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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B67D 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 B67D 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 B67D |
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管理番号 | 1319153 |
異議申立番号 | 異議2015-700087 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-10-14 |
確定日 | 2016-05-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5700308号「給油装置のノズル掛け」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5700308号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,請求項1ないし3について訂正することを認める。 特許第5700308号の請求項1,2に係る特許を維持する。 特許第5700308号の請求項3に係る特許についての申立てを却下する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第5700308号の請求項1?3に係る特許についての出願は,平成25年 7月26日の特許出願であって,平成27年 2月27日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許について,特許異議申立人 遠藤昭子により特許異議の申立てがなされ,平成27年12月22日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である平成28年 2月22日に意見書の提出及び訂正の請求があったものである。その後,異議申立人に,期間を設定して意見書を提出する機会を与えたが,応答はなかった。 第2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 平成28年 2月22日付けの訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1?6のとおりである。 ア.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に係る「第二の覆い部(20)を備えたこと」を「第二の覆い部(20)を備え,前記第二の覆い部(20)は断面U字形状であり,ノズル掛け本体(10)のU字状の壁(14)を覆うようになっており,前記第二の覆い部(20)は内側に弯曲している曲折部(22)を有し,該曲折部(22)の端には切欠(23)が形成されていること」に訂正する。 イ.訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に係る「第三の覆い部(30)を備えた」を「第三の覆い部(30)を備え,前記第三の覆い部(30)はT字状であり,変形又は復元可能に構成され,ノズル掛け本体(10)に取り付けられている」に訂正する。 ウ.訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ.訂正事項4 明細書段落【0006】の「備えている。」を「備え,前記第二の覆い部(20)は断面U字形状であり,ノズル掛け本体(10)のU字状の壁(14)を覆うようになっており,前記第二の覆い部(20)は内側に弯曲している曲折部(22)を有し,該曲折部(22)の端には切欠(23)が形成されている」に訂正する。 オ.訂正事項5 明細書段落【0007】の「備えている。」を「備え,前記第三の覆い部(30)はT字状であり,変形又は復元可能に構成され,ノズル掛け本体(10)に取付けられている」に訂正する。 カ.訂正事項6 明細書段落【0008】を削除する。 (2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・ 変更の存否 ア.訂正事項1について 上記訂正事項1に関連する記載として,特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0025】には「図3で示すように,上部カバー20は断面U字形状であり,ノズル掛け本体10のU字状の壁14(図1参照)を覆うようになっている。図3,図4において,上部カバー20の一端には取り付け部21が設けられている。そして図3で示すように,上部カバー20は内側に曲折している曲折部22を有しており,上部カバー20の取り付け部21とは反対側の端部には切欠23が形成されている。」と記載されているとともに,図3には「曲折部22の端には切欠23が形成されていること」が示されている。 そうすると,「第二の覆い部」である上部カバー20について,「上部カバー20(第二の覆い部)は断面U字形状であり,ノズル掛け本体10のU字状の壁14を覆うようになって」おり,「上部カバー20(第二の覆い部)は内側に曲折(弯曲)している曲折部22を有し」,該「曲折部22の端には切欠23が形成されていること」を用いた構成は特許明細書に記載されているものと認められる。 上記訂正事項1の訂正は,特許明細書に記載された事項の範囲内において「第二の覆い部」を限定したものといえるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 イ.訂正事項2について 上記訂正事項2に関連する記載として,特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0028】には「下部カバー30は,図1で示すように概略T字状に構成されており,」,「そして下部カバー30は,変形及び復元可能な材料,例えばゴム,板バネ等の弾性材で構成されている。」,「下部カバー30にはリベット穴31が形成されており,リベット穴31に樹脂リベット32を挿入することにより,下部カバー30はノズル掛け本体10に固定される。」と記載されている。 そうすると,第三の覆い部である下部カバー30について,「下部カバー30(第三の覆い部)は,T字状であり,変形又は復元可能な材料で構成されており,ノズル掛け本体10に取り付けられている」ことを用いた構成は特許明細書に記載されているものと認められる。 上記訂正事項2の訂正は,特許明細書に記載された事項の範囲内において「第三の覆い部」を限定したものといえるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 ウ.訂正事項3について 上記訂正事項3は,請求項3を削除するというものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 エ.訂正事項4について 上記訂正事項4は,請求項1の訂正と整合させるための訂正であり,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 オ.訂正事項5について 上記訂正事項5は,請求項2の訂正と整合させるための訂正であり,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 カ.上記訂正事項6について 上記訂正事項6は,請求項3の削除と整合させるための訂正であり,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 そして,これら訂正は,すべての請求項について請求されたものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,請求項1ないし3について訂正することを認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件特許発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1及び2に係る発明(以下,それぞれ「本件特許発明1」,「本件特許発明2」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(なお,前述のとおり,請求項3は削除された。)。 【請求項1】 「給油ノズル(3)の吐出管が保持される上部ホルダー部(11)と,該上部ホルダー部(11)より下方に位置して給油ノズル(3)の掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部(12)と,該ノズルスイッチ部(12)より下方に位置して給油ノズル(3)のレバーガード(5)を保持する下部ホルダー部(13)とを具備したノズル掛け本体(10)を有する給油装置のノズル掛けにおいて,前記上部ホルダー部(11)に対向する位置に第二の覆い部(20)を備え,前記第二の覆い部(20)は断面U字形状であり,ノズル掛け本体(10)のU字状の壁(14)を覆うようになっており,前記(第二の覆い部(20)は内側に弯曲している曲折部(22)を有し,該曲折部(22)の端には切欠(23)が形成されていることを特徴とする給油装置のノズル掛け。」 【請求項2】 「給油ノズル(3)の吐出管が保持される上部ホルダー部(11)と,該上部ホルダー部(11)より下方に位置して給油ノズル(3)の掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部(12)と,該ノズルスイッチ部(12)より下方に位置して給油ノズル(3)のレバーガード(5)を保持する下部ホルダー部(13)とを具備したノズル掛けにおいて,前記ノズルスイッチ部(12)に対向する位置に第三の覆い部(30)を備え,前記第三の覆い部(30)はT字状であり,変形又は復元可能に構成され,ノズル掛け本体(10)に取り付けられていることを特徴とする給油装置のノズル掛け。」 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成27年12月22日付けで特許権者に通知した取消理由は,要旨次のとおりである。 ア 本件特許の請求項1?3に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(引用例1)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 イ 本件特許の請求項1?3に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(引用例1?引用例3)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.引用刊行物 引用例1:特開2011-240971号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証) 引用例2:特開平9-77196号公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証) 引用例3:特開2003-137399号公報(特許異議申立人が提出した参考例)」 (3)引用刊行物の記載事項 ア.引用例1(特開2011-240971号公報)には, 「ノズル30の吐出パイプ30bが挿入される挿入部40と,該挿入部40より下方に位置してノズル30の掛け外しに応じて作動するレバー72と,該レバー72より下方に位置してノズル30のグリップガード部30dが載置されるノズル載置部50とを有したノズル収容部32を有する,燃料供給装置10のノズル掛けにおいて,前記挿入部40に対向する位置にノズルカバー20を備え,前記ノズルカバー20は,ノズル収容部32の壁を覆うようになっており,前記ノズルカバー20は内側に弯曲している曲折部を有する,燃料供給装置10のノズル掛け。」 の発明(以下,「引用発明1」という。),及び, 「ノズル30の吐出パイプ30bが挿入される挿入部40と,該挿入部40より下方に位置してノズル30の掛け外しに応じて作動するレバー72と,該レバー72より下方に位置してノズル30のグリップガード部30dが載置されるノズル載置部50とを有したノズル収容部32を有する,燃料供給装置10のノズル掛けにおいて,前記レバー72に対向する位置にノズルカバー20を備え,前記ノズルカバー20は,ノズル収納部32に連結されている燃料供給装置10のノズル掛け。」 の発明(以下,「引用発明2」という。)(特に,段落【0004】,【0005】,段落【0012】?【0038】,図2?図6を参照のこと。)が記載されていると認められる。 イ.引用例2(特開平9-77196号公報)には,図面と共に以下の記載がある。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,固定式給油機の機体の側面に設けられるノズル掛けに関するものである。」 ・「【0011】また,上記枠収納部27と案内路28との内部には,ノズル検知用レバー30とこのレバー30を常時は本体10の前方へ付勢する付勢手段31とが配設されている。レバー30は,前記キャップ受部13を構成する一対の受け台26の間に回転可能に橋架したシャフト32にその上端部を回転不能に結合している。また,付勢手段31は,本体10の背面に一体形成されたボス部33の底を摺動自在に挿通する押しロッド34とこの押しロッド34を常時はレバー30側へ付勢するばね35とから成り,前記押しロッド34は,その一端を前記レバー30に係合させている。一方,前記ボス部33の一側面にはスイッチボックス36が取付けられており(図2),前記シャフト32の一端に固定した揺動レバー37がこのスイッチボックス36のスイッチレバー36aに係脱するようになっている。これらレバー30,付勢手段31,スイッチボックス36,揺動レバー37等は,本ノズル掛けに給油ノズル1が掛けられたことを検知する検知手段を構成し,いま,ノズル受部12に給油ノズル1が載せられると,その枠体3によりレバー30が付勢手段31の付勢力に抗して回動し,揺動レバー37がスイッチレバー36aから外れて,ノズル掛けに給油ノズル1が掛けられたことが検知される。」 ウ.引用例3(特開2003-137399号公報)には,図面と共に以下の記載がある。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は燃料供給装置に係り,特に気温の低下により凍結が生じる寒冷地での使用に適した燃料供給装置に関する。 ・「【0005】ノズル掛けの内部に雪が侵入すると,ノズルスイッチにリンクしたレバーの回転部分が凍結して給油ノズルがノズル掛けから外されてもノズルスイッチが作動しないことがある。」 (4)判断 ア.本件特許発明1について 本件特許発明1と引用発明1とを対比すると,後者の「ノズル30」は前者の「給油ノズル」に相当し,以下同様に,「吐出パイプ30b」は「吐出管」に,「挿入される」態様は「保持される」態様に,「挿入部40」は「上部ホルダー部」に,「グリップガード部30d」は「レバーガード」に,「載置される」態様は「保持する」態様に,「ノズル載置部50」は「下部ホルダー部」に,「有した」態様は「具備した」態様に,「ノズル収容部32」は「ノズル掛け本体」に,「燃料供給装置10」は「給油装置」に,「ノズルカバー20」は「第二の覆い部」に,それぞれ相当する。 本件特許発明1の「ノズルスイッチ部」は,訂正明細書の段落【0024】の「ノズルスイッチ部12は上部ホルダー部11より下方に位置しており,給油ノズル3の掛け外しに応じて移動するスイッチ作動レバー12Tが設けられている。」という記載を参照すると,給油ノズルの掛け外しに応じて作動する「スイッチ作動レバー12T」を含むものといえる。一方,引用例1に記載された発明の「レバー72」は,引用例1の段落【0024】を参照すると,「レバー72は,ノズルスイッチを作動させるためのノズル検出レバーを兼ねて」いるものであり,ノズル30(給油ノズル)の掛け外しに応じて作動するノズル検出レバー(スイッチ作動レバー12T)である。 よって,後者の「レバー72」は前者の「ノズルスイッチ部」に相当するものである。 そうすると,両者は, 「給油ノズルの吐出管が保持される上部ホルダーと,該上部ホルダーより下方に位置して給油ノズルの掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部と,該ノズルスイッチ部より下方に位置して給油ノズルのレバーガードを保持する下部ホルダー部とを具備したノズル掛け本体を有する給油装置のノズル掛けにおいて,前記上部ホルダーに対向する位置に第二の覆い部を備え,前記第二の覆い部は,ノズル掛け本体の壁を覆うようになっており,前記第二の覆い部は内側に弯曲している曲折部を有する,給油装置のノズル掛け。」 の点で一致し,次の点で相違する。 第二の覆い部に関して,本件特許発明1では,「前記第二の覆い部は断面U字形状であり,ノズル掛け本体のU字状の壁を覆うようになっており,前記第二の覆い部は内側に弯曲している曲折部を有し,該曲折部の端には切欠が形成されている」のに対して,引用発明1では,前記ノズルカバー20は,ノズル収容部32の壁を覆うようになっており,前記ノズルカバー20は内側に弯曲している曲折部を有するものの,それ以上の特定はなされていない点。 つまり,引用発明1は,「前記第二の覆い部は断面U字形状であり,ノズル掛け本体のU字状の壁を覆うようになっており」,前記第二の覆い部の有する「曲折部の端には切欠が形成されている」構成を有していないのであって,この点については,異議申立人の提示した引用例1?引用例3の何れにも開示されるものではなく,また,容易に導かれるものでもない。 そして,本件特許発明1は,当該構成を備えることによって,「上部カバー20が閉じたときに,上部カバー20の袖部25(上部カバー20のノズル掛け本体10側の縁部)がノズル掛け本体10におけるU字状の壁14の上縁14U(給油装置1のハウジング50から離隔する側の縁部)を完全に覆うことができる。 そのため,上部カバー20の袖部25とノズル掛け本体10におけるU字状の壁14に隙間が形成されてしまうことが無く,当該隙間を介して上部カバー20の側面からノズル掛け1内に雪が侵入してしまうことが防止できる。」(段落【0027】),及び「上部カバー20に切欠23が形成されているので,上部カバー20が回動してノズル掛け本体10に当接する際の衝撃を和らげることができる。」(段落【0038】)という効果を奏するものである。 したがって,本件特許発明1は,引用発明及び引用例2,3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2について 本件特許発明2と引用発明2とを対比すると,後者の「ノズル30」は前者の「給油ノズル」に相当し,以下同様に,「吐出パイプ30b」は「吐出管」に,「挿入される」態様は「保持される」態様に,「挿入部40」は「上部ホルダー部」に,「グリップガード部30d」は「レバーガード」に,「載置される」態様は「保持する」態様に,「ノズル載置部50」は「下部ホルダー部」に,「有した」態様は「具備した」態様に,「ノズル収容部32」は「ノズル掛け本体」に,「燃料供給装置10」は「給油装置」に,「ノズルカバー20」は「第三の覆い部」に,「連結されている」態様は「取り付けられている」態様に,それぞれ相当する。 また,ア.本件特許発明1と同様にして,後者の「レバー72」は前者の「ノズルスイッチ部」に相当するものである。 そうすると,両者は, 「給油ノズルの吐出管が保持される上部ホルダー部と,該上部ホルダー部より下方に位置して給油ノズルの掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部と,該ノズルスイッチ部より下方に位置して給油ノズルのレバーガードを保持する下部ホルダー部とを具備したノズル掛けにおいて,前記ノズルスイッチ部に対向する位置に第三の覆い部を備え,前記第三の覆い部は,ノズル掛け本体に取り付けられている,燃料供給装置10のノズル掛け。」の点で一致し,次の点で相違する。 第三の覆い部がノズル掛け本体に取り付けられていることに関して,本件特許発明2では,「第三の覆い部はT字状であり,変形又は復元可能に構成され」ているのに対して,引用発明2では,そのような特定はなされていない点。 引用例2の段落【0011】及び図1?図3には,ノズル検知用レバー30,付勢手段31,スイッチボックス36,揺動レバー37等によって検知手段を構成し,この検知手段が給油ノズルがノズル掛けに掛けられたことを検知することが記載されるとともに,付勢手段31が押しロッド34を備え,検知手段の摺動部である押しロッド34をノズル検知用レバー30で覆ったものが記載されている。 しかしながら,「ノズル検知用レバー30」は,あくまで検知手段つまりノズルスイッチ部を構成するものであって,ノズルスイッチ部に対向する位置に設けたノズルスイッチ部とは別体の部材ではなく,さらに,「T字状であり,変形又は復元可能に構成され」るものでもない。 そうすると,上記相違点における本件特許発明2の構成は,異議申立人の提示した引用例1?引用例3の何れにも開示されるものではなく,また,容易に導かれるものでもない。 そして,上記相違点における本件特許発明2の構成により,「下部カバー30は可撓性及び弾性を有する材料で構成されているので,給油ノズル3をノズル掛け1に係止する際に撓み,抵抗となることはない。そして給油ノズル3をノズル掛け1から外した際には,ノズルスイッチ部12を覆う位置に復位する。」(段落【0037】)という効果を奏するものである。 したがって,本件特許発明2は,引用発明2及び引用例2,3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから,取消理由によっては,請求項1,2に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1,2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして,請求項3に係る特許は,訂正により,削除されたため,本件特許の請求項3に対して,特許異議申立人 遠藤昭子がした特許異議申立てについては,対象となる請求項が存在しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 給油装置のノズル掛け 【技術分野】 【0001】 本発明は、車両等に燃料油を給油する給油装置において、給油ノズルを給油装置本体に係止するノズル掛けに関する。 【背景技術】 【0002】 従来、給油所において、自動車に燃料油を給油する場合、自動車の給油口キャップを外した後に、ノズル掛けより給油ノズルを取り出し、吐出管を自動車の給油口に挿入して給油作業を行う。そして給油後は、給油ノズルを給油口から取り出してノズル掛けに掛けて(係止して)、給油口キャップで給油口を閉鎖していた。 給油ノズルは、例えば、吐出管の先端に開口した空気流路管がタンク内の液によって閉塞されると閉弁機構が自動的に作動し、給液を停止するように構成されている(特許文献1参照)。 【0003】 しかし図8に示すように、積雪地域では、給油装置2のノズル掛け1に雪S(図8では点線で示す)が吹き込んでノズル掛け1の上部ホルダー部11に雪が溜まり、給油ノズル(図8では図示せず)の収納時に給油ノズルの吐出管(図8では図示せず)内に雪が侵入し、その雪が吐出管内で凍結して次回の給油時に燃料油が吐出されなくなってしまう恐れがあった。 また、前記吐出管の先端に開口した空気流路管に雪が侵入して凍結し、給油ノズルの閉弁機構が正常に作動しなくなる恐れがあった。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】 特開昭50-43509号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ノズル掛け内への雪の侵入を防止する覆い部(防雪カバー)を備えた給油装置のノズル掛けの提供を目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明によれば、給油ノズル(3)の吐出管が保持される上部ホルダー部(11)と、該上部ホルダー部(11)より下方に位置して給油ノズル(3)の掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部(12)と、該ノズルスイッチ部(12)より下方に位置して給油ノズル(3)のレバーガード(5)を保持する下部ホルダー部(13)とを具備したノズル掛け本体(10)を有する給油装置のノズル掛けにおいて、前記上部ホルダー部(11)に対向する位置に第二の覆い部(20)を備え、前記第二の覆い部(20)は断面U字形であり、ノズル掛け本体(10)のU字状の壁(14)を覆うようになっており、前記第二の覆い部(20)は内側に弯曲している曲折部(22)を有し、該曲折部(22)の端には切欠(23)が形成されている。 【0007】 また、本発明によれば、給油ノズル(3)の吐出管が保持される上部ホルダー部(11)と、該上部ホルダー部(11)より下方に位置して給油ノズル(3)の掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部(12)と、該ノズルスイッチ部(12)より下方に位置して給油ノズル(3)のレバーガード(5)を保持する下部ホルダー部(13)とを具備したノズル掛けにおいて、前記ノズルスイッチ部(12)に対向する位置に第三の覆い部(30)を備え、前記第三の覆い部(30)はT字状であり、変形又は復元可能に構成され、ノズル掛け本体(10)に取付けられている。 【0008】 (削除) 【0009】 【0010】 【0011】 【0012】 【発明の効果】 【0013】 上述する構成を具備する本発明の給油装置(2)のノズル掛け(1)によれば、ノズル掛け(1)のノズル掛け本体(11)に対向する位置に第一の覆い部(60)を備えているので、当該第一の覆い部(60)により雪がノズル掛け本体(11)内に侵入することが防止され、給油ノズル(3)の吐出管内に雪が侵入することはなく、吐出管内で雪が凍結してしまうことが防止され、次回の給油時に燃料油が吐出されなくなってしまう恐れがなくなる。 同様に、給油ノズル(3)の吐出管の先端に設けられている空気流路管に雪が侵入して凍結することもなく、空気流路管が凍結した雪で閉塞されて、閉弁機構が正常に作動しなくなることも防止される。そのため、給油作業に支障を来たすことが無い。 さらに、第一の覆い部(60)により、ノズル掛け(1)に掛けられている給油ノズル(3)は雪、風雨、外光(紫外線を含む太陽光等)から遮断されるので、給油ノズル(3)の劣化を防止することが出来る。 【0014】 また、第二の覆い部(20)を備えた本発明の給油装置(2)のノズル掛け(1)によれば、当該第二の覆い部(20)により雪がノズル掛け本体(11)内に侵入することが防止され、給油ノズル(3)の吐出管内への雪の侵入、凍結、次回の給油時に燃料油が吐出されなくなることが防止される。 同様に、給油ノズル(3)の吐出管の先端に設けられている空気流路管への雪の侵入、凍結、空気流路管の閉塞、閉弁機構の不作動が防止される。その結果、給油作業に支障を来たすことが防止される。 そして、給油ノズル(3)の第二の覆い部(20)で覆われている箇所は、雪、風雨、外光(紫外線を含む太陽光等)から遮断され、劣化が防止される。 【0015】 そして、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)は回動可能であるので、給油ノズル(3)をノズル掛け(1)に対して掛け外しをする際には、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)を回動し、給油ノズル(3)が第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)と干渉しない様にでき、給油ノズル(3)の掛け外しが容易である。 ここで、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)は垂直方向上方に回動可能であるため、給油装置(2)において、複数の給油ノズル(3)(あるいはノズル掛け(1))が近接して配置されていても、当該近接した複数の給油ノズル(3)の第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)同士が干渉してしまうことが防止される。 【0016】 また、第三の覆い部(30)を備えた本発明の給油装置(2)のノズル掛け(1)によれば、第三の覆い部(30)により給油ノズル(3)のノズルスイッチ部(12)に雪が侵入することが防止されるので、スイッチ摺動部の凍結が防止され、ノズルスイッチ部(12)の作動の信頼性を向上することが出来る。 【0017】 本発明のノズル掛け(1)において、給油装置(2)のハウジング(50)側に取り付けられるブラケット(40)を有しており、当該ブラケット(40)の上部に軸受部(43)を設ければ、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)を容易に回動可能に取り付けることができる。さらに、ノズル掛け本体(10)の凹部(15)に係合する折曲げ片(44)を備えていれば、給油装置(2)にノズル掛け(1)を取り付けるに際して、取り付け作業が容易となる。 換言すると、給油装置(2)にノズル掛け(1)を取り付けるに際して、先ず、ノズル掛け本体(10)の凹部(15)にブラケット(40)の折曲げ片(44)を係合あるいは当接させることにより、両者を一体化でき、給油装置(2)のハウジング(50)の所定の位置にノズル掛け(1)を容易に取り付けることが出来る。 【0018】 そして、当該ブラケット(40)に長孔(46)が形成されていれば、当該長孔(46)に沿ってノズル掛け(1)に対してブラケット(40)を摺動させることが出来る。摺動を行うことにより、隣接するノズル掛け(1)に対する相対位置を変動し、隣接するノズル掛け(1)と干渉すること無く、各種メンテナンスや、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)の交換作業を容易に実行することが出来る。 【0019】 本発明において、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)の内側(給油ノズル側)に、ノズル掛け本体(10)の上部と対向する部分に緩衝材(24)を備えていれば、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)を閉じた(給油ノズル(3)側に回動した)際に、緩衝材(24)により衝撃を緩和することが出来る。 そして、当該緩衝材(24)はシール材としての効果をも奏するので、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)の上方から雪がノズル掛け(1)内に侵入する(巻き込まれる)事態を防止することが出来る。 【0020】 そして本発明において、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)の下端には切欠(23)が形成されていれば、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)を閉じる(給油ノズル(3)側に回動する)際に、当該切欠(23)によりノズル掛け本体(10)と接触しないための空間が形成されるので、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)、ノズル掛け本体(10)の損傷が防止される。さらに切欠(23)により第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)によるノズル掛け本体(10)の覆いがより確実となり、雪の侵入を防止できるようになる。 【0021】 本発明において、第一の覆い部(60)あるいは第二の覆い部(20)には、油種を表示する表示部材(27)が貼着されていれば、油種が容易に確認でき、混油を防止する効果を奏する。 【図面の簡単な説明】 【0022】 【図1】本発明の第1実施形態を示す分解斜視図である。 【図2】第1実施形態のノズル掛けを給油装置に取り付けた状態を示す断面図である。 【図3】第1実施形態のノズル掛けで用いられる第二の覆い部の正面図である。 【図4】第二の覆い部の断面図である。 【図5】第1実施形態のノズル掛けを給油装置に取り付けた状態を示す側面図である。 【図6】第1実施形態のノズル掛けを設けた給油装置の斜視図である。 【図7】本発明の第2実施形態に係るノズル掛けの断面図である。 【図8】従来技術に係るノズル掛けを示す断面図である。 【発明を実施するための形態】 【0023】 以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。 最初に図1?図6を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。 図1に示すように、第1実施形態に係るノズル掛け1は給油装置2(図1、図2では給油装置2のハウジング50の一部のみを示す:給油装置2の全体については図6参照)に取り付けられている。 ノズル掛け1は、ノズル掛け本体10と、上部カバー20(第二の覆い部)と、下部カバー30(第三の覆い部)と、上部カバー20を回動自在に支持しているブラケット40を有している。そしてノズル掛け1は、給油装置2のハウジング50に取り付けられている。 【0024】 図1、図2において、ノズル掛け2はノズル掛け本体10を有しており、ノズル掛け本体10には上部ホルダー部11が形成されており、給油ノズル3の先端に設けられた吐出管が上部ホルダー部11に挿入され支持される(図5参照)。 ノズル掛け2はノズルスイッチ部12を有しており、ノズルスイッチ部12は上部ホルダー部11より下方に位置しており、給油ノズル3の掛け外しに応じて移動するスイッチ作動レバー12Tが設けられている。スイッチ作動レバー12Tは、給油ノズル3が係止されていない状態では図1、図2で示すようにノズル掛け本体10から突出するが、給油ノズル3が係止されている状態(図5参照)ではノズル掛け本体10内に収容されている。 図1、図2において、ノズル掛け2には下部ホルダー部13が設けられており、下部ホルダー部13はノズルスイッチ部12より下方に位置しており、給油ノズル3のレバーガード5を保持する機能を有している。 図1において、上部ホルダー部11はU字状の壁14を備えており、当該U字状の壁14は給油ノズル3の吐出管を案内する機能を有しており、以って、給油ノズル3の吐出管が上部ホルダー部11内へスムーズに挿入される。 【0025】 図3で示すように、上部カバー20は断面U字形状であり、ノズル掛け本体10のU字状の壁14(図1参照)を覆うようになっている。 図3、図4において、上部カバー20の一端には取り付け部21が設けられている。そして図3で示すように、上部カバー20は内側に曲折している曲折部22を有しており、上部カバー20の取り付け部21とは反対側の端部には切欠23が形成されている。 そして図4で示すように、上部カバー20の取り付け部21側端部近傍(図4の上端部近傍の内側(図4では上部カバー20の右側)には、緩衝材(シール材)24が設けられている。 図3、図4において、曲折部22と切欠23の間には、給油ノズル3の吐出管を挿入するための開口部20Pが設けられている。 【0026】 図4で示すように、上部カバー20は曲折部22を設けられており、開口部20Pは曲折部22よりも切欠23側の領域に設けられており、開口部20Pは下側に開放しているので、雪は上部ホルダー部11内へ侵入し難くなっている。 これに加えて、緩衝材24がシール材としての役割もするので、上部カバー20とノズル掛け本体10との隙間から雪が侵入することも防止できる。 ここで緩衝材24は、上部カバー20が回動してノズル掛け本体10に当接(衝突)する際に、その衝撃を緩和する作用を奏する。 【0027】 図3?図5に示すように、上部カバー20の端部(下方の端部)に切欠23が形成されているので、上部カバー20が閉じたときに、上部カバー20の袖部25(上部カバー20のノズル掛け本体10側の縁部)がノズル掛け本体10におけるU字状の壁14の上縁14U(給油装置1のハウジング50から離隔する側の縁部)を完全に覆うことができる。 そのため、上部カバー20の袖部25とノズル掛け本体10におけるU字状の壁14に隙間が形成されてしまうことが無く、当該隙間を介して上部カバー20の側面からノズル掛け1内に雪が侵入してしまうことが防止できる。 【0028】 下部カバー30は、図1で示すように概略T字状に構成されており、図2で示すようにノズルスイッチ部12を覆う位置(図2ではノズルスイッチ12の左側)に設けられており、ノズルスイッチ部12を覆う程度の寸法に形成されている。以って、下部カバー30によりノズルスイッチ部12を覆い、ノズルスイッチ部12に雪が侵入することを防止し、ノズルスイッチ部12の摺動部の凍結を防止して、ノズルスイッチ部12の作動の信頼性を向上している。 そして下部カバー30は、変形及び復元可能な材料、例えばゴム、板バネ等の弾性材で構成されている。 下部カバー30にはリベット穴31が形成されており、リベット穴31に樹脂リベット32を挿入することにより、下部カバー30はノズル掛け本体10に固定される。 【0029】 図1において、ノズル掛け本体10の左側にはブラケット40が示されている。 ブラケット40には上部開口41と下部開口42が形成されている。上部開口41は、ノズル掛け本体10の上部ホルダー部11と対応する位置に形成されている。そして下部開口42は、ノズルスイッチ部12と対応する位置に形成されている。 ここで上部カバー20を回動自在に支持するため、ブラケット40の上端には軸受部43が設けられている。 そして、ブラケット40の上部開口41の上縁及び下縁には、折り曲げ片44を設けている。 さらに、ブラッケト40の下端と上部開口41の上端には長孔45が形成され、上部開口41と下部開口42の間の領域には長孔46が開けられている。ここで、長孔45の長手方向の一端が開放されているが、長孔46は長手方向両端が閉じている。 【0030】 図1において、ブラケット40の左側には給油装置2のハウジング50(の一部)が示されている。 図1で示すハウジング50(の一部)には上部開口41及び下部開口42が形成されており、上部開口51はブラケット40の上部開口41に対応する位置に形成され、下部開口52はブラケット40の下部開口42に対応する位置に形成されている。 さらに、図1で示すハウジング50(の一部)にはビス穴53が形成されており、ビス穴53はブラケット40の長孔45及び長孔46と対応する位置に穿孔されている。 【0031】 給油装置2のハウジング50にノズル掛け1を取り付けるに際しては、ブラケット40の上部開口41にノズル掛け本体10の上部ホルダー11を挿入し、ブラケット40の下部開口52にノズル掛け本体10のノズルスイッチ部12を挿入して、ブラケット40の折り曲げ片44をノズル掛け本体10の凹部15(図2参照)に係合し、以って、ブラケット40とノズル掛け本体10を一体化する。 次に、ブラケット40とノズル掛け本体10を一体化した状態で、給油装置2のハウジング50の上部開口51にブラケット40の上部開口41を整合し、ハウジング50の下部開口52にブラケット40の下部開口42を整合する。そして、ハウジング50のビス穴53と、ブラケット40の長孔45が整合した状態で、取り付けボルト54(あるいはビス)をビス穴53、長孔45に挿通して、ノズル掛け本体10の雌ネジ16に螺合する。それにより、一体化されたブラケット40とノズル掛け本体10は、給油装置2のハウジング50に固定される。 その後、ノズルスイッチ部12の導線を給油装置2の図示しない制御部に接続する。 【0032】 次に、ブラケット40の軸受部43に上部カバー20の取り付け部21を取り付ける。軸受部43に上部カバー20の取り付け部21を取り付けるに際しては、ビス26-1、ワッシャ26-2、26-4、カラー26-3を用いる。ブラケット40の軸受部43側のワッシャ26-2は省略可能である。 ここで本明細書及び図面では、ビス26-1、ワッシャ26-2、26-4、カラー26-3を、全体的に符号26で表現する場合がある。 このように取り付けることにより、上部カバー20は、ビス26-1の軸部及びカラー26を回転軸として軸受部43に支持されることになり、上下方向(図2の矢印R方向)にスムーズに回動することができる。 【0033】 また、下部カバー30をノズルスイッチ部12に当て、リベット穴31に挿入した樹脂リベット32をノズル掛け本体10のリベット穴36に挿入して固定する。 そして、上部カバー20に、油種を表示する表示部材(ステッカー)27を貼着する。 【0034】 次に、ノズル掛け1から給油ノズル3を掛け外し操作を説明する。 ノズル掛け1に掛けられている給油ノズル3(図5で示す状態の給油ノズル3)を外す際には、給油ノズル3を持って手前(ノズル掛け本体10から離隔する方向)に引っ張ると、給油ノズル3が上部カバー20に当接し、上部カバー20は垂直方向上方へ回動する。そのため、給油ノズル3はノズル掛け1から容易に外れる。 ここで、給油作業を行う作業者の手により、上部カバー20を上方に回動して、給油ノズル3を上部カバー20と当接させること無く、ノズル掛け1から外しても良い。 給油ノズル3がノズル掛け1から外されると、図1、図2で示すように、スイッチ作動レバー12Tはノズル掛け本体10から突出する。ここで、下部カバー30は可撓性及び弾性を有する材料で構成されているので、給油ノズル3をノズル掛け1から外してスイッチ作動レバー12Tが(ノズル掛け本体10から)突出すると、スイッチ作動レバー12Tに沿って湾曲して、スイッチ作動レバー12を覆った状態に変位する。 ノズル掛け1から給油ノズル3が外されると、レバーガード5(図5参照)による押圧が解かれて下部カバー30は図1、図2で示す状態に復位し、ノズルスイッチ部12が閉じて制御装置へ給油信号が伝わり、給油装置2は駆動状態となり給油が行なわれる。 【0035】 給油が終わり、給油ノズル3をノズル掛け1に係止させる際には、給油ノズル3の吐出管を、上部カバー20の開口部20Pを介して、上部ホルダー部11に挿入して、給油ノズル3をノズル掛け1に係止する。 その際に、給油作業を行う作業者の手により、上部カバー20を上方に回動して、給油ノズル3の吐出管が上部カバー20と衝突することを未然に防止することが出来る。あるいは、給油ノズル3の吐出管を上部カバー20の開口部20Pに挿入した状態で、給油ノズル3の吐出管を上方に移動して、上部カバー20を回動しても良い。 給油ノズル3がノズル掛け1に係止されると(図5参照)、スイッチ作動レバー12Tはレバーガード5に押圧されてノズル掛け本体10内に収容される。ここで、下部カバー30は可撓性及び弾性を有する材料で構成されているので、その弾性により下部カバー30はスイッチ作動レバー12T及びノズルスイッチ部12を覆うように復位する。その際に、給油ノズル3をノズル掛け1に係止する際に下部カバー30が抵抗となることはない。 そして給油ノズル3をノズル掛け1に係止することにより、ノズルスイッチ部12が開いて制御装置へ終了信号が伝わり、給油装置2は停止状態となる。 【0036】 図示の第1実施形態では、給油ノズル3の上部ホルダー部11は上部カバー20により覆われるので、上部ホルダー部11に侵入した雪が給油ノズル3の吐出管内にも侵入して、凍結してしまうことが防止される。そのため、凍結した雪により、給油時に燃料油が吐出されなくなってしまう恐れがなくなる。 また、給油ノズル3の吐出管先端に設けられている空気流路管(図示せず)に雪が侵入して凍結することもなく、空気流路管が凍結した雪で閉塞されて、閉弁機構が正常に作動しなくなることも防止される。そのため、給油作業に支障を来たすことが無い。 そして、上部カバー20に覆われることにより、ノズル掛け1に係止された給油ノズル3は雪、風雨、外光(紫外線を含む太陽光等)から遮断されるので、劣化が防止される。 さらに、ノズルスイッチ部12が下部カバー30に覆われているので、ノズルスイッチ部12に雪が侵入することが防止され、ノズルスイッチ部12の摺動部の凍結が防止され、ノズルスイッチ部12の作動の信頼性を向上することが出来る。 【0037】 ここで、ブラッケト40に対して上部カバー20が垂直方向上方へ回動可能(矢印R方向に回動可能)に取り付けられているので、上部カバー20を回動することにより、上部カバー20と給油ノズル3(あるいは吐出管)が干渉すること無く、給油ノズル3を掛け外すことができる。 また、下部カバー30は可撓性及び弾性を有する材料で構成されているので、給油ノズル3をノズル掛け1に係止する際に撓み、抵抗となることはない。そして給油ノズル3をノズル掛け1から外した際には、ノズルスイッチ部12を覆う位置に復位する。 【0038】 図示の第1実施形態では、上部カバー20に切欠23が形成されているので、上部カバー20が回動してノズル掛け本体10に当接する際の衝撃を和らげることができる。また切欠23が形成されているので、上部カバー20の袖部25がノズル掛け本体10のU字状の壁14の浄苑14Uを確実に覆い、上部カバー20の側面から雪が侵入することを防止出来る。 さらに、上部カバー20内に設けた緩衝材24がシール材として作用するので、雪の侵入を防止することができる。それと共に緩衝材24により、上部カバー20が回動してノズル掛け本体10に当接する際の衝撃を和らげることができる。 【0039】 例えば上部カバー20が損傷した場合や、その他の理由(例えば、降雪期の終了)により上部カバー20を交換する場合には、上部カバー20を取り外す必要がある。その際には、ブラケット40の軸受部43に上部カバー20の取り付け部21を回転自在に支持している部材26(ビス26-1、カラー26-3等)を外して行なう。 ここで、図6に示す給油装置2の左側におけるノズル掛け1のように、ノズル掛け1同士が近接して設けられている場合は、ビス26-1とカラー26-3を外すことが容易ではない。ビス26-1を回転するための部材(電動工具等)を配置するスペースがないからである。 【0040】 これに対して図示の実施形態では、ブラケット40と給油装置2のハウジング50との取り付けは、長孔45、46にボルト54を挿通することにより行われているので、ブラケット40と給油装置2のハウジング50とは、長孔45、46の長手方向(上下方向)の分だけ相対移動することが出来る。そのため、上部カバー20を取り外す側のブラケット40を(長孔45、46の長手方向の分だけ)垂直方向上方へスライドさせることが可能であり、そのようなスライドを行えば、隣接したノズル掛け1と干渉すること無く、ビス26-1を回転するための部材(電動工具等)を配置して、ビス26-1の回転、ビス26-1とカラー26-3の取り外し、上部カバー20の取り外しを行うことが出来る。 なお、長孔46を挿通したビス54でブラケット40が止められているので、ブラケット40の移動は制限され、抜け落ちてしまうことは無い。 【0041】 次に図7を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。 第2実施形態では、上部カバー20(第二の覆い部)と下部カバー30(第三の覆い部)に代えて、第一の覆い部60を設けている。 図7から明らかなように、第一の覆い部60は、上部カバー20としての作用と下部カバー30としての作用を同時に奏するように構成されている。 なお、図7において、図1?図6の第1実施形態と同様な部材には、同様な符号を付して説明する。 【0042】 図1?図6の第1実施形態に係るノズル掛けと同様に、図7で示すノズル掛け1もノズル掛け本体10とブラケット40を備えており、給油装置2のハウジング50に取り付けられる。そして図7で示すノズル掛け1は、第一の覆い部60を有している。 ノズル掛け本体10には、給油ノズル3の吐出管が保持される上部ホルダー部11が形成され、該上部ホルダー部11より下方に位置して給油ノズル3の掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部12が配置され、該ノズルスイッチ部12より下方に位置して給油ノズル3のレバーガード5を保持する下部ホルダー部13が設けられている。 【0043】 ブラッケト40の軸受部43に第一の覆い部60の取り付け部61が回動可能に取り付けられている。 ここで、第一の覆い部60はノズル掛け本体10に対して垂直方向上方に回動可能に取り付けられる。 【0044】 図7に示すように、第一の覆い部60はノズル掛け本体10の大部分を覆うようになっている。 そして第一の覆い部60はノズルスイッチ部12を覆っているので、下部カバー30を設けていない。 図7では明示されていないが、ノズルスイッチ部12の保護(防雪)をより確実に行うために、図1?図6の第1実施形態と同様に、下部カバー30(第三の覆い部)を別途設けても良い。 図7の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1?図6の第1実施形態と同様である。 【0045】 図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。 【符号の説明】 【0046】 1・・・ノズル掛け 2・・・給油装置 3・・・給油ノズル 5・・・レバーガード 10・・・ノズル掛け本体 11・・・上部ホルダー部 12・・・ノズルスイッチ部 12T・・・スイッチ作動レバー 13・・・下部ホルダー部 20・・・上部カバー(第二の覆い部) 24・・・緩衝材(シール材) 30・・・下部カバー(第三の覆い部) 40・・・ブラケット 41・・・上部開口 42・・・下部開口 43・・・軸受部 44・・・折り曲げ片 45、46・・・長孔 50・・・ハウジング 51・・・上部開口 52・・・下部開口 60・・・第一の覆い部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 給油ノズル(3)の吐出管が保持される上部ホルダー部(11)と、該上部ホルダー部(11)より下方に位置して給油ノズル(3)の掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部(12)と、該ノズルスイッチ部(12)より下方に位置して給油ノズル(3)のレバーガード(5)を保持する下部ホルダー部(13)とを具備したノズル掛け本体(10)を有する給油装置のノズル掛けにおいて、前記上部ホルダー部(11)に対向する位置に第二の覆い部(20)を備え、前記第二の覆い部(20)は断面U字形状であり、ノズル掛け本体(10)のU字状の壁(14)を覆うようになっており、前記第二の覆い部(20)は内側に弯曲している曲折部(22)を有し、該曲折部(22)の端には切欠(23)が形成されていることを特徴とする給油装置のノズル掛け。 【請求項2】 給油ノズル(3)の吐出管が保持される上部ホルダー部(11)と、該上部ホルダー部(11)より下方に位置して給油ノズル(3)の掛け外しに応じて作動するノズルスイッチ部(12)と、該ノズルスイッチ部(12)より下方に位置して給油ノズル(3)のレバーガード(5)を保持する下部ホルダー部(13)とを具備したノズル掛け本体(10)を有する給油装置のノズル掛けにおいて、前記ノズルスイッチ部(12)に対向する位置にノズルスイッチ部(12)を覆う寸法に形成された第三の覆い部(30)を備え、前記第三の覆い部(30)はT字状であり、変形又は復元可能に構成され、ノズル掛け本体(10)に取付けられていることを特徴とする給油装置のノズル掛け。 【請求項3】 (削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-05-17 |
出願番号 | 特願2013-155718(P2013-155718) |
審決分類 |
P
1
651・
853-
YAA
(B67D)
P 1 651・ 851- YAA (B67D) P 1 651・ 121- YAA (B67D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 北村 一 |
特許庁審判長 |
新海 岳 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 前田 浩 |
登録日 | 2015-02-27 |
登録番号 | 特許第5700308号(P5700308) |
権利者 | 株式会社タツノ |
発明の名称 | 給油装置のノズル掛け |
代理人 | 特許業務法人高橋特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人高橋特許事務所 |