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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1319206
異議申立番号 異議2016-700548  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-16 
確定日 2016-09-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第5833076号発明「吸収性樹脂粒子、この製造方法、これを含む吸収体及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5833076号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5833076号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成21年10月13日(優先権主張平成20年10月14日)に出願した特願2009-235847号の一部を平成25年10月3日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月6日に特許権の設定登録がされ、同年12月16日にその特許公報が発行され、その後、平成28年6月16日に特許異議申立人山田宏基(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5833076号の請求項1?9に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子であって、吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有し、疎水性物質(C)のHLBが1?10であり、(C)の含有量が、架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%であり、吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であり、吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であり、(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gである吸収性樹脂粒子。
【請求項2】吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含んでなる構造が、親水性材料粒子(d1)又は疎水性材料粒子(d2)の表面の一部又は全部に疎水性物質(C)をコーティング又は含浸した材料粒子(D)を吸収性樹脂粒子の内部に含んでなる構造である請求項1に記載の吸収性樹脂粒子。
【請求項3】親水性材料粒子(d1)が、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A2)粒子である請求項2に記載の吸収性樹脂粒子。
【請求項4】材料粒子(D)の体積平均粒子径(μm)が1?30である請求項2又は3に記載の吸収性樹脂粒子。
【請求項5】材料粒子(D)の含有量(重量%)が架橋重合体(A1)の重量に基づき、0.1?1.0である請求項2?4のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子。
【請求項6】請求項1?5のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体。
【請求項7】吸収性樹脂粒子と繊維の重量比率(吸収性樹脂粒子の重量/繊維の重量)が70/30?90/10である請求項6に記載の吸収体。
【請求項8】請求項6又は7に記載の吸収体を用いた吸収性物品。
【請求項9】疎水性物質(C)と、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)の含水ゲルとを混合又は混練する工程;及び/又は
疎水性物質(C)の存在下、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(b)を必須構成単位として重合させて架橋重合体(A1)の含水ゲルを得る工程を含む吸収性樹脂粒子の製造方法であって、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であり、吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であり、吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であり、吸収性樹脂粒子のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gである吸収性樹脂粒子の製造方法。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。

1 特許法第29条第1項第3号(以下「理由1」という。)
本件発明1?3、6?9は、本件優先日前に頒布された以下の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
本件発明1、6、8、9は、本件優先日前に頒布された以下の甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
本件発明6、7は、本件優先日前に頒布された以下の甲第6号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、本件発明1?3、6?9に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2006-160774号公報
甲第3号証:特開平10-251310号公報
甲第6号証:特開2003-183528号公報
(以下、それぞれ「甲1」、「甲3」、「甲6」という。)

なお、傍証として、以下の甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証が提出されている。
甲第2号証:平成28年6月8日付けで株式会社日本触媒の片田好希が作成した実験成績証明書
甲第4号証:藤本武彦,「全訂版 新・界面活性剤入門」,第4刷,三洋化成工業,1996年10月,p.126-135,194-199
甲第5号証:信越化学工業株式会社の「反応性・非反応性 変性シリコーンオイル」カタログ,頒布日の記載はないが最終葉(裏表紙)末尾に○にCのマークに続けて「Shin-Etsu2006.2/2015.11・・・Printed in Japan」の表示,p.2-9
甲第7号証:特開2001-158802号公報
甲第8号証:特開2007-24496号公報
(以下、それぞれ「甲2」、「甲4」、「甲5」、「甲7」、「甲8」という。)

2 特許法第29条第2項(以下「理由2」という。)
本件発明1?9は、本件優先日前に頒布された以下の甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明1、6、8、9は、本件出願前に頒布された以下の甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明6、7は、本件出願前に頒布された以下の甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明1は、本件出願前に頒布された以下の甲第1号証(主引用例)に記載された発明、甲第3号証に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1?9に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2006-160774号公報
甲第3号証:特開平10-251310号公報
甲第6号証:特開2003-183528号公報
(以下、上記1と同じく、それぞれ「甲1」、「甲3」、「甲6」という。)

なお、傍証として、上記1に述べた甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証(上記1と同じく、それぞれ「甲2」、「甲4」、「甲5」、「甲7」、「甲8」という。)が提出されている。

3 特許法第36条第4項第1号(以下「理由3」という。)
発明の詳細な説明は、以下(i)及び(ii)の点で、当業者が本件発明1?9の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(i)重量平均粒子径及び見掛け密度について、本件特許明細書の段落〔0024〕、〔0029〕には、含水ゲルの「細断」、「乾燥後の粉砕」のそれぞれが、公知の方法で行うことができる旨の記載しかない上に、本件明細書の実施例1?10においても、細断装置、乾燥機、粉砕機を使用した旨の開示しかない(すなわち、本件特許明細書には、吸収性樹脂粒子の粒度を調整し、その重量平均粒子径及び見掛け密度を、構成要件E及びF(決定注:特許異議申立人が言う構成要件E及びFはそれぞれ「吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であり」及び「吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であり」である。)の範囲とする具体的な方法が記載されていない。)。
そうすると、いかにして、吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)を400?650に、見掛け密度(g/ml)を0.56?0.62に調整するのかが、依然として不明である。
したがって、本件特許明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて、当業者が本件発明を実施しようとした場合に、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があることから、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないといえる。

(ii)疎水性物質(C)の含有量について、本件特許明細書の段落〔0075〕には、疎水性物質(C)の含有量について、以下のとおり記載されている。
「内部に存在する疎水性物質(C)の含有量は疎水性物質の合計の仕込み量より算出した含有量から表面の疎水性物質(C)の含有量を引いたものとする。」
また、同段落には、上記「表面の疎水性物質(C)の含有量」の測定法として、「有機溶媒で疎水性物質を吸収性樹脂から抽出し、その抽出液を濾過した後、溶媒を蒸発させる。得られた蒸発乾固物の量から疎水性物質(C)の含有量を求める。」ことが記載されている。
ここで、上記の測定法(抽出法)によると、例えば、表面架橋時に使用されるポリオールやポリエチレングリコール、界面活性剤等の吸収性樹脂粒子の表面に存在している親水性物質も同時に抽出されてしまうため、得られる抽出物は、疎水性物質及び親水性物質の合計量となる。
そうすると、上記段落〔0075〕の記載に基づいて、吸収性樹脂粒子の内部に存在する疎水性物質(C)の含有量を正確に把握することができるとは言えず、その結果として、当業者は、本件発明1の構成要件D(決定注:特許異議申立人が言う構成要件Dは「(C)の含有量が、架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%であり」である。)で規定される疎水性物質(C)の含有量を制御することができない。

4 特許法第36条第6項第1号(以下「理由4」という。)
本件発明1?9は、以下(i)の点で、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(i)重量平均粒子径及び見掛け密度について、本件特許明細書の段落〔0024〕、〔0029〕には、含水ゲルの「細断」、「乾燥後の粉砕」のそれぞれが、公知の方法で行うことができる旨の記載しかない上に、本件明細書の実施例1?10においても、細断装置、乾燥機、粉砕機を使用した旨の開示しかない(すなわち、本件特許明細書には、吸収性樹脂粒子の粒度を調整し、その重量平均粒子径及び見掛け密度を、構成要件E及びF(決定注:特許異議申立人が言う構成要件E及びFはそれぞれ「吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であり」及び「吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であり」である。)の範囲とする具体的な方法が記載されていない。)。
そうすると、いかにして、吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)を400?650に、見掛け密度(g/ml)を0.56?0.62に調整するのかが、依然として不明である。
したがって、本件発明1?9は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるといえる。

第4 当審の判断
事案に鑑み、理由3、同4、同1、同2の順に判断する。

1 理由3について

(1)特許異議申立人の主張
上記第3の3(i)?(ii)に記載したとおりである。

(2)本件発明1について

ア(ア)特許異議申立人は、(i)の主張において、本件特許明細書の段落〔0024〕、〔0029〕には、含水ゲルの「細断」、「乾燥後の粉砕」のそれぞれが、公知の方法で行うことができる旨の記載しかない上に、本件明細書の実施例1?10においても、細断装置、乾燥機、粉砕機を使用した旨の開示しかないから、いかにして、吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)を400?650に、見掛け密度(g/ml)を0.56?0.62に調整するのかが不明であり、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないと主張している。

(イ)しかし、本件特許明細書の段落【0023】?【0034】には、重合によって得た含水ゲルを細断し、乾燥し、粉砕し、ふるい分けして、所望の重量平均粒子径の架橋重合体(A1)を得ること、重量平均粒子径及び見掛け密度の測定方法、並びに架橋重合体(A1)の形状について、以下のように記載されている。
「【0023】重合によって得られる含水ゲル{架橋重合体と水とからなる。}は、必要に応じて細断することができる。細断後のゲルの大きさ(最長径)は50μm?10cmが好ましく、さらに好ましくは100μm?2cm、特に好ましくは1mm?1cmである。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性がさらに良好となる。
【0024】細断は、公知の方法で行うことができ、通常の細断装置{たとえば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機}等を使用して細断できる。
【0025】重合に溶媒(有機溶媒、水等)を使用する場合、重合後に溶媒を留去することが好ましい。溶媒に有機溶媒を含む場合、留去後の有機溶媒の含有量(重量%)は、吸収性樹脂粒子の重量に基づいて、0?10が好ましく、さらに好ましくは0?5、特に好ましくは0?3、最も好ましくは0?1である。この範囲であると、吸収性樹脂粒子の吸収性能(特に保水量)がさらに良好となる。
【0026】溶媒に水を含む場合、留去後の水分(重量%)は、架橋重合体の重量に基づいて、0?20が好ましく、さらに好ましくは1?10、特に好ましくは2?9、最も好ましくは3?8である。この範囲であると、吸収性能及び乾燥後の吸収性樹脂粒子の壊れ性がさらに良好となる。
【0027】なお、有機溶媒の含有量及び水分は、赤外水分測定器{(株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W}により加熱したときの加熱前後の測定試料の重量減量から求められる。
【0028】溶媒(水を含む。)を留去する方法としては、80?230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100?230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等が適用できる。
【0029】架橋重合体は、乾燥後に粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定はなく、通常の粉砕装置{たとえば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機}等が使用できる。粉砕された架橋重合体は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。
【0030】必要によりふるい分けした場合の架橋重合体(A1)の重量平均粒子径(μm)は、400?650が好ましく、特に好ましくは450?600、最も好ましくは500?540である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0031】なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、並びに受け皿の順等に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙{横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率}にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0032】また、微粒子の含有量は少ない方が吸収性能が良好となるため、全粒子に占める106μm以下(好ましくは150μm以下)の微粒子の含有量が3重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以下である。微粒子の含有量は、上記の重量平均粒径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
【0033】架橋重合体(A1)の見掛け密度(g/ml)は、0.56?0.62が好ましく、さらに好ましくは0.57?0.61、特に好ましくは0.58?0.60である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
なお、見掛け密度は、JIS K7365:1999に準拠して、25℃で測定される。
【0034】架橋重合体(A1)の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。」

(ウ)また、段落【0106】?【0112】には、疎水性物質(C)を含有させた含水ゲルを細断し、乾燥し、粉砕し、所望の重量平均粒子径の吸収性樹脂粒子を得ること、重量平均粒子径及び見掛け密度の測定方法、並びに架橋重合体(A1)の形状について、以下のように記載されている。
「【0106】疎水性物質(C)を含有する含水ゲルは、必要に応じて、この含水ゲルを細断することができる。細断後の含水ゲル粒子の大きさ(最長径)は50μm?10cmが好ましく、さらに好ましくは100μm?2cm、特に好ましくは1mm?1cmである。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性がさらに良好となる。
細断方法は、架橋重合体(A1)の場合と同様の方法が採用できる。
【0107】吸収性樹脂粒子の製造に溶媒(有機溶媒及び/又は水を含む)を使用する場合、重合後に溶媒を留去することができる。
溶媒に有機溶媒を含む場合、留去後の有機溶媒の含有量(重量%)は、吸収性樹脂粒子の重量に基づいて、0?10が好ましく、さらに好ましくは0?5、特に好ましくは0?3、最も好ましくは0?1である。である。この範囲であると、吸収性樹脂粒子の吸収性能(特に保水量)がさらに良好となる。
【0108】また、溶媒に水を含む場合、留去後の水分(重量%)は、吸収性樹脂粒子の重量に基づいて、0?20が好ましく、さらに好ましくは1?10、特に好ましくは2?9、最も好ましくは3?8である。この範囲であると、吸収性能(特に保水量)及び乾燥後の吸収性樹脂粒子の壊れ性がさらに良好となる。
なお、有機溶媒の含有量及び水分の測定法、並びに溶媒の留去方法は、架橋重合体(A1)の場合と同様である。
【0109】吸収性樹脂粒子は、粉砕することができる。吸収性樹脂粒子が溶媒を含む場合、溶媒を留去(乾燥)してから粉砕することが好ましい。
粉砕する場合、粉砕後の重量平均粒径(μm)は、400?650が好ましく、特に好ましくは450?600、最も好ましくは500?540である。この範囲であると、粉砕後のハンドリング性(吸収性樹脂粒子の粉体流動性等)及び吸収性物品の耐カブレ性がさらに良好となる。なお、重量平均粒径は架橋重合体(A1)の場合と同様にして測定できる。
【0110】微粒子の含有量は少ない方が吸収性能がよく、全粒子に占める106μm以下の微粒子の含有量が3重量%以下が好ましく、さらに好ましくは全粒子に占める150μm以下の微粒子の含有量が3重量%以下である。微粒子の含有量は、上記の重量平均粒径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
粉砕及び粒度調整は、架橋重合体(A1)の場合と同様の方法が採用できる。
【0111】本発明の吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)は、0.56?0.62が好ましく、さらに好ましくは0.57?0.61、特に好ましくは0.58?0.60である。この範囲であると、吸収性物品の耐カブレ性がさらに良好となる。なお、見掛け密度は架橋重合体(A1)の場合と同様にして測定できる。
【0112】吸収性樹脂粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。」

(エ)また、段落【0130】?【0162】の製造例、実施例、比較例には、
重合により含水ゲル(1)を得、ミンチ機で細断しながら別途製造例2、4?8で製造した疎水性物質を含む材料粒子をそれぞれ添加混合して細断ゲルを得、乾燥し、粉砕し、ふるい分けし、表面架橋して(表面架橋については任意に行う事項として段落【0113】?【0114】に記載されている。)、目的の吸水性樹脂粒子(1)?(6)を得たこと(実施例1?6)、
材料粒子に代え疎水性物質としてステアリルアルコールとステアリン酸Mg又はステアリルアルコールを用いて同様の手順で目的の吸水性樹脂粒子(7)?(9)を得たこと(実施例7?9)、
材料粒子を用いずに疎水性物質としての低分子量ポリプロピレンエマルション存在下の水溶性モノマーと架橋剤との重合により含水ゲルを得て目的の吸水性樹脂粒子(10)を得たこと(実施例10)、
比較例として、材料粒子として、それぞれクレーをアミノ変性シリコーンで処理した粒子及びシリコーンビーズを用いて、比較用の吸水性樹脂粒子(H1)及び(H2)を得たこと(比較例1、2)、
が記載されている。そして、それらの吸水性樹脂粒子の、重量平均粒子径、見掛け密度及びその他の物性が、表1に記載されている。
また、それらの吸収性樹脂粒子をそれぞれ用いて、繊維比率が異なる2通りの、寸法10cm×40cmの吸収性物品(紙おむつ)を製造したことが記載されている。その紙おむつの中央及び中央から左右に各10cmの位置のドライネス値(段落【0160】に測定方法が記載されており、人工尿80mlで濡らした紙おむつ表面の乾いている程度の指標である。)が、表2に記載されている。
一例として、製造例1のうちの実施例1関連部分と、実施例1、表1及び表2を摘示すると、以下のとおりである。
「【0131】<製造例1>
水溶性ビニルモノマー(a1-1){アクリル酸、三菱化学株式会社製、純度100%}155部(2.15モル部)、架橋剤(b1){ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ダイソ-株式会社製}0.6225部(0.0024モル部)及び脱イオン水340.27部を攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.62部、2%アスコルビン酸水溶液1.1625部及び2%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]水溶液2.325部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が90℃に達した後、90±2℃で約5時間重合することにより含水ゲル(1)を得た。
【0132】次にこの含水ゲル(1)400部をミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で細断しながら、48.5%水酸化ナトリウム水溶液102.27部を添加して混合・中和し、細断ゲル(1)を得た。」
「【0142】<実施例1>
製造例1で得た細断ゲル(1)502.27部をミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で細断しながら、製造例2で得た材料粒子(D-1)0.454部を添加して混合し、細断ゲル(2)を得た。さらに細断ゲル(2)を通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き150及び850μmのふるいを用いて150?850μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の5部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、本発明の吸収性樹脂粒子(1)を得た。吸収性樹脂粒子(1)の重量平均粒子径は500μmであり、見掛け密度は0.61g/mlであった。また、吸水性樹脂粒子(1)の内部に疎水性物質(C)は0.0002%存在し、吸水性樹脂粒子(2)の表面に疎水性物質(C)は0.0001%存在した。」
「【0156】【表1】


「【0161】【表2】



(オ)上記(イ)?(エ)の発明の詳細な説明の記載は、詳細であり、十分な数の実施例も記載されていることから、これらを参考にすれば、吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径については、当業者が通常採用する手段により適切に細断、乾燥、ふるい分けすることにより、また、見掛け密度については、使用する材料粒子や疎水性物質の種類及び量を適当に選ぶことにより、当業者は、本件特許の請求項1に記載される所望の範囲に、調整することができるものと認められる。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

イ(ア)特許異議申立人は、(ii)の主張において、本件特許明細書の段落〔0075〕の記載に基づいて、吸収性樹脂粒子の内部に存在する疎水性物質(C)の含有量を正確に把握することができるとはいえないから、「架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%であり」で規定される疎水性物質(C)の含有量を制御することができないと主張している。

(イ)本件特許明細書の段落【0075】には、以下のように記載されている。
「【0075】吸収性樹脂粒子の内部に(C)からなる連結部(RC)を含んでなる構造について説明する。
・・・・・・・・・・・・・・・
なお、疎水性物質(C)は、吸収性樹脂粒子の表面の一部にも存在していていることが好ましく、さらに好ましくは吸収性樹脂粒子表面に(C)が存在し、その表面の(C)と吸収性樹脂粒子内部の(C)とが連続的につながっていることである。
なお、表面に存在する疎水性物質(C)の含有量は下記の方法で測定される。内部に存在する疎水性物質(C)の含有量は疎水性物質の合計の仕込み量より算出した含有量から表面の疎水性物質(C)の含有量を引いたものとする。
<疎水性物質(C)の含有量の測定法>
冷却管を備えたガラス製のナスフラスコに吸収性樹脂粒子100重量部と有機溶媒(有機溶媒100重量部に、少なくとも0.01重量部の疎水性物質(D)を25℃?110℃で溶かすことができる有機溶媒。なおこの溶かすことができる温度を溶解温度とする。)300重量部を加え、溶解温度で24時間放置し、疎水性物質の抽出液を得る。この抽出液を濾紙を用いて濾過し、事前に秤量したガラス製のナスフラスコに採取した後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させた後、秤量する。濾過液蒸発後の重量から事前に秤量したナスフラスコの重量を引いて抽出された蒸発乾固物の量を求める。
濾紙上に残った抽出後のサンプルを用いて、同様の操作を2回くり返し、3回の抽出で得られた蒸発乾固物の合計量を疎水性物質(C)の含有量(重量%)とする。」

(ウ)上記(イ)によれば、疎水性物質(C)の含有量は、「疎水性物質の合計の仕込み量より算出した含有量」であるから、吸水性樹脂粒子の内部に存在する疎水性物質(C)の含有量とは独立に、決定できると認められる。吸収性樹脂粒子の内部に存在する疎水性物質(C)の含有量を正確に把握できなければ、本件特許の請求項1に記載される所望の範囲に、疎水性物質(C)の含有量を当業者が調整することができない、とする理由はない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(3)本件発明2?9について
本件発明2?9についても、特許異議申立人の(i)及び(ii)の主張については、上記(2)で述べたのと同様に、採用できない。

(4)理由3についてのまとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?9の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に適合する。
よって、本件発明1?3についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当せず、理由3によって取り消されるべきものではない。

2 理由4について

(1)特許異議申立人の主張
上記第3の4(i)に記載したとおりである。

(2)本件発明1について

ア 特許異議申立人は、(i)の主張において、本件特許明細書の段落〔0024〕、〔0029〕には、含水ゲルの「細断」、「乾燥後の粉砕」のそれぞれが、公知の方法で行うことができる旨の記載しかない上に、本件明細書の実施例1?10においても、細断装置、乾燥機、粉砕機を使用した旨の開示しかないから、いかにして、吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)を400?650に、見掛け密度(g/ml)を0.56?0.62に調整するのかが不明であり、本件発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであると主張している。

イ 本件発明1の課題
本件特許明細書の段落【0004】?【0009】によれば、従来技術の吸収性樹脂粒子は、吸収速度パターンが適切でなかったために、これを用いた吸収性物品では着用者の皮膚にカブレが生じる問題があった。本件発明1の課題は、吸収性物品としたときにカブレ等の問題のない、特定の吸収速度パターンを有する吸収性樹脂粒子を提供することであると認められる。

ウ 発明の詳細な説明の記載

(ア)吸収性樹脂粒子のモノマー組成と重合方法について、段落【0011】?【0022】に記載されている。

(イ)重合によって得た含水ゲルを細断、乾燥、粉砕、ふるい分けして特定の重量平均粒子径の架橋重合体(A1)とする方法について、段落【0023】?【0032】に記載されている。その見掛け密度について、段落【0033】に記載されている。その形状について、段落【0034】に記載されている。
この段落【0023】?【0034】の内容は、理由3に関連して上記1(2)ア(イ)に摘示したとおりである。

(ウ)架橋重合体(A1)に任意に行ってよい表面架橋について、段落【0035】?【0037】に記載されている。

(エ)疎水性物質(C)の種類、含有量、含有させる方法について、段落【0038】?【0085】に記載されている。

(オ)疎水性物質(C)を特定の構造を有する材料粒子(D)として含まれる態様について、段落【0086】?【0105】に記載されている。

(カ)疎水性物質(C)を含有する含水ゲルを細断、乾燥、粉砕、して特定の重量平均粒子径の吸収性樹脂粒子とする方法について、段落【0106】?【0110】に記載されている。その見掛け密度について、段落【0111】に記載されている。その形状について、段落【0112】に記載されている。
この段落【0106】?【0112】の内容は、理由3に関連して上記1(2)ア(ウ)に摘示したとおりである。

(キ)吸収性樹脂粒子に任意に行ってよい表面架橋について、段落【0113】?【0114】に記載されている。

(ク)配合してよい他の添加剤について、段落【0115】に記載されている。

(ケ)吸収性樹脂粒子のDW(Demand Wettability)法による吸収量(M1)?(M4)の測定法について、段落【0116】?【0121】に、図1を引用して記載されている。吸収性樹脂粒子の保水量の測定法について、段落【0122】?【0124】に記載されている。吸収性樹脂粒子の荷重下吸収量の測定法について、段落【0125】?【0127】に記載されている。

(コ)吸収性樹脂粒子を吸収体とすることについて、段落【0128】?【0129】に記載されている。

(サ)含水ゲル及び材料粒子についての製造例1?8、吸収性樹脂粒子についての実施例1?10及び比較例1、2が、段落【0130】?【0162】に記載されている。
この製造例1のうちの実施例1関連部分(段落【0131】?【0132】)と、実施例1(段落【0142】)、表1(段落【0156】)及び表2(段落【0161】)の内容は、理由3に関連して上記1(2)ア(エ)に摘示したとおりである。

エ 上記ウの発明の詳細な説明の記載は、詳細であり、十分な数の実施例も記載されていることから、吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)を400?650とし、見掛け密度(g/ml)を0.56?0.62とすることについては、十分に開示されているといえる。
したがって、異議申立人が主張するように、いかにして吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)を400?650に、見掛け密度(g/ml)を0.56?0.62に調整するのかが不明である、ということはできず、また、このことを理由に、本件発明1は発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるということもできない。
そして、上記ウの発明の詳細な説明の記載、とりわけ実施例、比較例、表1及び表2を参照すれば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、上記イの本件発明1の課題、すなわち吸収性物品としたときにカブレ等の問題のない、特定の吸収速度パターンを有する吸収性樹脂粒子を提供するという課題が解決できることを、当業者が認識できると認められる。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(3)本件発明2?9について
本件発明2?5は、本件発明1の吸収性樹脂粒子であって疎水性物質(C)を特定の構造を有する材料粒子(D)として含まれる態様の発明である。
本件発明6及び7は、本件発明1?5の吸収性樹脂粒子と繊維を含有する吸収体の発明である。
本件発明8は、本件発明6又は7の吸収体を用いた吸収性物品の発明である。
本件発明9は、事実上、本件発明1の吸収性樹脂粒子の製造方法の発明である。
そして、本願発明2?9の課題は、吸収性物品としたときにカブレ等の問題のない、特定の吸収速度パターンを有する吸収性樹脂粒子を提供すること、その吸収性樹脂粒子を用いた吸収体を提供すること、その吸収体を用いた吸収性物品を提供すること、本件発明1の吸収性樹脂粒子の製造方法を提供することであると認められ、上記(2)ウの発明の詳細な説明の記載、とりわけ実施例、比較例、表1及び表2を参照すれば、本件発明2?9も、発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件発明2?9課題が解決できることを、当業者が認識できると認められる。
したがって、本件発明2?9についても、特許異議申立人の主張は、採用できない。

(4)理由4についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?9は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合する。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当せず、理由3によって取り消されるべきものではない。

3 理由1について

(1)甲号各証の記載

ア 甲1
(1a)「【請求項1】吸水性樹脂及び水からなる含水ゲル(A)と、
水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハーゼン単位色数が0?300である低融点乾燥助剤(B1){融点(1013.25hPa)が50℃未満}及び/又は
水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハンター白度が40?94である高融点乾燥助剤(B2){融点が50℃以上}とを混合して混合体を得る工程、
並びにこの混合体を静置状態で乾燥させる工程を含むことを特徴とする吸水性樹脂の製造法。
【請求項2】低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の使用量が吸水性樹脂の重量に基づいて0.001?1重量%である請求項1に記載の製造法。
【請求項3】低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)のHLB値が0?10である請求項1又は2に記載の製造法。
【請求項4】低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)が、1?8個のオキシエチレン基を有するオキシエチレン含有化合物である請求項1?3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】アクリル酸を必須構成単量体として水溶液重合した後、アルカリ金属化合物で中和して含水ゲル(A)を得る工程を含む請求項1?4のいずれかに記載の製造法。」(特許請求の範囲の請求項1?5)
(1b)「【技術分野】
【0001】本発明は、吸水性樹脂の製法に関する。
・・・・・・・・・・・・・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0003】しかしながら、従来の方法では、添加する界面活性剤の影響で、得られた吸水性樹脂が着色したり、得られた吸水性樹脂を吸水性物品に適用した場合のリウェット性が低下するという問題がある。すなわち、本発明の目的は、着色やリウェット性の低下のない吸水性樹脂を得るための製造方法を提供することである
・・・・・・・・・・・・・・・
【発明の効果】
【0005】本発明の製造法によると、得られる吸水性樹脂には、着色やリウェット性の低下がない。さらに、含水ゲルの乾燥が非常に効率的に行い得るので、含水ゲルの乾燥時間を短くすることができ、吸水性樹脂の生産性を著しく向上できる。」
(1c)「【0006】含水ゲル(A)を構成する吸水性樹脂とは、水を吸収して膨潤する架橋ポリマーであって、乾燥により吸水性樹脂となるものである。
吸水性樹脂としては、(1)?(9)のポリマー等が挙げられるが、これらに限定されず、水を吸収できる吸水性樹脂が広く含まれる。なお、これらのポリマーの2種以上の混合物でもよい。
・特公昭53-46199号公報又は特公昭53-46200号公報等に記載のデンプン-アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体(1)。
・特開昭55-133413号公報等に記載の水溶液重合(断熱重合、薄膜重合又は噴霧重合等)により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)(2)。
・特公昭54-30710号公報、特開昭56-26909号公報又は特開平11-5808号公報等に記載の逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)(3)。
・特開昭52-14689号公報又は特開昭52-27455号公報等に記載のビニルエステルと不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体のケン化物(4)。
・特開昭58-2312号公報又は特開昭61-36309号公報等に記載のアクリル酸(塩)とスルホ(スルホネート)基含有モノマーとの共重合体(5)。
・米国特許第4389513号等に記載のイソブチレン-無水マレイン酸共重合架橋体のケン化物(6)。
・特開昭46-43995号公報等に記載のデンプン-アクリロニトリル共重合体の加水分解物(7)。
・米国特許第4650716号等に記載の架橋カルボキシメチルセルロース誘導体(8)。
・特開2003-052742号公報、特開2003-082250号公報、特開2003-165883号公報、特開2003165883号公報、特開2003-176421号公報、特開2003-183528号公報、特開2003-192732号公報、特開2003-225565号公報、特開2003238696号公報、特開2003-335970号公報、特開2004-091673号公報又は特開2004-123835号公報等に記載された高性能吸水性樹脂(9)。
【0007】これらのうち、製造コスト及び吸収性能の観点等から、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト共重合架橋体(1)、水溶液重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)(2)、逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)(3)及び高性能吸水性樹脂(9)が好ましく、さらに好ましくは(2)、(3)及び(9)、特に好ましくは(2)及び(9)である。」
(1d)「【0009】吸水性樹脂は、表面架橋剤で表面架橋処理することができる。表面架橋処理した吸水性樹脂は、荷重下での被吸収液体の吸収量が大きくなるので好適である。
表面架橋剤としては、特開昭59-189103号公報等に記載の多価グリシジル、特開昭58-180233号公報又は特開昭61-16903号公報等に記載の多価アルコール、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネート、特開昭61-211305号公報又は特開昭61-252212号公報等に記載のシランカップリング剤、並びに特開昭51-136588号公報又は特開昭61-257235号公報等に記載の多価金属等が挙げられる。これらの表面架橋剤のうち、カルボキシル(カルボキシレート)基と強い共有結合を形成して荷重下での被吸収液体の吸収量に優れた吸水性樹脂が得られるという観点や表面架橋反応を比較的低い温度で行わせることができて経済的であるという観点等から、多価グリシジル、多価アミン及びシランカップリング剤が好ましく、さらに好ましくは多価グリシジル及びシランカップリング剤、特に好ましくは多価グリシジルである。
【0010】表面架橋剤を使用する場合、表面架橋剤の使用量(重量%)は、表面架橋剤の種類、表面架橋させる条件、目標とする性能等により種々変化させることができるため特に限定はないが、吸収性能の観点等から、表面架橋前の吸水性樹脂の重量に基づいて、0.001?3が好ましく、さらに好ましくは0.005?2、特に好ましくは0.01?1である。
吸水性樹脂が水の存在下で製造される場合(通常このようにして製造される)、表面架橋剤は、吸水性樹脂及び水を含有してなる含水ゲル(A)の乾燥前、(A)の乾燥中、並びに(A)の乾燥後等のいずれの段階で行われてもよいが、架橋条件の調整の観点等から、(A)の乾燥中又は(A)の乾燥後の段階が好ましい。なお、乾燥後に表面架橋する場合、含水ゲル(A)に含まれる吸水性樹脂と、製造される吸水性樹脂とは表面架橋されているか否かの違いがあるが、便宜上同じ用語で説明している。
【0011】表面架橋処理を行う方法としては、従来公知の方法が適用でき、表面架橋剤、水及び/又は有機溶媒からなる混合溶液を吸水性樹脂又は含水ゲル(A)と混合し、加熱反応させる方法等が適用できる。
上記の方法の場合、表面架橋処理に使用する水の量(重量%)は、表面架橋剤の吸水性樹脂の内部への浸透性の観点等から、表面架橋前の吸水性樹脂の重量に基づいて、1?10が好ましく、さらに好ましくは1.5?8、特に好ましくは2?7である。
上記の方法の場合、表面架橋処理のときに使用する有機溶媒の種類としては、従来公知の親水性溶媒等が使用でき、表面架橋剤の吸水性樹脂の内部への浸透性、表面架橋剤の反応性等を考慮し、適宜選択することができるが、炭素数1?4のアルコール(メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びジエチレングリコール等)のように水と任意の比率で溶解しうる親水性溶媒が好ましい。
有機溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、有機溶媒を使用する場合、この使用量(重量%)は、有機溶媒の種類により種々変化させることができるが、表面架橋前の吸水性樹脂の重量に基づいて、0.2?20が好ましく、さらに好ましくは0.5?15、特に好ましくは1?10である。
また、水及び有機溶媒を使用する場合、水に対する有機溶媒の使用比率は任意に変化させることができが、有機溶媒の使用量(重量%)は、水の重量に基づいて、20?80が好ましく、さらに好ましくは25?75、特に好ましくは30?70である。
また、表面架橋処理の温度(℃)は、80?200が好ましく、さらに好ましくは90?180、特に好ましくは100?160である。
また、表面架橋処理の反応時間(分)は、反応温度等により変化させることができるが、3?60が好ましく、さらに好ましくは5?50、特に好ましくは10?40である。
表面架橋剤で表面架橋して得られる吸水性樹脂を、これと同種の表面架橋剤又はこれと異種の表面架橋剤で追加の表面架橋を施すこともできる。追加の表面架橋剤の使用量、処理方法、処理温度、処理時間等は上記の場合と同様である。」
(1e)「【0012】含水ゲル(A)は、吸水性樹脂と水からなる流動性のないゲル状体であって、(A)の重量に基づいて、通常15?90(好ましくは30?85、さらに好ましくは45?75)重量%の水を含んでいる。」
(1f)「【0013】低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)とは、含水ゲル(A)を静置状態で乾燥させる工程において、含水ゲル(A)同志の融着を防止し、ゲル間の熱風の通気性を向上させ、乾燥効率を向上させることができる化合物である。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0014】低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)の25℃での水100gへの溶解度(g)は、0?2が好ましく、さらに好ましくは0?1.5、次に好ましくは0?1、特に好ましくは0?0.5、さらに特に好ましくは0?0.2、最も好ましくは0?0.1である。この範囲であると、含水ゲル(A)の乾燥性及び吸水性樹脂のリウェット性がさらに良好となる。
【0015】低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)のHLB値は、0?10が好ましく、さらに好ましくは0?7、次に好ましくは0?5、特に好ましくは0?4、さらに特に好ましくは1?4、最も好ましくは1?3である。この範囲であると、含水ゲル(A)の乾燥性及び吸水性樹脂のリウェット性がさらに良好となる。
なお、HLB値は親水性-疎水性バランス(HLB)値を意味し、グリフィン法(新・界面活性剤入門、127-129頁、藤本武彦、三洋化成工業株式会社発行、1981年発行)により求められる。」
(1g)「【0019】低融点乾燥助剤(B1)としては、炭素数10?16の一価アルコール(B11)、炭素数6?16の多価(2?5価)アルコール(B12)、シリコーンオイル(B13)、変性シリコーンオイル(B14)、オキシエチレン含有化合物(B15)、オキシプロピレン含有化合物(B16)及びエステル(B17)等が含まれる。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0028】これらの低融点乾燥助剤(B1)のうち、シリコーンオイル(B13)、変性シリコーンオイル(B14)、オキシエチレン含有化合物(B15)及びオキシプロピレン含有化合物(B16)が好ましく、さらに好ましくは変性シリコーンオイル(B14)、オキシエチレン含有化合物(B15)及びオキシプロピレン含有化合物(B16)、特に好ましくはオキシエチレン含有化合物(B15)及びオキシプロピレン含有化合物(B16)、最も好ましくはオキシエチレン含有化合物(B15)が好ましい。
【0029】高融点乾燥助剤(B2)としては、炭素数17?30の一価アルコール(B21)、炭素数6?30の多価(6価)アルコール(B22)、オキシエチレン含有化合物(B23)及びエステル(B24)等が含まれる。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0032】これらの高融点乾燥助剤(B2)のうち、オキシエチレン含有化合物(B23)及びエステル(B24)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン含有化合物(B23)が好ましい。
【0033】低融点乾燥助剤(B1)としては、次の化合物が好ましく例示できる。
【表1】

【0034】高融点乾燥助剤(B2)としては、次の化合物が好ましく例示できる。
【表2】


(1h)「【0035】低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の使用量(重量%)は、含水ゲル(A)に含まれる吸水性樹脂の重量に基づいて、0.001?1が好ましく、さらに好ましくは0.002?0.7、次に好ましくは0.005?0.4、特に好ましくは0.01?0.2、さらに特に好ましくは0.02?0.15、最も好ましくは0.03?0.1である。この範囲であると、含水ゲル(A)の乾燥性がさらに良好となり、吸水性樹脂の着色をさらに抑制できる。
低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)の両方を使用する場合、これらの使用比率(B1/B2;重量比)は、90?10/10?90が好ましく、さらに好ましくは75?25/25?75、特に好ましくは60?40/40?60である。」
(1i)「【0036】含水ゲル(A)と低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)とを混合する方法については特に制限はなく、(B1)及び(B2)が(A)の表面及び/又は内部に存在するように混合してもよく、また(B1)及び(B2)が均一又は不均一に存在するように混合してもよい。低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)は、少なくとも(A)の表面に存在することが好ましい。
【0037】含水ゲル(A)と低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)とを混合する方法としては、(1)(A)を撹拌しながら(B1)及び/又は(B2)を添加(スプレー等を含む。以下同じ。)して混合する方法、(2)あらかじめ、(B1)及び/又は(B2)を高濃度で(A)と混合してマスターバッチを作成しておき、(B1)及び/又は(B2)として所定の添加量となる様にこのマスターバッチを(A)に添加して混合する方法等が適用できる。
【0038】低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)は、直接添加(塊、粉末、液状等のニートで)でも、溶液又は分散液のいずれの形態による添加でもできるが、溶液又は分散液の形態で添加することが好ましい。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0039】低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の添加時期は、混合体を静置状態で乾燥させる工程の前であれば特に制限はないが、水溶液重合の場合、重合工程の直前、重合工程中、重合工程直後、含水ゲルの細断工程中、含水ゲルの細断工程直後及び混合体の乾燥工程直前が好ましく、さらに好ましくは重合工程の直前、重合工程中、重合工程直後、含水ゲルの細断工程中及び含水ゲルの細断工程直後、特に好ましくは重合工程の直前、重合工程中、重合工程直後及び含水ゲルの細断工程中、最も好ましくは重合工程の直前、重合工程直後及び含水ゲルの細断工程中である。
また、逆相懸濁重合の場合、重合工程の直前、重合工程中、重合工程直後、重合で得られた水膨潤性架橋重合体と重合に用いた有機溶剤とを分離する工程中及び重合で得られた水膨潤性架橋重合体と重合に用いた有機溶剤とを分離する工程後が好ましく、さらに好ましくは重合工程の直前、重合工程直後及び重合で得られた水膨潤性架橋重合体と重合に用いた有機溶剤とを分離する工程後、特に好ましくは重合工程直後及び重合で得られた水膨潤性架橋重合体と重合に用いた有機溶剤とを分離する工程後、最も好ましくは重合工程直後である。
【0040】含水ゲル(A)と低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)とを混合できる装置としては特に制限はないが、コニカルブレンダー、インターナルミキサー(バンバリーミキサー)、セルフクリーニング型ミキサー、ギアコンパウンダー、スクリュー型押し出し機、スクリュー型ニーダー、ミンチ機、ナウターミキサー、双腕型ニーダー、V型混合機、流動層式混合機、タービュライザー、スクリュー式のラインブレンド装置、リボンミキサー及びモルタルミキサー等の機械的混合装置が好適に用いられる。これらは複数個を組み合わせて使用することもできる。
【0041】静置状態での乾燥とは、含水ゲル(A)と低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の混合体が、乾燥機内に入ってから、外部からの機械的撹拌を加えずに乾燥することを意味する。
なお、乾燥は、バッチ乾燥でも、連続乾燥でも特に制限はない。
含水ゲル(A)と低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)との混合体を乾燥できる装置としては特に制限はないが、平行流バンド乾燥機(トンネル乾燥機)、通気バンド乾燥機、噴出流(ノズルジェット)乾燥機、通気堅型乾燥機及び箱形熱風乾燥機等が好適に用いられる。これらは複数個組み合わせて使用することもできる。また、これらの乾燥機の熱源(スチーム及び熱媒等)については特に限定されない。
【0042】本発明の製造方法は、含水ゲル(A)と低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)との混合体を乾燥した後、粉砕工程、粒度調整工程等を含んでもよい。」
(1j)「【0042】・・・・・・・・・・・・・・・
本発明の製造方法で製造される吸水性樹脂には、必要に応じて、添加剤{防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末及び繊維状物等}を添加することができる。
・・・・・・・・・・・・・・・
添加剤を使用する場合、添加剤の含有量は特に限定はないが、添加剤が防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、芳香剤及び/又は消臭剤の場合、含有量(重量%)は、それぞれ、吸水性樹脂の重量に基づいて、0.00001?10が好ましく、さらに好ましくは0.00005?5である。また、添加剤が着色剤、無機質粉末及び/又は繊維状物の場合、含有量(重量%)は、それぞれ、吸水性樹脂の重量に基づいて、0.1?25が好ましく、さらに好ましくは0.2?15である。」
(1k)「【0043】吸水性樹脂の形状は特に限定はないが、粒状が好ましく、さらに好ましくは球状、顆粒状、破砕状、針状、薄片状及びこれらの一次粒子が互いに融着したような凝集状である。
吸水性樹脂の大きさは特に制限がないが、吸水性樹脂の全重量の90重量%以上(好ましくは93重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上)の粒子径(μm)が38?1180であることが好ましく、さらに好ましくは63?1000、特に好ましくは106?850、最も好ましくは150?710であることである。」
(1L)「【0047】本発明の製造法で製造され得る吸水性樹脂は、吸水性物品を構成する材料として好適である。
吸水性物品としては、衛生用品が代表的であり、紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、嘔吐物吸収用エチケット袋、紙タオル、パット゛(失禁者用パット及び手術用アンダーパット等)及びペットシート(ペット尿吸収シート及び保温シート等)等が挙げられる。また、これらの衛生用品の以外に、各種の家庭用及び産業用の吸収シート(鮮度保持シート、ドリップ吸収シート、水稲育苗シート、コンクリート養生シート及びケーブル等の水走り防止シート等)等が挙げられる。
これらのうち、本発明の製造法で製造され得る吸水性樹脂は、特に紙おむつ、パッド及び生理用ナプキンに最適である。
【0048】本発明の製造方法で得られた吸水性樹脂及び本発明の吸水性樹脂は、吸収性物品に適用できる。吸水性物品は、吸水性樹脂を必須構成成分としてなる吸収体を配してなるものである。
吸収体及び吸水性物品は、吸水性樹脂として本発明の製造方法で得られた吸水性樹脂又は本発明の吸水性樹脂を用いること以外、特開2003-183528号公報に記載されたものと同じである。」
(1m)「【実施例】
【0049】以下、実施例と比較例により本発明の有用性を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に記載がない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。
含水ゲル(A)の乾燥所要時間、吸水性物品のリウェットは下記の方法で測定した。これらの測定結果は表1に示した。
【0050】<乾燥所要時間の測定法>
含水ゲル(A)を150℃一定の乾燥機に入れてから、含水率が4%以下になるまでの時間を測定し、乾燥所要時間とした。含水率は、赤外線水分計(たとえば、株式会社ケット科学研究所社製、FD-230)を用いて、測定試料5gを150℃、15分間、加熱乾燥して、その前後の重量差から算出した。
【0051】<吸水性物品のリウェットの測定法>
測定用の吸水性物品を水平面上に広げて、中央部分に外径7.0cm、内径6.0cm、高さ3.8cmのアクリル樹脂の円柱筒を置き、この円柱筒内に0.9%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)80mlを注液する。注液を始めてから15分経過後に、さらに80mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液を再注液する。再注液を始めてから5分後に、中央部分に、あらかじめ重量を測定した、10cm×10cmの濾紙40枚(A)を重ね、さらにその上に、10cm×10cm×厚さ5mmのアクリル板、3.5kgの荷重を乗せる。5分後に、荷重、アクリル板をはずして、生理食塩水を吸収した濾紙の重量(B)を測定し、次式から求めた値をリウェットとする。値が小さいほどリウェット性に優れていることを示す。
リウエット測定値(g) = B-A
【0052】<製造例1>
反応容器にアクリル酸81.8部、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.3部及び脱イオン水241部を仕込み、攪拌・混合しながら内容物の温度を1?2℃に保った。
次いで内容物の液層中に窒素を1リットル/分で30分間流入した後、密閉下、1%過酸化水素水溶液1部、0.2%アスコルビン酸水溶液1.2部及び2%の2,2’-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8部を添加・混合して重合を開始させた(約5℃)。
重合と共に温度が上昇し約70℃に達するが、引き続き、密閉下で70?80℃に約8時間温度管理しながら重合して、吸水性樹脂を含む含水ゲル(a1)を得た。
【0053】<製造例2>
N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.3部を0.1部にする以外は、製造例1と同様にして、吸水性樹脂を含む含水ゲル(a2)を得た。
【0054】<製造例3>
アクリル酸81.8部をアクリル酸22.9部とアクリル酸ソーダ76.8部との混合物にする以外は、製造例1と同様にして、吸水性樹脂を含む含水ゲル(a3)を得た。
【0055】<製造例4>
アクリル酸208部と水13.5部との混合液に、冷却しながら25%水酸化ナトリウム水溶液346.0部を添加した。この溶液に過硫酸カリウム0.1部、次亜リン酸ソーダ0.02部及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセ化成品工業社、商品名:デナコールEX810)0.1部を添加して、5?10℃に温度調節してモノマー水溶液を調製した。
次いで、攪拌機、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、シクロヘキサン624部を入れ、これにポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬社、商品名:プライサーフA210G)1.6部を添加して溶解させたのち、攪拌しつつ窒素ガスを導入した。
次いで反応容器を加熱してシクロヘキサンとポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステルとの混合物を75℃とし、攪拌下、これに5?10℃に保った上記のモノマー水溶液を60分間かけてほぼ一定速度で窒素ガスと共に滴下した。このときフラスコ内の酸素濃度は10?30ppmに保った。モノマー水溶液の導入終了後さらに30分間75℃で攪拌した後、水をシクロヘキサンとの共沸によって留去し、生成した吸水性樹脂の含水率が約20%(含水率は除去した水の量より算出した値)となった時点で攪拌を中止すると、吸水性樹脂が沈降したので、デカンテーションにより吸水性樹脂とシクロヘキサンとを分離し吸水性樹脂を含む含水ゲル(a4)を得た。
【0056】<実施例1>
製造例1で得られた吸水性樹脂を含む含水ゲル(a1)をインターナルミキサーで3?7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル325.0部に48%の水酸化ナトリウム水溶液67.5部を添加してカルボキシル基の72当量%を中和して、中和細断ゲルを得た。なお、JIS K0113-1997に準拠(0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用、電位差滴定法、変曲点法)して測定した酸価から算出した中和細断ゲルの中和度は70.1当量%であった。
次いで中和細断ゲル392.5部に低融点乾燥助剤(b11){n-テトラデシルアルコールエチレンオキシド2モル付加物)20部及び乾燥助剤(b1)の分散剤として使用するポリエーテル変成シリコーン(SH3746、東レダウコーング社製)0.5部からなる混合物の1%水分散液}19.6部を添加し、インターナルミキサーで、さらに混練して混練ゲルを得た。ついで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この混練ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して、乾燥体を得た。この乾燥体を粉砕した後、目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いて篩い分けし、150?710μmの粒度の吸水性樹脂(1)を得た。
【0057】<実施例2>
乾燥助剤(b1)19.6部を、低融点乾燥助剤(b12){ジメチルシリコーン(SH200 20mPa・s、東レダウコーニング社製)20部及び乾燥助剤(b2)の分散剤として使用するポリエーテル変成シリコーン(SH3746、東レダウコーニング社製)1部からなる混合物の1%水分散液}19.6部に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(2)を得た。
【0058】<実施例3>
乾燥助剤(b1)19.6部を、低融点乾燥助剤(b13){グリセリンプロピレンオキシド15モル付加物の1%プロピルアルコール溶液}19.0部に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(3)を得た。
【0059】<実施例4>
乾燥助剤(b1)19.6部を、低融点乾燥助剤(b14){アミノ変成シリコーン(KF880、信越化学工業社製)の0.4%メタノール溶液}18.0部に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(4)を得た。
【0060】<実施例5>
乾燥助剤(b1)19.6部を、高融点乾燥助剤(b21){エチレングリコールステアリン酸ジエステルの1%エチルアルコール分散液}14.6部に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(5)を得た。
【0061】<実施例6>
乾燥助剤(b1)19.6部を、高融点乾燥助剤(b22){n-オクタデシルアルコールの1%イソプロピルアルコール溶液}20.8部に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(6)を得た。
【0062】<実施例7>
製造例1で得られた吸水性樹脂を含む含水ゲル(a1)を製造例2で得られた吸水性樹脂を含む含水ゲル(a2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂(7)を得た。
【0063】<実施例8>
含水ゲル(a1)を含水ゲル(a2)に変更し、低融点乾燥助剤(b11)を低融点乾燥助剤(b12)に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(8)を得た。
含水ゲル(a2)を用いて得られた中和細断ゲルの中和度は70.7当量%であった(以下同じ)。
【0064】<実施例9>
含水ゲル(a1)を含水ゲル(a2)に変更し、低融点乾燥助剤(b11)19.6部を低融点乾燥助剤(b13)15.2部に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(9)を得た。
【0065】<実施例10>
含水ゲル(a1)を含水ゲル(a2)に変更し、低融点乾燥助剤(b11)19.6部を低融点乾燥助剤(b14)18.0に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(10)を得た。
【0066】<実施例11>
含水ゲル(a1)を含水ゲル(a2)に変更し、低融点乾燥助剤(b11)19.6部を高融点乾燥助剤(b21)14.6部に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(11)を得た。
【0067】<実施例12>
含水ゲル(a1)を含水ゲル(a2)に変更し、低融点乾燥助剤(b11)19.6部を高融点乾燥助剤(b22)20.8部に変更した以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂(12)を得た。
【0068】<実施例13>
製造例3で得られた吸水性樹脂を含有する含水ゲル(a3)をインターナルミキサーで3?7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル330.0部に低融点乾燥助剤(b11)20.8部を添加し、インターナルミキサーで、さらに混練して混練ゲルを得た。ついで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この混練ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して乾燥体を得た。この乾燥体を粉砕した後、目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いて篩い分けし、150?710μmの粒度の吸水性樹脂(13)を得た。
【0069】<実施例14>
低融点乾燥助剤(b11)を低融点乾燥助剤(b12)に変更した以外、実施例13と同様にして吸水性樹脂(14)を得た。
【0070】<実施例15>
低融点乾燥助剤(b11)を低融点乾燥助剤(b13)に変更した以外、実施例13と同様にして吸水性樹脂(15)を得た。
【0071】<実施例16>
低融点乾燥助剤(b11)20.8部を低融点乾燥助剤(b14)17.0部に変更した以外、実施例13と同様にして吸水性樹脂(16)を得た。
【0072】<実施例17>
低融点乾燥助剤(b11)20.8部を高融点乾燥助剤(b21)21.6部に変更した以外、実施例13と同様にして吸水性樹脂(17)を得た。
【0073】<実施例18>
低融点乾燥助剤(b11)20.8部を高融点乾燥助剤(b22)16.4部に変更した以外、実施例13と同様にして吸水性樹脂(18)を得た。
【0074】<実施例19>
製造例4で得られた吸水性樹脂を含有する含水ゲル(a4)360.0部に低融点乾燥助剤(b11)22.4部を添加し、ナウターミキサーで、さらに混練して混練ゲルを得た。ついで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き1mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この混練ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して乾燥体を得た。この乾燥体を目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いてふるい分けして、150?710μmの粒度の吸水性樹脂(19)を得た。
【0075】<実施例20>
低融点乾燥助剤(b11)を低融点乾燥助剤(b12)に変更した以外、実施例19と同様にして吸水性樹脂(20)を得た。
【0076】<実施例21>
低融点乾燥助剤(b11)を低融点乾燥助剤(b13)に変更した以外、実施例19と同様にして吸水性樹脂(21)を得た。
【0077】<実施例22>
低融点乾燥助剤(b11)22.4部を低融点乾燥助剤(b14)18.6部に変更した以外、実施例19と同様にして吸水性樹脂(22)を得た。
【0078】<実施例23>
低融点乾燥助剤(b11)22.4部を高融点乾燥助剤(b21)23.8部に変更した以外、実施例19と同様にして吸水性樹脂(23)を得た。
【0079】<実施例24>
低融点乾燥助剤(b11)22.4部を高融点乾燥助剤(b22)18.2部に変更した以外、実施例19と同様にして吸水性樹脂(24)を得た。
【0080】<比較例1>
縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、実施例1と同様にして得た中和細断ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して乾燥体を得た。この乾燥体を粉砕した後、目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いて篩い分けし、150?710μmの粒度を持つ比較用の吸水性樹脂(25)を得た。
【0081】<比較例2>
実施例1{含水ゲル(a1)を使用}と同様にして得た中和細断ゲルを実施例8{含水ゲル(a2)を使用}と同様にして中和細断ゲルに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較用の吸水性樹脂(26)を得た。
【0082】<比較例3>
製造例3で得られた吸水性樹脂を含有する含水ゲル(a3)をインターナルミキサーで3?7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た。ついで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この細断ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して乾燥体を得た。この乾燥体を粉砕した後、目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いて篩い分けし、150?710μmの粒度を持つ比較用の吸水性樹脂(27)を得た。
【0083】<比較例4>
製造例4で得られた吸水性樹脂を含む含水ゲル(a4)を、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き1mmの金網を装着したステンレス製のトレイに約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して、乾燥体を得た。この乾燥体を目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いて篩い分けし、150?710μmの粒度を持つ比較用の吸水性樹脂(28)を得た。
【0084】<比較例5>
低融点乾燥助剤(b11)19.6部をn-ドデシルアルコールエチレンオキシド14モル付加物(溶解度:100g以上/100g水、HLB値:15.7、融点:38℃、加熱処理後のハーゼン単位色数:100)の2%水溶液18.4部に変更した以外、実施例1と同様にして、比較用の吸水性樹脂(29)を得た。
【0085】<比較例6>
低融点乾燥助剤(b11)19.6部をソルビタン-n-ドデカン酸モノエステル(溶解度:0.0g/100g水、HLB値:2.8、融点46℃、加熱処理後のハーゼン単位色数:500)の2%水分散液20.0部に変更した以外、実施例1と同様にして比較用の吸水性樹脂(30)を得た。
【0086】<比較例7>
低融点乾燥助剤(b11)19.6部をソルビタンポリオキシエチレン20モル付加物n-オクタデカン酸モノエステル(溶解度100g以上/100g水、HLB値:14.9、融点25℃、加熱処理後のハーゼン単位色数:500)の2%水溶液18.6部に変更した以外、実施例1と同様にして比較用の吸水性樹脂(31)を得た。
【0087】<比較例8>
低融点乾燥助剤(b11)19.6部をポリオキシエチレン40モル付加物n-オクタデカン酸ジエステル(溶解度:5.0g/100g水、HLB値:16.3、融点46℃、加熱処理後のハーゼン単位色数:500)の2%水溶液20.0部に変更した以外、実施例1と同様にして比較用の吸水性樹脂(32)を得た。
【0088】<比較例9>
低融点乾燥助剤(b11)20.8部をn-ドデシルアルコールエチレンオキシド14モル付加物の2%水溶液17.6部に変更した以外、実施例13と同様にして比較用の吸水性樹脂(33)を得た。
【0089】<比較例10>
低融点乾燥助剤(b11)20.8部をソルビタンポリオキシエチレン20モル付加物n-オクタデカン酸モノエステルの2%水溶液21.2部に変更した以外、実施例13と同様にして比較用の吸水性樹脂(34)を得た。
【0090】<比較例11>
低融点乾燥助剤(b11)22.4部をポリオキシエチレン40モル付加物n-オクタデカン酸ジエステルの2%水溶液19.4部に変更した以外、実施例13と同様にして比較用の吸水性樹脂(35)を得た。
【0091】<比較例12>
低融点乾燥助剤(b11)22.4部をポリオキシエチレン40モル付加物n-オクタデカン酸ジエステルの2%水溶液23.0部に変更した以外、実施例19と同様にして比較用の吸水性樹脂(36)を得た。
【0092】実施例1?24及び比較例1?12の吸水性樹脂(1)?(36)を用い、以下のようにして吸水性物品(1)?(36)を作成した。
<吸水性物品の製造>
吸水性樹脂(1)9部と日本薬局方脱脂綿(川本産業株式会社製)11部とを外観上均一となるまで、混合しながら手で約500回解繊した。
その後、解繊した混合物を15cm×45cmの大きさに積繊した後、NPAシステム(株)製ヒータプレートプレス機(型番N4008-00)を用い、50℃において、8Kg/cm^(2) で30秒間プレスすることにより吸水性樹脂と脱脂綿との混合体(1)を得た。
次に、液非透過性裏面シート{厚さ40μmのポリプロピレンフィルム(15cm×45cm)}上に、混合体(1)を配し、その上に液透過性表面シート{厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート不織布(15cm×45cm)}を配置した後、四辺を各1cm幅で熱プレスすることにより吸水性物品(1)を得た。
吸水性樹脂(1)を吸水性樹脂(2)?(36)に変更した以外、上記と同様にして、吸水性物品(2)?(36)を得た。
これらの吸水性物品(1)?(36)について、リウェットを評価し、これらの結果を表1に示した。
【0093】【表3】

【0094】本発明の製造法によって得られた吸水性樹脂(1)?(24)は、含水ゲルからの乾燥時間が非常に短く(13?19分)、ハンター白度が66?73で着色が少なく、表面張力は63?72(ダイン/cm)であり、吸水性物品に適用した場合のリウェットは非常に良好であった。特にこれらのうち、吸水性物品(1)、(3)及び(15)は極めて優れたリウェットを示した。
これに対して、比較例の製造法によって得られた吸水性樹脂は、含水ゲルからの乾燥時間が非常に長い(31?46分)ばかりでなく、着色が多くなったり(比較例5?12)、表面張力が低くなり(比較例5?12)、吸水性物品に適用した場合にリウェットが悪化するものがあった(比較例5、7?12)。」

イ 甲2
(2a)「

」(1葉目)
(2b)「

」(2葉目)

ウ 甲3
(3a)「【請求項1】水溶性エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液と気体とを流体混合により両者を混合し、気泡の分散した単量体水溶液を得た後、前記気泡の分散した状態で前記単量体を重合せしめることを特徴とする親水性重合体の製造方法。
【請求項2】単量体水溶液と気体のどちらか一方の流体の流れの中に、その流れと並流に他方の流体をノズルから噴射することにより両者を混合せしめることを特徴とする請求項1記載の親水性重合体の製造方法。
【請求項3】単量体水溶液と気体とを、凹凸または/および充填物を有する混合域に導入することにより、両者を混合せしめることを特徴とする請求項1記載の親水性重合体の製造方法。
【請求項4】単量体水溶液が界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1?3何れか一つに記載の親水性重合体の製造方法。
【請求項5】気体が不活性ガスである請求項1?4何れか一つに記載の親水性重合体の製造方法。
【請求項6】単量体水溶液が架橋剤を含むものである請求項1?5何れか一つに記載の親水性重合体の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1?6)
(3b)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は親水性重合体の製造方法に関するものである。詳しく述べると、吸収速度が速くかつ乾燥が容易で粉砕時の負荷が小さい親水性重合体の製造方法に関するものである。
【0002】【従来の技術】近年、自重の数十倍から数百倍の水を吸収する親水性重合体が開発され、生理用品や紙おむつ等の衛生材料分野をはじめとして農園芸用分野、鮮度保持等の食品分野、結露防止や保冷材等の産業分野等、吸水や保水を必要とする用途に種々の親水性重合体が使用されてきている。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0004】用いられる用途に応じて、親水性重合体に要求される性能は異なるが、衛生材料向けの親水性重合体に望まれる特性としては、水性液体に接した際の、高い加圧下の吸収倍率、速い吸収速度、大きい通液性等が挙げられる。しかしながら、これらの特性間の関係を必ずしも、正の相関を示さず、同時にこれらの特性を改良することは困難であった。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0012】【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、気泡が分散した親水性重合体の製造方法を提供することにある。
【0013】本発明の他の目的は、無加圧下および加圧下の吸水速度が速くかつ乾燥が容易で粉砕時の負荷が小さい親水性重合体の製造方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、吸水速度あるいは溶解速度の速い親水性重合体の製造方法を提供することにある。」
(3c)「【0022】【発明の実施の形態】本発明は、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液と気体とを流体混合により両者を混合し、気泡の分散した単量体水溶液を得た後、前記気泡の分散した状態で前記単量体を重合せしめることを特徴とする親水性重合体の製造方法である。
【0023】これらの水溶性エチレン性不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のアニオン性単量体やそのリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルアセトアミド等のノニオン性親水性基含有単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のアミノ基含有不飽和単量体やそれらの4級化物等を具体的に挙げることができる。また、得られる重合体の親水性を極度に阻害しない程度の量で、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル類や酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の疎水性単量体を使用してもよい。単量体成分としてはこれらのうちから1種または2種以上を選択して用いることができるが、最終的に得られる吸水性材料の吸水諸特性を考えると(メタ)アクリル酸(塩)、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸(塩)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミド、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはその4級化物からなる群から選ばれる1種以上のものが好ましく、(メタ)アクリル酸(塩)を必須成分として含むものがさらに好ましい。この場合(メタ)アクリル酸の30?90モル%が塩基性物質で中和されているものが最も好ましい。
【0024】本発明では、前記水溶性エチレン性不飽和単量体と共重合可能もしくは前記単量体の官能基と反応することの出来る官能基を2個以上有する架橋剤を併用することができる。架橋剤を併用することで吸水性能に優れた親水性重合体を得ることが出来る。
架橋剤としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N´-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、トリメチロールプロパンジ(メタ)アリルエーテル、トリアリルアミン、テトラアリロキシエタン、グリセロールプロポキシトリアクリレート等の1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングルコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルアルコール、ジエタノールアミン、トリジエタノールアミン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、グルコース、マンニット、マンニタン、ショ糖、ブドウ糖などの多価アルコール;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル;エピクロロヒドリン、α-メチルクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;グルタールアルデヒド、グリオキザール等のポリアルデヒド;エチレンジアミン等のポリアミン類;水酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、塩化硼砂マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛および塩化ニッケル等の周期律表2A族、3B族、8族の金属の水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、酸化物、硼砂等の硼酸塩、アルミニウムイソプロピラート等の多価金属化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を、反応性を考慮した上で用いることができるが、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を架橋剤として用いるのが最も好ましい。
【0025】本発明において使用される架橋剤の比率は、水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部当り0?2重量部、好ましくは0.001?1重量部である。架橋剤が0.001重量部未満では、得られる親水性重合体の水可溶性成分量の割合が多くなるため、充分な加圧下における吸水量を維持できないことがある。一方、架橋剤が2重量部を越えると、架橋密度が高くなりすぎて、得られる親水性重合体の吸水量が不充分となることがある。」
(3d)「【0026】また、本発明方法において、水溶性エチレン性不飽和単量体と架橋剤の合計量の水に対する濃度は前記単量体が溶解する濃度であれば特に制限ないが、一般に15重量%?飽和濃度、好ましくは20?50重量%である。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0028】流体混合する装置としてはアスピレーターやエジェクター等が挙げられる。・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
【0031】この発明では、単量体水溶液と気体とを、凹凸または/および充填物を有する混合域に導入することにより、両者を混合させることもできる。」
(3e)「【0032】・・・・・・・・・・・・・・・
本発明方法において、重合反応は界面活性剤の存在下に行なうことが好ましい。界面活性剤を用いることで気泡を安定に分散させることができる。また、界面活性剤の種類や量を適宜コントロールすることにより、得られる親水性重合体の孔径や吸水速度をコントロールすることができる。このような界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等がある。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0036】さらに、界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤がある。フッ素系界面活性剤を用いることにより、単量体水溶液中に不活性ガスの気泡を長時間安定に分散させることができる。また気泡の量、孔径のコントロールも容易である。そして得られる親水性重合体は多孔質な発泡体となり、吸収速度の速いものとなる。また、抗菌性を付与することもできる。本発明において使用されるフッ素系界面活性剤としては、種々のものがあるが、例えば一般の界面活性剤の親油基の水素をフッ素に置き換えてパーフルオロアルキル基としたものであり、界面活性が格段に強くなっているものである。
【0037】フッ素系界面活性剤の親水基を変えると、アニオン型、ノニオン型、カチオン型および両性型の4種類があるが、疎水基の方は同じ構造のフルオロカーボン鎖を用いることが多い。また、疎水基である炭素鎖は直鎖であっても分枝状であっても使用可能である。代表的なフッ素系界面活性剤としては、つぎのものがある。
【0038】フルオロアルキル(C2?C10)カルボン酸、N-パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3-[フルオロアルキル(C6?C11)オキシ]-1-アルキル(C3?C4)スルホン酸ナトリウム、3-[ω-フルオロアルカノイル(C6?C8)-N-エチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、N-[3-(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、フルオロアルキル(C11?C20)カルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7?C13)、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキル(C4?C12)スルホン酸塩(Li、K、Na)、N-プロピル-N-(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6?C10)アルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6?C10)-N-エチルスルホニルグリシン塩(K)、リン酸ビス(N-パーフルオロオクチルスルホニル-N-エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキル(C6?C16)エチルリン酸エステル、パーフルオロアルキル第四級アンモニウムヨウ化物(商品名 フロラードFC-135、住友スリーエム株式会社製カチオン性フッ素系界面活性剤)、パーフルオロアルキルアルコキシレート(商品名 フロラードFC-171、住友スリーエム株式会社製ノニオン性界面活性剤)、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩(商品名 フロラードFC-95およびFC-98、住友スリーエム株式会社製アニオン性界面活性剤)。
【0039】この発明では、有機金属界面活性剤を用いることができる。本発明において使用される有機金属界面活性剤は、分子の主鎖や側鎖にSi、Ti、Sn、Zr、Ge等の金属を有するものをいうが、好ましくは分子の主鎖にSiを有するものが好ましく、より好ましくはシロキサン系界面活性剤である。」
(3f)「【0047】これらの界面活性剤は、使用される水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部当り0.0001?10重量部、好ましくは0.0003?5重量部である。すなわち、0.0001重量部未満では、気体の分散が不十分となる場合がある。一方、10重量部を越えると、その添加量に見合っただけの効果がでなくなることがあり、非経済的である。」
(3g)「【0063】本発明による水溶液重合は、単量体水溶液に気泡を分散させた状態で行なうことが必須である。そして、そのときの気泡が分散した単量体水溶液の体積は、非分散状態の体積の1.02倍以上、好ましくは1.08倍以上、より好ましくは1.11倍以上、最も好ましくは1.2倍以上である。」
(3h)「【0065】上記の気泡含有含水ゲルは、必要に応じて反応中あるいは反応終了後に、所定の方法によって約0.1mm?約50mm程度の破片に解砕する。ついで、より一層効率的に発泡させるために、該気泡含有含水ゲルを乾燥させる。」
(3i)「【0071】また、上記親水性重合体は、表面架橋剤によって処理され、共有結合(二次架橋)が形成されることにより、その表面近傍の架橋密度がさらに高められていてもよい。」
(3j)「【0083】上記の親水性重合体に、さらに、必要に応じて、消臭剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類等を添加し、これにより、親水性重合体に種々の機能を付与してもよい。」
(3k)「【0086】親水性重合体は、例えば、パルプ等の繊維質材料と複合化する(組み合わせる)ことにより、吸収物品とされる。
【0087】吸収物品としては、例えば、紙オムツや生理用ナプキン、失禁パット、創傷保護材、創傷治癒材等の衛生材料(体液吸収物品);ペット用の尿等の吸収物品;建材や土壌用保水材、止水材、パッキング材、ゲル水嚢等の土木建築用資材;ドリップ吸収材や鮮度保持材、保冷材等の食品用物品;油水分離材、結露防止材、凝固材などの各種産業用物品;植物や土壌等の保水材等の農園芸用物品;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。なお、例えば紙オムツは、液不透過性の材料からなるバックシート(裏面材)、上記の親水性重合体組成物、および液透過性の材料からなるトップシート(表面材)を、この順に積層して互いに固定するとともに、この積層物に、ギャザー(弾性部)やいわゆるテープファスナー等を取り付けることにより形成される。また、紙オムツには、幼児に排尿・排便の躾をする際に用いられる紙オムツ付きパンツも含まれる。
【0088】このようにして得られる親水性重合体は、吸水量が10?100g/g、好ましくは20?80g/gである。」
(3L)「【0090】【実施例】以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明の範囲がこれらの例により限定されるものではない。また実施例および比較例中の%は特に断りの無い限り重量%を、また部は重量部を意味するものとする。
【0091】なお、親水性重合体の吸水量、吸水速度、水可溶性成分量は以下の方法により測定した。
【0092】(1)親水性重合体の吸水量
親水性重合体0.2gをティーバッグ式袋(6cm×6cm)に均一に入れ、開口部をヒートシールした後、0.9%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。60分後にティーバック式袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、該袋の重量W1(g)を測定した。また、同様の操作を親水性重合体を用いないで行い、その時の重量W0(g)を測定した。そして、これら重量W1、W0から、次式、
吸水量(g/g)=(W1-W0)/親水性重合体の重量(g)
に従って吸水量(g/g)を算出した。
【0093】(2)親水性重合体の吸水速度
内径50mm、高さ70mmの有底円筒状のポリプロピレン製カップに、親水性重合体(予め篩により600μm?300μmの範囲の粒子径部分を分取し、このものを試料とした)1.0gを入れた。次に該カップに生理食塩水28gを注いだ。そして、生理食塩水を注いだ時点から、該生理食塩水が親水性重合体に全て吸収されて見えなくなる状態までの時間を測定した。該測定を3回繰り返し、これらの平均値を吸水速度(秒)とした。
【0094】(3)親水性重合体の水可溶性成分量
親水性重合体0.5gを1000mlの脱イオン水中に分散させ、16時間撹拌した後、濾紙で濾過した。そして、得られた濾液をコロイド滴定により滴定し親水性重合体中の水可溶性成分量(%)を求めた。
【0095】(親水性重合体の平均粒子径)平均粒子径は、以下に示す目開き(850μm、600μm、300μm、150μm、106μm)を用いて親水性重合体を篩分級した後、残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、R=50%に相当する粒径を平均粒子径とした。
【0096】実施例1
アクリル酸306g、37%アクリル酸ナトリウム3240g、ポリエチレングリコール(n=8)ジアクリレート8.2g、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120、花王株式会社製)0.3g、純水1420g及び10%過硫酸ナトリウム水溶液10gを混合し単量体水溶液を調製した。この単量体水溶液と窒素とを株式会社愛工舎製ホイップオートZを用いて流体混合し、単量体水溶液中に窒素ガスの気泡を分散せしめ、気泡の分散した状態で単量体の重合を行った。具体的には第3図に示すように、アスピレーター12を用いてこの単量体水溶液10を毎分1kgでノズル側から供給し、側管より窒素ガス11を毎分2Lで供給して両者を流体混合し、さらに凹凸(突起)9を有する混合域8を通過させ重合槽16に導いた。混合域8を通過した単量体水溶液10は窒素の気泡が分散し体積が1.5倍に増加していた。この気泡含有単量体水溶液13に10%亜硫酸水溶液10gを加え、直ちに重合を開始せしめた。引き続き、気泡が分散した状態で温度25?95℃で1時間静置重合を行った。重合後、多量に気泡を含むスポンジ状含水ゲル状重合体を10?30mmの角状に裁断し、ついで160℃の熱風乾燥機中2時間乾燥した。乾燥物を粉砕機で粉砕し、開口が850μmの篩通過物を分取して平均粒子径250μmの本発明の親水性重合体(1)を得た。本発明の親水性重合体(1)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ40.0g/g、10秒及び8%であった。
【0097】実施例2
実施例1においてポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートを0.15g用いた他は実施例1と同様にして平均粒子径300μmの本発明の親水性重合体(2)を得た。本発明の親水性重合体(2)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ40.5g/g、15秒及び8%であった。
【0098】実施例3
実施例1においてポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートを0.12g用いた他は実施例1と同様にして平均粒子径420μmの本発明の親水性重合体(3)を得た。本発明の親水性重合体(3)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ45.5g/g、28秒及び12%であった。
【0099】実施例4
実施例1においてポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートを0.12g用いた他は実施例1と同様にして平均粒子径450μmの本発明の親水性重合体(4)を得た。本発明の親水性重合体(4)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ46.2g/g、40秒及び12.2%であった。
【0100】実施例5
実施例1において気泡の分散した単量体水溶液を10Lのニーダーに導入し静置重合を行った。重合ゲルの温度が60℃に達した時点でニーダーを攪拌しゲルを解砕した。解砕後のゲルを取り出し、実施例1と同様にして平均粒子径440μmの本発明の親水性重合体(5)を得た。本発明の親水性重合体(5)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ42.2g/g、22秒及び8.2%であった。
【0101】実施例6
実施例1においてポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートの代わりにフッ素系カチオン性界面活性剤(フロラードFC?135、住友スリーエム株式会社製)0.3gを用いた他は実施例1と同様にして平均粒子径340μmの本発明の親水性重合体(6)を得た。本発明の親水性重合体(6)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ40.5g/g、9秒及び8.5%であった。
【0102】実施例7
実施例1において単量体水溶液にヒドロキシエチルセルロース12gを更に溶解させ、粘度63cPの単量体水溶液を用いた他は実施例1と同様にして平均粒径320μmの本発明の親水性重合体(7)を得た。本発明の親水性重合体(7)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ42.5g/g、12秒及び8.5%であった。
【0103】実施例8
アクリル酸118g、メチレンビスアクリルアミド0.3787g、フッ素系カチオン性界面活性剤(フローラードFC-135、住友スリーエム株式会社製)0.059g、5%V-50(和光純薬株式会社製)水溶液7.07g、0.1%L?アスコルビン酸水溶液及び純水401.4gを混合し単量体水溶液を調製した。この単量体水溶液を実施例1と同様にして窒素ガスと流体混合し、窒素ガスの分散した単量体水溶液を得た。体積は1.6倍に増加していた。引き続き0.35%過酸化水素水溶液を添加し、直ちに重合を開始せしめた。ついで、気泡が分散した状態で温度18?80℃で1時間静置重合を行った。重合後、多量の気泡分散した含水ゲル状重合体を双腕型ニーダーで解砕した。解砕した含水ゲル状重合体を取り出し、バット上で6.5%水酸化ナトリウム水溶液755.8gを加え中和し、中和が均一になされフェノールフタレインによる呈色反応が認められなくなるまで熟成した。含水ゲルに含まれるカルボキシル基の中和率は75%であった。中和後のゲルを熱風乾燥機で160℃1時間乾燥し、粉砕して本発明の親水性重合体(8)を得た。本発明の親水性重合体(8)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ58g/g、32秒及び5.2%であった。
【0104】実施例9
実施例2で得た親水性重合体(2)100部に対しエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX-810、長瀬化成株式会社製)0.25部、プロピレングリコール2.5部、純水7.5部、イソプロピルアルコール5部からなる架橋剤水溶液を添加混合し、195℃で60分間加熱処理して本発明の親水性重合体(9)を得た。本発明の親水性重合体(9)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ29.5g/g、14秒および7.9%であった。
【0105】実施例10
実施例8で得た親水性重合体(10)100部に対しエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX-810、長瀬化成株式会社製)0.3部、プロピレングリコール3部及びイソプロピルアルコール3部からなる架橋剤溶液を添加混合した後、水9部及びイソプロピルアルコール6部からなる混合液を添加混合した。表面架橋剤を混合した親水性重合体(8)を185℃で60分間加熱処理した。このものにポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(商品名:レオドールTW-S120、花王株式会社製)の0.33%メタノール溶液3部を混合し80℃で乾燥し、本発明の親水性重合体(10)を得た。本発明の親水性重合体(10)の吸水量、吸水速度および水可溶性成分量はそれぞれ38.5g/g、28秒および5.2%であった。
【0106】比較例1
5リットルのビーカー中、アクリル酸306g、37%アクリル酸ナトリウム3240g、ポリエチレングリコール(n=8)ジアクリレート8.2g及び純水1420gを混合し単量体水溶液を調製した。単量体水溶液の粘度は3cPであった。単量体水溶液中に窒素を吹き込み、溶液中の溶存酸素を除去した。ついで10リッターの双腕型ニーダーに単量体水溶液を注ぎ、攪拌下に10%過硫酸ナトリウム10gおよび10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10gを添加し、直ちに重合を開始せしめ、温度25?75℃で1時間静置重合を行った。重合後ニーダーにより、含水ゲル状重合体を10mm角から50mm角の大きさに解砕し、ついで160℃の熱風乾燥機中1時間乾燥した。含水ゲル状重合体の中に気泡はほとんどなかった。乾燥物を粉砕機で粉砕し、開口が850μmの篩通過物を分取して平均粒子径460μmの比較親水性重合体(1)を得た。比較親水性重合体(1)の吸水量、吸水速度及び水可溶性成分量はそれぞれ42.2g/g、126秒及び9.0%であった。」
(3m)「【0107】【発明の効果】本発明は、以上のごとき構成よりなるものであるから、無加圧下および加圧下の吸水速度が速くかつ吸水量が大きく、かつ水可溶性成分量が少ないので、生理用品や紙おむつ等の衛生材料分野をはじめとして農園芸用分野鮮度保持等の食品分野、結露防止や保冷材等の産業分野等、吸水や保水を必要とする種々の用途に好適に利用できる。」
(3n)「【図面の簡単な説明】
【図1】アスピレーターの断面図である。
【図2】エジェクターの断面図である。
【図3】隙間に凹凸を有する混合域の断面図である。
【符号の説明】
1 ノズルより噴出する流体の入口
2 もう一つの流体の入口
3 ノズル
4 ノズルより噴出する流体の入口
5 もう一つの流体の入口
6 末広ノズル
7 ディフューザー
8 混合域
9 凹凸
10 単量体水溶液
11 気体
12 アスピレーター
13 気泡含有単量体水溶液
14 単量体調製槽
15 ポンプ
・・・・・・・・・・・・・・・
【図1】

【図2】

【図3】



エ 甲4
(4a)「米国のアトラス社(現在ICIアメリカ社)のグリフィン氏は界面活性剤の親水性を表わす数値としてHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)という考え方を創案した。これは訳すと親水性と親油性とのつり合いという意味である。とくにグリフィン氏の創案した方式をグリフィンのHLBと呼ぶこともある。
HLB計算式によるとポリエチレングリコール型および多価アルコール型非イオン界面活性剤の親水性すなわちHLBは次のように計算される。
非イオン界面活性剤のHLB
=(親水基部分の分子量/界面活性剤の分子量)×(100/5)
={親水基重量/(疎水基重量+親水基重量)}×(100/5)
=(親水基の重量%)×(1/5)
(決定注:式の表記を原文とは変えて示したが、意味は同じである。)
だから親水基が全然ないパラフィンのようなものはHLB=0,親水基ばかりで疎水基のないポリエチレングリコールのようなものはHLB=20ということになり,非イオン界面活性剤のHLBは0?20の間にあることになる。」(128頁下から9行?129頁5行)
(4b)「小田名誉教授は・・・各界面活性剤の無機性の値と有機性の値との比率からそのHLBを計算する方法を発表されている^(*2)。この考え方を拡張するとたいへんぐあいの良い頭の整理ができる。
HLB≒10×(無機性/有機性)
(決定注:式の表記を原文とは変えて示したが、意味は同じである。)
有機化合物の有機性と無機性の数値は第3・3・11表に示す値から計算される。そこで無機性と有機性との非を用いて被乳化物および乳化剤の親水性の程度を表わすことにすると,マシン油の乳化についても・・・マシン油の無機性/有機性の値が大きいほど乳化剤の無機性/有機性の値の大きいものが適することがわかる。」(197頁7?15行)
(4c)「

」(198頁)

オ 甲5
この刊行物は、頒布日の記載はないが最終葉(裏表紙)末尾に「?Shin-Etsu2006.2/2015.11・・・Printed in Japan」の表示があるものである。
(5a)「

」(2葉目)

カ 甲6
(6a)「【請求項1】吸水性樹脂(A)と、数平均分子量が500以上2,000,000以下の水溶性樹脂(B)とを含有してなることを特徴とする吸収剤。
・・・・・・・・・・・・・・・
【請求項3】水溶性樹脂(B)がノニオン性の水溶性樹脂である請求項1又は2記載の吸収剤。
【請求項4】水溶性樹脂(B)が、ポリオキシアルキレン基含有化合物である請求項1?3のいずれかに記載の吸収剤。
【請求項5】水溶性樹脂(B)の含有量が、吸水性樹脂(A)の重量に基づいて0.05重量%以上20.0重量%以下である請求項1?4のいずれかに記載の吸収剤。
【請求項6】請求項1?5のいずれかに記載の吸収剤と繊維状物とを必須構成成分としてなる吸収体。
【請求項7】吸収剤の含有量が、吸収剤と繊維状物との合計重量に基づいて40.0重量%以上99.9重量%以下である請求項6記載の吸収体。
【請求項8】請求項6又は7記載の吸収体を必須構成成分としてなる吸収性物品。」(特許請求の範囲の請求項1、3?8)
(6b)「【0001】【発明の属する技術】本発明は、吸収剤、これを用いてなる吸収体及び吸収性物品に関する。
【0002】【従来の技術】近年、吸収性物品(紙おむつ、生理用ナプキン及び尿取りパッド等)の使用時における不快感や違和感を軽減するため、吸収性物品の薄型化が進められている。薄型の吸収性物品としては、吸収体中の吸収剤の繊維状物に対する使用比率(吸収剤/繊維状物)を高くした吸収性物品等が知られている・・・。
【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の吸収性物品に使用される吸収体中の吸収剤の含有量が、吸収剤及び繊維状物の合計重量に基づいて40重量%以上になると、常圧下で吸収剤のゲルブロッキング現象を生じ、これに伴い吸収性能が悪化し、吸収性物品としての機能を発揮し得なくなる。従って、従来の吸収剤では、吸収性物品のさらなる薄型化の要望に応えることができない。すなわち、本発明の目的は、吸収体中の吸収剤の含有量が、吸収剤及び繊維状物の合計重量に基づいて、40重量%以上になってもゲルブロッキング現象を起こしにくい吸収剤を提供し、さらにこの吸収剤を用いた超薄型の吸収性物品を提供することである。
【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の吸収剤が上記目的を達成することを見いだし本発明に到達した。すなわち、本発明の吸収剤の特徴は、吸水性樹脂(A)と、数平均分子量が500以上2,000,000以下の水溶性樹脂(B)を含有してなる点にある。」
(6c)「【0005】【発明の実施の形態】吸水性樹脂(A)としては、通常の水膨潤性架橋ポリマー(a)等が使用できる。水膨潤性架橋ポリマー(a)としては、例えば、(1)?(8)のポリマー等が挙げられる。なお、これらのポリマーを2種以上併用してもよい。
(1)特公昭53-46199号公報又は特公昭53-46200号公報等に記載のデンプン-アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体(a1)。
(2)特開昭55-133413号公報等に記載の水溶液重合(断熱重合、薄膜重合及び噴霧重合等)により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)(a2)。
(3)特公昭54-30710号公報、特開昭56-26909号公報又は特開平11-5808号公報等に記載の逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)(a3)。
【0006】(4)特開昭52-14689号公報又は特開昭52-27455号公報等に記載のビニルエステルと不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体のケン化物(a4)。
(5)特開昭58-2312号公報又は特開昭61-36309号公報等に記載のアクリル酸(塩)とスルホ(塩)基含有モノマーとの共重合体(a5)。
(6)米国特許4389513号等に記載のイソブチレン-無水マレイン酸共重合架橋体(a6)。
(7)特開昭46-43995号公報等に記載のデンプン-アクリロニトリル共重合体の加水分解物(a7)。
(8)米国特許4650716号等に記載の架橋カルボキシメチルセルロース誘導体(a8)。
【0007】これらのうち、製造コストの観点から、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト共重合架橋体(a1)、水溶液重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)(a2)及び逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸(塩)(a3)が好ましく、さらに好ましくは(a2)及び(a3)である。」
(6d)「【0008】さらに、吸水性樹脂(A)には、必要に応じて、吸水性樹脂(A)の表面近傍を架橋することができる(表面架橋処理)。このように表面近傍を架橋処理した吸水性樹脂(A)は吸水速度がさらに向上し、かつ荷重がかかった状態での吸収量も大きくなるので好適である。表面架橋剤としては、例えば、特開昭59-189103号公報等に記載の多価グリシジル、特開昭58-180233号公報又は特開昭61-16903号公報等に記載の多価アルコール、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネート、特開昭61-211305号公報又は特開昭61-252212号公報等に記載のシランカップリング剤、並びに特開昭51-136588号公報又は特開昭61-257235号公報等に記載の多価金属等が挙げられる。」
(6e)「【0015】吸水性樹脂(A)の形状は特に限定はないが、粒状が好ましく、さらに好ましくは球状、顆粒状、破砕状、針状、薄片状及びこれらの一次粒子が互いに融着したような凝集状である。吸水性樹脂(A)の大きさは特に制限がないが、吸水性樹脂(A)の全重量の90重量%以上(好ましくは93重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上)の粒子径が1180μm以下が好ましく、さらに好ましくは1000μm以下、特に好ましくは850μm以下、最も好ましくは710μm以下であり、また38μm以上が好ましく、さらに好ましくは63μm以上、特に好ましくは106μm以上、最も好ましくは150μm以上である。」
(6f)「【0017】水溶性樹脂(B)の数平均分子量は、500以上であり・・・また、2,000,000以下であり・・・数平均分子量がこの範囲であると、本発明の吸収剤を吸収性物品に適用したときに常圧下においてドライ性及び耐モレ性がさらに良好となりやすい。・・・
【0018】本発明において、水溶性樹脂(B)とは、25℃の水100gに、少なくとも2g溶解する性能を有する樹脂のことを意味する。・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
【0020】水溶性樹脂(B)として、例えば、天然水溶性高分子(b1)、半合成水溶性高分子(b2)及び合成水溶性高分子(b3)等を使用することができる。天然水溶性高分子(b1)としては、動物又は植物の生体内に存在する高分子化合物が用いられ、例えば、デンプン、セルロース、アルギン酸、寒天、ペクチン、カラナーギン、コンニャク、アラビヤゴム、カゼイン、ゼラチン及び大豆タンパク質等が挙げられる。」
(6g)「【0044】水溶性樹脂(B)の含有量は、吸水性樹脂(A)の重量に基づいて、0.05重量%以上が好ましく・・・また、20.0重量%以下が好ましく・・・含有量がこの範囲であると、本発明の吸収剤を超薄型の吸収性物品に適用したときに常圧下においてドライ性及び耐モレ性がさらに良好になりやすい。」
(6h)「【0046】本発明の吸収剤は、例えば、吸水性樹脂(A)に水溶性樹脂(B)を添加・混合することにより製造できる。吸水性樹脂(A)に水溶性樹脂(B)を混合・処理する段階としては、水溶液重合の場合、重合工程の直前、重合工程の直後、脱水工程の直前(含水率10重量%前後まで脱水する工程)、脱水工程中、脱水工程の直後、粉砕工程直前、粉砕工程中、表面架橋処理工程直前、表面架橋処理工程中、表面架橋処理直後、乾燥工程(含水率10重量%以下に乾燥する工程)の直前、乾燥工程中及び乾燥工程後等が挙げられる。」
(6i)「【0057】本発明の吸収剤には添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末及び繊維状物等が用いられる。防腐剤としては、例えば、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸及びメチルナフトキノン等の保存料、並びにクロラミンB及びニトロフラゾン等の殺菌料等が挙げられる。防かび剤としては、例えば、p-オキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。抗菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム塩及びグルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0063】添加剤を使用する場合、添加剤の含有量は特に限定はないが、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、芳香剤及び消臭剤の含有量は、それぞれ、吸水性樹脂(A)の重量に基づいて、0.00001重量%以上が好ましく・・・また、10重量%以下が好ましく・・・また、着色剤、無機質粉末及び繊維状物の含有量は、それぞれ、吸水性樹脂(A)の重量に基づいて、0.1重量%以上が好ましく・・・また、25重量%以下が好ましく・・・ある。」
(6j)「【0064】本発明の吸収剤は、超薄型の吸収性物品を構成する材料として好適である。超薄型の吸収性物品としては、衛生用品が代表的であり、例えば、紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、紙タオル、パット(失禁者用パット及び手術用アンダーパット等)、ペットシート(ペット尿吸収シート及び保温シート等)等が挙げられる。」
(6k)「【0071】<SDME表面ドライネス(DS)の測定法>水平に配した測定試料の中央部分の上に、内径6.0cm、高さ3.8cmの円柱筒の開口部の一端を測定試料に接するようにして置き、この円柱筒内に生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)160mlを注液する。次いで、直ちに円柱筒を取り除いた後、直ちに測定試料の表層部に45度方向から可視光線を測定試料の中心部分に照射し、測定試料の表層部から90度方向に反射する光の強度を計測し始め、円柱筒を取り除いてから7分後(7分値)の光の強度(Is)を測定することにより算出する。
【0072】算出方法は、測定試料(含水率が5.5重量%未満の乾燥状態である。)に生理食塩水を全く注液しないで計測した光の強度(I_(100))をドライネス100%とし、生理食塩水5000mlに30分間浸漬した後に計測した光の強度(I_(0))をドライネス0%として、これらの値と光の強度(Is)とから比例計算する。なお、すべての測定は25±3℃、60±5RH%の雰囲気下で行う。また、測定試料の45度方向から可視光線を測定試料の中心部分に照射し測定試料の表層部から90度方向に反射する光の強度を計測することができるSDME表面ドライネス測定装置としては、例えば、ヨーロッパ特許第0312919号公報又は米国特許第49,924,084号公報に記載の装置等が使用できる。」
(6L)「【0074】<耐モレ性の測定法(TM)>測定試料の中央部を10×30cmの大きさにカットし、45度に傾斜させた板の上に平らに、10cmの片端を上部に、10cmの他端を下部にして置く(カットした吸収性物品の端部には何も施さない)。この測定試料の上部の片端から3cm(即ち下部の他端から27cm)、10cmの端部のいずれからも5cmの部分(約3cm^(2) の範囲)に生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を400g/分の速度で内径1cmのガラス管を使って注液する。注液は吸収性物品の表面から約1cm離れた所から行い、圧力等はかけず、自然落下とする。生理食塩水の注液を始めてから、測定試料の下部の他端から生理食塩水がモレ始めるまでの時間(i)(秒)を測定し、次式からモレまでの吸収量を求める。測定は3回行いその平均値を求め、耐モレ性(TM)とする。なお、全ての測定は25±3℃、60±5RH%の雰囲気下で行う。
耐モレ性(TM)=モレまでの吸収量(g)=i×400/60」
(6m)「【0082】【実施例】以下、実施例と比較例により本発明の有用性を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に記載がない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。実施例の荷重下吸収量(KK)、吸水倍率(KB)、保水量(HS)は、上記記載の方法と同様にして測定した。
<実施例1>ガラス製反応容器にアクリル酸81.8部、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.3部及び脱イオン水241部を仕込み、攪拌・混合しながら内容物の温度を1?2℃に保った。次いで内容物の液層中に窒素を30分間流入した後、密閉下、1%水溶液の過酸化水素を1部、0.2%のアスコルビン酸水溶液1.2部及び2%の2,2’-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8部を添加・混合して重合を開始させた(約5℃)。
【0083】重合と共に温度が上昇するが引き続き、密閉下で70?80℃に約8時間温度管理しながら重合した後、この水を含んだ重合体をインターナルミキサーで混練しながら、45%の水酸化ナトリウム水溶液72.7部を添加してカルボキシル基の72当量%を中和した。なお、JIS K0113-1997に準拠(0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用)して測定した酸価から算出した中和度は70.1当量%であった。次いでインターナルミキサーで2?5mmの大きさに細断し、150℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥した後、乾燥物を粉砕した後、標準ふるい(JIS Z8801-2000)を用いてふるい分けし、710μm以上の粒子及び150μm以下の粒子を取り除くことで150?710μmの粒子径を有する粒子に調整した。この粒子100部を50?60℃に保ちながら高速攪拌下で、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセ化成品工業社、商品名:デナコールEX810)/水/メタノール混合溶液(エチレングリコールジグリシジルエーテル/水/メタノール[重量比]=2/30/70)3.5部を加えて、引き続き50?60℃に保ちながら約15分間混合した後、140℃で40分間反応させることにより吸水性樹脂(A-1)を得た。
【0084】さらに、(A-1)に、25℃で、ミキサーで高速撹拌下、40%の数平均分子量4000のポリエチレングリコール{(B-1)、商品名:PEG-4000S、三洋化成工業社製、SP値:9.4、水(25℃、100g)に対する溶解度:2g以上}水溶液15.0部を加えて、120℃で、60分間乾燥し本発明の吸収剤(1)を得た。吸水剤(1)の吸水倍率(KB)は58g/g、また保水量(HS)は38g/g、また荷重下吸収量(KK)は15g/gであった。
【0085】<実施例2>40%の数平均分子量4000のポリエチレングリコール水溶液の使用量を20.0重量部から1.0重量部に変えた以外は実施例1と同様にして吸収剤(2)を得た。吸水剤(2)の吸水倍率(KB)は57g/g、また保水量(HS)は40g/g、また荷重下吸収量(KK)は16g/gであった。
【0086】<実施例3>40%の数平均分子量4000のポリエチレングリコール水溶液の使用量を20.0重量部から40.0重量部に変えた以外は実施例1と同様にして吸収剤(3)を得た。吸水剤(3)の吸水倍率(KB)は56g/g、また保水量(HS)は36g/g、また荷重下吸収量(KK)は15g/gであった。
【0087】<実施例4>40%の数平均分子量4000のポリエチレングリコール水溶液の使用量を20.0重量部から6.0重量部に変えた以外は実施例1と同様にして吸収剤(4)を得た。吸水剤(4)の吸水倍率(KB)は58g/g、また保水量(HS)は38g/g、また荷重下吸収量(KK)は16g/gであった。
【0088】<実施例5>40%の数平均分子量4000のポリエチレングリコール水溶液20.0重量部から、数平均分子量25000のポリビニルアルコール粉末{(B-2)、商品名:デンカポバールK-05、電気化学工業社製、加水分解率:99%、SP値:19.1、水(25℃、100g)に対する溶解度:2g以上}3.0重量部に変えた以外は実施例1と同様にして吸収剤(5)を得た。吸水剤(5)の吸水倍率(KB)は58g/g、また保水量(HS)は39g/g、また荷重下吸収量(KK)は16g/gであった。
【0089】<実施例6>40%の数平均分子量4000のポリエチレングリコール水溶液20.0重量部から、数平均分子量5000のポリアクリル酸粉末{(B-3)、商品名:ポリアクリル酸5,000、和光純薬工業社製、SP値:14.0、水(25℃、100g)に対する溶解度:2g以上}1.0重量部に変えた以外は実施例1と同様にして吸収剤(6)を得た。吸水剤(6)の吸水倍率(KB)は57g/g、また保水量(HS)は39g/g、また荷重下吸収量(KK)は16g/gであった。
【0090】<実施例7>アクリル酸208部と水13.5部との混合液に、冷却しながら25%水酸化ナトリウム水溶液346.0部を添加した。この溶液に過硫酸カリウム0.1部、次亜リン酸ソーダ0.02部及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセ化成品工業社、商品名:デナコールEX810)0.1部を添加して、5?10℃に温度調節してモノマー水溶液を調製した。次いで、攪拌機、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四つ口丸底フラスコに、シクロヘキサン624部を入れ、これにポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステル(商品名:プライサーフA210G、第一工業製薬社製)1.6部を添加して溶解させたのち、400rpmで攪拌しつつ窒素ガスを導入した。
【0091】次いで加熱して75℃とし、400rpmで攪拌下、これに5?10℃に保った上記のモノマー水溶液を60分間かけてほぼ一定速度で窒素ガスと共に液層から導入した。このときフラスコ内の酸素濃度は10?30ppmに保った。モノマー水溶液の導入終了後さらに400rpmで攪拌しつつ30分間75℃で重合させた後、水をシクロヘキサンとの共沸によって除去し、生成した重合体の含水率が約20%(含水量は除去した水の量より算出した値)となった時点で攪拌を中止すると、重合体粒子が沈降したので、デカンテーションにより重合体粒子とシクロヘキサンとを分離し重合体粒子を得た。得られた重合体粒子40部(乾量基準、130℃×30分乾燥値)とシクロヘキサン140部とをナスフラスコに入れ、これにグリセリンポリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業社、商品名:デナコールEX314)5%を含むメタノール溶液3.4部を添加したのち、60℃で加熱して30分間保持し、さらにメタノール・シクロヘキサンの還流下に30分間保持した。
【0092】次いで濾過して重合体粒子を取得し、80℃で減圧乾燥して吸水性樹脂を得た。さらに、得られた吸水性樹脂を、25℃で、ミキサーで高速撹拌下、40%の数平均分子量6000のポリエチレングリコール{(B-4)、三洋化成工業社、商品名PEG6000、SP値:14.0、水(25℃、100g)に対する溶解度:2g以上}水溶液20.0部を加えて、120℃で、60分間乾燥し吸収剤(7)を得た。吸水剤(7)の吸水倍率(KB)は51g/g、また保水量(HS)は32g/g、また荷重下吸収量(KK)は25g/gであった。
【0093】<比較例1>実施例1と同様にして吸水性樹脂を得た後、本発明に使用される水溶性樹脂(B)を混合することなく、比較用の吸収剤(8)を得た。吸水剤(8)の吸水倍率(KB)は56g/g、また保水量(HS)は40g/g、また荷重下吸収量(KK)は15g/gであった。
【0094】<比較例2>40%の数平均分子量4000のポリエチレングリコール水溶液を、20%の数平均分子量5000のポリエチレン{(B-5)、三洋化成工業社、商品名:サンワックス161-P、SP値:8.5、水(25℃、100g)に対する溶解度:2g未満}酢酸エチル水溶液に変えた以外は実施例1と同様にして比較用の吸収剤(9)を得た。吸水剤(9)の吸水倍率(KB)は55g/g、また保水量(HS)は34g/g、また荷重下吸収量(KK)は13g/gであった。
【0095】実施例1?7の吸収剤(1)?(7)及び比較例1?2の吸収剤(8)?(9)を用い、以下のようにして吸収体(1)?(15)を作成した。
<吸収体の製造例1>吸収剤(1)12部と日本薬局方脱脂綿(川本産業株式会社製)12部とを外観上均一となるまで、混合しながら手で約500回解繊した。その後、解繊した混合物を15cm×45cmの大きさに積繊した後、NPAシステム(株)製ヒータプレートプレス機(型番N4008-00)を用い、50℃において、3Kg/cm^(2) で30秒間プレスすることにより吸収体(1)を得た。
【0096】<吸収体の製造例2>吸収剤(1)を吸収剤(2)に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(2)を得た。
【0097】<吸収体の製造例3>吸収剤(1)を吸収剤(3)に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(3)を得た。
【0098】<吸収体の製造例4>吸収剤(1)を吸収剤(4)に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(4)を得た。
【0099】<吸収体の製造例5>吸収剤(1)を吸収剤(5)に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(5)を得た。
【0100】<吸収体の製造例6>吸収剤(1)を吸収剤(6)に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(6)を得た。
【0101】<吸収体の製造例7>吸収剤(1)を吸収剤(7)に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(7)を得た。
【0102】<吸収体の製造例8>吸収剤(1)12部を10部に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(8)を得た。
【0103】<吸収体の製造例9>脱脂綿12部を9部に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(9)を得た。
【0104】<吸収体の製造例10>脱脂綿12部を6部に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(10)を得た。
【0105】<吸収体の製造例11>吸収剤(1)12部を6部に変更し、脱脂綿10部を5部に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(11)を得た。
【0106】<吸収体の製造例12>吸収剤(1)12部を吸収剤(5)5部に変更し、脱脂綿10部を6部に変更する以外は製造例1と同様にして吸収体(12)を得た。
【0107】<吸収体の比較製造例1>吸収剤(1)12部を比較用の吸収剤(8)10部に変更する以外は製造例1と同様にして比較用の吸収体(13)を得た。
【0108】<吸収体の比較製造例2>吸収剤(1)を比較用の吸収剤(9)に変更し、脱脂綿12部を9部に変更する以外は製造例1と同様にして比較用の吸収体(14)を得た。
【0109】<吸収体の比較製造例3>吸収剤(1)12部を比較用の吸収剤(9)12部に変更し、脱脂綿12部を20部に変更する以外は製造例1と同様にして比較用の吸収体(15)を得た。
【0110】これらの吸収体(1)?(15)を用い、以下のようにして吸収性物品(1)?(11)、及び比較用の吸収性物品(12)?(14)を生産した。
<吸収性物品の生産例1>液非透過性裏面シートとして厚さ40μmのポリプロピレンフィルム(15cm×45cm)上に、吸収体(1)を配し、その上に液透過性表面シートとして厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート不織布(15cm×45cm)を配置した後、四辺を各1cm幅で熱プレスすることにより吸収性物品(1)を得た。
【0111】<吸収性物品の生産例2>吸収体(1)を吸収体(2)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(2)を得た。
【0112】<吸収性物品の生産例3>吸収体(1)を吸収体(3)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(3)を得た。
【0113】<吸収性物品の生産例4>吸収体(1)を吸収体(4)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(4)を得た。
【0114】<吸収性物品の生産例5>吸収体(1)を吸収体(5)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(5)を得た。
【0115】<吸収性物品の生産例6>吸収体(1)を吸収体(6)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(6)を得た。
【0116】<吸収性物品の生産例7>吸収体(1)を吸収体(7)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(7)を得た。
【0117】<吸収性物品の生産例8>吸収体(1)を吸収体(8)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(8)を得た。
【0118】<吸収性物品の生産例9>吸収体(1)を吸収体(9)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(9)を得た。
【0119】<吸収性物品の生産例10>吸収体(1)を吸収体(10)に変更した以外は生産例1と同様に吸収性物品(10)を得た。
【0120】<吸収性物品の生産例11>液非透過性裏面シートとして厚さ40μmのポリプロピレンフィルム(15cm×45cm)上に、吸収体(11)を配し、その上に吸収体(12)を配し、さらにその上に液透過性表面シートとして厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート不織布(15cm×45cm)を配置した後、四辺を各1cm幅で熱プレスすることにより吸収性物品(11)を得た。
【0121】<吸収性物品の比較生産例1>吸収体(1)を比較用の吸収体(13)に変更した以外は生産例1と同様に比較用の吸収性物品(12)を得た。
【0122】<吸収性物品の比較生産例2>吸収体(1)を比較用の吸収体(14)に変更する以外は生産例1と同様に比較用の吸収性物品(13)を得た。
【0123】<吸収性物品の比較生産例3>吸収体(1)を比較用の吸収体(15)に変更する以外は生産例1と同様に比較用の吸収性物品(14)を得た。
【0124】これらの吸収性物品(1)?(14)について、SDME表面ドライネス、耐モレ性及び吸収性物品の厚さを評価し、これらの結果を表1に示した。なお、吸収性物品の厚さの測定は以下の方法で行った。
<吸収性物品の厚さの測定法>アクリル板(150mm×450mm×厚さ10mm、重量785g)上に、吸収性物品を配し、その上に、さらにアクリル板(150mm×450mm×厚さ4mm、重量785g)を配置して、1分間経過した後、2つのアクリル板の間隔を測定することによって、吸収性物品の厚さとした。
【0125】【表1】

【0126】注)吸収剤の含有量(%)=(吸収剤の重量)×100/{(吸収剤の重量)+(繊維状物の重量)}
本発明の吸収剤を用いて、吸収剤の含有量を吸収体(吸収剤/繊維状物)の重量に基づいて40重量%以上として作成した吸収性物品(1)?(11)は、優れた常圧下でのドライ性及び耐モレ性を示した。また、吸収性物品の厚さも、吸収剤の含有量を吸収体(吸収剤/繊維状物)の重量に基づいて40重量%未満として作成した吸収性物品(14)と比較して、超薄型のものが得られた。一方、従来の吸収剤を用いて、吸収剤の含有量を吸収体(吸収剤/繊維状物)の重量に基づいて40重量%以上として作成した吸収性物品(12)?(13)は、ゲルブロッキング現象を生じ、優れた常圧下でのドライ性及び耐モレ性は得られなかった。」
(6n)「【0127】【発明の効果】本発明の吸収剤の含有量を、吸収体(吸収剤/繊維状物)の重量に基づいて40重量%以上用いたとしても、極めてゲルブロッキング現象が生じにくいため、本発明の吸収剤を使用することにより超薄型の吸収性物品を生産することができる。さらに、本発明の吸収剤を用いた超薄型の吸収性物品は、極めて優秀な吸収性能(常圧下での表面ドライ性、耐モレ性、拡散性)を示す。よって、本発明の吸収剤は、吸収性物品の超薄型化を可能とし、吸収性物品の使用時に感じる不快感、違和感を極めて大きく低減することができる。」

キ 甲7
(7a)「【請求項1】比重が1より小さい疎水性有機溶媒と水溶性重合性モノマーを撹拌機を有する重合槽に仕込み、逆相懸濁重合させ、高吸水性樹脂を製造する方法であって、該撹拌機の撹拌翼として翼径/槽径(d/D)=0.7?0.95、翼幅/槽径(w/D)=0.05?0.15のアンカー翼を用いることを特徴とする高吸水性樹脂の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
(7b)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、嵩比重が小さく、吸水性、通気性、通液性に優れ、かつ吸水後のゲル強度にも優れた、吸水性樹脂として有用な大粒径の重合体粒子を、効率良く得ることのできる高吸水樹脂の製造方法に関する。」
(7c)「【0016】吸水性樹脂の嵩比重は吸水速度を増大するという観点から、0.4?0.7が好ましい。嵩比重が0.7より大きい場合には、生成する重合体粒子は真球状または球状に近い形状となり、一般的に吸水速度が小さくなる。粒子径が細かい場合には吸水速度は速くなるが、前述したようにままこ現象が生じ好ましくない。逆に、嵩比重0.4未満では重合槽内の固形部の体積分率が大きすぎて撹拌不能となり、製造困難となり好ましくない。」

ク 甲8
(8a)「【請求項1】液体排出口(10)を有する円筒部(20)と少なくとも外周部に液体排出部(30)を有する円形底部(40)とからなる円筒容器(50)を円筒軸が垂直方向になるように立てて、この円筒容器(50)内に測定試料を投入した後、
この円筒容器(50)内に、液体排出部(60)を有する円筒部(70)と濾材部(80)とからなるピストン(90)を挿入し、円筒部(70)の上部の液体注入口(100)から液体を注入し、
液体排出口(10)及び/又は液体排出部(30)から液体が流出するまでに注入した液体の量;並びに/又は液体排出口(10)及び/又は液体排出部(30)から流出する液体の量を測定することを特徴とする吸液性能の測定方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
(8b)「【0001】本発明は、吸液性能の測定方法及び吸液性能測定装置に関する。」
(8c)「【0029】吸液性粒子(A)の見かけ密度(g/cm^(3))は特に制限はないが、0.2?1.0が好ましく、さらに好ましくは0.3?0.8、特に好ましくは0.4?0.7、最も好ましくは0.5?0.6である。この範囲であると、実使用との相関がさらに良好となる。なお、見かけ密度(g/cm^(3))はISO 9136に準拠して測定される。」

(2)甲1、甲2及び甲6に記載された発明

ア 甲1に記載された発明
甲1は、吸水性樹脂の製造方法について記載した特許文献であり(摘示(1a)(1b))、請求項1には「吸水性樹脂及び水からなる含水ゲル(A)と、水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハーゼン単位色数が0?300である低融点乾燥助剤(B1){融点(1013.25hPa)が50℃未満}及び/又は水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハンター白度が40?94である高融点乾燥助剤(B2){融点が50℃以上}とを混合して混合体を得る工程、並びにこの混合体を静置状態で乾燥させる工程を含むことを特徴とする吸水性樹脂の製造法」の発明が、請求項2には「低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の使用量が吸水性樹脂の重量に基づいて0.001?1重量%である請求項1に記載の製造法」の発明が、請求項3には「低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)のHLB値が0?10である請求項1又は2に記載の製造法」の発明が、それぞれ記載されている(摘示(1a))。
そして、吸水性樹脂の組成(摘示(1c))、任意に行ってよい表面架橋の表面架橋剤及び手順(摘示(1d))、吸水性樹脂の含水ゲル(A)の水分量(摘示(1e))、低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)について、水溶解度及びHLB値(摘示(1f))、該当する物質の例(摘示(1g))、使用量(摘示(1h))、その混合方法及び混合後の乾燥方法(摘示(1i))、任意に用いてよい添加剤(摘示(1j))、吸水性樹脂の形状及び寸法(摘示(1k))、吸水性樹脂の用途(摘示(1L))が説明されている。
また、製造例、実施例及び比較例(摘示(1m))として、多数の吸水性樹脂を製造し、乾燥時間、表面張力、ハンター白度を評価したこと、その吸水性樹脂を用いて製造した吸水性物品のリウエット(決定注:液の戻りのことである。)を評価したことが記載されている。
してみると、甲1には、その請求項3に係る発明の一態様である、請求項2を引用する発明として、以下の
「吸水性樹脂及び水からなる含水ゲル(A)と、水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハーゼン単位色数が0?300である低融点乾燥助剤(B1){融点(1013.25hPa)が50℃未満}及び/又は水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハンター白度が40?94である高融点乾燥助剤(B2){融点が50℃以上}とを混合して混合体を得る工程、並びにこの混合体を静置状態で乾燥させる工程を含む吸水性樹脂の製造法であって、低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の使用量が吸水性樹脂の重量に基づいて0.001?1重量%であり、低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)のHLB値が0?10である、上記製造法」
の発明が記載されているということができる。したがって、その製造法により製造された吸水性樹脂についての、以下の
「吸水性樹脂及び水からなる含水ゲル(A)と、水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハーゼン単位色数が0?300である低融点乾燥助剤(B1){融点(1013.25hPa)が50℃未満}及び/又は水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハンター白度が40?94である高融点乾燥助剤(B2){融点が50℃以上}とを混合して混合体を得る工程、並びにこの混合体を静置状態で乾燥させる工程を含む吸水性樹脂の製造法であって、低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の使用量が吸水性樹脂の重量に基づいて0.001?1重量%であり、低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)のHLB値が0?10である、上記製造法により、製造された、吸水性樹脂」
の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されているということができる。
また、甲1には、その各実施例に係る、製造法の発明及び製造された吸収性樹脂の発明が記載されていると認められる。その実施例4に係る発明として、以下の
「以下の製造法により製造された吸水性樹脂:
反応容器にアクリル酸81.8部、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.3部及び脱イオン水241部を仕込み、攪拌・混合しながら内容物の温度を1?2℃に保った。
次いで内容物の液層中に窒素を1リットル/分で30分間流入した後、密閉下、1%過酸化水素水溶液1部、0.2%アスコルビン酸水溶液1.2部及び2%の2,2’-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8部を添加・混合して重合を開始させた(約5℃)。
重合と共に温度が上昇し約70℃に達するが、引き続き、密閉下で70?80℃に約8時間温度管理しながら重合して、製造例1の、吸水性樹脂を含む含水ゲル(a1)を得た。
製造例1で得られた吸水性樹脂を含む含水ゲル(a1)をインターナルミキサーで3?7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル325.0部に48%の水酸化ナトリウム水溶液67.5部を添加してカルボキシル基の72当量%を中和して、中和細断ゲルを得た。なお、JIS K0113-1997に準拠(0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用、電位差滴定法、変曲点法)して測定した酸価から算出した中和細断ゲルの中和度は70.1当量%であった。
次いで中和細断ゲル392.5部に低融点乾燥助剤(b14){アミノ変成シリコーン(KF880、信越化学工業社製)の0.4%メタノール溶液}18.0部を添加し、インターナルミキサーで、さらに混練して混練ゲルを得た。ついで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この混練ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して、乾燥体を得た。この乾燥体を粉砕した後、目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いて篩い分けし、150?710μmの粒度の吸水性樹脂(4)を得た。」
の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているということができる。

イ 甲3に記載された発明
甲3は、親水性重合体の製造方法について記載した特許文献であり(摘示(3a)(3b))、請求項1には「水溶性エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液と気体とを流体混合により両者を混合し、気泡の分散した単量体水溶液を得た後、前記気泡の分散した状態で前記単量体を重合せしめることを特徴とする親水性重合体の製造方法の発明が、請求項4には「単量体水溶液が界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1?3何れか一つに記載の親水性重合体の製造方法」の発明が、請求項6には「単量体水溶液が架橋剤を含むものである請求項1?5何れか一つに記載の親水性重合体の製造方法」の発明が、それぞれ記載されている(摘示(3a))。
そして、単量体及び架橋剤の種類(摘示(3c))、重合方法及び装置(摘示(3d))、界面活性剤の種類(摘示(3e))、その量(摘示(3f))、気泡の分散した状態で体積が増加していること(摘示(3g))、得られた気泡含有含水ゲルを解砕及び乾燥すること(摘示(3h))、任意に表面架橋剤により処理してよいこと(摘示(3i))、任意に用いてよい添加剤(摘示(3j))、親水性重合体の用途(摘示(3k))が説明されている。
また、実施例及び比較例(摘示(3L))として、多数の親水性重合体を製造し、吸水量、吸水速度及び水可溶性成分量を評価したことが記載されている。
してみると、甲3には、その請求項6に係る発明の一態様である請求項4を引用する発明として、以下の
「水溶性エチレン性不飽和単量体と架橋剤と界面活性剤を含む単量体水溶液と気体とを流体混合により両者を混合し、気泡の分散した単量体水溶液を得た後、前記気泡の分散した状態で前記単量体を重合せしめる、親水性重合体の製造方法」
の発明が記載されているということができる。したがって、その製造方法により製造された親水性重合体についての、以下の
「水溶性エチレン性不飽和単量体と架橋剤と界面活性剤を含む単量体水溶液と気体とを流体混合により両者を混合し、気泡の分散した単量体水溶液を得た後、前記気泡の分散した状態で前記単量体を重合せしめる、親水性重合体の製造方法により製造された、親水性重合体」
の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているということができる。

ウ 甲6に記載された発明
甲6は、吸収材、吸収体及び吸収性物品について記載した特許文献であり(摘示(6a)(6b)),請求項1には「吸水性樹脂(A)と、数平均分子量が500以上2,000,000以下の水溶性樹脂(B)とを含有してなることを特徴とする吸収剤」の発明が記載され、請求項6には「請求項1?5のいずれかに記載の吸収剤と繊維状物とを必須構成成分としてなる吸収体」の発明が記載されている。
そして、吸水性樹脂(A)の組成(摘示(6c))、任意に行ってよい表面架橋の表面架橋剤(摘示(6d))、吸水性樹脂(A)の形状及び寸法(摘示(6e))、水溶性樹脂(B)について、種類(摘示(6f))、含有量(摘示(6g))、その混合方法(摘示(6h))、任意に添加してよい添加剤(摘示(6i))、吸収材の用途(摘示(6j))、吸収性物品の評価項目のSDME表面ドライネスの測定法(摘示(6k))、同じく液モレ性の測定法(摘示(6L))が説明されている。
また、実施例及び比較例(摘示(3m))として、多数の吸水剤を製造し、その吸水剤を用いて製造した吸水性物品のSDME表面ドライネス及び液モレ性を評価したことが記載されている。
してみると、甲6には、その請求項6に係る発明として、以下の
「吸水性樹脂(A)と、数平均分子量が500以上2,000,000以下の水溶性樹脂(B)とを含有してなる吸収剤と繊維状物とを必須構成成分としてなる吸収体」
の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているということができる。

(3)本件発明1について

ア 甲1発明1との対比

(ア)本件発明1と甲1発明1との対比
甲1発明1の「吸水性樹脂」は、粒状が好ましいとされるもので(摘示(1k))、本件発明1の「吸収性樹脂粒子」に相当し、
甲1発明1の吸水性樹脂は、その製造方法からみて「低融点乾燥助剤(B1)」及び/又は「高融点乾燥助剤(B2)」を少なくともその内部に含有すると認められ、その低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)は、「HLB値が0?10である」ものであるから、これは、本件発明1の「疎水性物質(C)」に相当し、
甲1発明1の低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の使用量は、「吸水性樹脂の重量に基づいて0.001?1重量%」であるから、本件発明1における疎水性物質(C)の含有量の「架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%」に包含される範囲である。
したがって、本件発明1と甲1発明1とは、
「吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有し、(C)の含有量が、吸収性樹脂の重量に基づいて、0.001?1重量%である吸収性樹脂粒子」
の発明である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1においては、
水吸収性樹脂粒子は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなること(以下「共重合組成要件」という。)、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であること(以下「HLB(C)要件」という。」)、
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であること(以下「平均粒子径要件」という。)、
吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であること(以下「見掛け密度要件」という。)、
(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gであること(以下「DW吸収速度要件」という。)、
がそれぞれ特定されているのに対し、
甲1発明1においては、それらの要件で特定されたものではない点

(イ)相違点についての検討
相違点1について検討する。
甲1発明1においては、その吸水性樹脂の共重合組成、疎水性物質に相当する低融点乾燥助剤及び高融点乾燥助剤のHLB、吸水性樹脂の平均粒子径については、発明の詳細な説明の記載を参照すると、事実上、重複する範囲を有していると認められるが、本件発明1におけるよりも広範である。また、甲1には、吸水性樹脂の見掛け密度や、吸水速度プロフィールに関する事項は記載されていない。甲1発明1の吸水性樹脂が、上記の見掛け密度要件及びDW吸収速度要件を満足することは、甲1には開示されておらず、甲1発明1の構成から当然に満足するものであるということもできない。
よって、相違点1に係る各要件については、何れも、甲1発明1が満足するとはいえない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点でないとはいえない。

(ウ)したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(エ)特許異議申立人の主張について

a 特許異議申立人は、甲1と本件特許とは、ふるいを用いた分級操作が略同一で、見掛け密度は重量平均粒子径に依存して決まることが技術常識であり、吸収性樹脂の嵩比重は、従来からよく知られていて本件発明1における範囲は通常の範囲に過ぎない(甲7の段落【0016】及び甲8の段落【0029】)から、甲1発明1は見掛け密度要件を満たす蓋然性が高いと主張している。
また、甲1と本件特許とは、ふるいを用いた分級操作が略同一であるから、甲1発明1はDW吸収速度要件を満たす蓋然性が高いと主張している。(特許異議申立書30?31頁)

b しかし、見掛け密度は用いた物質の種類及び量にも依存するから、低融点乾燥助剤及び高融点乾燥助剤として極めて広範な物質を用いてよいとする甲1発明1の吸水性樹脂が、見掛け密度要件を満足する蓋然性が高いとする特許異議申立人の主張は、根拠が十分とはいえない。
さらに、DW吸収速度要件についても、本件発明1と甲1発明1とでは、用いる物質の種類及び量その他の具体的な構成が同じではないのであるから、分級操作が略同一であるからといって甲1発明1の吸水性樹脂がDW吸収速度要件を満足する蓋然性が高いとする特許異議申立人の主張は、根拠が十分とはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

イ 甲1発明2との対比

(ア)本件発明1と甲1発明2との対比
甲1発明2の「吸水性樹脂」は、その共重合組成が、アクリル酸とN,N’-メチレンビスアクリルアミドを含み、重合後、乾燥、粉砕、ふるい分けされた150?710μmの粒度のものであるから、本件発明1の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子」に相当し、
甲1発明2の吸水性樹脂は、その製造方法からみて低融点乾燥助剤である「アミノ変性シリコーン」を少なくともその内部に含有すると認められ、これは、本願明細書においても疎水性物質(C)として例示される物質であるから、本件発明1の「疎水性物質(C)」に相当し、
甲1発明2のアミノ変性シリコーンの使用量は、中和細断ゲル392.5部(含水量は摘示(1e)より30?85重量%と解されるから、乾燥重量120?340gと解される。)に対しアミノ変性シリコーンの0.4%メタノール溶液18.0部であるから正味0.064部であって、本件発明1における疎水性物質(C)の含有量の「架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%」に包含される範囲である。
したがって、本件発明1と甲1発明2とは、
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有し、(C)の含有量が、吸収性樹脂の重量に基づいて、0.001?5重量%である吸収性樹脂粒子」
の発明である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2)
本件発明1においては、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であること(HLB(C)要件)、
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であること(平均粒子径要件)、
吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であること(見掛け密度要件)、
(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gであること(DW吸収速度要件)、
がそれぞれ特定されているのに対し、
甲1発明2においては、それらの要件で特定されたものではない点

(イ)相違点についての検討
相違点2について検討する。
甲1発明2においては、アミノ変性シリコーンのHLBについては、表1(摘示(1g))に「0.0」と記載され、HLB(C)要件を満たしていない。平均粒子径については、粒度が150から710μmではあるものの、平均粒子径は不明であるから、平均粒子径要件を満たしているとはいえない。また、甲1には、吸水性樹脂の見掛け密度や、吸水速度プロフィールに関する事項は記載されていない。甲1発明2の吸水性樹脂が、上記の見掛け密度要件及びDW吸収速度要件を満足することは、甲1には開示されておらず、甲1発明2の構成から当然に満足するものであるということもできない。
よって、相違点2に係る各要件については、何れも、甲1発明2が満足するとはいえない。
したがって、相違点2は、実質的な相違点でないとはいえない。

(ウ)したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(エ)特許異議申立人の主張について

a 特許異議申立人は、甲2の実験成績証明書を提出して、甲1の実施例4に記載された方法を基に、甲1の段落【0009】?【0011】に記載された態様により変形(表面架橋)を加えた方法で実験を行った結果を示して、本件発明1は、甲1に記載された発明であると主張している。(特許異議申立書31?33頁)

b しかし、甲1の実施例4に特許異議申立人が都合よく選んだ特定の条件の表面架橋を付加した発明が、甲1に記載された発明であるとすることはできない。
そして、甲2における実験条件は、甲1の実施例4では行っていない表面架橋を付加したものであり、甲1の実施例4を追試したものではないから、この実験結果に基づいて、本件発明1が、甲1に記載された発明であるということはできない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

ウ 甲3発明との対比
(ア)本件発明1と甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、
甲3発明の「水溶性エチレン性不飽和単量体と架橋剤と界面活性剤を含む単量体水溶液と気体とを流体混合により両者を混合し、気泡の分散した単量体水溶液を得た後、前記気泡の分散した状態で前記単量体を重合せしめる、親水性重合体の製造方法により製造された、親水性重合体」は、その共重合組成と、全ての実施例において重合後、乾燥、粉砕、ふるい分けして粒子を得ていること(摘示(3L))から、本件発明1の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子」に相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子」
の発明である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
本件発明1においては、
吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有していること、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であること(HLB(C)要件)、
疎水性物質(C)の含有量が、架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%であること(以下「含有量(C)要件」という。)
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であること(平均粒子径要件)、
吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であること(見掛け密度要件)、
(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gであること(DW吸収速度要件)、
がそれぞれ特定されているのに対し、
甲3発明においては、それらの要件で特定されたものではない点

(イ)相違点についての検討
相違点3について検討する。
甲3発明において用いる「界面活性剤」は、疎水性物質に該当する化合物が含まれる可能性はある(摘示(3f))が、何れもが本件発明1の「疎水性物質(C)」に該当するとはいえず、また、HLB(C)要件及び含有量(C)要件を満たすとはいえない。平均粒子径についても、甲3の実施例には、250μm、300μmなど、平均粒子径要件を満たしていないものが記載されている。また、甲3には、親水性重合体の見掛け密度や、吸水速度プロフィールに関する事項は記載されていない。甲3発明の親水性重合体が、上記の見掛け密度要件及びDW吸収速度要件を満足することは、甲3には開示されておらず、甲3発明の構成から当然に満足するものであるということもできない。
よって、相違点3に係る各要件については、何れも、甲3発明が満足するとはいえない。
したがって、相違点3は、実質的な相違点でないとはいえない。

(ウ)したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえない。

(エ)特許異議申立人の主張について

a 特許異議申立人は、甲3には、段落【0038】等にフッ素系界面活性剤としてパーフルオロアルキルカルボン酸が記載され、そのHLB値は1?10である蓋然性が高く、その実施例1における含有量は0.0003%であり、段落【0098】(決定注:実施例3)に平均粒子径420μm、段落【0099】(決定注:実施例4)に平均粒径450μmが記載され、甲3と本件特許とは、ふるいを用いた分級操作が略同一で、見掛け密度は重量平均粒子径に依存して決まることが技術常識であり、吸収性樹脂の嵩比重は、従来からよく知られていて本件発明1における範囲は通常の範囲に過ぎない(甲7の段落【0016】及び甲8の段落【0029】)から、甲3発明は見掛け密度要件を満たす蓋然性が高いと主張している。
また、甲3と本件特許とは、ふるいを用いた分級操作が略同一であるから、甲3発明はDW吸収速度要件を満たす蓋然性が高いと主張している。(特許異議申立書33?37頁)

b しかし、本件発明1においては、相違点3に係る各要件の組合せを発明特定事項とするものであるから、甲3に、各要件に対応する事項がばらばらに記載されているとしても、その組合せに係る発明が記載されているということはできない。しかも、相違点3に係る各要件に該当するかについても、異議申立人は、単に蓋然性があると述べているか、含有量(C)要件のように該当していないのに該当するとしているかである。
また、見掛け密度は用いた物質の種類及び量にも依存するから、界面活性剤として極めて広範な物質を用いてよいとする甲3発明の親水性重合体が、見掛け密度要件を満足する蓋然性が高いとする特許異議申立人の主張は、根拠が十分とはいえない。
さらに、DW吸収速度要件についても、本件発明1と甲3発明とでは、用いた物質の種類及び量その他の具体的な構成が同じではないのであるから、分級操作が略同一であるからといって甲3発明の親水性重合体がDW吸収速度要件を満足する蓋然性が高いとする特許異議申立人の主張は、根拠が十分とはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(4)本件発明2及び3について
本件発明2は、本件発明1において、「吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含んでなる構造が、親水性材料粒子(d1)又は疎水性材料粒子(d2)の表面の一部又は全部に疎水性物質(C)をコーティング又は含浸した材料粒子(D)を吸収性樹脂粒子の内部に含んでなる構造である」と特定されたものであり、また、本件発明3は、本件発明2において、「親水性材料粒子(d1)が、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A2)粒子である」と特定されたものであるから、これらは、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(5)本件発明6について
本件発明6は、「請求項1?5のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体」の発明である。

ア 上記(3)及び(4)に記載したように、本件発明1?3は、甲1又は甲3に記載された発明であるとはいえず、本件発明4は本件発明2又は3の吸収性樹脂粒子をさらに特定したものであり、本件発明5は本件発明2?4の吸収性樹脂粒子をさらに特定したものであるから、本件発明1?5の何れかに記載の吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体に係る、本件発明6は、同様に、甲1又は甲3に記載された発明であるとはいえない。

イ 甲6発明との対比

(ア)本件発明6と甲6発明との対比
本件発明6のうち、本件発明1を引用する発明である「請求項1に記載の吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体」の発明について対比する。
甲6発明の「吸収体」は、本件発明6の「吸収体」に相当し、
甲6発明の「繊維状物」は、本件発明6の「繊維状物」に相当し、
甲6発明の「吸水性樹脂(A)」は、粒状が好ましいとされるもので(摘示(6e))、本件発明6の「吸収性樹脂粒子」に相当する。
したがって、本件発明6と甲6発明とは、
「吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点4)
本件発明6においては、
水吸収性樹脂粒子は、溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなること(共重合組成要件)、
吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有していること、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であること(HLB(C)要件)、
疎水性物質(C)の含有量が、架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%であること(以下「含有量(C)要件」という。)
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であること(平均粒子径要件)、
吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であること(見掛け密度要件)、
(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gであること(DW吸収速度要件)、
がそれぞれ特定されているのに対し、
甲6発明においては、それらの要件で特定されたものではない点

(イ)相違点についての検討
相違点4について検討する。
甲6発明においては、その吸水性樹脂(A)の共重合組成、吸水性樹脂(A)の平均粒子径については、発明の詳細な説明の記載を参照すると、事実上、重複する範囲を有していると認められるが、本件発明6におけるよりも広範である。また、甲6には、吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)を含有させることは記載されておらず、したがってHLB(C)要件及び含有量(C)要件を満たすものではなく、また、甲6発明は、疎水性物質とは性質が反対の、親水性物質である水溶性樹脂を含有させるものである。また、吸水性樹脂の見掛け密度や、吸水速度プロフィールに関する事項は記載されていない。甲6発明の吸水性樹脂が、上記の見掛け密度要件及びDW吸収速度要件を満足することは、甲6には開示されておらず、甲6発明の構成から当然に満足するものであるということもできない。
よって、相違点4に係る各要件については、何れも、甲6発明が満足するとはいえない。
したがって、相違点4は、実質的な相違点でないとはいえない。

(ウ)したがって、本件発明6は、甲6に記載された発明であるとはいえない。

(エ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲6の段落【0057】の記載を挙げて、本件発明6は甲6に記載された発明であると主張している。(特許異議申立書45頁)
しかし、上記段落【0057】には、甲6に係る吸収剤に添加剤を添加することができる旨の記載であって、防腐剤その他の添加剤が列挙されているが、この記載から、甲6に、相違点4に係る各要件が開示されているということができないから、特許異議申立人の主張は採用できない。

(6)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6において、「吸収性樹脂粒子と繊維の重量比率(吸収性樹脂粒子の重量/繊維の重量)が70/30?90/10である」と特定されたものであるから、本件発明6と同様に、甲1又は甲6に記載された発明であるとはいえない。

(7)本件発明8について
本件発明8は、「請求項6又は7に記載の吸収体を用いた吸収性物品」の発明である。
上記(5)及び(6)に記載したように、本件発明6及び7は、甲1又は甲3に記載された発明であるとはいえないから、本件発明6又は7の吸収体を用いた吸収性物品に係る、本件発明8は、同様に、甲1又は甲3に記載された発明であるとはいえない。

(8)本件発明9について
本件発明9は、吸収性樹脂粒子の製造方法に係る発明であって、製造される吸収性樹脂粒子は、本件発明1におけるHLB(C)要件、平均粒子径要件、見掛け密度要件、DW吸収速度要件を発明特定事項とするものである。
これらの要件を満足する吸収性樹脂粒子の発明は、上記(3)に記載したとおり、甲1又は甲3には記載されておらず、したがって、この吸収性樹脂粒子の製造方法に係る発明であるといえる本件発明9は、同様に、甲1又は甲3に記載された発明であるとはいえない。

(9)理由1についてのまとめ
以上のとおり、
本件発明1は、本件優先日前に頒布された甲1又は甲3に記載された発明であるとはいえず、
本件発明2及び3は、甲1に記載された発明であるとはいえず、
本件発明6は、甲1、甲3又は本件優先日前に頒布された甲6に記載された発明であるとはいえず、
本件発明7は、甲1又は甲6に記載された発明であるとはいえず、
本件発明8及び9は、甲1又は甲3に記載された発明であるとはいえない
から、特許法第29条第1項3号に該当し特許を受けることができない、ということはできない。
よって、本件発明1?3、6?9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当せず、理由1によって取り消されるべきものではない。

4 理由2について

(1)甲号各証の記載
甲1?甲8の記載事項は、上記3(1)ア?クに記載したとおりである。

(2)甲1、甲2及び甲6に記載された発明
甲1、甲2及び甲6に記載された発明は、上記3(2)ア?ウに記載したとおりである。甲1発明1、甲1発明2、甲3発明、甲6発明を再掲する。
甲1発明1:
「吸水性樹脂及び水からなる含水ゲル(A)と、水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハーゼン単位色数が0?300である低融点乾燥助剤(B1){融点(1013.25hPa)が50℃未満}及び/又は水への溶解度(25℃)が0?2g/100g水であり、150℃で3時間加熱処理後のハンター白度が40?94である高融点乾燥助剤(B2){融点が50℃以上}とを混合して混合体を得る工程、並びにこの混合体を静置状態で乾燥させる工程を含む吸水性樹脂の製造法であって、低融点乾燥助剤(B1)及び/又は高融点乾燥助剤(B2)の使用量が吸水性樹脂の重量に基づいて0.001?1重量%であり、低融点乾燥助剤(B1)及び高融点乾燥助剤(B2)のHLB値が0?10である、上記製造法により、製造された、吸水性樹脂」
甲1発明2:
「以下の製造法により製造された吸水性樹脂:
反応容器にアクリル酸81.8部、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.3部及び脱イオン水241部を仕込み、攪拌・混合しながら内容物の温度を1?2℃に保った。
次いで内容物の液層中に窒素を1リットル/分で30分間流入した後、密閉下、1%過酸化水素水溶液1部、0.2%アスコルビン酸水溶液1.2部及び2%の2,2’-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液2.8部を添加・混合して重合を開始させた(約5℃)。
重合と共に温度が上昇し約70℃に達するが、引き続き、密閉下で70?80℃に約8時間温度管理しながら重合して、製造例1の、吸水性樹脂を含む含水ゲル(a1)を得た。
製造例1で得られた吸水性樹脂を含む含水ゲル(a1)をインターナルミキサーで3?7mmの大きさに細断して細断ゲルを得た後、この細断ゲル325.0部に48%の水酸化ナトリウム水溶液67.5部を添加してカルボキシル基の72当量%を中和して、中和細断ゲルを得た。なお、JIS K0113-1997に準拠(0.1規定水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用、電位差滴定法、変曲点法)して測定した酸価から算出した中和細断ゲルの中和度は70.1当量%であった。
次いで中和細断ゲル392.5部に低融点乾燥助剤(b14){アミノ変成シリコーン(KF880、信越化学工業社製)の0.4%メタノール溶液}18.0部を添加し、インターナルミキサーで、さらに混練して混練ゲルを得た。ついで、縦20cm×横20cm×高さ10cmで、天板を有さず、底板に目開き4mmの金網を装着したステンレス製のトレイに、この混練ゲルを約5cmの厚さに積層し、150℃、風速2.0m/sの条件で、通気型バンド乾燥機(井上金属製)で乾燥して、乾燥体を得た。この乾燥体を粉砕した後、目開き150μmのふるいと同710μmのふるいを用いて篩い分けし、150?710μmの粒度の吸水性樹脂(4)を得た。」
甲3発明:
「水溶性エチレン性不飽和単量体と架橋剤と界面活性剤を含む単量体水溶液と気体とを流体混合により両者を混合し、気泡の分散した単量体水溶液を得た後、前記気泡の分散した状態で前記単量体を重合せしめる、親水性重合体の製造方法により製造された、親水性重合体」
の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているということができる。
甲6発明:
「吸水性樹脂(A)と、数平均分子量が500以上2,000,000以下の水溶性樹脂(B)とを含有してなる吸収剤と繊維状物とを必須構成成分としてなる吸収体」

(3)本件発明1について

ア 甲1発明1との対比・判断

(ア)本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は、上記3(3)アに記載したとおりである。一致点及び相違点1を再掲する。
一致点:
「吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有し、(C)の含有量が、吸収性樹脂の重量に基づいて、0.001?1重量%である吸収性樹脂粒子」
相違点1:
本件発明1においては、
水吸収性樹脂粒子は、溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなること(共重合組成要件)、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であること(HLB(C)要件)、
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であること(平均粒子径要件)、
吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であること(見掛け密度要件)、
(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gであること(DW吸収速度要件)、
がそれぞれ特定されているのに対し、
甲1発明1においては、それらの要件で特定されたものではない点

(イ)相違点についての検討
相違点1について検討する。
甲1発明1は、本件発明1と同じ技術分野に属する発明である。
しかし、甲1には、吸水性樹脂の見掛け密度や、吸水速度プロフィールに関する事項は記載されていない。甲1発明1において課題としているのは、吸水性樹脂に着色がないこと、リウエット性の低下がないこと(吸水性物品における吸収した液の戻りが少ないこと)、及び製造工程で含水ゲル乾燥時間を短くできることであり(摘示(1b))、実施例においてもこれらの項目が評価されている(摘示(1m))。甲1には、最適な吸水速度プロフィールを得ようとする動機付けとなるものがない。
また、甲1発明1においては、その吸水性樹脂の共重合組成、疎水性物質に相当する低融点乾燥助剤及び高融点乾燥助剤のHLB、吸水性樹脂の平均粒子径については、発明の詳細な説明の記載を参照すると、本件発明1におけるよりも広範ではあるが、事実上、重複する範囲を有していると認められる。仮に、甲1発明1において、相違点1に係る共重合組成要件、HLB(C)要件、平均粒子径要件を満たすものとすることを、当業者が容易に想到し得るとしても、しかし、そうすれば必ず上記の見掛け密度要件及びDW吸収速度要件を満足する、というものであるとも認められない。
そして、甲1発明1に、甲3?甲8に記載されている事項をいかに組み合わせても、相違点1に係る共重合組成要件、HLB(C)要件、平均粒子径要件に加えて、見掛け密度要件及びDW吸収速度要件を満足するものとすることを、当業者が容易に想到できるとはいえない。
すなわち、甲3は、吸収速度が速くかつ乾燥が容易で粉砕時の負荷が小さい親水性重合体の製造方法に関する特許文献で、気泡の分散した単量体水溶液を重合させるというものである(摘示(3a)?(3n))。甲4は、界面活性剤のHLBの定義を記載した書籍である(摘示(4a)?(4c))。甲5は、頒布日が不明な「変性シリコーンオイル」のカタログである(摘示(5a))。甲6は、ゲルブロッキングを起こしにくい吸収剤に関する特許文献で、吸水性樹脂に水溶性樹脂を含有させるというものである(摘示(6a)?(6n))。甲7は、嵩比重を0.4?0.7とした吸水性樹脂の製造方法に関する特許文献であり、比重が1より小さい疎水性有機溶媒を用い特定の構造の重合容器で重合させるというものである(摘示(7a)?(7c))。甲8は、吸液性粒子の吸液性能の測定方法に関する特許文献で、特定の構造の測定装置を用いるというものであり、吸液性粒子の見かけ密度について0.5?0.6g/cm^(3) の範囲を好ましい範囲として挙げたものである(摘示(8a)?(8c))。甲1発明1にこれらの記載事項を組み合わせても、本件発明1の見掛け密度要件及びDW吸収速度要件を有する吸収性樹脂粒子は、導かれない。
したがって、甲1からは、又は甲1発明1に甲3?甲8に記載された事項を組み合わせても、甲1発明1において、相違点1に係る見掛け密度要件及びDW吸収速度要件で特定される構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到できたとはいえない。

(ウ)発明の効果について
本件特許明細書の段落【0009】には、発明の効果として「本発明の吸収性樹脂粒子及び本発明の製造方法により得られる吸収性樹脂粒子は、特定の吸収速度パターンを有する。したがって、本発明の吸収性樹脂粒子を吸収性物品(紙おむつ及び生理用ナプキン等)に適用したとき、吸収率の偏りが無く、優れた吸収性能(吸収量及び吸収速度)を発揮し、カブレが生じにくい」と記載されている。また、実施例において、10種の吸収性樹脂を用いて作製した20個の吸収性物品(紙オムツ)の表面上の複数の位置における表面ドライネス値(濡らした後の表面の乾いている程度)が、従来技術の、吸収速度プロフィールが、初期に大きい吸収速度のもの(比較例1)及び初期に小さく後に大きくなるもの(比較例2)(何れも本件発明1のDW吸収速度要件を満足しないもの)との対比において、評価され、優れていることが示されている。
そして、この効果は、吸収速度プロフィールについて開示のない甲1及び甲3?甲8の記載から、当業者が予測することができないものである。

(エ)したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また甲1(主引用例)に記載された発明及び甲3?甲8に記載された発明又は事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(オ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平均粒子径について、甲3の420μm、450μmを組み合わせることが容易であると主張している。また、本件特許の審査経過において、特許権者が重量平均粒子径と見掛け密度を容易に調整することができる旨主張したとし(決定注:証拠は提出されていない。)、平均粒子径要件と見掛け密度要件は、当業者が容易になし得る設計変更であると主張している。また、DW吸収速度要件についても、本件発明1の吸収性樹脂粒子が特定のモノマー及び架橋剤を含むことと、疎水性物質を適量含むこと、適正範囲内の重量平均粒子径及び見掛け密度を有することでDW吸収速度要件を満たすといえると主張している。(特許異議申立書37?40頁)
しかし、甲1及び甲3?甲8からは、DW吸収速度要件に係る吸収速度プロフィールは導かれないし、どのように物質や諸条件を組み合わせればよいかも、導かれない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

イ 甲1発明2との対比・判断

(ア)本件発明1と甲1発明2との一致点及び相違点は、上記3(3)イに記載したとおりである。一致点及び相違点2を再掲する。
一致点:
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有し、(C)の含有量が、吸収性樹脂の重量に基づいて、0.001?5重量%である吸収性樹脂粒子」
相違点2:
本件発明1においては、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であること(HLB(C)要件)、
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であること(平均粒子径要件)、
吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であること(見掛け密度要件)、
(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gであること(DW吸収速度要件)、
がそれぞれ特定されているのに対し、
甲1発明2においては、それらの要件で特定されたものではない点

(イ)相違点についての検討
相違点2について検討する。
上記ア(イ)と同様であり、甲1からは、又は甲1発明2に甲3?甲8に記載された事項を組み合わせても、甲1発明2において、相違点1に係る見掛け密度要件及びDW吸収速度要件で特定される構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到できたとはいえない。

(ウ)発明の効果について
上記ア(ウ)で述べたのと同様である。

(エ)したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また甲1(主引用例)に記載された発明及び甲3?甲8に記載された発明又は事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(オ)特許異議申立人の主張について
上記ア(オ)で述べたのと同様である。

ウ 甲3発明との対比・判断

(ア)本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、上記3(3)ウに記載したとおりである。一致点及び相違点3を再掲する。
一致点:
「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなる吸収性樹脂粒子」
相違点3:
本件発明1においては、
吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有していること、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であること(HLB(C)要件)、
疎水性物質(C)の含有量が、架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%であること(以下「含有量(C)要件」という。)
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であること(平均粒子径要件)、
吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であること(見掛け密度要件)、
(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gであること(DW吸収速度要件)、
がそれぞれ特定されているのに対し、
甲3発明においては、それらの要件で特定されたものではない点

(イ)相違点についての検討
相違点3について検討する。
甲3発明は、本件発明1と同じ技術分野に属する発明である。
しかし、甲3には、親水性重合体の見掛け密度や、吸水速度プロフィールに関する事項は記載されていない。甲3発明において課題としているのは、吸収速度が速いこと、製造時の乾燥が容易で粉砕時の負荷が小さいことであり(摘示(3b))、実施例においても吸水速度が評価されている(摘示(3L))。しかし、この吸水速度は、カップに入れた1.0gの親水性重合体(粒子径600μm?300μm)に生理食塩水28gを注いだときに、注いだ時点からその生理食塩水が親水性重合体に全て吸収されて見えなくなる状態までの時間を測定するというもので、実施例1?10では10?40秒であり比較例1では126秒だった、というものである。本件発明1のDW吸収速度要件のような10分間にわたる吸収速度プロフィールとは異なる。甲1には、10分間といった長時間での最適な吸収速度プロフィールを得ようとする動機付けとなるものはない。
また、甲3発明においては、界面活性剤を用いるもので各種の界面活性剤が例示されている(摘示(3e))が、何れもが本件発明1の「疎水性物質(C)」に該当するとはいえず、また、HLB(C)要件及び含有量(C)要件を満たすとはいえない。平均粒子径についても、甲3の実施例には、250μm、300μmなど、平均粒子径要件を満たしていないものが記載されている。甲3には、親水性重合体の見掛け密度や、吸水速度プロフィールに関する事項は記載されていない。仮に、甲3発明において、相違点3に係る疎水性物質(C)を含むこと、HLB(C)要件、含有量(C)要件、平均粒子径要件を満たすものとすることを、当業者が容易に想到し得るとしても、しかし、そうすれば必ず上記の見掛け密度要件及びDW吸収速度要件を満足する、というものであるとも認められない。
したがって、甲3からは、甲3発明において、相違点3に係る見掛け密度要件及びDW吸収速度要件で特定される構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到できたとはいえない。

(ウ)発明の効果について
上記ア(ウ)で述べたのと同様であり、この効果は、吸収速度プロフィールについて開示のない甲3の記載から、当業者が予測することができないものである。

(エ)したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明2?5について
本件発明2は、本件発明1において、「吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含んでなる構造が、親水性材料粒子(d1)又は疎水性材料粒子(d2)の表面の一部又は全部に疎水性物質(C)をコーティング又は含浸した材料粒子(D)を吸収性樹脂粒子の内部に含んでなる構造である」と特定されたものであり、また、本件発明3は、本件発明2において、「親水性材料粒子(d1)が、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A2)粒子である」と特定されたものであり、本件発明4は、本件発明2又は3において「材料粒子(D)の体積平均粒子径(μm)が1?30である」と特定されたものであり、本件発明5は、本件発明2?4のいずれかにおいて「材料粒子(D)の含有量(重量%)が架橋重合体(A1)の重量に基づき、0.1?1.0である」と特定されたものである。したがって、これらは、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明6について
本件発明6は、「請求項1?5のいずれかに記載の吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体」の発明である。

ア 上記(3)及び(4)に記載したように、本件発明1?5は、甲1又は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1?5の何れかに記載の吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体に係る、本件発明6は、同様に、甲1又は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 甲6発明との対比

(ア)本件発明6と甲6発明との一致点及び相違点は、上記3(5)イに記載したとおりである。一致点及び相違点4を再掲する。
一致点:
「吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体」
相違点4:
本件発明6においては、
水吸収性樹脂粒子は、溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)、並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A1)を含んでなること(共重合組成要件)、
吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)の一部又は全部を含有していること、
疎水性物質(C)のHLBが1?10であること(HLB(C)要件)、
疎水性物質(C)の含有量が、架橋重合体(A1)の重量に基づいて、0.001?5.0重量%であること(以下「含有量(C)要件」という。)
吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)が400?650であること(平均粒子径要件)、
吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)が0.56?0.62であること(見掛け密度要件)、
(A1)のDW(Demand Wettability)法による1分後の吸収量(M1)が14?19ml/gであり、2分後の吸収量(M2)が26?33ml/gであり、5分後の吸収量(M3)が42?50ml/gであり、10分後の吸収量(M4)が52?59ml/gであること(DW吸収速度要件)、
がそれぞれ特定されているのに対し、
甲6発明においては、それらの要件で特定されたものではない点

(イ)相違点についての検討
甲6発明は、本件発明6と同じ技術分野に属する発明である。
しかし、甲6には、吸水性樹脂の見掛け密度や、吸水速度プロフィールに関する事項は記載されていない。甲6発明において課題としているのは、吸収体中の吸収剤の含有量が吸収剤及び繊維状物の合計重量に基づいて40重量%以上になってもゲルブロッキング現象(吸液してゲル化後に吸収が妨げられる現象)を起こしにくい吸収剤を用いた超薄型の吸収性物品提供することであり(摘示(6b))、実施例においても、吸収性物品の中央部のドライネス値(光学的に反射率を測定して湿っているものと乾いているものと比較)、耐モレ性が評価されている(摘示(6k)?(6n))。しかし、このドライネス値は、吸収性物品について測定したもので、この吸収性物品は、15cm×45cmの液非透過性裏面シート(ポリプロピレンフィルム)と液透過性表面シート(ポリエチレンテレフタレート不織布)の間に、吸収剤と繊維状物を混合してプレスしてなる吸収体を挟んで、四辺を熱プレスしたものであり、この吸収性物品に生理食塩水160mlを注液して7分後の、吸収性物品の表面の反射率を測定して計算するものである。本件発明6のDW吸収速度要件のような、吸収性樹脂粒子の、10分間にわたる吸収速度プロフィールとは異なる。甲6には、吸水性樹脂自体の10分間といった長時間での最適な吸収速度プロフィールを得ようとする動機付けとなるものはない。
また、甲6発明においては、その吸水性樹脂(A)の共重合組成、吸水性樹脂(A)の平均粒子径については、発明の詳細な説明の記載を参照すると、本件発明1におけるよりも広範ではあるが、事実上、重複する範囲を有していると認められる。仮に、甲6発明において、相違点4に係る共重合組成要件、平均粒子径要件を満たすものとすることを、当業者が容易に想到し得るとしても、甲6には、吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)を含有させることは記載されておらず、したがってHLB(C)要件及び含有量(C)要件を満たすものではなく、また、甲6発明は、疎水性物質とは性質が反対の、親水性物質である水溶性樹脂を含有させるものである。
したがって、甲6からは、甲6発明において、相違点4に係る、吸収性樹脂粒子の内部に疎水性物質(C)を含有させること、HLB(C)要件、含有量(C)要件、見掛け密度要件及びDW吸収速度要件で特定される構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到できたとはいえない。

(ウ)発明の効果について
上記ア(ウ)で述べたのと同様であり、この効果は、吸収速度プロフィールについて開示のない甲6の記載から、当業者が予測することができないものである。

(エ)したがって、本件発明6は、甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6において、「吸収性樹脂粒子と繊維の重量比率(吸収性樹脂粒子の重量/繊維の重量)が70/30?90/10である」と特定されたものであるから、本件発明6と同様に、甲1又は甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(7)本件発明8について
本件発明8は、「請求項6又は7に記載の吸収体を用いた吸収性物品」の発明である。
上記(5)及び(6)に記載したように、本件発明6及び7は、甲1又は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明6又は7の吸収体を用いた吸収性物品に係る、本件発明8は、同様に、甲1又は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(8)本件発明9について
本件発明9は、吸収性樹脂粒子の製造方法に係る発明であって、製造される吸収性樹脂粒子は、本件発明1におけるHLB(C)要件、平均粒子径要件、見掛け密度要件、DW吸収速度要件を発明特定事項とするものである。
これらの要件を満足する吸収性樹脂粒子の発明は、上記(3)に記載したとおり、甲1又は甲3にに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、したがって、この吸収性樹脂粒子の製造方法に係る発明であるといえる本件発明9は、同様に、甲1又は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(9)理由2についてのまとめ
以上のとおり、
本件発明1は、本件優先日前に頒布された甲1又は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また甲1(主引用例)に記載された発明及び甲3?甲8に記載された発明又は事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえず、
本件発明2?5は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、
本件発明6は、甲1、甲3又は本件優先日前に頒布された甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、
本件発明7は、甲1又は甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、
本件発明8及び9は、甲1又は甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない
から、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
よって、本件発明1?9についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当せず、理由2によって取り消されるべきものではない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-09-05 
出願番号 特願2013-207923(P2013-207923)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08L)
P 1 651・ 537- Y (C08L)
P 1 651・ 121- Y (C08L)
P 1 651・ 536- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤井 勲  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 中田 とし子
冨永 保
登録日 2015-11-06 
登録番号 特許第5833076号(P5833076)
権利者 SDPグローバル株式会社
発明の名称 吸収性樹脂粒子、この製造方法、これを含む吸収体及び吸収性物品  
代理人 林 博史  

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