• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1318477
審判番号 不服2015-8516  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-07 
確定日 2016-09-06 
事件の表示 特願2010- 58301「光フィルター並びにそれを用いた分析機器及び光機器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月29日出願公開、特開2011-191554、請求項の数(26)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月15日の出願であって、平成25年3月13日に特許請求の範囲が補正され、平成26年3月26日付けで拒絶理由が通知され、同年5月30日に特許請求の範囲が補正され、同年9月16日付けで拒絶理由が通知され、同年11月21日に特許請求の範囲が補正され、平成27年1月19日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年5月7日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成28年3月9日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月16日に特許請求の範囲が補正されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?26に係る発明は、平成28年5月16日に補正された特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定されるものであり、そのうちの請求項1に係る発明、請求項26に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明26」という。また、本願の請求項2?25に係る発明を、それぞれ「本願発明2」?「本願発明25」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板が前記第2基板と対向する第1対向面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板が前記第1基板と対向する第2対向面に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
平面視で前記第1反射膜の外周よりも外側における前記第1対向面に設けられた第1電極と、
前記第2基板の前記第2対向面に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され、
前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心と前記第2反射膜の中心とを結ぶ中心線に対して、線対称に配置され、
前記第2セグメント電極は、前記中心線に対して、線対称に配置され、
前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の双方と前記第2電極との間に電位差があるときの第2ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更され、前記初期ギャップを前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくしたことを特徴とする光フィルター。」

「【請求項26】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
前記第1基板に設けられ、平面視において前記第1反射膜の外周よりも外側に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され、
前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心を通る前記第1反射膜の法線に対して、線対称に配置され、
前記第2セグメント電極は、前記法線に対して、線対称に配置され、
前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の双方と前記第2電極との間に電位差があるときの第2ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更され、前記初期ギャップを前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくしたことを特徴とする光フィルター。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願の請求項1?26に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開2001-221913号公報
刊行物2:米国特許出願公開第2007/0242920号明細書
刊行物3:特開2007-219483号公報

「基板に段差を設けて、反射膜間の距離を変更する」ことは、刊行物2([0041]、FIG.1等を参照。)に記載された発明から当業者にとって容易である。
刊行物1に記載された発明は、絶縁部同士を接触させるものであって、図4(b)の状態においても、h4という間隔が形成されているのであるから、基板に段差を設けて反射膜間の距離を変更するという技術思想を適用するにあたっての特段の阻害要因はなく、刊行物1に記載された発明において、第一絶縁部2bと第二絶縁部3bの厚み等を適宜調整することにより、刊行物2に記載の「基板に段差を設けて、反射膜間の距離を変更する」という技術を適用して、本願発明で特定されている「前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくした」という設計を得ることに格別の困難があったとはいえない。また、当該設計に限定することにより、当業者の予想を超える格別の効果を奏するものでもない。

2 原査定の理由についての合議体の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 刊行物1:特開2001-221913号公報
刊行物1には、図とともに次の記載がある(審決注:下線は合議体が付与した。以下、同じ。)。

「【0033】図3は本発明の第二実施例の構成を示す断面図である。尚、以下の図面において、図1と重複する部分は同一番号を付してその説明は適宜に省略する。
【0034】図3において、シリコンの基板1上に第一ミラー2が形成され、第二ミラー3は、第一ミラー2上に形成されたシリコン酸化膜からなる絶縁膜4と、後述の第二電極3aと、後述の第二絶縁部3bとを介して第一ミラー2に対向配置されている。
【0035】第二ミラー3の第一ミラー2と対向する面には、第二電極3aと第二絶縁部3bが第二ミラー3から第一ミラー2の方向に順に形成され、この第二絶縁部3bと第二電極3aの中心部には孔5が形成され、その孔5の下方部は光学的活性領域となっている。
【0036】そして、第一ミラー2と第二ミラー3との間には、孔5の下方にギャップh1が形成され、第二ミラー3は第一ミラー2の方向に変位可能となっている。
【0037】そして、導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)は、光学的活性領域の中心より外側へ順に左右対称に第一ミラー2上に設けられ、その高さは光学的活性領域の中心から順に高くなり、全体として階段状となる第一電極2aを形成している。
【0038】また、導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)は、その周囲が絶縁層2b_(1)で覆われて互いに絶縁され、絶縁層2b_(1)の第二絶縁部3bと対向する面に相当する部分は、第一絶縁部2bとなっている。
【0039】第一ミラー2と第二ミラー3は、例えば多結晶シリコンであり、第一電極を構成する導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)と第二電極3aは、例えば不純物濃度の高い多結晶シリコンであり、第一絶縁部2bと第二絶縁部3bは、例えば窒化シリコンである。
【0040】次に、動作を説明する。図4(a),(b)は図3に示したファブリペローフィルタの動作説明図である。
【0041】図4(a)において、第一電極2aの導電部2a_(3)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、導電部2a_(3)と第二電極3aとの間に静電吸引力が発生し、第二ミラー3は第一ミラー2の方向に変位し、導電部2a_(3)の直上の第一絶縁部2bと第二絶縁部3bが接触することとなり、第二ミラー3は静止する。この場合、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、初期の長さh1よりも短いh2に固定される。
【0042】また、図4(b)において、第一電極2aの導電部2a_(1)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、導電部2a_(1)と第二電極3aとの間に静電吸引力が発生し、第二ミラー3は第一ミラー2の方向に変位し、導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)の直上の第一絶縁部2bと第二絶縁部3bが階段状に接触することとなり、第二ミラー3は静止する。この場合、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、h2よりも短いh4に固定される。
【0043】同様に、第一電極2aの導電部2a_(2)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、導電部と2a_(2)第二電極3aとの間に静電吸引力が発生し、第二ミラー3は第一ミラー2の方向に変位し(図示しない)、導電部2a_(2),2a_(3)の直上の第一絶縁部2bと第二絶縁部3bが階段状に接触することにより、第二ミラー3は静止する。この場合、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、h2とh4の中間の値h3(図示しない)に固定される。
【0044】このようにギャップの長さをh1からh4までの4種類に設定することができるので、そのギャップに応じた4種類の波長近傍の赤外線を透過させるファブリペローフィルタを実現することができる。
【0045】また、上記の説明においては、導電部の数が3つの場合について説明したが、導電部の数はこれに限定されるものではなく、任意の複数の導電部を形成すれば、その数に応じた複数の波長の赤外線を透過させるファブリペローフィルタを実現することができる。」

イ 刊行物1に記載の発明
以上をまとめると、刊行物1には、
「シリコンの基板1上に第一ミラー2が形成され、
第二ミラー3は、第一ミラー2上に形成されたシリコン酸化膜からなる絶縁膜4と、第二電極3aと、第二絶縁部3bとを介して第一ミラー2に対向配置されており、
第二絶縁部3bと第二電極3aの中心部には孔5が形成され、その孔5の下方部は光学的活性領域となっており、
第一ミラー2と第二ミラー3との間には、孔5の下方にギャップh1が形成され、第二ミラー3は第一ミラー2の方向に変位可能となっており、
導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)は、光学的活性領域の中心より外側へ順に左右対称に第一ミラー2上に設けられ、その高さは光学的活性領域の中心から順に高くなり、全体として階段状となる第一電極2aを形成しており、
導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)は、その周囲が絶縁層2b_(1)で覆われて互いに絶縁され、絶縁層2b_(1)の第二絶縁部3bと対向する面に相当する部分は、第一絶縁部2bとなっており、
第一電極2aの導電部2a_(3)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、導電部2a_(3)と第二電極3aとの間に静電吸引力が発生し、第二ミラー3は第一ミラー2の方向に変位し、導電部2a_(3)の直上の第一絶縁部2bと第二絶縁部3bが接触して、第二ミラー3は静止し、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、初期の長さh1よりも短いh2に固定され、
第一電極2aの導電部2a_(1)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、導電部2a_(1)と第二電極3aとの間に静電吸引力が発生し、第二ミラー3は第一ミラー2の方向に変位し、導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)の直上の第一絶縁部2bと第二絶縁部3bが階段状に接触することとなり、第二ミラー3は静止し、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、h2よりも短いh4に固定され、
第一電極2aの導電部2a_(2)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、導電部と2a_(2)第二電極3aとの間に静電吸引力が発生し、第二ミラー3は第一ミラー2の方向に変位し、導電部2a_(2),2a_(3)の直上の第一絶縁部2bと第二絶縁部3bが階段状に接触することにより、第二ミラー3は静止し、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、h2とh4の中間の値h3に固定され、
このようにギャップの長さを複数種類に設定することができるので、そのギャップに応じた複数種類の波長近傍の赤外線を透過させるファブリペローフィルタ。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

(2)本願発明26について
ア 対比
(ア)本願発明26と引用発明1を対比する。

a 引用発明1の「シリコンの基板1」、「第二絶縁部3b」、「第一ミラー2」、「第二ミラー3」、「第一電極2a」、「第二電極3a」及び「ファブリペローフィルタ」は、それぞれ本願発明26の「第1基板」、「第2基板」、「第1反射膜」、「第2反射膜」、「第1電極」、「第2電極」及び「光フィルター」に相当する。

b 引用発明1は、「導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)は、光学的活性領域の中心より外側へ順に左右対称に第一ミラー2上に設けられ、その高さは光学的活性領域の中心から順に高くなり、全体として階段状となる第一電極2aを形成して」いるから、引用発明1の「導電部2a_(1)」及び「導電部2a_(3)」は、それぞれ本願発明26の「第1セグメント電極」及び「第2セグメント電極」に相当する。
したがって、本願発明26と引用発明1とは、「前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され、前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心を通る前記第1反射膜の法線に対して、線対称に配置され、前記第2セグメント電極は、前記法線に対して、線対称に配置され」る点で一致する。

c 引用発明1は、第一電極2aの導電部2a_(3)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、…、第二ミラー3は静止し、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、初期の長さh1よりも短いh2に固定され、第一電極2aの導電部2a_(1)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、…、第二ミラー3は静止し、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、h2よりも短いh4に固定され、第一電極2aの導電部2a_(2)と第二電極3aとの間に電位差を与えると、…、第二ミラー3は静止し、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、h2とh4の中間の値h3に固定され、このようにギャップの長さを複数種類に設定することができるので、そのギャップに応じた複数種類の波長近傍の赤外線を透過させる」ものであるから、本願発明26と引用発明1とは、「前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更される」点で一致する。

(イ)したがって、本願発明26と引用発明1とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
前記第1基板に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され、
前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心を通る前記第1反射膜の法線に対して、線対称に配置され、
前記第2セグメント電極は、前記法線に対して、線対称に配置され、
前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更される光フィルター。」

(ウ)一方、本願発明26と引用発明1とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
第1電極について、本願発明26では、「平面視において前記第1反射膜の外周よりも外側に設けられた」ものであるのに対し、引用発明1では、第一電極2aについてそのような特定はなされていない点。

<相違点2>
第1反射膜と第2反射膜との間のギャップについて、本願発明26では、「前記初期キャップを前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくした」ものであるのに対し、引用発明1では、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの初期の長さh1と、第一電極2aと第二電極3aとの間のギャップとの大小関係について特定されていない点。

<相違点3>
フィルター特性について、本願発明26では、「前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の双方と前記第2電極との間に電位差があるときの第2ギャップとに変化させる」ことで、変更されるものであるのに対し、引用発明1では、第一ミラー2と第3ミラー3とのギャップの長さは、第一電極2aの導電部2a_(1),2a_(3)の一方と第二電極3aとの間に電位差を与えると、それぞれ、初期の長さh1よりも短いh2またはh4とに固定されるものであることについては記載されているものの、第一電極2aの導電部2a_(1),2a_(3)の双方と第二電極3aとの間に電位差を与えることについては特定されていない点。

イ 判断
(ア)先ず、上記相違点2について検討する。

a 引用発明1において、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの初期の長さh1と、第一電極2aと第二電極3aとの間のギャップとの大小関係について特定されていないものの、当該ギャップの初期の長さh1は、第一電極2aと第二電極3aとの間のギャップよりも、少なくとも第一電極2aと第二電極3aの厚みの分だけ大きくされていることは明らかである。

b そして、引用発明1は、「…に電位差を与えると、…に変位し、導電部2a_(1),2a_(2),2a_(3)の直上の第一絶縁部2bと第二絶縁部3bが階段状に接触することとなり、…、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、h2よりも短いh4に固定され、…に電位差を与えると、…に変位し、導電部2a_(2),2a_(3)の直上の第一絶縁部2bと第二絶縁部3bが階段状に接触することにより、…、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さは、h2とh4の中間の値h3に固定され」るものであるから、第一絶縁部2bと第二絶縁部3bとを接触させて第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの長さを調整するという構造のものである。
そうすると、引用発明1において、上記ギャップの初期の長さh1を、第一電極2aと第二電極3aとの間のギャップよりも小さくなるよう変更するということ、すなわち、第一電極2aと第二電極3aとの間のギャップを、上記ギャップの初期の長さh1よりも大きくなるよう変更するということは、発生させる静電吸引力を弱めることとなるから、動機づけがあるとはいえず、そのような変更が当業者にとって容易に想到し得ることであるとはいえない。

c また、第1反射膜と第2反射膜との間の初期ギャップを第1電極と第2電極との間のギャップよりも小さくしたことについて、本願明細書の【0008】には、「本発明の一態様のように電極間ギャップGを第1,第2反射膜間のギャップよりも広げておくと、電極間ギャップの単位変化量に対する静電引力Fを変化は小さくすることができる。よって静電引力Fの大きさを制御し易くすることができる。」と記載されているところ、このような効果について当業者が予測可能であるとする根拠もない。

d したがって、引用発明1において、相違点2に係る本願発明26の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

e 一方、刊行物2に記載された発明において、「基板10」、「基板12」、「反射面領域20」、「反射面領域22」、「電極24」、「電極26」、「光学ギャップG_(opt)」、「電極ギャップG_(elec)」及び「ファブリペローフィルタ」は、本願発明26の「第1基板」、「第2基板」、「第1反射膜」、「第2反射膜」、「第1電極」、「第2電極」、「前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップ」、「前記第1電極と前記第2電極との間のギャップ」及び「光フィルター」にそれぞれ相当するといえるから、刊行物2には、相違点2に係る本願発明26の構成が開示されている。
しかしながら、上記bにおいて検討したように、引用発明1において、「第一電極2aと第二電極3aとの間のギャップを、上記ギャップの初期の長さh1よりも大きくなるよう変更するということは、発生させる静電吸引力を弱めることとなるから、動機づけがあるとはいえず、そのような変更が当業者にとって容易に想到し得ることであるとはいえない」から、引用発明1において、刊行物2に記載された発明を組み合わせることは、阻害要因があるといえる。

f また、刊行物3の段落【0031】、【0052】、図3等を参照すると、刊行物3には、「第1のギャップG1の大きさ(すなわち、固定反射膜35と可動反射膜25との間の距離)」(本願発明26の「前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップ」に相当する。)は、第1のギャップG1を可変とするための可動部21と第1の駆動電極33との間に形成される第2のギャップG2の大きさよりも大きい旨が開示されている。すなわち、刊行物3には、相違点2に係る本願発明26の構成は記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明1において、刊行物3を参照したとしても、相違点2に係る本願発明26の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

g したがって、引用発明1において、刊行物2、3を参照したとしても、相違点2に係る本願発明26の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(イ)よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明26は、引用発明1及び刊行物2、3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本願発明1?25について
ア 本願発明1について
(ア)先ず、本願発明26は、分説して再掲すると、以下のとおりである。
「【請求項26】
(A)第1基板と、
(B)前記第1基板と対向する第2基板と、
(C)前記第1基板に設けられた第1反射膜と、
(D)前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
(E)前記第1基板に設けられ、平面視において前記第1反射膜の外周よりも外側に設けられた第1電極と、
(F)前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
(G)前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され、
(H)前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心を通る前記第1反射膜の法線に対して、線対称に配置され、
(I)前記第2セグメント電極は、前記法線に対して、線対称に配置され、
(J)前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の双方と前記第2電極との間に電位差があるときの第2ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更され、前記初期ギャップを前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくしたことを特徴とする光フィルター。」(審決注:合議体にて分説した。以下、同じ。)

一方、本願発明1は、分説して再掲すると、以下のとおりである。
「【請求項1】
(A)第1基板と、
(B)前記第1基板と対向する第2基板と、
(C’)前記第1基板が前記第2基板と対向する第1対向面に設けられた第1反射膜と、
(D’)前記第2基板が前記第1基板と対向する第2対向面に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
(E’)平面視で前記第1反射膜の外周よりも外側における前記第1対向面に設けられた第1電極と、
(F’)前記第2基板の前記第2対向面に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
(G)前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され、
(H’)前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心と前記第2反射膜の中心とを結ぶ中心線に対して、線対称に配置され、
(I’)前記第2セグメント電極は、前記中心線に対して、線対称に配置され、
(J)前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の双方と前記第2電極との間に電位差があるときの第2ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更され、前記初期ギャップを前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくしたことを特徴とする光フィルター。」

(イ)a 本願発明1と引用発明1を対比する。
上記(2)ア(ア)a?cにおける検討、及び本願発明1の発明特定事項(A)、(B)、(G)、(J)は、それぞれ本願発明26の発明特定事項(A)、(B)、(G)、(J)と一致し、本願発明1の発明特定事項(C’)ないし(F’)は、それぞれ本願発明26の発明特定事項(C)ないし(F)を限定したものであることは明らかであることを勘案すると、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板が前記第2基板と対向する第1対向面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板が前記第1基板と対向する第2対向面に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
前記第1対向面に設けられた第1電極と、
前記第2基板の前記第2対向面に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され、
前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更される光フィルター。」

b 一方、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
<相違点ア>
第1電極について、本願発明1では、「平面視で前記第1反射膜の外周よりも外側における前記第1対向面に設けられた」ものであるのに対し、引用発明1では、第一電極2aについてそのような特定はなされていない点。

<相違点イ>
第1反射膜と第2反射膜との間のギャップについて、本願発明1では、「前記初期キャップを前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくした」ものであるのに対し、引用発明1では、第一ミラー2と第二ミラー3とのギャップの初期の長さh1と、第一電極2aと第二電極3aとの間のギャップとの大小関係について特定されていない点。

<相違点ウ>
フィルター特性について、本願発明1では、「前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の双方と前記第2電極との間に電位差があるときの第2ギャップとに変化させる」ことで、変更されるのに対し、引用発明1では、第一ミラー2と第3ミラー3とのギャップの長さは、第一電極2aの導電部2a_(1),2a_(3)の一方と第二電極3aとの間に電位差を与えると、それぞれ、初期の長さh1よりも短いh2またはh4とに固定されるものであることについては記載されているものの、第一電極2aの導電部2a_(1),2a_(3)の双方と第二電極3aとの間に電位差を与えることについては特定されていない点。

<相違点エ>
本願発明1では、「前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心と前記第2反射膜の中心とを結ぶ中心線に対して、線対称に配置され、前記第2セグメント電極は、前記中心線に対して、線対称に配置され」るのに対し、引用発明1では、第一電極2aの導電部2a_(2)と導電部2a_(3)が、第一ミラー2の中心と第二ミラー3の中心とを結ぶ中心線に対して、線対称に配置されたものであるか否かは不明である点。

(ウ)a 先ず、上記相違点イについて検討する。

(a)<相違点イ>は、上記(2)ア(ウ)の<相違点2>と一致する。
したがって、上記(2)イ(ア)において、相違点2について検討したのと同様な理由により、引用発明1において、相違点イに係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(b)一方、刊行物2に記載された発明において、「基板10」、「基板12」、「反射面領域20」、「反射面領域22」、「電極24」、「電極26」、「光学ギャップG_(opt)」、「電極ギャップG_(elec)」及び「ファブリペローフィルタ」は、本願発明1の「第1基板」、「第2基板」、「第1反射膜」、「第2反射膜」、「第1電極」、「第2電極」、「前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップ」、「前記第1電極と前記第2電極との間のギャップ」及び「光フィルター」にそれぞれ相当するといえるから、刊行物2には、相違点イに係る本願発明1の構成が開示されている。
しかしながら、上記(2)イ(ア)bにおいて検討したように、引用発明1において、「第一電極2aと第二電極3aとの間のギャップを、上記ギャップの初期の長さh1よりも大きくなるよう変更するということは、発生させる静電吸引力を弱めることとなるから、動機づけがあるとはいえず、そのような変更が当業者にとって容易に想到し得ることであるとはいえない」から、引用発明1において、刊行物2に記載された発明を組み合わせることは、阻害要因があるといえる。

(c)また、刊行物3の段落【0031】、【0052】、図3等を参照すると、刊行物3には、「第1のギャップG1の大きさ(すなわち、固定反射膜35と可動反射膜25との間の距離)」(本願発明1の「前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップ」に相当する。)は、第1のギャップG1を可変とするための可動部21と第1の駆動電極33との間に形成される第2のギャップG2の大きさよりも大きい旨が開示されている。すなわち、刊行物3には、相違点イに係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明1において、刊行物3を参照したとしても、相違点イに係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(d)したがって、引用発明1において、刊行物2、3を参照したとしても、相違点イに係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

b よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び刊行物2、3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

イ 本願発明2?25について
本願発明2?25は、本願発明1の従属項である。
したがって、本願発明2?25は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用発明1及び刊行物2、3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)小括
したがって、本願発明1?26は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
本願の請求項1?26に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物A、Bに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物A:米国特許出願公開第2007/0242920号明細書
刊行物B:特開平10-78548号公報

マイクロ機械的構成の光変調器において、大きな薄膜変位を比較的低い電圧から発生させることが好ましいことは、本願の出願時点における技術常識であるから、刊行物Aに記載の発明に、刊行物Bに記載の電極を分割するという技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たものである。

2 当審拒絶理由についての合議体の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 刊行物A:米国特許出願公開第2007/0242920号明細書
刊行物Aには、図とともに次の記載がある(審決注:日本語訳は、合議体による。)。

「DETAILED DESCRIPTION
[0033] With reference to FIGS. 1-3, a tunable Fabry-Perot filter 8 is described. The Fabry-Perot filter 8 is a tunable optical interference filter or device. The terms "Fabry-Perot filter", "Fabry-Perot device", "optical interference filter", and "optical interference device" are used interchangeably herein. The Fabry-Perot filter 8 includes a pair of substrates 10, 12 having generally planar spaced-apart facing principal surfaces 14, 16 that include facing reflective surface regions 20, 22 that are typically thin metallic films or distributed Bragg reflectors having layer thicknesses and periodicity selected to make the reflectors at least partially reflective at least over a selected wavelength range. For operation in reflection mode, at least one of the substrates should be light-transmissive at least over the selected wavelength range. For operation in transmission mode, both substrates should be light-transmissive at least over the selected wavelength range. The illustrated embodiments are designed to operate in a light transmission mode. The facing reflective surface regions 20, 22 define an optical gap G_(opt) therebetween. The optical gap is adjustable so as to tune the resonant wavelength of the Fabry-Perot filter 8.
[0034] …
[0035] Recessed electrodes 24, 26 are formed in recesses 28, 30 of the generally planar spaced-apart facing principal surfaces 14, 16 , respectively. As a result of the recesses 28, 30, an electrode gap G_(elec) between the electrodes 24, 26 of the generally planar spaced-apart facing principal surfaces 14, 16 is larger than the optical gap G_(opt) between the facing reflective surface regions 20, 22.
[0036] …
[0041] …In the Fabry-Perot filter 8, both electrodes 24, 26 are recessed in respective spaced-apart facing principal surfaces 14, 16; however, in other embodiments, the electrodes on only one of the two spaced-apart facing principal surfaces may be recessed, or none of the electrodes could be recessed. 」
(日本語訳:
詳細な説明
[0033] 図1-3を参照します。同調可能なファブリペローフィルタ8について説明します。ファブリペローフィルタ8は、同調可能な光干渉フィルタまたはデバイスです。用語「ファブリペローフィルタ」、「ファブリペローデバイス」、「光干渉フィルタ」、および「光干渉デバイス」は、本明細書中で交換可能に使用されます。ファブリペローフィルタ8は、概ね平面の離れて対向する主表面14,16を有する一対の基板10,12を含み、主表面14,16は対向する反射面領域20,22を含み、反射面領域20,22は、典型的には薄い金属膜または反射器を形成するように層厚と周期が選択された分布ブラッグ反射器であって、少なくとも選択された波長範囲にわたって少なくとも部分的に反射性です。反射モードで動作させるためには、基板の少なくとも一方が、少なくとも選択された波長範囲にわたって光透過性であるべきです。透過モードで動作させるには、両方の基板が、少なくとも選択された波長範囲にわたって光透過性であるべきです。図示した実施形態は、光透過モードで動作するように設計されています。対向する反射面領域20,22は、それらの間の光学ギャップG_(opt)を規定し、光学ギャップは、ファブリペローフィルタ8の共振波長を同調するように、調整可能です。
[0034] …
[0035] はめ込まれた電極24,26は、それぞれ概ね平面の離れて対向する主表面14,16のリセス28,30内に形成される。リセス28,30の結果として、概ね平面の離れて対向する主表面14,16の電極24,26の間の電極ギャップG_(elec)は、対向する反射面領域20,22の間の光学ギャップG_(opt)より大きい。
[0036] …
[0041] …ファブリペローフィルタ8では、両方の電極24,26が、それぞれ離れて対向する主表面14,16にはめ込まれています。しかしながら、他の実施形態では、2つの離れて対向する主表面の一方の電極のみが、はめ込まれてもよいし、両方の電極とも、はめ込まれていなくてもよい。)

「[0043] With reference to FIG. 5, a Fabry-Perot filter 218 is a modified version of the Fabry-Perot filter 8, which is modified in that a deformable connection 250 is formed differently from the deformable connection 50. Slots 254 are not formed all the way through the substrate 10, but rather are formed only partway through to leave deformable substrate portions 252. It is also contemplated for the slots 254 to be created from the other side of the substrate 10, so that the thinned region is on the opposite side of the substrate 10 from what is shown in FIG. 5. The thinned substrate regions 252 of thinned silica or other substrate material typically bend more readily than the thicker surrounding silica or other substrate material, so that the deformable substrate portions 252 act as a spring. To create a more flexible spring, a wider hole can be created, or the remaining thickness can be reduced. The tuning mechanics are relatively sensitive to the depth of etch, that is, to the thickness of the thinned substrate portions 252, since the stiffness of the thinned portions 252 is typically proportional to the thickness cubed.」
(日本語訳:
[0043] 図5を参照します。ファブリペローフィルタ218は、ファブリペローフィルタ8の修正版であって、変形可能な接続部250は、変形可能な接続部50と異なって形成されます。スロット254は、基板10すべてを通して形成されるのではなく、変形可能な基板部分252を残すように途中まで形成されます。スロット254は、基板10の他方の側から形成され、薄くされた領域は、図5に示されているものとは基板10の反対側にあることも考えられる。薄くされたシリカまたは他の基板材料の薄くされた基板の領域252は、一般に、より厚い周囲のシリカまたは他の基板材料よりもより容易に曲がり、変形可能な基板部分252は、バネのように振る舞います。より柔軟なバネを形成するために、幅広の穴を形成したり、残りの厚さを低減することができます。機械的同調は、エッチングの深さ、すなわち、薄くされた基板部分252の厚さに、比較的敏感で、薄くされた基板部分252の剛性は、一般に厚さの三乗に比例します。)

「1. A tunable Fabry-Perot filter comprising:
a pair of substrates having parallel generally planar facing principal surfaces including spaced-apart facing reflective surface regions that are at least partially reflective at least over a selected wavelength range, the spaced-apart facing reflective surface regions defining an optical gap therebetween, at least one substrate of the pair of substrates being light-transmissive at least over the selected wavelength range to enable optical coupling with the optical gap through the at least one substrate; and
electrodes disposed on the parallel generally planar facing principal surfaces of the substrates, the electrodes on the parallel generally planar facing principal surfaces, defining an electrode gap therebetween such that electrical biasing of the electrodes simultaneously modifies the optical and electrode gaps.

11. The tunable Fabry-Perot filter as set forth in claim 1 , wherein the electrode gap is larger than the optical gap by an amount effective to suppress pull-in instability of the tunable Fabry-Perot filter.」(claims)
(日本語訳:
1. 同調可能なファブリペローフィルタであって、
一対の基板であって、
前記一対の基板は、平行な概ね平面の対向する主表面を有し、
前記主表面は、少なくとも選択された波長範囲にわたって少なくとも部分的に反射性である離間して対向する反射面領域を含み、
前記離間して対向する反射面領域は、それらの間の光学ギャップを規定し、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板は、前記少なくとも選択された波長範囲にわたって光透過性であり、前記少なくとも一方の基板を介して前記光学ギャップとの光結合を可能にする、
一対の基板と、
電極であって、
前記電極は、前記基板の平行な概ね平面の対向する主表面上に配置され、
前記平行な概ね平面の対向する主表面上の電極は、それらの間の電極ギャップを規定し、電極の電気バイアスが前記光学ギャップと前記電極ギャップを同時に変更する、
電極とを、含む、
同調可能なファブリペローフィルタ。

11. 請求項1に記載の同調可能なファブリ・ペローフィルタであって、
前記同調可能なファブリペローフィルタのプルイン不安定性を抑制するのに有効であるように、前記電極ギャップは、前記光学ギャップよりも大きい
同調可能なファブリ・ペローフィルタ。(クレーム))

図5から、電極24は、基板10に設けられ、平面視において反射面領域20の外周よりも外側に設けられたものであることが見てとれる。

イ 刊行物Aに記載の発明
以上を、特に図5を参照してまとめると、刊行物Aには、
「同調可能なファブリペローフィルタであって、
一対の基板10,12であって、
前記一対の基板10,12は、平行な概ね平面の対向する主表面14,16を有し、
前記主表面14,16は、少なくとも選択された波長範囲にわたって少なくとも部分的に反射性である離間して対向する反射面領域20,22を含み、
前記基板10の前記主表面14は、前記反射面領域20を含み、
前記基板12の前記主表面16は、前記反射面領域22を含み、
前記反射面領域20,22は、薄い金属膜であり、
前記離間して対向する反射面領域20,22は、それらの間の光学ギャップG_(opt)を規定し、
前記一対の基板10,12の少なくとも一方の基板は、前記少なくとも選択された波長範囲にわたって光透過性であり、前記少なくとも一方の基板を介して前記光学ギャップG_(opt)との光結合を可能にする、
一対の基板10,12と、
電極24,26であって、
前記電極24,26は、前記基板10,12の平行な概ね平面の対向する主表面14,16上に配置され、
前記電極24は、前記基板10の前記主表面14のリセス28内に形成され、
前記電極24は、平面視において前記反射面領域20の外周よりも外側に設けられ、
前記電極26は、前記基板12の前記主表面16のリセス30内に形成され、
前記平行な概ね平面の対向する主表面14,16上の電極24,26は、それらの間の電極ギャップG_(elec)を規定し、電極24,26の電気バイアスが前記光学ギャップG_(opt)と前記電極ギャップG_(elec)を同時に変更する、
電極24,26とを、含み、
前記同調可能なファブリペローフィルタのプルイン不安定性を抑制するのに有効であるように、前記電極ギャップG_(elec)は、前記光学ギャップG_(opt)よりも大きい、
同調可能なファブリペローフィルタ。」(以下「引用発明A」という。)が記載されている。

ウ 刊行物B:特開平10-78548号公報
刊行物Bには、図とともに次の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロサイズの電気機械的な光変調器に関し、さらに詳細には、低駆動電圧条件の光変調器に関する。」

「【0002】
【従来の技術、及び、発明が解決しようとする課題】
最近、光通信システムに大きな関心が払われている。このようなシステムは、二三例を挙げると、電気通信、航空技術の分野および遠隔検出を含む多くの分野に応用される。光信号変調器は通常、このような通信システムの一部である。
【0003】
ほとんどの電気機械的光変調器は毎秒約1Mビット?3Mビットの範囲にわたるデータ速度に限定される。しかし、Ethernetと高画質のテレビジョン(HDTV)に適用する場合、毎秒約10Mビットまたはそれ以上の動作速度を達成することが望ましいであろう。データ速度の制約はいくつかの理由から生じる。一つの理由は駆動電圧の条件に関連する。実施に際しては大方の場合、変調器の動作速度は駆動電圧にほぼ比例し、毎秒10Mビットで動作する変調器は200V以上の電圧が必要なことがある。ほとんどの変調器設計では、変調器薄膜または変調器の他の部分の絶縁破壊はこの電圧の近傍で発生する。絶縁破壊の発生時、薄膜または他の構造は印加電圧に耐えることができない。電流が構成材料の内部を流れ、通常その材料を破壊する。実際上、材料の欠陥によって許容動作電圧が低下するため、計算上の絶縁破壊電圧以下の2の因数以上の電圧で動作することが望ましい。その上、変調器を支持する電子工学装置は駆動電圧が上昇するにつれて実施が困難になり、高価なものになる。従って、通常の既存設計に比較し低減された動作電圧条件の電気機械的光変調器が必要になる。」

「【0004】
【課題を解決するための手段】
従来技術による通常のマイクロ機械的構成の光変調器より低い電圧で動作ができるマイクロ機械的構成の光変調器を開示する。この変調器は薄膜を基板の領域上に支持している。少なくとも二つの電極、好適にはそれ以上を薄膜上に配する。各電極はシフト・レジスタまたは他の手段を介し制御電圧源に電気的に伝達し、電極に電圧を逐次印加する。光信号を受信する光窓は二つの隣接する電極間に確立される。
【0005】
動作時、基板と各電極には電圧パルスが印加される。この電圧パルスは光窓に隣接しない電極に逐次印加され、電極位置が遠隔になればなるほど、早いタイミングでパルスを受信する。電圧が印加されると、静電力が発生し、薄膜を基板の方向に引き寄せる。こうして、各電極の下部にある薄膜には変位が生じたり、機械的なパルスが生成される。
【0006】
数ある機能の中で、薄膜は機械的パルスを伝播させる媒体を構成する。各電極の下部に生成される伝播パルスは互いに補強し合い、一つの電極に電圧を印加したときに達成される変位の電極数倍数と同値の変位を光窓における薄膜に発生させる。このようにして、比較的低い電圧から薄膜に大きな変位を発生させることができる。
【0007】
薄膜がその初期位置から変位し、基板の方向に移動すると、変調器の光学特性に変化が生じる。一実施形態では、変調器の反射能は薄膜の位置変化に従い変化する。このような反射能の変化は変調器から反射される光信号の測定可能な特性、例えば信号の振幅に変化をもたらす。このようにして、光信号の変調が行われる。」

「【0008】
【発明の実施の形態】
本発明によるマイクロ機械的構成の低電圧変調器1aの好適な実施形態を図1に示す。変調器1aは1996年2月5日に提出された同時係属出願第08/597,003号に開示したものに類似するクランプ固定プレ-ト形伝送ラインとして形成される。この特許出願と本明細書に言及した他の総ての特許出願、特許または他の刊行物は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0009】
変調器1aには基板10によって支持される層15aが含まれる。層15aの一部の下部にある基板10の内部に確立された空洞部20がある。空洞部20の周囲21によって層15aに薄膜15が確立される。図1に示す変調器1aでは、相互を電気的に絶縁した四つの電極18_(1-4)は薄膜15の上面に配される。他の実施形態では、本明細書の以下の部分にさらに詳しく説明するように、四個以上または以下の電極18を薄膜15の上面に配することができることを理解されたい。好適な実施形態では、光窓16は電極18_(1),18_(2)のような二つの隣り合う電極相互間に確立される。電極18_(1-4)は接点22に対し個別に電気的に接続され、接点22もまたシフト・レジスタ24に電気的に接続される。シフト・レジスタ24は制御電圧源25からの信号を受信する。シフト・レジスタ24と制御電圧源25は図1では二つの個別装置として提示されているが、シフト・レジスタ機能と被制御電圧ソ-スの双方を組み込んだ単一装置を使用することができることを理解されたい。」

「【0015】
動作時、電極18_(1-4)のような電極と基板10の全域に電圧が印加され(“バイアスさせた状態”)、静電力を発生する。変調器が非バイアスの状態または静止状態のとき、この力によって薄膜15は初期位置から基板10の方向に移動する。薄膜15が移動すると、変調器の光学特性に変化が生じる。このような変化を利用して光信号の測定可能な特性を変えることができる。例えば、変調器の反射能は層が移動すると変化することがあり、その結果、変調器からの光信号の振幅測定値が変化する。反射能の変化を利用し、光信号の変調ができる。こうした若干の可変反射能変調器が米国特許第5,500,761号および上述の特許出願に記述されている。」

「【0018】
既に説明したように、擾乱または変位は電極に電圧V_(i)を印加した結果として電極18_(i)の下部に位置する薄膜15に発生する。本発明による変調器の伝送ラインの形状のために、このような擾乱は機械的パルスとして薄膜15の内部を伝播する。各電極18_(i)の下部に発生する伝播パルスは相互に補強し合い、一個の電極に電圧を印加することによって達成される変位の電極18_(1-n)数倍数と同値である変位を光窓16における薄膜15に発生させる。このようにして、大きな薄膜変位を比較的低い電圧から発生させることができる。
【0019】
本変調器の薄膜15は多機能的であることは明らかな筈である。第一に、基板10に対する薄膜15の位置により変調器の光特性が制御される。第二に、薄膜15は伝送ラインとして機能し、この機能的な立場で薄膜は二元的な目的を果たす。一つの機能で、薄膜15は多数の電極から発生する機械的パルスを支持し、そのパルスを光窓16に伝達する。」

(2)本願発明26について
ア 対比
(ア)本願発明26と引用発明Aを対比する。
引用発明Aの「基板10」、「基板12」、「反射面領域20」、「反射面領域22」、「電極24」、「電極26」、「光学ギャップG_(opt)」、「電極ギャップG_(elec)」及び「ファブリペローフィルタ」が本願発明26の「第1基板」、「第2基板」、「第1反射膜」、「第2反射膜」、「第1電極」、「第2電極」、「前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップ」、「前記第1電極と前記第2電極との間のギャップ」及び「光フィルター」にそれぞれ相当する

(イ)したがって、本願発明26と引用発明Aとは、以下の点で一致する。
<一致点>
「第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
前記第1基板に設けられ、平面視において前記第1反射膜の外周よりも外側に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1電極と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更され、前記初期ギャップを前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくした光フィルター。」

(ウ)一方、本願発明26と引用発明Aとは、以下の点で相違する。
<相違点A>
第1電極について、本願発明26では、「前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され」、「前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心を通る前記第1反射膜の法線に対して、線対称に配置され、前記第2セグメント電極は、前記法線に対して、線対称に配置され」るものであるのに対し、引用発明Aでは、電極24(第1電極)は、複数のセグメント電極に分割されたものでなく(以下「相違点Aの1」という。)、しかも、反射面領域20(第1反射膜)の中心を通る反射面領域20の法線に対する配置も特定されていない点。

<相違点B>
フィルター特性について、本願発明26では、「前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の双方と前記第2電極との間に電位差があるときの第2ギャップとに変化させる」ことで、変更されるものであるのに対し、引用発明Aでは、「前記平行な概ね平面の対向する主表面14,16上の電極24,26は、それらの間の電極ギャップG_(elec)を規定し、電極24,26の電気バイアスが前記光学ギャップG_(opt)と前記電極ギャップG_(elec)を同時に変更する」ものの、本願発明26の当該構成について特定されていない点。

イ 判断
(ア)先ず、上記相違点Aについて検討する。

a 上記相違点Aについて、刊行物Aには、電極24を複数のセグメント電極で構成することの記載や示唆はなく、また、ファブリペローフィルタにおいて、その電極を複数のセグメント電極で構成することが周知であるとする証拠もない。
したがって、引用発明Aにおいて、電極24を少なくとも2つのセグメント電極で構成し、これらのセグメント電極を用いることにより、反射面領域20と反射面領域22のギャップを本願発明のごとく変化させてフィルター特性を変更するようにすることが、当業者であれば容易に想到し得たということはできない。

b 一方、刊行物Bには、薄膜15を複数の電極18_(1) ないし18_(4) を用いて変位させることは記載されているものの、刊行物Bに記載された発明は、光窓において光信号を受信し、光窓の位置変化が変調器から戻る光信号に測定可能な特性に変化を与えて、毎秒10Mビットで光変調する光変調器の発明である。

c そうすると、刊行物Bに記載された発明と、ミラー間のギャップを変更することで特定波長の光を選択するものである刊行物Aに記載のファブリペローフィルタとは技術分野が異なり、引用発明Aに、刊行物Bに記載された発明を適用することには無理がある。
したがって、引用発明Aにおいて、刊行物Bを参照したとしても、相違点Aに係る本願発明26の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(イ)よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明26は、引用発明A及び刊行物Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本願発明1?25について
ア 本願発明1について
(ア)本願発明1は、上記2(3)ア(ア)に再掲したとおりである。

(イ)a 本願発明1と引用発明Aとを対比する。
上記(2)ア(ア)における検討、及び上記2(3)ア(イ)aで検討したように、本願発明1の発明特定事項(A)、(B)、(G)、(J)は、それぞれ本願発明26の発明特定事項(A)、(B)、(G)、(J)と一致し、本願発明1の発明特定事項(C’)ないし(F’)は、それぞれ本願発明26の発明特定事項(C)ないし(F)を限定したものであることは明らかであることを勘案すると、本願発明1と引用発明Aとは、以下の点で一致する。
<一致点>
「第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板が前記第2基板と対向する第1対向面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板が前記第1基板と対向する第2対向面に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
平面視で前記第1反射膜の外周よりも外側における前記第1対向面に設けられた第1電極と、
前記第2基板の前記第2対向面に設けられ、前記第1電極と対向する第2電極と、
を含み、
前記第1反射膜と前記第2反射膜との間のギャップを、前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1電極と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップとに変化させることで、フィルター特性が変更され、前記初期ギャップを前記第1電極と前記第2電極との間のギャップよりも小さくした光フィルター。」

b 一方、本願発明1と引用発明Aとは、以下の点で相違する。
<相違点a>
第1電極について、本願発明1では、「前記第1電極は、電気的に独立した少なくとも第1セグメント電極及び第2セグメント電極に分割され」、「前記第1セグメント電極は、前記第1反射膜の中心と前記第2反射膜の中心とを結ぶ中心線に対して、線対称に配置され、前記第2セグメント電極は、前記中心線に対して、線対称に配置され」るものであるのに対し、引用発明Aでは、電極24(第1電極)は、複数のセグメント電極に分割されたものでなく(以下「相違点aの1」という。)、しかも、反射面領域20(第1反射膜)の中心と反射面領域22(第2反射膜)の中心とを結ぶ中心線に対する配置も特定されていない点。

<相違点b>
フィルター特性について、本願発明1では、「前記第1電極及び前記第2電極との間に電位差がないときの初期ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の一方と前記第2電極との間に電位差があるときの第1ギャップと、前記第1セグメント電極及び前記第2セグメント電極の双方と前記第2電極との間に電位差があるときの第2ギャップとに変化させる」ことで、変更されるものであるのに対し、引用発明Aでは、「前記平行な概ね平面の対向する主表面14,16上の電極24,26は、それらの間の電極ギャップG_(elec)を規定し、電極24,26の電気バイアスが前記光学ギャップG_(opt)と前記電極ギャップG_(elec)を同時に変更する」ものの、本願発明1の当該構成について特定されていない点。

(ウ)a 先ず、上記相違点aについて検討する。
<相違点a>のうち、上記「相違点aの1」は、上記(2)ア(ウ)の<相違点A>における上記「相違点Aの1」と一致する。
したがって、上記(2)イ(ア)において、相違点Aについて検討したのと同様な理由により、引用発明Aにおいて、相違点aに係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。
そうすると、引用発明Aにおいて、刊行物Bを参照したとしても、相違点aに係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

b よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明A及び刊行物Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

イ 本願発明2?25について
本願発明2?25は、本願発明1の従属項である。
したがって、本願発明2?25は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用発明A及び刊行物Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)小括
したがって、本願発明1?26は、刊行物A、Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえなくなった。
そうすると、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-08-24 
出願番号 特願2010-58301(P2010-58301)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植田 高盛堀部 修平  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 小松 徹三
河原 英雄
発明の名称 光フィルター並びにそれを用いた分析機器及び光機器  
代理人 竹腰 昇  
代理人 井上 一  
代理人 黒田 泰  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ