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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G21C
管理番号 1318550
審判番号 不服2015-21016  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-26 
確定日 2016-09-14 
事件の表示 特願2014- 61594「新型初期炉心燃料集合体構成及びその構成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月 7日出願公開、特開2014-142356、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、平成17年10月17日に出願した特願2005-301127号(パリ条約による優先権主張2004年10月15日、米国)の一部を平成26年3月25日に新たな特許出願としたものであって、平成26年12月9日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月4日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年8月5日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
本件は、これに対して、平成27年11月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明12」という。)は、平成27年11月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1?12は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
加圧水型原子炉の経済的な初期炉心を構成する方法であって、
所望の平衡サイクル再装荷炉心を構成する、各々が複数の燃料集合体より成る複数の領域の実質的にすべてについてエネルギー出力及び取出燃焼度のデータを用意し、
加圧水型原子炉の初期炉心となるように構成されたときに、平衡サイクル再装荷炉心を構成する対応領域のエネルギー出力及び取出燃焼度をエミュレーションする、その各々が垂直方向長さを有し、以前に原子炉で照射されたことがない複数の新しい燃料集合体を用意し、これらの新しい燃料集合体にはウラニウム235の平均濃縮度が異なる高濃縮度燃料集合体と低濃縮度燃料集合体とがあり、
空間反応度分布の点で平衡サイクル再装荷炉心をエミュレーションするように、複数の新しい燃料集合体を前記データに基づいて配置することにより、内部及び外殻部を有し、高濃縮度燃料集合体が実質的にすべて初期炉心の内部の方へ装荷された初期炉心の全体を、これらの新しい燃料集合体により構成し、
新しい高濃縮度燃料集合体の少なくとも一部に用意された新型格子設計においては、燃料集合体の垂直方向長さに亘って冷却材の横断流を遮るような障壁が延びていないので、冷却材が垂直方向に流動するに際してこれらの燃料集合体の間で冷却材が横方向に有意に循環するように構成され、新型格子は燃料集合体の最も外側を延びる燃料棒の端縁行及び多数の燃料棒の内部行を有し、端縁行の燃料棒は内部行の燃料棒よりも濃縮度が有意に低く、濃縮度が最低である燃料棒が新型格子の隅部に配置され、濃縮度がその次に低い燃料棒が当該格子の端縁行に配置されることを特徴とする原子炉の経済的初期炉心構成方法。
【請求項2】
複数の新しい燃料集合体の束を用意するステップを含み、これらの束はその各々が多数の燃料集合体を有する燃料バッチを含み、これらの燃料集合体の各々はウラニウム平均濃縮度を有するものであり、燃料バッチには実質的に各燃料集合体のウラニウム平均濃縮度が高い高濃縮度燃料バッチと、実質的に各燃料集合体のウラニウム平均濃縮度が中位である中位濃縮度燃料バッチと、実質的に各燃料集合体のウラニウム平均濃縮度が低い低濃縮度燃料バッチとがある請求項1の方法。
【請求項3】
平衡サイクル再装荷炉心は、供給燃料集合体、一度燃焼した燃料集合体及び二度燃焼した燃料集合体のバッチを含み、これら供給燃料集合体、一度燃焼した燃料集合体及び二度燃焼した燃料集合体のバッチは各々ウラニウム235平均濃縮度及びサイズを有し、ここでバッチのサイズは当該バッチ内の燃料集合体の量によって規定されるものであり、供給燃料集合体はウラニウム235平均濃縮度が最高であり、一度燃料した燃料集合体のウラニウム235平均濃縮度はそれより低いが二度燃焼した燃料集合体のウラニウム235平均濃縮度よりは高く、二度燃料した燃料集合体のウラニウム235平均濃縮度が最低であり、初期炉心の高濃縮度燃料バッチは平衡サイクル再装荷炉心の供給燃料集合体バッチとほぼ同じサイズ及び平均濃縮度を有する請求項2の方法。
【請求項4】
平衡サイクル再装荷炉心の一度燃焼した燃料集合体及び二度燃焼した燃料集合体のバッチの各々はさらにサイクル開始時の燃焼度、初期濃縮度及び反応度を有し、初期炉心において、平衡再装荷サイクル炉心の一度燃焼した燃料バッチ及び二度燃焼した燃料バッチのサイクル開始時の燃焼度及び初期濃縮度での反応度に基づく初期平均濃縮度を有する燃料バッチを用いることにより、平衡サイクル再装荷炉心の一度燃焼した燃料バッチ及び二度燃焼した燃料バッチの反応度を近似することを特徴とする請求項3の方法。
【請求項5】
初期炉心の1またはそれ以上の燃料バッチは、同様な平均濃縮度を有する燃料集合体より成る1またはそれ以上のサブバッチを含む請求項3の方法。
【請求項6】
既知の平衡再装荷サイクル炉心の供給燃料バッチをエミュレーションするサイズ及び濃縮度を有する複数の高濃縮度サブバッチを、高濃縮度の燃料バッチとして用意するステップを含む請求項5の方法。
【請求項7】
高濃縮度サブバッチは主として初期炉心の内部に装荷され、低濃縮度の燃料バッチは主として初期炉心の外殻部に装荷される請求項6の方法。
【請求項8】
初期炉心内で結果的に得られる平均濃縮度は、ウラニウム235の約1.5重量パーセントからウラニウム235の約5.0重量パーセントの範囲内にある請求項1の方法。
【請求項9】
初期炉心内では高濃縮度燃料バッチの少なくとも1つが低濃縮度燃料バッチの少なくとも1つに隣接して配置されており、燃料集合体の半径方向の領域設定を行うことにより、初期炉心構成内の高濃縮度燃料バッチが低濃縮度燃料バッチに隣接して配置されることによる大きな熱中性子束のピークを補償するように構成されている請求項2の方法。
【請求項10】
新型格子設計は隣り合う燃料棒の行がほぼ正方形のパターンを成し、燃料棒は平均濃縮度が最低濃縮度から最高濃縮度の範囲内にある少なくとも6つの異なるタイプの何れかであり、その6つのタイプとは極低濃縮度燃料棒、低濃縮度燃料棒、中位濃縮度燃料棒、燃焼可能な吸収体が複合された中位濃縮度燃料棒、高濃縮度燃料棒、及び燃焼可能な吸収体が複合された高濃縮度燃料棒であり、極低濃縮度燃料棒をほぼ正方形パターンの4つの隅部に配置し、低濃縮度燃料棒をほぼ正方形パターンの最も外側の行に配置し、高濃縮度燃料棒及び燃焼可能な吸収体が複合された高濃縮度燃料棒をほぼ正方形パターンの中心の方へ配置する請求項9の方法。
【請求項11】
新しい燃料集合体の各々は最高濃縮度、低濃縮度及び最低濃縮度を含む少なくとも3つの異なる平均濃縮度の何れかを有し、少なくとも1つの最低濃縮度の新しい燃料集合体に隣接して配置される最高濃縮度の新しい燃料集合体のほとんどにおいて、新型格子が用いられる請求項1の方法。
【請求項12】
新しい燃料集合体の各々は最高濃縮度、低濃縮度及び最低濃縮度を含む少なくとも3つの異なる平均濃縮度の何れかを有し、初期炉心の周縁に延びる端縁行には最高濃縮度の新しい燃料集合体は1つも含まれない請求項1の方法。」


第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要

本願発明1?12は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:駒野康男 他2名,「3.2 全MOX-PWR炉心について」,JAERI-Conf,日本原子力研究所,1999年,99-014,24-35頁

・本願発明1-12
ウラニウム燃料によって炉心を構成する技術と、Puが含まれたMOX燃料によって炉心を構成する技術は隣接する技術であり、Puが含まれたMOX燃料技術の転用は当業者が適宜なし得るものにすぎないため、引用文献1に記載された発明において、核分裂物質をPuにするか、ウラニウムにするかは設計事項にすぎない。

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。

(ア)「1.はじめに
全MOX-PWR炉心は、現在推進中の部分MOX炉心の実施の後に計画されている炉心であり、1基の原子炉で大量のPuを燃焼できることが特徴である。改良型PWRおいて全MOX炉心を構築したときに、その炉心核特性、熱特性がどのように変化して、燃料健全性や炉心の安全性にどのような影響があるかについて検討した。
対象としたAPWR炉心の主要プラントパラメータを表1.に、炉心配置図を図1.に示した。又、使用したPuの組成は、現在計画されている部分MOXの場合と同じ組成として表2.のものを使用した。
まず、部分MOX炉心から全MOX炉心に移行した場合の炉心特性への影響を定性的に図2.に示している。集合体内のPu富化度1種類で済むことが大きな特徴である。あとは、制御棒の体数を必要最小限で配置するように設計検討することになる。

2.炉心設計
(1)集合体内の富化度分布
全MOX-PWR炉心では、図3.に示すように集合体内の富化度は、1種類でよいという大きな特徴がある。

(2)核設計
初装荷炉心から平衡サイクル炉心まで運転期間を13.5ヶ月(初装荷炉心は16.5ヶ月)として核計算を実施した。各サイクルでのMOX燃料のPu富化度は、表3.に示すものを使用した。平衡サイクルでの富化度は、5.9%とした。
初装荷炉心および平衡サイクル炉心の装荷図は、図4.に示した。計算炉心特性パラメータの計算結果は、表3.にまとめている。それぞれの制限値に対して十分な余裕があることが分かる。横方向ピーキングの燃焼による変化を図5.に示しているが、十分に小さな値で安定していることが分かる。図6.に軸方向の出力分布の変化の指標であるAxial Offset(AO)の燃焼による変化を示しているが、こちらも安定した変化であることが分かる。」
(第24頁第19行?第25頁第14行)

(イ)「


(第28?29頁)

(ウ)「


(第31?33頁)

上記記載事項(ウ)の図4(a)から、初装荷炉心において、Pu富化度5.9wt%の燃料集合体を炉心の最外側に、Pu富化度4.9wt%及びPu富化度2.0wt%の燃料集合体を炉心の内側に装荷することが読み取れる。

すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「全MOX-PWR炉心の初装荷炉心を構成する方法であって、
Pu富化度5.9wt%の燃料集合体を炉心の最外側に、Pu富化度4.9wt%及びPu富化度2.0wt%の燃料集合体を炉心の内側に装荷する方法。」

(2)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明を対比すると、
「加圧水型原子炉の初期炉心を構成する方法。」
で一致し、次の各点で相違する。

・本願発明1は、「経済的な初期炉心を構成する方法」である(特に、下線部)のに対して、引用発明は、経済的な「初装荷炉心を構成する方法」である(特に、下線部)か否かが不明である点。(以下、「相違点ア」という。)

・本願発明1は、
「所望の平衡サイクル再装荷炉心を構成する、各々が複数の燃料集合体より成る複数の領域の実質的にすべてについてエネルギー出力及び取出燃焼度のデータを用意」するのに対して、引用発明は、このようなデータを用意するか否かが不明である点。(以下、「相違点イ」という。)

・本願発明1は、
「加圧水型原子炉の初期炉心となるように構成されたときに、平衡サイクル再装荷炉心を構成する対応領域のエネルギー出力及び取出燃焼度をエミュレーションする、その各々が垂直方向長さを有し、以前に原子炉で照射されたことがない複数の新しい燃料集合体を用意し、これらの新しい燃料集合体にはウラニウム235の平均濃縮度が異なる高濃縮度燃料集合体と低濃縮度燃料集合体とがあ」るのに対して、引用発明は、このような「以前に原子炉で照射されたことがない複数の新しい燃料集合体を用意し、これら新しい燃料集合体にはウラニウム235の平均濃縮度が異なる高濃縮度燃料集合体と低濃縮度燃料集合体とがあ」るか否かが不明である点。(以下、「相違点ウ」という。)

・本願発明1は、
「空間反応度分布の点で平衡サイクル再装荷炉心をエミュレーションするように、複数の新しい燃料集合体を前記データに基づいて配置することにより、内部及び外殻部を有し、高濃縮度燃料集合体が実質的にすべて初期炉心の内部の方へ装荷された初期炉心の全体を、これらの新しい燃料集合体により構成」するのに対して、引用発明は、このように構成するか否かが不明である点。(以下、「相違点エ」という。)

・本願発明1は、
「新しい高濃縮度燃料集合体の少なくとも一部に用意された新型格子設計においては、燃料集合体の垂直方向長さに亘って冷却材の横断流を遮るような障壁が延びていないので、冷却材が垂直方向に流動するに際してこれらの燃料集合体の間で冷却材が横方向に有意に循環するように構成され」るのに対して、引用発明は、このように構成されるか否かが不明である点。(以下、「相違点オ」という。)

・本願発明1は、
「新型格子は燃料集合体の最も外側を延びる燃料棒の端縁行及び多数の燃料棒の内部行を有し、端縁行の燃料棒は内部行の燃料棒よりも濃縮度が有意に低く、濃縮度が最低である燃料棒が新型格子の隅部に配置され、濃縮度がその次に低い燃料棒が当該格子の端縁行に配置される」のに対して、引用発明は、このように配置されるか否かが不明である点。(以下、「相違点カ」という。)

イ 判断
上記相違点エについて検討する。
引用発明では、ウラニウム235の濃縮度についての特定はないうえ、Pu富化度についても、「Pu富化度5.9wt%の燃料集合体を炉心の最外側に、Pu富化度4.9wt%及びPu富化度2.0wt%の燃料集合体を炉心の内側に装荷する」方法であって、本願発明1の「高濃縮度燃料集合体が実質的にすべて初期炉心の内部の方へ装荷され」るという方法とは、技術的に逆の方向性を持つものであるといえるから、引用発明において、上記相違点エに係る構成とすることは当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
また、他に、上記相違点エに係る構成を開示あるいは示唆する証拠もない。

すると、上記相違点エに係る構成は、引用発明を設計変更することにより、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

したがって、本願発明1は、上記相違点ア、イ、ウ、オ、カを検討するまでもなく、上記相違点エにおいて、当業者が引用発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本願発明2?12について
本願発明2?12は、本願発明1をさらに限定するものであるから、本願発明1と同様、当業者が引用発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(4)小括
上記検討のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。


第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-01 
出願番号 特願2014-61594(P2014-61594)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G21C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関根 裕村川 雄一  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 松川 直樹
伊藤 昌哉
発明の名称 新型初期炉心燃料集合体構成及びその構成方法  
代理人 市位 嘉宏  

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