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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A47L
管理番号 1319204
異議申立番号 異議2016-700502  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-01 
確定日 2016-08-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第5827431号発明「食器洗浄装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5827431号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5827431号の請求項1ないし7に係る特許(以下「本件特許」という。)に係る出願は,平成27年3月6日に出願され,平成27年10月23日に特許権の設定登録がなされたところ,平成28年6月1日に異議申立人長谷川将次郎により特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,うち請求項1は次のとおりのものである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などという。
【請求項1】
食器を洗浄する食器洗浄装置であって,
前記食器洗浄装置は,前記食器洗浄装置の入口から出口まで食器を搬送する搬送部と,
前記搬送部で搬送された食器に洗浄水を吹き付けることにより,食器を洗浄する少なくとも1つの主洗浄部と,
前記主洗浄部の前記洗浄水の温度および前記洗浄水に含有する洗剤の濃度を少なくとも制御する制御部と,
前記食器洗浄装置の外部から複数の洗浄モードのうち1つの洗浄モードが選択可能とされ,選択した洗浄モードの信号を,前記制御部に入力する入力部と,を少なくとも備え,
前記制御部は,前記複数の洗浄モードに応じて,前記洗浄水の設定温度および前記洗剤の設定濃度を少なくとも含む複数の洗浄条件が設定された条件設定部と,
前記入力部から入力された洗浄モードの信号に基づいて,前記条件設定部の前記複数の洗浄条件から,入力された洗浄モードに応じた洗浄条件を選択する条件選択部と,
前記条件選択部で選択された洗浄条件の前記洗浄水の設定温度および前記洗剤の設定濃度となるように,前記洗浄水の温度および前記洗剤の濃度を制御する制御実行部と,を備え,
前記主洗浄部は複数であり,複数の主洗浄部は,前記搬送部で食器が搬送される搬送方向に沿って,前記食器洗浄装置の入口から順に配置されており,
前記条件設定部は,前記主洗浄部ごとに,前記複数の洗浄モードに応じて,前記洗浄水の設定温度および前記洗剤の設定濃度を少なくとも含む複数の洗浄条件を設定していることを特徴とする食器洗浄装置。

第3 異議申立ての理由の概要
異議申立人は,甲第1号証ないし甲第5号証(以下,証拠の番号に従って「甲1」などという。)を提出し,請求項1及び請求項2に係る本件特許は,特許法29条1項3号又は同法29条2項の規定に違反してなされたものであり,請求項3ないし7に係る本件特許は,同法29条2項の規定に違反してなされたものであるから,取り消すべき旨主張している。
甲1:特開2003-126000号公報
甲2:特開平10-248784号公報
甲3:特開平8-140916号公報
甲4:特開2004-290567号公報
甲5:特開2008-237773号公報

第4 異議申立ての理由について
1 甲1に記載された事項
甲1には,以下の事項が記載されている。
(1) 「【請求項1】 食器を,前洗浄ゾーン,本洗浄ゾーン,すすぎゾーン,及び乾燥ゾーンを順次に通過させ洗浄する食器洗浄機であって,
該すすぎゾーンのすすぎ水として軟水又は純水を切換え供給するすすぎ水切換手段を備えている,ことを特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】 該すすぎ水切換手段からのすすぎ水を少なくとも高温又は低温に切換え加熱する加熱手段を備えている,請求項1記載の食器洗浄機。
【請求項3】 該前洗浄ゾーンの運転をオン又はオフに切換える前洗浄オンオフ手段を備えている,請求項1又は2記載の食器洗浄機。
【請求項4】 該食器はコンベアに載せて移動され,このコンベアの移動速度を少なくとも高速又は低速に切換えるコンベア速度切換手段を備えている,請求項1から3までのいずれかに記載の食器洗浄機。
【請求項5】 該食器の種類に応じて,該すすぎ水切換手段,該加熱手段,該前洗浄オンオフ手段,及び該コンベア速度切換手段を制御する制御手段を備えている,請求項4記載の食器洗浄機。
【請求項6】 該制御手段に食器の種類を指令する切換スイッチを備えている,請求項5記載の食器洗浄機。
【請求項7】 該すすぎゾーンは,前すすぎゾーン及び本すすぎゾーンを備え,該食器の種類がグラス又はシルバーのときには,該すすぎ水切換手段により,本すすぎゾーンに純水が供給される,請求項1から6までのいずれかに記載の食器洗浄機。
【請求項8】 該食器の種類がグラスのときには,該加熱手段によるすすぎ水の温度が低温に設定される,請求項2から7までのいずれかに記載の食器洗浄機。
【請求項9】 該食器の種類がグラスのときには,該前洗浄オンオフ手段により前洗浄ゾーンの運転が停止される,請求項3から8までのいずれかに記載の食器洗浄機。
【請求項10】 該食器の種類がシルバーのときには,該コンベア速度切換手段により,コンベアの移動速度が低速に設定される,請求項4から9までのいずれかに記載の食器洗浄機。」(【特許請求の範囲】)

(2) 「本発明は,グラス,シルバー,その他一般食器などの,食器を洗浄するための食器洗浄機及び食器洗浄方法に関する。」(【0001】)

(3) 「限られた時間の中で大量の食器を,例えばホテル,レストランなどにおいて洗うためには,いわゆるコンベアタイプの食器洗浄機が用いられている。この食器洗浄機の典型例においては,食器の洗浄は,食器を収容したラックをコンベアに載せ,前洗浄ゾーン,本洗浄ゾーン,すすぎゾーン,そして乾燥ゾーンを順次に通過させることにより行われる。
食器の種類は大別して,グラス,シルバー,及びその他の一般食器に分けられる。通常これらの食器の洗浄は,一台の食器洗浄機により,異種類の食器を同じラック内に混在させ,あるいは種類毎にラックを分けて行われる。そして食器の汚れの程度などに応じて,適宜に洗浄水の温度,洗剤の種類及び量,洗浄の時間などが調整される。
しかしながら上述したとおりの形態の従来の食器洗浄機及び洗浄方法には,次のとおりの解決すべき問題がある。
(1)洗浄結果:食器は,一台の食器洗浄機により,数種類が一つのラックに混在され,あるいはラック毎に同じ種類にまとめられ,コンベアにより移動させて順次に洗浄されるので,前洗浄で落とされる食べ物の残りなどによる汚れが多いと,それが後から洗浄される他の食器に移ったり,食器の種類により適した洗浄の条件が異なるため,全ての食器に満足のいく洗浄結果を得るのが難しい。例えば,ナイフ,フォーク,スプーンなどのシルバーは,時間をかけてゆっくりと洗浄するのが望ましく,グラスは,乾燥仕上後に周知の斑点,いわゆるウオータスポットが残り易いので適切なすすぎが望まれる。
(2)手仕上げ:各洗浄ゾーンにおける洗浄水は,水温,洗剤濃度などの経済性の面から基本的には循環使用される。そこで,特に一般の食器に比べ汚れの程度の低いグラス,シルバーなどは,一般食器の洗浄後に洗浄されると綺麗になりにくく,洗浄後に磨き,場合によっては洗い直しが必要になる。グラスの場合は,上述の斑点の拭き取り,手洗い,追加磨きなどが必要になる。したがって,人手による手仕上げが必要になり,洗浄コストが高いものになる。
(3)前洗浄:本洗浄に先立つ前洗浄においては,できるだけ洗浄力の強い洗剤による強力な洗浄が望まれる。しかしながら,食器の種類によっては,例えばグラスの場合は洗浄力の強い洗剤は好ましくなくグラスに悪影響を与える。
(4)食器の種類毎の専用洗浄機:一台の食器洗浄機により種々の食器を,満足の行く仕上がりに,効率良く,余分の人件費をかけないで洗浄するのが難しいので,種々の食器を大量に洗浄するには,食器の種類に合わせて専用の食器洗浄機を設置せざるを得なくなる。しかしながらこの場合は,設置のスペースを含め高額な設備投資が必要になる。
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので,その技術的課題は,種々の大量の食器,特にグラス,シルバーを,一般の食器も含めて,きれいに,効率良く,仕上げに手間と時間をかけることなく,一台の食器洗浄機により洗浄することができるようにし,洗浄のコストダウンも図ることができるようにした,食器洗浄機及び食器洗浄方法を提供することである。」(【0002】?【0009】)

(4) 「・・・全体を番号2で示す食器洗浄機は,前洗浄ゾーン4,本洗浄ゾーン6,すすぎゾーン8,乾燥ゾーン10,及びラック12に収容された食器をこれらのゾーンの中を前洗浄ゾーン4の側から乾燥ゾーン10の方向に順次に移動通過させるコンベア14を備えている。
食器洗浄機2はまた,本発明に係る,すすぎゾーン8におけるすすぎ水の種類を切換えるすすぎ水切換手段16,切換えられたすすぎ水を加熱する加熱手段18,前洗浄ゾーン4の運転をオンオフする前洗浄オンオフ手段20,コンベア14の移動速度を変更するコンベア速度切換手段22,これらの手段を食器の種類に応じて制御する制御手段24,並びに制御手段24に食器の種類を指令する切換スイッチ26を備えている。食器洗浄機2には,洗浄水及びすすぎ水の供給源である給水源28が接続されている。
・・・前洗浄ゾーン4は,下部に設置され上方の開口した洗浄水タンク4a,洗浄水ヒータ4b,コンベア14の上下に配設された上噴射ノズル4c及び下噴射ノズル4d,洗浄水タンク4aに貯留された洗浄水を噴射ノズル4c,4dに供給するポンプ4e,並びに洗剤自動供給装置,洗浄水の浄化還元装置(いずれも図示していない)を備えている。・・・前洗浄ゾーン4においては,食器に付着した食べ物の残りが,上下の噴射ノズル4c,4dからの洗剤の入った温洗浄水のジェットにより洗い落とされる。
・・・本洗浄ゾーン6は,前洗浄ゾーン4と同様に下部に設置され上方の開口した洗浄水タンク6a,洗浄水ヒータ6b,上噴射ノズル6c,下噴射ノズル6d,洗浄水タンク6aに貯留された洗浄水を噴射ノズル6c,6dに供給するポンプ6e,並びに洗剤自動供給装置(図示していない)を備えている。・・・本洗浄ゾーン6においては,食器から全ての食べかすや汚れが,上下の噴射ノズル6c,6dからの洗剤の入った温洗浄水のジェットにより洗い落とされる。」(【0019】?【0023】)

(5) 「切換スイッチ26は,図5を参照して説明すると,ロータリースイッチで形成され,「グラス」「一般食器」「シルバー」の3位置を備え,選択された食器の種類を制御手段24に指令する。
制御手段24は,電磁リレースイッチ,マイクロコンピュータなどにより構成され,切換スイッチ26により選択された食器の種類に基づいて,下記のごとく,すすぎ水切換手段16,加熱手段18,前洗浄オンオフ手段20,及びコンベア速度切換手段22を制御する。
(1)すすぎ水切換手段:食器としてグラス又はシルバーが選択されたときには,すすぎ水切換手段16を,本すすぎゾーン32に純水を供給するように制御する。・・・食器として一般食器が選択されたときには,本すすぎゾーンに軟水を供給するように制御する。・・・
(2)加熱手段:食器としてグラスが選択されたときは,加熱手段18による本すすぎゾーン32へのすすぎ水の温度を「低温」に設定するするように制御する。・・・食器としてシルバー又は一般食器が選択されたときには,「高温」に設定する。
(3)前洗浄オンオフ手段:食器としてグラスが選択されたときには,前洗浄オンオフ手段20を前洗浄ゾーン4の作動を停止させるように制御する。・・・食器としてシルバー又は一般食器が選択されたときには,・・・前洗浄ゾーン4を作動させる。
(4)コンベア速度切換手段:食器としてシルバーが選択されたときは,コンベア速度切換手段22をコンベア14の移動速度を「低速」に設定するように制御する。・・・食器としてグラス又は一般食器が選択されたときには,「高速」に設定する。」(【0035】?【0040】)

(6) 「(1)準備:前洗浄ゾーン4には,洗浄水として軟水を約60°Cで,洗剤濃度として本洗浄ゾーン6よりも強アルカリ性の例えばPH12以上を用意するのが好ましい。本洗浄ゾーン6には,洗浄水として軟水を前洗浄ゾーン4よりやや低い約58°Cで,また洗剤濃度として前洗浄ゾーン4よりも弱アルカリ性のPH10以下を用意するのが好ましい。・・・
(2)・・・食器の洗浄を開始する前に,ステップS1において先ず切換スイッチ26を切換え,洗浄する食器の種類「グラス」「一般食器」「シルバー」を選定し,制御手段24に指令する。
(3)ステップS2において,制御手段24は指令された食器の種類に応じて,すすぎ水切換手段16,加熱手段18,前洗浄オンオフ手段20,及びコンベア速度切換手段22に所定の制御を指令する。
(4)すなわち食器が「グラス」の場合は,ステップS3に進み,すすぎ水切換手段16を「純水」に,加熱手段18を「低温」に,前洗浄オンオフ手段20を「オフ」に,コンベア速度切換手段22を「高速」にそれぞれ設定する。
(5)食器が「シルバー」の場合は,ステップS4に進み,すすぎ水切換手段16を「純水」に,加熱手段18を「高温」に,前洗浄オンオフ手段20を「オン」に,コンベア速度切換手段22を「低速」にそれぞれ設定する。
(6)食器が「一般食器」の場合は,ステップS5に進み,すすぎ水切換手段16を「軟水」に,加熱手段18を「高温」に,前洗浄オンオフ手段20を「オン」に,コンベア速度切換手段22を「高速」にそれぞれ設定する。
(7)次にステップS6に進み始動スイッチ38aをオンして,洗浄をスタートさせる。そして,ステップS7において指定された食器洗浄が行われる。
(8)洗浄が終了したら,ステップ8において停止スイッチ38fを操作して食器洗浄機2による洗浄を停止する。」(【0042】?【0049】)

(7) 「(1)グラスの洗浄:・・・前洗浄ゾーン4における強アルカリ性の洗剤による洗浄は止め,すすぎゾーン8における仕上げのすすぎは純水で,かつ低い温度で行うので,前洗浄の洗浄力の強い洗剤によるグラスへの悪影響,軟水を用いたすすぎの場合の斑点の発生などがなくなり,従来,洗浄,仕上げに手間と時間のかかったグラスを,手仕上げを不要にし,短時間に大量に処理することがが可能になる。
(2)シルバーの洗浄:・・・洗浄力の強い洗剤による前洗浄,並びに純水そして高温によるすすぎを,コンベアの速度を遅くしてゆっくりと行うので,従来非常に手間のかかったシルバーの大量洗浄仕上げが可能になる。
(3)一般食器の洗浄:・・・洗浄力の強い洗剤による前洗浄,並びに軟水そして高温によるすすぎを,コンベアの速度を速くして大量に洗浄することが可能である。
(4)一台の洗浄機:したがって,一台の食器洗浄機により,グラス,シルバー,そして一般食器を効率よく,大量に,また手仕上げを不要にして,洗浄することができるので,食器洗浄のコストダウンを図ることができる。
(5)制御手段,切換スイッチ:食器の種類によるすすぎ水切換手段16,加熱手段18,前洗浄オンオフ手段20,及びコンベア速度切換手段22の制御を行う制御手段24を備えたので,また食器の種類を選択し指令する切換スイッチ26を備えたので,種々の食器の洗浄を容易に,適切に行うことができる。」(【0051】?【0055】)

(8) 「本発明に従って構成された食器洗浄機及び食器洗浄方法によれば,種々の大量の食器,特にグラス,シルバーを,一般の食器も含めて,きれいに,効率良く,仕上げに手間と時間をかけることなく,一台の食器洗浄機により洗浄することができるようにし,洗浄のコストダウンも図ることができるようにすることができる。」(【0056】)

2 甲1に記載された発明
甲1の記載(前記1)及び図面の記載からすると,甲1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「食器を洗浄するための食器洗浄機2であって,
前記食器洗浄機2は,前記食器洗浄機2の入口から出口まで食器を搬送するコンベア14と,
洗浄水のジェットにより,前記コンベア14で搬送された食器を洗浄する前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6と,
すすぎゾーン8及び乾燥ゾーン10と,
前記すすぎゾーン8のすすぎ水として軟水又は純水を切換え供給するすすぎ水切換手段16,前記すすぎ水切換手段16からのすすぎ水を高温又は低温に切換え加熱する加熱手段18,前記前洗浄ゾーン4の運転をオン又はオフに切換える前洗浄オンオフ手段20,及び前記コンベア14の移動速度を高速又は低速に切換えるコンベア速度切換手段22と
食器の種類に応じて,前記すすぎ水切換手段16,前記加熱手段18,前記前洗浄オンオフ手段20及び前記コンベア速度切換手段22を制御する制御手段24と,
「グラス」,「一般食器」,「シルバー」の3位置を備え,選択された食器の種類を前記制御手段24に指令する切換スイッチ26と,を少なくとも備え,
前記前洗浄ゾーン4には,洗浄水として軟水を約60°Cで,洗剤濃度として強アルカリ性の例えばPH12以上を用意し,
前記本洗浄ゾーン6には,洗浄水として軟水を約58°Cで,洗剤濃度として弱アルカリ性のPH10以下を用意し,
前記制御手段24は,前記切換スイッチ26に指令された食器の種類に応じて,
食器が「グラス」の場合は,前記すすぎ水切換手段16を「純水」に,前記加熱手段18を「低温」に,前記前洗浄オンオフ手段20を「オフ」に,前記コンベア速度切換手段22を「高速」にそれぞれ設定するステップS3
食器が「シルバー」の場合は,前記すすぎ水切換手段16を「純水」に,前記加熱手段18を「高温」に,前記前洗浄オンオフ手段20を「オン」に,前記コンベア速度切換手段22を「低速」にそれぞれ設定するステップS4
食器が「一般食器」の場合は,前記すすぎ水切換手段16を「軟水」に,前記加熱手段18を「高温」に,前記前洗浄オンオフ手段20を「オン」に,前記コンベア速度切換手段22を「高速」にそれぞれ設定するステップS5
を有する制御を行い,
前記前洗浄ゾーン4及び前記本洗浄ゾーン6は,前記コンベア14で食器が搬送される方向に沿って,前記食器洗浄機2の入口から順に配置されている食器洗浄機2」

3 甲4に記載された事項
甲4には,以下の事項が記載されている。
(1) 「【請求項1】
食器・調理器具の洗浄を行う食器洗い機において,前記食器・調理器具に載置・調理される調理物の内容を表示した自動洗浄用のメニューキーを設けたことを特徴とする食器洗い機。
【請求項2】
前記メニューキーを複数設けたことを特徴とする請求項1記載の食器洗い機。
・・・
【請求項4】
前記メニューキーの入力情報をもとに,デンプン量,脂肪量,蛋白質量を概算し,それに対応した洗浄水温度,洗浄時間,洗剤または洗剤代替剤の添加量などを制御することを特徴とする請求項1?3記載の食器洗い機。
・・・
【請求項6】
家庭用LANにより,家庭内家電機器のメニューボタンと連動し,前記家庭内家電機器の使用情報により,自動洗浄の運転内容を決定する食器洗い機。」(【特許請求の範囲】)

(2) 「従来の食器洗い機では,食器・調理器具の使用者が調理内容に関わらず,食器・調理器具の汚れ具合から洗浄コースを選定するため,必要以上の無駄な洗浄時間,洗剤量を要してしまったり,逆に洗浄時間,洗剤量が不足し,仕上がりが不満足になるという問題点があった。
この発明は,上記のような課題を解決するためになされたもので,操作部に食器・調理器具の汚れの元となる調理内容を表示した自動洗浄用のメニューキーを設けることで,使用者の安易な判断なく,最適な洗浄を行えることを目的としたものである。」(【0004】,【0005】)

(3) 「実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における食器洗い機の操作部を示す構成図である。・・・図において,操作部1には調理内容別運転コース表示部2が表示されており,調理内容別運転コース表示部2(特許請求の範囲で言う調理物の内容を表示した自動洗浄用のメニューキー)は「洋食」3/「和食」4/「中華」5/「主食」6に分類されている。調理内容別運転コース表示部2の「洋食」3には「焼き物」コース7/「煮物」コース8/「卵」コース9,「和食」4には「焼き物」コース10/「煮物」コース11/「揚げ物」コース12,「中華」5には「焼き物」コース13/「炒め物」コース14/「蒸し物」コース15,「主食」6には「米飯茶碗」コース16/「米飯大皿」コース17/「パン」コース18/「和麺」コース19/「洋麺」コース20が表示されている。また,「洋食」3の「焼き物」7には,さらに使用者が直ぐ判断できるように,具体的なメニューである「ステーキ」「ハンバーグ」,「煮物」8には「カレー」「シチュー」,「和食」4の「焼き物」10には「焼き魚」「照り焼き」,「煮物」11には「肉じゃが」「野菜」,「揚げ物」12には「フライ」「天ぷら」,「中華」5の「焼き物」13には「餃子」,「炒め物」14には「八宝菜」「酢豚」,「蒸し物」15には「しゅうまい」などそれぞれ具体的なメニューが表示される。この具体的なメニューの選択は,各表示部を押すことにより選択できる。また,調理内容別運転コース表示部2に表示されたメニューは,複数選択することができる。」(【0007】)

(4) 「・・・でんぷんは洗浄温度が高い程,特に,70℃以上で洗浄効果が高まるため,でんぷん量が多いメニューの場合は,洗浄温度を高めに設定する。・・・脂肪も70℃以上で効果を著しく発揮するため,脂肪量が多いメニューの場合は,洗浄温度を高めに設定する。・・・蛋白質は熱により変性してしまうため,洗浄温度は低めに設定しなけばならない。選択メニューで,卵が選択された場合は,でんぷん量,脂肪量の多さに関わらず,洗浄温度,特に予備洗い温度は低めに設定する。・・・また,洗剤量も,脂肪量,蛋白質量が多い場合は,多く投入する必要があるため,多めに設定し,少ない場合は,洗剤が無駄になるため,少なめに設定する。このように,図2に示すように,各メニューの予備洗い水温/本洗い水温/運転時間/洗剤量を設定し,各メニューキーを選択することで,自動的にでんぷん量,脂肪量,蛋白質量が判断され,最適な洗浄の運転コースが選択されるため,使用者の安易な判断なく,最適な洗浄を行うことができる。」(【0012】)

(5) 「実施の形態3.
図11と図12はこの発明の実施の形態3における食器洗い機と接続した家庭内LANを示した構成図と食器洗い機の操作部の構成図である。図において,家庭用LAN33は,食器洗い機34から,オーブンレンジ35,ロースター36,IHクッキングヒーター37,炊飯器38,冷蔵庫39につながっている。」(【0024】)

4 対比及び判断
(1) 本件発明1について
ア 引用発明は,各ステップS3,S4,S5に係る設定に基づき,食器の種類に応じた内容の洗浄を行うものであるから,引用発明は食器の種類に応じた洗浄モードを有するといえる。
また,引用発明における,各ステップS3,S4,S5に係る設定の内容は洗浄条件といえるから,制御手段24は複数の洗浄条件が設定された条件設定機能を有するといえる。
そして,引用発明の制御手段24は,切換スイッチ26に指令された食器の種類に応じて,各ステップS3,S4,S5の何れかを選択するものであるから,指令された洗浄モードに応じた洗浄条件を選択する条件選択機能を有するといえる。
イ 以上の点を踏まえて,本件発明1と引用発明を,その有する機能に照らして対比すると,両者は以下の点で一致し,相違することがわかる。
(一致点)
「食器を洗浄する食器洗浄装置であって,
前記食器洗浄装置は,前記食器洗浄装置の入口から出口まで食器を搬送する搬送部と,
前記搬送部で搬送された食器に洗浄水を吹き付けることにより,食器を洗浄する少なくとも1つの主洗浄部と,
制御部と,
前記食器洗浄装置の外部から複数の洗浄モードのうち1つの洗浄モードが選択可能とされ,選択した洗浄モードの信号を,前記制御部に入力する入力部と,を少なくとも備え,
前記制御部は,前記複数の洗浄モードに応じて,複数の洗浄条件が設定された条件設定部と,
前記入力部から入力された洗浄モードの信号に基づいて,前記条件設定部の前記複数の洗浄条件から,入力された洗浄モードに応じた洗浄条件を選択する条件選択部と,を備え,
前記主洗浄部は複数であり,複数の主洗浄部は,前記搬送部で食器が搬送される搬送方向に沿って,前記食器洗浄装置の入口から順に配置されている食器洗浄装置。」
(相違点)
本件発明1は,「制御部」が,「前記主洗浄部の前記洗浄水の温度および前記洗浄水に含有する洗剤の濃度を少なくとも制御する」ものであって,「条件設定部」において「前記複数の洗浄モードに応じて,前記洗浄水の設定温度および前記洗剤の設定濃度を少なくとも含む複数の洗浄条件」が設定され,「前記条件選択部で選択された洗浄条件の前記洗浄水の設定温度および前記洗剤の設定濃度となるように,前記洗浄水の温度および前記洗剤の濃度を制御する制御実行部」を備えており,「条件設定部は,前記主洗浄部ごとに,前記複数の洗浄モードに応じて,前記洗浄水の設定温度および前記洗剤の設定濃度を少なくとも含む複数の洗浄条件を設定して」いるのに対し,引用発明は,前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6において,所定の温度,洗剤濃度の洗浄水を用意するものの,制御部24は当該洗浄水の温度や洗剤の濃度を制御しておらず,洗浄条件に前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6の洗浄水の設定温度や洗剤の設定濃度が含まれていないとともに,制御手段24は,洗浄水の温度および洗剤の濃度に係る制御を実行する機能を有しておらず,前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6ごとに,食器の種類に応じて,洗浄水の設定温度および洗剤の設定濃度を設定していない点。
ウ そして,本件発明1は上記相違点に係る構成を有することにより,「作業者は,食器の汚れの状態に合わせて,入力部から1つの洗浄モードを選択するだけで,最適な洗浄水の温度および最適な洗剤の濃度に制御された洗浄水を,搬送されている食器に吹き付けることができる。これにより,簡単に食器に付着した汚れを効率的に洗い流すことができる。」(本件特許明細書【0011】),「複数の主洗浄部ごとに,洗浄パターンに応じて,洗浄水の温度を設定温度に制御し,洗剤の濃度を設定濃度に制御することができるので,より細かな洗浄条件で食器を洗浄することができる。これにより,食器に付着した汚れごとをより効率的に洗い流すことができる。」(同【0016】),といった格別な効果を奏するものであるから,上記相違点は設計上の微差とはいえず,実質的な相違点である。
よって,本件発明1は,甲1に記載された発明であるとはいえない。
エ なお,異議申立人は,引用発明の制御手段24は,洗浄モードに応じて,洗浄水の設定温度及び洗剤の設定濃度を含む洗浄条件が設定された条件設定部(図6のステップS3,S4,S5)と,洗浄水の設定温度及び洗剤の設定濃度となるように,洗浄水の温度及び洗剤の濃度を制御する制御実行部(図6のステップS6,S7)とを備え,条件設定部(図6のステップS3,S4,S5)は,洗浄ゾーン(4,6)ごとに,食器の種類に応じた洗浄モードに応じて,洗浄水の設定温度及び洗剤の設定濃度を含む複数の洗浄条件を設定している旨主張している(異議申立書8頁下から3行?9頁15行)。
しかしながら,引用発明は,前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6において所定の洗剤濃度の洗浄水を用意するものの,制御部24は当該洗浄水の温度や洗剤の濃度を制御しているとは認められない。
また,引用発明は,洗浄モードに応じてすすぎ水の温度は選択するが,洗浄水の設定温度及び洗剤の設定濃度が洗浄条件として設定されておらず,洗浄ゾーン(4,6)ごとに,食器の種類に応じた洗浄モードに応じて,洗浄水の設定温度及び洗剤の設定濃度を含む複数の洗浄条件を設定しているとも認められない。
そして,引用発明は,洗浄水の設定温度及び洗剤の設定濃度が洗浄条件として設定されるものではないから,洗浄水の設定温度及び洗剤の設定濃度となるように,洗浄水の温度及び洗剤の濃度を制御する制御実行部は備えていない。
よって,異議申立人の主張は採用することができない。
オ 次に,上記相違点について検討する。
(ア) 引用発明は,前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6において,所定の温度,洗剤濃度の洗浄水を用意するものであるが,これを所定の温度,洗剤濃度に制御する旨,食器の種類に応じて温度や洗剤濃度を変更する旨の記載はない。
そして,引用発明は,食器の種類に応じて前洗浄ゾーン4の運転を選択的にオン又はオフするのみであって,前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6の洗浄水の条件を変更するものでもない。
そうすると,引用発明において,前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6ごとに,食器の種類に応じて洗浄水の設定温度及び洗剤の濃度を洗浄条件として設定するとともに,食器の種類に応じてこの洗浄条件を選択し,選択した条件に応じた制御を実行させることについて動機付けは認められない。
(イ) 甲4には,調理内容に応じて洗浄水の温度や洗剤量を含む洗浄条件が設定された運転コースを,操作部にて選択することで,調理内容に応じた最適な洗浄を行える食器洗い機が記載されている(前記3)。
しかしながら,引用発明は,食器の種類に応じた洗浄条件で洗浄するものであって,調理内容に応じて洗浄条件を変更することに関する記載や示唆はなく,前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6の洗浄水の条件を変更するものでもない。
また,甲4に記載された食器洗い機は,家庭内での使用を想定しており(前記3(1),(5)),甲4に,複数の主洗浄部を備える食器洗浄装置に関する記載は特段ない。
そうすると,引用発明において,前洗浄ゾーン4及び本洗浄ゾーン6ごとに,調理内容に応じて,洗浄水の設定温度及び洗剤の濃度を洗浄条件として設定するとともに,食器の種類に応じてこの洗浄条件を選択し,選択した条件に応じた制御を実行させることについても動機付けは認められない。
(ウ) その他の証拠(甲2,3及び5)をみても,洗浄モードに応じて洗浄水の温度や洗浄水に含有する洗剤の濃度を調整することについて,特段記載はない。
そして,既に述べたとおり,本件発明1は,上記相違点に係る構成を有することにより格別な効果を奏するものである(前記ウ)。
(エ) 以上のとおり,引用発明において,上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できた事項とは認められない。
よって,本件発明1は,引用発明及び各証拠に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1に記載された発明ではなく,引用発明及び各証拠に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 本件発明2ないし7について
既に述べたとおり,本件発明1は,甲1に記載された発明ではなく,引用発明及び各証拠に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件発明1を特定するための事項をすべて含む本件発明2は,その余の事項を検討するまでもなく,同様に,甲1に記載された発明ではなく,引用発明及び各証拠に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして,本件発明1を特定するための事項をすべて含む本件発明3ないし7も,その余の事項を検討するまでもなく,同様に,引用発明及び各証拠に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 むすび
以上によれば,前記異議申立ての理由によっては,本件特許(請求項1ないし7に係る特許)を取り消すことはできない。
また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-29 
出願番号 特願2015-44607(P2015-44607)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A47L)
P 1 651・ 121- Y (A47L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 秀行  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 結城 健太郎
窪田 治彦
登録日 2015-10-23 
登録番号 特許第5827431号(P5827431)
権利者 株式会社アイホー
発明の名称 食器洗浄装置  
代理人 関谷 三男  
代理人 平木 祐輔  
代理人 美馬 保彦  
代理人 石川 滝治  
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