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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1319586 |
審判番号 | 不服2015-14583 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-04 |
確定日 | 2016-09-14 |
事件の表示 | 特願2014-523933「ハードウェア故障の軽減」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日国際公開,WO2013/019339,平成26年 8月28日国内公表,特表2014-522052〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,2012年6月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年8月1日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって, 平成26年3月28日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出されると共に審査請求がなされ,平成26年12月9日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年3月12日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年3月30日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成27年4月7日),これに対して平成27年8月4日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成27年10月30日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。 第2.平成27年8月4日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年8月4日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成27年8月4日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成27年3月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲, 「 【請求項1】 サーバハードウェア故障の影響を軽減するために,サーバ資源を割り当てる資源割り当て装置によって行われる方法であって, 資源割り当て装置によってサーバハードウェアの故障を検出するステップ(410)と, サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップ(415,420,435)と, サーバハードウェア故障に応答して,およびサーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ(425)と を含む,方法。 【請求項2】 サーバハードウェアを利用するように構成された第2のエージェント装置を識別するステップ(415,420,435)と, サーバハードウェア故障に応答して第2のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ(425)と をさらに含む,請求項1に記載の方法。 【請求項3】 サーバハードウェアの故障を検出するステップが, 資源割り当て装置によって,サーバハードウェアの故障の表示を第2のエージェント装置から受け取るステップであって,第2のエージェント装置は第1のエージェント装置とは異なる,受け取るステップ を含む,請求項1に記載の方法。 【請求項4】 第1のエージェント装置のために別のサーバハードウェア資源を割り当てるように,第2の資源割り当て装置に指示するステップを少なくとも1つの処置が含む,請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 【請求項5】 第2の資源割り当て装置に指示するステップが,インターネットを通じて第2の資源割り当て装置に指示メッセージを送出するステップを含む,請求項4に記載の方法。 【請求項6】 少なくとも1つの処置が,第1のエージェント装置の動作を中断するステップを含む,請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。 【請求項7】 少なくとも1つの処置が,第1のエージェント装置に対してエラーをシミュレートするステップを含む,請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。 【請求項8】 第1のエージェント装置に対してエラーをシミュレートするステップが,インターネットを通じて,エージェント装置に関連する装置にエラーメッセージを送出するステップを含む,請求項7に記載の方法。 【請求項9】 第1のエージェント装置定義を記憶するエージェント装置定義記憶装置(230)であって,第1のエージェント装置定義は第1のエージェント装置および関連するサーバハードウェア資源を識別する,エージェント装置定義記憶装置と, サーバハードウェア資源の故障を検出するように構成されたハードウェア故障検出器(250)と, エージェント装置定義に基づいて,サーバハードウェア資源を利用するように構成されたエージェント装置として,第1のエージェント装置を識別し, サーバハードウェア故障に応答して,およびサーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように少なくとも1つの処置をとる ように構成されたエージェント装置保護モジュール(260)と を備える,資源割り当て装置(200)。 【請求項10】 エージェント装置定義記憶装置(230)が第2のエージェント装置定義を記憶し,第2のエージェント装置定義は第2のエージェント装置および関連するサーバハードウェア資源を識別し, エージェント装置保護モジュール(260)が, サーバハードウェア資源を利用するように構成されたエージェント装置として,第2のエージェント装置を識別し, サーバハードウェア故障に応答して第2のエージェント装置の再構成をもたらすように少なくとも1つの処置をとる ようにさらに構成された,請求項9に記載の資源割り当て装置(200)。 【請求項11】 第1のエージェント装置のために別のサーバハードウェア資源を割り当てるように,第2の資源割り当て装置に指示することを少なくとも1つの処置が含む,請求項9から10のいずれか一項に記載の資源割り当て装置。 【請求項12】 第1のエージェント装置に関連する装置イメージを第2の資源割り当て装置に送出することを少なくとも1つの処置がさらに含む,請求項10に記載の資源割り当て装置。 【請求項13】 第2の資源割り当て装置に指示することにおいて,エージェント装置保護モジュールが,インターネットを通じて第2の資源割り当て装置に指示メッセージを送出する,請求項10に記載の資源割り当て装置。 【請求項14】 少なくとも1つの処置が,第1のエージェント装置の動作を中断することを含む,請求項9から13のいずれか一項に記載の資源割り当て装置。 【請求項15】 少なくとも1つの処置が,第1のエージェント装置に対してエラーをシミュレートすることを含む,請求項9から14のいずれか一項に記載の資源割り当て装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は, 「 【請求項1】 サーバハードウェア故障の影響を軽減するために,サーバ資源を割り当てる資源割り当て装置によって行われる方法であって, 資源割り当て装置によってサーバハードウェアの故障を検出するステップ(410)と, サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップ(415,420,435)であって,第1のエージェント装置は異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える,ステップと, サーバハードウェア故障に応答して,およびサーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ(425)と を含む,方法。 【請求項2】 サーバハードウェアを利用するように構成された第2のエージェント装置を識別するステップ(415,420,435)と, サーバハードウェア故障に応答して第2のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ(425)と をさらに含む,請求項1に記載の方法。 【請求項3】 サーバハードウェアの故障を検出するステップが, 資源割り当て装置によって,サーバハードウェアの故障の表示を第2のエージェント装置から受け取るステップであって,第2のエージェント装置は第1のエージェント装置とは異なる,受け取るステップ を含む,請求項1に記載の方法。 【請求項4】 第1のエージェント装置のために別のサーバハードウェア資源を割り当てるように,第2の資源割り当て装置に指示するステップを少なくとも1つの処置が含む,請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 【請求項5】 第2の資源割り当て装置に指示するステップが,インターネットを通じて第2の資源割り当て装置に指示メッセージを送出するステップを含む,請求項4に記載の方法。 【請求項6】 少なくとも1つの処置が,第1のエージェント装置の動作を中断するステップを含む,請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。 【請求項7】 少なくとも1つの処置が,第1のエージェント装置に対してエラーをシミュレートするステップを含む,請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。 【請求項8】 第1のエージェント装置に対してエラーをシミュレートするステップが,インターネットを通じて,エージェント装置に関連する装置にエラーメッセージを送出するステップを含む,請求項7に記載の方法。 【請求項9】 第1のエージェント装置定義を記憶するエージェント装置定義記憶装置(230)であって,第1のエージェント装置定義は第1のエージェント装置および関連するサーバハードウェア資源を識別し,第1のエージェント装置は異なるサーバハードウェア資源を利用する構成ができる仮想デバイスを備える,エージェント装置定義記憶装置と, サーバハードウェア資源の故障を検出するように構成されたハードウェア故障検出器(250)と, エージェント装置定義に基づいて,サーバハードウェア資源を利用するように構成されたエージェント装置として,第1のエージェント装置を識別し, サーバハードウェア故障に応答して,およびサーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように少なくとも1つの処置をとる ように構成されたエージェント装置保護モジュール(260)と を備える,資源割り当て装置(200)。 【請求項10】 エージェント装置定義記憶装置(230)が第2のエージェント装置定義を記憶し,第2のエージェント装置定義は第2のエージェント装置および関連するサーバハードウェア資源を識別し, エージェント装置保護モジュール(260)が, サーバハードウェア資源を利用するように構成されたエージェント装置として,第2のエージェント装置を識別し, サーバハードウェア故障に応答して第2のエージェント装置の再構成をもたらすように少なくとも1つの処置をとる ようにさらに構成された,請求項9に記載の資源割り当て装置(200)。 【請求項11】 第1のエージェント装置のために別のサーバハードウェア資源を割り当てるように,第2の資源割り当て装置に指示することを少なくとも1つの処置が含む,請求項9から10のいずれか一項に記載の資源割り当て装置。 【請求項12】 第1のエージェント装置に関連する装置イメージを第2の資源割り当て装置に送出することを少なくとも1つの処置がさらに含む,請求項10に記載の資源割り当て装置。 【請求項13】 第2の資源割り当て装置に指示することにおいて,エージェント装置保護モジュールが,インターネットを通じて第2の資源割り当て装置に指示メッセージを送出する,請求項10に記載の資源割り当て装置。 【請求項14】 少なくとも1つの処置が,第1のエージェント装置の動作を中断することを含む,請求項9から13のいずれか一項に記載の資源割り当て装置。 【請求項15】 少なくとも1つの処置が,第1のエージェント装置に対してエラーをシミュレートすることを含む,請求項9から14のいずれか一項に記載の資源割り当て装置。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。 2.補正の適否 (1)新規事項 ア.当審の判断 (ア)本件手続補正が,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,平成26年3月28日付けで提出された明細書,請求の範囲の日本語による翻訳文,及び,国際出願の願書に添付された図面(以下,これらを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。 本件手続補正は,補正前の請求項1,及び,請求項9に係る発明の発明特定事項である「第1のエージェント装置」に対して,「第1のエージェント装置は異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える」(以下,これを「補正事項」という)という限定事項を付加するものである。 (イ)補正事項のうち,「仮想デバイス」という表現は,当初明細書等に記載された内容には存在していない。 当初明細書等において,補正事項と関連していると思われる記載として,当初明細書等には,段落【0022】に, a.「様々な実施形態では1つまたは複数のエージェント装置140a-dは,仮想マシンを含むことができる。」 と記載され,当初明細書等の段落【0023】に, b.「エージェント装置140a-bはそれぞれ仮想装置を含むことができ,それらのすべては単一の物理サーバ上で実行することができる。」 という記載が,存在するのみである。 また,「異なるサーバハードウェアを利用する構成」に関しては,当初明細書等の段落【0022】に, c.「各エージェント装置140a-dは,1つまたは複数のプロセッサ,メモリ,記憶装置,および/またはネットワークインターフェースなどのハードウェア資源を含むことができる。様々な実施形態ではエージェント装置140a-dは,このようなハードウェア資源を他のエージェント装置140a-d,および/または資源割り当て装置130a-bと共有することができる。例えばエージェント装置1 140aは,資源割り当て装置130aおよびエージェント装置M 140bと,CPUを共有することができる。」 という記載が存在する。 上記cに記載内容からは,「エージェント装置」が,「ハードウェア資源を含むことができる」こと,及び,前記「ハードウェア資源」を,複数の「エージェント装置」間で「共有することができる」ことが読み取れ,これらから,当初明細書等からは,一の「エージェント装置」が,他の「エージェント装置」に含まれる「ハードウェア資源」を“利用する”態様が記載されていることまでは,読み取れる。 しかしながら,当初明細書等には,一の「エージェント装置」に含まれる「仮想デバイス」,「仮想マシン」,或いは,「仮想装置」が,他の「エージェント装置」に含まれる「ハードウェア資源」を利用する構成に関しては,記載も示唆もされておらず,仮に,上述のように,本件補正発明においては,“一のエージェント装置が,他のエージェント装置に含まれるハードウェア資源を利用する”ものである場合に,同じく“一のエージェント装置に含まれる,仮想マシン等が,間接的に,他のエージェント装置のハードウェア資源を利用する可能性がある”ことが,当業者にとって周知の技術事項であったとしても,当初明細書等にそれを実現するための手法が開示されていない以上,当初明細書等の記載をもって,補正後の請求項1,及び,請求項9に記載された,「第1のエージェント装置とは異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える」ことが自明であると言うことはできない。 よって,本件手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものではない。 ウ.新規事項むすび したがって,本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)目的要件,及び,独立特許要件について ア.当審の判断 (ア)上記(1)において検討したとおり, 本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが, 仮に,本件手続補正が,当初明細書等の範囲内でなされたものであるとすると,本件手続補正は,一応,補正前の請求項に係る発明の発明特定事項を限定的に減縮することを目的とするものであると言えるので, 以下において,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際,独立して特許を受けることができるものであるか否か検討する。 (イ)36条6項1号について 補正後の請求項1,及び,請求項9に記載の「第1のエージェント装置とは異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える」ことは,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面の何れにも記載されていない。 よって,補正後の請求項1,及び,請求項9に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (ウ)36条4項1号について 補正後の請求項1,及び,請求項9に記載の「第1のエージェント装置とは異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える」ことに関して,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面には,上記「(1)新規事項」の「ア.当審の判断」における(イ)において引用した程度の記載しか存在していないので,どのようにして,「第1のエージェント装置とは異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える」ことを実現しているのか,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面に記載の内容からは不明である。 よって,本願明細書の発明の詳細な説明は,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 (エ)29条2項について あ.補正後の請求項1に係る発明 上記(イ)において検討したとおり,補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,明確ではないが,一応,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりものとして,以下の検討を行う。 [本件補正発明] 「サーバハードウェア故障の影響を軽減するために,サーバ資源を割り当てる資源割り当て装置によって行われる方法であって, 資源割り当て装置によってサーバハードウェアの故障を検出するステップ(410)と, サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップ(415,420,435)であって,第1のエージェント装置は異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える,ステップと, サーバハードウェア故障に応答して,およびサーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ(425)と を含む,方法。」 い.引用刊行物に記載の事項 (あ)原審が,平成26年12月9日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2003-330740号公報(2003年11月21日公開,以下,これを「引用刊行物」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 A.「【0009】図6は,本方式を実現するためのクラスタマネージャ(601)の構成を示している。クラスタマネージャ(601)は,論理計算機割り当て機構(602),障害処理機構(603),物理計算機構成情報テーブル(604),論理計算機構成情報テーブル(605),クラスタテーブル(606)から構成されている。物理計算機構成情報テーブル(604)には物理計算機が有しているプロセッサ装置やディスク装置やメモリ装置等の資源が記述されている。論理計算機構成情報テーブル(605)は,複数の論理計算機に対して割り当てられている資源が記述されている。クラスタテーブル(606)は,論理計算機に対して割り当てられているクラスタの情報が記述されている。論理計算機割り当て機構602は,クラスタシステムを論理計算機に割り当てる機能を有している。障害処理機構603は,クラスタシステムを割り当てた論理計算機が,物理計算機の障害や論理計算機内のソフトウェア障害などで停止した場合の処理を行う機能を有している。これらの機能は,ハードウェア自身で処理することも可能だが,ハードウェアと連携したソフトウェアとして実現することもできる。」 B.「【0015】図12は,障害処理機構の処理フローを示している。ステップ1207では,発生した障害がハードウェア障害なのかソフトウェア障害なのかを判断し,ソフトウェア障害であれば1208に移行し,論理計算機の再起動を行う。なお,障害が発生すると何らかの割り込みが発生する。この割り込みの種類を見ることでどのような障害が発生したかが分かる。ハードウェア障害であれば,新たにリソースを割り当てる必要があるためステップ1201に移行する。ステップ1201では,障害が発生したプロセッサを使用していた論理計算機をサーチする。論理計算機構成情報テーブル(図9)のカラム902をサーチし,障害が発生したプロセッサを使用していた論理計算機を見つける処理を行う。ステップ1202では論理計算機構成情報管理テーブルから,必要とされるプロセッサ処理量を求める。ステップ1203では,障害を起こしていない稼動中のシステムの処理量を増加させる。もし,現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量がある場合は,それを追加する。しかし,もし現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量が無かった場合は,空き物理プロセッサを追加する(プロセッサ量に空きのある他のプロセッサからプロセッサ量を分けて貰う)。ステップ1204では稼動中のシステムの数だけステップ1202と1203を繰り返す。この処理はサービスレベルを保つために,障害発生プロセッサに割り当てられていたプロセッサ処理量を稼動中のシステムのプロセッサの処理量を増加させる処理を行う。例えば,3つの論理計算機でクラスタシステムを構成しており,それぞれに割り当てられたプロセッサ処理量が100のクラスタシステムにおいて,1つの論理計算機に障害が発生すると,クラスタシステムの全体のプロセッサ処理量が100低下することになる。この場合,残り2つの論理計算機のプロセッサ処理量をそれぞれ50増加させることで,全体のプロセッサ処理量を元の300に戻すことができる。単一の物理プロセッサでは増加させるだけのプロセッサ処理量が無い場合は,新たに物理プロセッサを追加する等によりサービス量を保つように処理する。また,別の追加の方法として,稼動中の論理計算機のプロセッサ処理量を均等に追加するのではなく,特定の論理計算機のプロセッサ処理量だけを追加することも考えられる。この場合,プロセッサ処理量が論理計算機毎に不均等になるが,クラスタシステム全体のプロセッサ処理量を保つことができる。ステップ1205では,新しいプロセッサを割り当てる処理を行う。このステップでは,同一クラスタシステム内で異なる物理プロセッサが割り当てられるように処理され,新たな論理計算機が障害を起こしたシステムのために割り当てられる。ステップ1206では,障害を起こした論理計算機数だけステップ1205を繰り返す処理を行う。」 (い)原審が,平成27年3月30日付けの拒絶査定(以下,これを「原審拒絶査定」という)において,周知技術を示すために引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2007-128511号公報(2007年5月24日公開,以下,これを「周知技術文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 C.「【0046】 したがって,システムブート時または最初の割り当て時の静的決定と違って,実行時評価と予定された切り換えによって,実行時間中に資源品質が変化したときに割り当て済み資源を切り換えることができる。例えば,実行時間中に,割り当て済み資源207aと割り当てられていない資源207bが評価される。そのとき,割り当て済み資源207aが,割り当てられていない資源207bと比較して低速で動作していることは明らかである。次に,資源マネージャ205は,資源207bがファームに割り当てられ,資源207aが割り当て解除されるように切り換えを予定する。それを行う際に,ファームが割り当て済み資源207の低速化または障害による悪影響を受ける前に,劣化資源(例えば,資源207a)が認識され交換される。別の実施形態において,通常の使用中に,訂正可能エラーなどの要素がないか資源を監視することができる。この監視したデータは,既に述べた特定のテストと共に(特定のテストの代わりまたは特定のテストに加えて)品質評価に送られてもよい。」 (う)本願の第1国出願前に既に公知である,特開2009-059121号(2009年3月19日公開,以下,これを「周知技術文献2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 D.「【技術分野】 【0001】 本発明は仮想計算機システムにおいて,1台の物理計算機上に複数台動作させる仮想計算機であるLPAR(Logical Partitioning)の占有物理メモリ領域のメモリ移動方式に関する」 E.「【0054】 図12はメモリ障害時における実施形態である。ひとつのDIMMを複数LPARが共有している場合,ひとつのLPARでメモリ障害を検出して停止した場合も,他LPARでの当該DIMMの使用を制御していないため,その後も他LPARが当該DIMMを使用し続けることにより,共有している全LPARが障害となる可能性がある。本実施例は,メモリ障害で停止したLPAR1(1200)と同じDIMM(1205)をLPAR2(1201)が使用していた場合,LPAR2(1201)にも障害が起きるという可能性から,LPAR2のメモリ領域(1201)を別のDIMM3(1206),DIMM4(1207)の領域(1203)に移動させて被害の拡大を防ぐ実施形態である。 【0055】 本実施例では,LPAR1(1200)の配置された番地(1202)でメモリ障害を検出し停止している。障害管理プログラム(604)はこれを検知し,LPAR1が使用していたDIMM(1205)を他のLPARが使用していないかメモリ管理テーブル(601)の情報をもとに調べる。調査の結果,LPAR2が使用しているので,障害管理プログラム(604)は,メモリ管理テーブル(601)から他のDIMMの未使用エントリを確認する。移動可能であれば,メモリ移動プログラム(605)に移動要求を出す。その後は図7の手順に従って,LPAR2のメモリ領域(1201)をDIMM2(1206),DIMM3(1207)のメモリ領域(1203)に移動させる。」 (え)本願の第1国出願前に既に公知である,特開2004-234114号公報(2004年8月19日公開,以下,これを「周知技術文献3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 F.「【0008】 仮想計算機上のOSは,仮想化されたCPUとメモリ上で実行され,仮想計算機上の仮想デバイスを使用することによって動作する。一般的に,仮想計算機の動作環境であるOSはホストOSと呼ばれ,仮想計算機上で動作するOSはゲストOSと呼ばれる。通常のOSがデバイスを使用する場合は,デバイスドライバと呼ばれるデバイス制御のためのソフトウェアモジュールを通してデバイスにアクセスを行う。これに対して,仮想計算機上のゲストOSがデバイスを使用する場合は,仮想計算機が提供する仮想デバイス用のデバイスドライバを使用して,仮想デバイスに対してアクセスを行うことになる。ゲストOSから仮想デバイスへのアクセスがあると,仮想計算機はそのアクセス内容をホストOSのシステムコールに変換し,ホストOSがホストOSのデバイスドライバを介して計算機が備える実際のデバイスへのアクセスを行う。」 G.「【0017】 そして,仮想計算機間のOSのマイグレーション,及びNTCにおける仮想計算機と実計算機の間あるいは実計算機間でのOSのマイグレーションでは,実計算機又は想計算機がゲストOSに提供するデバイスがマイグレーションの元と先で異なる種類である場合には,マイグレーションを行うことができない。これは,マイグレーション対象のゲストOSに,マイグレーション元の計算機が備えるデバイス用のデバイスドライバが組み込まれており,マイグレーション先の計算機ではデバイスの種類が異なるために,そのデバイスドライバが動作し得ないからである。」 う.引用刊行物に記載の発明 (あ)上記Aの「障害処理機構603は,クラスタシステムを割り当てた論理計算機が,物理計算機の障害や論理計算機内のソフトウェア障害などで停止した場合の処理を行う機能を有している」という記載,及び,上記Bの「図12は,障害処理機構の処理フローを示している。ステップ1207では,発生した障害がハードウェア障害なのかソフトウェア障害なのかを判断し・・・・ハードウェア障害であれば,新たにリソースを割り当てる必要があるためステップ1201に移動する」という記載から,引用刊行物は, “障害処理機構が,発生した障害がハードウェア障害であるかを判断し,前記発生した障害が,ハードウェア障害であれば,新たにリソースを割り当てる方法”に関するものであることが読み取れる。 (い)上記(あ)において引用した上記A,及び,上記Bの記載内容,及び,上記(あ)において検討した事項と,上記Bの「ステップ1201では,障害が発生したプロセッサを使用していた論理計算機をサーチする。論理計算機構成情報テーブル(図9)のカラム902をサーチし,障害が発生したプロセッサを使用していた論理計算機を見つける処理を行う」という記載から,引用刊行物においては, “プロセッサに障害が発生したことを検出するステップ”と, “障害が発生したプロセッサを使用していた論理計算機を見つける処理を行うステップ”とを有することが読み取れる。 (う)上記(い)において検討した事項と,上記Bの「ステップ1203では,障害を起こしていない稼動中のシステムの処理量を増加させる。もし,現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量がある場合は,それを追加する。しかし,もし現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量が無かった場合は,空き物理プロセッサを追加する(プロセッサ量に空きのある他のプロセッサからプロセッサ量を分けて貰う)。ステップ1204では稼動中のシステムの数だけステップ1202と1203を繰り返す。この処理はサービスレベルを保つために,障害発生プロセッサに割り当てられていたプロセッサ処理量を稼動中のシステムのプロセッサの処理量を増加させる処理を行う」という記載から,引用刊行物においては, “物理プロセッサに障害が発生すると,前記障害発生プロセッサに割り当てられていたプロセッサ処理量を稼動中のシステムの物理プロセッサに割り当てる処理を行い,もし現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量が無かった場合は,空き物理プロセッサを追加するステップ”を有することが読み取れる。 更に,上記(い)において検討した事項における「プロセッサ」が,「物理プロセッサ」であることも読み取れる。 (え)以上(あ)?(う)において検討した事項から,引用刊行物には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。 「障害処理機構が,発生した障害がハードウェア障害であるかを判断し,前記発生した障害が,ハードウェア障害であれば,新たにリソースを割り当てる方法であって, 物理プロセッサに障害が発生したことを検出するステップと, 障害が発生した前記物理プロセッサを使用していた論理計算機を見つける処理を行うステップと, 前記物理プロセッサに障害が発生すると,前記障害発生物理プロセッサに割り当てられていたプロセッサ処理量を稼動中のシステムの物理プロセッサに割り当てる処理を行い, もし現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量が無かった場合は,空き物理プロセッサを追加するステップ,とを有する方法。」 え.本件補正発明と引用発明との対比 (あ)引用発明において,「ハードウェア障害」時に,「新たにリソースを割り当てる」ことにより,当該「ハードウェア障害」の影響が軽減されることは明らかであって, 引用発明においては,「障害処理機構」が,「物理プロセッサ」の割り当てを行っており,引用発明において,「ハードウェア」,「物理プロセッサ」,及び,「リソース」は,全て,「ハードウェア」を指し示すものであるから, 引用発明における「ハードウェア」,「物理プロセッサ」,及び,「リソース」が, 本件補正発明における「サーバハードウェア」,及び,「サーバ資源」に相当し, 引用発明における「障害処理機構」が, 本件補正発明における「資源割り当て装置」に相当する。 よって,引用発明における「障害処理機構が,発生した障害がハードウェア障害であるかを判断し,前記発生した障害が,ハードウェア障害であれば,新たにリソースを割り当てる方法」が, 本件補正発明における「サーバハードウェア故障の影響を軽減するために,サーバ資源を割り当てる資源割り当て装置によって行われる方法」に相当する。 (い)上記(あ)において検討した事項を踏まえると, 引用発明における「物理プロセッサに障害が発生したことを検出するステップ」が, 本件補正発明における「資源割り当て装置によってサーバハードウェアの故障を検出するステップ(410)」に相当する。 (う)引用発明における「論理計算機」は,「リソース」である,「物理プロセッサ」が割り当てられるもの,即ち,「物理プロセッサ」を使用するものであるから, 本件補正発明における「サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置」に相当するので, 引用発明における「障害が発生した前記物理プロセッサを使用していた論理計算機を見つける処理を行うステップ」と, 本件補正発明における「サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップ(415,420,435)であって,第1のエージェント装置は異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える,ステップ」とは, “サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップ”である点で共通する。 (え)引用発明において,「障害発生物理プロセッサに割り当てられていたプロセッサ処理量を稼動中のシステムの物理プロセッサに割り当てる処理を行い,もし現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量が無かった場合は,空き物理プロセッサを追加するステップ」は,故障した「物理プロセッサ」に割り当てられていた,「論理計算機」を,処理に余裕のある,稼働中の他の「物理プロセッサ」に再割り当てするか,或いは,「空き物理プロセッサ」に割り当てるかの何れかを行う処理ステップであって,これは即ち,「論理計算機」と,「物理プロセッサ」との構成を,「再構成」することに他ならないから, 引用発明における「障害発生物理プロセッサに割り当てられていたプロセッサ処理量を稼動中のシステムの物理プロセッサに割り当てる処理を行い,もし現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量が無かった場合は,空き物理プロセッサを追加するステップ」と, 本件補正発明における「サーバハードウェア故障に応答して,およびサーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ(425)」とは, “サーバハードウェア故障に応答して,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ”である点で共通する。 (お)以上,(あ)?(え)において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] サーバハードウェア故障の影響を軽減するために,サーバ資源を割り当てる資源割り当て装置によって行われる方法であって, 資源割り当て装置によってサーバハードウェアの故障を検出するステップと, サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップと, サーバハードウェア故障に応答して,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップと を含む,方法。 [相違点1] “サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップ”に関して, 本件補正発明においては,「第1のエージェント装置は異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える,ステップ」であるのに対して, 引用発明における「論理計算機」が,「仮想デバイス」を備えているかについての言及がない点。 [相違点2] “少なくとも1つの処置をとるステップ”に関して, 本件補正発明においては,「サーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ」であるのに対して, 引用発明においては,「サーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に」,「物理プロセッサ」の割り当てを行う点についての言及がない点。 お.相違点についての当審の判断 (あ)[相違点1]について [相違点1]は,上記「(イ)36条6項1号について」において検討したように,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていない構成であるが,一応,以下に検討する。 「仮想計算機」上に,「仮想デバイス」を設けることは,例えば,上記Fに引用した周知技術文献3の「仮想計算機上のOSは,仮想化されたCPUとメモリ上で実行され,仮想計算機上の仮想デバイスを使用することによって動作する」という記載内容にもあるとおり,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であり,そのような「仮想デバイス」を有する「仮想計算機」上の「OS」が,構成が同じ種類の他の「実計算機」を割り当てられた場合に使用可能であることも,上記Gに引用した周知技術文献3の記載内容から,同業者には周知の技術事項であって,このとき,当該「OS」が,「仮想計算機」上の「仮想デバイス」を用いて,「実計算機」にアクセスしていれば,当然,他の「実計算機」に対しても,アクセスし得るよう構成されることは明らかである。 引用発明においても,「論理計算機」に対して,上記指摘の周知技術から,「論理計算機」上に,「仮想デバイス」を設け,該「仮想デバイス」が,「物理プロセッサ」の割り当てを,障害の発生した「物理プロセッサ」から,他の「物理プロセッサ」へ変更した際に,変更先の「物理プロセッサ」にアクセスするよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。 よって,[相違点1]は,格別のものではない。 (い)[相違点2]について “サーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとる”点に関しては, 上記Cに引用した周知技術文献1に,「ファームが割り当て済み資源207の低速化または障害による悪影響を受ける前に,劣化資源(例えば,資源207a)が認識され交換される。」と記載され,或いは,上記Dに引用した周知技術文献2に,「本発明は仮想計算機システムにおいて,1台の物理計算機上に複数台動作させる仮想計算機であるLPAR(Logical Partitioning)の占有物理メモリ領域のメモリ移動方式」と記載され、同じく,上記Eに引用した周知技術文献2に,「メモリ障害で停止したLPAR1(1200)と同じDIMM(1205)をLPAR2(1201)が使用していた場合,LPAR2(1201)にも障害が起きるという可能性から,LPAR2のメモリ領域(1201)を別のDIMM3(1206),DIMM4(1207)の領域(1203)に移動させて被害の拡大を防ぐ」と記載されてもいるように,“ハードウェアに障害が発生した場合に,当該ハードウェアに割り当てられている,ソフトウェアである,ファームや,仮想計算機に対して,影響を受ける前に,正常なハードウェアに割り当てを変更する,即ち,再構成を行う”よう構成することは,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であるので, 引用発明においても,障害は発生した「物理プロセッサ」に対して,割り当てられている「論理計算機」を,該障害の影響を受ける前に,他の「物理プロセッサ」を割り当てるようにすることは,当業者が適宜なし得る事項である。 よって,[相違点2]は,格別のものではない。 そして,本件補正発明によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 以上検討したとおりあるから,本件補正発明は,引用発明,及び,周知技術文献1?周知技術文献3に開示の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができない。 か.独立特許要件むすび したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.補正却下むすび 以上に検討したとおり,本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 仮に,本件補正発明が,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものであるとしても, 本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 平成27年8月4日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成27年3月12日付けの手続補正により補正された,上記「第2.平成27年8月4日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。 「サーバハードウェア故障の影響を軽減するために,サーバ資源を割り当てる資源割り当て装置によって行われる方法であって, 資源割り当て装置によってサーバハードウェアの故障を検出するステップ(410)と, サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップ(415,420,435)と, サーバハードウェア故障に応答して,およびサーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ(425)と を含む,方法。」 第4.引用刊行物に記載の発明 原審拒絶理由に引用され,上記「第2.平成27年8月4日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(2)目的要件,及び,独立特許要件について」における「(エ)29条2項について」の「い.引用刊行物に記載の事項」において,引用刊行物として,その記載内容を引用した,特開2003-330740号公報(2003年11月21日公開)には,同じく,上記「第2.平成27年8月4日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(2)目的要件,及び,独立特許要件について」における「(エ)29条2項について」の「う.引用刊行物に記載の発明」において,引用発明として認定したとおりの,次の発明が記載されている。 「障害処理機構が,発生した障害がハードウェア障害であるかを判断し,前記発生した障害が,ハードウェア障害であれば,新たにリソースを割り当てる方法であって, 物理プロセッサに障害が発生したことを検出するステップと, 障害が発生した前記物理プロセッサを使用していた論理計算機を見つける処理を行うステップと, 前記物理プロセッサに障害が発生すると,前記障害発生物理プロセッサに割り当てられていたプロセッサ処理量を稼動中のシステムの物理プロセッサに割り当てる処理を行い, もし現在割り当てられている物理プロセッサに空きプロセッサ量が無かった場合は,空き物理プロセッサを追加するステップ,とを有する方法。」 第5.本願発明と引用発明との対比 本願発明は,上記「第2.平成27年8月4日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において検討した,本件補正発明から,「第1のエージェント装置は異なるサーバハードウェアを利用する構成ができる仮想デバイスを備える」という事項を取り除いたものであるから, 本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] サーバハードウェア故障の影響を軽減するために,サーバ資源を割り当てる資源割り当て装置によって行われる方法であって, 資源割り当て装置によってサーバハードウェアの故障を検出するステップと, サーバハードウェアを利用するように構成された第1のエージェント装置を識別するステップと, サーバハードウェア故障に応答して,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップと を含む,方法。 [相違点] “少なくとも1つの処置をとるステップ”に関して, 本願発明においては,「サーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に,第1のエージェント装置の再構成をもたらすように,少なくとも1つの処置をとるステップ」であるのに対して, 引用発明においては,「サーバハードウェアの故障により第1のエージェント装置が影響を受ける前に」,「物理プロセッサ」の割り当てを行う点についての言及がない点。 第6.相違点についての当審の判断 本願発明と,引用発明との,[相違点]は,本件補正発明と,引用発明との,[相違点2]と同じものであるから,上記「第2.平成27年8月4日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(2)目的要件,及び,独立特許要件について」における「(エ)29条2項について」の「オ.相違点についての当審の判断」における「(い)[相違点2]について」において検討したとおり,格別のものではない。 そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 第7.むすび したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-03-23 |
結審通知日 | 2016-03-29 |
審決日 | 2016-05-02 |
出願番号 | 特願2014-523933(P2014-523933) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) P 1 8・ 561- Z (G06F) P 1 8・ 537- Z (G06F) P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三坂 敏夫、▲高▼橋 正▲徳▼ |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
戸島 弘詩 石井 茂和 |
発明の名称 | ハードウェア故障の軽減 |
代理人 | 特許業務法人川口國際特許事務所 |