• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1319741
審判番号 不服2015-6984  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-14 
確定日 2016-09-23 
事件の表示 特願2013-525683「太陽電池基板、太陽電池基板の製造方法、太陽電池素子及び太陽電池」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日国際公開、WO2013/015173〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年7月18日(優先権主張2011年7月25日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月22日に手続補正がなされたが、平成27年1月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月14日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において、平成28年3月23日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月10日に意見書の提出がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成26年9月22日付けの手続補正により補正された請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「n型拡散層と、前記n型拡散層よりもn型不純物濃度の高いn^(+)型拡散層と、を有し、
前記n^(+)型拡散層の表面に凹部を有し、前記n^(+)型拡散層の表面の中心線平均粗さRaが0.004μm?0.100μmである半導体基板である太陽電池基板。」(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)

第3 刊行物の記載
(1)当審拒絶理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-273829号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。

ア 「【請求項4】
受光面に2種類の異なるドーパント濃度の第2導電型層を有する第1導電型の半導体基板と、受光面電極と、裏面電極とから構成される光電変換装置であって、
前記受光面電極が、ドーパント濃度の高い第2導電型層上に形成され、かつ前記受光面電極が形成されていない2種類の異なるドーパント濃度の第2導電型層が反射防止膜により被覆されてなることを特徴とする光電変換装置。
【請求項5】
異なるドーパント濃度の第2導電型層が、それらの境界領域及びその近傍領域において、異なる表面形状を有して構成される請求項1?4のいずれか1つに記載の光電変換装置。
【請求項6】
ドーパント濃度が低い第2導電型層が、ドーパント濃度が高い第2導電型層の表面凹凸の高低差よりも大きな表面凹凸の高低差を有する請求項5に記載の光電変換装置。」

イ 「【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の光電変換装置は、主として、第1導電型の半導体基板と、この基板の受光面に形成された2種類の異なるドーパント濃度の第2導電型層(以下、高濃度第2導電型層と低濃度第2導電型層と記す)と、受光面電極と、裏面電極とから構成される。なお、受光面と反対側の面である裏面には、高濃度の第1導電型がほぼ全面に形成されていることが好ましい。
半導体基板は、通常、光電変換素子に用いられる基板、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板等の元素半導体基板;シリコンゲルマニウム基板、ガリウム砒素基板等の化合物半導体基板;等の公知材料を使用することができる。なかでも、シリコン基板が好ましい。半導体基板は、主にキャスト法、CZ法又はFZ法により形成されたインゴットを利用することができ、これを例えば、マルチワイヤー法等でスライスして用いることができる。半導体基板は、例えば、0.1?20 Ωcm程度の抵抗値に設定されていることが適当である。
【0009】
半導体基板は、第1導電型の導電性を有している。第1導電型は、n型又はp型のいずれでもよい。半導体基板には、受光面となる側に、受光面側接合層として、2種類の異なるドーパント濃度の第2導電型層が形成されている。ここで、第2導電型とは、第1導電型とは逆導電型であり、p型又はn型のいずれであってもよい。つまり、半導体基板には、光入射側(受光面)からn型、p型の層又は光入射側からp型、n型の層のいずれの順序で配置していてもよい。各層のドーパント濃度は、特に限定されるものではなく、……これらの受光面側接合層は、当該分野で公知の熱拡散法、イオンインプランテーション法により形成することができる。」

ウ 「【0011】
半導体基板は、受光面に、凹凸及び突出部が形成されていることが好ましい。つまり、受光面のうち、実質的に受光を行う面は、平坦でもよいが、微細な凹凸、例えば、高低差が1?10μm程度の凹凸が形成されていてもよい。この凹凸は、実質的に受光を行う面に均一に形成されていることが好ましい。また、突出部は、その表面が受光を行ってもよいが、その表面に受光面電極が形成されることが好ましい。突出部の高さ(図2の線19と線18との差)は、実質的に受光を行う面(微細凹凸が形成されている場合には、凹凸の平均高さの面、以下、受光基準面と記す(図2の線18参照))に対して、3?100μm程度であることが適当である。突出部は、そのドーパント濃度、受光面電極の配置、光電変換効率等を考慮して、任意の位置に、ストライプ状、格子状、島状等に配置することができる。突出部の幅(図2の22参照)は、上述したように、高濃度第2導電層の幅(図2の23参照)に対応するか、あるいは、受光面電極の幅(図2の20参照)よりも若干幅広であることが好ましい。突出部の表面(つまり、受光面電極が形成される半導体基板の基準面)は、平坦であってもよいが、微細な凹凸が形成されていてもよい。突出表面の表面形状は、異なるドーパント濃度の第2導電型層の境界領域(図2の17参照)及びその近傍領域において、あるいは、半導体基板全面において、半導体基板の受光基準面とは異なる表面形状を有していることが好ましい。具体的には、この微細な凹凸は、実質的に受光を行う面における微細な凹凸よりも、その高低差が小さいことが好ましい。なお、突出部は、半導体基板に対して、断面形状が台形形状、丘形状またはその側面が屈曲するように緩やかなものであることが好ましいが、正方形又は長方形の形状となるように急峻であってもよい。」

エ 「【0015】
実施例1:太陽電池セル
本発明における光電変換装置である太陽電池セル21は、図1及び図2に示すように、例えば、比抵抗が0.1?20 Ωcm程度に設定され、その表面に微細な凹凸(例えば、1?10μm程度の高低差)を有するp型シリコン基板10を用いて形成されている。シリコン基板10の受光面の一部には、例えば、3?100μm程度の高さ(図2における19の高さと18の高さとの差)、後述する受光面電極13幅(図2の20参照)の1.1?2.0倍の幅を有する突出部(図2の22参照)を有している。この突出部上に、受光面電極13が、例えば、膜厚5?100μm程度、幅10?200μm程度の細線部分(以下、グリッド電極)と幅1?2mm程度の太線部分(以下、メイングリッド電極)を組合せたパターン(図5の受光面電極100、グリッド電極7及びメイングリッド電極8参照)で形成されている。また、受光面電極13直下を含む受光面の略全面にn型拡散層11が形成されている。n型拡散層11は、10^(17)?10^(20)/cm^(3)程度のドーパント濃度に設定されており、n型拡散層11において、受光面電極13下方であって、境界17付近までの領域において、ドーパント濃度が10^(18)?10^(21)/cm^(3)程度のn型高濃度層16が形成されている。
また、受光面の受光面電極13が形成された領域以外の領域に、膜厚50?100nm程度のSi_(3)N_(4)からなる反射防止膜12が形成されている。
一方、裏面には、ドーパント濃度が10^(18)?10^(21)/cm^(3)程度のp型高濃度層14が形成され、その略全面にわたって、裏面電極15が形成されている。」

オ 「【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、突出部上に受光面電極が形成されているため、光電変換装置がモジュール化等されて、例えば、封止されるまでに、鋭敏な受光面表面を機械的な接触から保護することができ、特性の劣化を極力抑えて、高性能な特性の光電変換装置、例えば、太陽電池を得ることができる。
また、受光面電極がドーパント濃度の高い第2導電型層上に形成されること、受光面電極の線幅がドーパント濃度の高い第2導電型層の幅よりも小さいことにより、鋭敏な受光面への金属付着を効果的に低減することができる。
さらに、第2導電型層が反射防止膜により被覆されるため、光の反射防止効果を得ることができ…(省略)……例えば、太陽電池の使用環境での長期安定性の高い優れた光電変換装置を工業的に得ることが可能になる。
【0026】
また、異なるドーパント濃度の第2導電型層が、それらの境界領域及びその近傍領域において、異なる表面形状を有して構成される場合、特に、ドーパント濃度が低い第2導電型層が、ドーパント濃度が高い第2導電型層の表面凹凸の高低差よりも大きな表面凹凸の高低差を有する場合、つまり、低濃度の第2導電型層が表面凹凸を有することで、光学的に表面反射低減効果を発揮させて光入射を容易にすることができる。一方、電極形成が行われる高濃度の第2導電型層の表面形状は平坦又は上記光学的な凹凸よりも、凹凸高低差を小さくした表面とすることで、電極被着を容易にできるなど、それぞれに最適な表面とすることで良好な特性改善を行うことができる。」

カ 上記ウ及びエで引用する図2は、以下のものである。


(2)引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アの記載によれば、
引用文献には、
「受光面に2種類の異なるドーパント濃度の第2導電型層を有する第1導電型の半導体基板と、受光面電極と、裏面電極とから構成される光電変換装置であって、
前記受光面電極が、ドーパント濃度の高い第2導電型層上に形成され、
かつ前記受光面電極が形成されていない2種類の異なるドーパント濃度の第2導電型層が反射防止膜により被覆され、
ドーパント濃度が低い第2導電型層が、ドーパント濃度が高い第2導電型層の表面凹凸の高低差よりも大きな表面凹凸の高低差を有する、光電変換装置。」が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)イの記載によれば、
上記アの「2種類の異なるドーパント濃度の第2導電型層」は、
熱拡散法により形成された「高濃度n型層」と「低濃度n型層」であってもよいことが理解できる。
また、上記アの「第1導電型の半導体基板」は、「p型の半導体基板」であってもよいことが理解できる。

ウ 上記(1)ウ及びエの記載を踏まえて、図2を見ると、以下のことが理解できる。
(ア)上記アの「ドーパント濃度が低い第2導電型層」は、「1?10μm程度の高低差の表面凹凸を有する」こと。
(イ)上記アの「ドーパント濃度が高い第2導電型層」は、「平坦な表面、又はドーパント濃度が低い第2導電型層の表面凹凸よりも高低差の小さい表面凹凸を有する」こと。

エ 上記(1)オの記載によれば、
上記アの「光電変換装置」は、「太陽電池」であってもよいことが理解できる。

オ 上記アないしエより、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「受光面に、熱拡散法により形成された高濃度n型層と低濃度n型層を有するp型の半導体基板と、受光面電極と、裏面電極とから構成される太陽電池であって、
前記受光面電極が、高濃度n型層上に形成され、
かつ前記受光面電極が形成されていない高濃度n型層と低濃度n型層が反射防止膜により被覆され、
低濃度n型層は、1?10μm程度の高低差の表面凹凸を有し、
高濃度n型層は、平坦な表面、又は低濃度n型層の表面凹凸よりも高低差の小さい表面凹凸を有する、太陽電池。」

第4 対比・判断
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「熱拡散法により形成された高濃度n型層」と「(熱拡散法により形成された)低濃度n型層」は、それぞれ、本願発明の「n型不純物濃度の高いn^(+)型拡散層」と「n型拡散層」に、相当する。
また、引用発明の「受光面に、熱拡散法により形成された高濃度n型層と低濃度n型層を有するp型の半導体基板」は、「太陽電池」を構成する基板であることから、本願発明の「半導体基板である太陽電池基板」に相当する。

(2)引用発明の「高濃度n型層」は、「低濃度n型層の表面凹凸よりも高低差の小さい表面凹凸を有する」ものであるから、引用発明の「高濃度n型層」は、「表面に凹部を有し、表面の中心線平均粗さRaが所定値である」といえる。
してみると、本願発明と引用発明とは、「n^(+)型拡散層の表面に凹部を有し、前記n^(+)型拡散層の表面の中心線平均粗さRaは所定値である」点で一致する。

(3)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「n型拡散層と、前記n型拡散層よりもn型不純物濃度の高いn^(+)型拡散層と、を有し、
前記n^(+)型拡散層の表面に凹部を有し、前記n^(+)型拡散層の表面の中心線平均粗さRaは所定値である半導体基板である太陽電池基板。」

(4)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点>
n^(+)型拡散層の表面の中心線平均粗さRaの数値範囲に関して、
本願発明は、「0.004μm?0.100μm」であるのに対して、
引用発明は、「高濃度n型層」の表面の具体的な「中心線平均粗さRa」の値が不明である点。

2 判断
(1)上記<相違点>について検討する。
ア 引用発明の「高濃度n型層」は、「平坦な表面、又は低濃度n型層の表面凹凸よりも高低差の小さい表面凹凸を有する」ものであり、「低濃度n型層」は、「1?10μm程度の高低差の表面凹凸」を有することから、引用発明の「高濃度n型層」は、「1μm未満の高低差の表面凹凸を有する高濃度n型層」を含むものと解される。

イ そして、該「高濃度n型層」について、具体的にどの程度の「表面凹凸」にするかは、当業者が引用発明を実施する際に適宜定めるべき事項であるところ、引用文献には「凹凸高低差を小さくした表面とすることで、電極被着を容易にできる」(摘記オを参照。)と記載されていることから、「1μm未満の高低差」を限りなく小さくすることに何ら困難性は認められず、そのことを妨げる特段の事情も認められない。

ウ 一方、「高低差」を小さくするほど、「表面粗さ」の指標である「中心線平均粗さRa」も小さくなることは、当業者にとって明らかであって、「中心線平均粗さRa」が「0.004μmないし0.100μm」である面は、「凹凸高低差を小さくした表面」であると解される(「表面粗さ」の指標である「中心線平均粗さRa」については、例えば、特開2010-85527号公報の【0008】、特開2008-41328号公報の【0020】、特開2001-26465号公報の【0012】、特開平11-277715号公報の【0013】及び特開平7-280541号公報の【0012】及び図3を参照。)。

エ してみると、「1μm未満の高低差の表面凹凸を有する高濃度n型層」を、「表面粗さ」の指標である「中心線平均粗さRa」で表した際に、「0.004μmないし0.100μm」である「表面凹凸を有する高濃度n型層」とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。
また、本願明細書の【0059】、実施例及び比較例等に関する記載を見ても、本願発明の「半導体基板である太陽電池基板」において「中心線平均粗さRa」の上限値及び下限値を設定することについて、臨界的な技術的意義は認められない。

オ よって、引用発明において、上記<相違点>に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)効果
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。

3 平成28年5月10日提出の意見書について
(1)請求人は、意見書の「(2)出願人の意見」(第1頁を参照。)において、以下のように主張するので、この点について検討する。

「また、本願明細書[0059]に記載のように、中心線平均粗さRaが0.100μm以下の場合にはn型不純物濃度の高い拡散領域の消失が抑えられるという効果があります。このような効果について引用文献には記載も示唆もありません。
さらに、本願明細書[0060]に記載のように、本願発明における中心線平均粗さRaは半導体基板表面に凹凸を形成する四角錘の面上を測定対象とするものです。具体的には、図2の写真に示されるような面の中心線平均粗さRaを意図しています。従って、本願発明においてn^(+)型拡散層の中心線平均粗さRaが『0.004μm?0.100μm』であることは、……引用文献2の図2における第2導電型層(符号16)の表面の状態とは意味合いが大きく異なります。」

(2)請求人は、本願発明の「半導体基板である太陽電池基板」の効果として、「n型不純物濃度の高い拡散領域の消失が抑えられるという効果」を主張しているが、引用発明においては、「受光面電極が、高濃度n型層上に形成され」るため、素子の正常動作のために、「『高濃度n型層』の『表面凹凸』の『高低差』」は、高濃度n型層が消失しない程度となっていることは、当然の事項である。
また、本願発明は、「凹凸を形成する四角錘」との発明特定事項を備えるものではないので、請求人の主張は、特許請求の記載に基づく主張ではない。

(3)よって、請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。

4 まとめ
本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-21 
結審通知日 2016-07-26 
審決日 2016-08-09 
出願番号 特願2013-525683(P2013-525683)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 太陽電池基板、太陽電池基板の製造方法、太陽電池素子及び太陽電池  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ