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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1319615
審判番号 不服2015-18400  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-08 
確定日 2016-10-07 
事件の表示 特願2014-528656「ネットワーク局をリセットするためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日国際公開、WO2013/033578、平成26年10月16日国内公表、特表2014-527784、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成24年8月31日(優先権主張 2011年(平成23年)9月2日 米国,2012年(平成24年)8月29日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年6月4日付けで拒絶査定され,同年10月8日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がされ,同年11月9日付けで前置報告書が作成され,同月24日付けで上申書が提出され,平成28年2月19日付けで上申書が提出されたものである。


第2 本件補正

1.本件補正の概要
平成27年10月8日付け手続補正(以下「本件補正」という。)の概要は次のとおりである。
本願の特許請求の範囲は,本件補正前に請求項1から61に係る発明が記載されたものであったところ,本件補正によって,請求項の削除及び請求項における記載の変更などされ,請求項1から11に係る発明が記載されるものとなった。
そして,この請求項1から11に係る発明は,平成27年10月8日付け手続補正書の特許請求項の範囲の請求項1から11に記載された事項(下線は請求人が付与。)により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
ワイヤレス通信システムにおいて通信する方法であって、
第1の通信デバイスに対するコンテンションフリー期間の開始を要求する第1の信号を、アクセスポイントから受信するステップと、
複数の通信デバイスに、前記コンテンションフリー期間の前記開始を示す第2の信号を送信するステップと、
前記コンテンションフリー期間の終了を示す第3の信号であって、第4の信号を送信する前に待機する時間の量を示す持続時間を含む、第3の信号を、前記アクセスポイントから受信するステップと、
前記受信した第3の信号および前記持続時間に基づいて、前記複数の通信デバイスに、前記コンテンションフリー期間の前記終了を示す前記第4の信号を送信するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記第2の信号、データ信号、および前記第4の信号が、前記第1の信号によって要求された前記コンテンションフリー期間の間に送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の信号が、前記第1の信号によって要求された前記コンテンションフリー期間の間に受信され、前記第2の信号、データ信号、および前記第4の信号が、前記第1の信号によって要求された前記コンテンションフリー期間の間に送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の通信デバイスがユーザ機器を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の信号を受信するステップが、ユーザ機器において第3の信号を受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザ機器が、前記第1の通信デバイスのピアである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第4の信号を送信するステップが、ユーザ機器から前記第4の信号を送信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の信号を受信するステップが、信号識別子、前記第3の信号を送信している通信デバイスを識別する第1の値、前記第3の信号を受信するとともに前記第4の信号を送信するために前記複数の通信デバイスのうちの第2の通信デバイスを識別する第2の値、前記第4の信号を送信した後に前記第2の通信デバイスにおける応答を待機するための時間の量を示す持続時間、および信号のチェックサムを含む信号を受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第3の信号を送信している前記通信デバイスを識別する前記第1の値および前記複数の通信デバイスのうちの前記第2の通信デバイスを識別する前記第2の値の少なくとも一方が、メディアアクセス制御アドレスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の信号を受信するステップが、信号識別子、前記第3の信号を送信している前記複数の通信デバイスのうちの1つの通信デバイスを識別する第1の値、前記第3の信号を受信するとともに前記第4の信号を送信するために前記複数の通信デバイスのうちの第2の通信デバイスを識別する第2の値、前記第2の通信デバイスが前記第4の信号を送信することになる前記複数の通信デバイスのうちの1つまたは複数の通信デバイスを識別する第3の値、前記1つまたは複数の通信デバイスの通信デバイスからの応答を受信するために待機するための時間の量を示す持続時間、および信号のチェックサムを含む信号を受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1つの通信デバイスを識別する前記第1の値、前記複数の通信デバイスのうちの第2の通信デバイスを識別する前記第2の値、および前記複数の通信デバイスのうちの1つまたは複数の通信デバイスを識別する前記第3の値のうちの少なくとも1つが、メディアアクセス制御アドレスを含む、請求項10に記載の方法。
(以下において,上記請求項1から11に記載された発明を,請求項の番号に従って「本件補正第1発明」などといい,本件補正第1発明から本件補正第11発明を併せて「本件補正発明」という。)

そして,本件補正第1発明については,本件補正前の請求項1には,
「 【請求項1】
ワイヤレス通信システムにおいて通信する方法であって、
第1の通信デバイスに対するコンテンションフリー期間の開始を要求する第1の信号を、アクセスポイントから受信するステップと、
複数の通信デバイスに、前記コンテンションフリー期間の前記開始を示す第2の信号を送信するステップと、
前記コンテンションフリー期間の終了を示す第3の信号を、前記アクセスポイントから受信するステップと、
前記複数の通信デバイスに、前記コンテンションフリー期間の前記終了を示す第4の信号を送信するステップとを含む、方法。」と記載されていたところ,本件補正によって,
「複数の通信デバイスに、前記コンテンションフリー期間の前記開始を示す第2の信号を送信するステップ」とあった記載について,「前記コンテンションフリー期間の終了を示す第3の信号であって、第4の信号を送信する前に待機する時間の量を示す持続時間を含む、第3の信号を、前記アクセスポイントから受信するステップ」となり(以下「補正事項1」という。),
「前記複数の通信デバイスに、前記コンテンションフリー期間の前記終了を示す第4の信号を送信するステップとを含む」とあった記載が「前記受信した第3の信号および前記持続時間に基づいて、前記複数の通信デバイスに、前記コンテンションフリー期間の前記終了を示す前記第4の信号を送信するステップとを含む」となった(以下「補正事項2」という。)。

上記補正事項1は,「第3の信号」が「第4の信号を送信する前に待機する時間の量を示す持続時間を含む」との限定を附すものであり,また,
上記補正事項2は,「第4の信号を送信する」のが「受信した第3の信号および前記持続時間に基づいて」との限定を附すものであるといえる。
また,該補正事項1及び2は,本願の願書に最初に添付された明細書【0050】における「コンテンションフリー期間408の終了を示す信号420は、様々なデータ要素を含むことができる。たとえば、信号420は、送信されている信号のタイプを示すために、フレーム制御フィールドなどの信号識別子を含むことができる。信号420は、コンテンションフリー期間430の終了を示す第2の信号422を送信する前に、信号420を受信しているSTAがどのくらい長く待つべきかを示す持続時間を含むことができる。信号420は、1つまたは複数のSTA識別子を含むことができる。たとえば、信号420は、データ送信STA 402に対する識別子と、ピアSTA 404に対する識別子と、APに対する識別子とを含むことができる。いくつかの実装形態では、識別子は、メディアアクセス制御(MAC)アドレスである。いくつかの実装形態では、識別子は、すべてのSTA(たとえば、ブロードキャスト)を識別することができる。信号420はまた、チェックサムを含むことができる。チェックサムは、信号420に含まれるデータの完全性を判定するために、信号420を受信しているSTAによって使用され得る。」との記載などによる裏付けがあるということができる。

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反しているということはできず,そして,同条第5項第1号の場合に該当する事項を目的とするものであるということができる。
そこで,本件補正第1発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるか(本件補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか)(いわゆる「独立特許要件」と呼ばれる事項。)について検討する。

2.独立特許要件について
(1) 引用文献及び引用発明
原査定の理由に「引用文献1」として引用された特表2009-523371号公報(平成21年6月18日国内公表。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 記載事項1
【0004】
本発明の開示は、概して、通信システムと通信方法に関し、さらに詳細には、ワイヤレスネットワークにおける衝突回避システムおよび衝突回避方法に関する。

イ 記載事項2
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の開示の実施形態は、ワイヤレスネットワークにおける対称送信機会(TXOP)切断処理システムおよび方法を提供する。要するに、とりわけ、ある方法のひとつの実施形態は、第一の局の周辺のTXOPを切断処理するフレームを受信することと、前記フレームの受信に応答して、第二の局の周辺のTXOPを切断処理する第二のフレームを送信することとを含む。
【0012】
とりわけ、もうひとつの方法の実施形態は、TXOPの終わり標識を含むフレームをアクセスポイント(AP)から受信することと、前記標識の受信に応答して、第一の局の周辺のTXOPを切断処理する第一のフレームを送信することと、前記APで前記第一のフレームを受信することと、前記APでの第一のフレームの受信に応答して、前記APの周辺のTXOPを切断処理する第二のフレームを送信することとを含む。
【0013】
とりわけ、もうひとつの方法の実施形態は、第一の局で第一のフレームを送信することと、前記第一のフレームの後に、第一の局で延長インターフレームスペース(EIFS)設定フレームを送信することと、前記短フレームの終わりから始まるDIFSより短いEIFSの時間間隔に基づいた時間に対応する「完了済み送信」を有する第二のフレームを第二の局で送信することとを含む。
【0014】
とりわけ、ひとつのシステムの実施形態は、第一の局の周辺のTXOPを切断処理するフレームを受信するための論理を組み込んでおり、さらに前記フレームの受信に応答して、第二の局の周辺のTXOPを切断処理する第二のフレームを送信するための論理も組み込んでいるプロセッサーを備えている。
【0015】
とりわけ、もうひとつのシステムの実施形態は、第一の局の周辺のTXOPを切断処理するフレームを受信するための手段と、前記フレームの受信に応答して、第二の局の周辺のTXOPを切断処理する第二のフレームを送信するための手段とを備えている。
【0016】
本発明の開示におけるその他のシステム、方法、特徴および利点も、当業者にとって明らかであると考えられ、また以下の図面および詳細な説明を参照すれば、明らかとなるであろう。このようなその他のシステム、方法、特徴および利点はすべて、本明細書の課題を解決するための手段に記載し、本発明の開示の対象範囲内とし、添付の特許請求項によって保護することを目的とする。

ウ 記載事項3
【0028】
図5は、図4に示されているメカニズムに代わる別のメカニズムを図解している。すなわち、AP202によって送信されるTXOPにおける最終フレームは、BSSIDフィールド内にクライアント204のアドレス(たとえば、MACアドレスなど)を含んでいるCF-endフレーム502である。クライアント204は、CF-endフレーム502内のそのアドレスを認識し、SIFS時間間隔後に、CF-endフレーム504で応答する。CF-endフレーム504も、BSSIDフィールドのロケーション内にクライアントアドレスを含んでいる。図5に図解されているこのメカニズムは、「CF-end to self」として表されている。

エ 記載事項4
【0030】
今までは、対称切断処理を実現するのにSTTシステム200によって使用される各種典型的なメカニズムについて説明してきたが、以下の記述(および関連する図)では、局(たとえば、AP202もしくはクライアント204、206のいずれか)間における通信向けに、上記のメカニズムの一部が一般化され、追加メカニズムが提供されている。すなわち、図7?図9には、局1(STA1)(図7?図9の一番上の行に示されている)と局2(STA2)(図7?図9の2番目の行に示されている)の2局間におけるフレームの交換を示すことにより、追加メカニズムについて説明するだけでなく、上記のメカニズムの一般化された図解も提供されている。一部の実施形態では、(図8?図9の一番下の3番目の行に示されている)APもしくはその他の装置など、第三の局とのフレームの交換を行うことができる。図7?図9に示されている各種メカニズムの説明は、CTS/RTSフレーム、データおよびACKの各フレームの交換後に開始するフレーム交換に関するが、後者のフレームについては、図4?図6に関連付けてすでに上述した。
【0031】
図7は、BSSIDフィールドのロケーション内にその対応するMACアドレスを含むCF-endフレーム702を受信する局はいずれも、CF-endフレーム704でCF-endフレーム702に応答する、STTシステム200の特定の実施形態の一般的原理を図解している。CF-endフレーム702内で使用されるアドレスは、具体的なインプリメンテーションによって異なる。一般に、(クライアントもしくはAPによって判断される)CF-endフレーム704が要求される場合には、次のCF-endフレーム704の送信側のアドレスが、CF-endフレーム702のBSSIDフィールドのロケーション内に含まれる。CF-endフレーム704(本明細書では、CF-end応答フレームとも表されている)が要求されず、CF-endフレーム702がシーケンスの最終フレームである場合には、局(たとえば、STA2など)の自己のアドレスがBSSIDフィールド、もしくはブロードキャストアドレス(BC)、もしくはもうひとつの局のアドレスと直接アソシエートされない他のいずれかのアドレスに含まれる。このような理論体系は、IBSS環境もしくはDirect Link(直接リンク)環境でも同様に応用可能である。一般に、インフラストラクチャーモードにおけるクライアントは、通常、APのBSSIDを含んでいるので、APがCF-end応答を生成する。さらに、IBSSモードにおけるクライアントは、TXOP中に通信する相手のピアノードのMACアドレスを含んでいてもよい。APは、APのBSSID以外のアドレスを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0032】
STA1にクライアント局204が含まれており、STA2にAP局(または単にAP)202が含まれている事例を想定する。図7に示されているメカニズムにより、AP202は、SIFS(一部のインプリメンテーションでは、PIFS時間間隔の場合もある)後に、整合するBSSID(たとえば、MACアドレス)を含むCF-end702に別のCF-end704で応答することができる。クライアント局204によって送信されるCF-end702は、クライアント局204のTXOPに最終フレームを含むが、ひとつの実施形態では、これは非肯定応答フレームである(したがって、SIFS後にCF-end704を送信すると安全である)。BSSIDは、CF-end702をひとつのAPに特定化し、CF-end704を送信する複数のAP間における衝突を回避する。CF-end704は、BSS全体を対象範囲として、AP202の周辺のNAVを解除する。ただし、一部のインプリメンテーションでは、CF-end704を必要としない場合もある。たとえば、AP202とクライアント局204との間の距離が近い場合には、AP202もしくはクライアント局204のいずれかからの単一のCF-endが、両装置の対象領域がほとんど重なり合うために、同じ対象領域内でEIFSをほぼリセットする。CF-end応答(CF-end704)を送信するというAP202による決定は、アソシエートされるクライアント局204、206の推定距離および、おそらくはCF-endの送信側の推定距離との組合せに基づいて行うことができる。たとえば、このような決定は、受信した信号の強度、もしくはクライアント局204、206と通信するのに使用されるPHYレートあるいは変調コード方式(MCS)に基づいて行うことができる。他のメカニズムを決定に使用してもよい。
【0033】
STA1がクライアント204で、STA2がAP202であるとする事例を続けると、クライアント204は、AP202によって送信されると予期されるCF-end704後の既定義時間に一致する持続時間値を含むCF-end702(NAVを設定する)を送信することができる。AP202は、ゼロの持続時間を含むCF-end704(CF-end応答)を送信し、これにより、各CF-endの受信側が完全に同時に、もしくは実質的に同時にバックオフを再開することができる(したがって、ひとつの実施形態では、EIFSをCF-endに追随させることのできる既存の規則に優先する)。クライアント204は、CF-endそのものと、SIFSと、AP202からの予期されるCF-end応答持続期間とをたしたものに等しい物理レイヤ集中プロトコル(PLCP)持続時間(フレームのSIGフィールドもしくはL-SIGフィールド内で信号により示される)を含むCF-end702を送信することもできる。ひとつの実施形態では、AP202はこの物理的持続時間を無視し、CF-end702の指示されたレートとサイズから判断できるように、CF-end702の実際の送信が終了した後のSIFS時間間隔後に、CF-end704で応答することができる(たとえば、HT制御フィールドのない20オクテッド、HT制御フィールドのある24オクテッド)。ひとつの実施形態では、CF-end704は、定期的PLCP持続時間を有している。図14および図15に関連付けて以下に述べるメカニズムは、NAVがリセットされる時点とバックオフが再開される時点との間に差が生じるような状況に対処する。
【0034】
一部の実施形態では、第二の局にBSSIDが含まれているときには、図7に図解されているフレームシーケンスに第三のCF-endフレームを追加することができる。このような状況は、APの追加が含まれている図8に図解されている(一番下すなわち3番目の行のフレーム802によって暗示されている)。TXOPは、CF-endフレーム804をSTA2に送信するSTA1によってイニシエートされ、STA2は、CF-endフレーム804でAPに応答する。図に示されているように、APは、CF-endフレーム806のBSSIDフィールド内のBSSIDを含む、最終CF-endフレーム806で応答する。
【0035】
IBSSインプリメンテーションでは、BSSIDは、図9に図解されている最終IBSS標識を送信した局によって認識される。図に示されているように、STA1がSTA2にアドレス指定されているCF-endフレーム902を送信する。STA2は、STA2のBSSIDにアドレス指定されている、CF-endフレーム904で応答する。STA3は、CF-endフレーム906で応答する。BSSIDは、IBSS内の最後の標識を送信した局(たとえばSTA3など)のアドレスであってもよいし、STA1とSTA2間における通信にDirect Link通信が含まれている場合には、APのアドレスであってもよい。
【0036】
一部の実施形態では、CF-endフレームの受信側アドレス(RA)は、ブロードキャストアドレスに等しく、これにより、対象範囲内のすべての局がCF-endフレームを受信し、このフレームを処理することができる。BSSIDのロケーションは、CF-endの宛先を指定するのに使用できる。さらに、一部の実施形態では、CF-endの型/下位型の認識は、受信側がNAVを切断処理するのに十分である。このような実施形態では、CF-endフレームのRAは、CF-end応答側アドレスを格納するのに使用できる一方で、BSSIDフィールドは、BSSIDを格納するのに使用できる。

オ 記載事項5
【0040】
図5および図7に図解され、図11の流れ図に示されているメカニズムに対応する、STT方法200bとして表されている別の実施形態には、第一の局の周辺のTXOPを切断処理するため、TXOPの終わりに、内部に第二の局(たとえばクライアントなど)のアドレスを含むCF-endフレームを第一の局(たとえばAPなど)によって送信すること(1102)と、第一の局からのCF-endフレームを第二の局によって受信すること(1104)と、前記第二の局の周辺のTXOPを切断処理するため、内部に第二の局のアドレスを含むCF-endフレームを送信することにより、第二の局が第一の局に応答すること(1106)とが含まれている。
【0041】
前記方法の実施形態200bの各部分は、各装置(たとえば、APもしくはクライアントのどちらとして構成されているかにかかわらず、局など)にインプリメントされているので、このような部分は、システム200の個々の装置の観点から記述することができるということが理解されよう。たとえば、第一の局(たとえばAPなど)にインプリメントされている方法200bに対応するひとつの方法の実施形態には、第一の局で第二の局(たとえばクライアントなど)からTXOPの最終フレームを受信することと、TXOPの最終フレームの受信に応答して、TXOPの終りに、第一の局の周辺のTXOPを切断処理し、第二の局の周辺のTXOPを切断処理するため、CF-endフレームを送信するよう第二の局にうながす、内部に第二の局のアドレスを含むCF-endフレームを送信することとが含まれている。
【0042】
さらに、第二の局(たとえばクライアントなど)にインプリメントされている方法200bに対応するひとつの方法の実施形態には、内部に第二の局のアドレスを含み、第一の局(たとえばAPなど)の周辺のTXOPを切断処理するのに使用されるCF-endフレームを(第二の局で)受信することと、第二の局の周辺のTXOPを切断処理するため、内部に第二の局のアドレスを含むCF-endフレームを送信することにより第一の局に応答することとが含まれている。

カ 記載事項6
【0048】
図14は、STTシステム200の実施形態に関する、クライアントによりイニシエートされたTXOPの各種メカニズムと、特に、CF-endフレームもしくは、CF?endフレームと同様の機能をもつ、特定の環境内で活動するフレームに関与する、NAVリセットおよびバックオフの再開の問題に焦点を合わせたメカニズムを図解している。以下の説明は、STA1がクライアントで、STA2がAPであるような事例に関する、図7に対応する前述の記述内容に一部基づいている。NAVがリセットされる時点とバックアップが再開する時点との間の差の問題を解決するため、クライアントは、CF-endフレーム1402後のFIFS時に、適切ではないFCSである(たとえば、FCSが適切な場合には、局がDCFインターフレームスペース/アービトレーションインターフレームスペース、すなわちDIFS/AIFSではなく、EIFSを開始させる)、既定義フレームチェックシーケンス(FCS)フィールド110(図1)を含む短フレーム(EIFS設定フレーム)1404を送信することができる。上述のような方法におけるこの短フレーム1404の送信により、受信側(たとえばクライアント204、206など)がEIFSを開始することができる。AP202は(たとえば、持続時間間隔1401として表される、SIFS+EIFS設定フレーム+EIFS-DIFS-CF?endフレーム分だけ、など)CF-endフレーム1406の送信を遅延させるので、フレーム1406の送信は、EIFS-DIFS(1403で表されている持続時間間隔によって表現されているEIFS-DIFS)が終了すると同時に(もしくは実質的に同時に)終了となり、いずれかのクライアント(たとえば204、206など)が同時にDIFS(もしくはさらに一般にはAIFS)を開始させることができる。DIFSは、DCFバックオフ(DIFS)の第一の固定部を表し、AIFSはEDCAバックオフ(AIFS)を表している。公知のように、EDCAは、DCFと類似しているが、QoSの差は存在する(802.11e)。AP202は、EIFSを開始させず、中間EIFS設定フレーム1404を無視する。したがって、EIFS設定フレーム1404は、AP202からCF-end1406を受信不能なクライアント204、206に関するAIFSを開始させる。AP102からのCF-endフレーム1406は、同時にすべてのノードがDIFS(もしくはAIFS)を開始できるように、この時間内に送信される。ただし、一部の実施形態では、EIFS設定フレーム1404は、ゼロ長のフレームとすることができる(たとえば、MACペイロードのないプリアンブルなど)という点に注意されたい。
【0049】
図15は、CF-endフレームを使用しない、図14に示されているメカニズムの基本原理を図解するブロック図である。要するに、図14のCF-endフレーム1402が、EOTフレーム1502と置き換えられており、図14のCF-endフレーム1406が、ACKフレーム1504と置き換えられている。図15に図解されているメカニズムは、ネットワーク内のクライアント204もしくはAP202のいずれか一方、もしくはその両方の範囲内のすべてのノードに関するバックオフを同時に再開するのに使用することができる(たとえば、ノードの一部は、EIFSが終了するのを待つ必要がない)。EOTフレーム1502がAP202に送信され、SIFS時間間隔後にEIFS設定フレーム1404が後続する。AP202は、図14に関連付けて説明したメカニズムと類似した、遅延1401および方法を通じて、ACKフレーム1504でEOTフレーム1502に応答する(さらに、EIFS設定フレーム1404を無視する)。ACKフレーム1504は、EIFS設定フレーム1404の終了後の時間間隔1403と同時に終了となる。ただし、一部の実施形態では、APとクライアントの双方が、同時に、もしくは実質的に同時にEIFS設定フレームを開始させることができる。
【0050】
今までに、図14?図15に示されている各種メカニズムについて説明してきたが、これらのメカニズムを網羅するSTTシステム200の、200eとして表され、図16に示されている、ひとつの方法の実施形態には、所定のAPもしくはEOTフレームに固有のCF-endフレーム形態を持つTXOPの最終データフレームをクライアント204がAP202へ送信すること(1602)と、EIFS設定フレームを送信することと、既定義時間間隔(図14に関連付けて説明した既定義時間間隔は、SIFS、PIFSもしくは図14に関連付けて説明した時間間隔1401である)後に、CF-endフレームをAP202によって受信すること(1606)と、CF-end応答フレームもしくはACKフレームを送信する決定に応答して、クライアント204にCF-end応答フレームもしくはACKフレームを送信することによりネットワーク(たとえばBSSなど)に関するNAVを解除すること(1610)とが含まれている。CF-end応答フレームを送信せずという決定に応答して、CF-endフレームは、上記のようにNAVを解除する行動をとる(1612)。
【0051】
通常の当業者であるなら、本開示内容に照らせば、このような観点からの方法は、図16に図解されている方法に関与する各装置は、図10?図12にすでに記載している方法と類似した方法で記述することができる、前述の方法200eの部分を遂行するので、本明細書では簡潔のため省略されているということを理解できるであろう。

キ 図面記載事項
図5として次の記載がある。

図7として次の記載がある。

図14として次の記載がある。

ク 引用発明
上記アからキの記載によると,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

STA1がクライアントで,STA2がAPであり,
NAVがリセットされる時点とバックアップが再開する時点との間の差の問題を解決するため,クライアントは,CF-endフレーム1402後のFIFS時に,適切ではないFCSである,
既定義フレームチェックシーケンス(FCS)フィールド110を含む短フレーム(EIFS設定フレーム)1404を送信することができ,
上述のようなこの短フレーム1404の送信により,受信側,例えばクライアント204,206などがEIFSを開始することができ,AP202はCF-endフレーム1406の送信を遅延させるので,フレーム1406の送信は,EIFS-DIFSが終了すると同時に終了となり,いずれかのクライアント(204,206など)が同時にDIFS若しくは更に一般にはAIFSを開始させることができ,
AP202は,EIFSを開始させず,中間EIFS設定フレーム1404を無視し,したがって,EIFS設定フレーム1404は,AP202からCF-end1406を受信不能なクライアント204,206に関するAIFSを開始させ,AP102からのCF-endフレーム1406は,同時にすべてのノードがDIFS(若しくはAIFS)を開始できるように,この時間内に送信される。ただし,EIFS設定フレーム1404は,ゼロ長のフレームとすることができる
方法。

(2) 対比及び検討
本件補正第1発明と引用発明を比較すると,本件補正第1発明の構成及び引用発明の構成からみて,本件補正第1発明における「アクセスポイント」は引用発明における「クライアント」に相当するということができる。
このことから,両者には,少なくとも次の相違があるといえる。

引用発明における「EIFS設定1404」と本件補正第1発明における「第3の信号」は,「コンテンションフリー期間の終了を示す信号」であって,「アクセスポイントから受信する」信号である点において共通し,また,本件補正第1発明における「第4の信号」は,送信する「コンテンションフリー期間の終了を示す」信号である点で,引用発明における「CF-End1406」と共通するといえる。
しかし,本件補正第1発明における「第3の信号」は,「第4の信号を送信する前に待機する時間の量を示す持続時間を含む」との特定があるのに対し,引用発明にはそのような特定がなく,「第4の信号を送信するの遅延させる」信号である点の相違が少なくともあるということができる。

ここで,上記相違により,引用発明を基にして,本件補正第1発明のように構成することができることを,当業者が適宜なしえたということができる理由はない。
また,本件補正第1発明のように構成したことによる効果が,引用発明から予測できるということもできない。

3.まとめ
以上のとおりであるから,本件補正第1発明を,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
したがって,本件補正第1発明は,引用発明を基に,特許法第29条第2項に該当するということはできないものであり,また,他に,本件補正第1発明が,特許出願の際独立して特許受けることができないとする理由も発見しない。

したがって,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができるので,本件補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるということはできない。

よって,本件補正は,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるとすることはできない。


第3 本願発明

以上により,本願の請求項1から11に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の請求項1から11に記載されたとおりのものであって,本件補正第1発明から本件補正第11発明である。


第4 当審の判断

本件補正第1発明は,上記「第2 2.独立特許要件について」において述べとおり,当業者が,引用発明に基づいて,容易に発明をすることができたものであるということができないものである。
また,本件補正第2発明から本件補正第11発明は,本件補正第1発明を直接的若しくは間接的に引用するものである。
そうすると,本件補正第2発明から本件補正第11発明も,当業者が,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。


第5 むすび

以上のとおりであるから,本願は,原査定の理由によって,拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2014-528656(P2014-528656)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H04W)
P 1 8・ 55- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川崎 優深津 始  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
山本 章裕
発明の名称 ネットワーク局をリセットするためのシステムおよび方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  

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