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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 一部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1319149
異議申立番号 異議2015-700050  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-09-30 
確定日 2016-05-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5691228号「感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法」の請求項1、3ないし6、8ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5691228号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5691228号の請求項1、3ないし6、8ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5691228号の請求項1、3ないし6、8ないし11に係る発明についての出願は、平成22年4月7日に特許出願され、平成27年2月13日に特許の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成27年12月4日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年2月2日に意見書の提出及び訂正請求があり、さらに平成28年3月16日付けで特許異議申立人から特許法第120条の5第5項に基づく意見書の提出があったものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)、(2)のとおりである。

(1)請求項1及び4に「ベースポリマー」とあるのを、「主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)」に訂正する。

(2)請求項2を削除する。

そして、これら訂正は、請求項1の記載を引用する請求項3、並びに、請求項1及び4の記載を引用する請求項5ないし11も同様に訂正することが本件訂正請求書の訂正事項において明示されていて、一群の請求項ごとに請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記(1)の訂正の内、「主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー」の点については、訂正前の本件特許明細書【0020】に「ベースポリマーは、主鎖にイミド基を有するポリマーを含むことが好ましい。」と記載されていたのに加え、訂正前の請求項2において「ベースポリマーが、主鎖にイミド基を有するポリマーを含む」と規定されていたことに基づくものである。また、同じく「(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)」の点については、所謂除くクレームとする訂正であって、新たな技術的事項を導入するものではない。よって、上記(1)の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記(2)の訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 独立特許要件
請求項7については、請求項1及び4の記載を引用する一群の請求項として訂正を請求するものである。そして、請求項1及び4についての訂正は、上記2のとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、請求項7についての訂正も同様の目的においてなされたものと認める。請求項7は特許異議の申立てがされていない請求項であるので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項に基づき、訂正後の請求項7についての独立特許要件を以下に検討する。

3-1 訂正後の請求項7が引用する請求項4について
(1)訂正前の請求項4に係る取消理由の概要
ア 本件特許発明
特許第5691228号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、 前記光重合性化合物が、官能基当量が250?1300である光重合性化合物を含み、
前記官能基当量が250?1300である光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物である、感光性接着剤組成物。
【化1】

[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3?30となる数を示す。]
【化2】

[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4?30となる数を示す。]
【化3】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3?30となる数を示す。] 」

同じく、請求項4に係る発明(以下、「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められ、実質上、本件発明1において「光重合性化合物が、官能基当量が250?1300である」という発明特定事項が除外されたものに相当する。
「【請求項4】
ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、 前記光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物を含む、感光性接着剤組成物。
【化4】

[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3?30となる数を示す。]
【化5】

[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4?30となる数を示す。]
【化6】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3?30となる数を示す。] 」

イ 理由A(特許法第29条第1項第3号)について
イ-1 刊行物
特開2009-69664号公報(以下、「甲1文献」という。)
特開2008-239802号公報(以下、「甲2文献」という。)

イ-2 甲1文献の記載事項
(ア)「【請求項1】
(A)主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂、(B)分子内に感光性基を少なくとも1つ有する(A)以外の感光性化合物、(C)光重合開始剤及び(D)熱硬化性化合物を少なくとも含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
……
【請求項12】
請求項1?10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基材表面に塗布、乾燥して得られる感光性フィルム。
……」(特許請求の範囲)

(イ)「上記状況に鑑み、本発明の課題は、感光性を有するため微細加工が可能であり、希アルカリ水溶液で現像可能であり、低温(200℃以下)で硬化可能であり、シロキサンジアミンを用いずに、柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性に優れ、硬化後の基板の反りが小さく、封止剤との密着性に優れる感光性樹脂組成物を提供することにある。」(段落【0014】)

(ウ)「<(D)熱硬化性化合物>
本願発明の感光性樹脂組成物には、上記熱硬化性化合物の硬化剤として、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、ユリア樹脂、メラミン、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。」(段落【0105】)

(エ)「本願発明の感光性樹脂組成物を直接又は、上記感光性樹脂組成物溶液を調整した後に、以下のようにしてパタ-ンを形成することができる。先ず上記の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥して有機溶媒を除去する。基板への塗布はスクリ-ン印刷、ローラーコーティング、カ-テンコーティング、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等により行うことができる。塗布膜(好ましくは厚み:5?100μm)の乾燥は120℃以下、好ましくは40?100℃で行う。乾燥後、乾燥塗布膜にネガ型のフォトマスクを置き、紫外線、可視光線、電子線などの活性光線を照射する。次いで、未露光部分をシャワー、パドル、浸漬または超音波等の各種方式を用い、現像液で洗い出すことによりパタ-ンを得ることができる。なお、現像装置の噴霧圧力や流速、現像液の温度によりパターンが露出するまでの時間が異なる為、適宜最適な装置条件を見出すことが好ましい。
上記現像液としては、アルカリ水溶液を使用することが好ましく、この現像液には、メタノ-ル、エタノ-ル、n-プロパノ-ル、イソプロパノ-ル、N-メチル-2-ピロリドン等の水溶性有機溶媒が含有されていてもよい。……」(段落【0116】?【0117】)

(オ)「本願発明の感光性樹脂組成物から形成した硬化膜からなるパタ-ンは、耐熱性、電気的及び機械的性質に優れており、特に柔軟性に優れている。例えば、この発明の絶縁膜は、好適には厚さ2?50μm程度の膜厚で光硬化後少なくとも10μmまでの解像性、特に10?1000μm程度の解像性である。この為、本願発明の絶縁膜は高密度フレキシブル基板の絶縁材料として特に適しているのである。また更には、光硬化型の各種配線被覆保護剤、感光性の耐熱性接着剤、電線・ケーブル絶縁被膜等に用いられる。」(段落【0120】)

(カ)「(実施例1?11、比較例1)
合成例1?10で得られたポリイミド樹脂に、感光性化合物、光重合開始剤、熱硬化性化合物、有機溶剤を添加して感光性樹脂組成物を作製した。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表1?3に記載する。なお、表中の溶媒である1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタンは上記合成樹脂溶液等に含まれる溶剤等も含めた全溶剤量である。」(段落【0133】)

(キ)「(ポリイミドフィルム上への塗膜の作製)
上記感光性樹脂組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて、75μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名75NPI)に最終乾燥厚みが25μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布し、80℃で20分乾燥した後、50mm×50mmの面積のライン幅/スペース幅=100μm/100μmのネガ型フォトマスクを置いて減圧下で紫外線を300mJ/cm2露光して感光させた。この感光フィルムに対し、1.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃に保温した溶液を用いて、1.0kgf/mm2の吐出圧で90秒スプレー現像を行った。現像後、純粋で十分洗浄した後、150℃のオーブン中で60分加熱乾燥させて感光性樹脂組成物の硬化膜を作製した。」(段落【0135】)

(ク)「(反り量)
上記感光性樹脂組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)に最終乾燥厚みが25μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布し、80℃で20分乾燥した。この全面を減圧下で紫外線を300mJ/cm2露光して感光させた。この感光フィルムに対し、1.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃に加熱した溶液を用いて、1.0kgf/mm2の吐出圧でスプレー現像を行った。但し、全面が露光されているため、膜面積の変化は見られなかった。現像後、純粋で十分洗浄した後、150℃のオーブン中で60分加熱乾燥させて感光性樹脂組成物の硬化膜を作製した。
この硬化膜を50mm×50mmの面積のフィルムに切り出して平滑な台の上に塗布膜が上面になるように置き、フィルム端部の反り高さを測定した。測定部位の模式図を図1に示す。ポリイミドフィルム表面での反り量が少ない程、プリント配線板表面での応力が小さくなり、プリント配線板の反り量も低下することになる。反り量は5mm以下であることが好ましい。」(段落【0140】?【0141】)

(ケ)「【表1】


【表2】

【表3】



※1:新中村化学工業株式会社製、商品名NKエステル BPE-500(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、EO=10)
※2:日本化薬株式会社製、商品名KAYARAD ZAR-1401H(多塩基酸無水物変性エポキシアクリレート樹脂)
※3:チバスペシャルティケミカルズ製、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1
※4:ジャパンエポキシレジン株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
※5:旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名デュラネートTPA-B80E(ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート化合物)
※6:日本アエロジル株式会社製、超微粒子状無水シリカ」(段落【0161】?【0163】

イ-3 甲2文献の記載事項
(ア)「【請求項1】
(A)ポリアミック酸と、
(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含む感光性接着剤組成物。
【請求項2】
更に(D)架橋剤を含む、請求項1に記載の感光性接着剤組成物。……」(特許請求の範囲)

(イ)「本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高い接着強度が得られるとともに、基板(被接着部材)との間にボイドが生じることを十分に抑制することが可能な感光性接着剤組成物及び基板の接着方法を提供することを目的とする。」(段落【0009】)

(ウ)「また、本発明の感光性接着剤組成物には、更に(D)架橋剤を加えてもよい。(D)架橋剤としては、特に制限されないが、エポキシ化合物、ブロック化イソシアネート化合物などが挙げられる。エポキシ化合物として具体的には、YH-434L(商品名、東都化成株式会社製、アミン型エポキシ樹脂)が好ましい。また、ブロック化イソシアネート化合物として具体的には、BL-3175(商品名、住化バイエルウレタン株式会社製、ブロック化イソシアネート)が好ましい。これらの架橋剤を添加すると、硬化後の感光性接着剤組成物の接着性をより向上させることができる。」(段落【0065】)

(エ)「次に、感光性接着剤組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性接着剤組成物からなる感光性接着剤組成物層を得る。乾燥は、オーブン、ホットプレートなどを使用し、60?120℃の範囲で1分?1時間行うことが好ましい。
次に、この感光性接着剤組成物層上に必要に応じて所望のパターンを有するマスクを置き、それを介して活性光線を照射して露光する。露光に用いられる活性光線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。これらの中でも特に、紫外線、可視光線が好ましい。
露光後に、現像液を用いて未露光部を除去することにより、パターンを形成することができる。ここで、現像液としては、N-メチルピロリドン、エタノールのような有機溶剤、または炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアルカリ水溶液などを使用することができる。これらの中でも、金属性イオン化合物が少ないことから、感光性接着剤組成物の現像には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを用いることが好ましい。」(段落【0075】?【0077】)

(オ)「(合成例1)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)9.36g(0.038mol)、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)4.89g(0.012mol)、及び、γ-ブチロラクトン10.0gを加えて40℃で15分間攪拌した。次に、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)16.44g(0.053mol)、及び、γ-ブチロラクトン29.66gを15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、3時間攪拌することで、ポリアミック酸のγ-ブチロラクトン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は44質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は38000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.9であった。
(合成例2)
300mLの4つ口セパラブルフラスコに4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)12.4g(0.05mol)、及び、N-メチルピロリドン10.0gを加えて40℃で15分間攪拌した。次に、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)8.22g(0.027mol)、デカメチレンビストリメリテート二無水物(DBTA)26.11g(0.027mol)、及び、N-メチルピロリドン47.77gの混合溶液を15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、3時間攪拌することで、ポリアミック酸のN-メチルピロリドン溶液を得た。得られた溶液中の固形分は45質量%であり、ポリアミック酸の重量平均分子量は32000、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は2.4であった。
(感光性接着剤組成物1?6の作製)
上記各合成例で合成した(A)側鎖にカルボキシル基を有するアルカリ可溶性ポリアミック酸の溶液、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、及び、(D)架橋剤を、それぞれ下記表1に示した配合割合(質量部)で混合し、溶媒(γ-ブチロラクトン)を加えて、感光性接着剤組成物1?6の溶液を得た。このとき、感光性接着剤組成物1?6の溶液について、粘度が20Pa・s又は5Pa・sとなるように溶媒の量を調整し、それぞれ2種類の粘度の感光性接着剤組成物1?6の溶液を得た。また、感光性接着剤組成物の溶液の粘度は、東機産業株式会社製のTOKI RE-80U(商品名)を用いて測定した。なお、表1中の数字は固形分の質量部を示している。また、表1中の各成分は、以下に示すものである。
TMCH-5(商品名、ウレタン結合と脂環式炭化水素骨格とを有する2官能アクリレート、重量平均分子量950、日立化成工業株式会社製)、
UA-21(商品名、ウレタン結合とイソシアヌル環骨格とを有する3官能メタクリレート、重量平均分子量3000、新中村化学工業株式会社製)、
FA-321A(商品名、ビスフェノールAジアクリレート、日立化成工業株式会社製)、
BL-3175(商品名、ブロック化イソシアネート、住化バイエルウレタン株式会社製)、
YH-434L(商品名、アミン型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製)、
I-651(商品名、ベンジルジメチルケタール、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)。」(段落【0089】?【0092】)

(カ)「【表1】

」(段落【0095】)

(キ)「以上のように、本発明の感光性接着剤組成物を用いた基板の接続方法によれば、フォトリソグラフィーにより所定の箇所にのみ感光性接着剤組成物層を形成することが可能であり、また、半導体素子と封止用部材との接着後(又は半導体素子同士の接着後)、高温でのピール強度(接着強度)に優れ、且つ、ボイドの発生も十分に抑制され、封止後の樹脂形状安定性にも優れることが確認された。」(段落【0103】)

イ-4 甲1文献に記載の発明
甲1文献には、感光性を有するため微細加工が可能であり、希アルカリ水溶液で現像可能であり、低温(200℃以下)で硬化可能であり、シロキサンジアミンを用いずに、柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性に優れ、硬化後の基板の反りが小さく、封止剤との密着性に優れる感光性樹脂組成物を提供する(摘示イ-2(イ))ことを解決しようとする課題として、(A)主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂、(B)分子内に感光性基を少なくとも1つ有する(A)以外の感光性化合物、(C)光重合開始剤及び(D)熱硬化性化合物を少なくとも含有することを特徴とする感光性樹脂組成物(摘示イ-2(ア))が記載されている。
そして、実施例1?9及び11には、上記の感光性樹脂組成物の具体的な態様として、(A)成分として樹脂A?Iで特定されるポリイミド樹脂、(B)成分としてBPE-500(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、EO=10)、(C)成分としてIRGACURE369(2-ベンジル-ジメチルアミノ-1-(4-)モルフォリノフェニル)ブタノン-1、(D)成分としてjER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)又はTPA-B80E(ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート化合物)を含む感光性樹脂組成物が記載されている(摘示イ-2(カ)、(ケ))。
これらの記載を総合すると、甲1文献には、次のとおりの発明が記載されている。
「(A)樹脂A?Iで特定されるポリイミド樹脂、(B)エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、EO=10である感光性化合物、(C)2-ベンジル-ジメチルアミノ-1-(4-)モルフォリノフェニル)ブタノン-1、(D)ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート化合物である熱硬化性化合物を含む感光性接着剤樹脂組成物。」

イ-5 甲2文献に記載の発明
甲2文献には、十分に高い接着強度が得られるとともに、基板(被接着部材)との間にボイドが生じることを十分に抑制することが可能な感光性接着剤組成物及び基板の接着方法を提供することを目的として(摘示イ-3(イ))、(A)ポリアミック酸、(B)分子内にエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)架橋剤を含む感光性接着剤組成物が記載されている(請求項1、2)
そして、上記(A)、(B)、(C)、(D)成分の具体的な態様として、摘示イ-3(カ)には、組成物3として、(A)合成例1により製造されたポリアミック酸、(B)光重合性化合物であるFA-321A、(C)光重合開始剤であるI-651、(D)架橋剤であるBL-3175を含む組成物が記載されており、摘示イ-3(オ)には、FA-321AがビスフェノールAジアクリレート、I-651がベンジルメチルケタール、BL-3175がブロック化イソシアネートであることが記載されている。
さらに、甲2文献には、感光性接着剤層を塗布した基板を乾燥し、感光性接着剤組成物層を得て、所望のパターンを有するマスクを置き、それを介して活性光線を照射して露光すること、露光後に、アルカリ水溶液等の現像液を用いて未露光部を除去し、パターンを形成することができる旨の記載がある(摘示イ-3(エ))。
これらの記載を総合すると、甲2文献には、次のとおりの発明が記載されている。
「(A)合成例1により製造されたポリアミック酸、(B)ビスフェノールAジアクリレートであるFA-321A、(C)ベンジルメチルケタールであるI-651、(D)ブロック化イソシアネートであるBL-3175を含む組成物を含む感光性接着剤樹脂組成物。」

イ-6 対比・判断
(ア)本件発明4と甲1文献に記載の発明との対比・判断
甲1文献に記載の発明における「(A)樹脂A?Iで特定されるポリイミド樹脂」、「(B)エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、EO=10である感光性化合物」、「(D)ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート化合物」はそれぞれ、本件発明4における「ベースポリマー」、「一般式(1)で表され、n+mが10である光重合性化合物」、「熱硬化性成分」に相当する。
したがって、本件発明4は、甲1文献に記載された発明である。

(イ)本件発明4と甲2文献に記載の発明との対比・判断
甲2文献に記載の発明における「(A)合成例1により製造されたポリアミック酸」、「(D)架橋剤としてのBL-3175」は、それぞれ、本件発明4における「ベースポリマー」「熱硬化性成分」に相当する。また、甲2文献に記載の発明における「(B)ビスフェノールAジアクリレートであるFA-321A」、「(C)ベンジルメチルケタールであるI-651」は、それぞれ摘示イ-3(カ)より、「光重合性化合物」、「光重合開始剤」であって、本件発明4において、光重合開始剤を必要に応じて添加できることは技術常識から自明である。
したがって、本件発明4と甲2文献に記載の発明とは、
「ベースポリマーと、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤樹脂組成物。」の点で一致し、次の相違点1で一応相違する。

○相違点1:本件発明4は、光重合性化合物が、一般式(1)、(4)又は(5)で表される光重合性化合物を含むと特定するのに対し、甲2文献に記載の発明のFA-321Aは、一般式(1)、(4)又は(5)で表されるとの特定がない点。

そこで、上記相違点1について検討する。
甲2文献には、商品名FA-321Aの具体的な化学構造についての明記はないものの、本件特許異議の申立てに係る甲第4号証(日立機能性アクリレート メタクリレート FANCRYL(日立化成株式会社カタログ)平成23年7月発行 (11頁))によれば、商品名FA-321Aで表される商品の化学構造は、本件発明の一般式(4)で表され、p+qが10である構造を有する化合物に相当することが示されている。(なお、上記甲第4号証のカタログの作成年月は、カタログの記載によれば、本件の優先日後の2011年7月であると認められるが、一般に、単一組成の化合物の商品において、異なる化学構造を有する化合物に変更することは極めて稀であることが技術常識であるから、甲2文献に記載の発明にかかるFA-321Aの化合物も、本件発明の一般式(4)で表され、p+qが10である構造を有する化合物であると認められる。)
したがって、本件発明4は、甲2文献に記載された発明である。

ウ 理由B(特許法第29条第2項)について
本件発明4は、上記イのとおり、甲1文献に記載された発明であるが、仮に相違したとしても、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明4は、上記イのとおり、甲2文献に記載された発明であるが、仮に相違したとしても、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4についての取消理由の概要まとめ
以上のとおり、本件発明4についての特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件特許は取り消されるべきものである。

(2)本件訂正を踏まえた取消理由についての判断
本件訂正は、本件発明4について上記1(1)のとおりとするものであるから、これを踏まえ上記取消理由について検討する。
訂正後の本件発明4は以下のとおりのものである(下線は当審による)。
「【請求項4】
主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)と、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、 前記光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物を含む、感光性接着剤組成物。
【化4】

[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3?30となる数を示す。]
【化5】

[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4?30となる数を示す。]
【化6】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3?30となる数を示す。] 」

ア 理由A(特許法第29条第1項第3号)について
(ア)甲1文献に記載の発明との対比・判断
訂正後の本件発明4と甲1文献に記載の発明とを対比する。本件訂正と、上記(1)イでの検討とを踏まえると、本件発明4のベースポリマーに関し、訂正後の本件発明4は、「主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)」と特定するのに対し、甲1文献に記載の発明は、「(A)樹脂A?Iで特定されるポリイミド樹脂」と特定している点で相違している。
この相違点をさらに考察するに、甲1文献に記載の発明における「(A)樹脂A?Iで特定されるポリイミド樹脂」は、上記イ-4で言及したように、摘示イ-2(カ)、(ケ)のとおり、甲1文献の実施例1?9及び11に感光性樹脂組成物の具体的な態様として記載されたものであるから、少なくとも甲1文献の特許請求の範囲、特に請求項1において特定された要件である「(A)主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂」(摘示イ-2(ア))であることを満たすものとして開示されたものであると認められる。他方、訂正後の本件発明4は、「(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)」と特定しているのであるから、この相違点は実質的なものである。
したがって、訂正後の本件発明4は、甲1文献に記載された発明であるとはいえない。

(イ)甲2文献に記載の発明との対比・判断
訂正後の本件発明4と甲2文献に記載の発明とを対比する。本件訂正と、上記(1)イでの検討とを踏まえると、本件発明4のベースポリマーに関し、訂正後の本件発明4は、「主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)」と特定するのに対し、甲2文献に記載の発明は、「(A)合成例1により製造されたポリアミック酸」と特定している点で相違している。即ち、甲2文献に記載の発明では、「主鎖にイミド基を有する」とは特定されていない。
この相違点についてさらに考察するに、ポリアミック酸はポリイミド前駆体であって、加熱等により硬化することで主鎖にイミド基を有するポリマーとなることから、一見すると相違点は実質的でないようにも思われる。しかしながら、上記イ-5で認定した甲2文献に記載の発明たる感光性接着剤組成物は、それを加熱等により硬化したものを包含する概念ではないし、当該感光性接着剤組成物を加熱等することによりポリアミック酸をイミド化反応させポリイミド樹脂が形成されるときには、当該感光性接着剤組成物に包含される他の成分、例えば、熱硬化性成分((D)架橋剤としてのBL-3175)も反応して硬化してしまうか、あるいは光重合性化合物成分((B)ビスフェノールAジアクリレートであるFA-321A)も反応して硬化してしまうと認められ、このような硬化物はもはや感光性ではない。よって、いずれにしても、訂正後の本件発明4と同じ感光性接着剤組成物とはならないから、この相違点は実質的なものである。
したがって、訂正後の本件発明4は、甲2文献に記載された発明であるとはいえない。

イ 理由B(特許法第29条第2項)について
(ア)甲1文献に記載の発明との対比・判断
訂正後の本件発明4と甲1文献に記載の発明とを対比した相違点は、上記ア(ア)で検討したとおり、本件発明4のベースポリマーに関し、訂正後の本件発明4は、「主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)」と特定するのに対し、甲1文献に記載の発明は、「(A)樹脂A?Iで特定されるポリイミド樹脂」と特定している点である。そして、甲1文献に記載の発明における「(A)樹脂A?Iで特定されるポリイミド樹脂」は、「(A)主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂」である。
甲1文献に記載の発明では、摘示イ-2(イ)のとおり、所定の課題を解決するための発明であって、摘示イ-2(キ)、(ク)のとおりの硬化後の基板の反りが小さく、封止剤との密着性に優れる感光性樹脂組成物を提供するために、「(A)主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂」と特定するものであるから、これに換えて反り量が多くなってしまう他の成分をベースポリマーとして採用することには阻害要因があるといえる。甲1文献には、摘示イ-2(ク)の比較例1として、他の成分であるポリイミド樹脂Jを用いることが記載されてはいるが、反り量が多くなっていて効果に劣るものとして開示されているだけであるから、他の成分であるポリイミド樹脂を用いることの動機づけになるとはいえない。
さらに、特許異議申立人から特許法第120条の5第5項に基づき提出のあった意見書では、甲第5号証(再公表特許WO2005/019231号)の記載について言及がなされているが、甲第5号証にはホスファゼン化合物とともに用いられる感光性樹脂組成物について縷々記載されているものの、甲1文献に記載の発明と本件訂正後の本件発明4との上記相違点について、取消理由を補完するような技術事項についての記載は特に見当たらない。
以上のことから、上記相違点は、当業者が容易に想到できたものではない。

(イ)甲2文献に記載の発明との対比・判断
訂正後の本件発明4と甲2文献に記載の発明とを対比した相違点は、上記ア(イ)で検討したとおり、本件発明4のベースポリマーに関し、訂正後の本件発明4は、「主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)」と特定するのに対し、甲2文献に記載の発明は、「(A)合成例1により製造されたポリアミック酸」と特定している点である。
上記ア(イ)で検討したとおり、ポリアミック酸はポリイミド前駆体であることは技術常識であって自明であるが、甲2文献にはポリアミック酸に換えてポリイミド樹脂とすることの記載や示唆は見当たらない。むしろ、甲2文献に記載の発明では、摘示イ-3(エ)の実施態様のように、現像液を用いて未露光部を除去できるようにポリアミック酸を用いているといえるから、このベースポリマーについて、現像液への溶解性に劣るポリイミド樹脂へと換えることには阻害要因があるといえる。
以上のことから、上記相違点は、当業者が容易に想到できたものではない。

(ウ)小括
以上のことから、訂正後の本件発明4について、通知した取消理由は解消している。

(3)本件発明4に係る異議申立て理由について
ア 特許異議申立人の主張
本件発明4に係る特許異議申立人の主張は、概略、次の(ア)ないし(エ)のとおりであり、本件発明4についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべき、というものである。

(ア)本件発明4は、甲第1号証に記載されており、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明である。
(イ)本件発明4は、甲第2号証に記載されており、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明である。
(ウ)本件発明4は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
(エ)本件発明4は、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。

また,証拠方法として、以下の文書(甲第1号証?甲第4号証)を提示している。
・甲第1号証: 特開2009-69664号公報
・甲第2号証: 特開2008-239802号公報
・甲第3号証: 国際公開第2008/149625号
・甲第4号証: 日立化成株式会社カタログ(上記(1)イ-4(イ)を参照)

イ 訂正後の本件発明4についての検討
特許異議申立人の上記主張を踏まえ、訂正後の本件発明4について検討するに、提示された甲第1号証及び甲第2号証は、上記(1)イ-1の刊行物である甲1文献及び甲2文献にそれぞれ該当し、対比・判断については上記(2)で検討したとおりであるから、特許異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては、訂正後の本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。

(4)訂正後の請求項4についてのまとめ
上記(2)、(3)のとおりであるから、訂正後の本件発明4についての取消理由は解消しており、特許異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては、訂正後の本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許が113条各号のいずれかに該当すると認めるに足る理由も見当たらない。

3-2 訂正後の請求項7が引用する請求項1、3及び5について
本件訂正後の請求項1、3及び5に係る発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)と、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、 前記光重合性化合物が、官能基当量が250?1300である光重合性化合物を含み、前記官能基当量が250?1300である光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物である、感光性接着剤組成物。
【化1】

[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3?30となる数を示す。]
【化2】

[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4?30となる数を示す。]
【化3】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3?30となる数を示す。]
【請求項3】
前記熱硬化性成分が、エポキシ化合物及び硬化剤を含む、請求項1記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤。」

本件訂正後の請求項1に係る発明については、実質上、訂正後の請求項4についての発明を特定するための事項をすべて含み、さらに「光重合性化合物が、官能基当量が250?1300である」という発明特定事項を付加したものであるから、訂正後の請求項4に係る発明と同様に、特許を取り消すべき理由は見当たらない。
本件訂正後の請求項3に係る発明については、訂正後の請求項1についての発明を特定するための事項をすべて含み、さらに技術的限定を加えて特定したものであるから、訂正後の請求項1に係る発明と同様に、特許を取り消すべき理由は見当たらない。
本件訂正後の請求項5に係る発明については、訂正後の請求項1、3又は4についての発明を特定するための事項をすべて含み、さらに技術的限定を加えて特定したものであるから、訂正後の請求項1、3又は4に係る発明と同様に、特許を取り消すべき理由は見当たらない。

3-3 訂正後の請求項7に係る発明について
本件訂正後の請求項7に係る発明は以下のとおりのものである。
「【請求項7】
請求項5記載のフィルム状接着剤とダイシングシートとを積層した構造を有する接着シート。」

本件訂正後の請求項7に係る発明については、訂正後の請求項5についての発明を特定するための事項をすべて含み、さらに技術的限定を加えて特定したものであるから、訂正後の請求項5に係る発明と同様に、特許を取り消すべき理由は見当たらない。

3-4 小括
以上、訂正後の請求項7に係る発明については、特許を取り消すべき理由は見当たらないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件を満たすものである。

4 本件訂正についての判断
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 特許異議の申立ての概要
特許異議申立人の主張は、上記第2の3-1(3)で述べた点を含み、概略、次の(1)ないし(4)のとおりであり、請求項1ないし6及び8ないし11についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべき、というものである。

(1)請求項1ないし6及び8ないし11に係る発明は、甲第1号証に記載されており、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明である。
(2)請求項1、2、4、8に係る発明は、甲第2号証に記載されており、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明である。
(3)請求項1ないし6及び8ないし11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
(4)請求項1ないし6及び8ないし11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。

2 取消理由の概要
請求項1ないし6及び8ないし11に係る特許に対して、平成27年12月4日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、上記第2の3-1(1)で述べた点を含み、概略、次の(1)ないし(5)のとおりであり、請求項1ないし6及び8ないし11についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべき、というものである。

(1)請求項1ないし6及び8に係る発明は、甲第1号証に記載されており、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明である。
(2)請求項1、2、4、8に係る発明は、甲第2号証に記載されており、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明である。
(3)請求項1ないし6及び8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
(4)請求項1、2、4、8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
(5)請求項3、5、6及び9ないし11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。

3 当合議体の判断
(1)訂正後の請求項1,3ないし5に係る発明について
訂正後の請求項1、3ないし5に係る発明については、上記第2の3-1及び3-2で述べたとおり、上記取消理由によって、特許を取り消すことはできないものであり、また、異議申立人の提示した甲各号証の内容について、取消理由を踏まえてさらに検討しても、他に特許を取り消すべき理由を発見しない。

(2)訂正後の請求項6、8ないし11に係る発明について
本件訂正後の請求項6、8ないし11に係る発明は以下のとおりのものである。
「【請求項6】
基材と、該基材の一方の面上に設けられた請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着シート。
【請求項8】
請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を露光し、露光後の接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターン。
【請求項9】
半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項10】
請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物によって半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置。
【請求項11】
請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する半導体装置の製造方法。」

本件訂正後の請求項6、8ないし11に係る発明については、いずれも訂正後の請求項1、3又は4についての発明を特定するための事項をすべて含み、さらに技術的限定を加えて特定したものであるから、訂正後の請求項1、3又は4に係る発明と同様に、特許を取り消すべき理由は見当たらない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては,本件訂正後の特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また,他に当該特許が特許法第113条各号のいずれかに該当すると認めるに足る理由もない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)と、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、
前記光重合性化合物が、官能基当量が250?1300である光重合性化合物を含み、
前記官能基当量が250?1300である光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物である、感光性接着剤組成物。
【化1】

[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3?30となる数を示す。]
【化2】

[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4?30となる数を示す。]
【化3】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3?30となる数を示す。]
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記熱硬化性成分が、エポキシ化合物及び硬化剤を含む、請求項1記載の感光性接着剤組成物。
【請求項4】
主鎖にイミド基を有するポリマーを含むベースポリマー(ただし、主鎖にエーテルイミド骨格、ポリカーボネート骨格、及びウレタン結合を有し、少なくとも側鎖に現像性基、主鎖末端に感光性基を有するポリイミド樹脂を除く)と、光重合性化合物と、熱硬化性成分と、を含有する感光性接着剤組成物であって、
前記光重合性化合物が、下記一般式(1)、(4)又は(5)で表される化合物を含む、感光性接着剤組成物。
【化4】

[式中、n及びmはそれぞれ0以上、且つ、n+m=3?30となる数を示す。]
【化5】

[式中、p及びqはそれぞれ0以上、且つ、p+q=4?30となる数を示す。]
【化6】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、r、s、t及びuはそれぞれ0以上、且つ、r+s+t+u=3?30となる数を示す。]
【請求項5】
請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤。
【請求項6】
基材と、該基材の一方の面上に設けられた請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着シート。
【請求項7】
請求項5記載のフィルム状接着剤とダイシングシートとを積層した構造を有する接着シート。
【請求項8】
請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を露光し、露光後の接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターン。
【請求項9】
半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項10】
請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物によって半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置。
【請求項11】
請求項1、3又は4に記載の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着する工程を有する半導体装置の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-04-27 
出願番号 特願2010-88922(P2010-88922)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C09J)
P 1 652・ 113- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福井 美穂▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 菊地 則義
小野寺 務
登録日 2015-02-13 
登録番号 特許第5691228号(P5691228)
権利者 日立化成株式会社
発明の名称 感光性接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 清水 義憲  

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