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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1318531
審判番号 不服2015-4792  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-11 
確定日 2016-08-24 
事件の表示 特願2013-529637「モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月 5日国際公開、WO2012/041739、平成25年12月19日国内公表、特表2013-545325〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年9月20日(パリ条約による優先権主張 2010年9月27日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月4日付けで拒絶査定がなされ、平成27年3月11日に拒絶査定に対する審判請求と同時に、手続補正がなされたものである。

2.平成27年3月11日付けの手続補正
平成26年8月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、平成27年3月11日付けの手続補正により、以下のとおり補正された。

2-1.補正前の特許請求の範囲の記載(平成26年8月25日付けの手続補正)
「 【請求項1】
アンテナポート(2),送信ポート(1)及び受信ポート(3)を備える回路配置、を備えるモジュールであって,
少なくとも3個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)を備え,該90°ハイブ
リッド(6, 7, 8)がそれぞれ入力信号を,互いに90°の位相差を有する2
つの出力信号に分割し,前記アンテナポート(2),前記送信ポート(1)及び前記受信ポート(3)がそれぞれ少なくとも1つの90°ハイブリッド
(6, 7, 8)と接続し,
少なくとも2個のデュプレクサ(4, 5)を備え,各デュプレクサ(4, 5)における3つの接続部が,それぞれ1個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)に
接続され,
前記デュプレクサ(4, 5)及び前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)のうち
少なくとも一方がモジュール基板に集積されている,モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のモジュールであって,
両デュプレクサのうち,一方のデュプレクサ(4)が,受信ポート(3)に接続する90°ハイブリッド(8)と,送信ポート(1)に接続する90°ハイブリッド(6)とに対し,該90°ハイブリッド(6, 8)のそれぞれが各入力信号に対して角度Φ1だけ位相がシフトした出力信号を前記デュプレクサ(4)に出力するように接続され,
両デュプレクサのうち,他方のデュプレクサ(5)が,受信ポート(3)に接続する90°ハイブリッド(6)と,送信ポート(1)に接続する90°ハイブリッド(8)とに対し,該90°ハイブリッド(6, 8)のそれぞれが各入力信号に対して角度Φ2だけ位相がシフトした出力信号を前記デュプレクサ(5)に出力するように接続され,
該デュプレクサ(5)において前記角度Φ1及びΦ2の差がほぼ90°であ
り,
各デュプレクサ(4, 5)が,前記アンテナポート(2)に接続する90°ハイブリッド(7)の出力部に接続されるモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のモジュールであって,
前記角度Φ1がほぼ0°であり,前記角度Φ2がほぼ90°であるモジュー
ル。
【請求項4】
請求項2に記載のモジュールであって,
前記角度Φ1がほぼ-45°であり,前記角度Φ2がほぼ45°であるモジュール。
【請求項5】
請求項1?4の何れか一項に記載のモジュールであって,
両デュプレクサ(4, 5)は,それぞれの周波数帯域内で周波数が同調可能であるモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のモジュールであって,
同調可能な前記デュプレクサ(4, 5)は,送信通過帯域の挿入損失が,現に使用されている送信チャネルの周波数用に最小となり,現に使用されている送信チャネルと受信チャネルの間で急上昇するように調整されるモジュール。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のモジュールであって,
同調可能な前記デュプレクサ(4, 5)は,受信通過帯域の挿入損失が,現に使用されている受信チャネルの周波数用に最小となり,現に使用されている送信チャネルと受信チャネルの間で急上昇するように調整されるモジュール。
【請求項8】
請求項1?7の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)が離散的素子から構成され,又は該
90°ハイブリッド(6, 7, 8)がマイクロストリップラインから構成される
モジュール。
【請求項9】
請求項1?8の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサ(4, 5)が離散的素子から構成され,又は該デュプレクサ(4, 5)が音響素子を含むモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサ(4, 5)が,SAW変換器及びBAW変換器を備えるSAWデュプレクサ,BAWデュプレクサ又はハイブリッドデュプレクサであるモジュール。
【請求項11】
請求項1?8の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサ(4, 5)が,ハイパスフィルタ及びローパスフィルタを備えるモジュール。
【請求項12】
請求項1?11の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサが同調可能な素子を備えるモジュール。
【請求項13】
請求項1?12の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)において、一方の出力信号と他方の出
力信号との位相差を90°から逸脱させることにより,回路配置のレイアウト上の前記送信ポート(1)と前記受信ポート(3)との間の異なる信号経路(24,25)の長さの違いを補正する,モジュール。
【請求項14】
請求項1?12の何れか一項に記載のモジュールであって,
該回路配置で,前記送信ポート(1)と前記受信ポート(3)との間の信号経路(24,25)の長さを相違させることにより,前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)における、一方の出力信号と他方の出力信号との位相差の
90°からのずれを補償する,モジュール。
【請求項15】
請求項1?14の何れか一項に記載のモジュールであって,
複数の異なる周波数帯域用に構成され,それぞれの周波数帯域毎に2個のデュプレクサ(4a, 4b, 5a, 5b)を備え,異なるデュプレクサ(4a, 4b,
5a, 5b)及び周波数帯域間で切り替えを行うための切り替え手段(36, 37, 38)を備えるモジュール。
【請求項16】
請求項15に記載のモジュールであって,
それぞれの周波数帯域用に分離された受信ポート(3)を備え,それぞれの受信ポートが各別の90°ハイブリッド(8a, 8b)に接続し,該90°ハイブリッド(8a, 8b)の出力部がそれぞれの周波数帯域用のデュプレクサ(4a, 4b, 5a, 5b)に相互接続し,前記切り替え手段(36, 37, 38)が,送信ポート(1)を切り替えるために,異なる周波数帯域に割り当てられたデュプレクサ(4a, 4b, 5a, 5b)に選択的に接続するモジュール。
【請求項17】
請求項1?16の何れか一項に記載のモジュールであって,
少なくとも1つの受信ポート(3)が平衡作動型であるモジュール。
【請求項18】
請求項1?17の何れか一項に記載のモジュールであって,
ダイプレクサを備えるモジュール。
【請求項19】
請求項1に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサ(4, 5)及び前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)が,イ
ンダクタンス素子L,キャパシタンス素子C及び抵抗素子Rとして多層構造のモジュール基板に集積されているモジュール。
【請求項20】
高周波領域における無線通信装置であって,
請求項1?18の何れか一項に記載のモジュールを備える装置。
【請求項21】
高周波帯域における無線通信装置であって,
請求項1?19の何れか一項に記載のモジュールで構成したフロントエンドモジュールを備える装置。」

2-2.補正後の特許請求の範囲の記載(平成27年3月11日付けの手続補正)
「 【請求項1】
アンテナポート(2),送信ポート(1)及び受信ポート(3)を備える回路配置、を備えるモジュールであって,
少なくとも3個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)を備え,該90°ハイブリッド(6, 7, 8)がそれぞれ入力信号を,互いに90°の位相差を有する2つの出力信号に分割し,前記アンテナポート(2),前記送信ポート(1)及び前記受信ポート(3)がそれぞれ少なくとも1つの90°ハイブリッド(6, 7, 8)と接続し,
少なくとも2個のデュプレクサ(4, 5)を備え,各デュプレクサ(4, 5)における3つの接続部が,それぞれ1個の90°ハイブリッド(6,
7, 8)に接続され,
前記デュプレクサ(4, 5)及び前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)のうち少なくとも一方がモジュール基板に集積され、前記デュプレクサは同調可能な素子を備えるモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のモジュールであって,
両デュプレクサのうち,一方のデュプレクサ(4)が,受信ポート(3)に接続する90°ハイブリッド(8)と,送信ポート(1)に接続する
90°ハイブリッド(6)とに対し,該90°ハイブリッド(6, 8)のそれぞれが各入力信号に対して角度Φ1だけ位相がシフトした出力信号を前記デュプレクサ(4)に出力するように接続され,
両デュプレクサのうち,他方のデュプレクサ(5)が,受信ポート(3)に接続する90°ハイブリッド(6)と,送信ポート(1)に接続する
90°ハイブリッド(8)とに対し,該90°ハイブリッド(6, 8)のそれぞれが各入力信号に対して角度Φ2だけ位相がシフトした出力信号を前記
デュプレクサ(5)に出力するように接続され,
該デュプレクサ(5)において前記角度Φ1及びΦ2の差がほぼ90°であり,
各デュプレクサ(4, 5)が,前記アンテナポート(2)に接続する90°ハイブリッド(7)の出力部に接続されるモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のモジュールであって,
前記角度Φ1がほぼ0°であり,前記角度Φ2がほぼ90°であるモ
ジュール。
【請求項4】
請求項2に記載のモジュールであって,
前記角度Φ1がほぼ-45°であり,前記角度Φ2がほぼ45°であるモ
ジュール。
【請求項5】
請求項1?4の何れか一項に記載のモジュールであって,
両デュプレクサ(4, 5)は,それぞれの周波数帯域内で周波数が同調可能であるモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のモジュールであって,
同調可能な前記デュプレクサ(4, 5)は,送信通過帯域の挿入損失が,現に使用されている送信チャネルの周波数用に最小となり,現に使用されている送信チャネルと受信チャネルの間で急上昇するように調整される
モジュール。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のモジュールであって,
同調可能な前記デュプレクサ(4, 5)は,受信通過帯域の挿入損失が,現に使用されている受信チャネルの周波数用に最小となり,現に使用されている送信チャネルと受信チャネルの間で急上昇するように調整されるモ
ジュール。
【請求項8】
請求項1?7の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)が離散的素子から構成され,又は該90°ハイブリッド(6, 7, 8)がマイクロストリップラインから構成されるモジュール。
【請求項9】
請求項1?8の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサ(4, 5)が離散的素子から構成され,又は該デュプレクサ(4, 5)が音響素子を含むモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサ(4, 5)が,SAW変換器及びBAW変換器を備えるSAWデュプレクサ,BAWデュプレクサ又はハイブリッドデュプレクサであるモジュール。
【請求項11】
請求項1?8の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサ(4, 5)が,ハイパスフィルタ及びローパスフィルタを備えるモジュール。
【請求項12】
請求項1?11の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)において、一方の出力信号と他方の出力信号との位相差を90°から逸脱させることにより,回路配置のレイアウト上の前記送信ポート(1)と前記受信ポート(3)との間の異なる信号経路(24,25)の長さの違いを補正する,モジュール。
【請求項13】
請求項1?11の何れか一項に記載のモジュールであって,
該回路配置で,前記送信ポート(1)と前記受信ポート(3)との間の信号経路(24,25)の長さを相違させることにより,前記90°ハイブ
リッド(6, 7, 8)における、一方の出力信号と他方の出力信号との位相差の90°からのずれを補償する,モジュール。
【請求項14】
請求項1?13の何れか一項に記載のモジュールであって,
複数の異なる周波数帯域用に構成され,それぞれの周波数帯域毎に2個のデュプレクサ(4a, 4b, 5a, 5b)を備え,異なるデュプレクサ(4a, 4b, 5a, 5b)及び周波数帯域間で切り替えを行うための切り替え手段(36, 37, 38)を備えるモジュール。
【請求項15】
請求項14に記載のモジュールであって,
それぞれの周波数帯域用に分離された受信ポート(3)を備え,それぞれの受信ポートが各別の90°ハイブリッド(8a, 8b)に接続し,該
90°ハイブリッド(8a, 8b)の出力部がそれぞれの周波数帯域用の
デュプレクサ(4a, 4b, 5a, 5b)に相互接続し,前記切り替え手段(36, 37, 38)が,送信ポート(1)を切り替えるために,異なる周波数帯域に割り当てられたデュプレクサ(4a, 4b, 5a, 5b)に選択的に接続するモジュール。
【請求項16】
請求項1?15の何れか一項に記載のモジュールであって,
少なくとも1つの受信ポート(3)が平衡作動型であるモジュール。
【請求項17】
請求項1?16の何れか一項に記載のモジュールであって,
ダイプレクサを備えるモジュール。
【請求項18】
請求項1に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサ(4, 5)及び前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)が,インダクタンス素子L,キャパシタンス素子C及び抵抗素子Rとして多層構造のモジュール基板に集積されているモジュール。
【請求項19】
高周波領域における無線通信装置であって,
請求項1?17の何れか一項に記載のモジュールを備える装置。
【請求項20】
高周波帯域における無線通信装置であって,
請求項1?18の何れか一項に記載のモジュールで構成したフロントエンドモジュールを備える装置。」

補正後の請求項1は、補正前の請求項1に対して「前記デュプレクサは同調可能な素子を備える」との限定がされたものということもできるが、補正前の請求項1を引用する請求項12は、
「請求項1?11の何れか一項に記載のモジュールであって,
前記デュプレクサが同調可能な素子を備えるモジュール。」と記載されているように、補正前の請求項1に対して「前記デュプレクサが同調可能な素子を備える」と限定するものであるから、補正後の請求項1は、補正前の請求項1を引用する請求項12に相当する。
同様に、補正後の請求項2-11は、補正前の請求項2-11を引用する請求項12に相当する。
したがって、平成27年3月11日付けの手続補正は、補正前の請求項1-11を削除し、それにともなって補正前の請求項12の記載形式を変更して、補正後の請求項1-11としたものといえるので、請求項の削除を目的とした、適法な補正である。

3.本願発明
上記「2.平成27年3月11日付けの手続補正」のとおり、平成27年3月11日付けの手続補正は適法な補正であるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年3月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのもので、その記載は上記「2-2.補正後の特許請求の範囲の記載」のとおりである。


4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2007/0015468号明細書(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「[0012] According to a second aspect of the invention, there is provided a new architecture for purely passive signal splitting and combining for improving the noise cancellation between a transmitter and a receiver, the unit comprising a 90° hybrid coupler to equally divide the transmit signal, the divided transmit signal is fed to two duplexers having similar characteristics, the divided transmit signals emerging from the antenna ports of the two duplexers are summed through a 90° hybrid coupler reconstructing the original transmit signal and fed to the antenna, the divided transmit signals leaking through the two duplexers to the receiver are subtracted through a 90° hybrid coupler canceling the said leaking signal at the receiver. 」

当審訳
[0012] 発明の第2の面にしたがって、送信機と受信機の間のノイズキャンセルを改善する、純粋に受動的な信号分割と結合のための、新しいアーキテクチャを示す。ユニットは、送信信号を等分割する90°ハイブリッドカプラを含み、分割された送信信号は等しい特性の2つのデュプレクサに送ら
れ、2つのデュプレクサのアンテナポートから出力される分割された送信信号は、元の送信信号を再構成する90°ハイブリッドカプラにより結合されて、アンテナに送られ、2つのデュプレクサを経て受信機にリークする分割された送信信号は、そのリーク信号を受信機側で打ち消す90°ハイブリッドカプラにより減算される。

(2)「[0055] Referring to FIG.8, there is shown another embodiment of a balanced duplexer.

[0056] In this embodiment, a signal to transmit is generated by the transmitter 86 . The generated signal is then received by a divider 88. The divider 88 is a 90° hybrid couplers that divides by 2 an incoming signal. It will be appreciated that one of the divided signal outputted by the divider 88 is further shifted in phase by an amount of 90 degrees with respect to the other divided signal.

[0057] One of the divided signals outputted by the divider 88 is provided to a first duplexer 90 while the other divided signal outputted by the divider 88 is provided to a second duplexer 92. It will be appreciated that the first duplexer 90 and the second duplexer 92 are preferably the same. It will be appreciated that optional filters may be provided after the duplexers 90 and 92 as well as before 88 and after 96.

[0058] A first combiner/divider 94 is another 90° hybrid coupler, which is used to combine, i.e. adds, the signals outputted by both duplexers 90 and 92 to be fed to the antenna 98.

[0059] A second combiner 96, a third 90° hybrid coupler, also receives signals provided by the first and the second duplexers 90 and 92. The second combiner 96 is adapted to subtract both signals canceling any leaking signal.

[0060] In the case of a signal received by the antenna 98, the 90° hybrid coupler 94 separates the received signal into two signals, one of which is provided to the first duplexer 90 while the other is provided to the second duplexer 92. It will be appreciated that one of the divided received signal outputted by the hybrid coupler 94 is phased shifted an amount of 90 degrees with respect to the other divided signal. The combiner 96 then adds both signals outputted by the first duplexer 90 and the second duplexer 92 and feeds the summed received signal to the receiver. 」

当審訳
[0055] 図8を参照して、バランス型デュプレクサの別の実施例を示す。

[0056] この実施例において、送信信号は送信機86で発生される。発生された信号は、デバイダ88に入力される。デバイダ88は、入力信号を2つに分割する90°ハイブリッドカプラである。デバイダ88から出力される分割された信号の一方は、他方の信号に対して90°位相がシフトされることがわかるであろう。

[0057] デバイダ88から出力される分割された信号の一方は、第1デュプレクサ90に供給され、他方は第2デュプレクサ92に供給される。第1
デュプレクサ90と第2デュプレクサ92が、全く同一であることがわかるであろう。88の前や96の後と同様に、デュプレクサ90及び92の後
に、オプションのフィルタを設けることが可能であるとわかるであろう。

[0058] 第1コンバイナ/デバイダ94は別の90°ハイブリッドカプラであり、結合、すなわち加算のために用いられ、デュプレクサ90及び92の両方から出力された信号が、アンテナ98に送られる。

[0059] 第2コンバイナ96は3つめの90°ハイブリッドカプラであり、第1デュプレクサ90及び第2デュプレクサ92から供給される信号が入力される。第2コンバイナ96は、どのようなリーク信号もキャンセルするよう、両方の信号を減算するようにされている。

[0060] アンテナ98により信号を受信する場合に、90°ハイブリッドカプラ94は、受信信号を2つの信号に分割し、一方の信号は第1デュプレクサ90に供給され、他方の信号は第2デュプレクサ92に供給される。ハイブリッドカプラ94から出力される分割された受信信号の一方は、他方の信号に対して90°位相がシフトされることがわかるであろう。コンバイナ96は、第1デュプレクサ90及び第2デュプレクサ92から出力される両方の信号を加算して、結合した受信信号を受信機に送る。

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。


第1デュプレクサ90及び第2デュプレクサ92と、
送信機86で発生される送信信号が入力され、入力信号を2つに分割し、分割された信号の一方を、第1デュプレクサ90に供給し、他方を第2デュプレクサ92に供給する90°ハイブリッドカプラであるデバイダ88と、
デュプレクサ90及び92の両方から出力された信号が、アンテナ98に送られるように、結合、すなわち加算のために用いられるとともに、アンテナ98からの受信信号を2つの信号に分割し、一方の信号を第1デュプレクサ90に供給し、他方の信号を第2デュプレクサ92に供給する90°ハイブリッドカプラである第1コンバイナ/デバイダ94と、
第1デュプレクサ90及び第2デュプレクサ92から出力される両方の信号を加算して、結合した受信信号を受信機に送る90°ハイブリッドカプラであるコンバイナ96と、
からなるユニット。

5.対比
引用発明の「デバイダ88」は、90°ハイブリッドカプラであり、「送信機86で発生される送信信号が入力され」とするので、「送信機86」と接続され、「分割された信号の一方を、第1デュプレクサ90に供給し、他方を第2デュプレクサ92に供給する」とするので、「第1デュプレクサ90」及び「第2デュプレクサ92」と接続されるものであるから、本願の図3の実施形態の「90°ハイブリッド6」に対応するものであり、本願発明の「少なくとも3個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)」のうちの1つに相当する。
引用発明の「第1コンバイナ/デバイダ94」は、90°ハイブリッドカプラであり、「デュプレクサ90及び92の両方から出力された信号が、アンテナ98に送られるように、結合、すなわち加算のために用いられるとともに、アンテナ98からの受信信号を2つの信号に分割し、一方の信号を第1デュプレクサ90に供給し、他方は第2デュプレクサ92に供給する」とするので、「アンテナ98」、「第1デュプレクサ90」及び「第2デュプレクサ92」と接続されるものであるから、本願の図3の実施形態の
「90°ハイブリッド7」に対応するものであり、本願発明の「少なくとも3個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)」のうちの1つに相当する。
引用発明の「コンバイナ96」は、90°ハイブリッドカプラであり、
「第1デュプレクサ90及び第2デュプレクサ92から出力される両方の信号を加算して」とするので、「第1デュプレクサ90」及び「第2デュプレクサ92」と接続されるものであり、「合計した受信信号を受信機に送る」とするので、「受信機」と接続されるものであるから、本願の図3の実施形態の「90°ハイブリッド8」に対応するものであり、本願発明の「少なくとも3個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)」のうちの1つに相当する。
引用発明の「第1デュプレクサ90」及び「第2デュプレクサ92」は、上記のように本願発明の「少なくとも3個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)」に相当する「デバイダ88」、「第1コンバイナ/デバイダ94」、及び「コンバイナ96」と接続されているので、本願発明の「少なくとも2個のデュプレクサ(4, 5)」に相当する。
本願発明の「少なくとも3個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)」は、「前記アンテナポート(2),前記送信ポート(1)及び前記受信ポート
(3)がそれぞれ少なくとも1つの90°ハイブリッド(6, 7, 8)と接続し」とするので、「アンテナポート(2)」に接続されるものはアンテナに、「送信ポート(1)」に接続されるものは送信機に、「受信ポート
(3)」に接続されるものは受信機に、それぞれ接続されることは明らかである。
また、本願発明及び引用発明は、回路配置を備える装置といえるものである。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。

少なくとも3個の90°ハイブリッド(6, 7, 8)を備え,該90°ハイブリッド(6, 7, 8)がそれぞれ入力信号を,互いに90°の位相差を有する2つの出力信号に分割し,アンテナ,送信機及び受信機がそれぞれ少なくとも1つの90°ハイブリッド(6, 7, 8)と接続し,
少なくとも2個のデュプレクサ(4, 5)を備え,各デュプレクサ(4, 5)における3つの接続部が,それぞれ1個の90°ハイブリッド(6,
7, 8)に接続される,
回路配置を備える装置。

また次の点で相違する。

相違点1
本願発明は「アンテナポート(2),送信ポート(1)及び受信ポート
(3)を備える回路配置、を備えるモジュール」であって、「前記デュプレクサ(4, 5)及び前記90°ハイブリッド(6, 7, 8)のうち少なくとも一方がモジュール基板に集積され」とするのに対して、引用発明はモ
ジュールに関する特定がない点。

相違点2
本願発明は「前記デュプレクサは同調可能な素子を備える」とするのに対して、引用発明のデュプレクサは同調可能な素子を備えることについて特定がない点。

6.相違点に対する判断
相違点1について
デュプレクサや90°ハイブリッドを基板上に集積してモジュールとすること、及びアンテナ、送信機及び受信機との接続をアンテナポート、送信
ポート及び受信ポートを介して行うことは周知のことであり(例えば、国際公開第2009/078095号)、引用発明の回路配置を本願発明と同様のモジュールとして実施することに困難な点はない。

相違点2について
デュプレクサの一種として同調可能な素子を備えた、周波数を調整可能ないわゆるチューナブルデュプレクサは周知のものであり、周波数が固定の
デュプレクサと同様に、送信機と受信機でアンテナを共用する場合に、送信信号と受信信号を分離するために用いられるものであることは、当業者の技術常識といえる程度のことである。(例えば、特開2006-109512号公報、特開2003-78436号公報)
そして、チューナブルデュプレクサも送信信号と受信信号を分離するために用いられるものであるから、その分離特性を改善できた方がよいことは当然のことである。
したがって、チューナブルデュプレクサの分離特性を改善するために、
チューナブルデュプレクサを用いて引用発明と同様の回路配置とすること、すなわち、引用発明のデュプレクサを同調可能な素子を備えたデュプレクサとすることに、困難な点はない。

上記のように、引用発明において、各相違点を本願発明のようにすることに困難な点はないから、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-23 
結審通知日 2016-03-29 
審決日 2016-04-11 
出願番号 特願2013-529637(P2013-529637)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 梅本 章子
加藤 恵一
発明の名称 モジュール  
代理人 杉村 憲司  

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