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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05H
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H05H
管理番号 1319559
審判番号 不服2016-960  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-21 
確定日 2016-10-04 
事件の表示 特願2014- 61808「プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日出願公開、特開2015- 62160、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成26年3月25日(優先権主張 平成25年8月20日 日本国)の出願であって、平成27年3月20日付けで拒絶理由が通知され(同年同月31日発送)、同年5月29日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、同年10月21日付けで拒絶査定がなされ(同年同月27日送達)、これに対して平成28年1月21日に該拒絶査定を不服として審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成28年1月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
本件補正は、本件補正前の平成27年5月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11である
「 【請求項1】
環状チャンバを画定する誘電体部材と、
前記環状チャンバ内にガスを導入するガス導入部と、
前記誘電体部材の一方側に配置され、交流電力の供給を受けてガスが導入された前記環状チャンバ内にプラズマを発生させる放電用コイルと、
接地され、前記誘電体部材の他方側に配置され、且つ前記誘電体部材の環状チャンバを挟んで前記放電用コイルと対向する導体部材と、
前記放電用コイルに交流電圧を供給する交流電源と、
前記環状チャンバ内に連通し、処理対象の基材に対してプラズマを照射するための開口と、
前記開口の前方を横切るように前記基材を前記環状チャンバに対して相対移動させる移動機構と、を有し、
前記放電用コイルが、電圧発生用コンデンサまたは電圧発生用コイルを介して、接地されているまたは前記導体部材に接続されている、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記電圧発生用コンデンサの容量が可変であるまたは前記電圧発生用コイルのインダクタンスが可変である、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記導体部材が第2の放電用コイルである、請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電圧発生用コンデンサまたは前記電圧発生用コイルとは異なる調整用コンデンサまたは調整用コイルをさらに有し、
前記調整用コンデンサまたは前記調整用コイル、前記放電用コイル、前記電圧発生用コンデンサまたは前記電圧発生用コイル、の順にこれらが直列に接続されている、請求項1?3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記電圧発生用コンデンサと前記調整用コンデンサの直列合成キャパシタンスまたは前記電圧発生用コイルと前記調整用コイルの直列合成インダクタンスを一定に維持した状態で、前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを調整することが可能に構成されている、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
プラズマの発生を検知するプラズマ発生検知装置と、
プラズマの発生の検知結果に基づいて前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを変化させる高電圧制御ユニットとをさらに有する、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記放電用コイルに供給する交流電力の周波数が10kHz以上10MHz以下である、請求項1?6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記開口が、その開口縁を含む平面が前記基材の処理対象の表面に対して平行になるように、前記基材に対して相対的に配置される、請求項1?7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
基材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、
誘電体部材によって画定された環状チャンバ内にガスを導入しつつ、接地されている導体部材に対して前記環状チャンバを挟んで対向する放電用コイルに交流電力を供給することにより、前記環状チャンバ内にプラズマを発生させ、
前記環状チャンバ内に連通する開口の前方を横切るように前記基材を前記環状チャンバに対して相対的に移動させることにより、前記基材にプラズマを曝露させ、
前記放電用コイルが、電圧発生用コンデンサまたは電圧発生用コイルを介して、接地されているまたは前記導体部材に接続されている、プラズマ処理方法。
【請求項10】
前記導体部材が、第2の放電用コイルである、請求項9に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスが可変であって、
前記電圧発生用コンデンサまたは前記電圧発生用コイルのインピーダンスを第1のインピーダンス値に設定し、
前記放電用コイルに第1の電力値の交流電力を供給してプラズマを着火し、
プラズマの着火後に、前記電圧発生用コンデンサまたは前記電圧発生用コイルのインピーダンス値を第2のインピーダンス値に変化させ、
前記放電用コイルに供給する交流電力を、前記第1の電力値に比べて大きい第2の電力値に変化させる、請求項9または10に記載のプラズマ処理方法。」を
「 【請求項1】
環状チャンバを画定する誘電体部材と、
前記環状チャンバ内にガスを導入するガス導入部と、
前記誘電体部材の一方側に配置され、交流電力の供給を受けてガスが導入された前記環状チャンバ内にプラズマを発生させる放電用コイルと、
接地され、前記誘電体部材の他方側に配置され、且つ前記誘電体部材の環状チャンバを挟んで前記放電用コイルと対向する導体部材と、
前記放電用コイルに交流電圧を供給する交流電源と、
前記環状チャンバ内に連通し、処理対象の基材に対してプラズマを照射するための開口と、
前記開口の前方を横切るように前記基材を前記環状チャンバに対して相対移動させる移動機構と、を有し、
前記放電用コイルが、電圧発生用コンデンサまたは電圧発生用コイルを介して、接地されているまたは前記導体部材に接続され、
プラズマの発生を検知するプラズマ発生検知装置と、
プラズマの発生の検知結果に基づいて、前記放電用コイルの電圧がプラズマ発生前に比べて低下するように前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを変化させる高電圧制御ユニットと、をさらに有し、
前記プラズマ発生検知装置が、プラズマの発光を検出するフォトダイオードまたはプラズマ温度を検出する温度計である、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記導体部材が第2の放電用コイルである、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記電圧発生用コンデンサまたは前記電圧発生用コイルとは異なる調整用コンデンサまたは調整用コイルをさらに有し、
前記調整用コンデンサまたは前記調整用コイル、前記放電用コイル、前記電圧発生用コンデンサまたは前記電圧発生用コイル、の順にこれらが直列に接続されている、請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電圧発生用コンデンサと前記調整用コンデンサの直列合成キャパシタンスまたは前記電圧発生用コイルと前記調整用コイルの直列合成インダクタンスを一定に維持した状態で、前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを調整することが可能に構成されている、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記放電用コイルに供給する交流電力の周波数が10kHz以上10MHz以下である、請求項1?4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記開口が、その開口縁を含む平面が前記基材の処理対象の表面に対して平行になるように、前記基材に対して相対的に配置される、請求項1?5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
基材をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、
誘電体部材によって画定された環状チャンバ内にガスを導入しつつ、接地されている導体部材に対して前記環状チャンバを挟んで対向する放電用コイルに交流電力を供給することにより、前記環状チャンバ内にプラズマを発生させ、
前記環状チャンバ内に連通する開口の前方を横切るように前記基材を前記環状チャンバに対して相対的に移動させることにより、前記基材にプラズマを曝露させ、
前記放電用コイルが、電圧発生用コンデンサまたは電圧発生用コイルを介して、接地されているまたは前記導体部材に接続され、
プラズマの発光を検出するフォトダイオードまたはプラズマ温度を検出する温度計を用いてプラズマの発生を検知すると、前記放電用コイルの電圧がプラズマ発生前に比べて低下するように前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを変化させる、プラズマ処理方法。
【請求項8】
前記導体部材が、第2の放電用コイルである、請求項7に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記電圧発生用コンデンサまたは前記電圧発生用コイルのインピーダンスを第1のインピーダンス値に設定し、
前記放電用コイルに第1の電力値の交流電力を供給してプラズマを着火し、
プラズマの着火後に、前記電圧発生用コンデンサまたは前記電圧発生用コイルのインピーダンス値を第2のインピーダンス値に変化させ、
前記放電用コイルに供給する交流電力を、前記第1の電力値に比べて大きい第2の電力値に変化させる、請求項7または8に記載のプラズマ処理方法。」
とすることを含むものである(下線は請求人が付与したものである。)。

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項6に係る発明を特定するために必要な事項である「高電圧制御ユニット」について、「前記放電用コイルの電圧がプラズマ発生前に比べて低下するように」との限定を付加し、「プラズマ発生検知装置」が「前記プラズマ発生検知装置が、プラズマの発光を検出するフォトダイオードまたはプラズマ温度を検出する温度計である」ことを限定して、補正後の請求項1に係る発明とすることを含むものである。
また、本件補正は、補正前の請求項9に係る発明において、「プラズマの発光を検出するフォトダイオードまたはプラズマ温度を検出する温度計を用いてプラズマの発生を検知すると、前記放電用コイルの電圧がプラズマ発生前に比べて低下するように前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを変化させ」ることを限定して、補正後の請求項7に係る発明とすることを含むものである。
そして、補正前の請求項6に係る発明と補正後に請求項1に係る発明、及び補正前の請求項9に係る発明と補正後の請求項7に係る発明とは、いずれも産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1?9に係る発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に進歩性要件(特許法第29条第2項)について検討する。

(1)本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1において、本件補正後のものとして記載したとおりのものと認める(以下、これらの請求項に係る発明を項番号に対応して「本件補正発明1」などという。)。

(2)本件補正発明1
ア 引用文献、引用文献の記載事項及び引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由に引用されたJapanese Journal of Applied Physics、日本国、The Japan Society of Applied Physics、2013.05.20、52, 05EE01(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(当審で訳した。下線は当審で付与した。)。

a「2. Experimental Methods
2.1 Plasma torches
The ICP torches used in experiments are shown in Figs. 1 and 2.」(第2頁左欄第11行?第14行)
2.実験方法
2.1 実験で用いられる誘導結合プラズマトーチは、図1、2に示されている。

b「Figure 2 shows another direct-irradiation-type torch of simpler structure. It is composed of a quartz block with a groove and a quartz plate forming a racetrack chamber. The chamber plane was configured to be perpendicular to the subsutrate. Two planar coils were connected to each other so that the RF current flow in series and that the induction fields generated in the chamber enhance each other. One of the two long sides of the racetrack was set at the lowest part of the torch, as in Fig.1(d) to irradiate plasma directly to the subsutrate.
All experiments were carried out at the atmospheric puressure.](第2頁右欄第17行?第27行)
図2は、一層簡単な構成の別の直接照射型トーチを示す。それは溝のある石英ブロックとレーストラックチャンバの形成する石英板とからなる。チャンバ平面は基板に対して垂直に配置されたものである。2つの平面に位置するコイルは、RF電流が連続して流れ、生成された誘導された場が互いに拡大するように、互いに接続されたものである。レーストラックの2つのサイドのうちの1つは、基板に直接プラズマを照射するように、図1(d)に示されているようにトーチの最も低い部分に置かれたものである。
すべての実験は大気圧下で実行された。

c「Measurements were carried out by detecting infrared radiation from the boundary of the film and the subustrate while scanning the substrate immediately beneath the torch.](第2頁右欄第39行?第3頁左欄第1行)
トーチの直下にある基板をスキャンしながら、測定は、フィルムと基板の境界からの赤外線を検出することによって実行された。

d 図2

図2においてRFが交流電圧を供給する高周波電源であることは自明のことにより、図2から以下の部材が看取できる。
(a)レーストラックチャンバを画定する石英ブロックと石英板
(b)石英板にガスを導入するガス導入部材
(c)石英板のチャンバとは反対側の面に配置されたコイル1に交流電圧を供給する高周波電源
(d)石英ブロックのチャンバとは反対側の面に配置された接地されたコイル2

e 図3

f 上記bの「2つのコイル」が上記dの「コイル-1」及び「コイル-2」であることは明らかである。

上記a?fより、引用文献1には、
「レーストラックチャンバを画定する石英ブロックと石英板と、
石英板にガスを導入するガス導入部材と、
石英板のチャンバとは反対側の面に配置されたコイル-1に交流電圧を供給する高周波電源と、
石英ブロックのチャンバとは反対側の面に配置された接地されたコイル-2と、
前記コイル-1及び前記コイル-2は、RF電流が連続して流れ、生成された誘導された場が互いに拡大するように、互いに接続され、前記レーストラックの2つのサイドのうちの1つは、基板に直接プラズマを照射するように、トーチの最も低い部分に置かれ、
前記トーチの直下にある前記基板をスキャンする、
誘導結合プラズマトーチ。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(イ)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-284333号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

a「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を説明する。図1に、本発明を用いた半導体処理装置の第1の実施例を示す。本装置では、ガス供給装置4より真空容器中に半導体の処理に用いる酸素,塩素,三塩化ホウ素等の原料ガスを供給し、そのガスをコイル状のアンテナ1により発生する電界で電離してプラズマ6を生成する。ガスはプラズマ生成した後に、排気装置7により真空容器外に排気される。13.56MHz,27.12MHz,40.68MHz等の高周波電源10が発生した高周波電力をアンテナ1に供給することによりプラズマ生成用の電界を得ているが、電力の反射を押さえるためにインピーダンス整合器3を用いてアンテナ1のインピーダンスを高周波電源10の出力インピーダンスと一致させている。インピーダンス整合器として逆L型と呼ばれるものを示しているが、周波数やアンテナの構造に応じて整合が取り易いものを用いる必要がある。アンテナ1のもう一端は電気容量が可変のコンデンサー9を挟んでアースに接地される。また、真空容器2がプラズマ6により削られるのを防止するためのファラデーシールド8をアンテナ1と真空容器2の間に設置しているが、ファラデーシールドは電気的にアースされていない状態とする。また、ファラデーシールド8には図3に示したように、コイル状アンテナの巻かれる方向と直交するようにスリットが設けられている。処理される半導体ウエハ13は、電極5上に置く。プラズマ中に存在するイオンをウエハ13上に引き込むため、電極5には高周波電源12により振動電圧を印加する。可変コンデンサー9の電気容量は、課題を解決するための手段のところで説明したように、壁の削れ量が最小となる電気容量値を取れるようにすることが重要である。図1の29は、恒温槽を示し、真空容器2の温度を制御する。具体的には、ファンやヒータを備えることで温度を制御する。」

b 図1

上記a及びbより、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「アンテナ1の一端は電気容量が可変のコンデンサー9を挟んでアースに接地され、前記可変コンデンサー9の電気容量は、壁の削れ量が最小となる電気容量値を取れるようにすること」

(ウ)原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/111090号(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

a「[0042][1-2-3 CCP用電源とICP用電源の接続とそれらの作用]
上述したように、本実施形態の減容処理装置110においては、高周波コイル142に対し、CCP用電力供給系180とICP用電力供給系190との両者が接続されている。したがって、高周波コイル142は、一つの作用として、接地されている真空容器114との間の空間S(図1)に対してCCP用電力供給系180からの13.56MHzの高周波電力を容量結合させるための電極として作用する。この場合の高周波コイル142が接地されてりう真空容器114に対する電極となって、容量結合により電圧または電界を上記空間Sに生じさせる。CCP用電力供給系180の作用は、電圧または電界による容量結合により、上記空間に対してプラズマの点弧容易性を高めたり、励起されているプラズマの安定性を高めたりする作用である。なお、図2に示したキャパシターC3およびC4は、高周波コイル142を接地GNDから高周波コイル142をフローティングさせて電圧を測定するために設けられている。すなわち、CCP用電力供給系180による出力電圧は、フローティング用のキャパシターC3の接地している電極とは反対の電極の接地GNDに対するピーク・トゥー・ピークでの電圧振幅VPPをモニターすれば、高周波コイル142の電極が空間に与えている電圧の目安を測定することが可能となる」

b 図2

上記a及びbより、引用文献3には、以下の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「高周波コイル142を接地GNDから高周波コイル142をフローティングさせて電圧を測定するために設けられているキャパシターC3およびC4」

(エ)原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-57639号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

a「【0017】
コイル104の一端bは、アンプ396及びインピーダンス整合ネットワーク306の出力のようなRFソースに結合され、後者の入力はRF発生装置300に結合されている。コイル104の他端dは、好ましくはコンデンサ308を介してアースに結合されるが、このコンデンサは可変コンデンサであってもよい。アンプ396及びインピーダンス整合ネットワーク306は、RFエネルギがRF発生装置300に反射されずに、効率よくRF発生装置からRFコイル104に伝達されるようにRF発生装置300のインピーダンスを整合させるために、RFコイル104とネットワーク306との組合せインピーダンスを調節する。」

b 図2

上記a及びbより、引用文献4には、以下の事項(以下「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「コイル104の他端dは、可変コンデンサであるコンデンサ308を介してアースに結合されること」

(オ)原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-273419号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。

a「【0050】
制御部50は、入力端情報検出部20で検出した情報に基づいて、入力インピーダンスZinが所定値になるように、インピーダンス整合を行うものである。そのために、制御部50は、第1駆動部31および第2駆動部32に対して、インピーダンス整合するように指令信号を出力し、第1の可変コンデンサC1、第2の可変コンデンサC2のキャパシタンスを変更させている。このとき、第1位置検出部41および第2位置検出部42から出力した可動部の現在位置を入力して、フィードバック制御してもよい。
【0051】
また、制御部50は、可動部の目標位置を演算する機能を有しているので、この目標位置を可動部の現在位置として出力し、後述する異常判定部80に入力させてもよい。
【0052】
また、インピーダンス整合したとき、または、インピーダンス整合したと見なされるときに、後述する異常判定部80に対して、整合完了信号を出力する。
【0053】
なお、制御部50は、本発明の制御手段の一例である。また、インピーダンス整合の方法に関しては公知であるため、説明を省略する。また、本実施例では、入力端情報検出部20で検出するのは、電圧、電流、位相差であり、この情報に基づいてインピーダンス整合を行っているが、この方式に限定するものではない。例えば、進行波電圧と反射波電圧とを検出し、検出した進行波電圧と反射波電圧とに基づいてインピーダンス整合を行う方式でインピーダンス整合を行ってもよい。」

b 図1

上記a及びbより、引用文献5には、以下の事項(以下「引用文献5に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「インピーダンス整合するように、キャパシタンスを変更させている可変コンデンサC1が接地されていること」

(キ)原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-286306号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

a「【0003】
一般に、この種の整合器は、1個または複数の可変コンデンサまたは可変インダクタンスコイル等の可変リアクタンス素子を含み、ステップモータ等により可変範囲内の各ステップ位置またはポジションを選択することで整合器内のインピーダンスひいては負荷インピーダンスを可変調整できる可変整合器として構成されている。そして、プラズマ処理中には、圧力変動などによってプラズマ・インピーダンスが変わると、それら可変リアクタンス素子のインピーダンス・ポジションを可変調整して自動的に負荷インピーダンスを補正して整合ポイント(50Ω)に合わせるようになっている。このオートマッチングを行うため、負荷インピーダンスを測定する回路や、負荷インピーダンスの測定値を整合ポイント(50Ω)に一致させるようにステップモータを通じて各可変リアクタンス素子のインピーダンス・ポジションを可変制御するコントローラ等が用いられる。」

b「【0060】
次に、主制御部100は、たとえばタイマ機能を用いて、上部RFパワーの投入開始から一定時間後に、上部整合器44に対してオフ・プリセット値を解除し、上部整合器44内のオートマッチングに切り替える(ステップB_(6))。このオートマッチングでは、コントローラ104が、RFセンサ106より負荷インピーダンスZ_(in)の測定値を受け取り、その測定値を整合用の基準インピーダンスまたは整合ポイントZ_(MP)に一致させるようにパルスモータ108,110を通じて可変コンデンサ(C_(1),C_(2))のインピーダンス・ポジションをフィードバック制御で可変制御する。こうして、上部高周波電源52からの高周波が最大の伝送効率および設定通りのパワーで上部電極34に給電され、高密度のプラズマが生成される。なお、オフ・プリセット値からオートマッチングへの切り替えを制御するために、タイマ機能に代えて、プラズマが着火したことを光学的に確認するセンサを用いることも可能である。」

上記a及びbより、引用文献6には、以下の事項(以下「引用文献6に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「プラズマが着火したことを光学的に確認するセンサを用いること」

(ク)本願の優先日前に頒布された特開2006-32303号公報(以下「刊行物1」という。」には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
a「【0035】
図1は、本発明の高周波プラズマ処理装置の第1の実施形態の要部構成を示す図である。本実施形態において高周波プラズマ処理装置は、反応容器1と、該反応容器1内に所望のガスを供給するためのガス供給源であるガスボンベ2、供給するガス流量をモニター並びに制御するガス流量計3、第1のコイル4、該第1のコイル4と同形状である第2のコイル5、及び静電容量可変のコンデンサ6と、これらに高周波電流を流すための高周波電源7およびインピーダンス整合を行う整合器8と、被処理物である基板10を搬送、移動するための基板搬送装置(構成部品である基板搬送用コロ9のみ図示)と、を有している。反応容器1は、所望のガス雰囲気を形成するための所定の間隔で平行に対面する壁面部である上下一対の平板状絶縁体1a,1bを有する。
【0036】
そして平板状絶縁体1aの外壁近傍にコイル軸が平板状絶縁体1aの壁面に対して直交する方向で第1のコイル4が配置され、平板状絶縁体1bの外壁近傍にコイル軸が平板状絶縁体1bの壁面に対して直交する方向で第1のコイル4と対向するように第2のコイル5が配置されている。すなわち、第1のコイル4と第2のコイル5は平板状絶縁体1a,1bを挟んで同軸に対向配置される。また第1のコイル4と第2のコイル5とは電気的に直列に接続されており、第1のコイル4と第2のコイル5との間に直列にコンデンサ6が挿入されている。基板10は、平板状絶縁体1a,1bの間の空間を、該平板状絶縁体1a,1bに対して平行に搬送される。」

b「【0060】
図2の装置構成においては、基板10の搬送路となる反応容器1上壁に所定の間隔で対面する壁面部となる左右一対の平板状絶縁体1a,1bを上方に垂直に立設し、該平板状絶縁体1a,1bの外壁近傍に第1のコイル4、第2のコイル5をそれぞれ該平板状絶縁体1a,1bを挟んで対向して配置している。そして、プラズマ発生領域となる平板状絶縁体1a,1b間の空間は、基板10の搬送路となる反応容器1内空間と垂直に連通している。そして、ガスボンベ2よりガス流量計3を通して供給されるガスによって、ガス流が形成され、該ガス流によってプラズマ中の反応活性種が基板10に移送され、基板10に所望のプラズマ処理を行う。」

c 図1


d 図2


e 上記a、cの装置と上記b、dの装置において同一の符号が同一の部材であることは明らかであるから、上記bの装置は高周波プラズマ処理装置であって、第1のコイル4と第2のコイル5との間に直列に静電容量可変のコンデンサ6が挿入され、これらに高周波電流を流すための高周波電源7およびインピーダンス整合を行う整合器8と、被処理物である基板10を搬送、移動するための基板搬送装置を有するといえる。

上記a?eより、刊行物1には
「基板10の搬送路となる反応容器1上壁に所定の間隔で対面する壁面部となる左右一対の平板状絶縁体1a,1bを上方に垂直に立設し、該平板状絶縁体1a,1bの外壁近傍に第1のコイル4、第2のコイル5をそれぞれ該平板状絶縁体1a,1bを挟んで対向して配置し、プラズマ発生領域となる該平板状絶縁体1a,1b間の空間は、該基板10の搬送路となる反応容器1内空間と垂直に連通し、ガスボンベ2よりガス流量計3を通して供給されるガスによって、ガス流が形成され、該ガス流によってプラズマ中の反応活性種が該基板10に移送され、該基板10に所望のプラズマ処理を行う、高周波プラズマ処理装置であって、
該第1のコイル4と該第2のコイル5との間に直列に静電容量可変のコンデンサ6が挿入され、これらに高周波電流を流すための高周波電源7およびインピーダンス整合を行う整合器8と、被処理物である該基板10を搬送、移動するための基板搬送装置を有する、高周波プラズマ処理装置。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

イ 対比・判断
(ア)引用発明1について
a 対比
本件補正発明1と引用発明1とを対比すると、本件補正発明1と引用発明1は、
「環状チャンバを画定する誘電体部材と、
前記環状チャンバ内にガスを導入するガス導入部と、
前記誘電体部材の一方側に配置され、交流電力の供給を受けてガスが導入された前記環状チャンバ内にプラズマを発生させる放電用コイルと、
接地され、前記誘電体部材の他方側に配置され、且つ前記誘電体部材の環状チャンバを挟んで前記放電用コイルと対向する導体部材と、
前記放電用コイルに交流電圧を供給する交流電源と、
前記環状チャンバ内に連通し、処理対象の基材に対してプラズマを照射するための開口と、
前記開口の前方を横切るように前記基材を前記環状チャンバに対して相対移動させる移動機構と、
を有するプラズマ処理装置。」の点で一致している。
他方、本件補正発明1と引用発明1は、以下の相違点1及び2で相違する。
<相違点1>本願補正発明1が、「前記放電用コイルが、電圧発生用コンデンサまたは電圧発生用コイルを介して、接地されているまたは前記導体部材に接続され」るのに対して、引用発明1では、「前記コイル-1及び前記コイル-2は、」「互いに接続され」ている点。

<相違点2>本件補正発明1が、「プラズマの発生を検知するプラズマ発生検知装置と、
プラズマの発生の検知結果に基づいて、前記放電用コイルの電圧がプラズマ発生前に比べて低下するように前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを変化させる高電圧制御ユニットと、をさらに有し、
前記プラズマ発生検知装置が、プラズマの発光を検出するフォトダイオードまたはプラズマ温度を検出する温度計である」のに対して、引用発明1では、このような構成を有しない点。

b 判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用発明1には、プラズマの発光を検出するという動機付けがない。また、引用文献6には、「プラズマが着火したことを光学的に確認するセンサを用いること」が記載されているのみであって、上記相違点2に係る構成の「プラズマの発生の検知結果に基づいて、前記放電用コイルの電圧がプラズマ発生前に比べて低下するように前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを変化させる高電圧制御ユニット」は記載も示唆もされていない。さらに、引用文献2?5、刊行物1にも上記相違点2に係る構成は記載されていない。
これに対して、本件補正発明1は、上記相違点2に係る構成により、「プラズマを安定的に着火させることができ、且つ、チャンバを画定する誘電体部材の絶縁破壊を抑制することができる」(本願明細書の【0010】)という格別顕著な効果を奏するものである。
してみると、引用発明1に引用文献2?6及び刊行物1に記載された事項を適用して上記相違点2に係る構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得ることとすることはできない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件補正発明1は、引用発明1並びに引用文献2?6及び刊行物1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(イ)引用発明2について
a 対比
本件補正発明1と引用発明2とを対比すると、本件補正発明1と引用発明2は、
「チャンバを画定する誘電体部材と、
前記チャンバ内にガスを導入するガス導入部と、
前記誘電体部材の一方側に配置され、交流電力の供給を受けてガスが導入された前記環状チャンバ内にプラズマを発生させる放電用コイルと、
接地され、前記誘電体部材の他方側に配置され、且つ前記誘電体部材の環状チャンバを挟んで前記放電用コイルと対向する導体部材と、
前記放電用コイルに交流電圧を供給する交流電源と、
前記環状チャンバ内に連通し、処理対象の基材に対してプラズマを照射するための開口と、
前記開口の前方を横切るように前記基材を前記環状チャンバに対して相対移動させる移動機構と、を有し、
前記放電用コイルが、電圧発生用コンデンサまたは電圧発生用コイルを介して、接地されているまたは前記導体部材に接続される、
プラズマ処理装置。」の点で一致している。
他方、本件補正発明1と引用発明2は、以下の相違点3及び4で相違する。
<相違点3>「チャンバ」が、本願補正発明1では、「環状」であるのに対して、引用発明2の「プラズマ発生領域となる該平板状絶縁体1a,1b間の空間」は、「環状」でない点。

<相違点4>本件補正発明1が、「プラズマの発生を検知するプラズマ発生検知装置と、
プラズマの発生の検知結果に基づいて、前記放電用コイルの電圧がプラズマ発生前に比べて低下するように前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを変化させる高電圧制御ユニットと、をさらに有し、
前記プラズマ発生検知装置が、プラズマの発光を検出するフォトダイオードまたはプラズマ温度を検出する温度計である」のに対して、引用発明2では、このような構成を有しない点。

b 判断
事案に鑑み、上記相違点4について検討する。
引用発明2には、プラズマの発光を検出するという動機付けがない。また、引用文献6には、「プラズマが着火したことを光学的に確認するセンサを用いること」が記載されているのみであって、上記相違点2に係る構成の「プラズマの発生の検知結果に基づいて、前記放電用コイルの電圧がプラズマ発生前に比べて低下するように前記電圧発生用コンデンサの容量または前記電圧発生用コイルのインダクタンスを変化させる高電圧制御ユニット」は記載も示唆もされていない。さらに、引用文献1?5にも上記相違点4に係る構成は記載されていない。
これに対して、本件補正発明1は、上記相違点4に係る構成により、「プラズマを安定的に着火させることができ、且つ、チャンバを画定する誘電体部材の絶縁破壊を抑制することができる」(本願明細書の【0010】)という格別顕著な効果を奏するものである。
してみると、引用発明2に引用文献1?6に記載された事項を適用して上記相違点4に係る構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得ることとすることはできない。
したがって、上記相違点3について検討するまでもなく、本件補正発明1は、引用発明2及び引用文献1?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)本件補正発明2?9について
本件補正発明2?6は、本件補正発明1をさらに限定するものであるから、本件補正発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件補正発明7は、本件補正発明1のプラズマ処理装置とはカテゴリーの異なるプラズマ処理方法とするものであるから、本件補正発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件補正発明8?9は、本件補正発明7をさらに限定するものであるから、本件補正発明7と同様に、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件補正発明1?9は、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(5)結論
以上から、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?9に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本件補正発明1?9は、上記「第2」「3」で検討したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-21 
出願番号 特願2014-61808(P2014-61808)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H05H)
P 1 8・ 121- WY (H05H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 聡一郎青木 洋平  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 井口 猶二
伊藤 昌哉
発明の名称 プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法  
代理人 岡部 博史  
代理人 田中 光雄  
代理人 鮫島 睦  
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