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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05G 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G05G 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G05G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05G |
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管理番号 | 1318859 |
審判番号 | 不服2015-21742 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-08 |
確定日 | 2016-08-29 |
事件の表示 | 特願2012-156681「安全アクセル・ブレーキ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年2月3日出願公開、特開2014-21546〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年7月12日の出願であって、平成27年1月26日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年3月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年8月28日付け(発送日:同年9月8日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされ、平成27年12月24日に手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2 平成27年12月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年12月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成27年12月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、 本件補正前の平成27年3月3日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1に記載された 「【請求項1】 アクセルペダルとブレーキペダルの間に板状の材をディスターバーとして取り付けるにあたり、該ディスターバーの片面には感圧性の両面接着剤が取り付けられており、リリースライナーがその上に接着され、自動車のアクセルペダルとブレーキペダルの間の床面に、前記リリースライナーを剥がして圧着固定してなるディスターバーを取り付けて構成される安全アクセル・ブレーキ。」を、 補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「【請求項1】 アクセルペダルとブレーキペダルの間に床面に運転者の体型に合わせて設け得るディスターバーを設けることを特徴とするアクセル・ブレーキ安全装置。」 と補正するものである。 2.補正の適否 (1)新規事項 本件補正後の請求項1のディスターバーに関して「運転者の体型に合わせて設け得る」との事項(以下「補正事項」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には記載されていない。また、当初明細書にはその段落【0016】に「図9は本発明の第5の実施例を示す図で、アフターマーケット用で、この製品を裏側から見た図である。・・・略・・・上述の実施例では、ディスターバーを床面に取り付ける場合を例にとったが、本発明はこれに限るものではなく、車体の上部からアクセルペダルとブレーキペダル位置の間にディスターバーを下ろしてくるように付けたり、ディスターバーの上記以外の形態として、種々の形状のものなどそれらは、本願発明の範囲に入る。」との記載があるが、「アフターマーケット用」であることや「形態として、種々の形状のもの」が本願発明の範囲に入ることは、「運転者の体型に合わせて設け得る」ということを示唆するものではないから、上記補正事項は当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)補正の目的 本件補正により「ディスターバーの片面には感圧性の両面接着剤が取り付けられており、リリースライナーがその上に接着され、自動車のアクセルペダルとブレーキペダルの間の床面に、前記リリースライナーを剥がして圧着固定してなる」との事項が削除された。 してみると、本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものでもないことは明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項も目的とするものでなく、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (3)独立特許要件 本件補正は、上記(1)、(2)で検討したとおり却下されるべきものであるが、仮に、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、以下に検討するとおり、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。 1)本願補正発明 本願補正発明は、以下のとおりである。 「アクセルペダルとブレーキペダルの間に床面に運転者の体型に合わせて設け得るディスターバーを設けることを特徴とするアクセル・ブレーキ安全装置。」 2)引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された特公昭38-10554号公報(以下「刊行物」という。)には、「自動車のアクセル及びブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置」に関し、図面(特に第4図、第5図参照)とともに、次の事項が記載されている。 ア 「自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダルはそれぞれハンドルの下部に小間隔を隔てて隣接して設けられているが運転者が未熟の場合及び疲労している場合等にはこの両者のペダルを踏み誤り、この為に不測の事故を起す事が間々あるのである。」(1ページ左欄11-15行) イ 「本発明者は上記の事故を防止する装置を研究した結果本発明に達したもので即ち自動車のブレーキ作動用ペダル1の左方に運転者の足が触れる様な適当な高さを有する突縁1或いは板2を突設して成る自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置を要旨とするものである。 4はアクセル作動用ペダル、3はクラッチ作動用ペダル、5は自動車前面のガラス、6はダツシユボートで、これに軸6’を介してブレーキ作動用ペダルに装着した杆7を軸支する。8は杆7とダツシユボードを連結する撥条、9はブレーキシリンダー、9’は同上マスターシリンダー、10は自動車の床板、11はハンドル、12は自動車の頭部、13はドアー、14は運転手の座席、15は自動車の屋根である。尚ペダル1,3,4及板2にはそれぞれ第1図中1”で示す様なゴムの如き緩衝性のある材料で被覆を施すを可とする。 尚16,17はそれぞれペダル3,4に連結した杆である。」(1ページ左欄16行-同右欄10行) ウ 「本発明は上記の構成を有するが故に、ブレーキ用ペダル1を踏む場合に運転者の足が該ペダル1の左の縁に突設した突設1’又は床板に設けた板2に触れる様にしてペダル1を踏めば確実にブレーキペダル1を踏むことが出来るので、この際、運転者の未熟、疲労等の為誤つてアクセル用ペダル4を踏むことにより発生する事故を確実に防止し得るもので、極めて有意義な発明であることを確信する。」(1ページ右欄11-18行) エ 第4図には、アクセル用ペダル4とブレーキ用ペダル1の間に板2が配置されていることが図示されている。 オ 第4図及び第5図を合わせてみると自動車の床板10に板2を曲げた面により板2が固定されているものと認められる。 上記記載事項、図示内容及び上記認定事項を総合して、自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置を本願補正発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「アクセル用ペダル4とブレーキ用ペダル1の間に自動車の床板10に板2を設ける自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置。」 3)対比 本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「アクセル用ペダル4」、「ブレーキ用ペダル1」、「自動車の床板10」及び「板2」は、その機能、構造からみて、本願補正発明の「アクセルペダル」、「ブレーキペダル」、「床面」及び「ディスターバー」に、それぞれ相当する。そして、引用発明1の「自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置」は「運転者の未熟、疲労等の為誤つてアクセル用ペダル4を踏むことにより発生する事故を確実に防止し得る」(記載事項ウ)ものであるから、本願補正発明の「アクセル・ブレーキ安全装置」に相当する。 以上の点からみて、本願補正発明と引用発明1とは、 [一致点] 「アクセルペダルとブレーキペダルの間に床面にディスターバーを設けるアクセル・ブレーキ安全装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] ディスターバーについて、本願補正発明では「運転者の体型に合わせて設け得る」ものであるのに対して、引用発明1ではその点が明らかでない点。 4)判断 ア 相違点について 刊行物には床板に設ける板に関して「運転者の足が触れる様な適当な高さを有する」ことが記載されており(記載事項イ)、当該記載によれば、引用発明1において板を運転者の体型に合わせて設け得るものとすることは当業者が容易に想到し得たことといわざるをえない。 イ 作用効果について そして、本願補正発明による効果も、引用発明1から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。 ウ まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成27年12月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年3月3日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる(以下「本願発明」という。)。 「アクセルペダルとブレーキペダルの間に板状の材をディスターバーとして取り付けるにあたり、該ディスターバーの片面には感圧性の両面接着剤が取り付けられており、リリースライナーがその上に接着され、自動車のアクセルペダルとブレーキペダルの間の床面に、前記リリースライナーを剥がして圧着固定してなるディスターバーを取り付けて構成される安全アクセル・ブレーキ。」 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項及び認定事項は、上記第2、2(3)2)に記載したとおりである。 前記記載事項、図示内容及び前記認定事項を総合して、自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置を本願発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「アクセル用ペダル4とブレーキ用ペダル1の間に板2を取り付けるにあたり、アクセル用ペダル4とブレーキ用ペダル1の間の自動車の床板10に板2を曲げた面により板2を固定した自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置。」 3.対比 本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「アクセル用ペダル4」、「ブレーキ用ペダル1」、「自動車の床板10」及び「板2」は、その機能、構造からみて、本願発明の「アクセルペダル」、「ブレーキペダル」、「床面」及び「ディスターバー」に、それぞれ相当する。また、引用発明2の「板2」は板状の材であるから、引用発明2の「板2を取り付ける」ことは本願発明の「板状の材をディスターバーとして取り付ける」ことに相当する。 そして、引用発明2の「自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置」は「運転者の未熟、疲労等の為誤つてアクセル用ペダル4を踏むことにより発生する事故を確実に防止し得る」(記載事項ウ)ものであり、自動車のアクセル及ブレーキ作動用ペダルを備えるものであるから、本願発明の「安全アクセル・ブレーキ」に相当する。 以上の点からみて、本願発明と引用発明2とは、 [一致点] 「アクセルペダルとブレーキペダルの間に板状の材をディスターバーとして取り付けるにあたり、自動車のアクセルペダルとブレーキペダルの間の床面にディスターバーを取り付けて構成される安全アクセル・ブレーキ。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 本願発明では「該ディスターバーの片面には感圧性の両面接着剤が取り付けられており、リリースライナーがその上に接着され、」「前記リリースライナーを剥がして圧着固定」するのに対して、引用発明2では「板2を曲げた面により」固定するものの、どのように固定するのか明らかでない点。 4.判断 車両の床面に部材を固定する際に、その固定手段として感圧性の両面接着剤(両面テープ)を用いることは従来周知の技術事項(例えば、特開2012-113410号公報(段落【0036】、【0044】、【0046】、【図4】-【図6】)、実願平4-69972号(実開平6-22050号)のCD-ROM(段落【0006】、【図1】、【図2】)参照。)である。また、両面テープにより部材を取り付ける際に、両面テープの接着剤の上のリリースライナーを剥がすことは、通常である点を踏まえると、引用発明2において、板2の固定に上記従来周知の技術事項を採用して、相違点に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明による効果も、引用発明2及び周知の技術事項から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。 したがって、本願発明は、引用発明2及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-16 |
結審通知日 | 2016-06-21 |
審決日 | 2016-07-05 |
出願番号 | 特願2012-156681(P2012-156681) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G05G)
P 1 8・ 121- Z (G05G) P 1 8・ 561- Z (G05G) P 1 8・ 57- Z (G05G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高吉 統久 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 小関 峰夫 |
発明の名称 | 安全アクセル・ブレーキ |