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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1318717
審判番号 不服2015-21712  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-07 
確定日 2016-08-25 
事件の表示 特願2012-550802「太陽電池用表面材、太陽電池用表面材の製造方法、太陽電池用被覆材及び太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月 5日国際公開、WO2012/090674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)12月8日(パリ条約による優先権主張 2010年(平成22年)12月27日(以下、「優先日」という。)、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 6月 4日付け 拒絶理由の通知
平成27年 8月 7日 意見書、手続補正書の提出
平成27年 9月 1日付け 拒絶査定(同年同月8日送達)
平成27年12月 7日 審判請求、手続補正

第2 平成27年12月7日付け手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成27年12月7日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、そのうち特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前(平成27年8月7日付けの手続補正書)の請求項1に、

「表面にグロー放電処理を施したフッ素樹脂のフィルムからなり、酸化セリウムを含む紫外線吸収剤を含有し、400nmにおける光透過率が80%以上、300nmにおける光透過率が70%以下であることを特徴とする太陽電池用表面材。」
とあったものを、

「表面にグロー放電処理を施したフッ素樹脂のフィルムからなり、紫外線吸収剤を含有し、400nmにおける光透過率が80%以上、300nmにおける光透過率が70%以下であり、
前記紫外線吸収剤は、酸化セリウム粒子と、該酸化セリウム粒子の表面を被覆する被覆層を有し、該被覆層は酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含むことを特徴とする太陽電池用表面材。」

と補正することを含むものである(なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)。

2 補正の適否
補正前の「紫外線吸収剤」について、「前記紫外線吸収剤は、酸化セリウム粒子と、該酸化セリウム粒子の表面を被覆する被覆層を有し、該被覆層は酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む」と限定する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に記載されたとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-150936号公報(公開日:平成12年5月30日、以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付したものである。)

a「【0038】
【発明の実施の形態】図1は本発明の半導体装置の一例を示す概略断面図である。図1において、101は半導体素子、102は半導体素子を封止する封止材樹脂、103は無機酸化物粒子、105は放熱層、106は保護部材である。
【0039】半導体素子101は特に限定されないが、例えば、ICチップ、トランジスタ素子、ダイオード素子、光受光素子、太陽電池素子などである。特に、光受光素子と太陽電池素子は本発明の効果を享受する上では好適であり、屋外で使用されるという観点から太陽電池素子がより好ましい。
【0040】封止材樹脂102は半導体素子101の凹凸を被覆し、半導体素子101を温度変化、湿度、衝撃などの過酷な外部環境から守るために用いられる。したがって、耐候性、接着性、充填性、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性等が要求される。
【0041】これらの要求を満たす樹脂としてはエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、ポリビニルブチラール樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂を混合したり、違う種類の2層以上の樹脂で封止することも可能である。
【0042】保護部材106は得に限定されないが、光受光素子を封止する場合は、保護部材106に透光性が要求される。この透光性を満足するものとしては、ガラスや透光性の樹脂がある。
【0043】ガラスとしては、好ましくは白板ガラスが好適であるが、コスト面から、青板ガラスを用いることが多い。
【0044】透光性樹脂としては、具体的には、アクリル樹脂、フッ素樹脂、、シリコーン樹脂等のフィルムあるいは塗膜等が好適であり、特にフィルムが好ましい。また、透光性フィルムは耐候(光)性に優れるものが望ましく、フッ素樹脂フィルム・シリコーン樹脂フィルムが好適に用いられる。さらに、フッ素樹脂の中でもエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が耐候(光)性および機械的強度の両立と透明性、コストの面で優れている。
【0045】無機酸化物粒子103は保護部材106に担持されており、無機酸化物粒子103を表面保護フィルム104に担持させることにより、保護部材106最表面の親水性が向上している。すなわち、無機酸化物粒子103を担持させない場合よりも担持させた方が保護部材106最表面の水の接触角が減少している。
【0046】無機酸化物粒子103は、波長300nm以上400nm以下の紫外線吸収機能を有することが望ましい。波長300nm以上400nm以下は封止材樹脂102の光劣化の原因となる紫外線領域であり、この領域の紫外線を無機酸化物粒子103によって遮断することにより、封止材樹脂102の劣化は効果的に抑制される。具体的には、無機酸化物粒子103を均一に懸濁させた0.5%水溶液を1cm角石英セルに入れて測定した紫外線透過率が、波長380nmで80%以下、波長350nmで50%以下であることが好ましく、波長380nmで70%以下、波長350nmで10%以下であることがより好ましい。なお、この透過率は水を1cm角石英セルに入れて測定したものを100%としたときの値である。このような物質には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化セリウムなどがある。」

b「【0056】一方、保護部材106がフィルムである場合には、無機酸化物粒子を担持させる別の方法としてフィルム中に粒子を埋設してもよい。例えば、フィルムの原料樹脂を熱溶融してそこに無機酸化物粒子を十分に分散させた後、成形してフィルムとする方法、ゴム状あるいは液体状の樹脂に無機酸化物粒子を分散させてフィルムに成形した後、樹脂を架橋する方法等が挙げられる。具体的な成形方法としては、キャスティング法、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法などが挙げられる。この際、無機酸化物粒子表面を前述の方法でカップリング剤処理しておけば、樹脂と粒子との密着性が向上して、より強固に無機酸化物粒子をフィルム中に担持させることができる。」


c「 【図1】



(イ)上記記載から、引用例1には、次の技術事項が記載されている。

上記c(【図1】)の記載から、
「半導体素子101を封止する封止材樹脂102に積層する保護部材106」の技術事項が見て取れる。

上記段落【0039】の記載から、
「前記半導体素子101は、太陽電池素子であ」るとの技術事項が読み取れる。

上記段落【0040】、【0041】の記載から、
「前記封止材樹脂102は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)であ」るとの技術事項が読み取れる。

上記段落【0042】ないし【0044】の記載から、
「前記保護部材106は、フッ素樹脂であるエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)であ」るとの技術事項が読み取れる。

上記段落【0056】の記載から、
「前記保護部材106がフィルムである場合には、樹脂に無機酸化物粒子を分散させた後、成形してフィルムとすることにより無機酸化物粒子をフィルム中に担持させ」るとの技術事項が読み取れる。

上記段落【0046】の記載から、
「前記無機酸化物粒子103は、紫外線透過率が、波長380nmで80%以下、波長350nmで50%以下である酸化セリウムである」との技術事項が読み取れる。

(ウ)これらのことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「半導体素子101を封止する封止材樹脂102に積層する保護部材106であって、
前記半導体素子101は、太陽電池素子であり、
前記封止材樹脂102は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)であり、
前記保護部材106は、フッ素樹脂であるエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)であり、
前記保護部材106がフィルムである場合には、樹脂に無機酸化物粒子103を分散させた後、成形してフィルムとすることにより前記無機酸化物粒子103をフィルム中に担持させ
前記無機酸化物粒子103は、紫外線透過率が、波長380nmで80%以下、波長350nmで50%以下である酸化セリウムである、
前記保護部材106。」

イ 引用例2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-103888号公報(公開日:平成12年4月11日、以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付したものである。)

a「【0032】(3)不活性ガスを主成分とするガス中での大気圧放電処理
不活性ガスを主成分とするガスは、不活性ガスを含有しているガスであれば特に限定されないが、・・・(途中省略)・・・
【0034】放電処理の方法としては、コロナ放電(火花放電)、プラズマ放電、グロー放電などの形態が適用できる。いずれも、ガス雰囲気中に処理表面を曝し、電極間に3kHz?40kHzの高周波電圧を印加することにより放電処理する。放電の形態は不活性ガスを主成分とするガスの組成により異なり、上述したように不活性ガスに対する重合性不飽和化合物ガスと炭素酸化物ガスの量が多くなるとプラズマ放電またはグロー放電から、コロナ放電(火花放電)に変わる。放電処理時の圧力は、大気圧である。本発明において、大気圧とは、0.9?1.1kg/cm^(2)をさす。大気圧下においては、不活性ガスを主成分とするガスはガス状に維持される。本処理は、大気圧下で行う表面処理であるため、高価な装置を必要としない点で好ましい。放電処理時の温度は、特に制限ないが、通常10?80℃の範囲であればよく、好ましくは25?60℃の範囲である。また、放電処理の電力は、100?1500W・min/m^(2)が好ましく、特に表面処理された成形物が他のフィルムと溶剤型接着剤によりドライラミネートされるような場合には、接着剤が表面を濡らす必要性から300W・min/m^(2)以上の電力で放電処理を行い水接触角を90°以下、またはJIS K6768に規定されているぬれ試験方法による表面張力で34dyn/cm以上に濡れ性を高めておくとよい。なお、2000W・min/m^(2)以上の電力による放電処理では、表面処理層が厚くなり、含フッ素樹脂フィルム基体から剥離しやすくなり、好ましくない。
【0035】本処理、特に不活性ガス、重合性不飽和化合物ガスおよび炭素酸化物ガスの混合ガス中での大気圧放電処理は、前記(1)酸化物膜処理と同様に接着層との密着性に優れ、更に、曲げに対する追従性にも極めて優れる。」

b「【0051】本発明の含フッ素樹脂フィルムの利用の好適な一態様に、太陽電池モジュールがある。即ち、補強板と含フッ素樹脂フィルムとの間に太陽電池素子をエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分とする樹脂で充填した太陽電池モジュールにおいて、該含フッ素樹脂フィルムが前記本発明の含フッ素樹脂フィルムであって、前記Si、Zr、Ti、Ta、Hf、Mo、W、Nb、Sn、In、Al、CrおよびZnからなる群から選ばれる一種以上の金属の酸化物からなる薄膜が乾式法により形成された表面を外表面とする太陽電池モジュールが提供される。この太陽電池モジュールにおいては、前記含フッ素樹脂フィルムの前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)と接触している表面に下記いずれかの処理がなされており、他方の表面(外表面)にSi、Zr、Ti、Ta、Hf、Mo、W、Nb、Sn、In、Al、CrおよびZnからなる群から選ばれる一種以上の金属の酸化物からなる薄膜が乾式法により形成されている。
(1)Si、Zr、Ti、Ta、Hf、Mo、W、Nb、Sn、In、Al、CrおよびZnからなる群から選ばれる一種以上の金属の酸化物からなる薄膜を乾式法により形成する処理、(2)空気中でのコロナ放電処理、(3)不活性ガスを主成分とするガス中での大気圧放電処理、(4)真空下プラズマ処理
【0052】本発明の太陽電池モジュールは、含フッ素樹脂フィルムのEVAとの接触面に上述の処理がなされているため、含フッ素樹脂フィルムとEVAとの密着性が高められるので、凹凸形状付与等の表面処理を必要とすることなく、EVAを融点以上に加熱しながら含フッ素樹脂フィルムと熱圧着させる熱プレス法のみで十分な密着性をもって接着することができるので、耐久性に優れる。また、本発明の太陽電池モジュールは、外気との接触面(外表面)に薄膜が形成されており、上述したように、この薄膜により太陽電池モジュールは、長期に渡って風雨にさらされても雨すじ汚れが見られない。更に、(3)不活性ガスを主成分とするガス中での大気圧放電処理、特に、不活性ガス、重合性不飽和化合物ガスおよび炭素酸化物ガスからなる混合ガス中での大気圧放電処理、または(4)真空下プラズマ処理を用いる場合には、曲げに対して非常に強く、曲げにより含フッ素樹脂フィルムとEVAとの間に剥離が生じない。従って、可曲性や耐衝撃性に優れる高分子樹脂基板やステンレス箔等の金属基板を用いた太陽電池に、表面の保護材料として本発明の含フッ素樹脂フィルムを用いると、従来実現することができなかった、曲げや衝撃により剥離が生じない、可曲性および耐衝撃性に優れる太陽電池を得ることができる。」

(イ) 上記(ア)の記載から、引用例2には、
「補強板と含フッ素樹脂フィルムとの間に太陽電池素子をエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分とする樹脂で充填した太陽電池モジュールに、
不活性ガスを主成分とするガス中での大気圧放電処理をすることにおいて、
太陽電池モジュールは、含フッ素樹脂フィルムのEVAとの接触面に、グロー放電を適用した放電処理がなされているため、含フッ素樹脂フィルムとEVAとの密着性が高められる。」との技術事項が記載されていると認められる。

ウ 引用例3
(ア)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-287784号公報(公開日:平成10年10月27日、以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付したものである。)
a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フッ素樹脂に配合された紫外線遮断材料の分散性が良好であり、透明性、紫外線遮断性および耐摩耗性に優れたフッ素樹脂フィルムに関する。」

b「【0052】[例3]不定形シリカ-酸化セリウム複合体粒子(日本無機化学製、商品名ASC-6832、粒径1?26μm、平均粒径7.6μm)200gを小型ヘンシェルミキサに投入し、続いてジメチルシリコーンオイル20gを溶解したn-ヘキサン溶液100gをゆっくり投入し10分間撹拌した。続いて、この湿った不定形シリカ-酸化セリウム複合体粒子を120℃で1時間乾燥し、再度小型ヘンシェルミキサで2分間充分にほぐした。なお、このASC-6832は酸化セリウム量67重量%、不定形シリカ量30重量%、アルミナ量3重量%からなる。また、この表面処理した粒子のメタノール疎水化度は60%である。
【0053】この表面処理された不定形シリカ-酸化セリウム複合体粒子40gとETFE(旭硝子製、アフロンCOP88AX)4kgをVミキサにて乾式混合した。この混合物を2軸押出機にて320℃でペレット化を行った。
【0054】次いでTダイ方式により、320℃で40μmのフィルムを成形した。このフィルムは全光線透過率94.2%、ヘイズ8.9%であり、320nmにおける紫外光透過率は20%であった。全光線透過率曲線を図1に示す。」

(イ) 上記(ア)の記載から、引用例3には、
「フッ素樹脂に配合された紫外線遮断材料の分散性が良好であり、透明性、紫外線遮断性および耐摩耗性に優れたフッ素樹脂フィルムに関し、
酸化セリウム量67重量%、不定形シリカ量30重量%、アルミナ量3重量%からなる表面処理された不定形シリカ-酸化セリウム複合体粒子とETFEを混合しフィルムを成形する。」との技術事項が記載されていると認められる。

エ 周知例
(ア)原査定において周知技術を示す文献として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-201884号公報(公開日:平成22年9月16日、以下、「周知例」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付したものである。)
a「【0039】
参考までに、紫外線吸収剤として酸化セリウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、黄色酸化鉄粒子をそれぞれ含有する有機無機複合クリア層3の単独膜についての、光透過性の測定結果を図2に示す。有機無機複合クリア層3中の無機粒子の含有量は1?5質量%の範囲であり、有機無機複合クリア層3の厚みは12μmである。図中のaは黄色酸化鉄粒子を使用する場合、bは酸化亜鉛粒子を使用する場合、cは酸化セリウム粒子を使用する場合、dは酸化チタン粒子を使用する場合の結果である。」

b「【0041】
これらの結果に示されるように、例えば酸化セリウムを使用した場合は波長300nmまでの紫外線の吸収率は高いものの、350nmの波長になると吸収率が低下しはじめる。」

c「【図2】



(イ)上記【図2】の図中cの曲線は、【0039】の記載によれば、紫外線吸収剤として酸化セリウム粒子を含有する有機無機複合クリア層3の単独膜についての光透過性の測定結果であり、このcの曲線から、紫外線領域における光透過率は低く、紫外線領域から可視光領域に遷移する領域(波長400nm)において光透過性は高くなっていく特性があることが見て取れる。
してみると、周知例には、
「紫外線吸収剤として酸化セリウム粒子を含有する場合、
紫外線領域における光透過性は低く、紫外線領域から可視光領域に遷移する領域(波長400nm)において光透過性は高くなっていく特性がある」との技術事項が記載されていると認められる。

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア) 引用発明の「半導体素子101を封止する封止材樹脂102に積層する保護部材106」において、「前記半導体素子101は、太陽電池素子であ」るから、引用発明の「保護部材106」は、本件補正発明の「太陽電池用表面材」に相当する。

(イ) 引用発明の「前記保護部材106は、フッ素樹脂であるエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)であり」、「前記保護部材106がフィルムである」ことと、本件補正発明の「太陽電池用表面材」が「表面にグロー放電処理を施したフッ素樹脂のフィルムからな」ることは、共に「太陽電池用表面材」が「フッ素樹脂のフィルムからな」る点で共通する。

(ウ) 引用発明において、「無機酸化物粒子103は、紫外線透過率が、波長380nmで80%以下、波長350nmで50%以下である」ことから、「無機酸化物粒子103」は、紫外線吸収剤であるといえる。してみると、引用発明の「前記保護部材106がフィルムである場合には、樹脂に無機酸化物粒子103を分散させた後、成形してフィルムとすることにより前記無機酸化物粒子103をフィルム中に担持させ、前記無機酸化物粒子103は、紫外線透過率が、波長380nmで80%以下、波長350nmで50%以下である」ことと、本件補正発明の「紫外線吸収剤を含有し、400nmにおける光透過率が80%以上、300nmにおける光透過率が70%以下であ」ることは、共に「紫外線吸収剤を含有」する点で共通する。

(エ) 上記相当関係を踏まえると、引用発明の「前記無機酸化物粒子103は、紫外線透過率が、波長380nmで80%以下、波長350nmで50%以下である酸化セリウムである」ことと、本件補正発明の「前記紫外線吸収剤は、酸化セリウム粒子と、該酸化セリウム粒子の表面を被覆する被覆層を有し、該被覆層は酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む」ことは、共に「前記紫外線吸収剤は、酸化セリウム粒子を含む」点で共通する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア) 一致点
「フッ素樹脂のフィルムからなり、紫外線吸収剤を含有し、
前記紫外線吸収剤は、酸化セリウム粒子を含む太陽電池用表面材。」

(イ) 相違点1
フッ素樹脂のフィルムの表面に、本件補正発明は「グロー放電処理」を施すのに対し、引用発明は「グロー放電処理」を施すことは特定していない点。

(ウ) 相違点2
「太陽電池用表面材」が、本件補正発明では、「400nmにおける光透過率が80%以上、300nmにおける光透過率が70%以下であ」るのに対し、引用発明では、「紫外線透過率が、波長380nmで80%以下、波長350nmで50%以下である」点。

(エ) 相違点3
本件補正発明は、「酸化セリウム粒子の表面を被覆する被覆層を有し、該被覆層は酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(4) 判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明のような積層構造の部材において、各層間の密着性を高めることは自明の技術課題であるといえるところ、太陽電池モジュールにおいて、「含フッ素樹脂フィルムのEVAとの接触面に、グロー放電を適用した放電処理がなされているため、含フッ素樹脂フィルムとEVAとの密着性が高められる」との技術事項が引用例2に記載されていることから、(エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)である)封止材樹脂102に積層する(フッ素樹脂である)保護部材106の構成を有する引用発明において、フッ素樹脂である保護部材106のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)である封止材樹脂102との接触面にグロー放電を適用した放電処理をし、保護部材106と封止材樹脂102との密着性を高めることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明に引用例2に記載された技術事項を適用し、相違点1に係る「グロー放電処理」を施すようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について
引用発明における「紫外線透過率」とは、紫外線領域の光の波長である波長380nmや波長350nmでの透過率を意味するものであるから、本件補正発明における特定波長における「光透過率」と同じことを意味しているといえる。
ところで、周知例に記載されているように(前記(2)エ参照。)、「紫外線吸収剤として酸化セリウム粒子を含有する場合、紫外線領域における光透過性は低く、紫外線領域から可視光領域に遷移する領域(波長400nm)において光透過性は高くなっていく特性がある」ことは、周知の技術事項であるといえる。
この周知の技術事項に照らすと、紫外線吸収剤として酸化セリウム粒子を含有する場合、波長300nmの紫外線領域での光透過率は波長350nmでの光透過率よりも低くなるから、引用発明における「紫外線透過率が、・・・波長350nmで50%以下である」ことは、本件補正発明における「300nmにおける光透過率が70%以下」である条件を満たすものである。
また、紫外線吸収剤として酸化セリウム粒子を含有する場合、紫外線領域から可視光領域に遷移する領域(波長400nm)において光透過性は高くなっていく特性がある(周知例の【図2】参照。)から、引用発明における「紫外線透過率が、波長380nmで80%以下」であることは、本件補正発明における「400nmにおける光透過率が80%以上」である条件を排除するものではない。
してみると、引用発明の「紫外線透過率が、波長380nmで80%以下、波長350nmで50%以下である」ことは、本件補正発明の「400nmにおける光透過率が80%以上、300nmにおける光透過率が70%以下であ」ることを含み得る。また、引用発明が太陽電池素子の保護部材であることに鑑みるに、紫外線領域における光透過率は低く、紫外線領域から可視光領域に遷移する領域(波長400nm)において光透過率を高めるように調整することは、発電に有効な光を透過させ発電効率を上げようとする当業者にとって、自然なことである。
したがって、引用発明における光透過率の条件を、相違点2に係る「400nmにおける光透過率が80%以上、300nmにおける光透過率が70%以下であ」るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 相違点3について
引用例3には、「フッ素樹脂に配合された紫外線遮断材料の分散性が良好であり、透明性、紫外線遮断性および耐摩耗性に優れたフッ素樹脂フィルムに関し、酸化セリウム量67重量%、不定形シリカ量30重量%、アルミナ量3重量%からなる表面処理された不定形シリカ-酸化セリウム複合体粒子とETFEを混合しフィルムを成形する。」との技術事項が記載されている。
ここで、シリカ及びアルミナは、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムであり、また、引用例3に記載された技術事項は、紫外線遮断材料である酸化セリウムの粒子をETFEのフィルムに分散させている点で引用発明と共通していることから、引用例3に記載された、フッ素樹脂に配合された紫外線遮断材料の分散性が良好であり、透明性、紫外線遮断性および耐摩耗性に優れたフッ素樹脂フィルムに関する技術事項を引用発明に適用することに困難性は見いだせない。
そして、引用発明の酸化セリウムに引用例3に記載された技術事項を適用し、相違点3に係る「酸化セリウム粒子の表面を被覆する被覆層を有し、該被覆層は酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む」構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2、3に記載された技術事項及び周知の技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用例2、3に記載された技術事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年12月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年8月7日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「表面にグロー放電処理を施したフッ素樹脂のフィルムからなり、酸化セリウムを含む紫外線吸収剤を含有し、400nmにおける光透過率が80%以上、300nmにおける光透過率が70%以下であることを特徴とする太陽電池用表面材。」

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、2及び周知例の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比、判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「紫外線吸収剤」について、「前記紫外線吸収剤は、酸化セリウム粒子と、該酸化セリウム粒子の表面を被覆する被覆層を有し、該被覆層は酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む」との限定、つまり、相違点3に係る構成を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との対比において、相違点は、前記第2の[理由]2(3)に記載した相違点1及び相違点2である。
そして、相違点1及び相違点2は、前記第2の[理由]2(4)に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知の技術事項に基づいて、容易に想到し得ることであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-23 
結審通知日 2016-06-28 
審決日 2016-07-11 
出願番号 特願2012-550802(P2012-550802)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 森 竜介
井口 猶二
発明の名称 太陽電池用表面材、太陽電池用表面材の製造方法、太陽電池用被覆材及び太陽電池モジュール  
代理人 志賀 正武  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 柳井 則子  
代理人 鈴木 三義  
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