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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1319020 |
審判番号 | 不服2015-18142 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-05 |
確定日 | 2016-09-05 |
事件の表示 | 特願2011-206225「カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタおよび表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日出願公開、特開2013- 68731〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成23年9月21日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成27年 3月 4日付け:拒絶理由通知書(同年同月10日発送) 平成27年 4月14日提出:意見書 平成27年 4月14日提出:手続補正書 平成27年 6月30日付け:拒絶査定(同年7月3日送達) 平成27年10月 5日提出:審判請求書 平成27年10月 5日提出:手続補正書 第2 原査定の理由 原査定の理由は、概略、「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」というものである。 1.特開2009-282096号公報 第3 本願発明 本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は、次のものである。 「基板を準備する工程と、 前記基板上に、所定の間隙を空けて第1方向に沿って並ぶよう複数の着色層を形成する着色層形成工程と、 酸素を含むガスを導入ガスとした酸素プラズマを、各着色層間の前記間隙において前記基板に照射する工程と、 フッ素もしくはフッ素化合物を含むガスを導入ガスとしたフッ化プラズマを、各着色層の表面に照射する工程と、 各着色層間の前記間隙に黒色顔料を含む塗工液を塗布する塗布工程と、 前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間にブラックマトリクス層を形成する工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。」 なお,平成27年10月5日提出の手続補正書による補正は,特許法第17条の2第5項2号に掲げる事項を目的とした,特許請求の範囲の請求項5及び6を削除する補正である。 第4 引用例及びその記載事項 本件出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された刊行物である、特開2009-282096号公報(【公開日】平成21年12月3日、【発明の名称】「カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器」、以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付したものである。以下同様。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関する。」 イ 「【背景技術】 【0002】 カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。 このようなカラーフィルターの製造方法としては、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色部を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、カラーフィルター基板上にフォトリソグラフィー法を用いて遮光部を形成し、遮光部で囲まれた領域に着色部形成用の材料(着色部形成用組成物)の液滴(インク)を吐出し、乾燥、固化させることにより着色部を形成するものである。かかる方法では、着色部形成用の材料(着色部形成用組成物)の液滴の吐出位置等の制御が容易で、着色部形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。 ところが、従来、インクジェットヘッドを用いたカラーフィルターの製造方法では、形成される着色部の表面が、凹凸を有するものであり、十分に平坦なものでなかった。このように、形成される着色部が平坦にならない場合、カラーフィルターを用いた画像表示装置の明度やコントラスト比が高いものとならない問題があった。 【0003】 【特許文献1】特開2002-372613号公報」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の目的は、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターの製造方法を提供すること、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。」 エ 「【課題を解決するための手段】 【0005】 このような目的は下記の本発明により達成される。 本発明のカラーフィルターの製造方法は、複数色の着色部を備えたカラーフィルターの製造方法であって、 基板を準備する基板準備工程と、 前記基板上にフォトリソグラフィー法を用いて複数色の着色部を形成する着色部形成工程と、 前記基板上の隣接する前記着色部間に、遮光材料を含むインクをインクジェット方式で付与するインク付与工程と、 吐出された前記インクを乾燥させて、遮光部を形成する遮光部形成工程とを有することを特徴とする。 これにより、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを製造することができる。 【0006】 本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記カラーフィルターは、前記複数色の着色部として、赤色、緑色、および青色の着色部を有するものであり、 前記複数色の着色部は、フォトリソグラフィー法を用いて、緑色の着色部、赤色の着色部、青色の着色部の順に形成されることが好ましい。 これにより、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)の3色(RGB)で1画素を構成するフルカラー表示のカラーフィルターを、各色の着色部が特に平坦なものとして製造することができ、得られるカラーフィルターは、明度、コントラスト比が特に優れたものとなる。 【0007】 本発明のカラーフィルターの製造方法では、複数種の着色剤を含む着色部形成用組成物を用いて、前記複数色の着色部のうち少なくとも一色の着色部を形成することが好ましい。 これにより、得られるカラーフィルターの明度、コントラスト比を優れたものとしながらも、色彩のバリエーションが豊富なカラーフィルターを容易に得ることができる。 【0008】 本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記カラーフィルターは、前記複数色の着色部として、緑色の着色部を有し、 前記緑色の着色部は、着色剤として、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン36のうち少なくとも一方を含む緑色着色部形成用組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。 これにより、得られるカラーフィルターは、緑色の着色部の明度、コントラスト比が特に高いものとなる。 【0009】 本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記緑色着色部形成用組成物は、着色剤として、さらにC.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー138、およびC.I.ピグメントイエロー139から選択される少なくとも一種を含むものであることが好ましい。 これにより、得られるカラーフィルターは、緑色の着色部の明度、コントラスト比が特に高いものとなるとともに、色再現範囲がより広いものとなる。 【0010】 本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記カラーフィルターは、前記複数色の着色部として、赤色の着色部を有し、 前記赤色の着色部は、着色剤として、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254のうち少なくとも一方を含む赤色着色部形成用組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。 これにより、得られるカラーフィルターは、赤色の着色部の明度、コントラスト比が特に高いものとなる。 【0011】 本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記赤色着色部形成用組成物は、着色剤として、さらにC.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー138、およびC.I.ピグメントイエロー139から選択される少なくとも一種を含むものであることが好ましい。 これにより、得られるカラーフィルターは、赤色の着色部の明度、コントラスト比が特に高いものとなるとともに、色再現範囲がより広いものとなる。 【0012】 本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記カラーフィルターは、前記複数色の着色部として、青色の着色部を有し、 前記青色の着色部は、C.I.ピグメントブルー15:6とC.I.ピグメントバイオレット23とを含む青色着色部形成用組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。 これにより、得られるカラーフィルターは、青色の着色部の明度、コントラスト比が特に高いものとなるとともに、色再現範囲がより広いものとなる。 【0013】 本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記インクは、カーボンブラックを含む遮光材料と、当該遮光材料を分散させる分散媒と、バインダー樹脂とを含むものであることが好ましい。 これにより、得られるカラーフィルターのコントラスト比をさらに優れたものとすることができる。 【0014】 本発明のカラーフィルターは、本発明のカラーフィルターの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。 これにより、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを提供することができる。 本発明のカラーフィルターでは、前記遮光部の高さは、前記複数色の着色部の高さよりも低いものであることが好ましい。 これにより、カラーフィルターの明度は特に優れたものとなる。 【0015】 本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。 これにより、表示部に、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを備えた画像表示装置を提供することができる。 本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。 これにより、表示部に、明度およびコントラスト比に優れたカラーフィルターを備えた電子機器を提供することができる。」 オ 「【実施例】 【0082】 次に、本発明の具体的実施例について説明する。 [1]カラーフィルターの製造 (実施例1) まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO_(2))膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。 【0083】 次に、緑色の着色部形成用組成物を、基板上に付与し、塗膜を形成する。なお、このような緑色の着色部形成用組成物は、以下のようにして得られる。まず、2-ヒドロキシエチルメタアクリレート:20重量部と、メチルメタアクリレート:50重量部と、メタクリル酸:15重量部を、シクロヘキサノン:300重量部に添加し混合した。その後、アゾイソブチロニトリル:0.5重量部を加え、窒素雰囲気化で、温度:60℃の条件で10時間反応させた。その後、反応生成物を含む上記の溶液をn-ヘキサン中で沈殿精製、減圧乾燥し、反応生成物を得た。次に、このようにして得られた反応生成物:20重量部をシクロヘキサノン:100重量部に溶かし、C.I.ピグメントグリーン58:13.5重量部と、C.I.ピグメントイエロー138:1.5重量部とを添加し、3本ロールで十分に混練し、緑色の着色部形成用組成物を得た。 このようにして得られた緑色の着色部形成用組成物を、1000rpm、60秒の条件でスピンコート法により、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し塗膜を形成した。 【0084】 次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。 その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、緑色の着色部を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cm^(2)という条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:150℃、加熱時間:5分という条件で行った。形成された着色部の平均厚さは、2.1μmであった。 【0085】 その後、緑色の着色部形成用組成物の代わりに赤色の着色部形成用組成物を用いて、上記と同様にして赤色の着色部を形成した。さらに、その後、赤色の着色部形成用組成物の代わりに青色の着色部形成用組成物を用いて、上記と同様にして赤色の着色部を形成した。なお、赤色の着色部形成用組成物は、上述した反応生成物:16重量部をシクロヘキサノン:100重量部に溶かし、C.I.ピグメントレッド254:9重量部と、C.I.ピグメントイエロー138:1重量部とを添加し、3本ロールで十分に混練することにより得られるものである。また、青色の着色部形成用組成物は、上述した反応生成物:12重量部をシクロヘキサノン:100重量部に溶かし、C.I.ピグメントブルー15:6:7重量部と、C.I.ピグメントバイオレット23:0.8重量部とを添加し、3本ロールで十分に混練することにより得られるものである。 【0086】 次に、形成された着色部に対してプラズマ処理を行い、撥液性を付与した後、図3?図6に示すような液滴吐出装置を用いて、隣接する着色部間に、遮光部形成用組成物の液滴(インク)を吐出した。 このような遮光部形成用組成物(インク)としては、以下のようにして製造したものを用いた。 【0087】 まず、樹脂材料としての樹脂Lを以下のようにして合成した。 四つ口フラスコに、n-ヘキサン:320重量部、メタアクリル酸:86重量部、トリエチルアミン:111重量部を投入した後、この四つ口フラスコに、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口を取り付けた。この四つ口フラスコを、氷水で冷却しつつ 、トリメチルクロルシラン:120重量部を滴下した。この際、反応系内の温度が25℃以下となるようにした。その後、25℃で1時間反応を続けた。次に、トリエチルアミンの塩酸塩を濾別し、得られたろ液から減圧下でn-ヘキサンを除去した後、減圧蒸留にて精製し、シリルアセテート構造を有するエチレン性不飽和単量体を得た。 【0088】 次に、温度計、還流冷却器、撹拌機および窒素ガス導入口が取り付けられ、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部を仕込んだ四つ口フラスコを用意した。この四つ口フラスコ内のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを攪拌しつつ60℃まで昇温した後、上記エチレン性不飽和単量体:27重量部と、メタアクリル酸グリシジル:30重量部と、スチレン:38重量部と、2,2′-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル):6重量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下後60℃にて1時間保持した後、2,2′-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル):0.08重量部を加え、さらに60℃で6時間反応させ、その後、未反応のモノマーを減圧処理により除去することにより、エポキシ構造を有するエポキシ系樹脂としての樹脂Lの溶液を得た。 【0089】 一方、50重量部のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用意し、これに、分散剤としてのディスパロンDA-703-50(楠本化成社製):3.6重量部、フローレンDOPA-22(共栄化学社製):1.2重量部と、カーボンブラック:6重量部とを添加した。その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行い、顔料分散液を得た。 【0090】 その後、上記樹脂Lの溶液:4.4重量部と、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:12重量部、顔料分散液:83.6量部とを混合することにより、遮光部形成用組成物を調製した。 その後、ホットプレート上にて60℃で30分間の加熱処理を施し、さらに200℃のオーブン内で1時間加熱処理を施すことにより、遮光部が形成された。これにより、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。なお、カラーフィルター1の遮光部の平均厚さは、2.0μmであった。 上記のような方法を用いて、5000枚のカラーフィルターを製造した。」 第5 引用発明 上記記載事項により、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (ここで、【0085】の「さらに、その後、赤色の着色部形成用組成物の代わりに青色の着色部形成用組成物を用いて、上記と同様にして赤色の着色部を形成し」における最後の「赤色の着色部」は、「青色の着色部形成用組成物を用いて」「形成」されたものであるのは明らかであり誤記であるから、以下「青色の着色部」としている。) 「両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO_(2))膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施し、 緑色の着色部形成用組成物を、1000rpm、60秒の条件でスピンコート法により、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し塗膜を形成し 、 加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った、 フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、緑色の着色部を形成し、 その後、緑色の着色部形成用組成物の代わりに赤色の着色部形成用組成物を用いて、同様にして赤色の着色部を形成し、さらに、その後、赤色の着色部形成用組成物の代わりに青色の着色部形成用組成物を用いて、同様にして青色の着色部を形成し、 着色部に対してプラズマ処理を行い、撥液性を付与し、 液滴吐出装置を用いて、隣接する着色部間に、遮光部形成用組成物の液滴(インク)を吐出し、ここで、遮光部形成用組成物(インク)は、(A)エポキシ構造を有するエポキシ系樹脂としての樹脂Lの溶液を得、(B)50重量部のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用意し、これに、分散剤としてのディスパロンDA-703-50(楠本化成社製):3.6重量部、フローレンDOPA-22(共栄化学社製):1.2重量部と、カーボンブラック:6重量部とを添加し、その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行い、顔料分散液を得、(C)樹脂Lの溶液:4.4重量部と、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:12重量部、顔料分散液:83.6量部とを混合することにより調製したものであり、 その後、ホットプレート上にて60℃で30分間の加熱処理を施し、さらに200℃のオーブン内で1時間加熱処理を施すことにより、遮光部を形成し、 カラーフィルター1の遮光部の平均厚さは、2.0μmであった、 カラーフィルターの製造方法。」 第6 対比・判断 (1)本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 ア 引用発明は、「両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO_(2))膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施」す構成を具備する。ここで、引用発明の「基板」及び「用意」は、それぞれ本願発明の「基板」及び「準備」に相当する。また、引用発明の「両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO_(2))膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施」す構成は、本願発明の「基板を準備する工程」に相当する。 イ 引用発明における「着色部」は、「塗膜」を「フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うこと」により形成されたものである。したがって、引用発明の「着色部」は、本願発明の「着色層」に相当する。 また、引用発明においては、「緑色の着色部形成用組成物を、1000rpm、60秒の条件でスピンコート法により、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し塗膜を形成し 、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、緑色の着色部を形成し、その後、緑色の着色部形成用組成物の代わりに赤色の着色部形成用組成物を用いて、同様にして赤色の着色部を形成し、さらに、その後、赤色の着色部形成用組成物の代わりに青色の着色部形成用組成物を用いて、同様にして青色の着色部を形成」することによって、基板の一方の面「上」に緑色の着色部と赤色の着色部と青色の着色部の「複数の着色部」を形成している。そして、引用発明においては、「液滴吐出装置を用いて、隣接する着色部間に、遮光部形成用組成物の液滴(インク)を吐出」している。そうしてみると、引用発明においては、隣接する着色部間に、遮光部形成用組成物を吐出するために必要な所定の「間隙」が空いていることは明らかである。 したがって、引用発明における「緑色の着色部形成用組成物を、1000rpm、60秒の条件でスピンコート法により、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し塗膜を形成し 、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、緑色の着色部を形成し、その後、緑色の着色部形成用組成物の代わりに赤色の着色部形成用組成物を用いて、同様にして赤色の着色部を形成し、さらに、その後、赤色の着色部形成用組成物の代わりに青色の着色部形成用組成物を用いて、同様にして青色の着色部を形成」する構成は、本願発明の「前記基板上に、所定の間隙を空けて」「複数の着色層を形成する着色層形成工程」に相当する。 ウ まず、本願発明の「塗布」に関して、本願発明における「各着色層間の前記間隙に黒色顔料を含む塗工液を塗布する塗布工程」について検討すると、本件出願の請求項1の記載を引用して記載された請求項3には「前記塗布工程は、各着色層間の間隙にインクジェット法により前記塗工液を塗布する工程を含む」と記載されている。また、本件出願の明細書の【0055】及び【0056】には「BM塗工液51を各着色層20,30,40間の間隙に塗布する方法が特に限られることはなく、スピンコート法、インクジェット法などを適宜用いることができる。」及び「例えば塗布方法としてインクジェット法が用いられる場合、BM塗工液51の液滴を吐出することができるノズルを1つまたは複数有するインクジェットヘッドを用いて、各着色層20,30,40間の間隙にBM塗工液51を塗布する。」と記載されている。そうしてみると、本願発明の「塗布工程」は、インクジェット法といった部分的に塗布する工程も含むと解される。したがって、引用発明における液滴吐出装置による吐出も、本願発明における「塗布」に含まれることから、引用発明における、「液滴吐出装置により液滴(インク)を吐出」することは、本願発明の「塗布」に相当するとともに、引用発明の吐出される「遮光部形成用組成物」は、本願発明の「塗工液」に相当する。 次に、「遮光部形成用組成物」に含まれている「カーボンブラック」は、本願発明における「黒色顔料」に相当する。 以上のとおりであるから、引用発明における「液滴吐出装置を用いて、隣接する着色部間に、遮光部形成用組成物の液滴(インク)を吐出し、ここで、遮光部形成用組成物(インク)は、(A)エポキシ構造を有するエポキシ系樹脂としての樹脂Lの溶液を得、(B)50重量部のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用意し、これに、分散剤としてのディスパロンDA-703-50(楠本化成社製):3.6重量部、フローレンDOPA-22(共栄化学社製):1.2重量部と、カーボンブラック:6重量部とを添加し、その後、ビーズミル(ジルコニアビーズ:0.65mm使用)へ導入し、顔料の粉砕を行い、顔料分散液を得、(C)樹脂Lの溶液:4.4重量部と、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:12重量部、顔料分散液:83.6量部とを混合することにより調製」する構成は、本願発明の「各着色層間の間隙に黒色顔料を含む塗工液を塗布する塗布工程」に相当する。 エ 引用発明は「その後、ホットプレート上にて60℃で30分間の加熱処理を施し、さらに200℃のオーブン内で1時間加熱処理を施すことにより、遮光部が形成され、カラーフィルター1の遮光部の平均厚さは、2.0μmであった」という構成を具備するところ、引用発明における、複数の着色部間に形成される平均厚さが2μmである「遮光部」は、本願発明における「ブラックマトリクス層」に相当する。また、技術常識を考慮すると、引用発明の「ホットプレート上にて60℃で30分間の加熱処理を施」すことは、本願発明の「前記塗工液を乾燥させ」ることに相当する(引用例1の【0063】の「次に、基板11上に付与されたインク3を乾燥させ」及び【0064】の「本工程は、通常、加熱により行う」の記載からも確認できる事項である。)。したがって、引用発明における「その後、ホットプレート上にて60℃で30分間の加熱処理を施し、さらに200℃のオーブン内で1時間加熱処理を施すことにより、遮光部が形成され、カラーフィルター1の遮光部の平均厚さは、2.0μmであった」という構成は、本願発明における「前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間にブラックマトリクス層を形成する工程」に相当する。 オ 以上ア?エを勘案すると、引用発明の「カラーフィルターの製造方法」は、本願発明の「カラーフィルターの製造方法」に相当する。 (2) 一致点 本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 「基板を準備する工程と、 前記基板上に、所定の間隙を空けて複数の着色層を形成する着色層形成工程と、 各着色層間の前記間隙に黒色顔料を含む塗工液を塗布する塗布工程と、 前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間にブラックマトリクス層を形成する工程と、を備えたカラーフィルタの製造方法。」 (3) 相違点 本願発明と引用発明とは、以下の点で相違、または一応相違する。 (相違点1) 本願発明は、「基板上に、所定の間隙を空けて複数の着色層を形成する着色層形成工程」において、所定の間隙を空けて複数の着色層を形成する際に、「第1方向に沿って並ぶよう」形成しているのに対して、引用発明は、該「着色層形成工程」において、所定の間隙を空けて複数の着色層を形成する際に、第1方向に沿って並ぶよう形成しているのか一応明らかでない点。 (相違点2) 本願発明は、「フッ素もしくはフッ素化合物を含むガスを導入ガスとしたフッ化プラズマを、各着色層の表面に照射する工程」を備えているのに対して、引用発明は、着色層に対してプラズマ処理を行い、撥液性を付与している点。 (相違点3) 本願発明は、「酸素を含むガスを導入ガスとした酸素プラズマを、各着色層間の前記間隙において前記基板に照射する工程」を備えているのに対して、引用発明は、該工程を有しているか明らかでない点。 (4) 判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用例1の段落【0001】及び【0002】には、それぞれ、「本発明は、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関する。」及び「カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。」と記載されている。 また、液晶表示装置のカラーフィルタを構成する複数の着色層が、ブラックマトリクス層を間に介して特定の第1方向に沿って並ぶように配置・形成されたものとなっていることは、本件出願の出願前の当業者における技術常識である。したがって、引用発明において、所定の間隙を空けて複数の着色層を形成する際に、「第1方向に沿って並ぶよう」複数の着色層を形成していることは明らかである。 上記相違点1は実質的な相違点を構成しない。 イ 相違点2について 本件出願の出願前に、有機材料をプラズマ処理によって撥液化する場合に、フッ素もしくはフッ素化合物を含むガスを導入してプラズマ処理を行うことは、周知技術である(例えば、特開2003-98336号公報(以下、「引用例2」という。)の【0026】には、「着色層に対する撥液処理は、周知の手法を適宜用いて行うことができる。例えば以下のようなプラズマ重合による方法を用いて行うことができる。すなわち、まず撥液処理のための原料液を用意する。撥液処理用原料液としては、C_(4)F_(10)やC_(8)F_(16)などの直鎖状PFCからなる液体有機物が好適に用いられる。そして、撥液処理用原料液の蒸気をプラズマ処理装置においてプラズマ化する。このようにして直鎖状PFCの蒸気がプラズマ化されると、直鎖状PFCの結合が一部切断されて活性化する。活性化されたPFCが着色層の表面に到達すると、着色層上でPFCが互いに重合し、撥液性を有するフッ素樹脂重合膜を形成する。」と記載されている。)。 引用発明において、着色層に対してプラズマ処理を行い、撥液性を付与するに際して、「フッ素若しくはフッ素化合物を含むガスを導入ガスとしたフッ化プラズマを,各着色層の表面に照射する工程」の構成を採用することは,上記周知技術を心得た当業者が容易になし得た事項である。 ウ 相違点3について 本件出願の出願前に、撥液化工程の前に、基板を洗浄するために酸素を用いたプラズマ処理を行うことは、例えば、以下(ア),(イ)のとおり周知技術である。 (ア)特開2009-145884号公報(以下、「引用例3」という。) 「【0147】 [3-2-6]フッ素プラズマ処理と酸素プラズマ処理 ブラックマトリックスが形成された基板は、次にガラス基板面の洗浄処理を目的に酸素プラズマ処理を行い、続いてフッ素プラズマ処理により、ブラックマトリックス部分の撥液化処理を施される。酸素プラズマ条件と、通常これに続いて施されるフッ素プラズマ処理の処理条件に、特に制限はなく、通常一般に行われている条件で処理すればよい。例えば酸素プラズマ処理は、酸素ガス雰囲気下、圧力10?1000Pa、RFパワー10?1000W、1?30分程度行えばよく、またフッ素プラズマ処理は、CF_(4)、SF_(6)、CHF_(3)などのフッ素含有ガス雰囲気下で、圧力10?1000Pa、RFパワー10?1000W、1?30分程度行えばよい。」 「【0005】 インクジェット法によりカラーフィルターを製造する方法において、吐出された画素形成用のカラーインクが、隣接する画素間で混色するという問題がある。そこで通常、画素間に表面が撥液化処理されたブラックマトリックスを設けて、混色を防止する方法がとられている。ブラックマトリックスを撥液化する方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、プラズマ処理によりブラックマトリックス表面を改質する方法が用いられている。具体的な処理手順としては、例えば、まず最初に酸素ガス中でプラズマ処理を行って、基板上のブラックマトリックスパターンのない部分(ガラス面)の洗浄処理を行う。次にフッ素ガス中でプラズマ処理を行い、ブラックマトリックス部分の撥液化処理を行う。フッ素ガスとしては、例えばCF_(4)、SF_(6)、CHF_(3)などが用いられる。」 「【0006】 プラズマ処理のうち、酸素ガス中での処理は、ガラス面上の有機物等の汚れを除去する為に必要なプロセスである。カラーインクが画素バンク内で濡れ広がる際に、ガラス面上の有機物は障害となる為、このプロセスは非常に重要であり・・・」 (イ)特開2000-353594号公報(以下、「引用例4」という。) 「【0001】 【発明の属する技術分野】薄膜パターニング用基板およびその表面処理 本発明は、・・・カラーフィルタの製造に適した薄膜形成技術に係わる。」 「【0055】前記第一工程で行う酸素プラズマ処理は、基板上にバンクを有機物で形成した場合の残さをアッシングするだけでなく有機物表面を活性化することにより、続けて行われるフッ素系ガスプラズマ処理による撥液化を効率よく行うために有効である。」 「【0056】前記第二工程でフッ素系ガスプラズマ処理を行うことにより有機物表面がフッ素化(テフロン化)され半永久的な撥液性を有機物に付与することができる。このフッ素系ガスプラズマ処理により基板上の親液性は損なわれることはなく、簡便な方法で同一基板上に選択的に親液性、撥液性の表面を形成することができる。」 また、例えば、上記の引用例3の【0005】、【0006】にも記載のとおり、カラーフィルターの製造において、基板上に形成されたパターンを撥液化した後に、そのパターンの間隙にインクを塗布する際に、間隙にインクを濡れ広げるためには、基板上の有機物の汚れが障害となるため、基板上の汚れを除去した方が好ましいことは、当業者において明らかである。 ここで、引用発明は、着色層をパターン化した後にプラズマ処理を行って撥液性を付与し、その後各着色層間の間隙への黒色顔料を含む塗工液の塗布を行っている。 そうしてみると、引用発明においても黒色顔料を含む塗工液を間隙に不足なく広げて、正確に塗布する必要があることは、当業者が当然考慮する事項である。 したがって、引用発明において、各着色層間の間隙への黒色顔料を含む塗工液の塗布を正確に行うため、「酸素を含むガスを導入ガスとした酸素プラズマを,各着色層間の前記間隙において前記基板に照射する工程」の構成を採用することは,上記周知技術を心得た当業者が容易になし得た事項である。 エ 請求人の主張について 請求人が主張する本願発明の作用・効果である、特徴(a)「着色層間の間隙に黒色顔料を含む塗工液を塗布することによって、各着色層間にブラックマトリクス層を形成する」により、各着色層間の間隙を精度良く定めることにより、所望の幅を有するブラックマトリクス層を形成することができる(本件出願の明細書の【0018】)こと、特徴(b)「酸素を含むガスを導入ガスとした酸素プラズマを、各着色層間の間隙において基板に照射する工程と、フッ素もしくはフッ素化合物を含むガスを導入ガスとしたフッ化プラズマを、各着色層の表面に照射する工程と、を備えている」により、酸素プラズマを基板に照射することにより、各着色層を基板上に形成した後に、基板上に残渣が残っている場合であっても、残渣を除去することができ、このため、各着色層間の間隙において基板の表面が撥液化されることを抑制しながら、各着色層の表面を撥液化することができる(本件出願の明細書の【0047】?【0053】)こと、このため、例えば、各着色層間の間隙の断面形状が基板側に向かって先細になっていたり、各着色層間の間隙の幅が狭くなっていたりして、この結果、ブラックマトリクス層用の塗工液と基板との接触面積が小さくなっている場合であっても、塗工液を基板に十分に密着させることができること、これによって、ブラックマトリクス層が基板から剥離されてしまうことを抑制することができ、このことにより、カラーフィルタに白抜け領域が形成されることを抑制することができる(本件出願の明細書の【0076】、【0077】)こと、このことにより、ブラックマトリクス層のパターンの幅を狭くすることができ、カラーフィルタの開口率を高めて、消費電力を低減することができる(本件出願の明細書の【0068】)ことは、引用例1の記載や、引用例2や引用例3,4に記載された上記の周知の各技術を含む当業者の技術常識に基づき、当業者にとって自明な、あるいは予測可能な程度のものであって、格別の事項とは認められない。 オ よって、本願発明は、引用発明や本件出願の出願前に周知の技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明や本件出願の出願前に周知の技術に基づいて、本件出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-07-06 |
結審通知日 | 2016-07-08 |
審決日 | 2016-07-25 |
出願番号 | 特願2011-206225(P2011-206225) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中山 佳美 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
河原 正 多田 達也 |
発明の名称 | カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタおよび表示装置 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 堀田 幸裕 |