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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24J |
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管理番号 | 1319822 |
審判番号 | 不服2015-7757 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-24 |
確定日 | 2016-09-21 |
事件の表示 | 特願2011-531521「太陽光選択的吸収コーティング及び製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年4月29日国際公開,WO2010/046509,平成24年3月8日国内公表,特表2012-506021号〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 本願の経緯の概要 本願は,2009年10月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2008年10月20日 スペイン)を国際出願日とする出願であって,平成26年12月19日付けで拒絶査定がなされたところ,これに対し,平成27年4月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出された。その後,特許法第162条の規定による審査において,平成27年7月23日付けで拒絶理由が通知され,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,請求人からは応答がなかったものである。 2 本願の特許請求の範囲 本願の特許請求の範囲の請求項1?請求項20は,平成27年4月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された,以下のとおりである。 「【請求項1】 太陽光吸収特性及び低放射率を有する太陽光選択的吸収コーティングであって, 金属,誘電体またはセラミック材料の支持体(1)と, この支持体(1)上に堆積された中?遠赤外線高反射性の少なくとも1つの金属反射層(2)と, この金属反射層(2)上に堆積された,交互になった複数の誘電体層(5)及び複数の金属層(6)から構成される少なくとも合わせて4層以上の多層吸収構造体(3)と, この多層吸収構造体(3)上に堆積された少なくとも1つの反射防止誘電体層(4)とから構成され, 多層吸収構造体(3)の誘電体層(5)が互いに同じまたは異なる厚さ及び/または組成とし,多層吸収構造体(3)の金属層(6)が互いに同じまたは異なる厚さ及び/または組成とし,多層吸収構造体(3)の金属層(6)及び誘電体層(5)のそれぞれの厚さが10nm未満であり,多層吸収構造体(3)の総厚が5?1000nmであり,太陽光選択的吸収コーティングの誘電体質の層が,誘電体層が堆積されるチャンバまたはチャンバの一部に不活性ガス及び反応ガスを含んだ反応性スパッタリングによって堆積され,太陽光選択的吸収コーティングの金属層が,金属シートが堆積されるチャンバまたはチャンバの一部に不活性ガスだけを導入してDCスパッタリングによって堆積される ことを特徴とする太陽光選択的吸収コーティング。 【請求項2】?【請求項20】 (省略)」 3 平成27年7月23日付けで通知した拒絶理由の概要 本願の請求項1に係る発明は,「太陽光選択的吸収コーティング」という物の発明であるが,請求項1には「反応性スパッタリング」及び「DCスパッタリング」という,その物の製造方法が記載されている。 物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合に,当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当であるが,そのような事情が存在するとは認められない。 よって,本願の請求項1に係る発明,及び請求項1を引用する請求項2?請求項20に係る発明は明確でないから,本願の特許請求の範囲は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 4 当審の判断 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,本願明細書,特許請求の範囲,図面の記載,技術常識を考慮すると,「太陽光選択的吸収コーティング」という物の発明である。 ところで,請求項1には,「太陽光選択的吸収コーティングの誘電体質の層が,誘電体層が堆積されるチャンバまたはチャンバの一部に不活性ガス及び反応ガスを含んだ反応性スパッタリングによって堆積され,太陽光選択的吸収コーティングの金属層が,金属シートが堆積されるチャンバまたはチャンバの一部に不活性ガスだけを導入してDCスパッタリングによって堆積される」旨記載されているが(前記2),この点は,本願明細書の記載を参酌すると,請求項1の「太陽光選択的吸収コーティング」を製造するために必要な技術的特徴や条件を特定するものと解されるから,請求項1はその物の製造方法が記載されたものである。 そして,物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号,平成24年(受)第2658号)。 しかしながら,本願明細書,図面の記載や技術常識を参照しても,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情は依然として存在しない。 したがって,請求項1に係る発明は依然として明確でなく,同様に,請求項1を引用する請求項2?請求項20に係る発明も依然として明確でない。 5 むすび 以上のとおり,本願の特許請求の範囲の請求項1?請求項20に係る発明は明確でないから,本願の特許請求の範囲は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-04-12 |
結審通知日 | 2016-04-20 |
審決日 | 2016-05-06 |
出願番号 | 特願2011-531521(P2011-531521) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(F24J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 崇昭、渡邉 洋 |
特許庁審判長 |
千壽 哲郎 |
特許庁審判官 |
窪田 治彦 佐々木 正章 |
発明の名称 | 太陽光選択的吸収コーティング及び製造方法 |
代理人 | 新保 斉 |