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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B |
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管理番号 | 1320115 |
審判番号 | 不服2015-16390 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-09-07 |
確定日 | 2016-10-04 |
事件の表示 | 特願2012-553929「セキュリティシステムを遠隔管理するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔2011年9月1日国際公開、WO2011/106138、平成25年6月13日国内公表、特表2013-522703〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年2月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年2月23日 (US)アメリカ合衆国、2010年5月28日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月14日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年11月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年4月30日付け(発送日:同年5月7日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年9月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成27年9月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年9月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成27年9月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成26年11月10日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「【請求項1】 妨害活動の影響をより受けにくいセキュリティシステムを提供するための方法であって、 セキュリティアラートを管理するために遠隔サーバを利用するステップであって、前記遠隔サーバはセキュリティシステム構成情報およびアラート情報を有する、ステップと、 前記遠隔サーバを用いてセキュリティシステム構成を維持および診断するステップと、 前記セキュリティシステムと相互作用するために、前記遠隔サーバにより遠隔アラームコンソールを利用するステップとを含み、前記遠隔アラームコンソールは前記遠隔サーバと通信し、前記遠隔アラームコンソールは前記セキュリティシステムと直接通信しない、方法。」を、 補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「【請求項1】 妨害活動の影響をより受けにくいセキュリティシステムを提供するための方法であって、 セキュリティアラートを管理するために遠隔サーバを利用するステップであって、前記遠隔サーバはセキュリティシステム構成情報およびアラート情報を有する、ステップと、 前記遠隔サーバを用いてセキュリティシステム構成を維持および診断するステップと、 前記セキュリティシステムと相互作用するために、前記遠隔サーバにより遠隔アラームコンソールを利用するステップであって、前記セキュリティシステムと前記遠隔アラームコンソールとの間の相互作用が、前記セキュリティシステムを作動可能にする/解除するために及び前記セキュリティシステムの特定の装置の機能にアクセスするために前記遠隔サーバにより前記遠隔アラームコンソールを使用することを含む、ステップと を含み、前記遠隔アラームコンソールは前記遠隔サーバと通信し、前記遠隔アラームコンソールは前記セキュリティシステムと直接通信しない、方法。」 と補正することを含むものである。 なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。 本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「遠隔サーバにより遠隔アラームコンソールを利用するステップ」について、「前記セキュリティシステムと前記遠隔アラームコンソールとの間の相互作用が、前記セキュリティシステムを作動可能にする/解除するために及び前記セキュリティシステムの特定の装置の機能にアクセスするために前記遠隔サーバにより前記遠隔アラームコンソールを使用することを含む、ステップ」に限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開2002-325288号公報(以下「刊行物」という。)には、「遠隔監視制御システム」に関し、図面(特に第6、8、9図参照)とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。) ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、遠隔監視制御システムに関する。」 イ.「【0034】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例につき、図面に基づき詳しく説明する。この実施例の遠隔監視制御システムは、携帯電話からインターネットを介して住宅に設置された機器の監視制御を行なうシステムである。図6は、第1実施例の遠隔監視制御システムの構成を示したブロック図である。図6において、本実施例の遠隔監視制御システムは、監視および制御の対象となる場所である住宅21、専用無線用パケット通信網22、この専用無線用パケット通信網22のセンタである無線センタ23、中継サーバ41が設置された中継センタ24、インターネット25、接続センタ26、携帯電話用パケット通信網27、および、上記の監視および制御の指示を行なうと共にその結果を確認するのに用いられる携帯電話28で構成されている。尚、図6と図13とを比較すると分かる通り、本実施例の遠隔監視制御システムは、端的に言うと、従来例の遠隔監視制御システムにおいて、インターネット対応機能を住宅から外へ取り出して、独立させたシステムということができる。 【0035】住宅21には、監視制御の対象となる制御対象機器が設置され、この制御対象機器には、玄関灯35、エアコン36、VTR37、火災センサ38等がある。また、これらの制御対象機器は、照会ライン33および制御ライン34により、同じく、住宅21に設置されている住宅制御装置32に接続されている。この住宅制御装置32は、照会ライン33を介して制御対象機器の状態を把握すると共に、制御ライン34を介して制御対象機器を制御する。この住宅制御装置32は、同じく、住宅21に設置されている専用無線端末装置31に接続され、この装置との間で情報の授受を行なっている。専用無線端末装置31は、専用無線用パケット通信網22と接続され、住宅21の外部との通信を行なっている。」 ウ.「【0037】中継センタ24には、上述の通り、中継サーバ41が設置され、この中継サーバ41は、一方で、インターネット25に接続され、他方で、上述した通り専用無線端末装置31に接続されており、この専用無線端末装置31を介して住宅制御装置32と接続されている。そのため、中継サーバ41は、Webサーバ42やメールサーバ43に代表されるような、インターネット接続に必要な各種のハードウエアやソフトウエアを備えている。その他、中継サーバ41には、このWebサーバ42やメールサーバ43と、住宅制御装置32との間でデータ変換を行なうデータ変換部44を備えている。Webサーバ42の備えるソフトウエアには、CGIプログラムとして、Webサーバ42の有するWebページ内の情報を選択したり、あるいは、Webページ内のフィールド枠内に記入したりして、入力された情報を取得するプログラムや、Webサーバ42とデータ変換部44との間で、情報の授受を行なうプログラム等が含まれている。」 エ.「【0039】上述の中継サーバ41の役割は、次のような内容である。まず、携帯電話28へ、Webサーバ42の有するWebページに表示された分かりやすい表現を用いた情報を提供する。そして、この情報に基づいて、本実施例のシステムの利用者が、携帯電話28を操作することにより、このWebページ内の情報を選択したり、Webページ内のフィールド枠内に記入したりして、住宅21に設置されている制御対象機器に対する監視制御を指令するために必要な情報である監視制御指令要素を決定する。そこで、この決定された監視制御指令要素を携帯電話28から集め、その結果に基づき監視制御指令の形成が完結できるか否かを検証し、完結できなければ、以上の動作を繰り返して必要な監視制御指令要素を収集する。完結できれば、さらに、この監視制御指令をサイズの小さい集約監視制御指令に変換して、住宅制御装置32へ送信して実行させる。そして、その実行の結果を住宅制御装置32から受けて、制御対象機器の状態を携帯電話28に提供する。そのため、中継サーバ41に備えられたWebサーバ42には、携帯電話28へ提供するための情報が、画面情報として用意されている。図8および図9は、これらの画面情報の1部を示したものである。」 オ.「【0046】次に、住宅21で発生した緊急状態の携帯電話28への通報動作について説明する。この動作を行なわせるためには、予め検知条件設定が必要である、そこで、この設定操作の説明として、火災センサ38の動作温度を設定し、火災センサ38が動作したときに通報するようにアラームセットをし、且つ、在宅と外出のいずれかを指定する設定を外出に設定する例を想定する。まず、図8(c)の画面情報において、「センサの設定」を選択すると、図9(e)の画面情報が返されるので、設定温度のフィールド枠内に、設定温度として、例えば、80(度)を入力して、「セットする」を選択すると、監視制御指令の場合と同様にして、検知条件設定指令要素である「名前とパスワードで特定される住宅」、「火災センサ」、および、「80」から、「名前とパスワードで特定される住宅の火災センサの設定温度を80度に設定する」という検知条件設定指令を形成する。そして、この検知条件設定指令によりWebサーバ42にその指令内容を記憶して検知条件設定を行なうと共に、この検知条件設定指令を、サイズを小さくした集約検知条件設定指令に変換して名前とパスワードで特定される住宅に設置された、住宅制御装置32に送信すると、住宅制御装置32が火災センサ38の設定温度を80度に設定して、検知条件設定を完了する。 【0047】同様にして、図8(c)の画面情報において、「アラームの設定」を選択すると、図9(a)の画面情報が返されるので、「アラームセット」を選択すると、Webサーバ42および住宅制御装置32で、火災センサ38のアラームが設定される。その後、図9(b)の画面情報が返されるので、火災センサ38のアラームがセットされたことを確認できる。同様にして、図8(c)の画面情報で、「在宅/外出変更」を選択すると、図9(d)の画面情報が返され、「外出する」を選択することにより、外出モードとなり、上記で設定したアラームが発生すると、携帯電話28へ通報されることになる。尚、図示されていないが、アラームの通報先である特定の携帯電話28の指定も設定できる。この通報先は、複数とすることもでき、また、通報するアラームの種類によって、異なる通報先とすることもできる。 【0048】上記の設定の後、火災センサ38が80度以上の状態を検知して動作状態となると、住宅制御装置32は、設定された検知条件に基づき、中継サーバ41へ通報するので、中継サーバ41は、設定された検知条件に基づき、例えば、図9(f)の画面情報に示すような注意を喚起する表現に変換して、通報内容の電子メール文を形成し、メールサーバ43により通報先として設定されている携帯電話28へ通報するので、住宅21で火災が発生したことが分かる。この場合に、注意を喚起する表現として、上記のほか、例えば、図9(f)の画面情報の中の、「緊急事態」と「火災発生」とを交互に点滅させたり、これらの表示と同時に、着信音を鳴動させたり、バイブレーションを動作させたり、あるいは、「火災発生」の音声を鳴動させたりする方法が考えられる。 【0049】上述の本実施例の遠隔監視制御システムによれば、制御対象場所である住宅21における緊急事態等の発生を、リアルタイムで知ることができる。また、このために必要な、各種設定が、携帯電話28からできるので、住宅制御装置32や中継サーバ41に直接設定する必要がなく、これらの設定を容易に行なうことができる。」 カ.「【0050】上述の本実施例の遠隔監視制御システムにおいて、住宅制御装置32で使用されるプログラムを中継サーバ41からダウンロードするようにしてもよい。即ち、住宅21に設置される状態データ32が搭載するプログラムを、中継サーバ41に用意しておき、住宅制御装置32の稼動開始時に、あるいは、住宅制御装置32に搭載したプログラムに、稼動中、不具合が発生した場合に、中継サーバ41から住宅制御装置32へ、無線センタ23、専用無線用パケット通信網22、および、専用無線端末装置31を介して、そのプログラムをダウンロードする。」 キ.記載事項イによれば、遠隔監視制御システムは、携帯電話からインターネットを介して住宅に設置された機器の監視制御を行なうシステムであり、遠隔監視制御システムは、監視および制御の対象となる場所である住宅21、中継サーバ41が設置された中継センタ24、インターネット25、携帯電話28等で構成されており、住宅制御装置32は、照会ライン33を介して制御対象機器の状態を把握すると共に、制御ライン34を介して制御対象機器を制御するものである。 ク.記載事項ウによれば、中継サーバ41は、一方で、インターネット25に接続され、他方で、住宅制御装置32と接続されている。そして、記載事項エのとおり、中継サーバ41は携帯電話28へWebサーバ42の有するWebページに表示された分かりやすい表現を用いた情報を提供し、システムの利用者が、携帯電話28を操作することにより、Webページ内の情報を選択したり、Webページ内のフィールド枠内に記入したりして、住宅21に設置されている制御対象機器に対する監視制御を指令するために必要な情報である監視制御指令要素を決定すると、その監視制御指令を住宅制御装置32へ送信して実行させるものであり、携帯電話28は中継サーバ41と通信し、携帯電話28は住宅21に設置されている制御対象機器と直接通信しないといえる。 ケ.記載事項オによれば、火災センサ38の通報動作の設定は以下のように行われる。 a.検知条件設定 ・画面情報において「センサの設定」を選択する。 ・画面情報が返される。 ・設定温度のフィールド枠内に、設定温度を入力して、「セットする」を選択する。 ・検知条件設定指令が形成される。 ・検知条件設定指令によりWebサーバ42にその指令内容を記憶して検知条件設定を行なう。 ・検知条件設定指令を、住宅制御装置32に送信する。 ・住宅制御装置32が検知条件設定を設定する。 b.アラームセット ・画面情報において「アラームの設定」を選択する。 ・画面情報が返される。 ・「アラームセット」を選択する。 ・Webサーバ42および住宅制御装置32で、火災センサ38のアラームが設定される。 コ.記載事項カには、遠隔監視制御システムにおいて、住宅制御装置32で使用されるプログラムを中継サーバ41に用意しておき、稼動中、不具合が発生した場合に、中継サーバ41から住宅制御装置32へ、そのプログラムをダウンロードするようにしてもよいことが記載されている。 上記記載事項、図示内容及び上記認定事項を総合して、遠隔監視制御システムによる火災センサ38の通報動作の設定について、本願補正発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「遠隔監視制御システムを提供するための方法であって、 住宅21に設置されている火災センサ38の通報動作の設定において中継サーバ41を利用するステップであって、前記中継サーバ41に備えられたWebサーバ42には、携帯電話28へ提供するための情報が、画面情報として用意されており、 火災センサ38の通報動作を設定するために、前記中継サーバ41により携帯電話28を利用するステップであって、前記火災センサ38の通報動作の設定が、前記火災センサ38のアラームセット及び前記火災センサ38の検知条件設定のために前記中継サーバ41のWebサーバ42の有するWebページに表示された分かりやすい表現を用いた情報を前記携帯電話28に提供することを含む、ステップ を含み、 前記携帯電話28は中継サーバ41と通信し、携帯電話28は住宅21に設置されている前記火災センサ38と直接通信しない、方法。」 3.対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「遠隔監視制御システム」は、住宅21に設置されている火災センサ38を用いて緊急状態を通報するものであるから、本願補正発明の「セキュリティシステム」に相当する。また、後者の「中継サーバ41」及び「携帯電話28」は、その機能、構造からみて、前者の「遠隔サーバ」及び「遠隔アラームコンソール」にそれぞれ相当する。 そして、後者の「住宅21に設置されている火災センサ38の通報動作の設定」をすることは前者の「セキュリティアラートを管理する」ことに相当し、後者の「前記中継サーバ41に備えられたWebサーバ42には、携帯電話28へ提供するための情報が、画面情報として用意されて」いることは、前者の「遠隔サーバはセキュリティシステム構成情報およびアラート情報を有する」ことに相当する。 さらに、後者の「火災センサ38の通報動作を設定する」ことは前者の「セキュリティシステムと相互作用する」ことに相当し、同様に、後者の「火災センサ38のアラームセット」及び「火災センサ38の検知条件設定」はそれぞれ前者の「セキュリティシステムを作動可能にする/解除する」こと及び「セキュリティシステムの特定の装置の機能にアクセスする」ことに相当する。そして、後者の「前記中継サーバ41のWebサーバ42の有するWebページに表示された分かりやすい表現を用いた情報を前記携帯電話28に提供すること」は前者の「前記遠隔サーバにより前記遠隔アラームコンソールを使用すること」に相当する。 以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、 [一致点] 「セキュリティシステムを提供するための方法であって、 セキュリティアラートを管理するために遠隔サーバを利用するステップであって、前記遠隔サーバはセキュリティシステム構成情報およびアラート情報を有する、ステップと、 前記セキュリティシステムと相互作用するために、前記遠隔サーバにより遠隔アラームコンソールを利用するステップであって、前記セキュリティシステムと前記遠隔アラームコンソールとの間の相互作用が、前記セキュリティシステムを作動可能にする/解除するために及び前記セキュリティシステムの特定の装置の機能にアクセスするために前記遠隔サーバにより前記遠隔アラームコンソールを使用することを含む、ステップと を含み、前記遠隔アラームコンソールは前記遠隔サーバと通信し、前記遠隔アラームコンソールは前記セキュリティシステムと直接通信しない、方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] セキュリティシステムが、本願補正発明では、「妨害活動の影響をより受けにくい」ものであるのに対して、引用発明では、妨害活動の影響を受けにくいものであるかどうか明らかでない点。 [相違点2] 本願補正発明では、「前記遠隔サーバを用いてセキュリティシステム構成を維持および診断するステップ」を有するのに対して、引用発明では、当該ステップを有しない点。 4.判断 (1)相違点1について 本願補正発明は、「現在のセキュリティシステムに関連する主な問題の1つは、システムに関連する機能の全てが、システムによって保護される構内に集中化されることである。コア動作コンポーネントおよび対応するシステム機能を監視構内の中心に配置することにより、そのシステムは妨害活動に非常に影響されやすくなり、その結果最初の侵入工作が行われるとそのシステムが動作不能となる可能性がある。」(段落【0003】)との課題のために、「セキュリティアラートを管理するために遠隔サーバを利用」し、「遠隔サーバにより遠隔アラームコンソールを利用する」ことで、妨害活動の影響をより受けにくくしているものと認められるところ、引用発明も監視および制御の対象となる装置とは異なる物理的位置にある中継サーバ41を利用し、中継サーバ41により携帯電話28を利用して遠隔監視を行うものであるから、引用発明は本願補正発明でいうところの「妨害活動の影響をより受けにくい」との発明特定事項を備えているといえる。 したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 (2)相違点2について 刊行物には、認定事項コのとおり「遠隔監視制御システムにおいて、住宅制御装置32で使用されるプログラムを中継サーバ41に用意しておき、稼動中、不具合が発生した場合に、中継サーバ41から住宅制御装置32へ、そのプログラムをダウンロードするようにしてもよいこと」(以下、「刊行物記載の技術事項」という。)が記載されている。 そして、刊行物記載の技術事項の「中継サーバ41」、「住宅制御装置32で使用されるプログラム」及び「稼動中、不具合が発生した場合に、中継サーバ41から住宅制御装置32へ、そのプログラムをダウンロードする」ことは、本願補正発明の「遠隔サーバ」、「セキュリティシステム構成」及び「セキュリティシステム構成を維持および診断する」ことに、それぞれ相当するから、刊行物記載の技術事項は相違点2に係る発明特定事項に相当する。 してみると、引用発明において、相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が刊行物記載の技術事項に基いて容易に想到し得たことである。 (3)作用効果について そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び刊行物記載の技術事項から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。 (4)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成27年9月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし32に係る発明は、平成26年11月10日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし32に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2、1のとおりのものである。 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物とその記載事項及び引用発明は、上記第2、2に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記第2で検討した本願補正発明から、「遠隔サーバにより遠隔アラームコンソールを利用するステップ」についての限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2、3及び4に記載したとおり、引用発明及び刊行物記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び刊行物記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-10 |
結審通知日 | 2016-05-11 |
審決日 | 2016-05-25 |
出願番号 | 特願2012-553929(P2012-553929) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G08B)
P 1 8・ 575- Z (G08B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 秀行 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 中川 隆司 |
発明の名称 | セキュリティシステムを遠隔管理するための方法およびシステム |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 内藤 和彦 |