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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1318541
審判番号 不服2015-11229  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-15 
確定日 2016-08-24 
事件の表示 特願2013-529531「切替情報の通知方法および基地局」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月 5日国際公開、WO2012/041044、平成25年11月 7日国内公表、特表2013-541286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本願は、2011年3月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月28日、中国)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月18日付けで拒絶理由が通知され、平成26年10月28日付けで手続補正がなされ、平成27年2月12日付けで拒絶査定がされ、平成27年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。


2.平成27年6月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年6月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]

2-1.本件補正の目的

平成27年6月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項4は、

「ソース基地局が、RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質に基づいて、最適セルリストのセルを順序付けるステップと、
前記ソース基地局が、前記最適セルリストを目標基地局へ通知するステップと、
を含み、
前記所定の信号品質に基づいて前記最適セルリストのセルを順序付けるステップは、前記所定の信号品質の良い順に配列されることを含む
ことを特徴とする切替情報の通知方法。」(以下「補正前発明」という。)

から

「ソース基地局が、周波数毎に1つの最適セルを選択するにより最適セルリストを構成し、RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質の良い順に前記最適セルリストのセルを順序付けるステップと、
前記ソース基地局が、前記最適セルリストを目標基地局に通知するステップと、
を含む
ことを特徴とする切替情報の通知方法。」(以下「補正後発明」という。)

と補正された。

上記補正は、補正前発明を特定するために必要な事項である「ソース基地局が、最適セルリストのセルを順序付けるステップ」について、本件補正前の「RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質に基づいて」おり「前記所定の信号品質の良い順に配列されることを含む」ことから、本件補正後の「周波数毎に1つの最適セルを選択するにより最適セルリストを構成し、RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質の良い順」とすることに変更するものである。

そうすると、補正前発明を特定するために必要な事項である「ソース基地局が、最適セルリストのセルを順序付けるステップ」について、「周波数毎に1つの最適セルを選択するにより」最適セルリストを構成することに限定するものであるから、本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用例記載の発明

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である2010年8月27日に頒布された3GPP TSG-RAN WG2 Meeting#71 R2-104895,Huawei,"Scell list provided by source eNB"(以下「引用例1」という。下線は引用例1記載のとおり。)には、

「1 Introduction
In the RAN2#70 meeting, RAN2 agreed that target eNB can change the target PCell and select the SCells. Therefore, the source eNB need to provide the list of PCell/SCells to target for assistant purpose. In RAN2#70bis meeting, RAN2 discussed the issue “What information does the source eNB provide to the target eNB for enabling it to make a sensible SCell selection? E.g. measurement information, candidate list” in [1]. The agreement is “the source can provide a list indicating at least the best cell of each reported frequency, the list starts with the "strongest cell", and is ordered based on radio quality going down.”」
(当審訳:
1 導入
RAN2 #70会議において、RAN2はターゲットeNBがターゲットPCellを変更し、SCellを選択することを可能とすることに合意しました。したがって、この目的のために、ソースeNBはターゲットにPCell/SCellのリストを配布することが必要です。RAN2 #70bis会議において、RAN2は、[1]に記載されているように「賢明なSCell選択を行うことを可能とするために、どのような情報をソースeNBはターゲットeNBに配布するか?例:測定情報、候補リスト」という問題について議論した。合意内容は「ソースは、少なくとも報告された各周波数の最適セルを示すリストを配布することが可能であり、リストは『最強セル』から開始され、無線品質に基づいた降順」である。)

「2.2 Issue 2: which node judges if the cell is “sensible cell”, source eNB or target eNB?
There are three alternatives:
Alt1: Source eNB filters the SCell list and only send the “sensible cells” list to target eNB in the order of signal degression.
Alt2: Source eNB doesn’t filter the SCell list and sends the SCell list in the order of signal degression. Target eNB decides what is sensible.
Alt3: Source eNB doesn’t filter the SCell list and include radio measurements for the cells in SCell list to target eNB; target eNB decides what is sensible.
To Alt1, source eNB may make the filter according to RSRP, RSRQ or other criterion, e.g. ICIC. However, the problem is that target eNB may have different PCell/SCell selection strategies from source eNB, especially in the case that source eNB and target eNB belong to different vendor. Currently, at least following issues should be considered:
ICIC: one vendor may think the ICIC can solve the interference if the difference of RSRP between two cells in the same frequency is lower than “y”dB. Another vendor may have different understanding on the threshold.
Traffic load: it is suitable for target eNB to choose PCell/SCell based on both radio condition and traffic load. Otherwise, target eNB has to do load distribution later. However, source eNB does not know the traffic load situation of target eNB.
Therefore, it is more reasonable that target eNB decides what is sensible based on the strategies of itself.
To Alt2 and Alt3, the difference of the two alternatives is whether precise information need to be sent to target eNB to decide what is sensible. RRM Measurement information can precisely reflect the difference of signal strength and interference than the ordered list, which is helpful to make PCell/SCell selection by target eNB based on target eNB strategies. RRM Measurement information size is totally 13bits, which containing 7bits RSRP and 6bits RSRQ, and also X2/S1 message size is not critical due to wire transmission. The size overhead impact is very slight. Therefore, we think Alt3 is desirable.
Proposal 2: include radio measurements for the cells in the SCell list.
The target cell in X2/S1 message is not always the strongest cell depending on source eNB policy, and even it is possible that the strongest cell is not the cell of target eNB. Therefore, we suggest that the target PCell in X2/S1 message should be contained in SCell list, and be ordered together with other cells based on radio quality going down in order to let target eNB know the quality of target PCell recommended by source eNB.
Proposal 3: The selected target PCell by source eNB is also contained in the SCell list.」
(当審訳:
2.2 問題2:セルが「賢明なセル」であるかどうかをどのノードが判断するか?ソースeNBかターゲットeNBか?
3つの代替案が存在する。
代替案1:ソースeNBはSCellリストをフィルタし、信号低減の順の「賢明なセル」リストをターゲットeNBに送信するだけ。
代替案2:ソースeNBはSCellリストをフィルタせず、信号低減の順のSCellリストを送信する。ターゲットeNBは何が賢明かを決定する。
代替案3:ソースeNBはSCellリストをフィルタせず、SCellリスト中のセルの無線測定を含む。ターゲットeNBは何が賢明かを決定する。
代替案1では、ソースeNBは、RSRP、RSRQ、または、例えばICICのような他の基準に従ってフィルタを行うことができる。しかし、問題は、ターゲットeNBはソースeNBと異なるPCell/SCell選択戦略を有するかもしれないという点で、特に、ソースeNBとターゲットeNBが異なるベンダーに属する場合である。現在、少なくとも以下の問題を考慮する必要がある。
ICIC:一方のベンダーは、同じ周波数の異なるセルの間のRSRPの差が「y」dBよりも低ければ、ICICは干渉を解消できると考えている。一方のベンダーは異なる閾値の合意を有しているかもしれない。
トラヒック負荷:ターゲットeNBにとって、無線状態とトラヒック負荷の両方に基づいてPCell/SCellを選択することがふさわしい。さもなければ、ターゲットeNBは後で負荷分散を行う必要がある。しかし、ソースeNBはターゲットeNBのトラヒック負荷状態を知らない。
したがって、自分の戦略に基づいて何が賢明であるかを、ターゲットeNBが決定するのが合理的である。
代替案2と代替案3について、2つの代替案の違いは、何が賢明であるかを決定するための正確な情報をターゲットeNBに送る必要があるかどうかである。RRM測定情報は、ターゲットeNBの戦略に基づいてターゲットeNBによるPCell/SCell選択を行うための順序リストよりも、信号強度と干渉の違いを正確に反映する。RRM測定情報のサイズは7ビットのRSRPと6ビットのRSRQの全部で13ビットであり、X2/S1メッセージサイズもまた、有線伝送のため深刻ではない。サイズオーバーヘッドの影響は非常に小さい。そのため代替案3が望ましいと考える。
提案2:SCellリストには、セルの無線測定を含む。
X2/S1メッセージ内のターゲットセルは、ソースeNBポリシーにとっては常に最強セルというわけでなく、最強セルがターゲットeNBのセルではない可能性もある。したがって、ソースeNBが推奨するターゲットPCellの品質をターゲットeNBに知って貰うために、X2/S1メッセージ内のターゲットPCellは、SCellリストに含まれ、他のセルと共に無線品質の降順に順序付けされている。
提案3:ソースeNBによって選択されたターゲットPCellは、SCellリストに含まれる。)

の記載があるから、引用例1には、

「ターゲットeNBがターゲットPCellを変更し、SCellを選択することを可能とするために、
ソースeNBはターゲットにPCell/SCellのリストを配布することが必要であり、
ソースは、少なくとも報告された各周波数の最適セルを示すリストを配布することが可能であり、リストは『最強セル』から開始され、無線品質に基づいた降順であることで合意されており、
「賢明なセル」を判断するにあたり、ソースeNBはSCellリストをフィルタせず、信号低減の順のSCellリストを送信し、ターゲットeNBは何が賢明かを決定する
方法」

の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。)

2-3.補正後発明と引用発明の対比

補正後発明の「ソース基地局」は、引用発明の「ソースeNB」に、
補正後発明の「目標基地局」は、引用発明の「ターゲットeNB」に、
補正後発明の「目標主サービスセル」は、引用発明の「ターゲットPCell」に、
補正後発明の「信号品質」は、引用発明の「無線品質」に、
それぞれ相当する。

引用発明において、「リスト」は「各周波数の最適セル」を示すリストであるから、「周波数毎に1つの最適セルを選択するにより最適セルリストを構成」しており、「最適セルリスト」であるといえる。
また、引用発明において、「リスト」が「セルのリスト」であることは明らかであって、「最強セル」から開始された無線品質の降順である。
ここで、「無線品質の降順」とは、「無線品質の良い順」を意味するから、引用発明の「リスト」は「信号品質の良い順にセルリストのセルを順序付け」されているといえる。
上記によれば、引用発明は、「ソース基地局が、周波数毎に1つの最適セルを選択するにより最適セルリストを構成し、信号品質の良い順に前記最適セルリストのセルを順序付け」しているといえる。

引用発明は、「ターゲットeNBがターゲットPCellを変更したりSCellを選択するために」ソースeNBがターゲットにリストを配布しているから、配布先の「ターゲット」は「ターゲットeNB」を意味している。
したがって、引用発明は、「前記ソース基地局が、前記最適セルリストを目標基地局に通知」しているといえる。

したがって、補正後発明と引用発明は、

「ソース基地局が、周波数毎に1つの最適セルを選択するにより最適セルリストを構成し、信号品質の良い順に前記最適セルリストのセルを順序付けるステップと、
前記ソース基地局が、前記最適セルリストを目標基地局に通知するステップと、
を含む
ことを特徴とする切替情報の通知方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点

信号品質として、補正後発明は、「RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質」であるのに対し、引用発明は、どのような品質か記載が無い点。

2-4.相違点についての検討

相違点について

引用例1には、「RRM測定情報のサイズは7ビットのRSRPと6ビットのRSRQの全部で13ビットであり、」と記載されるように、合意内容に基づいた動作において、いずれも信号品質である「RSRP」と「RSRQ」について、7ビットのRSRPと6ビットのRSRQを無線品質の測定情報として報告するのであるから、引用発明に係る「無線品質」として「RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質」とすることは当業者であれば容易に想到しうることである。

そして、補正後発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる範囲のものである。
したがって、補正後発明は、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

2-5.むすび

したがって、補正後発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について

3-1.本願発明

平成27年6月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年10月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「ソース基地局が、RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質に基づいて、最適セルリストのセルを順序付けるステップと、
前記ソース基地局が、前記最適セルリストを目標基地局へ通知するステップと、
を含み、
前記所定の信号品質に基づいて前記最適セルリストのセルを順序付けるステップは、前記所定の信号品質の良い順に配列されることを含む
ことを特徴とする切替情報の通知方法。」

3-2.引用例記載の発明

引用発明は、「2-2.引用例記載の発明」に記載したとおりである。

3-3.本願発明と引用発明の対比と検討

本願発明の「ソース基地局」は、引用発明の「ソースeNB」に、
本願発明の「目標基地局」は、引用発明の「ターゲットeNB」に、
本願発明の「信号品質」は、引用発明の「無線品質」に、
それぞれ相当する。

引用発明において、「リスト」は「各周波数の最適セル」を示すリストであるから、「最適セルリスト」であるといえる。
また、引用発明において、「リスト」が「セルのリスト」であることは明らかであって、「最強セル」から開始された無線品質の降順である。
ここで、「無線品質の降順」とは、「無線品質の良い順」を意味するから、引用発明の「リスト」は「信号品質の良い順にセルリストのセルを順序付け」されて、「信号品質の良い順に配列され」ているといえる。
上記によれば、引用発明は、「前記信号品質に基づいて前記最適セルリストのセルを順序付けるステップは、前記所定の信号品質の良い順に配列され」ているといえる。

引用発明は、「ターゲットeNBがターゲットPCellを変更したりSCellを選択するために」ソースeNBがターゲットにリストを配布しているから、配布先の「ターゲット」は「ターゲットeNB」を意味している。
したがって、引用発明は、「前記ソース基地局が、前記最適セルリストを目標基地局に通知」しているといえる。

したがって、本願発明と引用発明は、

「ソース基地局が、信号品質に基づいて、最適セルリストのセルを順序付けるステップと、
前記ソース基地局が、前記最適セルリストを目標基地局へ通知するステップと、
を含み、
前記信号品質に基づいて前記最適セルリストのセルを順序付けるステップは、前記信号品質の良い順に配列されることを含む
ことを特徴とする切替情報の通知方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点

信号品質について、本願発明は、「RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質」であるのに対し、引用発明は、どのような品質か記載が無い点。

相違点について

引用例1には、「RRM測定情報のサイズは7ビットのRSRPと6ビットのRSRQの全部で13ビットであり、」と記載されるように、合意内容に基づいた動作において、いずれも信号品質である「RSRP」と「RSRQ」について、7ビットのRSRPと6ビットのRSRQを無線品質の測定情報として報告するのであるから、引用発明に係る「無線品質」として「RSRPおよびRSRQのいずれかを含む所定の信号品質」とすることは当業者であれば容易に想到しうることである。

そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。


4.まとめ

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-24 
結審通知日 2016-03-29 
審決日 2016-04-12 
出願番号 特願2013-529531(P2013-529531)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中元 淳二石川 雄太郎  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 梅本 章子
吉田 隆之
発明の名称 切替情報の通知方法および基地局  
代理人 特許業務法人 エビス国際特許事務所  

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