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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1318634
審判番号 不服2014-16183  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-14 
確定日 2016-08-24 
事件の表示 特願2010-513234「CRTH2アンタゴニストの粒子」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月24日国際公開、WO2008/156780、平成22年 9月 9日国内公表、特表2010-530425〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、2008年6月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年6月21日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、出願後の経緯の概要は次のとおりである。

平成25年 6月25日付け 拒絶理由通知
平成26年 1月22日 意見書、手続補正書及び手続補足書の提出
同年 4月 9日付け 拒絶査定
同年 8月14日 拒絶査定不服審判の請求
同年 8月15日 手続補足書の提出
平成27年10月21日付け 拒絶理由通知
平成28年 2月10日 意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は、平成28年2月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「結晶形態Iの式I:
【化1】

の{4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-(4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド)-ベンジル)ピリミジン-5-イル}酢酸の粒子であって、結晶形態Iが9.8、13.1、22.0、及び26.4°に2θで表されるピークをもつX線粉末回折パターンを有する、前記粒子。」

第3 当審において通知した拒絶理由
当審において通知した拒絶理由のうち、理由1は次のとおりである。
「[理由1]この出願の請求項1?20、24?51に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
上記刊行物のうち刊行物1は以下のものである。
刊行物1:特表2006-524645号公報

第4 当審の判断
1 刊行物1の記載事項
上記刊行物1には、次の事項が記載されている。
1A)「【請求項1】
式(I)のピリミジン誘導体、その互変異性又は立体異性体、又は塩、エステル又はそれらのプロドラッグ:
【化1】

上記式において、R^(1)は水素原子、又は
【化2】

を表わし、
上記式において、nは0?6の整数を表し、
-Q_(1)-は、-NH-,-N (C_(1-6)アルキル)-又は-O-を表わし、
Yは、水素原子、C_(1-6)アルキル、C_(1-6)アルキルで任意に置換されたC_(3-8)シクロアルキル、ベンゼン、アリール又はヘテロアリールと結合されたC_(3-8)シクロアルキルを表わし、
上記アリール及びヘテロアリールは、置換し得る位置で、シアノ, ハロゲン, ニトロ, グアニジノ, ピロリル, スルファモイル, C_(1-6) アルキルアミノスルホニル, ジ(C_(1-6) アルキル)アミノスルホニル, フェニルオキシ, フェニル, アミノ, C_(l-6)アルキルアミノ, ジ(C_(1-6)) アルキルアミノ, C_(1-6)アルコキシカルボニル, C_(1-6)アルカノイル, C_(1-6) アルカノイルアミノ, カルバモイル, C_(1-6)アルキルカルバモイル, ジ-(C_(1-6)アルキル) カルバモイル, C_(1-6)アルキルスルホニル, モノ-, ジ-, 又はトリ-ハロゲンで任意に置換されているC_(1-6)アルキル、モノ-, ジ-, 又はトリ-ハロゲンで任意に置換されているC_(1-6)アルコキシ、及びモノ-, ジ-, 又はトリ-ハロゲンで任意に置換されているC_(1-6)アルキルチオからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換されており、
又は、アリールは1,3-ジオキソランと結合しており;
R^(2)は水素原子又はC_(1-6)アルキルを表わし;
R^(3)はハロゲン、モノ-, ジ-, 又はトリ- ハロゲン、
【化3】

で任意に置換されているC_(1-6)アルコキシを表わし、
上記式において、R^(3a)及びR^(3b) は、独立にC_(3-8)シクロアルキル又はC_(1-6) アルキルを表わし、C_(1-6)アルキルは、ヒドロキシ, カルボキシ, C_(3-8) シクロアルキル, カルバモイル, C_(1-6) アルキルカルバモイル, アリール-置換されたC_(1-6)アルキルカルバモイル, C_(1-6)アルキルカルバモイル, ジ(C_(1-6)アルキル) カルバモイル, C_(3-8)シクロアルキルカルバモイル, C_(3-8)ヘテロシクロカルボニル, (C_(1-6))アルキルアミノ, ジ(C_(1-6)) アルキルアミノ又はC1-6 アルコキシで任意に置換されており、
qは1?3の整数であり、
R^(3c)は、水素原子、ヒドロキシ、 カルボキシ、又はヒドロキシ, カルボキシ又は (フェニル-置換C_(1-6)アルキル) カルバモイルで任意に置換されたC_(1-6)アルキルを表わし;
Xaは-O-, -S- 又は-N(R^(3d))- を表わし、
R^(3d)はC_(1-6)アルキルを表わし;
R^(4)は、水素原子, ハロゲン, C_(1-6)アルコキシ, ジ(C_(1-6)アルキル)アミノ、又はC_(1-6)アルコキシ、又はモノ-、ジ-、又はトリ-ハロゲンで任意に置換されたC_(1-6)アルキルを表わし;
R^(5)は水素原子又はC_(1-6)アルキルを表わし;かつ
R^(6)はカルボキシ、カルボキシアミド、ニトリル又はテトラゾリルを表わす。」

1B)「【請求項5】
下記化合物からなる群から選択される、一般式(I)のピリミジン誘導体、その互変異性又は立体異性体、又は塩、エステル又はそれらのプロドラッグ:・・・
[4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル) ピリミジン-5-イル] 酢酸;・・・。」(特に冒頭及び10頁下から3?下から2行)

1C)「【請求項6】
活性成分として、請求項1に記載のピリミジン誘導体、その互変異性又は立体異性体、又は生理的に許容される塩、エステル又はそれらのプロドラッグを含有する医薬。」

1D)「【0055】
該式(I)のピリミジン誘導体は、優れたCRTH2拮抗的活性を示す。従って、それらは、CRTH2活性と関連する疾患の予防及び治療に特に適している。
特に、該式(I)のピリミジン誘導体は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎及びアレルギー性結膜炎等のアレルギー疾患の治療、及び予防に有効である。
また、式(I)の化合物は、チャーグ-ストラウス症候群、副鼻腔炎、好塩基球性白血病、慢性じんま疹及び好塩基球性白血病等の疾患がCRTH2活性と関連するので、これらの疾患の治療及び予防にも有用である。
さらに、本発明は、上述した化合物及び付加的に薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬を提供する。」

1E)「【0067】
(本発明の実施態様)
・・・
本発明の一般式(I)の化合物は、以下の方法 [A],・・・で製造されるが、これらに限定されない。
【0068】
【化11】


【0069】
式(I-a)(式において、R^(3)、R^(4)及びR^(5)は先に定義した通りであり、R^(1a)は、
【0070】
【化12】

【0071】
であり、
上記において、n及びYは先に定義した通りである)は、以下の方法で二段階で製造される。
【0072】
工程A-1において、式(IV)の化合物(式において、R^(1a), R^(3), R^(4)及びR^(5)は、先に定義したのと同じであり、Z_(l)はC_(1-6)アルキル,ベンジル,4-メトキシベンジル又は3,4-ジメトキシベンジル)・・・
【0080】
・・・
工程A-2において、一般式(I-a)の化合物(式において、R^(1a),R^(3), R^(4)及びR^(5) は、先に定義した通りである。)は、一般式(IV)(式において、R^(1a),R^(3),R^(4),R^(5)及びZ^(1)は先に定義した通りである。)の化合物の保護基Z^(1)を除去することによって製造することができる。
【0081】
保護基Z^(1)の除去は、・・・
【0082】
反応は、ジクロロメタン, クロロホルム及び1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル,イソプロピルエーテル, ジオキサン及びテトラヒドロフラン(THF)及び1, 2-ジメトキシエタン等のエーテル;ベンゼン,トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;N, N-ジメチルホルムアミド(DMF), ジメチルアセトアミド(DMAC),1,3-ジメチル-3, 4,5,6-テトラヒドロ-2 (1H)-ピリミジノン(DMPU), 1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン (DMI), N-メチルピロリジノン(NMP), ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド;メタノール, エタノール, 1-プロパノール, イソプロパノール及びtert-ブタノール等のアルコール、水等の溶媒中で行うことができる。」

1F)「【0149】
本発明の化合物は、限定されないが、標準の、及び腸溶錠、・・・等の経口の形態で投与してもよい。それらは、また、限定されないが、静脈注射、腹腔内注射、皮下注射、筋肉注射等の、薬学の分野で通常の技術者に周知の形態で、非経口的形態で投与してもよい。本発明の化合物は、適当な鼻腔内投与媒体の局所使用による鼻腔内投与形態、又はこの分野の通常の技術者に周知の経皮送達システムを用いた、経皮経路により投与してもよい。
【0150】
・・・
本発明の化合物は、好ましくは、投与前に、1以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に配合される。賦形剤は、限定されないが、担体、・・・等の不活性な物質である。」

1G)「【0158】
・・・
本発明の化合物の効果は、以下の試験法及び薬理試験により調べる。
【0159】
(実施例1)
〔ヒトCRTH2をトランスフェクトされたL1. 2 細胞系の調製〕
ヒトCRTH2 cDNAは、pEAKベクター(Edge Bio Systems)内のクローニングのための制限サイトを含む、遺伝子特異的プライマーを有する、ヒトエオシン好性cDNAから増幅した。ヒトCRTH2 cDNAを、ほ乳類発現ベクターpEAKにクローニングした。この発現プラスミド(40μg)を、250V/1,000 μFで、エレクトロポレーション装置(ジーンパルサーII,バイオラッド)を用いることにより、1×107細胞/500μlの細胞濃度で、L1. 2 細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの1日後、プロマイシン(1μg/ml,シグマ)を、細胞培養プレートに加えた。トランスフェクションの2週間後、増殖した細胞をさらなる増殖のために拾い挙げた。
【0160】
[ヒトCRTH2をトランスフェクトしたL1. 2 細胞系内におけるCa^(2+)可動化の測定]
(試験1)
Ca^(2+)添加液を、5μLのFluo-3AM(DMSO中の2mM、最終1μM、モレキュラープローブス)及び10μLのプルロニックF-127(モレキュラープローブス)と混合し、得られた混合液を、10mlのCa^(2+)試験バッファー(20mM HEPES pH 7.6, 0.1% BSA, 1 mM プロベネシド,ハンクス溶液)で希釈することにより調製した。実施例1で調製したCRTH2をトランスフェクトした細胞を、PBSで洗浄し、Ca^(2+)添加液で1×107細胞/mlに再懸濁し、室温で60分インキュベートした。インキュベーションを行った後、細胞を洗浄し、Ca^(2+)試験バッファーに再懸濁し、次いで、透明の底の96穴プレート(#3631,コスター)に分配した。細胞を、種々の濃度の試験化合物と室温で5分間インキュベートした。放射された480nmの蛍光を、Ca^(2+)測定装置(浜松ホトニクス(株)、日本浜松市)、FDSS6000で測定した。トランスフェクタントは、濃度依存的にPGD2が誘導するCa^(2+)連動を示した。
・・・
【0166】
・・・
以下のセクション中で融点において用いられるzは、分解を示す。」

1H)「【0232】
(実施例7-2)
[4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン-5-イル]酢酸
【0233】
【化43】

【0234】
DMPU (50 mL)中のメチル[4-クロロ-6-(ジメチルアミノ)-2-(4-ニトロベンジル) ピリミジン-5-イル]アセテート(7.75g, 21.25ミリモル),ジメチルアンモニウムクロライド (5.20g, 63.74ミリモル),及びN, N-ジイソプロピルエチルアミン(10.98g, 84.98ミリモル)を、封をした試験管内で150℃で15時間加熱した。・・・
【0237】
メチル[4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}- ベンジル) ピリミジン-5-イル]アセテート(4.34g、8.42ミリモル)の、20%テトラヒドロフランを含むメタノール溶液(100mL)を、IN 水酸化ナトリウム溶液(25mL)で処理した。残留する水溶液をジエチルエーテルで洗浄し、0℃で1N 塩酸で中和した。分離した沈殿物を吸飲によって集め、冷水で洗浄した。次いで、メタノールから再結晶し、無色の針状結晶として、[4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル)ピリミジン-5-イル]酢酸を得た(3.86g,81%)。
【0238】
^(1)H NMR (500 MHz, DMSO-d6):δ 3.29 (s,12H), 3.44 (s,2H), 3.83(s,2H), 7.33 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.66(d,J=8.2Hz,2H), 7.90(d,J=8.2Hz,2H), 8.13(d,J=8.2Hz,2H), 10.28(s,1H), 12.02(s,1H).
【0239】
分子量: 501.51
質量分析: 502 (M+H)^(+)
融点: 200 Z℃
活性クラス:A」

2 刊行物1に記載された発明
上記摘示1A?1Hからみて、刊行物1には、[4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル) ピリミジン-5-イル] 酢酸の化学名を有する化合物を実際に製造し、該化合物が針状結晶として得られたこと、式(I)のピリミジン誘導体は、優れたCRTH2拮抗的活性を示し、CRTH2活性と関連する疾患の予防及び治療に特に適していることが記載されている。
してみると、刊行物1には、[4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)ベンゾイル]アミノ}ベンジル) ピリミジン-5-イル] 酢酸の針状結晶」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の結晶は針状のものであるから、「粒子」であるといえる。
したがって、両発明は、結晶形態の{4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-(4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド)-ベンジル)ピリミジン-5-イル}酢酸の粒子である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>本願発明は、結晶形態が結晶形態Iであり、結晶形態Iが9.8、13.1、22.0、及び26.4°に2θで表されるピークをもつX線粉末回折パターンを有するとしているのに対し、引用発明は結晶ではあるがその形態及びX線粉末回折パターンのピークが特定がされていない点

4 相違点についての検討
上記相違点について検討する。
引用発明ではメタノールを溶媒とし、再結晶により結晶化している(摘示1H)が、結晶化にどのような手法を採用し、具体的にどのような条件で結晶化したかについて、メタノールを溶媒としたこと以外は不明である。
一方、本願発明に係る結晶形態Iの結晶は、メタノール中の{4,6-ビス(ジメチルアミノ)-2-(4-(4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド)-ベンジル)ピリミジン-5-イル}酢酸(以下「化合物A」ともいう。)のスラリーの室温での一晩撹拌によるか(実施例2)、化合物Aの態Iの酸をメタノールに溶解し、溶媒を25又は50℃にて溶液から蒸発させることによるか(実施例6、表4)、化合物Aの形態Iの酸のメタノールの飽和溶液を約30?50℃にて製造し、アセトン/氷浴においてクエンチ冷却することにより(実施例9、表7)得られるものであるところ、これら実施例の記載からみて、本願発明の粒子に係る結晶形態Iの結晶は、メタノールを溶媒又は分散媒とする限り、結晶を製造するに際し周知の方法である、スラリーから製造する方法、溶液から溶媒を蒸発させることによって製造する方法、溶液を冷却することによって製造する方法である、多様な製造方法のいずれによっても製造できるものといえる。
ここで、引用発明の結晶に係る化合物は医薬品に用いられる化合物であるところ(摘示1C、1D、1F、1G)、一般的に医薬品化合物においては結晶多形の探索をする動機付けがあるものといえ、多形は晶出条件を変えることによって製造できること、多形によって安定性等の物性が異なることも周知であり、上述のとおり、本願発明の粒子に係る結晶形態Iの結晶はメタノールを溶媒又は分散媒として多様な条件下で製造できるものであるから、本願発明の粒子に係る結晶は当業者が通常なし得る範囲の試行錯誤で得られた結果物に過ぎないものというべきであり、当該結晶を製造することは当業者が容易に行うことである。
また、結晶を粉末X線回折パターン又はそのピークを用いて特定することは周知であるから、得られた結晶を該ピークを用いて表現することは当業者が容易に行うことである。

5 本願発明の効果について
そして、本願明細書の記載をみても、本願発明は、上記相違点に係る技術的事項を採用することで、熱的安定性等の点において当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するとはいえない。
なお、審判請求人は、平成26年8月14日付け審判請求書、平成28年2月10日付け意見書において、結晶形態Iは約224℃まで熱的に安定である一方、引用文献1(上記刊行物1に同じ)の実施例7-2の同一化合物は約200℃程度であり(何が約200℃であるか明確ではないが、文脈からいって、熱的に不安定になる温度であると解される)、本願発明の大きな熱的安定性は意外な結果である旨主張する。
しかし、本願明細書には、形態Iの粒子は200℃周辺での分解まで有意な重量減少を示さない旨記載されており(段落0182)、また、以下のとおりの図2、図3が記載されているところ

、いずれの図においても、そのピーク(図3の場合、左から右に向かって2つの上向きの大きな山を形成しているグラフの最初の山のピーク)は200℃を超える辺りに存在するものの、グラフの変化は200℃付近から始まっており、このことから200℃付近から熱的に不安定になるといえる(なお、図2における200℃付近で上下にグラフが分かれているうち上のグラフが何を示しているかは判然としないが上のグラフもその変化は200℃付近で始まっている。)。そして、上記本願明細書の形態Iの粒子は200℃周辺での分解まで有意な重量減少を示さない旨の記載と併せみると、上記グラフの変化は粒子の分解の始まりであると解される。
一方、刊行物1には、化合物Aの結晶について「融点: 200 Z℃」と(摘示1H)、また、融点において用いられるzは、分解を示す旨(摘示1G)が記載されており、これらの記載から、刊行物1に記載の上記結晶は200℃において分解するといえる。ここで、刊行物1には、本願明細書に記載の上記図2、図3のような熱的変化を示す具体的な記載は存在せず、上記200 Z℃が上記図2、図3のグラフに対応させた場合に、具体的にどのような温度を意味するかは明らかではないが、粒子の分解の開始温度であると解することもできる。したがって、そのような場合には、本願発明の粒子と引用発明の結晶とで、熱的に不安定になる温度において異ならない蓋然性が高い。
そして、仮に熱的に不安定になる温度が異なるとしても、本願発明の粒子に係る結晶形態Iの結晶を製造することが当業者にとって容易であることは上記4で述べたとおりであり、その場合には結晶形態に相違はないのであるから、熱的に不安定になる温度において異なるものではない。
したがって、本願発明の熱的安定性は意外な結果であるということはできず、審判請求人の主張を採用することはできない。

6 まとめ
したがって、本願発明は刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その他の理由を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-22 
結審通知日 2016-03-29 
審決日 2016-04-11 
出願番号 特願2010-513234(P2010-513234)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 春日 淳一  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 冨永 保
齊藤 真由美
発明の名称 CRTH2アンタゴニストの粒子  
代理人 石川 徹  

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