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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
管理番号 1318500
審判番号 不服2014-16290  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-18 
確定日 2016-08-16 
事件の表示 特願2012-510030「パターン化された熱管理材料」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日国際公開、WO2010/129923、平成24年10月25日国内公表、特表2012-526008〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成22年5月7日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年5月7日、アメリカ合衆国(US)、2009年11月5日、アメリカ合衆国(US)、2010年4月23日、アメリカ合衆国(US))とする出願であって、平成26年4月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年8月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
その後、当審において平成27年6月11日付けで拒絶の理由を通知したところ、平成27年12月14日付けで、意見書及び誤訳訂正書が提出され、明細書及び特許請求の範囲の誤訳訂正がなされた。


第2.平成27年6月11日付けで通知した拒絶の理由の概要
理由1.・・・
・・・
理由2.本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (刊行物については刊行物等一覧参照)
・・・
・請求項 1
・刊行物 1?3
・備考
1.刊行物1に記載された発明に基づく容易想到性について
・・・通気性シートの片面に金属素材を配置してなるシートを衣服に使用する際に、金属素材を配置した側を内側(使用者の体に向いた側)とすることも外側とすることは、例えば、刊行物3にも記載されているように本願出願前に周知の技術的事項であり、その採否は当該シートが使用される衣服に期待される機能に応じて、当業者が適宜決定し得たことである。
・・・
したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものである。
・・・
刊 行 物 等 一 覧
1.特開昭60-244541号公報
2.特開昭62-257487号公報
3.実願平3-73372号(実開平5-19315号)のCD-ROM


第3.本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成27年12月14日付けで誤訳訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

衣服等に使用されるのに適した熱管理材料であって、
ベース材料(20)を通じて空気、水分又は水蒸気等が透過する透過特性を有するベース材料(20)と、
前記ベース材料(20)の第1側面に結合され熱指向要素(10)の配列であって、ベース材料(20)に対する熱指向要素(10)の配列の表面領域率は、前記ベース材料(20)に対する前記空気、水分又は水蒸気等の前記透過特性を維持しうるように7:3から3:7までである、前記熱指向要素(10)の配列とを備え、
前記ベース材料(20)は、最も内側の表面を有する衣服等の最も内側の層を備え、前記熱指向要素(10)は、前記最も内側の表面上に配置されることにより使用者の身体から来る熱を、該身体の方へ反射する、熱管理材料。


第4.引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用した特開昭60-244541号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「反射性シート」の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
1.「特許請求の範囲
1.少くとも接着剤層とその上に積層された金属薄層とから成る貼付物が前記接着剤層を内側にして互いに独立して多数、通気性を有するウェブ状材料の上に貼付されていることを特徴とする反射性シート。
2.前記通気性を有するウェブ状材料が編物、織物又は不織布に形成された繊維製基布である特許請求の範囲第1項記載の反射性シート。」(第1頁左下欄第4行?12行)

2.「<発明が解決しようとする問題点>
本発明は光線や熱線に対する優れた反射性と優れた通気性を併せて具備する反射性シートを提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第1行?4行)

3.「又第1図および第2図に示した実施例では通気性を有するウェブ状材料として繊維製基布が例示されているが・・・ただし本発明による反射シートの主要な用途である衣料用の場合には繊維製基布を用いることが好ましい。」(第2頁右上欄第8行?14行)

4.「本発明の反射シートにおける金属薄層の金属とは光線および熱線反射性に優れるアルミニウム、銀、ニッケル、マグネシウム、などが好ましく、中でもコストが安く、積層の容易なアルミニウムがより好ましい。」(第2頁左下欄第12行?16行)

5.「本発明の反射性シートの貼付物は、ウェブ状材料に接着剤層、金属薄層、さらに好ましくは重合体層が点状に順次積層されて形成されるが、接着剤層、金属薄層、さらには重合体層がウェブ状材料に占める面積は、30?90%が好ましく、さらには50?70%がより好ましい。30%より少なくなると反射性に乏しくなり反射性シートとして性能発揮出来ない。また通気性については8cc/sec/cm^(2)以上が好ましく、30cc/sec/cm^(2)以上がより好ましい。通気性が8cc/sec/cm^(2)より少ないと、例えば衣服内の温度が高くなり、蒸れ感、あるいは発汗現象が生じ易い為である。」(第2頁右下欄第10行?第3頁左上欄第1行)

6.「また貼付物の形状については特に限定されず、円、楕円などの円型、三角、四角などの角型、あるいは星型など任意でそれぞれ独立した形状であれば良く・・・」(第3頁左上欄第2行?5行)

7.「<発明の効果>
本発明の反射性シートは前述のように構成されているので、金属薄層側を外側にして衣服を縫製すれば、太陽などの熱線を受ける場合、その熱線は金属薄層で大部分反射され、熱線はほとんど人体に影響しない。」(第4頁右下欄第13行?18行)

8.上記2及び5より、接着剤層とその上に積層された金属薄層とから成る貼付物がウェブ状材料に占める面積は、光線や熱線に対する優れた反射性と優れた通気性を併せて具備するべく、30?90%が好ましく、さらには50?70%がより好ましいことが把握される。
また、第2図の記載から、ウェブ状材料の上に、貼付物が互いに独立して多数貼付されていることが把握される。

上記事項を整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

衣料用の反射性シートであって、
通気性を有するウェブ状材料と、
前記ウェブ状材料の上に、接着剤層とその上に積層された金属薄層とから成る貼付物が前記接着剤層を内側にして互いに独立して多数貼付され、
前記貼付物が前記ウェブ状材料に占める面積は、光線や熱線に対する優れた反射性と優れた通気性を併せて具備するべく、50?70%がより好ましく、
金属薄層側を外側にして衣服を縫製すれば、太陽などの熱線を受ける場合、その熱線は金属薄層で大部分反射され、熱線はほとんど人体に影響しない、反射性シート


第5.対比
引用発明の「衣料用の反射性シート」、「通気性」、「ウェブ状材料」、「貼付物」は、本願発明の「衣服等に使用されるのに適した熱管理材料」、「空気、水分又は水蒸気等が透過する透過特性」、「ベース材料(20)」、「熱指向要素(10)」に相当する。
そして、引用発明において、「ウェブ状材料の上に」、「互いに独立して多数貼付され」ている「貼付物」は、「ウェブ状材料」の第1の側面に結合された「貼付物」の配列といえる。
さらに、引用発明の「前記貼付物が前記ウェブ状材料に占める面積は、光線や熱線に対する優れた反射性と優れた通気性を併せて具備するべく、50?70%がより好ましく」は、本願発明の「ベース材料(20)に対する熱指向要素(10)の配列の表面領域率は、前記ベース材料(20)に対する前記空気、水分又は水蒸気等の前記透過特性を維持しうるように7:3から3:7までである」という要件を満たす。

してみれば、両者の一致点および相違点は以下のとおりである。

《一致点》
衣服等に使用されるのに適した熱管理材料であって、
ベース材料を通じて空気、水分又は水蒸気等が透過する透過特性を有するベース材料と、
前記ベース材料の第1側面に結合され熱指向要素の配列であって、ベース材料に対する熱指向要素の配列の表面領域率は、前記ベース材料に対する前記空気、水分又は水蒸気等の前記透過特性を維持しうるように7:3から3:7までである、前記熱指向要素の配列とを備えた、
熱管理材料。

《相違点》
ベース材料が、本願発明では、「最も内側の表面を有する衣服等の最も内側の層を備え、前記熱指向要素(10)は、前記最も内側の表面上に配置されることにより使用者の身体から来る熱を、該身体の方へ反射する」ものであるのに対し、引用発明では、「金属薄層側を外側にして衣服を縫製すれば、太陽などの熱線を受ける場合、その熱線は金属薄層で大部分反射され、熱線はほとんど人体に影響しない」ものである点 。


第6.判断
1.《相違点》について
平成27年6月11日付けで通知した拒絶の理由の理由2でも説示したとおり、通気性シートの片面に熱線等を反射する金属素材を配置してなるシートを衣服に使用する際に、金属素材を配置した側を内側(使用者の体に向いた側)とすることと外側とすること(以下、「金属素材の内外配置技術」という。)とは、ともに、本願の優先日前に周知の技術的事項であり(例示が必要であれば、当審の拒絶の理由に引用した実願平3-73372号(実開平5-19315号)のCD-ROM(以下、「刊行物3」という。)にも記載される他、内側とすることについては、同じく引用した特開昭62-257487号公報(以下、「刊行物2」という。)の第2頁左上欄第9行?11行、第3頁左下欄第11行?18行を、外側とすることについては、特開昭60-246804号公報の第1頁左下欄第5行?9行、第2頁左下欄第6行?11行、第5頁全体を参照されたい。)、いずれを選択するかは当該シートが使用される衣服に期待される機能に応じて、当業者が適宜決定し得たことである。
そして、金属素材が配置された面を、内側にすれば衣服内部の熱が使用者の体の方に導かれること(例えば、上記刊行物2の第3頁左下欄第17行?18行を参照されたい。)も、外側にすれば外部からの熱が使用者の体に及ぶ影響を減少できること(例えば、上記第4.の7.を参照されたい。)も自明の事項である。
してみると、引用発明を衣服に使用する際に、金属薄層を配置した側を内側(使用者の体に向いた側)とすることを選択し、金属薄層が最も内側の表面上に配置されることにより使用者の身体から来る熱を、該身体の方へ反射するようにすることは当業者が容易になし得たことというべきである。

なお、請求人は平成27年12月14日付け意見書の3.で、第1の引例(刊行物1)のウェブ材料1の全面で無く30?90%程度に金属薄膜3(貼付物)を設けることが必須の発明と、第3の引例(刊行物3)の、生地素材1の全面に金属被膜面2を設けることが必須の発明とを組合せることは、その組合せに『阻害要因』があると言わざるを得ず、第1及び第3の引例の組合せは、本発明を知見した上での『後知恵』である旨を主張している。
しかしながら、金属素材の内外配置技術が本願の優先日前に周知の技術的事項であることは、上述したとおりであり、刊行物3は、その例示にすぎない。
そして、上記主張は、金属素材の内外配置技術が本願の優先日前に周知の技術的事項ではないことを立証するものでもない。
したがって、上記主張は、上記判断に何ら影響を及ぼすものではない。

2.本願発明の奏する作用効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明、刊行物2、3にも例示される周知技術が奏する作用効果から当業者が予測し得たものにすぎない。

3.小括
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2、3にも例示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものである。


第7.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-15 
結審通知日 2016-03-16 
審決日 2016-04-06 
出願番号 特願2012-510030(P2012-510030)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (B32B)
P 1 8・ 121- WZ (B32B)
P 1 8・ 537- WZ (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷山 健宮澤 尚之  
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 渡邊 豊英
蓮井 雅之
発明の名称 パターン化された熱管理材料  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 山本 修  
代理人 佐久間 滋  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  

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