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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1318592
審判番号 不服2016-628  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-14 
確定日 2016-09-16 
事件の表示 特願2014-538727「告知機能が具備された対話アプリケーションを用いた携帯端末の装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月30日国際公開、WO2013/077587、平成26年11月20日国内公表、特表2014-531098、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2012年11月14日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年11月21日 大韓民国)とする出願であって、平成27年4月2日付けで拒絶理由が通知され、同年7月10日付けで手続補正がなされたが、同年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成28年1月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否

1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、

「【請求項1】
対話アプリケーションを用いた携帯端末の動作方法であって、
所定の内容を対話ウィンドウの特定の領域に表示する段階;及び
対話内容の増加によって前記対話ウィンドウをスクロール(scroll)する段階を含み、
前記所定の内容は、対話に参加したすべてのユーザが確認できる告知事項として、前記対話を開始したユーザによって最初に作成されて、前記所定の内容を編集可能なメニューキーを用いて前記特定の領域に直接表示され、前記対話ウィンドウに表示された対話内容がスクロールされても固定されて表示され、前記対話を開始したユーザが対話を終了した場合には、その次に対話に参加したユーザによって表示されることを特徴とする方法。」

とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。(下線は補正事項を示している。)


2.補正の適否

本件補正のうち上記補正事項1は、補正前の請求項1に記載された「前記所定の内容」が「前記特定の領域に直接表示」させることを、「前記所定の内容を編集可能なメニューキーを用いて」行うとして、及び、補正前の請求項1に記載された「前記所定の内容」を、「前記対話を開始したユーザが対話を終了した場合には、その次に対話に参加したユーザによって表示され」るとして限定したものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-187308号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審において付加した。)

ア.「【背景技術】
【0002】
ネットワークを通じて文字ベースの会話を行うチャットシステムでは、データが入力されていくとウィンドウ内に入力されたデータを1つのウィンドウ内に表示しきれなくなる場合がある。このような場合、先に入力されたデータをウィンドウ内で非表示にして、新しく入力されるデータを表示するための表示領域が確保される。ユーザは、ウィンドウ内に表示されるスクロールバーを操作することによって、ウィンドウ内から非表示になったデータをウィンドウ内に表示させてデータを閲覧することができる。
【0003】
図1、図2は、従来のチャットシステムにおけるウィンドウ表示を例示する図である。例えば、図1では、ウィンドウ全体に入力されたデータが表示されており、更に、データを表示するためのスペースはない。図1の表示状態で、会話の入力フィールドから更にデータが入力されると、図2のように、それまでに入力されたデータの表示位置はウィンドウの上方に移動する。図1の表示状態で一番上の行に表示されていたデータが非表示とされ、新たに入力されたデータがウィンドウの末尾に追加される。その際に、例えば、ウィンドウの右端にスクロールバーが表示される。ユーザは、マウスを用いてそのスクロールバーをスライド操作することによって、表示位置が上方に移動してウィンドウ内から非表示となったデータをウィンドウ内に表示することが可能である。」(4頁1-18行)

イ.「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のチャットシステムでは、ウィンドウ内に重要なデータを常に閲覧可能な状態で表示することはできない。
【0007】
また、従来の議事録機能では、テレビ会議のアジェンダやアクションアイテムなど会議において重要なデータが表示されていても、ユーザが新たな議事録データを追加すると、議事録データ全体の表示位置を自動的に上方に移動させて表示していた。仮にウィンドウ上部にアジェンダやアクションアイテムなどユーザにとって常に閲覧したい重要なデータがあった場合でも、議事録データの追加作業を続けるとそのデータが非表示となってしまい、ユーザに常に閲覧可能な状態で表示することはできない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ユーザがスクロールバーを用いて表示領域を操作しても、ユーザは重要度の高いデータを常に閲覧することを可能にする表示制御技術の提供を目的とする。」(4頁32-46行)

ウ.「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザがスクロールバーを用いて表示領域を操作しても、ユーザは重要度の高いデータを常に閲覧することが可能になる。」(5頁13-16行)


エ.「【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態として、ネットワーク通信を用いて文字ベースで会話を行うチャットおいて、ユーザのマークした重要な会話のみを、ウィンドウ内に常に閲覧可能な状態で表示する構成を説明する。
【0036】
図14は、第2実施形態にかかる処理の流れを説明するフローチャートである。CPU201の全体的な制御の下に図14のフローチャートの処理が実行される。本実施形態にかかる表示制御用のアプリケーションが起動すると本処理がスタートする(S201)。
【0037】
ステップS202において、発話者の名前と、その発話者の入力した内容をリスト状に格納する配列talkを初期化する。本実施形態では、発話者の名前の末尾に、その発話者の入力した内容を追加した文字列を、配列talkに格納するものとする。もし、発話者の名前が不要な場合には、配列talkに発話者の内容だけを格納することも可能である。会話が始まっていない状態では、配列の長さは0であり、ユーザの会話が始まった後は、その会話に対して配列talkにデータが格納されていく。
【0038】
図16は、チャットシステムにおける会話表示を例示する図である。図16の会話を例にとると、配列talk[0]には、
「[Aさん]
明日のプレゼンお願いします」が格納される。
【0039】
次に、配列talk[1]には
「[Bさん]
場所はどこですか?」が格納される。
【0040】
ステップS203において、ユーザのマークした会話のインデックスを格納する配列markを初期化する。
【0041】
ステップS204において、ユーザのマークした会話を表示するための枠の縦サイズ(markSize)を「0」で初期化する。横サイズはチャットウィンドウの横サイズと同じである。ここで、ユーザのマークした重要な内容の会話を表示するための枠を、重要データ欄と呼ぶことにする。
【0042】
次に、ステップS205において、ユーザのマークしていない通常の会話を表示するための枠の縦サイズ(normalSize)を、チャットウィンドウの縦サイズで初期化する。横サイズはチャットウィンドウの横サイズと同じである。ここで、ユーザが重要な内容としてマークしていない通常の会話を表示するための枠を、標準データ欄と呼ぶことにする。
【0043】
図15は、格納された行単位の文書データ(文字データを含む)に対して、重要度の高い情報であることを示す識別情報、例えば、文字列、マーク等の図形情報を指定するためのユーザインタフェース画面を例示する図である。ユーザは、ユーザインタフェース画面を介して、識別情報に用いる文字列の文字サイズ、文字列の表示色、文字列の書体(線の太さを含む)、文字列に対する下線付きの設定のうち、少なくともいずれか1つが設定可能である。チャットの内容に対して、少なくともいずれか1つの項目が指定されると、CPU201は、その会話の内容を重要な会話の内容と判定する。
【0044】
ステップS206において、ユーザが、重要な会話に対する文字列、または図形情報(マーク)の指定方法を、図15に示すユーザインタフェースから指定すると、指定された識別情報の属性は内部メモリに保存される。
【0045】
次に、ステップS207において、ユーザのチャットの会話が終了したかどうかを判定する。ユーザがチャットの会話を終了する場合(S207-Yes)、処理は終了する(S215)。一方、ステップS207の判定で、ユーザがチャットの会話を終了していない場合(S207-No)、処理はステップS208に進められる。
【0046】
ステップS208において、CPU201は第1格納手段として機能し、表示領域に表示されている文字データを行単位に内部メモリに格納する。ここで、各会話の発話者の名前と、その発話者が入力した内容が行単位に配列talkに格納される。
【0047】
ステップS209において、CPU201は判定手段として機能し、格納された行単位の文字データに対して、重要度の高い情報であることを示す識別情報が設定されているか否かを判定する。先のステップS206で指定された文字列や図形情報が、その会話に設定されているかどうかを判定する。文字列や図形情報が設定されていない場合(S209-No)、処理はステップS211に進められる。一方、文字列や図形情報が設定されている場合(S209-Yes)、処理はステップS210に進められる。
【0048】
図15に示すユーザインタフェースを用いて、ユーザは、重要な内容の会話であることを示す文字列や図形情報を指定することができる。ここで、文字には、文字列を構成するカナ、漢字、英数字が含まれ、図形情報(マーク)には、文字列を構成する記号、符号などが含まれる。例えば、図形情報(マーク)として「☆」をユーザが指定した場合に、図16のようにユーザが会話文中に「☆」を入力すると、CPU201は、重要な会話文であることを示す文字データであると判定する。
【0049】
特定の文字列、図形情報(マーク)の種類のほか、文字列の修飾、例えば、文字列の書体として、文字を太くして強調する指定がされている場合、CPU201は、重要な会話文であることを示す文字データと判定する。例えば、図17に示すように、文字データのフォントを太くして強調されている場合に、CPU201は、重要な会話文であることを示す文字データと判定する。また、文字列の修飾として、文字列の表示色、下線付きが指定されている場合に、CPU201は、重要な会話文であることを示す文字データと判定する。
【0050】
ステップS210において、CPU201は、第2格納手段として機能し、S209の判定結果に基づき、識別情報が設定されている文字データを特定データとして行単位に内部メモリに格納する。先のステップS209で会話文中に識別情報が付いていると判定された場合、配列markの末尾にその識別情報の付いた会話のインデックスを追加する。
【0051】
ステップS211において、CPU201は決定手段として機能し、格納された特定データのデータ量に基づき、特定データを、表示領域内に表示するための特定領域のサイズを決定する。そして、CPU201は、その決定結果に基づき、文字データから特定データを除いた標準データを表示領域内に表示するための標準領域のサイズを決定する。配列markの各要素に格納されているインデックスを決定し、配列talkの内容を重要データ欄に表示するために、その重要データ欄の縦のサイズ(markSize)を決定し、決定結果を内部メモリに保存する。重要データ欄の縦のサイズ(markSize)は、ウィンドウの横幅、特定データの総行数と特定データに設定されているフォントサイズに基づき決定される。
【0052】
ステップS212において、CPU201は表示制御手段として機能し、表示領域を、特定領域と標準領域とに分割し、特定データを特定領域に表示する。CPU201は、重要データ欄に、配列markのインデックスの会話の内容を表示する。
【0053】
ステップS213において、CPU201は、チャットのウィンドウの縦サイズからmarkSizeを引いた値(normalSize)を内部メモリに格納する。
【0054】
ステップS214において、CPU201は表示制御手段として機能し、標準情報を標準領域(標準データ欄)に表示する。CPU201は、標準データ欄の縦のサイズをnormalSizeの値に設定し、全ての会話を格納している配列talkについて、インデックス番号の大きく新しい会話から順番に、標準データ欄にその会話の内容を表示する。」(8頁7行-10頁13行)

オ.「【0064】
図19は、表示部206のウィンドウ内に表示される、重要データ欄と、標準データ欄と、を例示する図である。会話の途中で、会話に対してマークが付けられた場合には、そのマークを付けた会話は逐次重要データ欄に累積表示される。マークを付けていない会話は、従来のチャットシステムのようにウィンドウ内の標準データ欄に表示され、マークを付けていない会話は累積表示されない。図19に示すように、例えば、ウィンドウの右端には、ウィンドウ内のデータの表示位置をスクロールして制御する全体画面用のスライドバーが表示される。尚、スライドバーの表示位置は、ウィンドウの右端に限定されるものではなく、ウィンドウの左端、上端、若しくは下端であってもよい。」(10頁40-48行)


上記刊行物1の記載、及びこの分野の技術常識を考慮すると次のことがいえる。

a.上記エ.の段落【0035】に記載によれば、刊行物1の第2実施形態は、ネットワーク通信を用いて文字ベースで会話を行うチャットおいて、ユーザのマークした重要な会話のみを、ウィンドウ内に常に閲覧可能な状態で表示する構成のものであり、また、段落【0036】?【0054】、及び図14には、第2実施形態の表示に関する処理のフローチャートの説明が記載されており、刊行物1には、実施形態2に関する表示方法が記載されているといえる。
したがって、刊行物1には、ネットワーク通信を用いて文字ベースで会話を行うチャットおいて、ユーザのマークした重要な会話のみを、ウィンドウ内に常に閲覧可能な状態で表示する表示方法、が記載されているといえる。

b.上記エ.の段落【0037】、【0040】?【0042】の記載によれば、上記表示方法は、発話者の名前と、その発話者の入力した内容をリスト状に格納する配列talkを初期化するステップS202と、ユーザのマークした会話のインデックスを格納する配列markを初期化するステップS203と、ユーザのマークした会話を表示するための重要データ欄の縦サイズ(markSize)を「0」で初期化するステップS204と、ユーザのマークしていない通常の会話を表示するための標準データ欄の縦サイズ(normalSize)を、チャットウィンドウの縦サイズで初期化するステップS205と、を有している。

c.上記エ.の段落【0043】、【0044】の記載によれば、上記表示方法は、ユーザが、ユーザインタフェース画面を介して、チャットの会話に対して、重要度の高い情報であることを示すマークである識別情報を指定すると、指定された識別情報の属性は内部メモリに保存されるステップS206、を有している。

d.上記エ.の段落【0045】?【0047】の記載によれば、上記表示方法は、ユーザのチャットの会話が終了したかどうかを判定するステップS207と、ステップS207の判定で、ユーザがチャットの会話を終了していない場合、表示領域に表示されている文字データは、各会話の発話者の名前と、その発話者が入力した内容が行単位に配列talkに格納されるステップS208と、格納された行単位の文字データに対して、重要度の高い情報であることを示す前記ステップS206で指定された識別情報が設定されているか否かを判定するステップS209と、

e.上記エ.の段落【0050】の記載によれば、上記表示方法は、先のステップS209で会話文中に識別情報が付いていると判定された場合、識別情報が設定されている文字データを特定データとして行単位に配列markの末尾に追加するステップS210、を有している。

f.上記エ.の段落【0051】の記載によれば、上記表示方法は、格納された特定データのデータ量に基づき、特定データを、表示領域内に表示するための特定領域のサイズを決定するステップS211、を有している。

g.上記エ.の段落【0052】の記載によれば、上記表示方法は、表示領域を、特定領域と標準領域とに分割し、特定データを重要データ欄である特定領域に表示するステップS212、を有している。

h.上記エ.の段落【0053】、【0054】の記載によれば、チャットウィンドウの縦サイズからmarkSizeを引いた値(normalSize)を内部メモリに格納するステップS213と、標準データ欄の縦のサイズを前記normalSizeの値に設定し、全ての会話を格納している配列talkについて、インデックス番号の大きく新しい会話から順番に、標準データ欄にその会話の内容を表示するステップS214と、を有している。

i.上記オ.の段落【0064】、図19の記載によれば、上記表示方法は、会話の途中で、会話に対してマークが付けられた場合には、そのマークを付けた会話は逐次重要データ欄に累積表示し、マークを付けていない会話は、従来のチャットシステムのようにウィンドウ内の標準データ欄に表示し、ウィンドウの右端には、ウィンドウ内のデータの表示位置をスクロールして制御する全体画面用のスライドバーが表示されるものであり、また、上記ア.の段落【0003】、図1、図2の記載によれば、従来のチャットシステムは、ウィンドウ全体に入力されたデータが表示されており、更に、データを表示するためのスペースはない際に、会話の入力フィールドから更にデータが入力されると、それまでに入力されたデータの表示位置はウィンドウの上方に移動し、一番上の行に表示されていたデータが非表示とされ、新たに入力されたデータがウィンドウの末尾に追加され、ウィンドウの右端にスクロールバーが表示され、ユーザは、マウスを用いてそのスクロールバーをスライド操作することによって、表示位置が上方に移動してウィンドウ内から非表示となったデータをウィンドウ内に表示することが可能である。
したがって、刊行物1には、上記表示方法は、会話の入力フィールドから会話に対してマークが付けられた会話が入力された場合には、そのマークを付けた会話は逐次重要データ欄に累積表示し、また、標準データ欄全体に入力された会話が表示されており、更に、会話を表示するためのスペースがない際に、会話の入力フィールドからマークを付けられていない会話が入力された場合には、標準データ欄にそれまでに入力されたデータの表示位置は標準データ欄の上方に移動し、一番上の行に表示されていた会話が非表示とし、新たに入力された会話が標準データ欄の末尾に追加し、標準データ欄の右端にスクロールバーが表示し、ユーザが、マウスを用いてそのスクロールバーをスライド操作することによって、表示位置が上方に移動して標準データ欄から非表示となった会話を標準データ欄内に表示する、ことが記載されているといえる。

j.上記イ.の段落【0008】、及びウ.の記載によれば、刊行物1の発明は、ユーザがスクロールバーを用いて表示領域を操作しても、ユーザは重要度の高いデータを常に閲覧することが可能になるものである。

以上総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

〈引用発明〉

「ネットワーク通信を用いて文字ベースで会話を行うチャットおいて、ユーザのマークした重要な会話のみを、ウィンドウ内に常に閲覧可能な状態で表示する表示方法であって、
発話者の名前と、その発話者の入力した内容をリスト状に格納する配列talkを初期化するステップS202と、
ユーザの前記マークした会話のインデックスを格納する配列markを初期化するステップS203と、
ユーザの前記マークした会話を表示するための重要データ欄の縦サイズ(markSize)を「0」で初期化するステップS204と、
ユーザの前記マークしていない通常の会話を表示するための標準データ欄の縦サイズ(normalSize)を、チャットウィンドウの縦サイズで初期化するステップS205と
ユーザが、ユーザインタフェース画面を介して、チャットの会話に対して、重要度の高い会話であることを示す識別情報である前記マークを指定し、指定された該識別情報の属性は内部メモリに保存されるステップS206と、
ユーザのチャットの会話が終了したかどうかを判定するステップS207と、
該ステップS207の判定で、ユーザがチャットの会話を終了していない場合、各会話の発話者の名前と、その発話者が入力した内容が行単位に前記配列talkに格納されるステップS208と、
該格納された行単位の文字データに対して、重要度の高い情報であることを示す前記ステップS206で指定された識別情報である前記マークが設定されているか否かを判定するステップS209と、
該ステップS209で会話文中に前記マークが付いていると判定された場合、前記マークが設定されている文字データを特定データとして行単位に前記配列markの末尾に追加するステップS210と、
該格納された前記特定データのデータ量に基づき、前記特定データを、前記チャットウィンドウに表示するための前記重要データ欄の縦のサイズ(markSize)を決定するステップS211と、
前記チャットウィンドウを、前記重要データ欄と前記標準データ欄とに分割し、前記特定データを前記重要データ欄に表示するステップS212と、
前記チャットウィンドウの縦サイズから前記markSizeを引いた値(normalSize)を内部メモリに格納するステップS213と、
前記標準データ欄の縦のサイズを前記normalSizeの値に設定し、全ての会話を格納している前記配列talkについて、インデックス番号の大きく新しい会話から順番に、前記標準データ欄にその会話の内容を表示するステップS214と、
を有し、
会話の入力フィールドから会話に対して前記マークが付けられた会話が入力された場合には、そのマークを付けた会話は前記逐次重要データ欄に累積表示し、また、前記標準データ欄全体に入力された会話が表示されており、更に、会話を表示するためのスペースはない際に、会話の入力フィールドからマークを付けられていない会話が入力された場合には、前記標準データ欄にそれまでに入力された会話の表示位置は標準データ欄の上方に移動し、一番上の行に表示されていた会話が非表示とし、新たに入力された会話が標準データ欄の末尾に追加し、標準データ欄の右端にスクロールバーが表示し、ユーザが、マウスを用いてそのスクロールバーをスライド操作することによって、表示位置が上方に移動して標準データ欄から非表示となった会話を標準データ欄内に表示し、
ユーザが前記スクロールバーを用いて前記チャットウィンドウを操作しても、ユーザは特定データを常に閲覧することが可能である、
表示方法。」

(2)対比

補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「チャット」は、補正発明の「対話アプリケーションに」に相当し、また、「チャット」は携帯端末で用いられることは普通であるから、引用発明の「表示方法」は、補正発明の「対話アプリケーションを用いた携帯端末の動作方法」に含まれる。

イ.引用発明の「特定データ」、「チャットウィンドウ」、及び「重要データ欄」は、補正発明の「所定の内容」、「対話ウィンドウ」、及び「特定の領域」に相当するから、引用発明の「ステップ212」は、補正発明の「所定の内容を対話ウィンドウの特定の領域に表示する段階」に相当する。

ウ.引用発明の「特定データ」は、チャットに参加した各ユーザがいつでも指定できるものであるが、「重要度の高いデータ」であり、また、通常、チャットシステムにおいては、チャットに参加している各ユーザの端末では同じ表示がなされるものであるから、各ユーザの端末の「重要データ欄」に表示される「特定データ」は、対話に参加した各ユーザに告知される情報といえ、さらに、引用発明においては、「ユーザが前記スクロールバーを用いて前記チャットウィンドウを操作しても、ユーザは特定データを常に閲覧することが可能である」から、引用発明と補正発明は、「前記所定の内容は、対話に参加したすべてのユーザが確認できる告知事項として、前記対話に参加したユーザによって作成されて、前記特定の領域に直接表示され、前記対話ウィンドウに表示された対話内容がスクロールされても固定されて表示される」の点で共通する。


よって、補正発明と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「対話アプリケーションを用いた携帯端末の動作方法であって、
所定の内容を対話ウィンドウの特定の領域に表示する段階;及び
対話内容の増加によって前記対話ウィンドウをスクロール(scroll)する段階を含み、
前記所定の内容は、対話に参加したすべてのユーザが確認できる告知事項として、前記対話に参加したユーザによって作成されて、前記特定の領域に直接表示され、前記対話ウィンドウに表示された対話内容がスクロールされても固定されて表示される、
方法。」

(相違点1)
補正発明では、「前記所定の内容」は、「前記対話を開始したユーザによって最初に作成されて」いるのに対して、引用発明では、「特定データ」は、対話に参加している各ユーザによっていつでも作成可能な点。

(相違点2)
補正発明では、「前記所定の内容」は、「前記所前記所定の内容を編集可能なメニューキーを用いて前記特定の領域に直接表示され」のに対して、引用発明では、「特定データ」を、対話に参加している各ユーザがマークすることによって「重要データ欄」に表示される点。

(相違点3)補正発明では、「前記所定の内容」は、「前記対話を開始したユーザが対話を終了した場合には、その次に対話に参加したユーザによって表示され」のに対して、引用発明では、対話を開始したユーザが対話を終了することに関しては記載されておらず、そのため「特定データ」がどのように扱われるかは特定されていない点。

(3)判断

当審は次のとおり判断する。

下のア.?ウ.に示す理由で、引用発明において上記相違点3に係る補正発明の構成を採用することは、当業者といえども容易に推考し得たこととはいえない。

ア.引用発明を開示する刊行物1には、引用発明において上記相違点3に係る補正発明の構成を採用することについての記載も、それを示唆する記載もない。

イ.グループのリーダがいなくなった際に、リーダに固有の権限を副リーダが引き継ぐことは常套手段と認められる。
しかしながら、引用発明では各ユーザが、「特定データ」を「重要データ欄」に表示させることが可能であるが、対話を開始したユーザが対話を終了したとしても、次に対話に参加したユーザに「特定データ」を「重要データ欄」に表示させる理由はない。
また、仮に、引用発明において、対話を開始したユーザのみに「特定データ」を「重要データ欄」に表示させることは、当業者が容易に想到し得ることとしても、その際に、対話を開始したユーザが対話を終了すれば、通常であれば、元の各ユーザが、「特定データ」を「重要データ欄」に表示させることとするものと認められる。
したがって、引用発明に常套手段を適用することはできす、上記相違点3に係る補正発明の構成は導出されない。

したがって、引用発明において上記相違点3に係る補正発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったとはいえない。

ウ.ほかに引用発明において上記相違点3に係る補正発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったといえる根拠は見当たらない。

したがって、その他の点について判断するまでもなく、補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。


本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび

本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。


第3 本願発明

本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-14に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-05 
出願番号 特願2014-538727(P2014-538727)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 千葉 輝久
山澤 宏
発明の名称 告知機能が具備された対話アプリケーションを用いた携帯端末の装置及び方法  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  
代理人 実広 信哉  

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