ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
---|---|
管理番号 | 1318985 |
審判番号 | 不服2015-10485 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-03 |
確定日 | 2016-09-27 |
事件の表示 | 特願2013-217087「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日出願公開、特開2014- 45206、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年9月30日(特許法第41条に基づく国内優先権主張:平成20年3月21日、特願2008-73455号)を出願日とする特願2008-255084号(以下「原出願」という。)の一部を平成25年10月18日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成25年10月18日 審査請求・上申書 平成25年12月12日 手続補正書 平成26年 7月30日 拒絶理由通知 平成26年 9月24日 意見書 平成27年 3月 9日 拒絶査定 平成27年 6月 3日 審判請求 平成28年 5月 9日 拒絶理由通知(当審) 平成28年 7月 8日 意見書・手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年7月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 半導体ウエハを個片化してなる半導体チップと当該半導体チップが実装される基板とを有する半導体装置の製造方法であって、 前記半導体ウエハは、回路面に設けられた突起電極を有しており、 前記半導体ウエハに対して、前記突起電極を埋め込むように前記回路面の全体に絶縁性樹脂層を形成する第1工程と、 前記第1工程で前記絶縁性樹脂層が形成された前記回路面の反対側の面を研削して前記半導体ウエハを薄化する第2工程と、 前記第2工程で研削された前記反対側の面にダイシングテープを貼り合わせて、前記半導体ウエハをウエハリングに固定する第3工程と、 前記第3工程で前記ウエハリングに固定された前記半導体ウエハを、前記回路面側から前記絶縁性樹脂層と一緒にダイシングして、前記半導体ウエハを半導体チップに個片化する第4工程と、 前記第4工程で個片化された前記半導体チップを前記ダイシングテープからはく離してピックアップするピックアップ工程と、 前記ピックアップ工程でピックアップされた前記半導体チップの前記突起電極と前記基板の基板電極とを位置合わせした後、前記半導体チップと前記基板とを加熱・加圧することによって、前記半導体チップの前記突起電極と前記基板の前記基板電極とを電気的に接続する電気的接続工程と、を備え、 前記第2工程では、 前記半導体ウエハの前記回路面上において前記突起電極が露出していない状態の前記絶縁性樹脂層に、基材フィルム及び当該基材フィルムの一面に形成された粘着層を有するバックグラインドテープを直接貼り合わせて、前記半導体ウエハを研削装置に固定し、 前記絶縁性樹脂層は、 熱可塑性成分とエポキシ樹脂と硬化剤とを成分として含み、 前記半導体ウエハの前記回路面にフィルム状樹脂組成物をラミネートすることによって形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、次のとおりである。 「この出願については、平成26年 7月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 ●拒絶の理由([進歩性]特許法第29条第2項)について 請求項/引用文献等: 請求項1/文献1?3 請求項2/文献1?5 請求項3、4/文献1?6 出願人は意見書において、本願発明では回路面上に絶縁性樹脂層及びダイシングテープが設けられ突起電極が絶縁性樹脂層から露出していない状態で薄化工程が行われるのに対し、文献1では、回路面上にアンダーフィルテープのみが設けられ、先鋭状のバンプが粘接着剤層から露出し基材にまで到達した状態で裏面研削が行われる点で相違している旨主張している。 上記主張について検討する。 上記主張に対応する発明特定事項を特許請求の範囲に見いだすことができない。請求項1には、「前記半導体ウエハに対して、前記突起電極を埋め込むように前記回路面の全体に絶縁性樹脂層を形成する」との記載があるが、この記載では、形成後において突起電極が絶縁性樹脂層に埋めこまれ、露出していないことを示していないので、上記主張の裏付けにはならない。また、特許請求の範囲の他の記載を斟酌しても、形成後において突起電極が絶縁性樹脂層に埋めこまれ、露出していないことを示す記載を見いだすことができない。 なお、文献1の[0021]には「一方、粘接着層2が厚すぎると、バンプが粘接着層を貫通しないため、導通不良の原因となる。」との記載がある。しかしながら、この記載は粘接着層2を含むアンダーフィルテープ4をウエハに貼付する際に、粘接着層2が厚すぎて導通不良となるものに対して除外するものであって、突起電極が絶縁性樹脂層に埋めこまれ露出していないものすべてを除外するものではない。そのため、この記載から組み合わせに阻害要件があるものということはできない。そして、薄化の際にバンプを接着剤層に埋め込み該接着剤層を貫通しない状態で行うことは、文献7([0022])に記載されている様に当業者に周知の技術事項であり、文献1に記載された発明において周知技術に基づき導通不良とならない程度に適宜粘接着層2の膜厚を変更することに格段の困難を要しないし、顕著な作用効果を奏するものでもない。してみると、たとえ裏付けがなされていたとしても、進歩性を肯定するものではない。 したがって、出願人の主張を採用することができない。また、意見書の他の記載を斟酌しても、進歩性に係る拒絶の理由を覆す根拠を見いだすことができない。 よって、本願は拒絶すべきものである。 <引用文献等一覧> 文献1.特開2006-261529号公報 (先の拒絶理由通知における文献1) 文献2.特開2004-200216号公報 (先の拒絶理由通知における文献2) 文献3.国際公開第2007/148724号 (先の拒絶理由通知における文献3) 文献4.国際公開第2006/132165号 (先の拒絶理由通知における文献4;周知技術を示す文献) 文献5.特開2007-186590号公報 (先の拒絶理由通知における文献5;周知技術を示す文献) 文献6.特開2004-010810号公報 (先の拒絶理由通知における文献6;周知技術を示す文献) 文献7.特開2006-049482号公報 (新たに引用する文献;周知技術を示す文献;先の拒絶理由通知に添付した先行技術文献調査の記録で提示した先行技術文献)」 また、平成26年7月30日付け拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 1.請求項1及び4に対して 請求項4に係る発明を文献1に記載された発明と対比する。 請求項1における突起電極を有する半導体ウエハは、文献1においてスタッドバンプを有する半導体ウエハ(【0005】、【0006】)として記載されている。 請求項1における第1工程及び請求項4における絶縁性樹脂層は半導体ウエハの回路面にフィルム状樹脂組成物をラミネートすることによって形成されることは、文献1において半導体ウエハの回路面にアンダーフィルテープを貼付する(【0026】)こととして記載されている。 請求項1における第2工程及びこの第2工程において第2工程においては回路面上において突起電極が露出していないことは、文献1において回路面及びバンプがアンダーフィルテープで保護された半導体ウエハに対して裏面研削を施す(【0027】、図3)こととして記載されている。 請求項1における第3工程は、文献1においてウエハの裏面側にダイシングテープを圧着し、これを介してリングフレームに固定すること(【0028】)として記載されている。 請求項1における第4工程は、文献1においてリングフレームに固定された半導体ウエハをダイシング装置を用いて切断分離してチップを得ること(【0028】)として記載されている。 請求項1におけるピックアップ工程は、文献1の【0025】?【0033】における半導体装置の製造方法の説明においては明記されていないが、位置合わせの前において図4に記載の様にチップと粘接着層のみからなるものとなっている(【0031】)こと、位置合わせの前にはチップをハンドリングすることは【0003】に記載されているように当業者に広く知られていることを勘案すると、文献1に記載された発明においても請求項1におけるピックアップ工程と同等の作業はなされていることは、文献1に接した当業者に自明の事項である。してみると、請求項1におけるピックアップ工程は文献1に実質的に記載されているものである。 請求項1における電気的接続工程は、文献1においてチップのバンプがチップ搭載用基板の電極部に相対するように位置合わせをし、チップとチップ搭載用基板との導通を確保するようにチップをチップ搭載用基板に載置し、アンダーフィルテープの粘接着層を熱硬化させることで接着すること(【0032】)として記載されている。 請求項1における絶縁性樹脂層はエポキシ樹脂と硬化剤とを成分として含むことは、文献1においてアンダーフィルテープの粘接着剤層にエポキシ樹脂を適当な硬化促進剤と組み合わせて用いること(【0013】)として記載されている。 以上のとおりに対応するから、以下の点で相違するほかは、両者の間に格段の差異を有さない。 相違点1:請求項4に係る発明においては、絶縁性樹脂層に更に基材フィルム及び粘着層とからなるバックグラインドテープを貼り合わせて、半導体ウエハを研削装置に固定するのに対して、文献1に記載された発明においてはその旨規定されていない点。 相違点2:請求項4に係る発明においては、絶縁性樹脂層にエポキシ樹脂と硬化剤に加えて更に熱可塑性成分を含むのに対して、文献1に記載された発明においてはその旨規定されていない点。 上記相違点について検討する。 裏面薄化処理において、接着テープを介して貼り合わせることで固定した状態で研磨を行うことは、文献2(【0002】、【0003】)に記載されているように当業者に周知の技術事項にすぎない。文献1に記載された発明においても、同様に接着テープを介して貼り合わせて固定した状態で研磨を行って薄化することに、格段の困難を要するものではないし、顕著な作用効果を奏するものでもない。 してみると、相違点1によっては進歩性を肯定することはできない。 文献3には、半導体デバイスの製造方法に用いられる接着フィルムであって([0024])、セパレータと、セパレータ上に設けられた接着剤層とを備え、半導体ウエハの回路面に接着剤層が向くように配置してラミネートし([0043]、[0044])、その後にセパレータを剥離し([0059])、ダイシングテープを介して接着剤層とダイシングフレームとを対向配置してラミネートし([0060])、半導体ウエハのダイシングを行い([0065]?[0068])、ダイシングテープと接着剤層とを剥離させて接着剤層が付着した半導体チップを作成してピックアップし、配線基板と位置合わせし、配線基板と半導体チップとを接着剤層を介して接続する([0069]?[0077])工程を含む製造方法に使用され、接着剤層はエポキシ樹脂である熱硬化性樹脂([0052])、硬化剤([0053])及びポリイミド樹脂である熱可塑性樹脂([0054])を含むものとして、セパレータを介することなくダイシングテープで固定することを可能とし効率の良い製造を可能にした([0023]、[0038])ことが記載されている。 文献3に記載された発明における接着フィルムの接着剤層は、相違点2における絶縁性樹脂層に相当する。 文献3に記載された発明におけるポリイミド樹脂である熱可塑性樹脂は、相違点2における熱可塑性成分に相当する。 文献3に記載された発明におけるエポキシ樹脂である熱硬化性樹脂は、相違点2におけるエポキシ樹脂に相当する。 文献3に記載された発明におけるエポキシ樹脂である硬化剤は、相違点2における硬化剤に相当する。 以上のとおりに対応するから、相違点2における絶縁性樹脂層は文献3に記載されているものである。 文献1に記載された発明におけるアンダーフィルテープを、製造効率を高めるという文献を挙げるまでもなく周知の課題を解決するために、文献3に記載された接着フィルムに置き換え、セパレータを介さずにダイシングテープで固定するよう構成することに、格段の困難を要するものではないし、顕著な作用効果を奏するものでもない。 してみると、相違点2によっては進歩性を肯定することはできない。 また、これら相違点に係る技術的事項を組み合わせたところで、進歩性を肯定するに足る顕著な作用効果を奏するものでもない。 2.請求項2に対して 請求項2に係る発明における絶縁性樹脂層は、可視光に対して10%以上の光透過率を示し、回路面に形成されている位置合わせ用基準マークを可視光用のカメラで認識できるようにした(【0021】)のに対して、文献1に記載された発明ではその旨規定されていない点で更に相違している。 しかしながら、エポキシ樹脂、硬化剤及びポリイミドを含む接着剤組成物において、光線透過率を位置合わせを阻害しない程度に高くすることは、文献4([0002]?[0012])及び文献5(【0016】?【0019】)に記載されているように当業者に周知の技術事項にすぎない。光透過率の下限を10%と定めることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計変更程度の事項にすぎず、進歩性を肯定するものではない。 3.請求項3に対して 請求項3に係る発明における絶縁性樹脂層は300℃以上の加熱温度において樹脂発泡を起こさない材料とすることでボイドを抑制する(【0022】)ものであるのに対し、文献1に記載された発明はボイドのないアンダーフィルを形成することをその目的としている(【0006】)が、樹脂発泡を起こさない材料を用いることについては規定されていない点で更に相違している。 しかしながら、文献4([0065])及び文献6(【0005】、【0006】)に記載の様に、信頼性を高めるために発泡を抑制する必要があり、当該課題を解決するためにエポキシ樹脂の組成を工夫することは、当業者に周知の技術事項にすぎない。文献1に記載された発明において、ボイドのないアンダーフィルを形成するために組成を工夫することに、格段の困難を要するものではないし、顕著な作用効果を奏するものでもない。発泡しない下限の温度を300℃とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計変更程度の事項にすぎず、進歩性を肯定するものではない。 引 用 文 献 等 一 覧 文献1.特開2006-261529号公報 文献2.特開2004-200216号公報 文献3.国際公開第2007/148724号 文献4.国際公開第2006/132165号 文献5.特開2007-186590号公報 文献6.特開2004-010810号公報」 2 原査定の理由についての当審の判断 (1)引用文献1ないし7の記載事項及び引用発明 ア 引用文献1の記載事項及び引用発明 (ア)引用文献1の記載事項 原査定の理由に引用され、本願及び原出願の優先権の主張の基礎とされた特願2008-73455号の出願の日(以下「優先日」という。)の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2006-261529号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(当審注.下線は、参考のために、当審において付したものである。以下において同じ。) 「【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 以下、本発明について図面を参照しながらさらに具体的に説明する。 図1に示すように、本発明のフリップチップ実装用アンダーフィルテープ4は、基材1と、その片面に形成された粘接着剤層2とからなり、その使用前には粘接着剤層2を保護するための剥離フィルム3が粘接着剤層2上に仮着されている。 ・・・ 【0012】 このような基材1の膜厚は、通常は5?250μm、好ましくは8?175μm、特に好ましくは10?125μm程度である。 粘接着剤層2を形成する粘接着剤とは、初期状態において常温で粘着性を示し、加熱のようなトリガーにより硬化し強固な接着性を示す接着剤をいう。 【0013】 このような粘接着剤としては、従来公知の粘接着剤が特に制限されることなく用いられる。 粘接着剤としては、たとえば常温で感圧接着性を有するバインダー樹脂と熱硬化性樹脂との混合物が挙げられる。常温で感圧接着性を有するバインダー樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、特にアクリル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、一般的にはエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等であり、適当な硬化促進剤と組み合わせて用いられる。このような熱硬化性樹脂は種々知られており、本発明においては特に制限されることなく公知の様々な熱硬化性樹脂を用いることができるが特にエポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。 ・・・ 【0014】 また、粘接着剤層2には、光重合開始剤、熱活性型潜在性硬化剤、架橋剤が配合されていてもよい。 ・・・ 【0015】 熱活性型潜在性硬化剤は、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応する硬化剤で、加熱硬化前は、室温付近でウエハに貼付可能であり、チップ搭載用基板へ載置後、加熱硬化することでチップ搭載用基板に強固に接着する。 【0016】 これら熱活性型潜在性硬化剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、特にジシアンジアミド、イミダゾール化合物あるいはこれらの混合物が好ましい。 ・・・ 【0019】 このような粘接着剤層2の膜厚は、通常は10?500μm、好ましくは15?350μm、特に好ましくは20?250μm程度である。 上記のようなフリップチップ実装用アンダーフィルテープ4は、回路面にバンプを有する半導体ウエハの回路面に、貼付すると同時に、該バンプが粘接着剤層2を貫通し、バンプ頂部を基材内に貫入する工程を含む半導体装置の製造方法、特に後述する本発明に係る半導体装置の製造方法において好ましく使用される。 ・・・ 【0023】 粘接着剤層の厚みに対して、基材の厚みが薄過ぎると、バンプが粘接着剤層2を貫通せずに導通不良の原因となることがある。これは、基材がある程度厚いと、クッション的な役割を果たし、貫通したバンプ先端が基材内にめりこむためバンプが貫通しやすくなるのに対し、基材が薄過ぎるとかかるクッション作用を期待しがたいためと考えられる。 ・・・ 【0025】 次に本発明のフリップチップ実装用アンダーフィルテープを利用した半導体装置の製造方法について説明する。 まず、図2に示すように、回路面にバンプ5を有する半導体ウエハ6を準備する。回路やバンプの形成は、常法により行われる。 【0026】 次に、半導体ウエハ6の回路面に、上述した本発明に係るフリップチップ実装用アンダーフィルテープ4の粘接着剤層2を貼付する。この際、粘接着剤層2が常温粘着性を有するため、フリップチップ実装用アンダーフィルテープ4の貼付に際しては、バンプ5が粘接着剤層2を貫通するように、加圧が必要であるが、加熱やテンションの付加を行う必要は必ずしもない。このようにして、フリップチップ実装用アンダーフィルテープ4を貼付すると、バンプ5が粘接着剤層2を貫通し、またバンプ頂部が基材内に貫入する。 【0027】 この結果、図3に示すように、半導体ウエハ6の回路面およびバンプがフリップチップ実装用アンダーフィルテープ4に保護された状態となる。この状態で、半導体ウエハ6の裏面研削や、その他の裏面加工を行ってもよい。 【0028】 次いで、半導体ウエハ6を回路毎に個別のチップに切断分離する。ウエハ6の切断分離法は、特に限定されず、従来より公知の種々の方法により行われる。たとえば、ウエハ6の裏面側に通常のダイシングテープを圧着し、これを介してリングフレームに固定して、ダイシング装置を用いてウエハを切断分離し、チップを得ることができる。また、レーザーダイシング等の種々のダイシング法を採用することもできる。 ・・・ 【0030】 次いで、粘接着剤層2面から基材1を剥離し、バンプ頂部を露出させる。なお、基材1の剥離は、上述したチップ化工程後でもよく、またチップ化工程の前であってもよい。また、粘接着剤層2が紫外線硬化性を有する場合には、基材1の剥離に先立ち、粘接着剤層に紫外線照射を行い、粘着力を低下させた後に基材1を剥離することが好ましい。 【0031】 このような工程を経ることで、図4に示すように、回路面が粘接着剤層で覆われ、かつバンプ頂部が粘接着剤層を貫通し、バンプ頂部が粘接着剤層2から突出したチップ7が得られる。 【0032】 次いで、チップ7のバンプが、チップ搭載用基板の電極部に相対するように位置合わせをし、チップとチップ搭載用基板との導通を確保するように、チップをチップ搭載用基板に載置する。その後、粘接着剤層2を熱硬化することで、チップとチップ搭載用基板とを強固に接着できる。 【0033】 その後、樹脂封止などの公知の工程を経ることで半導体装置が得られる。」 (イ)引用発明 上記(ア)の引用文献1の記載と当該技術分野における技術常識より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「半導体装置の製造方法であって、 回路面にバンプを有する半導体ウエハを準備する工程と、 前記半導体ウエハの回路面にフリップチップ実装用アンダーフィルテープの粘接着剤層を貼付して、前記半導体ウエハのバンプが前記粘接着剤層を貫通し、バンプ頂部が基材内に貫入することにより、前記半導体ウエハの回路面及びバンプが前記フリップチップ実装用アンダーフィルテープに保護された状態にする工程と、 上記の状態で前記半導体ウエハの裏面研削を行う工程と、 前記半導体ウエハの裏面側にダイシングテープを圧着し、これを介してリングフレームに固定して、ダイシング装置を用いて前記半導体ウエハを切断分離し、チップを得る工程と、 前記粘接着剤層から基材を剥離し、バンプ頂部を露出させることにより、回路面が前記粘接着剤層で覆われ、かつバンプ頂部が前記粘接着剤層を貫通し、バンプ頂部が前記粘接着剤層から突出したチップを得る工程と、 前記チップのバンプが、チップ搭載用基板の電極部に相対するように位置合わせをし、前記チップと前記チップ搭載用基板との導通を確保するように、前記チップを前記チップ搭載用基板に載置する工程と、 前記粘接着剤層を熱硬化することで、前記チップと前記チップ搭載用基板とを強固に接着する工程と、 を含み、 前記フリップチップ実装用アンダーフィルテープは、 基材と、 その片面に形成された粘接着剤層とからなり、 前記粘接着剤層は、 アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等の、常温で感圧接着性を有するバインダー樹脂と、 エポキシ樹脂と、 ジシアンジアミド、イミダゾール化合物あるいはこれらの混合物である熱活性型潜在性硬化剤を含む、 半導体装置の製造方法。」 イ 引用文献2の記載事項 原査定の理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2004-200216号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0002】 【従来の技術】 半導体チップを高密度に実装するためには、半導体チップの厚みを出来るだけ薄くするとともに複数の半導体チップを積層してパッケージ基板に直接実装する方法が有効である。半導体基板の厚みを薄くする上で半導体基板を直接研磨装置に装着して研磨する方法が一般的であるが、この方法では、研磨後の半導体基板の強度低下によりハンドリングが困難となり破損等の事故が生じやすくなる。たとえば、600μm程度の厚みを有する直径150mmのシリコンウェーハを直接研磨装置で研磨した場合、50μm以下に薄化することは実際上困難である。そのため、半導体基板を支持体等によって補強することが必要となる。 【0003】 通常は、図6に示したように、トランジスタや配線等からなる回路パターン23が形成された半導体基板21の表面に接着テープ24を介して支持体22を貼り合わせる。このように半導体基板21を支持体22に仮止めした状態で半導体基板21の裏面を研磨し、たとえば、50μm程度まで薄化する。そして、半導体基板21を支持体22に仮止めしたままダイシングソー等を用いてチップに分割し支持体22から剥離する。」 ウ 引用文献3の記載事項 原査定の理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2007/148724号(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「[0023] また、特許文献1の方法では、積層体を切断する際にフィルム状接着剤とセパレータとが剥離する結果、個片化された半導体チップが飛散、流出してしまうという問題点がある。また、特許文献2では、ダイシング工程において如何にして回路パターンを認識するか明らかにしておらず、接着剤層が付着した半導体チップ個片を効率的に得ることができない。また、ダイシング工程を、放射線照射によって粘着テープを硬化させた後におこなっているため、積層体を切断する際にフィルム状接着剤とセパレータとが剥離する結果、個片化された半導体チップが飛散、流出してしまうという問題点がある。 [0024] 本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、接着剤が付着した半導体チップ個片を効率的に得ると共に、半導体チップと配線基板とを良好に接続することができる半導体デバイスの製造方法及びその半導体デバイスの製造方法に用いられる接着フィルムを提供することを目的とする。 ・・・ [0038] 本発明によれば、回路面とは反対側の面から前記回路面の回路パターンを認識することによってカット位置を認識するため、汚染のない半導体チップ個片を得ることができる。また、ダイシングテープを用いてウェハを固定しているため、半導体チップ個片が飛散、流出して紛失することがなく、効率良く半導体デバイスの製造方法及びその半導体デバイスの製造方法に用いられる接着フィルムが提供される。 ・・・ [0043] (積層体準備工程) まず、図1(A)及び図2(A)に示されるように、例えばシリコンウェハ等の半導体ウェハ6を吸着ステージ8上に載置する。半導体ウェハ6の回路面6aには、電極パッド7及び位置合わせ用マーク5が形成されている。電極パッド7と位置合わせ用マーク5との間には、絶縁膜20が充填されている。電極パッド7、位置合わせ用マーク5及び絶縁膜20の表面は平坦化されている。電極パッド7上には、絶縁膜20の表面から突出した突出電極4(端子)が設けられている。電極パッド7、位置合わせ用マーク5及び突出電極4により、回路パターンPが形成される。半導体ウェハ6の裏面6b(回路面とは反対側の面)は、吸着ステージ8に接触している。 [0044] 一方、セパレータ2と、セパレータ2上に設けられた接着剤層3とを備える接着シート52を準備する。接着シート52の接着剤層3が半導体ウェハ6の回路面6aを向くように配置して、加圧ローラ等のローラ1を用いて接着剤層3を回路面6aにラミネートする。ローラ1は、回路面6aと平行な方向A1に移動しながら、回路面6aに垂直な方向A2に接着シート52を加圧する。ローラ1により、接着シート52の接着剤層3は半導体ウェハ6の回路面6aに押し付けられる(図1(B)参照)。 ・・・ [0051] セパレータ2としては、例えばシリコーン等によって表面が離型処理されたPET基材が挙げられる。接着剤層3は、例えば、セパレータ2に接着剤組成物を塗布した後に乾燥することによって形成される。接着剤層3は、例えば常温において固体である。接着剤層3は、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、熱により3次元的に架橋することによって硬化する。 [0052] 上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、アクリレート樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。 [0053] 接着剤層3は、硬化反応を促進させるための硬化剤を含んでもよい。接着剤層3は、高反応性及び保存安定性を両立させるために、潜在性の硬化剤を含むことが好ましい。 [0054] 接着剤層3は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴムスチレン樹脂(ABS)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中でも、半導体ウェハ6への貼付性を確保するために室温付近に軟化点を有する熱可塑性樹脂が好ましく、グリシジルメタクリレートなどを原料に含むアクリル酸共重合体が好ましい。 ・・・ [0059] 次に、図1(C)及び図2(B)に示されるように、ブレードBLを方向A3に移動させて半導体ウェハ6の裏面6bに押し当てることにより、半導体ウェハ6の外周L1に沿って接着剤層3を切断する(ハーフカット、図1(D)参照)。なお、接着剤層3及びセパレータ2の両方を切断してもよい(フルカット)。その後、セパレータ2を接着剤層3から剥離除去することによって、図1(E)及び図2(C)に示されるように、半導体ウェハ6と接着剤層3とを含む積層体70を形成する。 [0060] 次に、図3(A)及び図4(A)に示されるように、吸着ステージ8上にダイシングフレーム10及び積層体70を載置する。積層体70は、半導体ウェハ6が接着剤層3と吸着ステージ8との間に位置するように載置される。ダイシングフレーム10は、積層体70の周囲を取り囲んでいる。その後、接着剤層3とダイシングテープ9とを対向配置させて、ローラ1を用いてダイシングテープ9をダイシングフレーム10及び積層体70にラミネートする(図3(B)参照)。 ・・・ [0065] (ダイシング工程) 次に、図5(B)及び図5(C)に示されるように、例えばスクライブライン等の切断予定ラインL3に沿って半導体ウェハ6及び接着剤層3を積層体60の厚み方向にダイシング(切断)する。 ・・・ [0069] (剥離工程) 次に、図6(A)?図6(C)に示されるように、ダイシングテープ9と接着剤層3とを剥離させることによって、接着剤層23が付着した半導体チップ26を作製する。 ・・・ [0072] (半導体チップと配線基板との位置合わせ工程) 次に、図7に示されるように、接着剤層23が付着した半導体チップ26の回路面26aにおける突出電極4(端子)と、配線基板40の配線12とを位置合わせする。配線基板40は、基板13と、基板13上に設けられた配線12とを備える。位置合わせは、例えばフリップチップボンダを用いて行われる。 [0073] まず、フリップチップボンダの吸着・加熱ヘッド11上に、半導体チップ26が吸着・加熱ヘッド11側を向くように配置して、接着剤層23が付着した半導体チップ26を載置する。続いて、カメラ15を用いて、半導体チップ26の回路面26aに形成された位置合わせ用マーク5を認識する。 ・・・ [0075] 一方、カメラ16を用いて、配線基板40に設けられた位置合わせ用マークを認識する。これにより、配線基板40の位置を特定することができる。カメラ15及びカメラ16からの画像信号は、コンピュータ30に入力される。コンピュータ30は、半導体チップ26の突出電極4と配線基板40の配線12とが正確に位置合わせされるように、半導体チップ26と配線基板40との相対位置を制御することができる。 [0076] (接続工程) 次に、図8(A)及び図8(B)に示されるように、配線基板40の配線12と半導体チップ26の突出電極4とが電気的に接続されるように、配線基板40と半導体チップ26とを接着剤層23を介して接続する。これにより、図8(B)に示される半導体デバイス50が製造される。具体的には、例えば、配線基板40と半導体チップ26とを加熱圧着する。」 エ 引用文献4の記載事項 原査定の理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2006/132165号(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「[0002] 近年、半導体装置の小型化と高密度化に伴い、半導体チップを回路基板に実装する方法としてフリップチップ実装(ダイレクトチップアタッチ実装)が注目され急速に広まってきている。 ・・・ [0003] この問題を解決するために、バンプ電極付き半導体ウェハに一定厚さの半導体用接着組成物をラミネートした後、ダイシングにより半導体ウェハを個別半導体チップとし、次に、半導体チップを回路基板にフリップチップ接続し、電気的接合と樹脂封止を同時に行う方法(特許文献2参照)およびそれに使用する接着フィルムが提案されている。この方法によれば、半導体用接着組成物と半導体チップの接着面積をほぼ同じにすることができ、液状封止接着剤を用いた場合に比べ、半導体チップに対する接着組成物のはみ出しが非常に少ない(特許文献3、4参照)。ところが、特許文献3、4で用いられている半導体用接着組成物は、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、マイクロカプセル化イミダゾール誘導体エポキシ化合物、フィラーから構成されたもの、あるいは有機溶剤可溶性ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機フィラーから構成されたものである。これらには多量の無機フィラー、マイクロカプセルが含まれているために、光線透過率が低く、ダイシングする場合、およびダイシング後の半導体チップをフリップチップ接合する場合に実施する半導体チップ上のアライメントマークの認識ができない。また、アライメントマークの代わりに、バンプ電極の位置認識でアライメントを行う場合においても、バンプ電極の位置認識が困難である。 ・・・ [0010] 本発明は、上記課題を解決すベく、屈曲させても割れや剥がれの発生がなく、狭ピッチ、高ピン数のバンプ電極付きの半導体ウェハのバンプ電極側面にラミネートすることができ、ダイシング時に切削粉の汚染や欠損がなく高速切断可能で、ダイシング時およびフリップチップ実装時のアライメントマークの認識が良好な半導体用接着組成物を提供する。また、高精度に切断された半導体チップをバンプを介して回路基板の電極パッドに高精度に金属接合する、もしくは導電物質間の接触による安定した導通を得ることができ、かつ半導体チップと回路基板の間で収縮応力を発揮する接着剤として機能することにより、この金属接合、もしくは導電物質間の接触による安定した導通を補助し、接続の信頼性を高める機能を有する半導体用接着組成物を提供する。 課題を解決するための手段 [0011] すなわち本発明は、(a)有機溶剤可溶性ポリイミドと(b)エポキシ化合物、(c)硬化促進剤とを含有し、(b)エポキシ化合物を100重量部に対し、(a)有機溶剤可溶性ポリイミドを15?90重量部、(c)硬化促進剤を0.1?10重量部含有し、(b)エポキシ化合物が25℃、1.013×10^(5)N/m^(2)において液状である化合物と25℃、1.013×10^(5)N/m^(2)において固形である化合物を含有し、液状であるエポキシ化合物の含有量が全エポキシ化合物に対し20重量%以上60重量%以下である半導体用接着組成物である。 発明の効果 [0012] 本発明の組成物によれば、バンプ電極付きの半導体ウェハのバンプ電極側面に空隙なくラミネートすることができ、ダイシング時に切削粉の汚染や接着層の欠損がなく高速で切断することができ、ダイシング時およびフリップチップ実装時のアライメントマークの認識が容易である。また、本発明の組成物および製造方法を用いると、高精度に切断された半導体チップをバンプを介して回路基板の電極パッドに高精度に金属接合、もしくは導電物質間の接触による安定した導通を得ることができ、また半導体チップと回路基板の間で収縮応力を発揮し、信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、半導体チップと基板間でこれらの接続のために用いる接着剤のはみ出し量が小さく実装面積を極小化でき、半導体チップの薄型化と回路基板への実装工程を簡略化できる。 ・・・ [0065] (a)有機溶剤可溶性ポリイミドの含有量は、(b)エポキシ化合物100重量部に対し、15?90重量部であり、好ましくは30?65重量部である。(a)有機溶剤可溶性ポリイミドの含有量が15重量部未満であると、ダイシング時に半導体用接着組成物が半導体ウェハから剥離したり、割れや欠けが発生しやすくなる。このようなダイシング時の欠陥は切削速度が速いほど顕著になる。また(a)有機溶剤可溶性ポリイミドの含有量が90重量部を越えた場合は、シート化した半導体用接着組成物(接着シート)をバンプ電極付き半導体ウェハにラミネートする際に、半導体用接着組成物がバンプ電極間に十分に入り込まず、気泡が残存し、フリップチップ実装後の半導体チップと回路基板間の接着力が低下する。また、前記以外にも半導体用接着組成物が吸水しやすくなるために、ダイシング後の半導体用接着組成物層付き半導体チップを回路基板にフリップチップ実装を行うと、フリップチップ実装時の加熱により半導体用接着組成物中の水分が急激に蒸発し半導体用接着組成物層が発泡する。この接着力の低下や発泡は半導体チップと回路基板の接続信頼性の低下につながる。」 オ 引用文献5の記載事項 原査定の理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2007-186590号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0016】 本発明の半導体装置用接着剤組成物は、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、イソシアネート基、フェノール性水酸基、ビニル基、マレイミド基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する3官能以上の熱可塑性樹脂(A)、脂環式エポキシ樹脂(B)およびエポキシ樹脂用硬化剤(C)を含有する。 【0017】 本発明において、熱可塑性樹脂は、脂環式エポキシ樹脂(B)あるいはエポキシ樹脂用硬化剤(C)と反応することができる官能基、すなわちエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、イソシアネート基、フェノール性水酸基、ビニル基、マレイミド基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を3つ以上有する樹脂を含有する。これらの官能基を3つ以上有することにより、脂環式エポキシ樹脂(B)あるいは脂環式エポキシ樹脂(B)とエポキシ樹脂用硬化剤(C)との反応付加物を介して熱可塑性樹脂(A)が架橋構造を形成するために、得られる接着剤組成物の耐熱性が向上し、高温高湿環境下における接着耐久性が向上する。 【0018】 上記の官能基のうち、一分子中に二種類以上の異なった官能基を含む場合は全種類の官能基数を総計したものが3官能以上あれば良い。また、官能基の位置は特に制限されることはないが、側鎖に官能基を有していることが好ましい。 【0019】 さらに、上記の官能基の中でも、特にエポキシ基、水酸基、カルボキシル基からなる群より選ばれる官能基を有することが好ましい。これらの官能基を有する熱可塑性樹脂は、酸化による着色が少なく、高い光線透過率と無色に近い低い色調を有する接着剤層を形成することができる。このため、半導体集積回路を半導体装置接続用基板に接続する際の位置合わせが容易になり、加工性の歩留まりを改善することができる。」 カ 引用文献6の記載事項 原査定の理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2004-10810号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、液状樹脂組成物であって、チップ部品又は配線回路基板の表面に塗布あるいは滴下して指定位置に適当な盛り上りを持った形態で配置することができ、次いで、それらのチップ部品と配線回路基板とを加熱接合する時に、所定位置の範囲を越えて流れ出したり飛び散ったりしないでチップ部品と配線回路基板との間隙を空隙なく充填することができ、加熱時に発泡や沸騰や分解がなく、適当な速度でゲル化又は硬化が進行し、更に、硬化物としたときに、弾性率が小さく、電気絶縁性が高く、ポリイミドフィルム及びシリコンウエハーに対する密着性が高く、ハンダや金属共晶などのフラックス処理に耐える耐熱性がある、新たな無溶剤型の一液性エポキシ樹脂組成物と、それを加熱硬化して得られる硬化物を提供することである。 すなわち、フリップチップ実装において、予めチップ部品又は配線回路基板の表面に塗布あるいは滴下して配置しておき、次いで、チップ部品と配線回路基板とをバンプで加熱接合することによって、チップ部品と配線回路基板との間隙に封止充填剤を好適に形成することができる無溶剤型の一液性エポキシ樹脂組成物と、それを加熱硬化して得られる硬化物からなる封止充填剤を提供することである。」 キ 引用文献7の記載事項 原査定に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2006-49482号公報(以下「引用文献7」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0022】 本発明のウエハ加工用テープは、例えば、図1に示すように使用される。図1は本発明のウエハ加工用テープを使用する半導体装置の製造方法の一つの実施態様の工程の説明図である。 図1(a)の断面図で示されるように、ウエハ加工用テープは、基材フィルム1に粘着剤層2が積層された保護テープ(BGテープ)に接着剤層3が積層されている。 接着剤層3には、絶縁性フィルム(NCF)または異方導電性フィルム(ACF)が使用される。 次いで、図1(c)の断面図で示されるように、凸型金属電極(バンプ)4を有するウエハ回路基板5にウエハ加工用テープを貼合して加熱し、凸型金属電極4を接着剤層3に埋め込み貼合し、裏面を破線で示される分だけ研削加工して所定厚さとする。図1(b)は、1(c)の工程における平面図であり、6は金バンプウエハ、7はリングフレームを示す。次いで、当該回路基板に加工用テープを貼合したまま、放射線照射した後、ウエハ回路基板をダイシングし(図1(d))、チップをピックアップする(図1(e))。その際、ウェハ加工用テープの接着剤層3は保護テープ粘着剤層2から剥離し、チップに接着したままピックアップされ、ダイボンド工程において接着剤として使用し、半導体装置を製造する。」 (2)対比 ア 本願発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は、「半導体装置の製造方法」であって、「チップとチップ搭載用基板とを強固に接着する工程」を含むものであるから、引用発明の「半導体装置」は、「チップ」と「チップ搭載用基板」を有するものと認められる。また、引用発明の「チップ」は、「半導体ウエハ」を切断分離して得られるものであるから、本願発明の「半導体ウエハを個片化してなる半導体チップ」に相当するといえる。また、引用発明の「チップ搭載用基板」は、本願発明の「半導体チップが実装される基板」に相当するといえる。 そうすると、本願発明と引用発明は、「半導体ウエハを個片化してなる半導体チップと当該半導体チップが実装される基板とを有する半導体装置の製造方法」である点において共通するといえる。 (イ)引用発明の「半導体ウエハ」は、その回路面に「バンプ」を有している。そして、上記「バンプ」は、チップ搭載用基板の電極部と導通し、その頂部が回路面から突出しているから、「突起電極」であるといえる。 そうすると、本願発明と引用発明は、「半導体ウエハは、回路面に設けられた突起電極を有しており」という点において共通するといえる。 (ウ)引用発明は、「半導体ウエハの回路面にフリップチップ実装用アンダーフィルテープの粘接着剤層を貼付して、半導体ウエハのバンプが粘接着剤層を貫通し、バンプ頂部が基材内に貫入することにより、半導体ウエハの回路面及びバンプがフリップチップ実装用アンダーフィルテープに保護された状態にする工程」を有する。ここで、引用発明の「粘接着剤層」は、樹脂材料からなるものであり、また、その目的に鑑みて絶縁材であることは明らかであるから、後述する相違点5を除き、本願発明の「絶縁性樹脂層」に相当するといえる。 そうすると、本願発明と引用発明は、「半導体ウエハに対して、絶縁性樹脂層を形成する」という点において共通するといえる。 (エ)引用発明の「上記の状態(半導体ウエハの回路面及びバンプがフリップチップ実装用アンダーフィルテープに保護された状態)で半導体ウエハの裏面研削を行う工程」は、後述する相違点4を除き、本願発明の「前記第1工程で前記絶縁性樹脂層が形成された前記回路面の反対側の面を研削して前記半導体ウエハを薄化する第2工程」に相当するといえる。 (オ)引用発明の「リングフレーム」は、本願発明の「ウエハリング」に相当するといえる。また、引用発明では、ダイシングテープを半導体ウエハの裏面側に圧着しているのであるから、切断分離を回路面側から行っていることは明らかであるといえる。また、引用発明では、半導体ウエハを切断分離した後に粘接着剤層から基材を剥離することによって、「回路面が粘接着剤層で覆われ、かつバンプ頂部が粘接着剤層を貫通し、バンプ頂部が粘接着剤層から突出したチップ」を得ているのであるから、半導体ウエハを切断分離する際に、粘接着剤層を同時に切断分離していることは明らかであるといえる。 そうすると、引用発明の「半導体ウエハの裏面側にダイシングテープを圧着し、これを介してリングフレームに固定して、ダイシング装置を用いて半導体ウエハを切断分離し、チップを得る工程」は、本願発明の「前記第2工程で研削された前記反対側の面にダイシングテープを貼り合わせて、前記半導体ウエハをウエハリングに固定する第3工程」及び「前記第3工程で前記ウエハリングに固定された前記半導体ウエハを、前記回路面側から前記絶縁性樹脂層と一緒にダイシングして、前記半導体ウエハを半導体チップに個片化する第4工程」に相当するといえる。 (カ)引用発明は「チップのバンプが、チップ搭載用基板の電極部に相対するように位置合わせをし、チップとチップ搭載用基板との導通を確保するように、チップをチップ搭載用基板に載置する工程」及び「粘接着剤層を熱硬化することで、チップとチップ搭載用基板とを強固に接着する工程」を備えており、引用発明の「チップ搭載用基板の電極部」は本願発明の「基板電極」に相当するといえる。 そうすると、本願発明と引用発明は、「半導体チップの突起電極と基板の基板電極とを位置合わせし、半導体チップの突起電極と基板の基板電極とを電気的に接続する」点において共通するといえる。 (キ)引用発明の「粘接着剤層」は、エポキシ樹脂と熱活性型潜在性硬化剤とを含んでおり、上記「熱活性型潜在性硬化剤」は、本願発明の「硬化剤」に相当するといえる。 そうすると、本願発明の「絶縁性樹脂層」と引用発明の「粘接着剤層」は、「エポキシ樹脂と硬化剤とを成分として含」む点において共通するといえる。 (ク)引用発明の「粘接着剤層」は、半導体ウエハの回路面にフリップチップ実装用アンダーフィルテープの粘接着剤層を貼付することによって回路面上に形成されるものである。 そうすると、本願発明と引用発明は、「絶縁性樹脂層は、半導体ウエハの回路面にフィルム状樹脂組成物をラミネートすることによって形成される」という点において共通するといえる。 イ 以上から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。 (ア)一致点 「半導体ウエハを個片化してなる半導体チップと当該半導体チップが実装される基板とを有する半導体装置の製造方法であって、 前記半導体ウエハは、回路面に設けられた突起電極を有しており、 前記半導体ウエハに対して、絶縁性樹脂層を形成する第1工程と、 前記第1工程で前記絶縁性樹脂層が形成された前記回路面の反対側の面を研削して前記半導体ウエハを薄化する第2工程と、 前記第2工程で研削された前記反対側の面にダイシングテープを貼り合わせて、前記半導体ウエハをウエハリングに固定する第3工程と、 前記第3工程で前記ウエハリングに固定された前記半導体ウエハを、前記回路面側から前記絶縁性樹脂層と一緒にダイシングして、前記半導体ウエハを半導体チップに個片化する第4工程と、 前記半導体チップの前記突起電極と前記基板の基板電極とを位置合わせし、前記半導体チップの前記突起電極と前記基板の前記基板電極とを電気的に接続する電気的接続工程と、を備え、 前記絶縁性樹脂層は、 エポキシ樹脂と硬化剤とを成分として含み、 前記半導体ウエハの前記回路面にフィルム状樹脂組成物をラミネートすることによって形成される、半導体装置の製造方法。」 (イ)相違点 ・相違点1 本願発明は第1工程において「突起電極を埋め込むように回路面の全体に絶縁性樹脂層を形成する」のに対し、引用発明は「バンプを埋め込むように回路面の全体に粘接着剤層を形成する」ことは特定されていない点。 ・相違点2 本願発明は「第4工程で個片化された半導体チップをダイシングテープからはく離してピックアップするピックアップ工程」を備えるのに対し、引用発明は当該工程について特定されていない点。 ・相違点3 本願発明は電気的接続工程において半導体チップと基板とを加熱・加圧することによって半導体チップの突起電極と基板の基板電極とを電気的に接続するのに対し、引用発明はチップをチップ搭載用基板に載置してチップとチップ搭載用基板との導通を確保し、粘接着剤層を熱硬化することによりチップとチップ搭載用基板とを強固に接着する点。 ・相違点4 本願発明は第2工程において「半導体ウエハの回路面上において突起電極が露出していない状態の絶縁性樹脂層に、基材フィルム及び当該基材フィルムの一面に形成された粘着層を有するバックグラインドテープを直接貼り合わせて、前記半導体ウエハを研削装置に固定する」のに対し、引用発明は半導体ウエハを研削装置に固定する方法について特定されていない点。 ・相違点5 本願発明の「絶縁性樹脂層」は「熱可塑性成分」を含むのに対し、引用発明は、「粘接着剤層」が「熱可塑性成分」を含むことについて特定されていない点。 (3)判断 ア 本願発明の進歩性について 上記相違点4について検討する。 引用文献1ないし7の記載事項は上記(1)ア(ア)及びイないしキに摘記したとおりであって、上記相違点4に係る構成について記載されているとは認められない。 したがって、上記相違点4に係る構成は、引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできないから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本願の請求項2及び3に係る発明の進歩性について 本願の請求項2及び3に係る発明はいずれも請求項1を引用しており、本願の請求項2及び3に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。 してみれば、本願発明が引用文献1ないし7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本願の請求項2及び3に係る発明も、引用文献1ないし7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 原査定の理由についてのまとめ 以上のとおり、本願の請求項1ないし3に係る発明は、引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 平成28年5月9日付けで当審より通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項:1 ・引用文献等:1乃至4 ・備考 引用文献1の段落[0028]、[図4]等には、半導体ウエハ1の回路面に導通用突起物31を設けることについて記載されており、当該「半導体ウエハ1」及び「導通用突起物31」は、それぞれ、本願発明の「半導体ウエハ」及び「突起電極」に相当する。 引用文献1の段落[0019]乃至[0028]、[図4]等には、半導体ウエハ1の回路面に設けられた導通用突起物31を埋め込むように、バインダー樹脂を主成分とする絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)を貼着する旨の記載がある。また、引用文献1の段落[0021]、[0024]、[0031]等には、剥離性シートを用いなくてもよい旨の記載がある。上記「絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)」は、本願発明の「絶縁性樹脂層」に相当し、当該絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)を半導体ウエハ1の回路面に貼着する工程は、本願発明の「第1工程」に相当する。 引用文献1の段落[0029]、[図4]等には、半導体ウエハ1の回路面上において導通用突起物31が露出していない状態であること、及び、絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)が貼着された状態で研削装置を用いて半導体ウエハ1の裏面研削を行い、所定の厚さまで研削する工程について記載されており、本願発明の「第2工程」に相当する(ただし、後述の点において相違する)。 引用文献1の段落[0030]等には、半導体ウエハ1の裏面にダイシングテープを貼着し、これを介して円形のフレームに固定してダイシングを行い切断分離することによりチップを回収する旨の記載があり、本願発明の「第3工程」及び「第4工程」に相当する。また、前記「チップ」は、本願発明の「半導体チップ」に相当する。 引用文献1の段落[0030]乃至[0031]等には、ピックアップ装置を用いて切断分離されたチップとする旨の記載があり、また、[図5]等の記載及び出願時の技術常識から、ダイシング終了後にダイシングテープをチップから剥離していることは明らかであることから、これらの工程が、本願発明の「ピックアップ工程」に相当する。 引用文献1の段落[0033]乃至[0034]、[0037]乃至[0041]、[図6]等には、チップ2をチップ搭載用基板30に搭載し、加熱、加圧することによって、チップ2の導通用突起物31と、チップ搭載用基板30の導通用突起物31’との間の導通を確保する旨の記載があり、本願発明の「電気的接続工程」に相当する。また、前記「チップ搭載用基板30」及び「導通用突起物31’」は、それぞれ、本願発明の「基板」、「基板電極」に相当する。 引用文献1の段落[0046]等には、バインダー樹脂としてアクリル樹脂10重量部と、ウレタン系アクリレートオリゴマー10重量部と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトン0.3重量部と、エポキシ樹脂105重量部と、ジシアンジアミド2.12重量部と、アクリル系ゴム微粒子5重量部と、芳香族系ポリイソシアナート2重量部とからなる粘接着剤組成物を、剥離性シートとして表面張力35 mN/mのポリエチレンフィルム(厚さ:100μm)に塗布・乾燥し、厚さ60μmの絶縁性粘接着剤層を有する粘接着テープを得、これを剥離性シートを有する絶縁性接着性薄膜層とする旨の記載がある。アクリル樹脂が熱可塑性を有することは広く知られているから(引用文献2の段落[0054]等)、引用文献1の段落[0046]に記載された「アクリル樹脂」は、本願発明の「熱可塑性成分」に相当する。また、本願明細書の段落[0024]に記載されているように、本願発明の「硬化剤」には「ジシアンジアミド」が含まれるから、引用文献1の段落[0046]に記載された「ジシアンジアミド」は、本願発明の「硬化剤」に相当する。したがって、引用文献1の段落[0046]等には、熱可塑成分と、エポキシ樹脂と、硬化剤とを成分として含む絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)について記載されているものと認められる。 本願発明と引用文献1に記載された発明とを比較すると、下記の点において相違する。 [相違点]本願発明は、第2工程において、絶縁性樹脂層に基材フィルム及び当該基材フィルムの一面に形成された粘着層を有するバックグラインドテープを貼り合わせて、半導体ウエハを研削装置に固定するのに対し、引用文献1に記載された発明では、研削装置を用いて裏面を研削する点については記載されているものの、バックグラインドテープを貼り合わせて、半導体ウエハを研削装置に固定することについては記載されていない点。 上記相違点について検討する。半導体ウエハの研削において、研削する面とは反対側の面に、基材フィルム及び当該基材フィルムの一面に形成された粘着層を有するバックグラインドテープを貼り合わせて、半導体ウエハを研削装置に固定する技術は、引用文献3(段落[0006]乃至[0008]、[0028]乃至[0029]等)、引用文献4(段落[0010]、[0034]乃至[0035]等)に記載されているように、本願出願時において周知であった。また、引用文献1の段落[0029]、[0038]乃至[0039]等には、半導体ウエハ1の回路面に絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)が貼着された状態で裏面研削を行うこと、裏面研削時において前記絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)が前記ウエハ回路面の保護シートとしての機能を発現すること、チップの固着を行う際に前記絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)を加熱して流動化させることについて記載されており、裏面研削時には前記絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)は流動性を有せず、一定の形状を維持しているものと認められる。してみれば、引用文献1に記載された発明において、半導体ウエハ1の回路面に絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)が貼着された状態で研削装置を用いた裏面研削を行う際に、引用文献3乃至4に記載された周知技術を適用することによって、基材フィルムの一面に形成された粘着層を有するバックグラインドテープを研削する面とは反対側の面に形成された絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)に貼り合わて、半導体ウエハを研削装置に固定するよう構成することは、当業者であれば適宜なし得たことである。 よって、本願の上記請求項に係る発明は、引用文献1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、仮に引用文献1の段落[0046]等に記載された「アクリル樹脂」が、本願発明の「熱可塑性成分」に相当するものでないとしても、熱可塑性成分、エポキシ樹脂及び硬化剤を成分として含む接着剤層は、引用文献2の段落[0051]乃至[0054]等に記載されているように、本願出願時において周知であったから、引用文献1に記載された発明の「絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)」として、引用文献2に記載された、熱可塑性成分、エポキシ樹脂及び硬化剤を成分として含む周知の接着剤層を用いることは、当業者であれば適宜なし得たことである。また、引用文献2の段落[0051]、[0060]、[0069]等には、接着剤層が常温において固体であること、ダイシングテープを貼着及び剥離可能であることが記載されているから、引用文献1に記載された発明の「絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)」として、引用文献2に記載された上記周知の接着剤層を採用した場合においても、引用文献3乃至4に記載された上記周知技術を適用することについての阻害要因は存在しない。したがって、この場合も、本願の上記請求項に係る発明は、引用文献1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項:2 ・引用文献等:1乃至6 ・備考 アライメントマークの認識を良好とするために半導体用接着組成物の光線透過率を高くすることは、引用文献5の段落[0074]、引用文献6の段落[0016]乃至[0019]等に記載されているように、本願出願時において周知の技術課題であったから、引用文献1に記載された発明において、「絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)」の可視光透過率が10%以上となるように各成分の含有量を調整することは、当業者であれば適宜なし得たことである。 その他の点については、上記と同様である。 よって、本願の上記請求項に係る発明は、引用文献1乃至6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項:3 ・引用文献等:1乃至7 ・備考 加熱時における半導体用接着組成物の発泡を抑制することは、引用文献5の段落[0065]、引用文献7の段落[0005]乃至[0007]等に記載されているように、本願出願時において周知の技術課題であったから、引用文献1に記載された発明において、「絶縁性接着剤層(接着性薄膜層)」が、300℃以上の加熱温度において樹脂発泡を起こさないよう、各成分の含有量を調整することは、当業者であれば適宜なし得たことである。 その他の点については、上記と同様である。 よって、本願の上記請求項に係る発明は、引用文献1乃至7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項:4 ・引用文献等:1乃至7 ・備考 引用文献1の段落[0022]、[図4]等には、接着性薄膜層を剥離性シートからウエハに転写する旨の記載があり、本願発明の「半導体ウエハの回路面にフィルム状樹脂組成物をラミネートする」ことに相当する。 その他の点については、上記と同様である。 よって、本願の上記請求項に係る発明は、引用文献1乃至7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2001-144140号公報 2.国際公開第2007/148724号 3.特開2003-173993号公報 4.特開2000-129227号公報 5.国際公開第2006/132165号 6.特開2007-186590号公報 7.特開2004-10810号公報」 2 当審拒絶理由についての判断 (1)当審引用文献1ないし7の記載事項及び当審引用発明 ア 当審引用文献1の記載事項及び当審引用発明 (ア)当審引用文献1の記載事項 当審拒絶理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2001-144140号公報(以下「当審引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 表面に回路が形成された半導体ウエハの回路面に、接着性薄膜層を形成し、 該半導体ウエハを、回路毎に個別のチップに切断分離し、 該個別のチップを該接着性薄膜層を介して、チップ搭載用基板の所定位置に載置し、 該個別のチップと該チップ搭載用基板との導通を確保しながら該個別のチップを該チップ搭載用基板に接着固定することを特徴とする半導体装置の製造方法。 【請求項2】 半導体ウエハを個別のチップに切断分離する前に、該接着性薄膜層により半導体ウエハの回路面を保護しながら該半導体ウエハの裏面を研削することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。 【請求項3】 前記接着性薄膜層が片面に剥離性シートを有し、該接着性薄膜層の剥離性シートが形成されていない面を介して、該接着性薄膜層を半導体ウエハの回路面に貼付することにより、半導体ウエハの回路面に接着性薄膜層を形成し、 個別のチップを、チップ搭載用基板に載置する前に、該剥離性シートを接着性薄膜層から剥離することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。 ・・・ 【請求項5】 該接着性薄膜層が絶縁性接着剤からなり、チップの回路上および/またはチップ搭載用基板上に導通用突起物を有し、該接着性薄膜層を加熱により流動化させて該導通用突起物を介してチップとチップ搭載用基板との間に導通を確保することを特徴とする請求項1?3の何れかに記載の半導体装置の製造方法。 ・・・ 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明について図面を参照しながらさらに具体的に説明する。本発明に係る半導体装置の第1の製造方法においては、まず図1または図4に示すように、表面に回路が形成された半導体ウエハ1の回路面に、接着性薄膜層12(または22)を形成する。 ・・・ 【0014】この回路形成工程においては、ウエハ裏面に酸化物被膜が形成されることがあるが、このような酸化物被膜は、必要に応じ、後述するウエハ裏面の研削により除去される。接着性薄膜層は、異方導電性接着剤または絶縁性接着剤からなる。図1に示す接着性薄膜層12は、異方導電性接着剤からなる(以下、この場合を「異方導電性接着剤層12」と略記する)。異方導電性接着剤は、バインダーポリマー中に導電性粒子を含む接着剤であり、圧着前には接着性薄膜層中の導電性粒子同士は互いに接触しない範囲でバインダー樹脂中に存在し、接着性薄膜層を介してチップとチップ搭載用基板とを圧着すると、電極としての導電性突起物が接着性薄膜層を圧縮し、接着性薄膜層の厚さ方向にのみ導電性粒子が接触し、異方導電性を発現するものである。 【0015】バインダー樹脂として用いられる材料は、通常の接着剤として使用されている樹脂が特に制限されることなく用いられ、熱硬化性のものであっても、熱可塑性のものであってもよい。また、貼付時に感圧接着性であり、後に加熱によって硬化する、いわゆる粘接着剤を使用してもよい。熱硬化性のバインダー樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、レゾルシノール樹脂等が用いられ、好ましくはエポキシ樹脂、アクリル樹脂が用いられる。 【0016】熱可塑性のバインダー樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアミド、セルロース、ポリイソブチレン、ポリビニルエーテル、ポリイミド樹脂、各種のホットメルト系接着剤等が用いられ、好ましくはポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂が用いられる。 【0017】粘接着剤としては、たとえば常温で感圧接着性を有するバインダー樹脂と熱硬化性樹脂との混合物が挙げられる。常温で感圧接着性を有するバインダー樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル、ウレタン樹脂、ポリアミド等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、前述の熱硬化性のバインダー樹脂と同様の樹脂があげられ、バインダー樹脂よりも比較的低分子量のものが使用できる。また粘接着剤には後述の剥離性シートとの剥離性を制御するため、ウレタン系アクリレートオリゴマーなどの紫外線硬化性樹脂を配合することが好ましい。紫外線硬化性樹脂を配合すると、紫外線照射前は剥離性シートが接着性薄膜層とよく密着し、紫外線照射後は剥離しやすくなる。 ・・・ 【0019】このような導電性粒子は、上記バインダー樹脂100重量部に対して、1?500重量部程度の割合で用いられる。異方導電性接着剤層12の膜厚は、好ましくは1?100μm程度であり、特に好ましくは10?50μm程度である。図4に示す接着性薄膜層22は、絶縁性接着剤からなるなる(以下、この場合を「絶縁性接着剤層22」と略記する)。 【0020】絶縁性接着剤は、導電性粒子を含まない以外は、前記異方導電性接着剤と同様であり、また熱硬化性のものであっても、熱可塑性のものであっても、また粘接着剤からなるものであってもよい。すなわち、熱硬化性絶縁性接着剤層22は、前述した熱硬化性のバインダー樹脂を主成分としてなり、導電性粒子を含まないものであり、また、熱可塑性絶縁性接着剤層22は、前述した熱可塑性のバインダー樹脂を主成分としてなり、導電性粒子を含まないものである。 【0021】また粘接着性の絶縁性接着剤層22は、前述した粘接着剤を主成分としてなり、導電性粒子を含まないものである。絶縁性接着剤層22の膜厚は、好ましくは1?200μm程度であり、特に好ましくは10?70μm程度である。なお、本発明においては、図1または図4に示すように、接着性薄膜層12または22の片面に、剥離性シート11または21が貼着されていてもよい。 【0022】接着性薄膜層は所定の工程を剥離性シートを積層した形で使用され、その後剥離性シートからウエハまたはチップに転写される。剥離性シートは、たとえば接着性薄膜層をウエハに貼付する際に、張力により変形しないように補強のために用いられる。また、研削工程や切断分離工程の際に接着性薄膜層の表面を保護することもできる。 ・・・ 【0025】剥離性シートの表面張力が40mN/mより大きいと、接着性薄膜層の剥離性シートへの密着性が高くなり、チップ体への転写ができないことがある。一方、20mN/m未満では、研削工程で剥離性シートと接着性薄膜層の間に研削水が侵入しウエハを破損するおそれがあり、また接着性薄膜層の性状によっては剥離性シート上に接着性薄膜層を形成できないことがある。 【0026】上記のような剥離性シート11または21の厚さは、通常5?300μmであり、好ましくは10?200μmである。本発明の半導体装置の製造方法においては、接着性薄膜の形成工程、切断分離工程、チップの接着固定工程が行なわれる。また、所望により裏面研削工程が行なわれても良い。 【0027】接着性薄膜層12または22の半導体ウエハ1への形成は、貼付装置による貼付によって行なわれる。貼付の際の圧力は、貼付装置の貼付方法(ゴムローラー式、真空密着式)により適宜に設定されるが、加圧条件が弱過ぎるとウエハに接着性薄膜層が密着しないことがあり、また強過ぎるとウエハを破損することがある。 【0028】貼付温度は、使用する接着性薄膜層の性質による。通常は、バインダー樹脂の可塑化温度以上180℃以下の温度が好ましい。なお、粘接着剤を使用した場合は、常温で貼付できる。貼付温度が高過ぎると、ウエハの研削後、ウエハに反りを発生させるおそれがある。またウエハの回路面に設けられる導通用突起物の高さが50μm以上となるようなウエハの回路面の凹凸が大きい場合は、標準の加圧条件よりも強い条件または高い貼付温度で貼付を行ない、ウエハ回路面に密着させることが好ましい。 【0029】本発明においては、半導体ウエハ1の切断分離等の各種の所要工程をウエハ1の回路面に接着性薄膜層12または22が貼着された状態で行なう。また、切断分離に先立ち、必要に応じ、半導体ウエハ1の裏面研削を行なってもよい。半導体ウエハ1の裏面研削工程は、回路形成時においてウエハ裏面に形成される酸化物被膜を除去し、ウエハの厚さを所定の厚さまで研削する工程である。裏面研削は、たとえば研削装置等の従来公知の方法により行いうる。本発明においては、接着性薄膜層が、裏面研削時において、ウエハ回路面の保護シートとしての機能をも発現する。 【0030】次に、ウエハの切断分離を行う。ウエハの切断分離は、通常のダイシング装置を用いて行なわれる。この際、ウエハの裏面にダイシングテープを貼着し、これを介して円形のフレームに固定してダイシングが行なわれる。続いて、ピックアップ装置やチップボンダーを用いて切断分離されたチップを個別にチップトレー等に回収する。 【0031】このような所要の工程を経て、図2または図5に示すように、回路面に接着性薄膜層が形成されたチップ2が得られる。本発明において接着性薄膜層は、剥離性シートを用いる場合は、剥離性シートの剥離面上に接着剤の組成物を塗布し、必要に応じて乾燥するか、薄膜状にキャスト成形した後、剥離性シートを積層して形成される。また剥離性シートを用いない場合は、キャスト成形等により製造される。 【0032】接着性薄膜層に剥離性シートが積層されている場合、剥離性シートは、切断分離された個別のチップを、チップ搭載用基板に載置する前に、接着性薄膜層から剥離される。剥離性シートを接着性薄膜層から剥離する方法としては、幅広の粘着シートを剥離性シートの全面に貼り付けた後に鋭角で引き剥がすことなどにより行なわれる。剥離性シートの剥離は切断分離の後に行なうことが好ましいが、切断分離の前であってもよい。 【0033】次いで、本発明に係る半導体装置の製造方法においては、チップ2を、接着性薄膜層を介して、チップ搭載用基板30上に載置し、チップ2の固着を行う(図3または図6参照)。チップ2には、表面に所定の回路が形成され、さらに回路表面にチップ搭載基板30と導通するための電極が形成されている。該電極は、好ましくは金、銅、ハンダ等の導電材料からなる突起物(導通用突起物31)からなり、その高さおよび径は、通常10?100μm程度である。またチップ2の回路面の電極以外の部分は絶縁被膜が形成されている。 【0034】チップ搭載用基板30は、たとえばポリイミドなどの絶縁性で耐熱性のシート材料上に、銅箔等の導電材料で形成された回路が積層されている。この回路は図8に示すように、チップの電極に相対する端部と、外部装置と導通するための電極用端部を継ぐ複数個の配線からなる。接着性薄膜層に絶縁性接着剤を用いる場合は、チップの電極に相対する端部に導通用突起物31’を設けることが好ましい。この突起物は、上記のチップ上の突起物と同様に、金、銅、ハンダ等の導電材料からなり、その高さおよび径は、通常10?100μm程度である。 ・・・ 【0037】また、前記接着性薄膜層12が絶縁性接着剤からなる場合には、チップ2として、回路上に導通用突起物31を有するチップを用いるか、あるいは導通用突起物31’を有するチップ搭載用基板30を用いる。もちろんこれらを併用してもよい。図6に示したものは、導通用突起物31を有するチップ2および導通用突起物31’を有するチップ搭載用基板30を併用した例である。 【0038】この場合には、回路面に絶縁性接着剤層22が転写されたチップ2を、該絶縁性接着剤層22を介して、導通用突起物31、31’を有するチップ搭載用基板30上に載置する。この時点では、チップ2とチップ搭載用基板30との導通はとれていないので、絶縁性接着剤22を流動化させて該導通用突起物31、31’を介してチップ2とチップ搭載用基板30とを接続し、導通を確保した後、チップ2の固着を行う。 【0039】上記絶縁性接着剤層22が、熱硬化性絶縁性接着剤または粘接着剤型絶縁性接着剤からなる場合には、チップ2を該絶縁性接着剤層22を介してチップ搭載用基板上30に載置した後、該絶縁性接着剤を硬化しないように加熱して、流動化させ、該導通用突起物31、31’を介してチップ2とチップ搭載用基板30との間の導通を確保した後、絶縁性接着剤の硬化温度以上に加熱して、チップの固着を行う。 【0040】また、上記絶縁性接着剤層22が、熱可塑性絶縁性接着剤からなる場合には、チップ2を該熱可塑性絶縁性接着剤を介してチップ搭載用基板30上に載置した後、該熱可塑性絶縁性接着剤を加熱して、流動化させ、該導通用突起物31、31’を介してチップ2とチップ搭載用基板30との間の導通を確保した後、該熱可塑性絶縁性接着剤の可塑化温度未満に冷却して、チップの固着を行う。 【0041】チップ2とチップ搭載用基板30との接着固定は、フリップチップボンダー等により行うことができる。フリップチップボンダーは、加熱条件、加圧条件を精度良く設定できるものが好ましい。このような本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、チップ2とチップ搭載用基板30とを、空間を生じることなく、密着した状態で固着できるので、樹脂封止を行っても、ボイドのない、信頼性の高い、半導体装置を得ることができる。 ・・・ 【0044】 【実施例】以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、半導体装置の導通評価は、以下のようにして行なった。評価用のチップとしては、図7に示す大きさが3mm×5mmで、直径90μm、高さ30μmの金製バンプ(導通用突起物)が4つ設けられた評価用ダミーチップを用いる。バンプは、2つが一組となり、金線で導通がとられている。したがって、ウエハには、上記のチップに対応するダミー回路が多数設けられている。 【0045】またチップ搭載用基板としては、図8に示す上記バンプの位置に対応する配線パターンを有する基板を評価用基板として用いる。 【0046】 【実施例1】バインダー樹脂としてアクリル樹脂10重量部と、ウレタン系アクリレートオリゴマー10重量部と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトン0.3重量部と、エポキシ樹脂105重量部と、ジシアンジアミド2.12重量部と、アクリル系ゴム微粒子5重量部と、芳香族系ポリイソシアナート2重量部とからなる粘接着剤組成物を、剥離性シートとして表面張力35 mN/mのポリエチレンフィルム(厚さ:100μm)に塗布・乾燥し、厚さ60μmの絶縁性粘接着剤層を有する粘接着テープを得、これを剥離性シートを有する絶縁性接着性薄膜層とした。 【0047】前記した回路パターンを有する半導体ウエハ(6インチ、厚さ625μm)の回路面に、上記接着性薄膜層を常温で圧着(テープ貼付装置:リンテック社製、Adwill RAD-3500使用)した。半導体ウエハ裏面を研削(研削装置:ディスコ社製、DFG-840使用)して、厚さを300μmにし、その後研削面にダイシングテープ(Adwill G-19、リンテック社製)を貼付後、ダイシング装置(ディスコ社製、DAD-2H/6T)を使用して回路パターン毎に切断分離し、チップを得た。 【0048】回路面側に紫外線照射(紫外線照射装置:リンテック社製、Adwill RAD 2000m/6使用)を行い、次いで、接着性薄膜層上の剥離性シート上に強粘着テープを貼付し、これを剥離することで、接着性薄膜層上の剥離性シートを剥離し、チップの回路面に接着性薄膜層を残存させた。得られたチップをピックアップし、チップトレーに収納した。 【0049】次いでフリップチップボンダー(九州松下電器産業(株)製、FB30T-M)を用い、前記評価用基板に実装した。実装の際の、ステージ温度は60℃、ヘッド温度は180℃、荷重は20N、時間は60秒とした。実装後、150℃のオーブン中で60分保持し、粘接着剤層を完全に硬化させた。各端子間の抵抗値を、低抵抗率計(三菱化学製、Loresta-GP MCP-T600)を用いて測定し、ab間およびcd間の導通と、その他の端子間の絶縁を確認した。」 (イ)当審引用発明 上記(ア)の当審引用文献1の記載と当該技術分野における技術常識より、当審引用文献1には次の発明(以下「当審引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「半導体装置の製造方法であって、 回路面に導通用突起物31が設けられた半導体ウエハ1の回路面に、片面に剥離性シート21を有する絶縁性接着剤層22の剥離性シート21が形成されていない面を貼付することにより、半導体ウエハ1の回路面に絶縁性接着剤層22を形成する工程と、 前記半導体ウエハ1の裏面を所定の厚さまで研削する工程と、 前記半導体ウエハ1の裏面にダイシングテープを貼着し、これを介して円形のフレームに固定して、ダイシング装置により切断分離することにより、回路面に絶縁性接着剤層22が形成されたチップ2を得る工程と、 前記チップ2の回路面に形成された上記絶縁性接着剤層22に積層された前記剥離性シート21を剥離する工程と、 フリップチップボンダーを用いて、前記チップ2を、導通用突起物31’を有するチップ搭載用基板30の所定位置に載置し、加熱、加圧することによって前記導通用突起物31、31’を介して前記チップ2と前記チップ搭載用基板30との間の導通を確保する工程と、 前記チップ2を前記チップ搭載用基板30に接着固定する工程と、 を備え、 前記絶縁性接着剤層22は、アクリル樹脂10重量部と、ウレタン系アクリレートオリゴマー10重量部と、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトン0.3重量部と、エポキシ樹脂105重量部と、ジシアンジアミド2.12重量部と、アクリル系ゴム微粒子5重量部と、芳香族系ポリイソシアナート2重量部とからなり、 前記剥離性シート21は、ポリエチレンフィルムからなる、 半導体装置の製造方法。」 イ 当審引用文献2の記載事項 当審拒絶理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2007/148724号(以下「当審引用文献2」という。)には、上記第3の2(1)ウで摘記したとおりの事項が記載されている。 ウ 当審引用文献3の記載事項 当審拒絶理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2003-173993号公報(以下「当審引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、半導体ウエハの研磨工程において、研磨される面とは反対側の面を保護するバックグラインドテープであって、基材の片面に粘着剤層が形成されてなるものであり、前記粘着剤層は、刺激を与えることにより気体を発生する気体発生剤を含有するバックグラインドテープである。以下に本発明を詳述する。 【0007】本発明のバックグラインドテープは、基材の片面に粘着剤層が形成されてなるものである。上記基材としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂からなるものが挙げられる。上記基材が紫外線を透過する物質からなる場合には、基材側から紫外線を照射することにより、半導体ウエハと基材とを剥離することができるので好ましい。 【0008】上記粘着剤層を形成する粘着剤としては特に限定されないが、重合性オリゴマーを含有し、これが重合架橋することにより粘着力が低下する粘着剤からなることが好ましく、熱可塑性樹脂からなることがより好ましい。熱可塑性樹脂を用いると、粘着剤を熱により軟化させた状態で半導体ウエハと接着させることができるので、半導体ウエハ表面に形成された回路パターンの凹凸に粘着剤が密着して強い接着力が得られる。 ・・・ 【0028】本発明のバックグラインドテープを用いて半導体ウエハを研磨する方法としては、例えば、以下の工程による。まず、本発明のバックグラインドテープを半導体ウエハに貼りつける。貼り付ける面は、研磨する面とは反対側の、あらかじめ回路パターンが形成された面である。バックグラインドテープを貼り付けることにより、研磨中に回路パターンが損傷を受けたり、半導体ウエハ自体が破損したりするのを防止することができる。なお、熱可塑性樹脂からなる粘着剤を用いると、粘着剤を熱により軟化させた状態で半導体ウエハと接着させることができるので、半導体ウエハ表面に形成された回路パターンの凹凸に粘着剤が密着して強い接着力が得られる。 【0029】続いて、バックグラインドテープを貼り付けた半導体ウエハを研削装置に固定して半導体ウエハを研磨する。研磨は通常、半導体ウエハが100?600μm程度の厚さになるまで行うが、50μm以下の厚さにまで研磨することもある。」 エ 当審引用文献4の記載事項 当審拒絶理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2000-129227号公報(以下「当審引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0010】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発明についてさらに具体的に説明する。本発明に係る半導体ウエハ保護用粘着シート10は、図1に示すように、剛性フィルム1の片面に粘着剤層2が設けられ、該粘着剤層2がエネルギー線硬化型粘着剤からなり、該剛性フィルム1の粘着剤層の反対面には収縮性フィルム3が積層されていることを特徴としている。 ・・・ 【0034】本発明の半導体ウエハの裏面研削方法を、図面に基づきさらに具体的に説明する。まず、図2に示すように、粘着シート10の粘着剤層2にウエハ4を貼付する。ウエハ4の表面には、回路パターンが形成されている。 【0035】次いで、図3に示すように、ウエハ4の裏面をグラインダー5等により、所定の厚さになるまで研削する。この際、これらウエハ4は、粘着シート10により固定されるとともに、粘着剤層4に接している側のウエハ面では表面保護も同時に行われることになる。研削は、ウエハ4を剛性フィルム1上に固定して行われるので、精度の高い加工が可能になる。」 オ 当審引用文献5の記載事項 当審拒絶理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2006/132165号(以下「当審引用文献5」という。)には、上記第3の2(1)エで摘記したとおりの事項が記載されている。 カ 当審引用文献6の記載事項 当審拒絶理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2007-186590号公報(以下「当審引用文献6」という。)には、上記第3の2(1)オで摘記したとおりの事項が記載されている。 キ 当審引用文献7の記載事項 当審拒絶理由に引用され、本願及び原出願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2004-10810号公報(以下「当審引用文献7」という。)には、上記第3の2(1)カで摘記したとおりの事項が記載されている。 (2)対比 ア 本願発明と当審引用発明とを対比する。 (ア)当審引用発明は、「半導体装置の製造方法」であって、「チップ2をチップ搭載用基板30に接着固定する工程」を含むものであるから、当審引用発明の「半導体装置」は、「チップ2」と「チップ搭載用基板30」を有するものと認められる。また、当審引用発明の「チップ2」は、「半導体ウエハ1」を切断分離して得られるものであるから、本願発明の「半導体ウエハを個片化してなる半導体チップ」に相当するといえる。また、当審引用発明の「チップ搭載用基板30」は、本願発明の「半導体チップが実装される基板」に相当するといえる。 そうすると、本願発明と当審引用発明は、「半導体ウエハを個片化してなる半導体チップと当該半導体チップが実装される基板とを有する半導体装置の製造方法」である点において共通するといえる。 (イ)当審引用発明の「半導体ウエハ1」の回路面には「導通用突起物31」が設けられており、当該「導通用突起物31」は本願発明の「突起電極」に相当するといえる。 そうすると、本願発明と当審引用発明は、「半導体ウエハは、回路面に設けられた突起電極を有しており」という点において共通するといえる。 (ウ)当審引用発明の「絶縁性接着剤層22」は、成分として樹脂を含むものであるから、後述する相違点4を除き、本願発明の「絶縁性樹脂層」に相当するといえる。 そうすると、本願発明と当審引用発明は、「半導体ウエハに対して、絶縁性樹脂層を形成する第1工程」を備える点において共通するといえる。 (エ)当審引用発明の「前記半導体ウエハ1の裏面を所定の厚さまで研削する工程」は、後述する相違点3を除き、本願発明の「前記第1工程で前記絶縁性樹脂層が形成された前記回路面の反対側の面を研削して前記半導体ウエハを薄化する第2工程」に相当するといえる。 (オ)当審引用発明の「円形のフレーム」は、本願発明の「ウエハリング」に相当するといえる。また、当審引用発明では、ダイシングテープを半導体ウエハ1の裏面側に貼着しているのであるから、切断分離を回路面側から行っていることは明らかであるといえる。また、当審引用発明では、半導体ウエハ1を切断分離することで回路面に絶縁性接着剤層22が形成されたチップ2を得ているのであるから、半導体ウエハ1を切断分離する際に、絶縁性接着剤層22を同時に切断分離していることは明らかであるといえる。 そうすると、当審引用発明の「前記半導体ウエハ1の裏面にダイシングテープを貼着し、これを介して円形のフレームに固定して、ダイシング装置により切断分離することにより、回路面に絶縁性接着剤層22が形成されたチップ2を得る工程」は、本願発明の「前記第2工程で研削された前記反対側の面にダイシングテープを貼り合わせて、前記半導体ウエハをウエハリングに固定する第3工程」及び「前記第3工程で前記ウエハリングに固定された前記半導体ウエハを、前記回路面側から前記絶縁性樹脂層と一緒にダイシングして、前記半導体ウエハを半導体チップに個片化する第4工程」に相当するといえる。 (カ)当審引用発明の「フリップチップボンダーを用いて、前記チップ2を、導通用突起物31’を有するチップ搭載用基板30の所定位置に載置し、加熱、加圧することによって前記導通用突起物31、31’を介して前記チップ2と前記チップ搭載用基板30との間の導通を確保する工程」において、フリップチップボンダーを用いてチップ2をピックアップしていることは明らかであるといえる。また、当審引用発明の「導通用突起物31’」は本願発明の「基板電極」に相当するといえる。 そうすると、本願発明と当審引用発明は、「ピックアップされた前記半導体チップの前記突起電極と前記基板の基板電極とを位置合わせした後、前記半導体チップと前記基板とを加熱・加圧することによって、前記半導体チップの前記突起電極と前記基板の前記基板電極とを電気的に接続する電気的接続工程」を備える点において共通するといえる。 (キ)当審引用発明の「絶縁性接着剤層22」は、「エポキシ樹脂105重量部」と「ジジシアンジアミド2.12重量部」を含んでおり、本願明細書の段落【0024】の記載から、上記「ジジシアンジアミド2.12重量部」は、本願発明の「硬化剤」に相当するといえる。 そうすると、本願発明の「絶縁性樹脂層」と当審引用発明の「絶縁性接着剤層22」は、「エポキシ樹脂と硬化剤とを成分として含」む点において共通するといえる。 (ク)当審引用発明の「絶縁性接着剤層22」は、半導体ウエハ1の回路面に、片面に剥離性シート21を有する絶縁性接着剤層22の剥離性シート21が形成されていない面を貼付することにより形成されるものである。また、上記剥離性シート21は、ポリエチレンフィルムからなるものである。 そうすると、本願発明と当審引用発明は、「前記絶縁性樹脂層は、半導体ウエハの前記回路面にフィルム状樹脂組成物をラミネートすることによって形成される」という点において共通するといえる。 イ 以上から、本願発明と当審引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。 (ア)一致点 「半導体ウエハを個片化してなる半導体チップと当該半導体チップが実装される基板とを有する半導体装置の製造方法であって、 前記半導体ウエハは、回路面に設けられた突起電極を有しており、 前記半導体ウエハに対して、絶縁性樹脂層を形成する第1工程と、 前記第1工程で前記絶縁性樹脂層が形成された前記回路面の反対側の面を研削して前記半導体ウエハを薄化する第2工程と、 前記第2工程で研削された前記反対側の面にダイシングテープを貼り合わせて、前記半導体ウエハをウエハリングに固定する第3工程と、 前記第3工程で前記ウエハリングに固定された前記半導体ウエハを、前記回路面側から前記絶縁性樹脂層と一緒にダイシングして、前記半導体ウエハを半導体チップに個片化する第4工程と、 ピックアップされた前記半導体チップの前記突起電極と前記基板の基板電極とを位置合わせした後、前記半導体チップと前記基板とを加熱・加圧することによって、前記半導体チップの前記突起電極と前記基板の前記基板電極とを電気的に接続する電気的接続工程と、を備え、 前記絶縁性樹脂層は、 エポキシ樹脂と硬化剤とを成分として含み、 前記半導体ウエハの前記回路面にフィルム状樹脂組成物をラミネートすることによって形成される、半導体装置の製造方法。」 (イ)相違点 ・相違点1 本願発明は第1工程において「突起電極を埋め込むように回路面の全体に絶縁性樹脂層を形成する」のに対し、当審引用発明は「導通用突起物31を埋め込むように回路面の全体に絶縁性接着剤層22を形成する」ことは特定されていない点。 ・相違点2 本願発明は「第4工程で個片化された半導体チップをダイシングテープからはく離してピックアップするピックアップ工程」を備えるのに対し、当審引用発明は当該工程について特定されていない点。 ・相違点3 本願発明は第2工程において「半導体ウエハの回路面上において突起電極が露出していない状態の絶縁性樹脂層に、基材フィルム及び当該基材フィルムの一面に形成された粘着層を有するバックグラインドテープを直接貼り合わせて、前記半導体ウエハを研削装置に固定する」のに対し、当審引用発明は半導体ウエハ1を研削装置に固定する方法について特定されていない点。 ・相違点4 本願発明の「絶縁性樹脂層」は「熱可塑性成分」を含むのに対し、当審引用発明の「絶縁性接着剤層22」が「熱可塑性成分」を含むと言い得るか不明である点。 (3)判断 ア 本願発明の進歩性について 上記相違点3について検討する。 当審引用文献1ないし7の記載事項は上記(1)ア(ア)及びイないしキに示したとおりであって、上記相違点3に係る構成について記載されているとは認められない。 したがって、上記相違点3に係る構成は、当審引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできないから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当審引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本願の請求項2及び3に係る発明の進歩性について 本願の請求項2及び3に係る発明はいずれも請求項1を引用しており、本願の請求項2及び3に係る発明は本願発明の発明特定事項を全て有する発明である。 してみれば、本願発明が当審引用文献1ないし7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本願の請求項2及び3に係る発明も、当審引用文献1ないし7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 当審拒絶理由についてのまとめ 以上のとおり、本願の請求項1ないし3に係る発明は、当審引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そうすると、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 結言 以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-09-12 |
出願番号 | 特願2013-217087(P2013-217087) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井出 和水 |
特許庁審判長 |
鈴木 匡明 |
特許庁審判官 |
須藤 竜也 加藤 浩一 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 古下 智也 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 中山 浩光 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 池田 正人 |