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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02H
管理番号 1320070
審判番号 不服2014-17087  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-28 
確定日 2016-10-06 
事件の表示 特願2012-148356号「漏電検出診断回路及びそれを備えた電力供給装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月20日出願公開、特開2014-11909号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月2日の出願であって、平成26年6月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年8月28日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされ、当審において平成27年7月3日付けで拒絶理由を通知したところ、平成27年8月31日に意見書及び手続補正書が提出され、当審において平成28年2月19日付けで拒絶理由を通知したところ、平成28年4月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

平成28年4月22日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲は以下のとおり。
「【請求項1】
電力を供給する電力供給線の漏電を検出する漏電検出診断回路において、
前記電力供給線と絶縁された信号線と、
前記電力供給線で発生し得る漏電電流を模した電圧値又は電流値を表す振幅データに基づいて、前記電力供給線に供給される前記電力と同じ周波数の正弦波からなる診断用信号を生成して前記信号線に出力する信号生成部と、
前記電力供給線及び前記信号線を一次側に通し、前記信号線に出力された前記診断用信号に基づいて二次側巻線に誘導電流を誘起する零相変流器と、
前記誘導電流に基づいて漏電を検出したとき、漏電検出信号を出力する漏電検出回路と、
前記振幅データを前記信号生成部に出力するとともに、前記信号線に前記診断用信号が出力されたとき、前記漏電検出診断回路から出力された前記漏電検出信号に基づいて前記漏電検出診断回路が有する漏電検出性能を診断する診断部とを備え、
前記信号生成部は、前記診断用信号の位相を前記正弦波の1周期毎に遅延させ、遅延させた前記診断用信号を前記信号線に出力する漏電検出診断回路。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記振幅データを前記電力と同じ周波数及び前記正弦波の波形を有する前記診断用信号に変換する変換回路と、
前記アナログ信号をフィルタリング処理による整形を行い、前記診断用信号を生成する整形回路とを備えた請求項1に記載の漏電検出診断回路。
【請求項3】
電力供給線を遮断する遮断部を有する電力供給装置において、
請求項1又は2に記載の漏電検出診断回路を備え、
前記診断部は、漏電電流に基づいて前記漏電検出診断回路から漏電検出信号が出力されたとき、遮断信号を前記遮断部に出力して前記電力供給線を遮断させる電力供給装置。」

第2 平成28年2月19日付け当審拒絶理由
平成28年2月19日付け当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


1.特許請求の範囲の請求項1に、『電力供給線で発生し得る漏電電流を模した電圧値又は電流値を表す振幅データに基づいて、前記電力供給線に供給される前記電力と同じ周波数の正弦波からなる診断用信号を生成して』との記載があるが、この記載における『模した』の意味が不明(『まねてつくる』意味か?『まねてつくる』とはどのような状態のことか?『模した』に該当するものと該当しないものの境界は何か?)であり、診断用信号がどのような波形なのか明確でない。
発生し得る漏電電流とはどのような波形なのか、診断信号はどのようにして発生し得る漏電電流の波形に対応しているのかも不明である。

2.特許請求の範囲の請求項1に『電力を供給する電力供給線の漏電を検出する漏電検出診断回路』、『漏電検出信号を出力する漏電検出診断回路』と記載されているが、本願明細書に『【0008】本発明は・・漏電を検出し、漏電検出信号を出力する漏電検出回路と、前記漏電検出信号に基づいて自回路が有する漏電検出性能を診断する診断部とを備えた漏電検出診断回路を提供する。』と記載されている様に、本願明細書では、『漏電検出信号を出力する』のは『漏電検出回路』であり、『漏電検出診断回路』は『漏電検出回路と・・漏電検出性能を診断する診断部とを備えた』ものとして取り扱われており、上記請求項1の記載は、発明の詳細な説明と整合しない。
また、一般的にも『漏電検出診断回路』は、診断を主目的とするものと認識されるところ、『電力を供給する電力供給線の漏電を検出する』との定義では、『漏電検出診断回路』が、その本来の機能である『診断』について定義されていないので構成が不明確である。

3.特許請求の範囲の請求項1に『請求項1又記載の』と記載されているが、文意が不明確である。

4.明細書の段落【0061】に、『漏電検出診断回路2が有する診断性能の診断時に位相制御回路53は、電力供給用電線4の電路で発生し得る漏電電流I1の位相と逆位相とならないように位相が制御された診断用信号S6を出力する。』と記載されているが、その理由が記載されておらず明確でない。
すなわち、
(1)位相が制御されることと、発生し得る漏電電流の関係が明らかでない。
(2)請求項1記載の『正弦波の1周期毎に遅延』の遅延の程度は不明であり、当初は検出できないことが所定回続いても故障としないのは何故か不明である。
また、どれだけ検出を遅延させても良いのかも不明(遅延を微少時間とすれば、長期にわたって検出できない。)である。
(3)段落【0070】及び【0071】には、『電力供給用電線4の電路に漏電が発生しているときであっても、漏電電流I1の干渉による診断用信号S6の減衰を防止できる。このことから、漏電検出診断回路2は、自回路2が有する漏電性能が異常と誤って診断されることを回避できる。』、『また、漏電検出診断回路2は、診断用信号S6と、漏電電流I1との振幅及び周期が同等で、かつ逆位相であったとしても、診断用信号S6と漏電電流I1の合成波が零相変流器61の二次側巻線612に誘導電流I2を誘導するのに十分な振幅を得ることができる。この結果、漏電発生時においても漏電検出性能を信頼性の高い診断をすることができる。』と記載されているが、図5には、漏電電流が診断用信号と同じ大きさで逆位相の場合が記載されている。この場合、すでに、検出すべき漏電電流が流れていたに拘わらず検出回路は検出信号を発生していない故障状態であったことになる。そうすると、診断を開始した際には、位相の制御の有無に拘わらず漏電検出信号が出力されない異常状態と判別(図2のステップ4)できるのであるから位相を制御する理由は明確でない。
また、【0070】の記載によれば、電力供給用電線4の電路に漏電が発生しているときであっても検出しない方が正常となり、何を検出する装置なのか明確でない。
また、平成27年8月31日付け意見書を見ても下記(a)?(c)のように明確でない。

(a)請求人は、平成27年8月31日付け意見書において『漏電発生時には、実際に漏電が発生している場合、及び実際に漏電が発生していないが、漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力した場合があります。この漏電発生時に漏電検出診断回路2の漏電検出性能の診断をすることで、電力供給用電線4に実際に漏電が発生しているのか、漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力したのかを判断することが可能になります。
要するに、漏電発生時に診断用信号を出力して漏電検出性能の診断を行うと、電力供給用電線4に実際に漏電が発生している場合には、診断用信号と漏電電流が合成されて図5(d)に示すような合成波により誘導電流I2が2次巻線612に誘起されます。
一方、電力供給用電線4に実際に漏電が発生していない場合には、図5(b)に示す波形の診断用信号のみによって誘導電流I2が二次側巻線612に誘起されます。
誘導電流I2は、前者の合成波により誘起される場合、後者の診断用信号のみで誘起される場合では、誘導電流I2の振幅の大きさが異なるため、この振幅を観察することで電力供給用電線4に実際に漏電が発生しているか、漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力したのかを判断することができます。
また、実際に漏電が発生している場合と、漏電が発生していない場合とで誘導電流I2の振幅が異なるように診断用信号の位相を制御することにより、図5(d)に示す診断用信号と漏電電流との合成波を得ることができるので、電力供給用電線4に実際に漏電が発生しているか、漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力したのかを容易に判断することができます。』旨の意見を述べている。
(b)ここで請求人は、本願明細書の実施例を見ても、『漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力したのかを判断する』と主張しているが、本願明細書中に『漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力』した場合の動作についての説明は記載されていない。
本願明細書の記載において、『漏電検出性能の診断』時の『異常』と判断する対応は、『【0039】・・漏電検出信号S3が出力されていない場合には(ステップ4:No)、漏電検出診断回路2が有する漏電検出性能を異常と診断する』、『【0070】・・電力供給用電線4の電路に漏電が発生しているときであっても、漏電電流I1の干渉による診断用信号S6の減衰を防止できる。このことから、漏電検出診断回路2は、自回路2が有する漏電性能が異常と誤って診断されることを回避できる。』場合のみである。
また、【0071】には『また、漏電検出診断回路2は、診断用信号S6と、漏電電流I1との振幅及び周期が同等で、かつ逆位相であったとしても、診断用信号S6と漏電電流I1の合成波が零相変流器61の二次側巻線612に誘導電流I2を誘導するのに十分な振幅を得ることができる。この結果、漏電発生時においても漏電検出性能を信頼性の高い診断をすることができる。』旨記載されているが、『漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力』した場合の動作ではない。
一方、『漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力したのかを判断する』には、『判断する』為の論理が必要であるが、そのような論理は明細書に記載されておらず、更に、漏電検出回路62等の故障の態様が一概に特定されるものでないこと、漏電電流I1が漏電状態に対応して変わる値であることを考慮しても、『漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力したのかを判断する』技術を、本願明細書に記載されたものとしてとらえることはできない。
(c)そうすると、平成27年8月31日付け意見書の『漏電検出回路62等の故障により漏電検出信号を出力したのかを判断する』との主張は、2.の説明として理解出来るものではなく、かえって『漏電検出診断回路2が有する診断性能の診断時に位相制御回路53は、電力供給用電線4の電路で発生し得る漏電電流I1の位相と逆位相とならないように位相が制御された診断用信号S6を出力する。』ことの技術的意味を不明確にするものである。
以下の様な推測もできるが、推測にすぎないので請求人に確認する。誤っている場合は明確に否定して、上記構成の技術的意味を明確に説明されたい。正しいのであれば、請求人の主張として主張されたい。
[推測]
・『漏電検出診断回路2が有する診断性能の診断時に位相制御回路53は、電力供給用電線4の電路で発生し得る漏電電流I1の位相と逆位相とならないように位相が制御された診断用信号S6を出力する。』構成は、【0070】の『電力供給用電線4の電路に漏電が発生しているときであっても、漏電電流I1の干渉による診断用信号S6の減衰を防止できる。このことから、漏電検出診断回路2は、自回路2が有する漏電性能が異常と誤って診断されることを回避できる。』作用を生ずる為に採用された構成である。
・【0071】の記載を補足説明すると『漏電検出診断回路2は、診断用信号S6と、漏電電流I1との振幅及び周期が同等で、かつ逆位相であったとしても、(図5T1の期間においては、検出信号を確認出来なくても、T2、T3の期間において)診断用信号S6と漏電電流I1の合成波が零相変流器61の二次側巻線612に誘導電流I2を誘導するのに十分な振幅を得ることができる。この結果、漏電発生時においても漏電検出性能を信頼性の高い診断をすることができる。』という意味である。
・誘導電流I2では、図5T1の期間においては、診断用信号、漏電電流とも確認出来ない。
・診断用信号の位相を制御することにより、図5(d)に示す診断用信号と漏電電流との合成波を得ることができ、実際に漏電が発生している場合と、漏電が発生していない場合とで誘導電流I2の振幅が異なり、少なくともT3の期間の振幅で、電力供給用電線4に実際に漏電が発生しているか、診断用信号のみによる誘導電流出力なのかを容易に判断することができる。」

第3 当審の判断
1.平成28年4月22日付けで補正された本願請求項1に「電力供給線で発生し得る漏電電流を模した電圧値又は電流値を表す振幅データに基づいて、前記電力供給線に供給される前記電力と同じ周波数の正弦波からなる診断用信号を生成して」と記載されている。
(a)一般に、「模する」は「ある形をまねてつくる。似せる。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」ことを意味している。
(b)一方、「電力供給線で発生し得る漏電電流」の実際の値(実効値)や形状(波形)は、漏電の原因(例えば、絶縁体の劣化、水漏れ、獣害、トラッキング、工事ミス等)によって全く異なる値や形状となるのであって、一律に定まるものではない。
また、「電圧値」においては、どの様に電流の「値」を電圧の「値」で模すのかからして不明である。
(c)さらに、本願明細書の発明の詳細な説明の記載においても、「漏電電流を模し」に関して、【0016】に「漏電電流I1を模した電圧値又は電流値を表す振幅データD1を信号生成部5に順次出力する。」と、【0054】に「信号生成部5から出力される漏電電流I1を模した診断用信号S2を用いて漏電検出診断回路2が有する漏電検出性能の診断を行う」と、【0056】に「変換回路51から出力されたアナログ信号S1は、漏電電流I1を模するのに不要な直流成分及び高周波成分が重畳しているため、漏電電流I1との類似性が低い。」と記載されているのみであって、結局「漏電電流I1を模した電圧値又は電流値」が、どの様に特定するかは記載されていない(なお、【0054】【0056】は、「振幅データD1」についての記載ではない。)。
(d)そして、(d1)実際の漏電電流自体が不明であり、(d2)「模す」とはどの様にすることか定義が不明であるので、(d3)「漏電電流を模した」電圧値や電流値が不明である。
(e)そうすると、上記における「漏電電流を模した電圧値又は電流値を表す振幅データ」は、振幅データが表す「値」「振幅」(形状)が不明であるし、「漏電電流を模した電圧値又は電流値」に該当するものと該当しないものとを区別することもできないので、結局、上記「電力供給線で発生し得る漏電電流を模した電圧値又は電流値を表す振幅データに基づいて、前記電力供給線に供給される前記電力と同じ周波数の正弦波からなる診断用信号を生成して」で特定される発明の構成が明確でないと言わざる得ない。
(f)また、【発明の詳細な説明】の記載は、上記(c)に記載したように、「漏電電流I1を模した電圧値又は電流値」を、どの様に特定するか記載されたものでないので、「電力供給線で発生し得る漏電電流を模した電圧値又は電流値を表す振幅データに基づいて・・・診断用信号を生成」することを当業者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載されているともいえない。
[請求人の主張等に関して]
請求人は平成28年4月22日付け意見書で「『模した』とは、シミュレートした、の意であり、本願発明は、漏電電流を疑似信号である『電力供給線で発生し得る漏電電流を模した電圧値又は電流値』を『信号生成部』で生成して漏電検出をシミュレーションする機能を備えた漏電検出診断回路です。
『発生し得る漏電電流』とは、例えば、【0063】に記載された図5(c)に示すような正弦波状の波形です。」と主張している。
請求人の主張する様な「『模した』とは、シミュレートした、の意」は、日本語の「模した」を単に英単語の日本語標記の「シミュレート」に言い換えただけであり、本願請求項1の記載においては、上記(d)に記載したように、実際の漏電電流自体が不明であり、それを「模す」とはどの様にすることか不明であるので、「漏電電流を模した」電圧値や電流値は、その値が不明であるし、「漏電電流を模した電圧値又は電流値」に該当するものと該当しないものとを区別することもできるものでもない。
また、「【0063】に記載された図5(c)に示すような正弦波状の波形」は、「【0065】ここで、漏電電流I1が、図5(c)に示すように、振幅がV3、周期がTであり、・・であるとする。」と、第2の実施の形態の動作を説明する為に記載された仮定の振幅、周期であって、図5(c)を参酌して、本願請求項1記載の「漏電電流を模した電圧値又は電流値」の値を特定できるものではなく、「漏電電流を模した電圧値又は電流値」に該当するものと該当しないものとを区別することもできるものでもない。
そうすると、請求人の上記主張は採用できない。

2.平成28年4月22日付けで補正された本願請求項1に「漏電検出診断回路から出力された前記漏電検出信号に基づいて前記漏電検出診断回路が有する漏電検出性能を診断する診断部とを備え・・る漏電検出診断回路。」と記載されている。
(a)本願明細書に「【0008】本発明は・・漏電を検出し、漏電検出信号(図4の「漏電検出信号S3」)を出力する漏電検出回路(図4の「漏電検出回路62」)と、前記漏電検出信号に基づいて自回路が有する漏電検出性能を診断する診断部とを備えた漏電検出診断回路(図4の「漏電検出診断回路2」)を提供する。」(なお、「( )」は当審で付記。)と記載されている様に、本願明細書では、「漏電検出信号を出力する」のは「漏電検出回路62」である。
それに対して、上記本願請求項1の「漏電検出診断回路から出力された前記漏電検出信号」なる記載は、「漏電検出診断回路2」が、「漏電検出信号S3」を出力するものと特定したものであって、発明の詳細な説明と整合しない。
(b)また、一般的にも「漏電検出診断回路」は、診断を主目的とするものと認識されるところ、「電力を供給する電力供給線の漏電を検出する漏電検出診断回路」、「漏電検出診断回路から出力された・・漏電検出信号」では、診断結果信号が出力されるものでないので、「漏電検出診断回路」の出力が、その本来の機能である「診断」についてなされるものでない点において「漏電検出診断回路」自体の構成が明確でない。
(c)そうすると、上記「漏電検出診断回路から出力された前記漏電検出信号に基づいて前記漏電検出診断回路が有する漏電検出性能を診断する診断部とを備え・・る漏電検出診断回路。」なる記載により特定される発明は明確でなく、また、発明の詳細な説明に記載されたものともいえない。
(d)また、【発明の詳細な説明】には、上記(a)に記載したように、「漏電検出診断回路2」が、「漏電検出信号S3」を出力することは記載されていないので、「漏電検出診断回路から出力された前記漏電検出信号に基づいて前記漏電検出診断回路が有する漏電検出性能を診断する診断部とを備え・・る漏電検出診断回路」を当業者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載されているともいえない。

[請求人の主張等に関して]
請求人は平成28年4月22日付け意見書で「本意見書と同日付けで提出しました手続補正書により、『前記誘導電流に基づいて漏電を検出したとき、漏電検出信号を出力する漏電検出回路と、』の補正を行ないました。
これにより、審判官ご指摘の拒絶理由は解消したものと考えます。」と主張している。
しかし、上記「漏電検出診断回路から出力された前記漏電検出信号に基づいて前記漏電検出診断回路が有する漏電検出性能を診断する診断部」については、補正がなされていないので、請求人の「拒絶理由は解消した」との主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願請求項1の記載は、記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、また発明が明確でないので、特許法第36条第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明の詳細な説明の記載は、発明を当業者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載されたものでないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願は拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-08 
結審通知日 2016-08-09 
審決日 2016-08-22 
出願番号 特願2012-148356(P2012-148356)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 矢島 伸一
中川 真一
発明の名称 漏電検出診断回路及びそれを備えた電力供給装置  
代理人 遠藤 和光  
代理人 伊勢 京介  
代理人 野見山 孝  
代理人 平田 忠雄  

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