• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
管理番号 1318407
審判番号 不服2013-22410  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-15 
確定日 2016-08-17 
事件の表示 特願2010-507501「熱で賦活されたポリウレタン尿素組成物を有する積層化された繊維布構造物」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月20日国際公開、WO2008/140877、平成22年11月11日国内公表、特表2010-534573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成20年4月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年5月8日、アメリカ合衆国(US))の出願であって、平成25年7月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年11月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲の手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成26年8月29日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成26年12月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、明細書及び特許請求の範囲の手続補正がなされ、平成27年2月26日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成27年6月3日付けで意見書及び手続補正書が提出され、明細書及び特許請求の範囲の手続補正がなされ、平成27年9月18日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成28年1月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、明細書及び特許請求の範囲の手続補正がなされたものである。


第2.平成28年1月27日付け手続補正書による明細書及び特許請求の範囲の手続補正について
平成28年1月27日付け手続補正書による明細書及び特許請求の範囲の手続補正の内容は、平成27年6月3日付け手続補正書による明細書及び特許請求の範囲の手続補正の内容と全く同じである。
ゆえに、補正後の本願の明細書及び特許請求の範囲の記載は、平成27年6月3日付け手続補正書により手続補正された明細書及び特許請求の範囲の記載と同一のままとなっている。


第3.平成27年9月18日付けで通知した拒絶の理由

理由1.この出願(以下、「本願」という。)は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

第1.特許法第36条第6項第2号の規定に関して
本願の特許請求の範囲には、以下の1.?3.に示すように、日本語として何を特定しようとしているのかが不明確な記載が散見される。
したがって、本願の請求項1、18に係る発明及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明は明確であるとはいえない。

1.請求項1、18について
(1)「少なくとも二つの層と、及び、繊維布に、被覆、接合又は積層化された、少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルムとを備えてなるものであり」(下線は当審にて付与。以下同様。)なる記載で特定しようとする事項が不明確である。
すなわち、この記載で特定しようとする事項は、単に「少なくとも二つの層と、繊維布に・・・とを備えてなるものであり」なる記載で特定される事項と、どのように異なるのかが不明である。(特定しようとする事項に差がないのであれば、前記「及び、」は不要ではないか。)
(2)「少なくとも二つの層が、少なくとも二つの繊維布の層及び少なくとも二つの発泡体の層であり」なる記載で特定しようとする事項が日本語として著しく不明確である。
この記載は、二つの層のうちの一方の層が繊維布の層と発泡体の層で構成されることを特定しようとしているのか、それとも、二つの層のそれぞれが二つの繊維布の層と二つの発泡体の層とで構成されることを特定しようとしているのか等、非常に多義的かつ曖昧な記載であり、日本語として著しく不明確である。
(3)「少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルムが外側の層であり」なる記載及び「ポリウレタン尿素の水性分散物から得られる層が外側の層であり」なる記載で特定しようとする事項が不明確である。
これらの記載では、何に対して「外側」であるのかが記載されていないから、これらの記載が特定しようとする事項が不明となっている。
さらに、これらの記載は、請求項2で「前記フィルムが、少なくとも二つの層の間にあることを特徴とする」と規定され、請求項20で「前記分散物が、二つの層の間にあることを特徴とする」と規定されていることと整合するのか否かも不明である。
(4)「(a)・・・(PTMEG)と、(b)4,4’-及び2,4’-メチレンビス・・・である混合物と、及び(c)(i)成分(b)の・・・ジオール化合物とを含んで成る」なる記載で特定しようとする事項が不明確である。
すなわち、この記載で特定しようとする事項は、単に「(a)・・・(PTMEG)と、(b)4,4’-及び2,4’-メチレンビス・・・である混合物と、(c)(i)成分(b)の・・・ジオール化合物とを含んで成る」なる記載で特定される事項と、どのように異なるのかが不明である。(特定しようとする事項に差がないのであれば、前記「及び、」は不要ではないか。)

2.請求項4について
「それぞれの側」とは、何の(「請求項3に記載の多重層製品」か?)どこを指すのかが不明である。

3.請求項21について
「前記分散物が、層の上に噴霧されている」における「層」とは、多重層製品におけるどの「層」のことであるのかが不明である。

第2.特許法第36条第6項第1号の規定に関して
本願の請求項1、18に係る発明(以下、「本願発明1、18」という。)は、以下に詳述するように、従来技術に比して空気透過性等に優れた多重層製品を提供するという技術課題を解決したものであるのか否かが不明である。
したがって、本願発明1、18及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは必ずしもいえない。

本願発明1、18の実施例に関する説明は、明細書の段落【0100】?【0108】に記載されている事項のみである。
そして、実施例3のフィルムを含むいくつかの多重層製品についてのASTM D-737試験法に従って空気透過性について試験した結果が示される【表1】の「基質」欄に記載された「発泡体」や「繊維布」の材質や層構造等について本願の明細書には一切説明されていない。
一方、「空気透過性」は、「基質」となる「発泡体」や「繊維布」の材質や層構造等の違いにより大きく影響を受けるものと考えられる。
ゆえに、例えば、【表1】について、「基質」が「繊維布」であるものに着目した場合、「フィルム」が「3ミル^(a)」(実施例3の本発明のフィルム)の場合の「空気透過性」は、「54.53」(立方フィート/分)であり、「フィルム」が「Bemis2メイル3410^(b)」の場合の「43.57」(立方フィート/分)や、「ポリウレタン尿素溶液^(c)」の場合の「2.97」(立方フィート/分)よりもその数値が大きいが、前記「3ミル^(a)」の場合の「繊維布」の材質や層構造等と、前記「Bemis2メイル3410^(b)」の場合の「繊維布」の材質や層構造等、「ポリウレタン尿素溶液^(c)」の場合の「繊維布」の材質や層構造等が同じであるのか異なるのかさえ不明である(明細書に何ら説明がない)ために、「フィルム」が「3ミル^(a)」のものは、「Bemis2メイル3410^(b)」や「ポリウレタン尿素溶液^(c)」のものよりも「空気透過性」に優れているとは直ちにはいえない。(「基質」が「発泡体」であるものについても同様である。)
そして、このことは、【表1】において、「基質」が「繊維布」であり「フィルム」が「3ミル^(a)」であり、「被覆」の領域や「成形」の条件も同じものについて、「空気透過性」が、「54.53」(立方フィート/分)(【表1】の9行目の欄を参照)のものと、「138.67」(立方フィート/分)(【表1】の12行目の欄を参照)ものとがあり、「基質」が「繊維布」とされていても、その材質や構造が異なり得ると解されることからも明らかである。
よって、本願発明1、18は、従来技術に比して空気透過性等に優れた多重層製品を提供するという技術課題を解決したものであるとの根拠を、上記【表1】に求めることはできない。

したがって、本願発明1、18は、従来技術に比して空気透過性等に優れた多重層製品を提供するという技術課題を解決したものであるのか否かが不明であるといわざるを得ない。


理由2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (刊行物については刊行物等一覧参照)
・請求項 1?22
・刊行物 1
・・・
刊 行 物 等 一 覧
1.国際公開第2006/086715号(対応公表公報である特表2008-530308号公報も、必要に応じて参照されたい。)


第4.当審の判断
1.理由1.について
本願の明細書及び特許請求の範囲の記載は、上記第2.で述べたとおり、平成28年1月27日付けの手続補正により、平成27年6月3日付け手続補正書により手続補正された明細書及び特許請求の範囲の記載と同一のままとなっている。
そして、本願の請求項1に係る発明は、平成27年9月18日付けで通知した拒絶理由の理由1.の第1.で指摘したとおり、不明確のままであり、本願の請求項1に係る発明を正確に認定することができない。
また、請求人は、本願の請求項1、18に係る発明の解決すべき課題は、「ポリウレタンを含む製品の貯蔵寿命は減少することがあったこと」、「揮発性の有機化合物(VOC)および危険な空気汚染物質(HAP)の排出を減少させることを目的とした健康および環境に関する規制が常に強化されていること」、「高温熔融接着剤は、一般に伸長過程を繰り返した場合、固定性(set)が大きく回復性が悪ゆえ、他の利点、例えば可撓性、形状保持性、および空気透過性を基材(繊維布)に与えることが要求されること」が従来技術における解決すべき課題であり(平成28年1月27日付け意見書4.(2-1)を参照)、これを解決するために、上記1.(1)の[請求項1]及び[請求項18]に記載された発明特定事項を採用し、上記発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載された事項である旨を主張している(同意見書4.(2-2)?(2-5)を参照)。
しかしながら、本願明細書の記載(例えば、段落[0005]、[0030]、[0033]、[0035]、[0108]等を参照)からみて、「従来技術に比して優れた空気透過性を有すること」も本願の各請求項に係る発明が解決すべき課題の一つとしていることが明らかであり、請求人は、平成28年1月27日付け意見書でも、「従来技術に比して優れた空気透過性を有すること」が、本願の各請求項に係る発明が解決すべき課題ではないとは述べていない。
そして、請求人は、従来技術に対する他の利点に関し、上記拒絶理由の理由1.の第2.で指摘した「従来技術に比して空気透過性等に優れた多重層製品を提供するという技術課題を解決したとする根拠を本願明細書の【表1】に求めることはできない」点について意見を述べていない。
ゆえに、本願の請求項1、18に係る発明は、依然として、従来技術に比して空気透過性等に優れた多重層製品を提供するという技術課題を解決したものであるのか不明であり、解決すべき課題を解決しないものまで含み得るものであるから、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは必ずしもいえない。
したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。

2.理由2.について
上記のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
したがって、理由2.について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


第5.意見書での主張を踏まえた予備的判断
請求人は、平成28年1月27日付け意見書で、[請求項1]、[請求項4]、[請求項18]、[請求項21]の記載を補正したことにより、平成27年9月18日付けで通知した拒絶の理由の理由1.及び理由2.を解消した旨を主張すると共に、これらの請求項について、平成28年1月27日付け手続補正書に記載されたものとは異なる補正内容を意見書に記載している。
ゆえに、請求人は、平成28年1月27日付け手続補正書の作成に際し、平成27年6月3日付け手続補正書の内容を、誤ってそのまま引き写してしまったことも考えられる。
そこで、念のため、仮に、平成28年1月27日付け意見書で主張されるとおりに[請求項1]、[請求項4]、[請求項18]、[請求項21]が補正された場合に、上記拒絶理由の理由1及び理由2.を解消するかについて、検討する。

1.理由1について
(1)請求項1、18の記載の明確性について
平成28年1月27日付け意見書の2.によれば、[請求項1]及び[請求項18]の記載を、以下のとおりに補正しようとしていたと思われる。
仮にこのとおりに補正されていたとするならば、理由1.の第1.の1.(1)?(4)での指摘は解消され、[請求項1]に係る発明及び[請求項18]に係る発明は、もはや不明確であるとはいえない。

[請求項1]
多重層製品であって、
少なくとも二つの層と、
繊維布に、被覆、接合又は積層化された、少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルムとを備えてなるものであり、
前記多重層製品が、衣類用繊維布であり、
前記少なくとも二つの層が、二つの繊維布層、二つの発泡体層、繊維布層と発泡体の層、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてなるものであり、
前記少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルムが最外側の層であり、
前記フィルムが、ポリウレタン尿素の水性分散物から得られたものであり、
前記水性分散物が、有機溶媒を実質的に含んでおらず、かつ、1.8?2.6の%NCOを有してなるものであり、
前記水性分散物が、
(a)数平均分子量が1800であるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)と、
(b)4,4'-及び2,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体との混合物であり、前記4,4'-MDI対2,4'-MDI異性体のモル比が65:35?35:65である混合物と、
(c)(i)成分(b)のMDI異性体混合物と反応し得るヒドロキシ基、及び(ii)中和すると塩を生成することができ、かつ、MDI異性体混合物と反応することができない少なくとも一種のカルボン酸基を含んで成る少なくとも1種のジオール化合物とを含んで成る予備重合体を含んで構成されてなることを特徴とする、多重層製品。
[請求項18]
多重層製品であって、
少なくとも二つの層と、
ポリウレタン尿素の水性分散物から得られる層を備えてなるものであり、
前記多重層製品が、衣類用繊維布であり、
前記少なくとも二つの層が、二つの繊維布層、二つの発泡体層、繊維布層と発泡体の層、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてなるものであり、
前記ポリウレタン尿素の水性分散物から得られる層が最外側の層であり、
前記水性分散物が、有機溶媒を実質的に含んでおらず、かつ、1.8?2.6の%NCOを有してなるものであり、
前記水性分散物が、
(a)数平均分子量が1800であるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)と、
(b)4,4'-及び2,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体の混合物であり、前記4,4'-MDI対2,4'-MDI異性体のモル比が65:35?35:65である混合物と、
(c)(i)成分(b)のMDI異性体混合物と反応し得るヒドロキシ基、および(ii)中和すると塩を生成することができ、かつ、MDI異性体混合物と反応することができない少なくとも1種のカルボン酸基を含んで成る少なくとも1種のジオール化合物とを含んで成る予備重合体を含んで構成されてなることを特徴とする、多重層製品。

(2)請求項4、21の記載の明確性について
同意見書の3.によれば、[請求項4]及び[請求項21]の記載を、以下のとおりに補正しようとしていたと思われる。
仮にこのとおりに補正されていたとするならば、理由1.の第1.の2.及び3.での指摘は解消され、[請求項4]に係る発明及び[請求項21]に係る発明は、もはや不明確であるとはいえない。

[請求項4]
フィルムが、発泡体の層に隣接しており、各発泡体の層が繊維布の層に隣接していることを特徴とする、請求項3に記載の多重層製品。
[請求項21]
前記分散物が、前記少なくとも二つの層の上に噴霧されていることを特徴とする、請求項18に記載の多重層製品。

(3)理由1の第2(サポート要件)について
上記第4.の1.で述べたように、本願の請求項1、18に係る発明は、依然として、従来技術に比して空気透過性等に優れた多重層製品を提供するという技術課題を解決したものであるのか不明であるといわざるを得ない。
したがって、本願の請求項1、18に係る発明は、解決すべき課題を解決しないものまで含み得るものであるから、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。

(4)小括
上記のとおりに補正されていたとするならば、理由1.の1.(特許法第36条第6項第2号違反)については解消されるものの、理由1.の2.(特許法第36条第6項第1号違反)については、依然として解消されていない。

2.理由2.について
(1)本願発明
仮に、上記意見書の主張のとおりに補正されていたとするならば、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

多重層製品であって、
少なくとも二つの層と、
繊維布に、被覆、接合又は積層化された、少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルムとを備えてなるものであり、
前記多重層製品が、衣類用繊維布であり、
前記少なくとも二つの層が、二つの繊維布層、二つの発泡体層、繊維布層と発泡体の層、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてなるものであり、
前記少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルムが最外側の層であり、
前記フィルムが、ポリウレタン尿素の水性分散物から得られたものであり、
前記水性分散物が、有機溶媒を実質的に含んでおらず、かつ、1.8?2.6の%NCOを有してなるものであり、
前記水性分散物が、
(a)数平均分子量が1800であるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)と、
(b)4,4'-及び2,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体との混合物であり、前記4,4'-MDI対2,4'-MDI異性体のモル比が65:35?35:65である混合物と、
(c)(i)成分(b)のMDI異性体混合物と反応し得るヒドロキシ基、及び(ii)中和すると塩を生成することができ、かつ、MDI異性体混合物と反応することができない少なくとも一種のカルボン酸基を含んで成る少なくとも1種のジオール化合物とを含んで成る予備重合体を含んで構成されてなることを特徴とする、多重層製品。


(2)引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用した国際公開第2006/086715号(以下、「刊行物1」という。)には、「SOLVENT FREE AQUEOUS POLYURETHANE DISPERSIONS AND SHAPED ARTICLES THEREFROM(無溶媒の水性ポリウレタン分散液およびそれからの造形品)(当審注:訳は、当審が作成した。なお、刊行物1に対応する特表2008-530308号公報を参考にした。)」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア.Claim 1<【請求項1】(対応公表公報での表記)>
「A prepolymer for use in an aqueous polyurethane dispersion comprising:
a) at least one polyether, polyester, or polycarbonate polyol, wherein said polyether, polyester, or polycarbonate polyol has a number average molecular weight of 600 to 3,500;
b) a mixture of 4,4'- and 2,4'-methylene bis(phenyl isocyanate) (MDI) isomers, wherein the ratio of 4,4'-MDI to 2,4'-MDI isomers ranges from 65:35 to 35:65; and
c) at least one diol compound comprising: (i) hydroxy groups capable of reacting with the mixture of MDI isomers of component b), and (ii) at least one carboxylic acid group capable of forming a salt upon neutralization, wherein said at least one carboxylic acid group is incapable of reacting with the mixture of MDI isomers of component b);
wherein the prepolymer is substantially solvent-free.」
(水性ポリウレタン分散液での使用のためのプレポリマーであって、
a)600?3,500の数平均分子量を有する、少なくとも1つのポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネートポリオール、
b)4,4’-MDI対2,4’-MDI異性体の比が65:35?35:65の範囲である、4,4’-および2,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体の混合物、ならびに
c)(i)成分b)のMDI異性体の混合物と反応することができるヒドロキシ基と、(ii)成分b)のMDI異性体の混合物と反応することができない、中和時に塩を形成することができる少なくとも1つのカルボン酸基とを含む少なくとも1つのジオール化合物を含む
実質的に無溶媒であるプレポリマー)

イ.Claim 2<【請求項2】>
「The prepolymer of claim 1, wherein the at least one polyether, polyester, or polycarbonate polyol of component a) is a poly(tetramethylene ether) glycol having a number average molecular weight of 1400 to 2400.」
(成分a)の少なくとも1つのポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネートポリオールが1,400?2,400の数平均分子量を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである請求項1に記載のプレポリマー。)

ウ.Claim 11<【請求項11】>
「The prepolymer of claim 1, wherein the aqueous polyurethane dispersion is a polyurethane urea. 」
(水性ポリウレタン分散液がポリウレタンウレアである請求項1に記載のプレポリマー。)

エ.[0002]<【0001】>
「The present invention relates to novel aqueous polyurethane dispersions and shaped articles made therefrom. Specifically, the present invention relates to solvent-free, stable dispersions, which comprise fully formed polyurethaneurea with blocked isocyanate end groups. The dispersions can be formed by prepolymer mixing processes. The present invention additionally relates to shaped articles and coated articles formed from such aqueous dispersions, which can be heat and /or pressure activated for bonding, lamination and adhesion to substrates. 」
(本発明は、新規な水性ポリウレタン分散液およびそれから製造された造形品に関する。具体的には、本発明は、ブロックトイソシアネート末端基を有する完全に形成されたポリウレタンウレアを含む、無溶媒の安定な分散液に関する。分散液はプレポリマー混合プロセスによって形成することができる。本発明はさらに、基材への接合、積層および接着のために熱および/または圧力活性化することができる、かかる水性分散液から形成された造形品およびコーテッド物品に関する。)

オ.[0003]<【0003】>
「Polyurethanes (including polyurethaneureas) can be used as adhesives for various substrates, including textile fabrics. Typically, such polyurethanes are either fully formed non-reactive polymers or reactive isocyanate-terminated prepolymers. Such reactive polyurethane adhesives often require extended curing time to develop adequate bonding strength, which can be a disadvantage in manufacturing processes. In addition, the isocyanate groups of the polyurethanes are known to be sensitive to moisture, which limits the storage stability and reduces the shelf life of the product incorporating such polyurethanes.」
(ポリウレタン(ポリウレタンウレアを含む)は、編織布をはじめとする様々な基材のための接着剤として使用することができる。典型的には、かかるポリウレタンは、完全に形成された非反応性ポリマーか反応性イソシアネート末端プレポリマーかのどちらかである。かかる反応性ポリウレタン接着剤はしばしば、十分な接合強度を生み出すための延ばされた硬化時間を必要とし、それは製造プロセスでの不利点であり得る。加えて、ポリウレタンのイソシアネート基は湿気に敏感であることが知られており、それは貯蔵安定性を制限し、かかるポリウレタンを組み入れた製品の貯蔵寿命を短くする。)

カ.[00019] <【0021】>
「The invention may comprise in a further aspect a shaped article derived from the substantially solvent-free aqueous polyurethane dispersion. The invention may also comprise a garment comprising the shaped article. The invention also may comprise the article comprising the at least one shaped article and a substrate to which said shaped article is applied. The invention further comprises an article wherein the article comprises a substrate coated with the aqueous dispersion. The invention comprises molded articles which comprise shaped articles. The invention comprises molded articles which comprise substrates coated with the aqueous polyurethane dispersion. The invention further comprises garments made from the aforementioned articles.」
(本発明はさらなる態様において、実質的に無溶媒の水性ポリウレタン分散液から誘導された造形品を含んでもよい。本発明はまた造形品を含む衣類を含んでもよい。本発明はまた、少なくとも1つの造形品と該造形品が付けられる基材とを含む物品を含んでもよい。本発明はさらに、本水性分散液でコートされた基材を含む物品を含む。本発明は造形品を含む成形品を含む。本発明は、本水性ポリウレタン分散液でコートされた基材を含む成形品を含む。本発明はさらに前述の物品から製造された衣類を含む。)

キ.[00042] <【0027】>
「In the prepolymer mixing process, it is important that the viscosity of the prepolymer is adequately low enough, without dilution by a solvent, to be transported and dispersed in water. The present invention in one embodiment, relates to polyurethane dispersions derived from such a prepolymer, which meet this viscosity requirement and do not have any organic solvent in the prepolymer or in the dispersion. In accordance with the invention, the prepolymer is the reaction product of a polyol a), a diisocyanate b) and a diol compound c).」
(プレポリマー混合法では、プレポリマーの粘度は、溶媒による希釈なしに、輸送されるそして水に分散されるのに十分に適切に低いことが重要である。本発明は一実施形態では、かかるプレポリマーから誘導された、この粘度要件を満たしそしてプレポリマー中にまたは分散液中にいかなる有機溶媒も有さないポリウレタン分散液に関する。本発明に従って、プレポリマーはポリオールa)、ジイソシアネートb)およびジオール化合物c)の反応生成物である。)

ク.[00058] <【0043】>
「Examples of polyether polyols that can be used include those glycols with two or more hydroxy groups, from ring-opening polymerization and/or copolymerization of ethylene oxide, propylene oxide, trimethylene oxide, tetrahydrofuran, and 3-methyltetrahydrofuran, or from condensation polymerization of a polyhydric alcohol, preferably a diol or diol mixtures, with less than 12 carbon atoms in each molecule, such as ethylene glycol, 1,3-propanediol, 1,4-butanediol, 1,5-pentanediol 1,6-hexanediol, neopentyl glycol, 3-methyl-1,5- pentanediol, 1,7-heptanediol, 1,8-octanediol, 1,9-nonanediol, 1,10-decanediol and 1,12-dodecanediol. A linear, bifunctional polyether polyol is preferred, and a poly(tetramethylene ether) glycol of molecular weight of about 1,700 to about 2,100, such as Terathane(R) 1800 (Invista) with a functionality of 2, is particularly preferred in the present invention.」
(使用することができるポリエーテルポリオールの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、および3-メチルテトラヒドロフランの開環重合および/または共重合からの、または多価アルコール、好ましくは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールおよび1,12-ドデカンジオールなどの、各分子中に12個未満の炭素原子を有する、ジオールもしくはジオール混合物の縮重合からの、2つ以上のヒドロキシ基を有するそれらのグリコールが挙げられる。線状二官能性ポリエーテルポリオールが好ましく、2の官能価のテラセイン(Terathane)(登録商標)1800(インビスタ(Invista))などの、約1,700?約2,100の分子量のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールが本発明で特に好ましい。)

ケ.[00061]、[00062] <【0046】、【0047】>
「The polyisocyanate component b), suitable as another starting material for making urethane prepolymers according to the invention, can be an isomer mixture of diphenylmethane diisocyanate (MDI) containing 4,4'-methylene bis(phenyl isocyanate) and 2,4'-methylene bis(phenyl isocyanate) in the range of 4,4'-MDI to 2,4'-MDI isomer ratios of between about 65:35 to about 35:65, preferably in the range of about 55:45 to about 45:55 and more preferably at about 50:50. Examples of suitable polyisocyanate components include Mondur(R) ML (Bayer), Lupranate(R) MI (BASF), and Isonate(R) 50 O,P' (Dow Chemical).
Diol compounds c), suitable as further starting materials for preparing urethane prepolymers according to the invention, include at least one diol compound with: (i) two hydroxy groups capable of reacting with the polyisocyanates b); and (ii) at least one carboxylic acid group capable of forming salt upon neutralization and incapable of reacting with the polyisocyanates b). Typical examples of diol compounds c) having a carboxylic acid group, include 2,2-dimethylopropionic acid (DMPA), 2,2-dimethylobutanoic acid, 2,2-dimethylovaleric acid, and DMPA initiated caprolactones such as CAPA(R) HC 1060 (Solvay). DMPA is preferred in the present invention.」
(本発明によるウレタンプレポリマーを製造するための別の出発原料として好適な、ポリイソシアネート成分b)は、約65:35?約35:65の4,4’-MDI対2,4’-MDI異性体比の範囲で、好ましくは約55:45?約45:55の範囲で、より好ましくは約50:50で4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)および2,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)を含有するジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の異性体混合物であることができる。好適なポリイソシアネート成分の例には、モンデュール(Mondur)(登録商標)ML(バイエル(Bayer))、ルプラネート(Lupranate)(登録商標)MI(バスフ(BASF))、およびアイソネート(Isonate)(登録商標)50 O,P’(ダウ・ケミカル(Dow Chemical))が挙げられる。
本発明によるウレタンプレポリマーを製造するためのさらなる出発原料として好適なジオール成分c)には、(i)ポリイソシアネートb)と反応することができる2つのヒドロキシ基と、(ii)中和時に塩を形成することができ、そしてポリイソシアネートb)と反応することができない少なくとも1つのカルボン酸基とを有する少なくとも1つのジオール化合物が含まれる。カルボン酸基を有するジオール化合物c)の典型的な例には、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸、およびカパ(CAPA)(登録商標)HC 1060(ソルベイ(Solvay))などのDMPA開始カプロラクトンが挙げられる。DMPAが本発明では好ましい。)

コ.[00063] <【0048】>
「The prepolymer can be prepared by mixing starting materials a), b), and c) together in one step and by reacting at temperatures of about 50℃ to about 100℃ for adequate time until all hydroxy groups are essentially consumed and a desired %NCO of the isocyanate group is achieved. Alternatively, this prepolymer can be made in two steps by first reacting starting material a) with excess b), followed by reacting with component c) until a final desired %NCO of the prepolymer is achieved. For example, the %NCO may range from about 1.3 to about 6.5, such as from about 1.8 to about 2.6. Significantly, no organic solvent is added to or mixed with the starting materials before, during or after the reaction. Optionally, a catalyst may be used to facilitate the prepolymer formation.」
(プレポリマーは、出発原料a)、b)、およびc)を1つの工程で一緒に混合することによって、そしてすべてのヒドロキシ基が本質的に使われ、そしてイソシアネート基の所望の%NCOが達成されるまで十分な時間約50℃?約100℃の温度で反応させることによって製造することができる。あるいはまた、このプレポリマーは、出発原料a)を過剰のb)と先ず反応させ、引き続きプレポリマーの最終所望%NCOが達成されるまで成分c)と反応させることによって2段階で製造することができる。例えば、%NCOは約1.8?約2.6などの、約1.3?約6.5の範囲であってもよい。重要なことには、有機溶媒は、反応前、中または後に出発原料に全く加えられない、すなわち、それに全く混合されない。場合により、触媒がプレポリマー形成を促進するために使用されてもよい。)

サ.[00076] <【0061】>
「Such optional additives may be added to the aqueous dispersion before, during, or after the prepolymer is dispersed, as the process allows. No organic solvent is added to the aqueous dispersion at any time.」
(かかる任意の添加剤は、プロセスが許す範囲で、プレポリマーが分散される前、間、または後に水性分散液に加えられてもよい。有機溶媒はいかなる時にも水性分散液に全く加えられない。)

シ.[00079] <【0064】>
「Such shaped articles may be made by coating the dispersion onto a release paper and drying to remove water at temperatures below about 100℃ through commercially available processes to form a film on the paper. The formed film sheets can be slit into strips of desired width and wound-up into spools for later use in applications to form stretch articles, for example textile fabrics. Examples of such applications include: stitch-less or seamless garment constructions; seam seal and reinforcement; labels and patches bonding to garments; and localized stretch/recovery enhancement. The adhesion bonding can be developed in the temperature range of from about 100℃ to about 200℃, such as from about 130℃ to about 200℃, for example, from about 140℃ to about 180℃, in a period of 0.1 seconds to several minutes, for example, less than about one minute. Typical bonding machines are Sew Free (commercially available from SewSystems in Leicester, England), Macpi trimming machine (commercially available from the Macpi Group in Brescia, Italy), Framis hot air welding machine (commercially available from Framis Italy, s p.a. in Milano, Italy).This bonding is expected to be strong and durable when exposed to repeated wear, wash, and stretch in a textile fabric garment.」
(かかる造形品は、本分散液を剥離紙上へコートし、商業的に利用可能な方法によって約100℃未満の温度で水を除去するために乾燥させて紙上にフィルムを形成することによって製造されてもよい。形成されたフィルムシートは所望の幅のストリップへ細長く切り、用途において後で使用するためにスプールへ巻き取ってストレッチ品、例えば編織布を形成することができる。かかる用途の例には、縫い目なしまたはシームレス衣類構造物、シームシールおよび強化材、衣類に接合するラベルおよびパッチ、ならびに局在化ストレッチ/回復強化材が挙げられる。接着接合は、約130℃?約200℃、例えば、約140℃?約180℃などの、約100℃?約200℃の温度範囲で、0.1秒?数分、例えば、約1分未満の期間で作成することができる。典型的な接合機はソー・フリー(Sew Free)(英国レスターのソー・システムズ(Sew Systems in Leicester,England)から市販されている)、マックピ(Macpi)耳切り機(イタリア国ブレシアのマックピ・グループ(Macpi Group in Brescia,Italy)から市販されている)、フラミス(Framis)熱空気溶接機(イタリア国ミラノのフラミス・イタリア社(Framis Italy,s.p.a. in Milano,Italy)から市販されている)である。この接合は、編織布衣類で繰り返し着用、洗濯およびストレッチにさらされたときに強くて耐久性があると予期される。)

ス.[00081] <【0066】>
「In addition, articles with laminated films or dispersions can be molded. For example, fabric can be molded under conditions appropriate for the hard yarn in the fabric. Also, molding may be possible at temperature which will mold the shaped article or dispersion, but below temperatures suitable for molding the hard yarn.」
(加えて、積層フィルムまたは分散液付き物品は成形することができる。例えば、布は、布中の硬質糸にとって適切な条件下に成形することができる。また、成形は、造形品または分散液を成形するであろう温度で、しかし硬質糸を成形するのに好適な温度未満で可能である。)

セ.[00088]?[00091]<【0073】?【0076】>
「End articles that can be produced using the dispersions and shaped articles falling within the scope of the present invention include, but are not limited to: apparel, which includes any type of garment or article of clothing; knitted gloves; upholstery; hair accessories, bed sheets; carpet and carpet backing; conveyor belts; medical applications, such as stretch bandages; personal care items, including incontinence and feminine hygiene products; and footwear. Articles coated with dispersion or covered with film or tape may be used as sound suppression articles.
Non-elastic fabrics laminated to shaped articles can have improved stretch and recovery and improved molding properties.
Articles comprising shaped articles, film, tape, or aqueous polyurethane dispersion may be molded. The articles may be made with multiple layers of substrate and shaped article, film, tape, or dispersion. The multi-layered articles also may be molded. Molded and non-molded articles may have different levels of stretch and recovery. The molded articles may comprise a body shaping or body supporting garment, such as a brassiere.
Examples of apparel or garments that can be produced using the dispersions and shaped articles falling within the scope of the present invention, include but are not limited to: undergarments, brassieres, panties, lingerie, swimwear, shapers, camisoles, hosiery, sleepwear, aprons, wetsuits, ties, scrubs, space suits, uniforms, hats, garters, sweatbands, belts, activewear, outerwear, rainwear, cold-weather jackets, pants, shirtings, dresses, blouses, mens and womens tops, sweaters, corsets, vests, knickers, socks, knee highs, dresses, blouses, aprons, tuxedos, bisht, abaya, hijab, jilbab, thoub, burka, cape, costumes, diving suit, kilt, kimono, jerseys, gowns, protective clothing, sari, sarong, skirts, spats, stola, suits, straitjacket, toga, tights, towel, uniform, veils, wetsuit, medical compression garments, bandages, suit interlinings, waistbands, and all components therein.」
(本発明の範囲内に入る分散液および造形品を使用して製造することができる最終品には、任意のタイプの衣類または衣料品の物品を含むアパレル、編み手袋、室内装飾品、髪飾り、ベッドシーツ、カーペットおよびカーペット裏地、コンベアベルト、ストレッチ包帯などの医療用途;失禁および女性衛生用品をはじめとするパーソナルケア用品、ならびに履物が含まれるが、それらに限定されない。分散液でコートされたまたはフィルムもしくはテープでカバーされた物品が騒音防止品として使用されてもよい。
造形品に積層された非弾性布は、改善されたストレッチおよび回復ならびに改善された成形特性を有することができる。
造形品、フィルム、テープ、または水性ポリウレタン分散液を含む物品は成形されてもよい。物品は、基材および造形品、フィルム、テープ、または分散液の多層で製造されてもよい。多層物品もまた成形されてもよい。成形品および非成形品は異なるレベルのストレッチおよび回復を有してもよい。成形品は、ブラジャーなどの、ボディシェーピングまたはボディサポート衣類を含んでもよい。
本発明の範囲内に入る分散液および造形品を使用して製造することができるアパレルまたは衣類の例には、下着、ブラジャー、パンティー、ランジェリー、水着、シェーパー、キャミソール、靴下、寝間着、エプロン、ウェットスーツ、タイ、手術着、宇宙服、制服、帽子、ガーター、汗止めバンド、ベルト、スポーツウェア、上着、雨着、冷気候ジャケット、パンツ、シャツ地、ドレス、ブラウス、男女トップス、セーター、コルセット、チョッキ、ニッカー、ソックス、ハイソックス(knee high)、ドレス、ブラウス、エプロン、タキシード、ビシュト(bisht)、アバーヤ、ヒジャーブ,ジルバーブ(jilbab)、サウブ(thoub)、ブルカ、ケープ、コスチューム、潜水服、キルト、着物、ジャージ、ガウン、防護服、サリー、サロン、スカート、スパッツ、ストラ(stola)、スーツ、拘束衣、トーガ、タイツ、タオル、制服、ベール、ウェットスーツ、医療圧迫帯、包帯、スーツ芯材、ウエストバンド、およびそれらにおけるすべての構成材が挙げられるが、それらに限定されない。)

ソ.[000100] <【0085】>
「Another aspect of the invention is an article comprising the shaped article and a substrate wherein the shaped article and the substrate are attached to form a laminate whereby coefficient of friction of the elastic laminate is greater than that of the substrate alone. Examples of this are a waistband with a coating or film comprising the aqueous polyurethane dispersion which prevents slippage of the garment from another garment such as a blouse or shirt, or alternately prevents slippage of the waistband on the skin of the garment wearer.」
(本発明の別の態様は、造形品および基材が貼り付けられてラミネートを形成し、それによって弾性ラミネートの摩擦係数が基材だけのそれより大きい、造形品および基材を含む物品である。これの例は、ブラウスまたはシャツなどの別の衣類からの衣類の滑りを防ぐ、あるいはまた衣類着用者の皮膚上のウエストバンドの滑りを防ぐ、水性ポリウレタン分散液を含むコーティングまたはフィルム付きウエストバンドである。)

タ.[000110]? [000115]<【0095】>
「Terathane(R) 1800 is a linear polytetramethylene ether glycol (PTMEG), with a number average molecular weight of 1,800 (commercially available from Invista, S. a. r. L., of Wichita, KS and Wilmington, DE);
・・・
Lupranate(R) MI is an isomer mixture of diphenylmethane diisocyanate (MDI) containing 45-55% 2,4'-MDI isomer and 55-45% 4,4'-MDI isomer (commercially available from BASF, Wyandotte, Michigan);
・・・
DMPA is 2,2-dimethylopropionic acid.」
(テラセイン(登録商標)1800は、1,800の数平均分子量の、線状ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)(カンザス州ウィッチタおよびデラウェア州ウィルミントンのインビスタ社(Invista,S.a.r.L.,of Wichita,KS and Wilmington,DE)から市販されている)であり、
・・・
ルプラネート(登録商標)MIは、45?55%の2,4’-MDI異性体および55?45%の4,4’-MDI異性体を含有するジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の異性体混合物(バスフ、ミシガン州ワイアンドット(Wyandotte,Michigan)から市販されている)であり、
・・・
DMPAは2,2-ジメチロールプロピオン酸である。)

チ.[000117] <【0097】>
「Example 1
The preparation of the prepolymers was conducted in a glove box with nitrogen atmosphere. A 2000 ml Pyrex(R) glass reaction kettle, which was equipped with an air pressure driven stirrer, a heating mantle, and a thermocouple temperature measurement, was charged with about 382.5 grams of Terathane(R) 1800 glycol and about 12.5 grams of DMPA. This mixture was heated to about 50℃ with stirring, followed by the addition of about 105 grams of Lupranate(R) MI diisocyanate. The reaction mixture was then heated to about 90°C with continuous stirring and held at about 90 ℃ for about 120 minutes, after which time the reaction was completed, as the %NCO of the mixture declined to a stable value, matching the calculated value (%NCO aim of 1.914) of the prepolymer with isocyanate end groups. The viscosity of the prepolymer was determined in accordance with the general method of ASTM D1343-69 using a Model DV-8 Falling Ball Viscometer, (sold by Duratech Corp., Waynesboro, VA.), operated at about 40°C. The total isocyanate moiety content, in terms of the weight percent of NCO groups, of the capped glycol prepolymer was measured by the method of ・・・which is incorporated herein by reference.」
( (実施例1)
プレポリマーの製造を窒素雰囲気のグローブボックス中で行った。圧力駆動撹拌機、加熱マントル、および熱電対温度測定を備えている2000mlパイレックス(Pyrex)(登録商標)ガラス反応ケトルに、382.5グラムのテラセイン(登録商標)1800グリコールおよび約12.5グラムのDMPAを装入した。この混合物を撹拌しながら約50℃に加熱し、それに約105グラムのルプラネート(登録商標)MIジイソシアネートの添加が続いた。反応混合物を次に連続的に撹拌しながら約90℃に加熱し、90℃に約120分間保持し、その時間後に、混合物の%NCOがイソシアネート末端基を有するプレポリマーの計算値(1.914の%NCO照準)にマッチする安定値に低下したので、反応を完了させた。プレポリマーの粘度を、約40℃で操作される、モデル(Model)DV-8落球粘度計(Falling Ball Viscometer)(デュラテック・コープ、バージニア州ウェーンズバロ(Duratech Corp.,Waynesboro,VA.)によって販売される)を用いてASTM D1343-69の一般法に従って測定した。キャップドグリコールプレポリマーの、NCO基の重量パーセントの観点からの、全イソシアネート部分含有率を、参照により本明細書に援用される・・・の方法によって測定した。)

ツ.[000124]、[000125]<【0111】、【0112】>
「Example 11
The solvent-free prepolymer, as prepared according to the procedures and composition described in Example 1 , was used to make the polyurethaneurea aqueous dispersion of the present invention.
A 2,000 ml stainless steel beaker was charged with about 700 grams of de-ionized water, about 15 grams of sodium dodecylbenzenesulfonate (SDBS), and about 10 grams of triethylamine (TEA). This mixture was then cooled with ice/water to about 5℃ and mixed with a high shear laboratory mixer with rotor/stator mix head (Ross, Model 100LC) at about 5,000 rpm for about 30 seconds. The viscous prepolymer, prepared in the manner as Example 1 and contained in a metal tubular cylinder, was added to the bottom of the mix head in the aqueous solution through flexible tubing with applied air pressure. The temperature of the prepolymer was maintained between about 50℃ and about 70℃. The extruded prepolymer stream was dispersed and chain-extended with water under the continuous mixing of about 5,000 rpm. In a period of about 50 minutes, a total amount of about 540 grams of prepolymer was introduced and dispersed in water. Immediately after the prepolymer was added and dispersed, the dispersed mixture was charged with about 2 grams of Additive 65 (commercially available from Dow Corning(R), Midland Michigan) and about 6 grams of diethylamine (DEA). The reaction mixture was then mixed for about another 30 minutes. The resulting solvent-free aqueous dispersion was milky white and stable. The viscosity of the dispersion was adjusted with the addition and mixing of Hauthane HA thickening agent 900 (commercially available from Hauthway, Lynn, Massachusetts) at a level of about 2.0 wt% of the aqueous dispersion. The viscous dispersion was then filtered through a 40 micron Bendix metal mesh filter and stored at room temperatures for film casting or lamination uses. The dispersion had solids level of 43% and a viscosity of about 25,000 centipoises. The cast film from this dispersion was soft, tacky, and elastomeric.」
( (実施例11)
実施例1に記載した手順および組成に従って製造されるような、無溶媒のプレポリマーを、本発明のポリウレタンウレア水性分散液を製造するために使用した。
2,000mlステンレススチールビーカーに、約700グラムの脱イオン水、約15グラムのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、および約10グラムのトリエチルアミン(TEA)を装入した。この混合物を次に氷/水で約5℃に冷却し、回転子/固定子混合ヘッド付き高剪断実験室ミキサー(ロス、モデル(Ross,Model)100LC))で約5,000rpmで約30秒間混合した。実施例1のようなやり方で製造した、そして金属管状シリンダー中に含有される粘稠なプレポリマーを、空気加圧で柔軟なチューブによって水溶液中の混合ヘッドの底部に加えた。プレポリマーの温度を約50℃?約70℃に維持した。押し出されたプレポリマー流れを分散させ、約5,000rpmの連続混合下に水で鎖延長させた。約50分の期間に、約540グラムの総量のプレポリマーを導入し、水に分散させた。プレポリマーを加え、そして分散させた直後に、分散混合物に、約2グラムのアディティブ65(ダウ・コーニング(登録商標)、ミシガン州ミッドランド(Dow Corning,Midland Michigan)から市販されている)および約6グラムのジエチルアミン(DEA)を装入した。反応混合物を次に約もう30分間混合した。生じた無溶媒の水性分散液は乳白色であり、安定であった。分散液の粘度を、水性分散液の約2.0重量%のレベルでのハウセイン(Hauthane)HA増粘剤900(ハウスウェイ、マサチューセッツ州リン(Hauthway,Lynn,Massachusetts)から市販されている)の添加および混合で調節した。粘稠な分散液を次に40ミクロンのベンディックス(Bendix)金属メッシュ・フィルターによって濾過し、フィルムキャスティングまたは積層使用のために室温で保管した。分散液は43%の固形分レベルおよび約25,000センチポアズの粘度を有した。この分散液からのキャストフィルムは柔らかく、粘着性で、そしてエラストマーであった。)

テ.[000131] <【0118】>
「Example 15
The filtered aqueous dispersion as prepared in Example 11 was used to coat films on silicone coated release paper, with a continuous 12-inch (30 cm) laboratory reverse roll coater. The coater was equipped with a 3-zone drying oven, with the temperature settings at about 60°C, 75°C and 120°C, respectively. The total residence time of drying was about 6 minutes. The dried film of about 3-mil thick was wound up at a speed of about 2 meters per minute. The elastomeric film 12 was able to peel off from the release paper easily and used for laminations.」
( (実施例15)
実施例11で製造したような濾過した水性分散液を、連続の12インチ(30cm)実験室リバースロール・コーターで、シリコーンコーテッド剥離紙上にフィルムをコートするために使用した。コーターは、それぞれ、約60℃、75℃および120℃の温度設定の、3ゾーン乾燥オーブンを備えていた。乾燥の全滞留時間は約6分であった。約3ミル厚さの乾燥フィルムを約2メートル毎分のスピードで巻き取った。エラストマーフィルム12は容易に剥離紙から剥離することができ、積層のために使用した。)

ト.[000133]?[000134]<【0120】?【0122】>
「Example 17
The film on release paper 12 from Example 15 was placed onto the back of a 12 inch x 12 inch (30 cm x 30 cm) warp knit nylon with spandex fabric 14. The fabric/film/release paper sandwich was fed into a Hashima HP-400C Belt Oven Laminator (Hashima Co., Ltd , Gifu-City Japan, 058-245-4501) and laminated at 165°C, with a 20 second residence time and a pressure setting of P=1, 16, as shown by path 11a in FIG. 1. The release paper was removed, leaving film/fabric laminate stretch article 18a.

Table 2


Example 18
The laminated stretch article 18a was covered with another 12 inch x 12 inch (30 cm x 30 cm) piece of warp knit nylon spandex fabric. The fabric/film/fabric sandwich was fed into the Hashima laminator and laminated at 165°C, with a 20 second residence time and a pressure setting of P=1 , to give stretch article 24a. The peel strength for Example 18 was 2.56 lb/in, see Table 2.」
( (実施例17)
実施例15からの剥離紙12上のフィルムを、12インチ×12インチ(30cm×30cm)縦編スパンデックス14とのナイロン布の裏面上へ置いた。布/フィルム/剥離紙サンドイッチを羽島HP-400Cベルトオーブン積層機(Hashima HP-400C Belt Oven Laminator)(羽島株式会社(Hashima Co.,Ltd)、日本国岐阜市)、058-245-4501)へフィードし、図1の経路11a、16で示されるように、20秒の滞留時間およびP=1の圧力設定で、165℃で積層した。剥離紙を取り除き、フィルム/布ラミネート・ストレッチ品18aを残した。

【表2】



(実施例18)
積層ストレッチ品18aを縦編ナイロン・スパンデックス布の別の12インチ×12インチ(30cm×30cm)片でカバーした。布/フィルム/布サンドイッチを羽島積層機へフィードし、20秒の滞留時間およびP=1の圧力設定で、165℃で積層してストレッチ品24aを与えた。実施例18についての剥離強度は2.56ポンド/インチであった。表2を参照されたい。)

ナ.上記記載から、1)有機溶媒を実質的に含んでおらず(上記ア、キ、コ、サを参照)、2)1.8?2.6の%NCOを有し(上記コを参照)、3)数平均分子量が1,400?2,400であるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)(上記イを参照)と、4,4'-及び2,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体との混合物であり、前記4,4'-MDI対2,4'-MDI異性体のモル比が65:35?35:65である混合物と、成分(b)のMDI異性体混合物と反応し得るヒドロキシ基、及び(ii)中和すると塩を生成することができ、かつ、MDI異性体混合物と反応することができない少なくとも一種のカルボン酸基を含んで成る少なくとも1種のジオール化合物とを含む(上記ア、等を参照)、ことを要件とするプレポリマーが把握される。
また、この要件を満たすプレポリマー(上記チを参照)を用いたポリウレタンウレアの水性ポリウレタン分散液から得られたフィルム(上記ウ、エ、オ、ツ及びテを参照)と縦編スパンデックスのナイロン布とを積層したストレッチ品18a、及び、このストレッチ品と縦編ナイロン・スパンデックス布とを積層したストレッチ品24a(上記トを参照)が把握される。
そして、このストレッチ品18a、24aは、衣類用を含む様々な用途の布である(上記セ、ソを参照)ことが把握される。

上記事項を整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ストレッチ品24aであって、
縦編ナイロン・スパンデックス布と、
フィルムと縦編スパンデックスのナイロン布とを積層したストレッチ品18aとからなり、
前記ストレッチ品24aは、衣類用を含む様々な用途の布であり、
前記フィルムが、プレポリマーを用いたポリウレタンウレアの水性ポリウレタン分散液から得られたものであり、
前記プレポリマーが、有機溶媒を実質的に含んでおらず、かつ、1.8?2.6の%NCOを有しており、
(a)数平均分子量が1,400?2,400であるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)と、
(b)4,4'-及び2,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体との混合物であり、前記4,4'-MDI対2,4'-MDI異性体のモル比が65:35?35:65である混合物と、
(c)(i)成分(b)のMDI異性体混合物と反応し得るヒドロキシ基、及び(ii)中和すると塩を生成することができ、かつ、MDI異性体混合物と反応することができない少なくとも一種のカルボン酸基を含んで成る少なくとも1種のジオール化合物とを含む、
ストレッチ品24a

(3)対比
引用発明の「ストレッチ品24a」は、「縦編ナイロン・スパンデックス布」と、「フィルムと縦編スパンデックスのナイロン布とを積層したストレッチ品18aとからなり」、「衣類用を含む様々な用途の布であ」るから、多重層の製品といえ、かつ、衣類用繊維布といえるものである。
ゆえに、引用発明の「ストレッチ品24a」、は、本願発明の「多重層製品」に相当し、引用発明の「縦編ナイロン・スパンデックス布」と、本願発明の「少なくとも二つの層」とは、「層」という限りにおいて一致する。

引用発明の「フィルム」は、「プレポリマーを用いたポリウレタンウレアの水性ポリウレタン分散液から得られたもの」であるから、本願発明の「少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルム」に相当し、引用発明の「フィルムと縦編スパンデックスのナイロン布とを積層したストレッチ品18a」は、本願発明の「繊維布に、被覆、接合又は積層化された、少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルム」に相当し、引用発明の「ポリウレタンウレアの水性ポリウレタン分散液」は、本願発明の「ポリウレタン尿素の水性分散物」に相当する。

引用発明の「プレポリマー」と本願発明の「予備重合体」とは、「(a)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)と、(b)4,4'-及び2,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体との混合物であり、前記4,4'-MDI対2,4'-MDI異性体のモル比が65:35?35:65である混合物と、(c)(i)成分(b)のMDI異性体混合物と反応し得るヒドロキシ基、及び(ii)中和すると塩を生成することができ、かつ、MDI異性体混合物と反応することができない少なくとも一種のカルボン酸基を含んで成る少なくとも1種のジオール化合物とを含んで成る予備重合体」という限りにおいて一致する。

してみれば、両者の一致点および相違点は以下のとおりである。

《一致点》
多重層製品であって、
層と、
繊維布に、被覆、接合又は積層化された、少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルムとを備えてなるものであり、
前記多重層製品が、衣類用繊維布であり、
前記フィルムが、ポリウレタン尿素の水性分散物から得られたものであり、
前記水性分散物が、有機溶媒を実質的に含んでおらず、かつ、1.8?2.6の%NCOを有してなるものであり、
前記水性分散物が、
(a)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)と、
(b)4,4'-及び2,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体との混合物であり、前記4,4'-MDI対2,4'-MDI異性体のモル比が65:35?35:65である混合物と、
(c)(i)成分(b)のMDI異性体混合物と反応し得るヒドロキシ基、及び(ii)中和すると塩を生成することができ、かつ、MDI異性体混合物と反応することができない少なくとも一種のカルボン酸基を含んで成る少なくとも1種のジオール化合物とを含んで成る予備重合体を含んで構成されてなる、
多重層製品。

《相違点1》
「層」が、本願発明では「二つの繊維布層、二つの発泡体層、繊維布層と発泡体の層、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてなる」、「少なくとも二つの層」であるのに対し、引用発明では「縦編ナイロン・スパンデックス布」である点。

《相違点2》
「少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルム」が、本願発明では、「最外側の層であ」るのに対し、引用発明では、そのようには特定されていない点。

《相違点3》
「予備重合体」に含まれる「(a)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)」の数平均分子量が、本願発明では、「1800」であるのに対し、引用発明では、「1,400?2,400」である点。

(4)判断
ア.《相違点1》について
ポリウレタンフィルムを含む多重層の衣類用製品において、繊維布に被覆、接合又は積層されたポリウレタン層に対して積層される層を、繊維布層と発泡体層等からなる二つの層とすることは、例えば、実願昭60-44582号(実開昭61-159319号)のマイクロフィルム(第1図に示される、表地(1)に積層されたアミノ酸変性ポリウレタン製のフィルム層(2)に対して、発泡体層(3)及び裏地(4)を積層したものを参照)や、特開平10-292103号公報(ポリウレタン組成物製の無孔質層10、発泡体層5、繊維質基材層1からなる人工皮革用の3層構造積層体11、特に、請求項4、第17頁31欄26?39行、図1を参照)にも記載されているように、本願の優先日前に周知の技術であり、その採否は多重層の衣類用製品の具体的な用途等を考慮して当業者が適宜決定し得たことである。
してみると、引用発明において、上記周知技術を採用し、「縦編ナイロン・スパンデックス布」に、発泡体層等を積層することで、その層構造を二つの層とすることは、当業者が容易になし得たことというべきである。

イ.《相違点2》について
本願発明において、「少なくとも一つのポリウレタン尿素のフィルム」が、「最外側の層であ」ることに関し、本願明細書の段落[0027]には「ポリウレタン尿素組成物を外側の表面に含ませると、多くの有利な機能を得ることができる。例えば、ポリウレタン尿素組成物は摩擦が増加した固定材または区域となり、ポリウレタン尿素組成物を含む製品と外側の基質との間の相対的な運動を減少させる。このことは、製品が皮膚に接触する面を含む下着の場合に特に有用である(この場合着用者の皮膚が基質である)」と説明されている。
一方、引用発明に関し、刊行物1には「Another aspect of the invention is an article comprising the shaped article and a substrate wherein the shaped article and the substrate are attached to form a laminate whereby coefficient of friction of the elastic laminate is greater than that of the substrate alone. Examples of this are a waistband with a coating or film comprising the aqueous polyurethane dispersion which prevents slippage of the garment from another garment such as a blouse or shirt, or alternately prevents slippage of the waistband on the skin of the garment wearer.」(本発明の別の態様は、造形品および基材が貼り付けられてラミネートを形成し、それによって弾性ラミネートの摩擦係数が基材だけのそれより大きい、造形品および基材を含む物品である。これの例は、ブラウスまたはシャツなどの別の衣類からの衣類の滑りを防ぐ、あるいはまた衣類着用者の皮膚上のウエストバンドの滑りを防ぐ、水性ポリウレタン分散液を含むコーティングまたはフィルム付きウエストバンドである。)との記載がある(上記(2)ソを参照)ことから、刊行物1には、引用発明の「プレポリマーを用いたポリウレタンウレアの水性ポリウレタン分散液から得られたフィルム」を別の衣類や皮膚との滑りを防ぐものとして機能させることが示唆されているといえる。
してみると、この示唆に基づいて、引用発明の「プレポリマーを用いたポリウレタンウレアの水性ポリウレタン分散液から得られたフィルム」を最外側の層となるように配置することは、当業者が容易になし得たことというべきである。

また、ポリウレタン層を含む多重層の衣類用製品において、ポリウレタン層を最外層とすることは、例えば、前記特開平10-292103号公報や特開2004-91796号公報(ポリウレタンエラストマー製の無孔質層10、発泡体層5、繊維質基材層1からなる人工皮革用の3層構造積層体11、特に、請求項5?7、段落[0060]?[0070]、図1を参照)にも記載されているように、本願の優先日前に周知の技術であり、その採否は多重層の衣類用製品の具体的な用途等を考慮して当業者が適宜決定し得たことである。
してみると、引用発明において、上記周知技術を採用し、「プレポリマーを用いたポリウレタンウレアの水性ポリウレタン分散液から得られたフィルム」を最外側の層となるように配置することは、周知の技術に基づいて、当業者が容易になし得たことでもある。

ウ.《相違点3》について
本願発明において「(a)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)」の数平均分子量を「1800」と特定したことについて、本願明細書の発明の詳細な説明には「本発明においては直鎖の二官能性重合体エーテルポリオールが好適であり、分子量が約1,700?約2,100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、例えば二官能性のTerathane(R) 1800(Invista)が特に好適である。」(段落[0048]を参照)と説明されている。
一方、引用発明において「1,400?2,400」とされた「(a)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)」の数平均分子量について、刊行物1には、本願明細書の段落[0048]に「好適」と記載されたものと同じものが好ましいものとして例示され(上記(2)のク、タを参照)、実施例としても採用されている(上記(2)のチを参照)。
したがって、刊行物1におけるこれらの記載から、引用発明の「(a)ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)」の数平均分子量を「1800」とすることは、当業者が自然になし得たことというべきである。

エ.請求人の主張について
請求人は、平成28年1月27日付け意見書の「5.(2-1)?(3)」において、本願発明の進歩性についておおむね以下(ア)、(イ)を主張している。
(ア)刊行物1は、上記プレポリマー及びそれを用いた水性ポリウレタン分散液を開示するに止まっており、本願発明の如く、『衣類用繊維布である多重層製品』については開示も示唆も全くなされていない旨
(イ)刊行物1では、実施例17と実施例18とで調整したラミネートを挟んだ積層体について行った通気性評価(実施例47、実施例48)は、0.23cfm、0.32cfmであったとされ、本願発明における通気性とは、約1000倍程度の差が生じている旨

しかしながら、主張(ア)については、上述した(上記(2)のセ、ソ、ナを参照)ように、引用発明も衣類用であるから、上記主張(ア)は失当である。
また、主張(イ)についても、上述した(上記第3.の理由1.の第2、上記第4.の1.を参照)ように、「空気透過性」は、「基質」となる「発泡体」や「繊維布」の材質や層構造等の違いにより大きく影響を受けるものと考えられるところ、本願発明の実施例に関する説明(明細書の段落[0100]?[0108]を参照)において、空気透過性について試験した結果が示される[表1]の「基質」欄に記載された「発泡体」や「繊維布」の材質や層構造等について本願の明細書には一切説明されていないから、上記「本願発明における通気性とは、約1000倍程度の差が生じている」ことを、本願発明の進歩性を推認する根拠とすることはできないから、上記主張(イ)も失当であるといわざるをえない。

オ.本願発明の奏する作用効果について
本願発明の奏する作用効果は、上記エ(主張(イ)について)で述べたように、格別顕著なものとは認められず、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できたものといえる。

カ.小括
以上述べてきたとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものである。
したがって、仮に意見書に記載されたとおりに補正されていたとしても、理由2(特許法第29条第2項違反)は、依然として解消されない。


第6.むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-15 
結審通知日 2016-03-22 
審決日 2016-04-06 
出願番号 特願2010-507501(P2010-507501)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B32B)
P 1 8・ 536- WZ (B32B)
P 1 8・ 537- WZ (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横田 晃一  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 熊倉 強
渡邊 豊英
発明の名称 熱で賦活されたポリウレタン尿素組成物を有する積層化された繊維布構造物  
代理人 北野 健  
代理人 伊藤 奈月  
代理人 大野 聖二  
代理人 堅田 健史  
代理人 大谷 寛  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ