• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1320088
審判番号 不服2015-12823  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-06 
確定日 2016-10-25 
事件の表示 特願2013-556183「映像をデコーディングするための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 8日国際公開、WO2012/150693、平成26年 5月15日国内公表、特表2014-511628、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年5月5日、米国、2011年6月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月15日付けで手続補正がなされ、平成26年8月22日(起案日)付けで拒絶の理由が通知され、それに応答して平成26年10月29日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月30日(起案日)付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成27年7月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたが、その後当審において、平成28年7月6日(起案日)付けで最初の拒絶理由が通知され、それに応答して平成28年8月25日付けで手続補正がなされたものである。

第2.本願の特許請求の範囲に係る発明
本願の請求項1ないし19に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明19」という。)は、平成28年8月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】
映像をデコーディングする、コンピュータによって実行される方法であって、
プロセッサにより、コーディングされた映像を含むビットストリームを復号して、変換木を生成するための分割フラグと、コーディング単位(以下、CUという)の予測単位(以下、PUという)への区画情報とを得る、復号するステップと、
プロセッサにより、前記分割フラグに従って複数のレベルの前記変換木を生成するステップであって、前記変換木内のノードは、前記CUに直接関連付けられた変換単位(以下、TUという)を表し、前記生成するステップは、
前記分割フラグが設定されている場合にのみ、前記TUを分割し、前記TUの分割に従って前記変換木を変更すること、
を更に含むステップと、
プロセッサにより、前記変換木に従って前記PUに関連付けられた前記TUを用いて、前記PUに含まれるデータを復号化するステップと、を含み、
前記生成するステップは、
正方形のTUが、複数の長方形のTUに分割されることと、
複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすることと、
前記マージに従って前記変換木を変更することと、を含む、
方法。
【請求項2】
各TUのサイズが所定の最小値に等しくなるまで、前記分割することと、前記マージすることと、前記変更することとを繰り返すこと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繰り返すことは、特定のノードの前記TUが前記関連付けられたPU内に完全に包含されているとは限らない場合に続けられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビットストリームは、暗黙的分割フラグを含み、前記暗黙的分割フラグが設定されていない場合、前記分割フラグは、前記変換木内の対応する前記ノードについて、前記ビットストリーム内に信号化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ビットストリームは、暗黙的分割フラグを含み、前記暗黙的分割フラグが設定され、かつ、あらかじめ規定された分割条件が満たされている場合にのみ、前記繰り返すことが実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
長方形のTUを前記分割することは、前記長方形のTUの長軸の方向に沿っている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分割することは、3つ以上のTUを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記TUの最大長又は最大幅が削減される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記PUは、任意の形状及びサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分割することは、長方形のTUを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記TUの水平方向及び垂直方向の寸法が、前記PUの水平方向及び垂直方向の寸法の特徴と整合される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記PUは、ビデオデータの一部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記PUは、予測プロセスから得られた残差データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記変換木はN分木である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
長方形のTUの前記分割は、短軸の方向に沿っている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
正方形又は長方形のTUが、より大きなTUにマージされる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記N分木のNの値は、前記変換木のノードが異なるごとに異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記TUは、複数のPUがインター予測される場合に、前記PUにまたがる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記TUは、前記変換木のリーフノードによって表される、請求項1に記載の方法。

第3.原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
[理由1]
本願の平成26年10月29日付け手続補正による請求項1,8ないし10,13ないし15,18ないし20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

・請求項1,8ないし10,13ないし15,18ないし20について
引用文献1

[理由2]
本願の平成26年10月29日付け手続補正による請求項1ないし20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし20について
引用文献1ないし引用文献4

記(引用文献)
引用文献1.Ken McCann, et al., “Samsung’s Response to the Call for Proposals on Video Compression Technology”, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 1st Meeting: Dresden, DE, 15-23 April, 2010, Document: JCTVC-A124, pp.1,7-10
引用文献2.国際公開第2011/049119号
引用文献3.国際公開第2006/028088号
引用文献4.国際公開第2010/116869号

2.原査定の理由の判断
2-1.特許法第29条第1項第3号(新規性)について
(1)本願発明1について
(1-1)本願発明1
本願発明1は、上記第2の請求項1に記載した事項により特定される次のとおりのものである。
なお、本願発明1の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

(本願発明1)
(A)映像をデコーディングする、コンピュータによって実行される方法であって、
(B)プロセッサにより、コーディングされた映像を含むビットストリームを復号して、変換木を生成するための分割フラグと、コーディング単位(以下、CUという)の予測単位(以下、PUという)への区画情報とを得る、復号するステップと、
(C)プロセッサにより、前記分割フラグに従って複数のレベルの前記変換木を生成するステップであって、前記変換木内のノードは、前記CUに直接関連付けられた変換単位(以下、TUという)を表し、前記生成するステップは、
前記分割フラグが設定されている場合にのみ、前記TUを分割し、前記TUの分割に従って前記変換木を変更すること、
を更に含むステップと、
(D)プロセッサにより、前記変換木に従って前記PUに関連付けられた前記TUを用いて、前記PUに含まれるデータを復号化するステップと、を含み、
(E)前記生成するステップは、
正方形のTUが、複数の長方形のTUに分割されることと、
複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすることと、
前記マージに従って前記変換木を変更することと、を含む、
(F)方法。

(1-2)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である「Samsung’s Response to the Call for Proposals on Video Compression Technology」(ビデオ圧縮技術に関する提案募集へのサムスンの応答)には、次に掲げる事項が記載されている。
なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する。また、下線は強調のために当審で付したものである。

「Abstract
This proposal is Samsung’s response to the Call for Proposals (CfP) on video compression technology, jointly issued by ITU-T SG16 Q.6 (VCEG) and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 (MPEG). It has been produced in collaboration with the British Broadcasting Corporation. The goal of this proposal is to provide a video compression technology which has significantly higher compression capability than the state-of-the-art H.264/AVC standard, especially for high-definition (HD) video contents.」(1頁1?6行)
(要約
この提案は、ITU-T SG16 Q.6(VCEG)とISO/IEC JTC1/SC29/WG11(MPEG)により共同で発行されたビデオ圧縮技術の提案募集(CfP)へのサムスンの応答です。これは、英国放送協会と共同で制作されています。この提案の目的は、特に、高精細(HD)ビデオコンテンツのために、最先端のH.264/AVC規格よりも有意に高い圧縮能力を有するビデオ圧縮技術を提供することにあります。)

「2.2.1 Coding unit (CU)
In this proposal, the coding unit (CU) is defined as a basic unit which has a square shape. Although it has a similar role to the macroblock and sub-macroblock in H.264/AVC, the main difference lies in the fact that CU can have various sizes, with no distinction corresponding to its size. All processing except frame-based loop filtering is performed on a CU basis, including intra/inter prediction, transform, quantization and entropy coding. Two special terms are defined: the largest coding unit (LCU) and the smallest coding unit (SCU). For convenient implementation, LCU size and SCU size are limited to values which are a power of 2 and which are greater than or equal to 8.
It is assumed that a picture consists of non-overlapped LCUs. Since the CU is restricted to be a square shape, the CU structure within a LCU can be expressed in a recursive tree representation adapted to the picture. That is, CU is characterized by LCU size and the hierarchical depth in the LCU that the CU belongs to.
(Figure 2-2 略)
Figure 2-2 shows an example where LCU size is 128 and the maximum hierarchical depth is 5. The recursive structure is represented by a series of split flags. For CU_(d), which has depth d and size 2Nx2N, the coding of CU is performed in the current depth when split flag is set to zero. When the split flag is set to 1, CU_(d) is split into 4 independent CU_(d+1) which have depth (d+1) and size NxN. In this case, CU_(d+1) is called a sub-CU of CU_(d) similar to a sub-macroblock in H.264/AVC. Unless the depth of sub-CU (d+1) is equal to the maximum allowed depth (4 in this case), each CU_(d+1) is processed in a recursive manner. If the depth of sub-CU (d+1) is equal to the maximum allowed depth, further splitting is not allowed. Note that a CU can be further split into PUs, however (see section 2.1.2).」(7頁1?19行)
(2.2.1 コーディング単位(CU)
この提案では、コーディング単位(CU)は、正方形の形状を有する基本単位として定義されます。それは、H.264/AVCにおけるマクロブロックとサブマクロブロックと同様の役割を有しているが、主な違いは、CUは、そのサイズによる区別は無く、様々なサイズを持つことができるという事実にあります。フレームベースのループフィルタを除くすべての処理は、イントラ/インター予測、変換、量子化及びエントロピー符号化を含め、CU単位で行われます。二つの特別な用語、最大符号化単位(LCU)と最小符号化単位(SCU)が定義されています。実装の便利性のために、LCUサイズとSCUサイズは2の累乗で8以上の値に制限されています。
画像は重複しない複数のLCUからなることが想定されます。CUは正方形の形状に制限されているので、LCU内のCU構造は、画像に適応する再帰的なツリー表現で表すことができます。すなわち、CUは、LCUサイズとCUが属するLCU内での階層の深さによって特徴づけされます。
図2-2は、LCUサイズが128で、最大階層の深さが5の例を示しています。再帰構造は、一連の分割フラグで表されます。深さdとサイズ2Nx2Nを有するCU_(d)について、分割フラグが0に設定されているとき、CUの符号化は現在の深さで行われます。分割フラグが1に設定されているとき、CU_(d)は、深さ(d+1)とサイズN×Nを有する4つの独立したCU_(d+1)に分割されます。この場合、CU_(d+1)は、H.264/AVCにおけるサブマクロブロックに類似するCU_(d)のサブCUと呼ばれます。サブCU(d+1)の深さが最大許容深さ(この場合では4)に等しくない限り、各CU_(d+1)は再帰的に処理されます。サブCU(d+1)の深さが最大許容深さに等しい場合、更なる分割は許可されません。しかしながら、CUは、更に複数のPUに分割することができることに注意してください(セクション2.1.2を参照)。)

「2.2.2 Prediction unit (PU)
Once the splitting process is done, prediction methods are specified for every CU which is not further split i.e. the leaf nodes of the CU hierarchical tree.
Coupled with CU, this proposal introduces a basic unit for the prediction mode: the prediction unit (PU). It should be noted that the PU is defined only for the last-depth CU and its size is limited to that of the CU.
Similar to conventional standards, we define two different terms to specify the prediction method: the prediction type and the PU splitting. The prediction type is one of the values among skip, intra or inter, which roughly describe the nature of the prediction method. After that, possible PU splittings are defined according to the prediction type.
Figure 2-4 shows possible PU splittings according to the different prediction types for a CU of size 2Nx2N. The PU for intra has 2 different possible splittings: 2Nx2N (i.e. no split) and NxN (quarter split). The PU for inter has 8 different possible splittings: 4 symmetric splittings (2Nx2N, 2NxN, Nx2N, NxN) and 4 asymmetric splittings (2NxnU, 2NxnD, nLx2N and nRx2N). A skipped PU can only be 2Nx2N i.e. the whole CU is skipped. The number N is derived from the size of the CU which the PU belongs to. For example, if the size of CU is 128x128, then both 128x128 and 64x64 PUs for intra are possible. For inter prediction, 128x128, 128x64, 64x128, 64x64, 128x32 (for 2NxnU and 2NxnD), 128x96 (for 2NxnU and 2NxnD), 32x128 (for nRx2N and nLx2N) and 96x128 (for nRx2N and nLx2N) are possible.」(8頁13?28行)
(2.2.2 予測単位(PU)
分割処理が完了すると、更に分割されない全てのCU、すなわちCU階層ツリーのリーフノードに対して予測方法が指定されます。
この提案は、CUと関連して、予測モードの基本的な単位:予測単位(PU)を導入しています。PUが最後の深さのCUのためにのみ定義され、そして、そのサイズはCUのサイズに制限されることに留意すべきです。
従来の規格と同様に、我々は予測方法を指定するために2つの異なる用語:予測タイプとPU分割を定義します。予測タイプは、予測方法の本質を概略的に説明する、スキップ、イントラ及びインターの値のいずれかの1つです。その後、可能なPU分割は、予測タイプに応じて定義されます。
図2-4は、サイズ2Nx2NのCUのための異なる予測タイプに応じて可能なPU分割を示しています。イントラのためのPUは、2つの異なる可能な分割:2Nx2N(すなわち、無分割)とN×N個(4分割)を持っています。インターのためのPUは、8つの異なる可能な分割:4つの対称分割(2Nx2N、2NxN、Nx2N、N×N)と4つの非対称分割(2NxnU、2NxnD、nLx2NとnRx2N)を持っています。スキップされたPUは、2Nx2NすなわちCU全体のみがスキップされることのみが可能です。数Nは、PUが属するCUのサイズに由来します。例えば、CUのサイズが128x128である場合、イントラのために128x128と64x64のPUの両方が可能です。インター予測のために、128x128、128x64、64x128、64x64、128x32(2NxnUと2NxnD用)、128x96(2NxnUと2NxnD用)、32x128(nRx2NとnLx2N用)および96x128(nRx2NとnLx2N用)が可能です。)





「2.2.3 Transform unit (TU)
In addition to the CU and PU definitions, the transform unit (TU) for transform and quantization is defined separately. It should be noted that the size of the TU may be larger than that of the PU, which is different from previous video standards, but it may not exceed the CU size. However, the TU size is not arbitrary and once a PU structure has been defined for a CU, only two TU partitions are possible. As a result, the size of TU in the CU is determined by the transform unit size flag. If the transform unit size flag is set to 0, the size of TU is the same as that of the CU which the TU belongs to. Otherwise, the TU size is set as NxN or N/2xN/2 according to the PU splitting. Figure 2-5 shows an example of TU when size of CU is 2Nx2N. According to transform unit size flag and PU splitting, the size of TU is specified to be 2Nx2N, NxN or N/2xN/2, as illustrated in the figure below. It should be noted that the case of zero transform unit size flag is designed for performing a transform of CU size regardless of PU splitting. This approach yields coding gains especially for coding semi-random residuals generated by complex texture areas.

」(9頁1?12行)
(2.2.3 変換単位(TU)
CUとPUの定義に加えて、変換と量子化のための変換単位(TU)が、別に定義されている。TUのサイズは、以前のビデオ規格とは異なり、PUのサイズよりも大きくてもよいが、それはCUのサイズを超えてはならないことに留意すべきです。しかしながら、TUのサイズは任意ではなく、CUに対してPU構造が定義された後は、2つのTU分割が可能であるだけです。結果として、CUにおけるTUのサイズは、変換単位サイズフラグによって決定されます。変換単位サイズフラグが0に設定されている場合、TUのサイズは、TUが属するCUのサイズと同じです。そうでなければ、TUサイズは、PU分割に応じてNxN又はN/2xN/2に設定されています。図2-5は、CUのサイズが2Nx2Nである場合のTUの例を示しています。変換単位サイズフラグとPU分割に応じて、TUのサイズは、下図に示すように、2Nx2N、N×N、又はN/2xN/2に指定されます。0の変換単位サイズフラグの場合は、PU分割に関係なくCUサイズの変換を行うように設計されていることに留意すべきです。この手法は、特に複雑なテクスチャ領域で生成されたややランダムな残差を符号化するのに、符号化利得をもたらします。)

「2.2.4 Relationship between CU, PU and TU

Figure 2-6 shows the relationship between the three different unit definitions, CU, PU and TU. For any size of CU given, a series of split flags is used to specify smaller size CUs inside the CU. For every CU which does not split any more, a PU is defined specifying how the prediction can be generated. Note that the PU need not be a square shape and virtually any kind of new PU splitting could be added without changing the overall structure. TU size is specified by TU size flag and PU splitting. If the TU size flag is zero, TU size is always equal to CU size whereas TU size is defined differently depending upon PU splitting when the TU size flag is one. In this latter case, the TU size is chosen so that the transform blocks do not cross PU block boundaries. Table 2-1 summarizes the possible combinations of CU, PU, and TU based on the value of split flag, prediction type, PU splitting and TU size.」(10頁1?9行)
(2.2.4 CU、PUとTUの間の関係
図2-6は3つの異なる単位の定義、CU、PUとTUの間の関係を示しています。与えられた任意のCUのサイズについて、一連の分割フラグがCU内の複数の小さいサイズのCUを指定するために使用されます。これ以上分割しないすべてのCUについて、PUは、どのように予測が生成されるかを指定するように定義されます。PUは正方形である必要はなく、実質的に全ての種類の新しいPU分割は、全体的な構造を変更させることなく追加されることができることに注意してください。TUサイズが、TUサイズフラグとPU分割によって指定されます。TUサイズフラグが0である場合、TUサイズは常にCUサイズに等しく、それに対し、TUサイズフラグが1である場合、TUサイズはPU分割に応じて異なって定義されます。この後者の場合には、変換ブロックがPUブロック境界を越えないように、TUサイズが選択されます。表2-1は、分割フラグ、予測タイプ、PU分割及びTUサイズの値に基づいて、CU、PU、及びTUの可能な組み合わせをまとめたものです。)

(1-3)引用文献1に記載された発明
a.ビデオ圧縮技術
引用文献1の「要約」の記載によれば、引用文献1には、『ビデオ圧縮技術に関する発明』が記載されている。

b.コーディング単位(CU)と予測単位(PU)
引用文献1の「2.2.1 コーディング単位(CU)」の記載によれば、引用文献1のビデオ圧縮技術では、ビデオ圧縮処理の単位となるコーディング単位(CU)が定義されており、「2.2.2 予測単位(PU)」の記載によれば、CUは複数の予測単位(PU)に分割される。
すなわち、引用文献1には、『ビデオ圧縮処理の単位となるコーディング単位(CU)が、複数の予測単位(PU)に分割されること』が記載されている。

c.変換単位(TU)
引用文献1の「2.2.3 変換単位(TU)」および「2.2.4 CU、PUとTUの間の関係」の記載によれば、引用文献1のビデオ圧縮技術では、CUとPUとは別に変換単位(TU)が定義されており、TUのサイズは、PUの構造に依存して、CUにおける2つのTU分割が可能である。また、TU分割は変換単位サイズフラグにより決定される。
変換単位サイズフラグが0の場合、TUのサイズは、TUが属するCUのサイズと同じであり、CUのサイズが2Nx2NであればTUのサイズは2Nx2Nである。
変換単位サイズフラグが1の場合、TUのサイズは、PU分割に応じてCUを4分割するNxNまたはCUを16分割するN/2xN/2に設定される。
すなわち、引用文献1には、『変換単位サイズフラグに従って、CUに属しているTUを分割するものであり、変換単位サイズフラグが1の場合、PUの構造に応じてTUを分割すること』、『TUのサイズは、CUのサイズが2Nx2Nであれば、分割しない場合にはCUのサイズと同じ2Nx2Nに設定され、分割する場合にはPU構造に応じてCUを4分割するNxNまたはCUを16分割するN/2xN/2に設定されること』が記載されている。

d.4分木構造
引用文献1の「2.2.1 コーディング単位(CU)」の記載によれば、コーディング単位(CU)は、正方形の形状を有する様々なサイズを持つことができ、CU構造は再帰的なツリー表現で表される。
また、再帰構造は分割フラグで表され、分割フラグが1に設定されている時、CUは4つに分割される。
そして、再帰的なツリー表現で表さる4分割を行う構造は4分木構造であるから、引用文献1には、『4分木構造によりCUを複数レベルに分割すること』が記載されている。

e.まとめ
引用文献1記載のビデオ圧縮技術は、符号化(コーディング)技術と復号化(デコーディング)技術として実現されるものであり、また、それらをコンピュータによりプロセッサを用いて実現することも普通に行われていることであるから、上記a.ないしc.で認定した事項を、コーディングされたビデオ情報のビットストリームを受信して、コンピュータによりデコーディングを実行する方法の発明として認定することができる。
そして、ビットストリームを受信してデコーディングを実行する方法においては、ビットストリームを復号するステップ、及び、そのデータを伸張復号化するステップを含んでいることは当然のことであり、さらに、コーディングされたビデオ情報のビットストリームに、コーディングに用いた情報(コーディング単位(CU)を複数の予測単位(PU)に分割する区画情報、変換単位サイズフラグ)を含めて伝送することも技術常識である。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、引用発明1という。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)
(a)映像をデコーディングする、コンピュータによって実行される方法であって、
(b)プロセッサにより、コーディングされた映像を含むビットストリームを復号して、変換単位サイズフラグと、コーディング単位(以下、CUという)を予測単位(以下、PUという)へ分割する区画情報とを得る、復号するステップと、
(c)プロセッサにより、前記変換単位サイズフラグに従って前記CUに属している変換単位(以下、TUという)を分割するステップであって、前記TUは前記CUに直接関連付けられており、前記変換単位サイズフラグが1の場合に前記TUを分割するステップと、
(d)プロセッサにより、前記PUの構造に応じて分割される、前記PUに関連付けられた前記TUを用いて、前記PUに含まれるデータを復号化するステップと、を含み、
(e)前記TUを分割するステップにおいて、前記TUのサイズは、CUのサイズが2Nx2Nであれば、分割しない場合にはCUのサイズと同じ2Nx2Nに設定され、分割する場合にはPU構造に応じてCUを4分割するNxNまたはCUを16分割するN/2xN/2に設定される
(f)方法。

(1-4)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

a.本願発明1の構成(A)及び(F)と引用発明1の構成(a)及び(f)との対比
引用発明1の「映像をデコーディングする、コンピュータによって実行される方法」は、本願発明1の構成(A)及び(F)に相当する。

b.本願発明1の構成(B)と引用発明1の構成(b)との対比
引用発明1の「変換単位サイズフラグ」は、変換単位の分割を示すフラグであり、本願発明1の「変換木を生成するためのフラグ」は、変換単位を分割する変換木を生成するフラグであるから、両者は『変換単位の分割に関するフラグ』という点で一致する。
また、引用発明1の「コーディング単位(以下、CUという)を予測単位(以下、PUという)へ分割する区画情報」は、本願発明1の「コーディング単位(以下、CUという)の予測単位(以下、PUという)への区画情報」に相当する。
よって、引用発明1の構成(b)は、本願発明1の構成(B)と「プロセッサにより、コーディングされた映像を含むビットストリームを復号して、変換単位の分割に関するフラグと、コーディング単位(以下、CUという)の予測単位(以下、PUという)への区画情報とを得る、復号するステップ」という点で一致する。
ただし、『変換単位の分割に関するフラグ』に関し、本願発明1では「変換木を生成するための分割フラグ」であるのに対し、引用発明1では「変換単位サイズフラグ」である点において両者は相違する。

c.本願発明1の構成(C)と引用発明1の構成(c)との対比
本願発明1の構成(C)の「変換木を生成するステップ」は、分割フラグに従って変換木を生成し、分割フラグが設定されている場合にのみTUを分割し、TUの分割に従って変換木を変更することを実行する。
一方、引用発明の構成(c)は、変換単位サイズフラグが1の場合にTUを分割するステップである。
よって、両者は、『変換単位の分割に関するフラグ』が設定されている場合にのみTUを分割するという共通する機能を有している。
また、引用発明1は「前記TUは前記CUに直接関連付けられて」いるものであって、本願発明1の「前記CUに直接関連付けられた変換単位(以下、TUという)」という構成に対応する。
よって、引用発明1の構成(c)は、本願発明1の構成(C)と「プロセッサにより、前記変換単位の分割に関するフラグが設定されている場合にのみ、前記CUに直接関連付けられた変換単位(以下、TUという)を分割するステップ」である点で一致する。
ただし、本願発明1の変換単位を分割するステップは、「前記分割フラグに従って複数のレベルの前記変換木を生成するステップ」であって、「前記変換木内のノード」は「変換単位(以下、TUという)を表し」、「前記TUの分割に従って前記変換木を変更する」ものであるのに対し、引用発明1の変換単位を分割するステップは、そのような構成を有していない点で、両者は相違する。

d.本願発明1の構成(D)と引用発明1の構成(d)との対比
引用発明1の構成(d)は、本願発明1の構成(D)と「プロセッサにより、前記PUに関連付けられた前記TUを用いて、前記PUに含まれるデータを復号化するステップ」である点で一致する。
ただし、本願発明1では、TUは「前記変換木に従って」PUに関連付けられるものであるのに対し、引用発明1では、TUは「PUの構造に応じて分割される」ものである点で、両者は相違する。

e.本願発明1の構成(E)と引用発明1の構成(e)との対比
引用発明1のTUを分割するステップは、2Nx2Nの正方形のTUをPUの構造に応じて、4分割又は16分割するものであるが、正方形のTUを長方形のTUに分割すること、複数のTUを含む各PUについて、複数のTUをより大きなTUにマージし、マージに従って変換木を変更することを行う構成は有していない。
したがって、引用発明1は、本願発明1の構成(E)の「前記生成するステップは、正方形のTUが、複数の長方形のTUに分割されることと、複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすることと、前記マージに従って前記変換木を変更することと、を含む、」という構成を備えていない点で相違する。

f.まとめ
上述した対比結果をまとめると、本願発明1と引用発明1との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
映像をデコーディングする、コンピュータによって実行される方法であって、
プロセッサにより、コーディングされた映像を含むビットストリームを復号して、変換単位の分割に関するフラグと、コーディング単位(以下、CUという)の予測単位(以下、PUという)への区画情報とを得る、復号するステップと、
プロセッサにより、前記変換単位の分割に関するフラグが設定されている場合にのみ、前記CUに直接関連付けられた変換単位(以下、TUという)を分割するステップ
プロセッサにより、前記PUに関連付けられた前記TUを用いて、前記PUに含まれるデータを復号化するステップと、を含む、
方法。

[相違点1]
『変換単位の分割に関するフラグ』に関し、本願発明1では「変換木を生成するための分割フラグ」であるのに対し、引用発明1では「変換単位サイズフラグ」である点。

[相違点2]
本願発明1の変換単位を分割するステップは、「前記分割フラグに従って複数のレベルの前記変換木を生成するステップ」であって、「前記変換木内のノード」は「変換単位(以下、TUという)を表し」、「前記TUの分割に従って前記変換木を変更する」ものであるのに対し、引用発明1の変換単位を分割するステップは、そのような構成を有していない点。

[相違点3]
本願発明1では、TUは「前記変換木に従って」PUに関連付けられるものであるのに対し、引用発明1では、TUは「PUの構造に応じて分割される」ものである点。

[相違点4]
引用発明1は、本願発明1の「前記生成するステップは、正方形のTUが、複数の長方形のTUに分割されることと、複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすることと、前記マージに従って前記変換木を変更することと、を含む」という構成を備えていない点。

(1-5)小括
以上のとおり、本願発明1は引用発明1と相違するものであるから、本願発明1は引用文献1に記載された発明であるとはいえない。

(2)本願発明7ないし9,12ないし14,17ないし19について
平成28年8月25日付けの手続補正により、平成27年7月6日付けの手続補正における請求項2に記載された技術事項が同請求項1に組み込まれ、同請求項2が削除されるとともに、同請求項3ないし20が新たな請求項2ないし19に項番が繰り上げられた。
そして、平成27年7月6日付けの手続補正において請求項2ないし20は補正されていないことから、原査定の新規性の拒絶の対象となった平成26年10月29日付けの手続補正による請求項8ないし10,13ないし15,18ないし20に関しては、本願発明7ないし9,12ないし14,17ないし19がそれらに対応するものである。
よって、本願発明7ないし9,12ないし14,17ないし19が新規性を有するか否かについて検討する。

本願発明7ないし9,12ないし14,17ないし19は、本願発明1を直接的または間接的に引用する発明であるから、本願発明1と同様に、引用発明1とは少なくとも相違点1ないし相違点4において相違するものであり、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。

2-2.特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)本願発明1について
(1-1)本願発明1と引用発明1
本願発明1は、上記2-1(1)(1-4)において認定したように、引用発明1との相違点1ないし相違点4が存在する。
したがって、これらの相違点の容易想到性について以下に検討する。

(1-2)引用文献2ないし引用文献4
(1-2-1)引用文献2に記載される技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2である国際公開第2011/049119号には、「動画像符号化装置、動画像復号装置、動画像符号化・復号システム、動画像符号化方法および動画像復号方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

[0007] 本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、隣接する複数領域が高い空間相関を有する場合に符号化効率を向上させることができる動画像符号化装置、動画像復号装置、動画像符号化・復号システム、動画像符号化方法および動画像復号方法を提供することにある。

[0062] 図3に戻って、ステップS102において、動画像符号化装置10は、画像入力部61が分割した入力画像のマクロブロック毎に符号化データを生成するループを開始する。
ステップS103?S105において、予測パラメータ決定部102と予測画像生成部103と予測残差生成部106とは、H.264/AVCで規定されるフレーム間予測(動き補償予測、インター予測)と同様のフレーム間予測を行う。
ステップS103において、予測パラメータ決定部102は、画像入力部61から出力される画像データの画素値に基づいて、画像データをさらに分割するパーティション構造を決定し、パーティション毎に参照画像を選択し、参照画像から予測画像を生成するための予測パラメータを生成する。ここでいうパーティションは、予測画像を生成する際の単位領域であり、後述するように、予測画像生成部103はパーティション毎に予測画像を生成し、生成した予測画像を結合してマクロブロックの予測画像を生成する。また、参照画像は予測画像を生成する元となる画像であり、予測パラメータ決定部102は、局所復号画像記憶部33が記憶する局所復号画像の中から参照画像を選択する。上述したように、局所復号画像は、処理済みのマクロブロックの復号画像である。

[0082] 図3に戻って、ステップS107において、周波数変換決定部105は、互いに異なるパーティションに含まれる変換対象領域を統合した領域、すなわちパーティションをまたぐ変換対象領域を示す変換統合情報を生成する。具体的には、周波数変換決定部105は、ステップS106で周波数変換を選択することによって決定される変換対象領域を統合するか否かを、マクロブロック内の隣接する2個の変換対象領域の組み合わせの各々について判定し、統合する変換対象領域を示す変換統合情報を生成する。
周波数変換決定部105が、パーティション境界を挟んで隣接する複数の領域を統合することを決定し、変換係数生成部107が、周波数変換決定部105の決定に従って予測残差を周波数変換することにより、動画像符号化装置10は、パーティション境界を挟んで隣接する複数の領域を統合した領域に対して周波数変換を行って符号化効率を向上させることができる。
[0083] 図11は、統合された変換対象領域の例を示す図である。同図(a)では、マクロブロックが4つのパーティション(サブマクロブロック)p0?p3に分割されている。周波数変換決定部105は、パーティションp0およびp1に4×4DCTを適用することを決定しており、これによって、パーティションp0およびp1は横4画素×縦4画素の4つの変換対象領域r0?r3に分割されている。また、周波数変換決定部105は、パーティションp2に8×4DCTを適用することを決定しており、パーティションp2は横8画素×縦4画素の2つの変換対象領域に分割されている。また、周波数変換決定部105は、パーティションp3に4×8DCTを適用することを決定しており、パーティションp3は横4画素×縦8画素の2つの変換対象領域に分割されている。
同図(b)は、周波数変換決定部105が、同図(a)に示される変換対象領域のうち、パーティションp0の変換対象領域r1とパーティションp1の変換対象領域r0とを統合することを決定した例を示している。
[0084] 同図(c)?(f)は、統合された変換対象領域の他の例を示す。同図(c)では、パーティションp2とパーティションp3とが共に横8画素×縦4画素の2つの変換対象領域r0とr1とに分割され、パーティションp2の変換対象領域r0とパーティションp3の変換対象領域r1とが統合されている。同図(d)では、パーティションp0とパーティションp1とが共に横8画素×縦4画素の4つの変換対象領域r0とr1とr2とr3とに分割され、パーティションp0の変換対象領域r2とパーティションp1の変換対象領域r0とが統合されている。同図(e)では、パーティションp1?パーティションp3のそれぞれが変換対象領域を構成し、パーティションp1とパーティションp3とが統合されている。同図(f)では、パーティションp0?パーティションp3が共に横4画素×縦4画素の4つの変換対象領域r0とr1とr2とr3とに分割され、パーティションp0の変換対象領域r3とパーティションp1の変換対象領域r2とパーティションp2の変換対象領域r1とパーティションp3の変換対象領域r0とが統合されている。なお、同図に示す変換対象領域の統合は一例であり、周波数変換決定部105が決定する変換対象領域の統合は、これらに限定されない。

これらの記載によれば、引用文献2には、「パーティションに4×4DCT又は8×4DCTを適用すること」、及び「隣接する複数領域が高い空間相関を有する場合の符号化効率を向上させることを目的とし、パーティション(予測単位領域)境界を挟んで隣接する複数の変換対象領域を統合する技術」が記載されている。

(1-2-2)引用文献3に記載される技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3である国際公開第2006/028088号には、「動画像符号化方法および動画像復号化方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

[0003] 先行技術においては、マクロブロックに用いられる変換ブロックサイズを通知するにあたって、暗黙的方法及び明示的方法という二通りの方法がある。暗黙的方法では、変換ブロックサイズを決定するために動き補償ブロックサイズを用いる。例えば、動き補償ブロックサイズが8 X 8より大きい、または8 X 8に等しい場合に、変換ブロックサイズは8 X 8となる。また、動き補償ブロックサイズが8 X 8より小さい場合に、変換プロックサイズは4 X 4となる。

[0033] この判定の結果、暗黙的方法が良いと判定した場合(ステップS105でYes)、モード決定部111は、暗黙的方法を選択(ステップS106)し、ABTモードを"0"に設定する(ステップS107)。この場合、選択された暗黙的方法により変換ブロックサイズを決定される。一方、明示的方法が良いと判定した場合(ステップS105でNo)、モード決定部111は、明示的方法を選択(ステップS108)し、ABTモードを"1"に設定する(ステップS109)。この場合、選択された明示的方法により変換ブロックサイズを決定される。次に、モード決定部111は、ABTフラグおよびABTモードを可変長符号化部110に出力する(ステップS110)。
[0034] 次に、暗黙的方法を用いてマクロブロックの変換ブロックサイズを決定する際の動作について説明する。まず、対象マクロブロックの動き補償に用いられる動き補償ブロックサイズに基づいて変換ブロックサイズを決定する際の基本の動作について説明し、その後、具体例の動作について説明する。

これらの記載によれば、引用文献3には、「マクロブロックに用いられる変換ブロックサイズを通知する方法として暗黙的方法があり、暗黙的方法では、動き補償ブロックサイズに基づいて変換ブロックサイズを決定する技術」が記載されている。

(1-2-3)引用文献4に記載される技術事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4である国際公開第2010/116869号には、「動画像符号化方法および動画像復号化方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は強調のために当審で付したものである。

[0009] 非特許文献2には、H.264/AVCのパーティションサイズや変換サイズを拡張することで、上記のような高精細動画像の空間相関の性質を利用して、符号化データの符号量を削減する動画像符号化方式が記載されている。
[0010] 具体的には、パーティションサイズとして、H.264/AVCで規定されているものに加え、64×64、64×32、32×64、32×32、32×16、16×32のパーティションサイズが追加されている。さらに、DCTとして、H.264/AVCで規定されているものに加え、16×16DCT、16×8DCT、8×16DCTの3種の新しい変換サイズを有するDCTが追加されている。

[0056] 本実施形態における変換プリセットには、4×4DCT、8×8DCT、16×16DCT、16×8DCT、8×16DCT、16×1DCT、1×16DCT、8×1DCT、および1×8DCTの9種類の周波数変換が含まれる。ここで規定した各周波数変換は、それぞれ特定の変換サイズのDCT(離散コサイン変換)に対応する(例えば、4×4DCTは4×4画素を変換サイズとする離散コサイン変換に対応する。)なお、本発明は上記周波数変換の組に対してのみ制限されるものではなく、上記変換プリセットのサブセットに対しても適応できる。また、別の変換サイズの離散コサイン変換、例えば32×32DCTや64×64DCTを含む周波数変換を変換プリセットに含めても良いし、離散コサイン変換以外の周波数変換、例えばアダマール変換やサイン変換やウェーブレット変換、またはそれらの変換を近似する変換を含む周波数変換を変換プリセットに含めても構わない。

[0080]<禁止変換リスト生成処理の具体例>
上で説明した、変換制約導出部104において、特定のパーティション構造に対して変換制約、すなわちパーティション毎の禁止変換リストを生成する手順の具体例について図9を参照して紹介しておく。図9に示したように、拡張MBは、階層L0で四分割された後、左上部は階層L1で一分割(パーティションa)、右上部は階層L1で水平二分割(パーティションb、c)、左下部は階層L1で垂直二分割(パーティションd、e)、右下部は階層L1で四分割されている。
[0081] 階層L1で四分割された領域は、左上部は階層L2で一分割(パーティションf)、右上部は階層L2で水平二分割(パーティションg、h)、左下部は階層L2で垂直二分割(パーティションi、j)、右下部は階層L2で四分割されている。階層L2で四分割された各部は、階層L3で一分割(パーティションk、l、m、n)されている。選択可能な周波数変換の変換サイズは、前記の通り、4×4、8×8、16×16、16×1、1×16、8×1、1×8、16×8、8×16の9種類である。

[0086] パーティションg,hの大きさは16×8画素であり階層L2に属している。上記の禁止変換リストの生成手順を適用すると、手順S41で16×16、1×16、8×16、手順S61で4×4、8×8、16×16、手順S62で1×16、8×16の各変換サイズの周波数変換が禁止変換リストに追加される。

これらの記載によれば、引用文献4には、選択可能な周波数変換の変換サイズは、4×4、8×8、16×16、16×1、1×16、8×1、1×8、16×8、8×16の9種類であること、特定のパーティション構造に対して変換制約(禁止変換リスト)が設定されており、パーティションの大きさかが16×8画素(パーティションg,h)の場合、16×16、1×16、8×16、4×4、8×8の各変換サイズが禁止変換リストに設定されることが記載されている。
すなわち、引用文献4には、「周波数変換の変換サイズは、4×4、8×8、16×16、16×1、1×16、8×1、1×8、16×8、8×16の9種類とすること」、及び「パーティションの大きさかが16×8画素の場合、選択可能な周波数変換の変換サイズを、16×1、8×1、1×8、16×8の4種類とする技術」が記載されている。

(1-3)相違点についての判断
a.相違点1及び相違点2について
空間分割の手法として、4分木などの木構造の空間分割方法は周知の技術であり、引用文献1にも、上記2-1(1)(1-3)d.に摘示したように、4分木構造によりCUを複数レベルに分割する技術が用いられている。
引用発明1は、構成(e)にあるように、TUの分割を、CUを4分割又は16分割に1度の分割で行うものであるが、上述したように空間分割の手法として4分木構造が周知であるから、引用発明のTUの分割に4分木を適用し、CUを4分木により分割して4分割のTUを得て、4分割したTUを更に4分木により4分割して16分割のTUを得るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、TUの分割に4分木構造を採用する際には、4分木構造を示すフラグを設定して送信し、受信側においてフラグを抽出して4分木構造を復元することは普通に採用し得ることである。
また、4分木などの木構造は、本願発明の変換木に相当するものである。 よって、引用発明1に上記周知技術を適用することにより、「変換単位サイズフラグ」を、相違点1に係る「変換木を生成するための分割フラグ」とすること、相違点2に係る「前記分割フラグに従って複数のレベルの前記変換木を生成するステップ」を設けること、及び「前記変換木内のノード」は、「変換単位(以下、TUという)を表」すものとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

ただし、相違点2に係る構成のうち「前記TUの分割に従って前記変換木を変更する」という構成については、下記c.に後述する。

b.相違点3について
引用発明1において、CUを4分割又は16分割するTUの分割は、PUの構造に応じたものである。
そして、上記a.において述べたように、引用発明1のCUを4分割又は16分割するTUの分割に4分木構造を採用することは当業者が容易に想到し得ることであるから、4分木構造によりPUの構造に応じて4分割又は16分割に分割されたTUは、4分木構造によりPUに関連付けられたものといえる。
よって、引用発明に上記a.に示した周知技術を採用することによって、相違点3に係る、TUは「前記変換木に従って」PUに関連付けられるものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

c.相違点4について
本願発明1の相違点4に係る構成は、「生成するステップ」が(1)正方形のTUが、複数の長方形のTUに分割されること、(2)複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすること、(3)前記マージに従って前記変換木を変更すること、の3つの機能を有していることである。

(1)の「正方形のTUが、複数の長方形のTUに分割されること」に関し、上記(1-2-1)に示したように、引用文献2には「パーティションに4×4DCT又は8×4DCTを適用すること」が記載され、上記(1-2-3)に示したように、引用文献4には「周波数変換の変換サイズは、4×4、8×8、16×16、16×1、1×16、8×1、1×8、16×8、8×16の9種類とすること」が記載されているように、従来の正方形の変換単位に加えて長方形の変換単位を用いることは周知の技術である。
よって、引用発明1において、長方形の変換単位を設定可能とし、TUの分割の態様として、相違点4に係る「正方形のTUが、複数の長方形のTUに分割されること」という構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)の「複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすること」に関し、上記(1-2-1)に示したように、引用文献2には「隣接する複数領域が高い空間相関を有する場合の符号化効率を向上させることを目的とし、パーティション(予測単位領域)境界を挟んで隣接する複数の変換対象領域を統合する技術」が記載されている。
しかしながら、この引用文献2に記載される技術は、パーティション(予測単位領域)、すなわちPUの境界を超えて隣接する複数の変換対象領域、すなわちTUを統合(マージ)するという技術であって、PUに含まれる複数のTUをマージするという技術とは異なるものである。
引用文献3及び引用文献4にも、PUに含まれる複数のTUをマージするという技術は開示されていない。
よって、相違点4に係る「複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすること」という構成は、引用文献2ないし引用文献4に記載される技術に基づいて、当業者が容易になし得ることとはいえない。

(3)の「前記マージに従って前記変換木を変更すること」に関し、上述したように、「複数のTUを含む各PUについて、前記複数のTUをより大きなTUにマージすること」という構成が、当業者が容易になし得ることではない上に、そのマージに従って変換木を変更することは、引用文献2ないし引用文献4に記載も示唆もされておらず、当業者が容易に想到し得ることではない。
よって、相違点4に係る「前記マージに従って前記変換木を変更すること」という構成、及び相違点2に係る構成のうち「前記TUの分割に従って前記変換木を変更する」という構成は、引用文献2ないし引用文献4に記載される技術に基づいて、当業者が容易になし得ることとはいえない。

(1-4)小括
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2ないし引用文献4に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし19について
本願発明2ないし19は、請求項1を直接的または間接的に引用する発明であるから、本願発明1と同様に引用発明1及び引用文献2ないし引用文献4に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第4.当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
[理由1]
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記(a)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記(b)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由3]
本願出願の下記(c)の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記(c)の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



(a)請求項1の「前記TUのサイズは、前記PUのサイズに関わらず、前記複数のレベルの前記変換木によって決定される」という構成は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、請求項1を引用する請求項2ないし20についても同様である。

(b)請求項1には、「前記変換木に従って前記PUに関連付けられた前記TU」という構成と「前記TUのサイズは、前記PUのサイズに関わらず、前記複数のレベルの前記変換木によって決定される」という構成が記載されているが、両者は矛盾する記載である。
よって、請求項1の記載は、発明が明確でない。
また、請求項1を引用する請求項2ないし20についても同様である。

(c)請求項1ないし請求項20について
引用文献1.Ken McCann, et al., “Samsung’s Response to the Call for Proposals on Video Compression Technology”, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 1st Meeting: Dresden, DE, 15-23 April, 2010, Document: JCTVC-A124, pp.1,7-10
引用文献2.国際公開第2011/049119号
引用文献3.国際公開第2006/028088号

2.当審拒絶理由の判断
(1)理由1及び理由2について
平成28年8月25日付けの手続補正書によって、請求項1の「前記TUのサイズは、前記PUのサイズに関わらず、前記複数のレベルの前記変換木によって決定される」という構成は削除され、請求項1ないし19は、発明の詳細な説明に記載されたものとなり、明確となった。
よって、当審拒絶理由の理由1及び理由2は解消した。

(2)理由3について
当審拒絶理由において引用した引用文献1ないし引用文献3は、原査定において引用した引用文献1ないし引用文献3である。
したがって、上記第3の「2.原査定の理由の判断」に記載した判断と同様に、本願発明1ないし19は、引用発明1、並びに引用文献2及び引用文献3に記載される技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし19に係る発明は、原査定の拒絶理由によっては拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-10-11 
出願番号 特願2013-556183(P2013-556183)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H04N)
P 1 8・ 537- WY (H04N)
P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 嘉宏山▲崎▼ 雄介梅本 達雄  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 清水 正一
渡邊 聡
発明の名称 映像をデコーディングするための方法  
代理人 上田 俊一  
代理人 梶並 順  
代理人 大宅 一宏  
代理人 曾我 道治  
代理人 飯野 智史  
代理人 田村 義行  
代理人 吉田 潤一郎  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ