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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1319171
異議申立番号 異議2015-700011  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-08-25 
確定日 2016-06-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5712369号発明「ヘアセット剤およびヘアセット剤の使用方法。」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5712369号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。 特許第5712369号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5712369号に係る発明は、平成19年5月11日に特許出願され、平成27年3月20日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人 野村一郎(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成27年12月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年3月2日に意見書の提出及び訂正の請求があったものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。
ア 請求項1の「…ことを特徴とする増量ヘアセット剤。」を、
「…ことを特徴とする乾燥して被膜を形成する増量ヘアセット剤。」に訂正する。
イ 請求項2の「…ことを特徴とする増量ヘアセット剤。」を、
「…ことを特徴とする乾燥して被膜を形成する増量ヘアセット剤。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項a並びにbとも、それぞれ本件請求項1並びに2に係る増量へアセット剤において、これが乾燥して被膜を形成するものであることに限定するものである。この訂正事項に関し、特許明細書の発明の詳細な説明には「本願発明のヘアセット剤は、…塗着後は暫くしてから乾燥して被膜を形成する」(【0010】)と記載されている。
そうすると、上記訂正事項a並びにbは、特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものといえ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1-2について訂正を認める。

3 特許異議の申立てについて
(1)本件の訂正後の請求項1-2に係る発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1-2に係る発明(以下、「本件発明1」-「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1-2に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
【請求項1】
「育毛料・養毛料として育毛料・養毛料の有効成分が水、低級アルコールのいずれか、もしくは水と低級アルコールの混合液に溶解できる性質のものから選ばれる少なくとも1種以上の成分と樹脂2.5?35質量部と溶剤として少なくとも1質量部以上の低級アルコールを含有してなる内溶原液に、噴射剤として少なくともジメチルエーテルを含有したヘアセット剤に、増量剤として黄酸化チタン、ベンガラ、黒酸化鉄、着色酸化鉄(有色酸化鉄)、紺青、酸化クロム、群青、カーボンブラック、アンバー、カラミン、フミン酸、墨汁、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、セリライト、雲母チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミマグネシウム、硫酸カルシウム、チョーク粉、軽石粉、真珠粉、蚕繭粉、粉末結晶セルロース、羊毛粉、綿繊維粉、発泡スチロール樹脂粉末、ユリア樹脂微粉末の少なくとも1種類以上を0.1?15質量部を含むことを特徴とする乾燥して被膜を形成する増量ヘアセット剤。」
【請求項2】
「育毛料・養毛料として育毛料・養毛料の有効成分が水、低級アルコールのいずれか、もしくは水と低級アルコールの混合液に溶解できる性質のものから選ばれる少なくとも1種以上の成分と樹脂2.5?35質量部と溶剤として精製水を1?96.5質量部および少なくとも1質量部以上の低級アルコールを含有してなる内溶原液に、噴射剤として少なくともジメチルエーテルを含有したヘアセット剤に、増量剤として黄酸化チタン、ベンガラ、黒酸化鉄、着色酸化鉄(有色酸化鉄)、紺青、酸化クロム、群青、カーボンブラック、アンバー、カラミン、フミン酸、墨汁、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、セリライト、雲母チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミマグネシウム、硫酸カルシウム、チョーク粉、軽石粉、真珠粉、蚕繭粉、粉末結晶セルロース、羊毛粉、綿繊維粉、発泡スチロール樹脂粉末、ユリア樹脂徴粉末の少なくとも1種類以上を0.1?15質量部を含むことを特徴とする乾燥して被膜を形成する増量ヘアセット剤。」

(2)取消理由通知の概要
当審は平成27年12月28日付けで概要以下のとおりの取消理由を通知した。
「本件の請求項1-2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物1-3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

刊行物1:特開2007-63248号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平8-143434号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平8-168704号公報(甲第3号証)

(3)甲各号証に記載された事項
ア 甲第1号証(刊行物1)
a「【請求項1】
エタノールを20?80重量%、及び次の化学式で表されるポリエーテル変性シリコーンを0.01?50重量%含有する頭髪化粧料。
【化1】

式中、aは1?1000の数、b、cはそれぞれ0?1000の数、dは1?100の数、R^(1)、R^(2)はそれぞれ炭素数2?4のアルキレン基を示す。ただし、b=c=0ではない

【請求項3】
育毛及び/又は養毛剤である請求項1又は2のいずれかに記載する頭髪化粧料。
【請求項4】
さらに有効成分として、塩酸ピリドキシン、β-グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、サリチル酸、酢酸dl-α-トコフェロール、モノニトログアヤコールナトリウム、ニコチン酸ベンジル、イノシット、セファランチン、塩酸ジフェンヒドラミン、ミノキシジル、ミノキシジル類縁体、ペンタデカン酸グリセリル、塩化カプロニウム、ビオチン、エチニルエストラジオール、ヒノキチオール、トウキンセンカエキス、オウゴンエキス、オウレンエキス、オウバクエキス、センブリエキス、ヒアルロン酸ナトリウム又はコラーゲンの少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載する頭髪化粧料。」
b「【0010】
本発明の頭髪化粧料の望ましい用途として育毛剤及び/又は養毛剤を挙げることができる。育毛剤や養毛剤は、通常、有効成分を溶解させ、頭髪や頭皮への浸透性を高めるためにアルコール含有量が高いからである。
【0011】
本発明の頭髪化粧料には、通常の育毛・養毛剤に配合され得る有効成分を配合することができるが、このうち、塩酸ピリドキシン、β-グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、サリチル酸、酢酸dl-α-トコフェロール、モノニトログアヤコールナトリウム、ニコチン酸ベンジル、イノシット、セファランチン、塩酸ジフェンヒドラミン、ミノキシジル、ミノキシジル類縁体、ペンタデカン酸グリセリル、塩化カプロニウム、ビオチン、エチニルエストラジオール、ヒノキチオール、トウキンセンカエキス、オウゴンエキス、オウレンエキス、オウバクエキス、センブリエキス、ヒアルロン酸ナトリウム又はコラーゲンの少なくとも1種以上を含有することが好ましい。これらの有効成分の配合量としては、0.0001?10重量%が好ましい。
【0012】
また、本発明の頭髪化粧料には、通常の頭髪化粧料に配合され得る前記以外の一般的な有効成分や基剤成分を、効果を損なわない限りにおいて配合することができる。本発明に使用される薬効成分は末梢血管拡張剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、皮脂分泌抑制剤、抗男性ホルモン剤、植物抽出物等公知の成分で良いが、好ましい成分として、末梢血管拡張剤ではdl-α-トコフェロール、l-メントール、γ-アミノ酪酸誘導体、カンタリスチンキ、カンフル、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、ニコチン酸アミド、ニコチン酸、ノニル酸バニリルアミド、ビタミンE類、朝鮮ニンジンエキスが挙げられ、細胞賦活剤ではD-パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、塩化メキシレチン、オーキシン、感光素301、パントテン酸、パントテン酸カルシウム、プラセンタエキス、ヨウ化ニンニクエキス、抗炎症剤ではアラントイン、トウガラシチンキ、酢酸ヒドロコルチゾンが挙げられ、皮脂分泌抑制剤ではレゾルシン、ふけ防止剤ではイソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ピロクトンオラミンが挙げられ、抗男性ホルモン剤ではオキセンドロン、酢酸シプロテロン、エストロンが挙げられ、植物抽出物ではアロエ、イチョウ、オトギリソウ、カンゾウ、カンタリスチンキ、クララ、サンショウ、シラカバ、チョウジ、デューク、ニンジン、ニンニク、ヨモギの抽出物や、海藻抽出物などが挙げられる。これらの成分はそれぞれ単独で使用しても良いし、2種以上を組合せて使用しても良い。植物抽出物の製法は特に限定する必要はなく公知の方法により製造される。その抽出溶媒も特に制限はなく、水、アルコール、エーテル、クロロホルム、プロピレングリコール、ブチレングリコール等通常抽出に使用される溶媒で良い。これら薬効成分の配合量はその成分の効果により異なり、通常これらの成分が頭髪化粧料に配合される量で良いが、特に好ましい量は0.0001?10重量%である。」
c「【0013】
さらに、本発明の頭髪化粧料には、通常の頭髪化粧料の基剤成分である加脂剤、毛髪保護剤、乳化剤、保湿剤、高分子類、紫外線吸収剤、金属封鎖剤、溶剤、pH調節剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、防腐剤、香料などを配合して良い。…

【0024】
天然の水溶性高分子としては、例えば、アラアビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子が挙げられる。
【0025】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子が挙げられる。
【0026】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000 等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等の共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオン化ポリマー等が挙げられる。
無機の水溶性高分子としては、例えば、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガム)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等が挙げられる。」
d「【0037】
処方例
以下に本発明の頭髪化粧料の処方例を示す。配合量%は、重量%を示す。

【0041】
[処方例5]スタイリングスプレー
<原液>
エタノール 25
ABN SILWET FZ-2222 2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.3
l-メントール 0.5
酢酸トコフェロール 0.1
β-グリチルレチン酸 0.05
イノシット 0.02
トウキンセンカエキス 0.5
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
クエン酸 0.1
アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル重合物 3
精製水 残(合計70)
<噴射剤>
液化石油ガス 18
ジメチルエーテル 12」
イ 甲第2号証(刊行物2)
a「【請求項1】 未着色粉末体10?50wt%と、着色剤0.2?10wt%と、糊剤2?30wt%と、他に必要あれば、水、溶剤、油剤、粉末剤、増粘剤、安定剤、界面活性剤、滑沢剤、保湿剤、髪質改良剤、紫外線吸収剤、酸アルカリ剤、pH調整剤、イオン封鎖剤、香料、の一種または二種以上とを調合してなる染毛料。
【請求項2】 請求項1で調合した薬液を原液とし、原液100重量部に対し、8?180重量部の噴射剤の一種または二種以上とを配合してなる請求項1記載の染毛料。」
b「【0006】…未着色粉末体とは、白色(透明、微褐色、帯黄白色など白を基調として不純物また汚れによる着色をしているものを含む)ないし灰色を呈している粉末で、従来の常識からいって、頭髪の染毛のために配合の考えられなかった原料である。無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、セリライト、雲母チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミマグネシウム、硫酸カルシウム、チョーク粉、軽石粉、真珠粉、蚕繭粉、粉末結晶セルロース、胡粉、羊毛粉、綿繊維粉、スターチ、発泡スチロール樹脂粉末、ユリア樹脂微粉末、等。
【0007】着色剤とは、頭髪を希望の色調に染色するための染料及び/又は顔料である。(現今は、粉砕技術が格段に進歩し、顔料を超微粉砕して染料の如く取り扱われるものも開発されている。)
法定色素(タール色素)<医薬品等に使用のできるタール色素、厚生省令による。>例:赤色2号、青色203号、黄色402号、褐色201号、緑色401号、紫色401号、黒色401号、等。
顔料:黄酸化チタン、べンガラ、黒酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、カーボンブラック、カラミン、アンバー、フミン酸、墨汁、等。
天然色素:<この範疇には食品の着色剤として許可されたものが多い>カロチン、クェルセチン、ラッカイン酸、クロロフィリン、ベタニン、カカオ色素等。クルクミン、カルミン酸、グロブリン、烏賊墨、等。
医薬品等公定書に記載された着色剤:塩酸ベルベリン、リボフラビン、銅クロロフィリンNa、へマティン、へマチン、アズレン、等。
なお、着色補助剤として、みょうばん、硫酸アルミニウム、硫酸鉄が併用される場合がある。
【0008】糊剤とは、頭髪をまとめるセッティングの役目をする薬剤であるが、本発明の場合上記の着色剤でもって着色された未着色粉末体を毛髪にともに固定する作用効果をする。例として、ふのり、天然ガム、エステルガム、変性スターチ、ミルクカゼイン、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル樹脂アルカノールアミン液、メトキシエチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリメタクリ酸エステル、酢酸ビニル・クロトン酸共重合物、カルボキシ変性酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。

【0012】滑択剤としては特に限定されず、例えば、ポリグリセリン、シリコーン、変性シリコーン、ロジン等が挙げられる。保湿剤としては特に限定されず、例えば、グリセリン、ピロリドンカルボン酸ソーダ、キト酸、ポリエチレングリコール、アロエエキス、ニンジンエキス、センブリエキス等が挙げられる。…」
c「【0026】実施例-3
黒色401号 1.00wt%
褐色201号 1.50
赤色230号 0.05
緑色4号 0.25
ビニルピロリドン/ 4.00
ジメチルアミノメタクリレート共重合体
タルク 33.00
メチルフェニルポリシロキサン 0.10
香料 0.10
政府所定99変性アルコール 60.00
合計 100.00
【0027】本品は、アルコール性液体であり、シラガの頭髪に塗布して黒褐色に着色する。シャンプーで洗えば除去するが、いくらかは毛髪に染着し、数度の処理により次第に黒褐色系に濃くなる。
【0028】実施例-4
原液 実施例-3にて作成したアルコール性液体 35.0wt%
ジメチルエーテル 65.0
合計 100.0
本例は、スプレー型エアゾールの例である。常法により、上記割合にてエアゾール耐圧缶に充填し、バルブ・ボタン・キャップを付して製品とする。」
ウ 甲第3号証(刊行物3)
a「【請求項1】 噴射用ガスによって、粉状又は短繊維状の擬似増毛材を毛髪用液状化粧料組成物とともに頭部に噴射することを特徴とする擬似増毛材の吹付け方法。」
b「【0078】本発明において、擬似増毛材を噴射するための噴射用ガス(第1の噴射用ガス)としては、フロン系ガス、代替フロン系ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル等を使用することができる。…これらの噴射用ガスは、単独あるいは二種以上を混合して使用することができるが、使用中の噴射圧力の低下が少なく、通常使用する温度領域において必要十分な噴射圧を呈するジメチルエーテルの単独使用が最も好ましい。
【0079】また、本発明において、毛髪用液状化粧料組成物を噴射するための噴射用ガス(第2の噴射用ガス)としては、上記の擬似増毛材の噴射用ガスと同様のガスを使用することができる。
【0080】また、本発明において使用し得る上記粉状又は短繊維状の擬似増毛材としては、人毛、羊毛、木綿、絹等の天然繊維又はその再生繊維、ナイロン、ビニロン、ポリエステル等の合成繊維又は炭素繊維であって、人毛色に類似した黒色等の色彩を有するもの又はその色彩を着色が可能なもの等が挙げられる。

【0083】上記擬似増毛材とともに噴射する毛髪用液状化粧料組成物としては、上記噴射用ガス等を用いて噴射が可能なものであれば特に制限されるものではないが、例えば、セットスプレー用組成物、育毛・養毛剤組成物、整髪料組成物等が挙げられる。
【0084】上記セットスプレー用組成物としては、例えば、フィルム形成剤成分として、カチオン性ポリマー、非イオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、両性ポリマーを一種または二種以上の混合物を含むものを使用することができる。
【0085】上記カチオン性ポリマーとしては、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル(ユニオンカーバイト製 商品名「ポリマーJR-400」)、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩(ISP製 商品名「ガフカット734」)等が挙げられる。
【0086】上記非イオン性ポリマーとしては、ポリビニルピロドン(BASF製 商品名「ルビスコールKシリーズ」)、ポリビニルピロドン/酢酸ビニル共重合体(BASF製 商品名「ルビスコールVAシリーズ」)等が挙げられる。
【0087】上記アニオン性ポリマーとしては、アクリル樹脂アルカノールアミン液(互応化学製 商品名「プラスサイズL-53PB」)、酢酸ビニル・クロトン酸共重合体(ヘキストジャパン製 商品名「Aristflex A60 」)等が挙げられる。
【0088】上記両性ポリマーとしては、N-メタクリロイルエチルN,N’-ジメチルアンモニウム・α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸ブチル共重合体(三菱油化製 商品名「ユカフォーマー AM-75」)等が挙げられる。…」

(4)対比・判断
ア 本件発明1
a 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証(上記(3)アb)に記載された「有効成分」や「薬効成分」は、各化合物、及び「植物抽出物の製法は特に限定する必要はなく公知の方法により製造される。その抽出溶媒も特に制限はなく、水、アルコール…等通常抽出に使用される溶媒で良い。」との記載からみて、本件発明1の「育毛料・養毛料として育毛料・養毛料の有効成分が水、低級アルコールのいずれか、もしくは水と低級アルコールの混合液に溶解できる性質のものから選ばれる少なくとも1種以上の成分」に相当する。甲第1号証(上記(3)アa、d)に記載された「ポリエーテル変性シリコーン」、「ABN SILWET FZ-2222」、「アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル重合物」は、本件発明1の「樹脂」に相当する。そして、その配合量は、上記(3)アaの規定、及び同dの記載からみて、本件発明1の樹脂の配合量と重複する。甲第1号証(上記(3)アa、d)に記載された「エタノール」は本件発明1の「低級アルコール」に相当する。そして、その配合量は、上記(3)アaの規定、及び同dの記載からみて、本件発明1の低級アルコールの配合量と重複する。また、甲第1号証の実施例(上記(3)アd)では、噴射剤としてジメチルエーテルが使用されている。
そうすると、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「育毛料・養毛料として育毛料・養毛料の有効成分が水、低級アルコールのいずれか、もしくは水と低級アルコールの混合液に溶解できる性質のものから選ばれる少なくとも1種以上の成分と樹脂2.5?35質量部と溶剤として少なくとも1質量部以上の低級アルコールを含有してなる内溶原液に、噴射剤として少なくともジメチルエーテルを含有したヘアセット剤。」
そして、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は「増量」ヘアセット剤であり、増量剤として黄酸化チタン、ベンガラ、黒酸化鉄、着色酸化鉄(有色酸化鉄)、紺青、酸化クロム、群青、カーボンブラック、アンバー、カラミン、フミン酸、墨汁、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、セリライト、雲母チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミマグネシウム、硫酸カルシウム、チョーク粉、軽石粉、真珠粉、蚕繭粉、粉末結晶セルロース、羊毛粉、綿繊維粉、発泡スチロール樹脂粉末、ユリア樹脂微粉末の少なくとも1種類以上を0.1?15質量部を含むのに対し、甲1発明には、係る増量剤に相当する物の添加について記載がない点。
<相違点2>
本件発明1は「乾燥して被膜を形成する」剤であるのに対し、甲1発明は乾燥して被膜を形成するものであるか否か明らかでない点。

b 相違点についての検討
相違点2に関し、甲第1号証には「ABN SILWET FZ-2222」のような「ポリエーテル変性シリコーン」と併せて、「アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル重合物」を用いてヘアセット剤を製造することが記載されており(上記(3)アd)、これらは一見本件発明1の「樹脂」に相当するように見受けられる。
本件発明1が「増量へアセット剤」に係るものであることを踏まえると、本件発明1の「乾燥して被膜を形成する」とは、本件明細書【0010】に「本願発明のヘアセット剤は、頭皮に塗着させる必要があるがヘアセット剤はその性質上、当然のことながら塗着後は暫くしてから乾燥して被膜を形成する」と記載されるように、増量へアセット剤中に含まれる「樹脂」が頭皮に塗着することにより構成されるものである。
しかし、甲第1号証における「樹脂」成分が上記本件発明1のように「頭皮に塗着」して「乾燥して被膜を形成する」ものであることは明らかでなく、また、これらのうち「ポリエーテル変性シリコーン」については「0.01?50重量%含有する」ものとはいえ、これをヘアセット剤として使用した際に「乾燥して被膜を形成する」ように用いることの記載ないし示唆は存在しない。そして、「アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル重合物」については、実施例(上記(3)アd)において3重量%用いられているに過ぎず、これによってヘアセット剤として使用した際に「頭皮に塗着」して「乾燥して被膜を形成する」ことを意図していたということはできず、その余の発明の詳細な説明においても、「アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル重合物」を用いることの意図について何ら記載も示唆もされていない。
加えて、甲第2号証においても、本件発明1の「樹脂」に相当するように見受けられる「ビニルピロリドン/ジメチルアミノメタクリレート共重合体」や「メチルフェニルポリシロキサン」が用いられている(上記(3)イc)。しかし、甲第2号証では「メチルフェニルポリシロキサン」は滑択剤として認識されており(上記(3)イb)、「ビニルピロリドン/ジメチルアミノメタクリレート共重合体」は「糊剤」として認識されているように見受けられるが、「糊剤とは、頭髪をまとめるセッティングの役目をする薬剤であるが、本発明の場合上記の着色剤でもって着色された未着色粉末体を毛髪にともに固定する作用効果をする。」(上記(3)イb)と記載されるように、精々頭髪に塗着することを意図しており、本件発明1のように「頭皮に塗着」して「乾燥して被膜を形成する」ものとして認識されていたと解することはできない。
さらに、甲第3号証においても、「フィルム形成剤成分」を含みうることは記載されている(上記(3)ウb)ものの、本件発明1のように「頭皮に塗着」して「乾燥して被膜を形成する」ものとして認識されていたと解することはできない。
このため、仮に甲1発明に甲第2号証や甲第3号証に記載された技術的事項を組み合わせることができたとしても、本件発明1のような「乾燥して被膜を形成する」剤を構成することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

c 小括
してみると、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲第1-3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2
本件発明2は、本件発明1における「溶剤として少なくとも1質量部以上の低級アルコールを含有してなる」との点を、「溶剤として精製水を1?96.5質量部および少なくとも1質量部以上の低級アルコールを含有してなる」とし、溶剤成分をさらに追加したものであるところ、前記甲1発明と対比した場合に、本件発明1において認定した相違点2は、本件発明2においてもそのまま認定できる。
そして、相違点2については上記(4)アbで検討したとおりであり、したがって、本件発明2は、本件発明1と同様に、甲第1-3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件発明1-2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
育毛料・養毛料として育毛料・養毛料の有効成分が水、低級アルコールのいずれか、もしくは水と低級アルコールの混合液に溶解できる性質のものから選ばれる少なくとも1種以上の成分と樹脂2.5?35質量部と溶剤として少なくとも1質量部以上の低級アルコールを含有してなる内溶原液に、噴射剤として少なくともジメチルエーテルを含有したヘアセット剤に、増量剤として黄酸化チタン、ベンガラ、黒酸化鉄、着色酸化鉄(有色酸化鉄)、紺青、酸化クロム、群青、カーボンブラック、アンバー、カラミン、フミン酸、墨汁、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、セリライト、雲母チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミマグネシウム、硫酸カルシウム、チョーク粉、軽石粉、真珠粉、蚕繭粉、粉末結晶セルロース、羊毛粉、綿繊維粉、発泡スチロール樹脂粉末、ユリア樹脂微粉末の少なくとも1種類以上を0.1?15質量部を含むことを特徴とする乾燥して被膜を形成する増量ヘアセット剤。
【請求項2】
育毛料・養毛料として育毛料・養毛料の有効成分が水、低級アルコールのいずれか、もしくは水と低級アルコールの混合液に溶解できる性質のものから選ばれる少なくとも1種以上の成分と樹脂2.5?35質量部と溶剤として精製水を1?96.5質量部および少なくとも1質量部以上の低級アルコールを含有してなる内溶原液に、噴射剤として少なくともジメチルエーテルを含有したヘアセット剤に、増量剤として黄酸化チタン、ベンガラ、黒酸化鉄、着色酸化鉄(有色酸化鉄)、紺青、酸化クロム、群青、カーボンブラック、アンバー、カラミン、フミン酸、墨汁、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、セリライト、雲母チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミマグネシウム、硫酸カルシウム、チョーク粉、軽石粉、真珠粉、蚕繭粉、粉末結晶セルロース、羊毛粉、綿繊維粉、発泡スチロール樹脂粉末、ユリア樹脂微粉末の少なくとも1種類以上を0.1?15質量部を含むことを特徴とする乾燥して被膜を形成する増量ヘアセット剤。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-06-13 
出願番号 特願2007-127365(P2007-127365)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 馳平 裕美光本 美奈子  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 大熊 幸治
齊藤 光子
登録日 2015-03-20 
登録番号 特許第5712369号(P5712369)
権利者 Re&Do株式会社
発明の名称 ヘアセット剤およびヘアセット剤の使用方法。  
代理人 藤本 英夫  
代理人 藤本 英夫  
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