スリーブ40の半径方向で位置固定する力が働くようになっており、
滑り部材20は、ケーシング10の別個の室11内で軸方向に摺動可能であり、
リッツ線導体7は滑り部材20の貫通孔24に挿入され、これにより、個別導体8自体は緊締スリーブ40の下位に、少なくとも緊締ショルダ54を越えて突出し(図8aを参照。)、
次いで、滑り部材20がケーシング10に押し込まれ、
個別導体8は滑り部材20の摺動距離だけ円錐先端部53にわたって摺動され且つ接続領域の緊締ショルダ54を介して確実に位置決めされ、
個別導体8は緊締ショルダ54において、拡張するばね弾性的な緊締スリーブ40によって位置固定される(図8bを参照。)、
電気的なリッツ線導体のための接続装置。」

(2) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「個別導体8」は、本願発明の「導体(6)」に相当する。
以下同様に、「リッツ線導体7」は「ケーブル(4)」に、「ピンコンタクト50の緊締ショルダ54」は「コンタクトニードル(7)」に、「緊締スリーブ40」は「ばね式部品(8)」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「ケーシング10」と、本願発明の「コンタクトハウジング(2)」とは、「ニードル側ハウジング」という点で共通し、
引用発明の「軸方向で摺動可能な滑り部材20」と、本願発明の「コネクタハウジング(3)」とは、「導体側部材」という点で共通し、
引用発明の「別個の室に列状で間隔をあけて配置された複数のピンコンタクトを備えたコネクタケーシングにおける電気的なリッツ線導体のための接続装置」と、本願発明の「太陽光発電システム(100)用のケーブルコネクタ(1)」とは、「接続装置」である点で共通する。

引用発明では、「滑り部材20が、ケーシング10の別個の室11内に挿入され、また、滑り部材20に、個別導体8を有するリッツ線導体7が挿入されるようになっている」から、引用発明は、「導体側部材が、前記ニードル側ハウジングに接続可能であり、また、導体を有する少なくとも1本のケーブルを収容する役割を果たす」に相当する構成を備える。

引用発明では、「滑り部材20は、リッツ線導体7とリッツ線導体7の個別導体8が挿入される貫通孔24を備え」ているから、引用発明は、「導体側部材は、前記導体と接続されるべき前記ケーブルを収容するように設けられ」に相当する構成を備える。

引用発明では、「リッツ線導体7の個別導体8と接続するためのピンコンタクト50の緊締ショルダ54が、ケーシング10の別個の室11内に配置され」ているから、引用発明は、「接続されるべき前記ケーブルの前記導体と接触させるためのコンタクトニードルが前記ニードル側ハウジングに配置され」に相当する構成を備える。

引用発明では、「緊締スリーブ40が、リッツ線導体7の個別導体8とピンコンタクト50の緊締ショルダ54を取り囲み、緊締スリーブ40と緊締ショルダ54との間に挿入されたリッツ線導体8に対して、緊締スリーブ40の半径方向で位置固定する力が働くようになって」いるから、引用発明は、「ばね式部品が前記導体と前記コンタクトニードルを取り囲み、前記導体とコンタクトニードルを一緒にばね弾性的に圧迫するように意図され」に相当する構成を備える。

以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
[一致点]
「ニードル側ハウジングと、
少なくとも1つの導体側部材と、
を備え、
前記導体側部材が、前記ニードル側ハウジングに接続可能であり、また、導体を有する少なくとも1本のケーブルを収容する役割を果たす、接続装置において、
前記導体側部材は、前記導体と接続されるべき前記ケーブルを収容するように設けられ、接続されるべき前記ケーブルの前記導体と接触させるためのコンタクトニードルが前記ニードル側ハウジングに配置され、ばね式部品が前記導体と前記コンタクトニードルを取り囲み、前記導体とコンタクトニードルを一緒にばね弾性的に圧迫するように意図されている、
接続装置。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明では、「ニードル側ハウジング」及び「導体側部材」が、それぞれ「コンタクトハウジング(2)」及び「コネクタハウジング(3)」であり、「コンタクトハウジング(2)は雌ねじを有し、前記コネクタハウジング(3)は雄ねじを有し、前記コンタクトニードル(7)は、前記雌ねじと前記雄ねじの螺合動作により、前記導体(6)の中に押し込まれる」ようになっている「太陽光発電システム(100)用のケーブルコネクタ(1)」であるのに対して、
引用発明では、「ニードル側ハウジング」及び「導体側部材」が、それぞれ「ケーシング10」及び「軸方向で摺動可能な滑り部材20」であり、「滑り部材20は、ケーシング10の別個の室11内で軸方向に摺動可能であり、リッツ線導体7は滑り部材20の貫通孔24に挿入され、これにより、個別導体8自体は緊締スリーブ40の下位に、少なくとも緊締ショルダ54を越えて突出し、次いで、滑り部材20がケーシング10に押し込まれ、個別導体8は滑り部材20の摺動距離だけ円錐先端部53にわたって摺動され且つ接続領域の緊締ショルダ54を介して確実に位置決めされ、個別導体8は緊締ショルダ54において、拡張するばね弾性的な緊締スリーブ40によって位置固定される」、「別個の室に列状で間隔をあけて配置された複数のピンコンタクトを備えたコネクタケーシングにおける電気的なリッツ線導体のための接続装置」である点。

(3) 判断
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る構成が、刊行物に記載されているに等しい事項から把握される事項であるということはできない。

(4) 小括
したがって、本願発明は、引用発明(刊行物に記載された発明)と同一であるとはいえない。
また、本願の請求項2?11に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、引用発明(刊行物に記載された発明)と同一であるとはいえない。

2-2 理由2(進歩性)について
(1) 刊行物
刊行物(特開2007-19020号公報)及び引用発明については、前記「2-1(1)」に記載したとおりである。

(2) 対比
本願発明と引用発明との一致点、及び相違点は、前記「2-1(2)」に記載したとおりである。

(3) 判断
上記相違点について検討する。
刊行物の図1、2、8a、及び8bを参照すると、複数のピンコンタクト50のピン型の差込み側51が、ケーシング10の差込み領域4に突入している。
そして、刊行物には明記されていないものの、この差込み領域4には、複数の電極を備えた図示されていない部材(以下「部材A」という。)が差込まれ、更に、部材Aの複数の電極には、複数のピンコンタクト50の差込み側51が差込まれるようになっており、これによって、部材Aと、リッツ線導体7を有する滑り部材20が配置されたケーシング10(以下「部材B」という。)とを脱着可能とし、両者の間で、複数の電気的な接続(又は非接続)を行うものと解される。
これに対して、本願発明は、コンタクトハウジング2とコネクタハウジング3との間の接続に関する技術である。
そうすると、引用発明と本願発明とは、コネクタにおいて、接続対象が異なる技術であり、部材Bに関する技術である引用発明を、「太陽光発電システム用のケーブルコネクタ」の「コンタクトハウジング」と「コネクタハウジング」との間の接続に適用することが容易であるとはいえない。

また、本願発明では、「コンタクトハウジング(2)は雌ねじを有し、前記コネクタハウジング(3)は雄ねじを有し、前記コンタクトニードル(7)は、前記雌ねじと前記雄ねじの螺合動作」させることにより、「ねじのピッチにより、比較的小さなねじり力で、コンタクトニードルをコネクタケーブルの導体の中に挿入するための大きな軸方向の力が生成される。」(本願明細書段落【0031】)ようにしている。
これに対して、引用発明では、「リッツ線導体7は滑り部材20の貫通孔24に挿入され、これにより、個別導体8自体は緊締スリーブ40の下位に、少なくとも緊締ショルダ54を越えて突出し、次いで、滑り部材20がケーシング10に押し込まれ」るものであるから、滑り部材20がケーシング10に押し込まれる以前に、既に、ピンコンタクト50の緊締ショルダ54は、リッツ線導体7の個別導体8の中に押し込まれている(図8aを参照。)。
すると、引用発明では、滑り部材20をケーシング10に押し込む際に、大きな軸方向の力は必要とされないから、本願発明のように「螺合動作」させる必要性もない。
したがって、たとえ螺合コネクタが周知の技術(平成27年11月11日付け前置報告書において提示された米国特許出願公開第2010/0093231号明細書、及び実公平6-4550号公報を参照。)であったとしても、引用発明において、ケーシング10の別個の室11内に雌ねじを設けるとともに、滑り部材20に雄ねじを設けて螺合動作するようにし、それによって、「雌ねじと前記雄ねじの螺合動作により、前記導体の中に押し込まれる」ようにすることについて、動機付けがあるとはいえない。

以上のことから、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を想到することは容易であるとはいえない。

(4) 小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2?11に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

2-3 小括
以上のことから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1) 請求項7の「円筒形の受容領域(12)」は、どの部分か明確でない。
(2) 請求項9の「・・・なることを特徴とするケーブルコネコネクタ(1)。」は、明確でない。
(3) 請求項7?9を引用する請求項10の「ばね式部品(8)が少なくとも1つの粘弾塑性材料」は、明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年6月6日の手続補正によって、本願の請求項7の「円筒形の受容領域(12)」に関する記載は削除され、請求項9の「・・・なることを特徴とするケーブルコネコネクタ(1)。」との記載は、「・・・なることを特徴とするケーブルコネクタ(1)。」と補正され、本願の請求項10は、「請求項1乃至6の何れか1項に記載のケーブルコネクタ(1)において、前記ばね式部品(8)が少なくとも1つの粘弾塑性材料からなることを特徴とするケーブルコネクタ(1)。」と補正された。
このことにより、請求項7?10に係る発明は、明確となった。
よって、当審拒絶理由(1)?(3)は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-23 
出願番号 特願2013-518969(P2013-518969)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01R)
P 1 8・ 121- WY (H01R)
P 1 8・ 113- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山下 寿信前田 仁  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 特に太陽光発電システム用の、ケーブルコネクタ  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ