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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04Q
管理番号 1320040
審判番号 不服2015-17037  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-16 
確定日 2016-10-25 
事件の表示 特願2011-126410「データ管理システム,親機,子機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日出願公開,特開2012-253668,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年6月6日の出願であって,平成26年11月14日付けで拒絶理由が通知され,平成27年1月19日付けで手続補正がされ,同年6月8日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年9月16日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において平成28年3月30日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年6月6日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-5に係る発明は,平成28年6月6日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるものと認められる。本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
データを記憶する子機側記憶部を個別に有する複数の子機と,マルチホップ通信を用いて前記複数の子機から前記子機側記憶部内のデータを収集する親機とを備え,
前記複数の子機の各々は,他の子機と前記親機との間でデータを中継する際,前記他の子機から取得したデータに,自身の前記子機側記憶部内のデータを付加して前記親機に送信する付加中継部を有し,
前記親機は,前記複数の子機の各々についてホップ数を管理する親機側記憶部と,前記複数の子機の各々に対してデータ要求を送信し当該データ要求への返信として前記子機側記憶部内のデータを取得する取得部とを有し,
前記取得部は,データを取得する際に,前記複数の子機のうち前記ホップ数の多い子機を優先してデータを取得し,データの取得を完了した子機へは前記データ要求の送信を行わないように構成されており,
前記複数の子機の各々は,前記他の子機と前記親機との間でデータを中継するとき以外で前記他の子機からのデータを受信した場合に当該データを一時的に記憶する一時記憶部を有しており,前記親機から前記データ要求を受けた際に,前記子機側記憶部内のデータに前記一時記憶部内のデータを付加して前記親機に送信することを特徴とするデータ管理システム。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
平成26年11月14日付け拒絶理由通知書には,以下の理由が記載されている。

「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1
引用文献1
備考:
引用文献1には,無線検針システムにおいて,データ収集ユニットU(本願の「親機」相当)から,ツリー構造の下位の端末無線ユニットU3?6(本願の「ホップ数の多い子機」相当)を呼出指定して検針データを収集することで,U3?6の上位の端末無線ユニットU1,2が,下位のU3?6からの検針データに加えて自端末の検針データを付加してUに送信するため,効率よくデータ収集できることが記載されている(特に,段落0014-0019,0025,0026,図1,7)。

・請求項2
引用文献1,2
備考:
引用文献2には,中継装置間において,通信エラーが発生した場合に上位装置に対してその旨を送信することが記載されている(特に,段落0036,図5)。

・請求項3
引用文献1-3
備考:
引用文献3には,中継機において,受信した電文の種別に応じて自身の情報を追加するか否かを判断することが記載されている(特に,段落0028-003
0,図2,4,12)。

・請求項5
引用文献1-4
備考:
引用文献4には,中継局において,自分の配下の子局のデータを収集することが記載されている(特に,段落0042,図1)。

<拒絶の理由を発見しない請求項>
請求項(4)に係る発明については,現時点では,拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

なお,請求項5には,「前記子機側記憶部内のデータに前記管理用憶部内のデータを付加して」と記載されているが,「管理用記憶部内」の誤記と認められる。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2000-207672号公報
2.特開2001-109980号公報
3.特開2010-021653号公報
4.特開2003-008600号公報」

また,平成27年6月8日付け拒絶査定の備考欄に,以下の事項が記載されている。

「●理由(特許法第29条第2項)について

・請求項1,6,7
出願人は平成27年 1月19日付けで提出された意見書において,請求項1に係る発明と,平成26年11月14日付け拒絶理由通知書に記載した引用文献1とを対比し,
「しかし,引用文献1においては,取得部が,データを取得する際に,複数の子機のうちホップ数の多い子機を優先してデータを取得し,データの取得を完了した子機へはデータ要求の送信を行わないこととした上記A構成に相当する構成は存在しません。」
と主張している。
しかしながら,引用文献1には,無線検針システムにおいて,データ収集ユニットU(本願の「親機」相当)から,ツリー構造の下位の端末無線ユニットU3?6(本願の「ホップ数の多い子機」相当)を呼出指定して検針データを収集することで,U3?6の上位の端末無線ユニットU1,2が,下位のU3?6からの検針データに加えて自端末の検針データを付加してUに送信するため,効率よくデータ収集できることが記載されているから(特に,段落0014-0019,0025,0026,図1,7),既に検針データの取得を完了した端末無線ユニットU1,2へは,データの送信要求を行わないものと認められる。
また,引用文献1には,「効率よくデータ収集を行う」と記載されていることから,本願発明の「データの収集にかかる時間を短縮し,且つデータ収集のための通信量を抑制する」という効果についても,当業者が予測し得る範囲のものであり,格別のものではない。
請求項6,7も同様である。

・請求項2,3,5
平成26年11月14日付け拒絶理由通知書の備考欄に示した通りである。

したがって,出願人の意見書における主張は採用することができず,請求項1-3,5-7に係る発明は,引用文献1-4に基いて,当業者が容易に発明することができたものである。」

2.当審における原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶理由で引用した特開2000-207672号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,例えば電気,ガス,水道等の計器の検針値を遠隔地から無線によりデータ収集する無線検針システムに関し,さらに詳しくは電波状態によってデータ収集できないとき,他の端末の通信ルートを経由させて通信接続する通信性能を高めた無線検針システム及び無線検針方法に関する。」(2頁1欄)

(イ)「【0014】
【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。図1は家屋の電力消費量を自動検針する無線検針システム11を示し,この無線検針システム11は親局としての1つのデータ収集ユニットUと,家屋12…毎に設置された子局としての端末無線ユニットU1 ,U2 …との通信を一括して行う無線通信機能を有し,それぞれPHS(パーソナル・ハンディホン・システム)のトランシーバモードで接続している。
【0015】また,各家屋12…の周辺には電波障害となる様々な建物13…が存在し,通信利用される各家屋12…間は立地条件によって定められた例えば25db?55db程度の通信可能な20db以上の通信電界強度で通信接続されている。
【0016】親局のデータ収集ユニットUは,メインコントローラとして例えば電柱14に設置され,センタ15からの指令信号に基づいてユニット毎の検針値,呼出番号,その呼出時刻等の検針データを収集し,この収集した検針データを折返しセンタ15に返答するものであって,このデータ収集ユニットUへは第1?第6の端末無線ユニットU1 ?U6 の下位のユニットから上位のユニットへと経由させて通信接続している。
【0017】この場合,1つのデータ収集ユニットUと分散された第1?第6端末無線ユニットU1 ?U6 との通信ルートに際しては,データ収集ユニットUに直接通信接続される第1端末無線ユニットU1 と第2端末無線ユニットU2 とを上位に設定し,これらの両ユニットU1 ,U2 に直接通信接続される第3?第6端末無線ユニットU3 ?U6 を下位に設定して,下位の第3端末無線ユニットU3 及び第4端末無線ユニットU4 からは上位の第1端末無線ユニットU1 を経由させて,データ収集ユニットUへとデータを収集させ,下位の第5端末無線ユニットU5 及び第6端末無線ユニットU6 からは上位の第2端末無線ユニットU2 を経由させて,データ収集ユニットUへとデータを収集させるツリー構造のデータ収集機能を有し,このツリー構造のデータ収集機能により,分散された下位の端末無線ユニットU3 ?U6 から検針データを1つ上位の端末無線ユニットU1 ,U2 へと導き,これより統合してデータ収集ユニットUへとデータ収集する。
【0018】また,上位の端末無線ユニットU1 ,U2 は下位の端末無線ユニットU3 ?U6 からのデータ収集時に,下位からの検針データに加えて自端末検針データを付加してから,次の上位のデータ収集ユニットUへとデータ送信するように設定している。このため,下位の端末無線ユニットU3 ?U6 から上位の端末無線ユニットU1 ,U2 及びデータ収集ユニットUへと効率よくデータ収集を行う。
【0019】例えば,図2に示すように,上位の第2端末無線ユニットU2 に通信接続される通信ルートを介して下位の第5端末無線ユニットU5 と第6端末無線ユニットU6 とから検針データが,上位の第2端末無線ユニットU2 に送信されたとき,この第2端末無線ユニットU2 は下位からの両端末無線ユニットU5 ,U6 の検針データに加えて自端末検針データを付加してから上位のデータ収集ユニットUへとデータ送信する。
【0020】子局の第1?第6端末無線ユニットU1 ?U6 は,家屋12…毎の電力消費量を検針する各電力メータに設置されて,データ収集ユニットUと無線で通信接続する。
【0021】図3は家屋毎に設置される端末無線ユニットを示し,第1の端末無線ユニットU1 を例にとって説明すると,この第1端末無線ユニットU1 は専用ケーブル31を介して電子式の電力メータ32と接続しており,家屋毎の電力消費量を計測した電力メータ32の検針値を第1端末無線ユニットU1 に伝送してデータ収集させ,このデータ収集した検針値を無線アンテナ33を介してデータ収集ユニットUに送信し,また無線アンテナ33を介して他の端末無線ユニットとの通信を許容している。
【0022】さらに,この第1端末無線ユニットU1 には外部より視認可能なLED(発光ダイオード)34を有しており,これを点灯表示してデータ収集時の動作状態や新規登録時の動作状態等を外部から確認できるようにしている。
【0023】図4は端末無線ユニットの制御回路ブロック図を示し,CPU41はEE-PROM42及びROM43に格納されたプログラムに沿って無線装置44及び端末無線ユニットの呼出番号毎に設けられた電力メータ32を制御し,その制御データをRAM45で読出し可能に記憶する。また,CPU41はタイマ46からの計時データに基づいて混信しないように送信タイミングを通信制御し,また規定時間内に応答があったかをタイマ46により計時する。
【0024】図5は第1端末無線ユニットU1 の通信状態テーブルTaを例にとって示し,この通信状態テーブルTaは第1端末無線ユニットU1 と他のユニット間との電界強度の平均値をそれぞれ求めたものであって,この電界強度の平均値に基づいて各ユニット間との通信状態が分り,これによりユニット間の通信可否が明確に得られる。
【0025】図6はデータ収集ユニットUの通信状態テーブルTbを示し,この通信状態テーブルTbは分散された第1?第6端末無線ユニットU1 ?U6 から通信状態のデータを吸上げてデータ収集ユニットUに統合的にデータ収集したツリー構造のデータ収集結果であって,このツリー構造のデータ収集結果に基づいて各ユニットU1 ?U6 との通信ルートを確立する。
【0026】例えば,図7に示すように,呼出指定された下位の第5端末無線ユニットU5から検針データを予め登録設定された基本の通信ルートL1 で上位の第2端末無線ユニットU2 に送信できないとき,第5端末無線ユニットU5 は他の通信許容する第1端末無線ユニットU1 に通信接続し,この第1端末無線ユニットU1 間の代行通信ルートL2 を経由させて検針データを必ずデータ収集ユニットU及びセンタ15へと導くように通信ルートを切換えることができる。」(3頁3欄?4頁5欄)

(ウ)「【0030】図9は新規の第7端末無線ユニットU7 とデータ収集ユニットU間の通信状態を示し,この新規の第7端末無線ユニットU7 は第5端末無線ユニットU5 及び第2端末無線ユニットU2 を仲介ユニットとして代行登録依頼し,これに基づいて代行登録データをデータ収集ユニットUへ送信して新規登録する。この新規登録したときの登録応答データが同通信ルートを介して第7端末無線ユニットU7へと応答される。」(4頁5欄?6欄)

上記(ア)ないし(ウ)の記載,図面及び技術常識を考慮すると,

a 上記(ア)より,引用例1には,「無線検針システム」に関する発明が記載されている。
上記(イ)の段落【0014】,【0021】より,前記「無線検針システム」は,複数の「子局としての端末無線ユニット」と,「親局としてのデータ収集ユニット」を備え,個々の前記「端末無線ユニット」は,それぞれ接続された電力メータから検針データを収集し,前記検針データを同段落【0023】に記載された「RAM」に記憶するものと解され,また,前記「データ収集ユニット」は,前記複数の端末無線ユニットからの前記検針データを収集するものといえる。
また,同段落【0016】ないし【0019】より,前記データ収集ユニットは,下位の端末無線ユニットの検針データを上位の端末無線ユニットを介して収集しており,「マルチホップ通信を用いて検針データを収集する」といえる。
以上より,引用例1には,
「検針データを記憶するRAMを個別に有する複数の子局としての端末無線ユニットと,マルチホップ通信を用いて前記複数の端末無線ユニットから前記RAM内の検針データを収集する親局としてのデータ収集ユニットとを備え,た無線検針システム」
が記載されていると認められる。

b 上記(イ)の段落【0016】ないし【0019】より,前記「無線検針システム」は,「上位の端末無線ユニットは,下位の端末無線ユニットとデータ収集ユニットとの間で検針データを中継しているといえるところ,前記下位の端末無線ユニットからの検針データに自端末検針データを付加してからデータ収集ユニットへ伝送する機能」を有するものと認められる。
また,上記(ウ)より,前記下位の端末無線ユニットは,さらに下位の端末無線ユニットからのデータを中継することが示唆されており,引用例1において,「上位の端末無線ユニット」と「下位の端末無線ユニット」が有する機能に差異はないといえる。
そうすると,前記aも勘案して,引用例1には,
「前記複数の端末無線ユニットの各々は,他の端末無線ユニットと前記データ収集ユニットとの間で検針データを中継する際,前記他の端末無線ユニットからの検針データに前記RAM内の自端末検針データを付加してからデータ収集ユニットへ伝送する機能を有」することが記載されていると認められる。

c 前記「データ収集ユニット」は,上記(イ)の段落【0025】及び図6より,通信状態テーブルを用いて各端末無線ユニットとの通信ルートを確立することが記載され,同段落【0017】より,当該通信ルートにより端末無線ユニットから検針データを収集しており,当然,前記通信ルートに関する情報を管理するメモリを有すると認められる。
さらに,同段落【0026】の記載からみて,前記「データ収集ユニット」は,前記端末無線ユニットを呼出指定し,該呼出指定の返信として検針データを収集するものと解される。
そうすると,前記aも勘案して,引用例1には,
「前記データ収集ユニットは,前記複数の端末無線ユニットの各々について通信ルートに関する情報を管理するメモリと,前記複数の端末無線ユニットの各々に対して呼出指定し,該呼出指定の返信として前記RAM内の検針データを収集する機能を有」すると認められる。

d 上記(イ)の段落【0026】及び図7には,呼出指定された下位の端末無線ユニットから検針データを予め登録設定された基本の通信ルートで上位の端末無線ユニットに送信できないとき,前記下位の端末無線ユニットは他の通信許容する端末無線ユニットに通信接続し,この端末無線ユニット間の代行通信ルートを経由させて検針データを必ずデータ収集ユニットへと導くように通信ルートを切換えることが記載されており,引用例1には,「通信許容する端末無線ユニット」からみると,「予め設定登録された基本の通信ルート以外の代行通信ルートにより他の端末無線ユニットから検針データを受信した場合,前記検針データをデータ収集ユニットに送信する」ことが記載されているといえる。ここで,受信した検針データをさらに送信するために,当該検針データを一時的に記憶する一時記憶部を有し,該一時記憶部に記憶した検針データを送信することは明らかである。
そして,前記bと同様に個々の「端末無線ユニット」の機能に差異はないといえるから,引用例1には,「前記複数の端末無線ユニットの各々は,予め設定登録された基本の通信ルート以外の代行通信ルートにより他の端末無線ユニットから検針データを受信した場合,当該検針データを一時的に記憶する一時記憶部を有しており,前記一時記憶部内の前記検針データをデータ収集ユニットに送信する」ことが記載されているといえる。

前記aないしdを総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「検針データを記憶するRAMを個別に有する複数の子局としての端末無線ユニットと,マルチホップ通信を用いて前記複数の端末無線ユニットから前記RAM内の検針データを収集する親局としてのデータ収集ユニットとを備え,
前記複数の端末無線ユニットの各々は,他の端末無線ユニットと前記データ収集ユニットとの間で検針データを中継する際,前記他の端末無線ユニットからの検針データに前記RAM内の自端末検針データを付加してからデータ収集ユニットへ伝送する機能を有し,
前記データ収集ユニットは,前記複数の端末無線ユニットの各々について通信ルートに関する情報を管理するメモリと,前記複数の端末無線ユニットの各々に対して呼出指定し,該呼出指定の返信として前記RAM内の検針データを収集する機能を有する,
前記複数の端末無線ユニットの各々は,予め設定登録された基本の通信ルート以外の代行通信ルートにより他の端末無線ユニットから検針データを受信した場合,当該検針データを一時的に記憶する一時記憶部を有しており,前記一時記憶部内の前記検針データをデータ収集ユニットに送信する
無線検針システム。」

イ 原査定の拒絶理由で引用した特開2001-109980号公報(以下,「引用例2」という。)には,特に段落【0036】及び図5に関連して以下の事項(以下,「技術事項1」という。)が記載されている。

「中継装置間において,通信エラーが生じた場合に上位装置に対してその旨を送信すること。」

ウ 原査定の拒絶理由で引用した特開2010-21653号公報(以下,「引用例3」という。)には,特に,段落【0028】-【0033】,図2,4,12に関し,以下の事項(以下,「技術事項2」という。)が記載されている。

「中継機において,受信した電文の種別に応じて自身の情報を追加するか否かを判断すること。」

エ 原査定の拒絶理由で引用した特開2003-8600号公報(以下,「引用例4」という。)には,特に段落【0042】,図1に関し,以下の事項(以下,「技術事項3」という。)が記載されている。

「中継局において,自分の配下の子局のデータを収集すること。」

(2)対比
本願発明と引用発明とを技術常識を踏まえて対比する。

a 引用発明の「(子局としての)端末無線ユニット」及び「(親局としての)データ収集ユニット」は,それぞれ本願発明の「子機」及び「親機」に相当する。

b 引用発明の「検針データ」は,本願発明の「データ」に含まれ,引用発明の「検針データを記憶するRAM」は,本願発明の「データを記憶する子機側記憶部」に相当する。

c 上記a,bを勘案すると,引用発明の「マルチホップ通信を用いて前記複数の端末無線ユニットから前記RAM内の検針データを収集する親局としてのデータ収集ユニット」は,本願発明の「マルチホップ通信を用いて前記複数の子機から前記子機側記憶部内のデータを収集する親機」に相当する。

d 引用発明の「前記複数の端末無線ユニットの各々は,他の端末無線ユニットと前記データ収集ユニットとの間で検針データを中継する際,前記他の端末無線ユニットからの検針データに前記RAM内の自端末検針データを付加してからデータ収集ユニットへ伝送する機能」は,本願発明の「前記複数の子機の各々は,他の子機と前記親機との間でデータを中継する際,前記他の子機から取得したデータに,自身の前記子機側記憶部内のデータを付加して前記親機に送信する付加中継部」に相当する。

e 本願発明の「ホップ数」は,親機とそれぞれの子機との間の「通信ルートに関する情報」といえ,引用発明の「メモリ」は「データ収集ユニット」のものであるから,引用発明の「前記複数の端末無線ユニットの各々について通信ルートに関する情報を管理するメモリ」と本願発明の「前記複数の子機の各々についてホップ数を管理する親機側記憶部」は,「前記複数の端末無線ユニットの各々について通信ルートに関する情報を管理する親機側記憶部」である点で共通する。

f 引用発明の「呼出指定」は,本願発明の「データ要求」に相当するから,引用発明の「前記複数の端末無線ユニットの各々に対して呼出指定し,該呼出指定の返信として前記RAM内の検針データを収集する機能」は,本願発明の「前記複数の子機の各々に対してデータ要求を送信し当該データ要求への返信として前記子機側記憶部内のデータを取得する取得部」に相当する。

g 上記e,fより,引用発明の「データ収集ユニット」が,前記eの「メモリ」と前記fの「機能」を有することは,本願発明の「親機」が,前記eの「親機側記憶部」と前記fの「取得部」を有することに相当する。

h 引用発明の「前記複数の端末無線ユニットの各々」が,「予め設定登録された基本の通信ルート以外の代行通信ルートにより他の端末無線ユニットから検針データを受信した場合」と,本願発明の「前記複数の子機の各々」が,「前記他の子機と前記親機との間でデータを中継するとき以外で前記他の子機からのデータを受信した場合」は,「前記複数の子機の各々」が,「特定の条件で前記他の子機からのデータを受信した場合」である点で共通する。
また,引用発明の「前記複数の端末無線ユニットの各々」が,「当該検針データを一時的に記憶する一時記憶部を有」することは,本願発明の「前記複数の子機の各々」が,「当該データを一時的に記憶する一時記憶部を有」することに相当する。
さらに,引用発明の「前記複数の端末無線ユニットの各々」が,「前記一時記憶部内の前記検針データをデータ収集ユニットに送信する」ことと,本願発明の「前記複数の子機の各々」が,「前記親機から前記データ要求を受けた際に,前記子機側記憶部内のデータに前記一時記憶部内のデータを付加して前記親機に送信する」ことは,「前記一時記憶部内のデータを前記親機に送信する」ことで共通する。

i 引用発明の「無線検針システム」は,本願発明の「データ管理システム」に含まれる。

上記aないしiを総合すると,本願発明と引用発明は,以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「データを記憶する子機側記憶部を個別に有する複数の子機と,マルチホップ通信を用いて前記複数の子機から前記子機側記憶部内のデータを収集する親機とを備え,
前記複数の子機の各々は,他の子機と前記親機との間でデータを中継する際,前記他の子機から取得したデータに,自身の前記子機側記憶部内のデータを付加して前記親機に送信する付加中継部を有し,
前記親機は,前記複数の子機の各々について通信ルートに関する情報を管理する親機側記憶部と,前記複数の子機の各々に対してデータ要求を送信し当該データ要求への返信として前記子機側記憶部内のデータを取得する取得部とを有し,
前記複数の子機の各々は,特定の条件で前記他の子機からのデータを受信した場合に当該データを一時的に記憶する一時記憶部を有しており,前記一時記憶部内のデータを前記親機に送信する
データ管理システム。」

(相違点1)
一致点である「通信ルートに関する情報」について,本願発明では「ホップ数」であるのに対し,引用発明では,「ホップ数」である点が特定されていない点。
これに伴い,本願発明では,「前記取得部は,データを取得する際に,前記複数の子機のうち前記ホップ数の多い子機を優先してデータを取得し,データの取得を完了した子機へは前記データ要求の送信を行わないように構成されて」いるのに対し,引用発明では,この点が明示されていない点。

(相違点2)
一致点である「特定の条件で前記他の子機からのデータを受信した場合」について,本願発明では「前記他の子機と前記親機との間でデータを中継するとき以外で前記他の子機からのデータを受信した場合」であるのに対し,引用発明では,「予め設定登録された基本の通信ルート以外の代行通信ルートにより他の端末無線ユニットから検針データを受信した場合」である点。

(相違点3)
一致点である「前記一時記憶部内のデータを前記親機に送信する」について,本願発明では,「前記親機から前記データ要求を受けた際に,前記子機側記憶部内のデータに前記一時記憶部内のデータを付加して前記親機に送信する」のに対し,引用発明では,本願発明で特定された「前記親機から前記データ要求を受けた際に」送信する点,及び,「前記子機側記憶部内のデータに前記一時記憶部内のデータを付加して」送信する点が明示されていない点。

(3)判断
事案に鑑み,まず相違点2及び3についてまとめて検討する。
本願発明の上記相違点2に係る「前記複数の子機の各々は,前記他の子機と前記親機との間でデータを中継するとき以外で前記他の子機からのデータを受信した場合」は,明細書の実施形態2(段落【0048】)によれば,自分が宛先ではない他の子機からのデータを受信した場合といえる。そして,本願発明は,相違点2及び3に係る構成により,親機は,データ要求した子機のデータだけでなく,当該子機が受信した他の子機のデータについても収集でき,要するに,親機は,子機からデータを二重化して収集することにより,ある子機からのデータ収集に失敗した場合のデータ要求の再送回数を削減できる(段落【0051】)というものである。
一方,相違点2,3に係る引用発明の構成は,ある端末無線ユニットが,予め設定登録された基本の通信ルートで通信ができない他の端末無線ユニットとの代行通信ルートを介して検針データを受信し,該検針データを親機に転送するだけであり,前記ある端末無線ユニットは,前記代行通信ルートを介して前記他の端末無線ユニットの検針データを中継しているといえる。
そうすると,引用発明において,端末無線ユニットが,他の端末無線ユニットとデータ収集ユニットとの間でデータを中継するとき以外で前記他の端末無線ユニットからの検針データを受信すること,すなわちデータ収集ユニット(親機)から呼出指定(データ要求)された場合に備えて自分が宛先ではない端末無線ユニット(子機)からの検針データ(データ)を受信する場合は想定されておらず,また,当該場合は自明な事項であるともいえない。
さらに,上記引用文献2ないし4に記載された技術事項1ないし3を考慮しても,相違点2及び3に係る構成を充足することはできないことは明らかである。

(4)小括
したがって,上記相違点1について検討するまでもなく,本願発明は,当業者が引用発明及び技術事項1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また,本願の請求項2,3に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるので,同様に,当業者が引用発明及び技術事項1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また,本願の請求項4,5に係る発明は,引用発明との間で,実質的に前記相違点2,3を有するから,同様に,当業者が引用発明及び技術事項1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
平成28年3月30日付け拒絶理由通知書には以下の理由が記載されている。

「(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項4,6について
請求項1の「前記取得部は,データを取得する際に,前記複数の子機のうち前記ホップ数の多い子機を優先してデータを取得し」は,実施形態1に対応し,請求項4の「前記複数の子機のうちの一部の子機は,前記親機の代わりに他の子機から前記子機側記憶部内のデータを収集して記憶する管理用記憶部を有しており」は,実施形態3に対応するものと認められるが,請求項4は請求項1を引用しており,この場合,「ホップ数の多い子機を優先してデータを取得する」ことと,「一部の子機は,親機の代わりに他の子機のデータを収集して記憶する管理用記憶部を有」することとの関係が不明である。
該請求項4を引用する請求項6も同様の点が指摘される。

(2)請求項6について
請求項6には,「請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のデータ管理システムに,前記複数の子機の1つとして用いられることを特徴とする子機。」と記載されているところ,請求項4には,「複数の子機のうちの一部の子機」と,「他の子機」とで機能,構成が異なる「子機」が記載されており,請求項6で請求項4を引用する場合にどの「子機」を意味するのかが特定できず,不明瞭である。

よって,請求項4,6に係る発明は明確でない。」

2.当審拒絶理由の判断
平成28年6月6日付け手続補正によって,請求項4が削除されるとともに請求項5及び6がそれぞれ繰り上がって請求項4及び5となった。
そして,請求項4が削除されたことで,請求項4と他の請求項との関係で不明確であった前記理由(1)及び(2)は,いずれも解消した。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-10-11 
出願番号 特願2011-126410(P2011-126410)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04Q)
P 1 8・ 537- WY (H04Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松原 徳久  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
山本 章裕
発明の名称 データ管理システム、親機、子機  
代理人 北出 英敏  
代理人 西川 惠清  
代理人 坂口 武  
代理人 仲石 晴樹  
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