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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1318970
審判番号 不服2015-19530  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-30 
確定日 2016-09-27 
事件の表示 特願2014- 30721「回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-112718、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年11月26日(パリ条約による優先権主張2008年1月18日、大韓民国)を出願日とする特願2008-301142号の一部を平成26年2月20日に新たな特許出願としたものであって、平成26年12月10日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月13日付けで手続補正がされたが、平成27年7月2日付け(発送日:平成27年7月14日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)され、これに対し、平成27年10月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がされ、平成28年4月5日付けで当審において拒絶理由が通知され、平成28年7月7日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年7月7日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
ベース板と、
ベース板上に形成されて差動信号を伝達する複数の差動信号線と、
を含み、
前記複数の差動信号線は、各々第1信号線及び第2信号線を含み、
前記第1信号線及び前記第2信号線は互いに平行な少なくとも2つの経路に沿って延びており、
前記第1信号線及び前記第2信号線は経路変更部で経路を変え、
隣り合う前記差動信号線それぞれの経路変更部は、前記差動信号線それぞれの長手方向に沿って配置され、前記差動信号線それぞれの長手方向に対する直角方向においては隣接しない位置に配置され、
前記ベース板は、
第1面及び第2面と、
前記差動信号線の長手方向に前記経路変更部から所定間隔離れている複数のビアホールと、を含み、
前記少なくとも2つの経路は、
前記第1面に位置する第1経路と、
前記第2面に位置して前記第1経路と前記複数のビアホールの中の第1のビアホールにおいてオーバーラップする第2経路と、
前記第1面に位置して前記第1経路から所定間隔離れている第3経路と、
前記第2面に位置して、前記第3経路と前記複数のビアホールの中の第2のビアホールにおいてオーバーラップする第4経路と、を含み、
前記第1信号線は、前記経路変更部を通過しながら前記第1経路から前記第3経路に変更され、前記第2のビアホールで前記第3経路から前記第4経路に変更され、
前記第1信号線と同一区間にある前記第2信号線は、前記経路変更部を通過しながら前記第4経路から前記第2経路に変更され、前記第1のビアホールで前記第2経路から前記第1経路に変更され、
前記ベース板の同一面で隣り合う2つの差動信号線に対応する前記第1と第2のビアホールは、前記隣り合う2つの差動信号線の長手方向に沿って配置され、前記差動信号線それぞれの長手方向に対する直角方向においては互いに隣接しない位置に配置され、
前記ベース板の同一面で隣り合う2つの差動信号線に対応する前記経路変更部及び前記第1と第2のビアホールは、前記差動信号線の長手方向に沿って互いに異なる位置に配置されることで、前記隣り合う2つの差動信号線に対応する前記経路変更部は、前記隣り合う2つの差動信号線に対応する前記第1と第2のビアホールのいずれとも、前記差動信号線の長手方向に対する直角方向においては互いに隣接しない位置に配置されることを特徴とする回路基板。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1(特開2000-151041号公報)
刊行物2(特表平9-502304号公報)
・備考
刊行物1(【請求項1】-【請求項2】、段落【0019】-【0028】、第1-3図等参照)には、第1信号線(1配線パターン)及び第2信号線(2配線パターン)を有し、第1信号線は、経路変更部を通過しながら第1経路から第3経路に変更され、ビアホールで第3経路から第4経路に変更され、第1信号線と同一区間にある第2信号線は、経路変更部を通過しながら第4経路から第2経路に変更され、ビアホールで第2経路から第1経路に変更される点が記載されている。また、刊行物2(【特許請求の範囲】、第12頁第9行-第13頁第19行、第5-6図等参照)に記載されているように、複数の差動信号線を有する点は、周知技術である。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物
ア 刊行物1及び引用発明
刊行物1には、【請求項1】及び【請求項2】、【0019】ないし【0028】並びに【図1】ないし【図3】の記載を総合して、本願発明に則って整理すると、「プリント配線板」に関して、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「絶縁体層3と、
絶縁体層3上に形成されて差動信号を伝達する撚り線と、
を含み、
前記撚り線は、プリント配線パターン1及びプリント配線パターン2を含み、
プリント配線パターン1及びプリント配線パターン2は互いに平行な少なくとも2つの経路に沿って延びており、
プリント配線パターン1及びプリント配線パターン2は交差部1b,2bで経路を変え、
絶縁体層3は、
上面及び下面と、
前記撚り線の長手方向に前記交差部1b,2bから所定間隔離れている複数の導電性バンプ1e,2eと、を含み、
前記少なくとも2つの経路は、
前記上面に位置する第1経路と、
前記下面に位置して前記第1経路と複数の導電性バンプ1e,2eの中の導電性バンプ2eにおいてオーバーラップする第2経路と、
前記上面に位置して前記第1経路から所定間隔離れている第3経路と、
前記下面に位置して、前記第3経路と前記導電性バンプ1e,2eの中の導電性バンプ1eにおいてオーバーラップする第4経路と、を含み、
前記プリント配線パターン1は、前記交差部1b,2bを通過しながら前記第1経路から前記第3経路に変更され、前記導電性バンプ1eで前記第3経路から第4経路に変更され、
前記プリント配線パターン1と同一区画にある前記プリント配線パターン2は、前記交差部1b,2bを通過しながら前記第4経路から前記第2経路に変更され、前記導電性バンプ2eで前記第2経路から第1経路に変更される、プリント配線板。」

イ 刊行物2
刊行物2の第12ページ第3行ないし第18行には、次の事項が記載されている。

「この発明はまたさらにクロストークを大幅に低減する2つまたはそれ以上の隣接する平坦なより合わせ伝送ライン対を含むシステムを教示する。2つの平坦なツイステッドペアラインがそれらがほぼ平行になるよういっしょに配置されたとき、より合わせにより生じるループを通る磁気的結合のためクロストークが生じ得る。
図5を参照すると、2つまたはそれ以上の平坦な差動伝送ラインを使用するクロストークを低減するための構造は図2におけるような水平方向に配置された、図4におけるような垂直方向に配置された、あるいは任意の他の形式のツイステッドペア伝送ラインである少なくとも2つの伝送ライン51および52を含む。しかしながら、説明を明瞭にするため、伝送ライン51および52は水平方向に向けられかつある長さにわたり実質的に隣接する平坦なツイステッドペアとして単に示されている。第2の伝送ライン52との第1の伝送ライン51の相対的位置またはオフセットはそのツイスト部54が第2の伝送ライン52の平行セクション53と整列するようにされる。前記ツイスト部または交差部54は平行セクション53の中央部と一致するのが好ましいが、中心をはずれた整列でも改善された性能を提供することができる。」

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「絶縁体層3」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明の「ベース板」に相当し、以下同様に、「撚り線」は「差動信号線」に、「プリント配線パターン1」は「第1信号線」に、「プリント配線パターン2」は「第2信号線」に、「交差部1b,2b」は「経路変更部」に、「上面」は「第1面」に、「下面」は「第2面」に、「導電性バンプ1e,2e」は「ビアホール」に、「導電性バンプ2e」は「第1のビアホール」に、「導電性バンプ1e」は「第2のビアホール」に、「プリント配線板」は「回路基板」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1及び相違点2で相違する。

[一致点]
「ベース板と、
ベース板上に形成されて差動信号を伝達する差動信号線と、
を含み、
前記差動信号線は、第1信号線及び第2信号線を含み、
前記第1信号線及び前記第2信号線は互いに平行な少なくとも2つの経路に沿って延びており、
前記第1信号線及び前記第2信号線は経路変更部で経路を変え、
前記ベース板は、
第1面及び第2面と、
前記差動信号線の長手方向に前記経路変更部から所定間隔離れている複数のビアホールと、を含み、
前記少なくとも2つの経路は、
前記第1面に位置する第1経路と、
前記第2面に位置して前記第1経路と前記複数のビアホールの中の第1のビアホールにおいてオーバーラップする第2経路と、
前記第1面に位置して前記第1経路から所定間隔離れている第3経路と、
前記第2面に位置して、前記第3経路と前記複数のビアホールの中の第2のビアホールにおいてオーバーラップする第4経路と、を含み、
前記第1信号線は、前記経路変更部を通過しながら前記第1経路から前記第3経路に変更され、前記第2のビアホールで前記第3経路から前記第4経路に変更され、
前記第1信号線と同一区間にある前記第2信号線は、前記経路変更部を通過しながら前記第4経路から前記第2経路に変更され、前記第1のビアホールで前記第2経路から前記第1経路に変更される回路基板。」

[相違点1]
本願発明は「複数の差動信号線」「を含み」、「複数の差動信号線は、各々第1信号線及び第2信号線を含み」、「隣り合う前記差動信号線それぞれの経路変更部は、前記差動信号線それぞれの長手方向に沿って配置され、前記差動信号線それぞれの長手方向に対する直角方向においては隣接しない位置に配置され」るのに対し、引用発明の撚り線は複数でない点。

[相違点2]
本願発明は「前記ベース板の同一面で隣り合う2つの差動信号線に対応する前記第1と第2のビアホールは、前記隣り合う2つの差動信号線の長手方向に沿って配置され、前記差動信号線それぞれの長手方向に対する直角方向においては互いに隣接しない位置に配置され、
前記ベース板の同一面で隣り合う2つの差動信号線に対応する前記経路変更部及び前記第1と第2のビアホールは、前記差動信号線の長手方向に沿って互いに異なる位置に配置されることで、前記隣り合う2つの差動信号線に対応する前記経路変更部は、前記隣り合う2つの差動信号線に対応する前記第1と第2のビアホールのいずれとも、前記差動信号線の長手方向に対する直角方向においては互いに隣接しない位置に配置される」構成を有するのに対し、引用発明は、このような構成を有しない点。

(3)判断
以下、相違点1及び相違点2について検討する。

ア 相違点1について
刊行物2の上記(2)イの記載事項及び図示内容を、本願発明に則って整理すると、刊行物2には以下の技術(以下、「周知技術」という。)が記載されている。
「2つまたはそれ以上のツイステッドペア伝送ラインを含み、2つのツイステッドペア伝送ラインは、各々第1の伝送ライン51および第2の伝送ライン52を含み、隣り合う前記ツイステッドペア伝送ラインそれぞれのツイスト部54は、前記ツイステッドペア伝送ラインそれぞれの長手方向に沿って配置され、前記ツイステッドペア伝送ラインそれぞれの長手方向に対する直角方向においては隣接しない位置に配置されるツイステッドペア伝送ライン。」

本願発明と周知技術とを対比すると、周知技術の「2つまたはそれ以上」は、本願発明の「複数」に相当し、以下同様に、「ツイステッドペア伝送ライン」は「差動信号線」に、「第1の伝送ライン51」は「第1信号線」に、「第2の伝送ライン52」は「第2信号線」に、「ツイスト部54」は「経路変更部」に、それぞれ相当するから、本願発明の上記相違点1に係る構成と、周知技術とは一致し、相違点はない。
したがって、上記相違点1は、引用発明に上記周知技術を適用することで当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
引用発明は、「導電性バンプ」の位置を、隣接する撚り線との関係で規定するものではない。
また、刊行物2にも、「導電性バンプ」あるいは「ビアホール」の位置を、隣接するツイステッドペア伝送ラインの「平行セクション53」あるいは「ツイスト部54」との関係で規定する旨の記載はない。
さらに、「導電性バンプ」あるいは「ビアホール」の位置と、「経路変更部」あるいは「ツイスト部54」の位置を、隣接する差動信号線、撚り線あるいはツイステッドペア伝送ラインとの関係で規定することが周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明、刊行物2に記載された事項及び周知技術から、相違点2の本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

そして、本願発明は、上記相違点2に係る本願発明の構成によって、「経路変更部(PCP)及びビアホール455がルーフアンテナの機能をして」も、「低周波帯域のみならず高周波帯域でもEMIを減少させることができる」(本願の明細書の段落【0005】及び【0077】参照。)という作用・効果を奏するのであるから、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

また、請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定した発明であるので、本願発明と同様に、引用発明、刊行物2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1の「長手方向に対する垂直方向においては」という記載各々の「垂直方向」という記載の意味が不明確である。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年7月7日付け手続補正により、「垂直方向」という記載は「直角方向」とされたため、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-08 
出願番号 特願2014-30721(P2014-30721)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
P 1 8・ 537- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 悟史井出 和水  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 中川 隆司
内田 博之
発明の名称 回路基板  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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