ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04D |
---|---|
管理番号 | 1319799 |
審判番号 | 不服2014-24735 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-04 |
確定日 | 2016-09-21 |
事件の表示 | 特願2009-173780「ブレードを製造する方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月18日出願公開,特開2010- 38158〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判に係る出願(以下,「本願」と言う。)は,平成21年7月27日(パリ条約優先権主張,2008年(平成20年)7月31日,アメリカ合衆国)の特許出願であって,平成26年7月31日付けで拒絶査定がされ(この謄本の送達日は平成26年8月5日),これに対して,平成26年12月4日に本件拒絶査定不服審判が請求された。 その後,当審より平成27年9月15日付けで拒絶の理由(以下,「当審拒絶の理由」と言う。)を通知したところ,平成28年3月29日付けで意見書及び手続補正書が提出された。 2.本願発明 本願の請求項7に係る発明は,平成28年3月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下,この発明を「本願発明」と言う。)。 「ブレード(200)であって, 前記ブレードの翼幅の長さで実質的に延びるようにそれぞれのサイズを定めた複数の第一のプライが前記ブレードの前記翼幅の長さの一部のみで延びるようにそれぞれのサイズを定めた複数の第二のプライと接合された構成を備え, 隣接する前記第一のプライ間に複数の前記第二のプライが配置され,該第一のプライの1つの厚さは前記第二のプライの1つの厚さの2倍であり, 前記複数の第二のプライは前記複数の第一のプライ全域に散在されており,前記複数の第一のプライは前記複数の第二のプライと共に層状にされて前記複数の第一のプライが離間されて広げられて前記ブレードの断面積の増加を促進されている,ブレード。」 3.引用発明等 (1)当審拒絶の理由で引用例1として示した,本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許第5,375,978号明細書には,ブレードに関し,図面とともに以下の事項が記載されている(英文の後の()内に当審訳を付した。)。 ア.「Illustrated in FIG. 1 is a composite fan blade 10 for a high bypass ratio fanjet gas turbine engine (not shown) having a composite airfoil 12 typically including a leading edge 16 and a trailing edge 18. 」(4欄35?38行)(図1に示されるものは,典型的には前縁16と後縁18を含む複合エアフォイル12を有する高バイパス比ファンジェットガスタービンエンジン(図示せず)用の複合ファン・ブレード10である。) イ.「Shown in FIG. 2, is one embodiment of a lay-up 36 of airfoil plies 40, generally all made from a unidirectional fiber filament ply material, preferably a tape, as it is often referred to, arranged generally in order of span and used to form a composite airfoil 12 as shown in FIG. 1. The airfoil plies 40 are essentially those plies that form the airfoil 12 of blade 10 in FIG. 1. Between airfoil plies 40 are inserts 41 that are often characterized as root plies that are used to help form the root portion of the blade and not the airfoil portion.」(4欄48?57行)(図2に示されるものは,エアフォイルプライ36のレイアップの一例であり,一般的にそれらエアフォイルプライの全てが,好ましくはしばしばテープと称されて通常図1に示されるように複合エアフォイル12を形成するようスパンされて用いられる,一方向繊維の繊維フィラメントプライ材料から作られる。エアフォイルプライ40は,本質的に,図1におけるブレード10のエアフォイル12を形成するプライである。エアフォイルプライ40の間には,多くの場合,ブレードのエアフォイル部でなくルート部分の形成を助けるために使用されるルートプライとして特徴付けられるインサート41がある。) ウ.「The inserts 41 may be distinguished from the airfoil plies 40 by size, wherein the inserts extend essentially only through the area of the root and are substantially shorter than the airfoil plies. Inserts 41 are used to produce the extremely thick root section which are later machined to the proper dovetail root configuration. The inserts 41 are preferably interspersed among all the airfoil plies. The inserts are of various spans depending upon their position in the airfoil thickness.」(5欄13?21行)(インサート41は,大きさによってエアフォイルプライ40と区別することができ,インサートは本質的にルートの領域のみを通って延び,実質的にエアフォイルプライよりも短い。インサート41は,後に適切なダブテールのルート形状に機械加工される非常に厚い根元部を生成するために使用される。インサート41は,好ましくは全てのエアフォイルプライの間を占める。インサートは,エアフォイルの厚さにおいて占める位置に応じて様々にスパンされたものである。) エ.「Illustrated in FIG. 3a is the area of the lay-up around root 20 wherein airfoil plies 40 are generally indicated by white areas and insert or dovetail plies 41 are generally indicated by lined areas.」(6欄41?44行)(図3aは,ルート20の周囲のレイアップされる領域を示したもので,エアフォイルプライ40は,一般的に白の領域で示され,インサートあるいはダブテールプライ41は,一般的に縁取りされた領域である。) (2)引用例1は,ブレード10をエアフォイルプライ40とインサートあるいはダブテイルプライ41とを用いて構成したものが開示されている。 上記記載事項に加えて図面の記載内容を参酌すれば,以下の事項も認識できる。 ・複数のエアフォイルプライ40は,それぞれブレード10の翼幅の長さで実質的に延びるようにそれぞれのサイズが定められている。 ・複数のダブテイルプライ41は,それぞれブレード10の翼幅の長さの一部のみで延びるようにそれぞれのサイズが定められている。 ・隣接する複数のエアフォイルプライ40の間に複数のダブテイルプライ41が配置され接合されている。 ・複数のダブテイルプライ41は複数のエアフォイルプライ40全域に散在されている。 ・複数のエアフォイルプライ40は複数のダブテイルプライ41と共に層状にされている。 (3)以上を踏まえ,本願発明の表現にならって整理すると,引用例1には,次の発明が記載されていると認めることができる(以下,この発明を「引用発明」と言う。) 「ブレードであって, 前記ブレードの翼幅の長さで実質的に延びるようにそれぞれのサイズを定めた複数のエアフォイルプライが前記ブレードの前記翼幅の長さの一部のみで延びるようにそれぞれのサイズを定めたダブテイルプライと接合された構成を備え, 隣接する前記エアフォイルプライ間に複数の前記ダブテイルプライが配置され,前記複数のダブテイルプライは前記複数のエアフォイルプライ全域に散在されており,前記複数のエアフォイルプライは前記複数のダブテイルプライと共に層状にされている,ブレード。」 4.対比・判断 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明の「エアフォイルプライ」,「ダブテイルプライ」は,それぞれ,本願発明の「第一のプライ」,「第二のプライ」に相当する。 イ.引用発明も,本願発明と同様に「前記複数の第一のプライが離間されて広げられて前記ブレードの断面積の増加を促進されている」ものと言える。 ウ.以上を踏まえると,本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。 [一致点] 「ブレードであって, 前記ブレードの翼幅の長さで実質的に延びるようにそれぞれのサイズを定めた複数の第一のプライが前記ブレードの前記翼幅の長さの一部のみで延びるようにそれぞれのサイズを定めた複数の第二のプライと接合された構成を備え, 隣接する前記第一のプライ間に複数の前記第二のプライが配置され, 前記複数の第二のプライは前記複数の第一のプライ全域に散在されており,前記複数の第一のプライは前記複数の第二のプライと共に層状にされて前記複数の第一のプライが離間されて広げられて前記ブレードの断面積の増加を促進されている,ブレード。」 [相違点] 本願発明では,第一のプライの1つの厚さは第二のプライの1つの厚さの2倍であるとされているのに対して,引用発明は,そのように特定されるものではない点。 (2)相違点について検討する。 引用発明において,第一のプライの1つの厚さを第二のプライの1つの厚さよりも大きくすること自体は,当業者が適宜なし得たことと言うべきである(ちなみに,当審拒絶の理由で引用例1とともに引用例2として示した,本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表平10-505033号公報は,航空機の回転翼を開示するものであるが,図5を用いて説明されるものは,クロスプライ積層体60i,60o,60m(本願発明で言う「第一のプライ」に相当する。)間に複数の一方向積層体70i,70o(本願発明で言う「第二のプライ」に相当する。)を配置した構成のブレードを開示するものであって,しかも,前者の厚さを後者の厚さよりも大きくしたことも把握できる。)。 また,本願明細書の記載の限りでは,本願発明において,第一のプライの1つの厚さの第二のプライの1つの厚さに対する具体的な大きさの値として「2倍」という値を選定したことによって,格別の技術的な意義がもたらされたものと認められるものではない。 そうしてみると,引用発明において相違点に係る本願発明の構成を採用することに,当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせるものではない。 (3)よって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明し得たものである。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-04-20 |
結審通知日 | 2016-04-26 |
審決日 | 2016-05-09 |
出願番号 | 特願2009-173780(P2009-173780) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F04D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 所村 陽一 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
矢島 伸一 新海 岳 |
発明の名称 | ブレードを製造する方法及びシステム |
代理人 | 田中 拓人 |
代理人 | 黒川 俊久 |
代理人 | 荒川 聡志 |
代理人 | 小倉 博 |