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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1320142
審判番号 不服2015-15685  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-24 
確定日 2016-10-05 
事件の表示 特願2011-527818「動物に製品を与えるシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年3月25日国際公開、WO2010/033197、平成24年2月2日国内公表、特表2012-502656〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成21年 9月16日 国際出願(パリ条約による優先権主張 2008年9月22日、米国)
平成25年10月 8日 拒絶理由通知(同年10月15日発送)
平成26年 1月15日 意見書・手続補正書
平成26年 5月12日 拒絶理由通知(最後)(同年5月20日発送)
平成26年 8月15日 意見書・手続補正書
平成27年 6月29日 補正の却下の決定(平成26年8月15日付けの手続補正書による補正を却下)(同年7月7日発送)
平成27年 6月29日 拒絶査定(同年7月7日送達)
平成27年 8月24日 審判請求書・手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年8月24日付けの手続補正を却下する。

1 補正の内容・目的
平成27年8月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成26年1月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。
(補正前)
「行動監視装置と、
前記行動監視装置によって生成される通信を受信するように構成されたプロセッサを備える分配装置であって、前記プロセッサが、前記行動監視装置からの前記通信に応じて製品を分配するように当該分配装置を制御することができる、分配装置と
を具備し、
前記分配装置は、前記製品が消費される用意ができているときに、信号を放出するように設計され且つ構成されている、
分配システム。」
(補正後)
「行動監視装置と、
前記行動監視装置によって生成される通信を受信するように構成されたプロセッサを備える分配装置であって、前記プロセッサが、前記行動監視装置からの前記通信に応じて製品を分配するように当該分配装置を制御することができ、当該分配装置が、前記製品の温度を制御する手段を備えている、分配装置と
を具備し、
前記分配装置は、前記製品が消費される用意ができているときに、信号を放出するように設計され且つ構成されている、
分配システム。」

上記補正事項は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「分配装置」について、「製品の温度を制御する手段を備えている」ことを限定したものであり、かつ補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであり、また、新規事項を追加するものではないから、同法第17条の2第3項の規定を満たしている。

2 独立特許要件についての検討
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

(1)刊行物
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2006-42670号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(ア)「【請求項1】
ペット(40)の健康を管理するためのペット健康管理システムであって、
前記ペットの体温、心拍数、呼吸数、歩数、運動量、行動範囲、食事量、排便量、食事時間、水分補給量、水分補給時間、位置、および臭いの情報のうち少なくとも1つの情報を含むペット状態情報を取得するためのペット状態情報取得装置(23,29,41,285,286)と、
前記ペット状態情報に含まれる情報を利用して前記ペットが健康な状態にあるか否かを判断するペット健康判断装置(111)と、
を備える、ペット健康管理システム(100)。
……
【請求項8】
前記ペットに餌または飲料を供給するためのフィーダ装置(282,283)と、
前記ペット状態情報に含まれる情報を利用して前記フィーダ装置を制御するフィーダ制御装置(281)と、
をさらに備える、請求項1から7のいずれかに記載のペット健康管理システム(100)。」

(イ)「【0001】
本発明は、ペットの健康を管理するためのペット健康管理システムに関する。」

(ウ)「【0004】
本発明の課題は、ペットの異常を確実に検出することができるペット健康管理システムを提供することにある。」

(エ)「【0005】
第1発明に係るペット健康管理システムは、ペットの健康を管理するためのペット健康管理システムであって、ペット状態情報取得装置およびペット健康判断装置を備える。ペット状態情報取得装置は、ペット状態情報を取得するための装置である。なお、ここにいう「ペット」とは、犬、猫、うさぎ、あるいはフィレットなどである。また、ここにいう「ペット状態情報」には、ペットの体温、心拍数、呼吸数、歩数、運動量、行動範囲、食事量、排便量、食事時間、水分補給量、水分補給時間、位置、および臭いの情報のうち少なくとも1つの情報が含まれる。また、ここにいう「ペット状態情報取得装置」とは、例えば、デジタル式の体温計、脈拍計、歩数計、重量センサ、位置センサ、あるいは臭気センサなどであり、ペットに接触して情報を取得するものであってもよいし非接触で情報を取得するものであってもよい。また、このペット状態情報取得装置は、ペットに直接取り付けられるかペットがいる家庭の宅内に設置される。……」

(オ)「【0018】
第8発明に係るペット健康管理システムは、第1発明から第7発明のいずれかに係るペット健康管理システムであって、フィーダ装置およびフィーダ制御装置をさらに備える。フィーダ装置は、ペットに餌または飲料を供給するための装置である。フィーダ制御装置は、ペット状態情報に含まれる情報を利用してフィーダ装置を制御する。
このペット健康管理システムでは、フィーダ制御装置が、ペット状態情報に含まれる情報を利用してフィーダ装置を制御する。このため、このペット健康管理システムでは、ペットの健康状態に応じて与える餌や飲料の種類、量、あるいはフィード時間などを制御することができる。したがって、このペット健康管理システムは、ペットの健康維持などにも貢献することができる。」

(カ)「【0045】
[ペット健康管理システムの構成要素]
(1)ペット管理センサ
ペット管理センサ41には、図示しないデジタル式の体温計、心拍計、呼吸数計、歩数計、RFIDタグ、および臭気センサが内蔵されている。なお、体温計、脈拍計、および呼吸数計の検知部分は、外部に露出しており、ペット40に接触するようになっている。また、このペット管理センサ41には、図示しない情報送信部が備えられており、体温計、脈拍計、呼吸数計、歩数計、および臭気センサにより収集されるペット40の状態情報を計測時刻情報とともに定期的に空調コントローラ22に無線送信している。」

(キ)上記(ア)ないし(カ)(特に(ア)、(エ))によると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。
「ペットの健康を管理するためのペット健康管理システムであって、
前記ペットの体温、心拍数、呼吸数、歩数、運動量、行動範囲、食事量、排便量、食事時間、水分補給量、水分補給時間、位置、および臭いの情報のうち少なくとも1つの情報を含むペット状態情報を取得するためのペット状態情報取得装置と、
前記ペット状態情報に含まれる情報を利用して前記ペットが健康な状態にあるか否かを判断するペット健康判断装置と、
前記ペットに餌または飲料を供給するためのフィーダ装置と、
前記ペット状態情報に含まれる情報を利用して前記フィーダ装置を制御するフィーダ制御装置と、を備え、
ペット状態情報取得装置は、デジタル式の体温計、脈拍計、歩数計、重量センサ、位置センサ、あるいは臭気センサなどである、ペット健康管理システム。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平6-86614号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の記載がある。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、犬や猫等の愛玩動物に餌を自動的に供給する供給装置、より詳しくは、餌を供給するとき、予め設定した時間に設定した量の餌を自動的に供給し、また餌を供給するとき、記憶させた飼い主の音声を再生して餌の供給を知らせる、餌の自動供給装置及びその制御方法に関するものである。」

(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、任意に調整した量の餌を予め設定した時間に自動的に供給できる、餌の自動供給装置及びその制御方法を提供することにある。本発明の他の目的は、予め設定した時間に餌を供給する際、飼い主の音声で愛玩動物に餌の供給を知らせることができる、餌の自動供給装置及びその制御方法を提供することにある。」

(ウ)「【0028】このステップST11に進むと、マイクロコンピュータ2は、バッファ10A・10Bを通じて音声信号発生部4と餌開放部6と餌供給部7とに動作制御信号を送る。これにより、音声信号発生部4のスピーカ21から飼い主の音声が放出されて愛玩動物の呼び出しが行われると共に、餌供給部7の電磁石16が後述のように作動してガイド板29の機械的振動により収納室24内の餌が餌受け板26へ供給され、また餌開放部6のモータ5が正回転して餌受け板26が開放され、図3(イ)の場合は水平状態となる。従って、収納室24から送られてきた餌は餌受け板26上に落下して積み重なるので、愛玩動物が開放口33を通じて餌を食することができるようになる。」

(エ)「【0039】
【発明の効果】以上のとおり本発明によれば、予め設定した予約時間になると飼い主の音声を自動的に再生して愛玩動物を呼び出し、収納室内の餌を決めた量だけ自動的に供給できるため、飼い主が留守にする場合にも、普段と同じ時間帯に同じような給餌感覚でしかも決まった量の餌を与えることができ、有料受託施設を利用することにより生ずる費用を節約できるのは勿論、環境の変化による愛玩動物の適用問題も解決できる。」

(オ)上記(ア)ないし(エ)(特に(ア))によると、刊行物2には、次の事項が開示されていると認められる。
「犬や猫等の愛玩動物の餌の自動供給装置において、餌を供給するとき、記憶させた飼い主の音声を再生して餌の供給を知らせること。」

ウ 本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開昭55-71427号公報(以下「刊行物3」という。)には、次の記載がある。

(ア)「(1)所定の時間置きに給餌がおこなえることを特徴とする、ペットに餌および水を与えるための装置。
(2)所望の回数分の給餌がおこなえるように、いくつかに区分された回転要素によって、餌および水を与える特許請求の範囲第1項記載の装置。
(3)給餌機構がプログラムされた計画に沿って回転する特許請求の範囲第2項記載の装置。
(4)餌を冷凍保存し、次に、加熱域を通過させて後、給餌位置に送り込む特許請求の範囲第3項記載の装置。」(特許請求の範囲)

(イ)「本発明は飼い主の留守中に犬、猫などのペットに給餌するという問題を解決するための装置に関するものである。
本発明による装置は分離した容器内に必要な量の餌を所定回数分保持して、一定温度で餌を冷凍できるように設計されている。
ペットは2つに区分された皿の一方に餌を載せ、他方に水を入れてある特別設計の容器から所定の計画に沿って給餌される。
本発明装置は給餌前に消化のために餌を理想的温度にまで加熱するように、設計されてもいる。
次に、図面により本発明の実施例を説明する。
第1図に示されているように、本発明による装置は仕切り(2)によって、餌の部分を保持するいくつかの部分に分けられた外部シリンダ(1)と、同様に区分されている水保持用内部シリンダ(3)から成る。
内部シリンダ(3)はハブ(4)にきっちり合い、このハブ(4)は軸(5)にきっちり合い、この軸(5)はボデー(6)に取り付けられており、このボデー(6)には時限回転機構が取り付けられている。
ボデー(6)の下部には、冷凍コイル(7)および再加熱装置(8)用レジスタが取り付けられている。」(1頁左下欄19行ないし2頁左上欄1行)

(ウ)「餌は冷凍されているので、ペットの健康を損ない、飼い主の家の中にいやな匂が漂って来る原因を成すこともある腐敗を受けにくい。」(2頁右上欄)16ないし18行)

エ 本願の優先日前に頒布された刊行物である、実願昭59-147864号(実開昭61-64271号)のマイクロフィルム(以下「刊行物4」という。)には、次の記載がある。

(ア)「(産業上の利用分野)
本考案は所望の時刻に自動的にペットの餌を供給し得るペット用自動餌供給器に関する。」(明細書2頁1ないし3行)

(イ)「本ペット用自動餌供給器は前面下部が開口された若干縦長な本体11と、この本体11の上部を縦方向で三分割して形成された貯蔵室3a、3b及び3cと、時間設定用スイッチ2a?2c等の機器が取り付けられ本体11の前面上部に固定される表面パネル12とを有している。また、本体11内部には貯蔵室3a?3cの温度制御を行なう定温度装置4と、希望する音声を例えばペットの名前、ペットに対する呼びかけ等を記憶するボイスレコーダ6と、餌の落下、停止制御を行なう供給駆動装置5a?5c及びこれら機器の制御を行なうマイクロプロセッサ(MPU)1が実装されたプリント基板が設けられている。……定温度装置4は貯蔵室3a?3c内の温度を一定に保つための装置であり、保温冷却機能を有すると共に、サーミスタ等の温度センサ(図示省略)が接続され常時、貯蔵室3a?3c内の温度を監視し設定温度に保持する。」(明細書4頁9行ないし5頁16行)

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。
ア 刊行物1発明の「デジタル式の体温計、脈拍計、歩数計、重量センサ、位置センサ、あるいは臭気センサなどである」「ペット状態情報取得装置」と、本願補正発明の「行動監視装置」とを対比する。
本願明細書には、「行動監視装置は、たとえば加速度計、歩数計又はそれらの組合せ等、動物の行動パラメータを測定する任意の適当な装置であり得る。」(段落【0035】)と記載されている。
本願明細書の上記記載に照らせば、刊行物1発明の「デジタル式の体温計、脈拍計、歩数計、重量センサ、位置センサ、あるいは臭気センサなどである」「ペット状態情報取得装置」は、本願補正発明の「行動監視装置」に相当する。

イ 刊行物1発明の「前記ペットに餌または飲料を供給するためのフィーダ装置」及び「前記ペットの体温、心拍数、呼吸数、歩数、運動量、行動範囲、食事量、排便量、食事時間、水分補給量、水分補給時間、位置、および臭いの情報のうち少なくとも1つの情報を含む」「ペット状態情報に含まれる情報を利用して前記フィーダ装置を制御するフィーダ制御装置」と、本願補正発明の「前記行動監視装置によって生成される通信を受信するように構成されたプロセッサを備える分配装置であって、前記プロセッサが、前記行動監視装置からの前記通信に応じて製品を分配するように当該分配装置を制御することができ」る「分配装置」とを対比する。

(ア)本願明細書には、「一実施形態では、通信は、行動監視装置を装着している動物の心拍数、行動、体重、身長、動物測定データ及びそれらの組合せからなる群から選択された情報を含む。」(段落【0007】)、及び「ある実施形態では、分配装置は、水、飲料、食物、おやつ、玩具、栄養補助食品、薬剤、ゲル及びそれらの組合せからなる群から選択された製品を分配するように構成され且つ設計される。」(段落【0009】)と記載されている。

(イ)上記(ア)の本願明細書の段落【0009】の記載に照らせば、刊行物1発明の「前記ペットに餌または飲料を供給する」は、本願補正発明の「製品を分配する」に相当するから、刊行物1発明の「前記ペットに餌または飲料を供給するためのフィーダ装置」及び「前記フィーダ装置を制御するフィーダ制御装置」は、本願補正発明の「プロセッサを備える分配装置であって、前記プロセッサが」「製品を分配するように当該分配装置を制御することができ」る「分配装置」に相当する。

(ウ)上記(ア)の本願明細書の段落【0007】の記載に照らせば、本願補正発明の「前記行動監視装置によって生成される通信」は、行動監視装置を装着している動物の心拍数、行動、体重、身長、動物測定データ及びそれらの組合せからなる群から選択された情報を含むものである。
また、刊行物1発明において、「フィーダ制御装置」が「前記ペット状態情報に含まれる情報を利用」するためには、ペット状態情報取得装置により取得されたペット状態情報を受信する必要があることは自明の事項である。
してみると、刊行物1発明の「フィーダ制御装置」が「前記ペットの体温、心拍数、呼吸数、歩数、運動量、行動範囲、食事量、排便量、食事時間、水分補給量、水分補給時間、位置、および臭いの情報のうち少なくとも1つの情報を含む」「ペット状態情報に含まれる情報を利用して前記フィーダ装置を制御する」ことと、本願補正発明の「前記行動監視装置によって生成される通信を受信するように構成されたプロセッサ」が「前記行動監視装置からの前記通信に応じて製品を分配するように当該分配装置を制御することができ」ることとは、「前記行動監視装置によって生成される情報を受信するように構成されたプロセッサが前記行動監視装置からの前記情報に応じて製品を分配するように当該分配装置を制御することができる」ことで共通する。

ウ 刊行物1発明の「ペット健康管理システム」は、ペットに餌または飲料を供給するから、本願補正発明の「分配システム」に相当する。

エ したがって、両者は、以下の点で一致している。
(一致点)
「行動監視装置と、
前記行動監視装置によって生成される情報を受信するように構成されたプロセッサを備える分配装置であって、前記プロセッサが、前記行動監視装置からの前記情報に応じて製品を分配するように当該分配装置を制御することができる、分配装置と
を具備する、分配システム。」

オ そして、以下の点で相違している。
(相違点1)
行動監視装置によって生成される情報の取得に関し、本願補正発明では、プロセッサが、行動監視装置によって生成される通信を受信するのに対し、刊行物1発明は、フィーダ制御装置が、ペット状態情報取得装置が取得したペット状態情報に含まれる情報を利用するが、ペット状態情報をどこから受信するか特定されていない点。
(相違点2)
分配装置に関し、本願補正発明では、分配装置が、製品の温度を制御する手段を備えているのに対し、刊行物1発明では、フィーダ制御装置が、そのような構成を備えているか不明な点。
(相違点3)
分配装置に関し、本願補正発明では、分配装置は、製品が消費される用意ができているときに、信号を放出するように設計され且つ構成されているのに対し、刊行物1発明では、フィーダ制御装置は、そのような構成を備えているか不明な点。

(3)判断
ア 相違点1について
刊行物1には、ペット管理センサ41(ペット状態情報取得装置)には、情報送信部が備えられており、収集されるペット40の状態情報を定期的に無線送信することが記載されている(上記(1)ア(カ)を参照。)
そして、刊行物1発明において、フィーダ制御装置が、ペット状態情報取得装置が取得したペット状態情報をどこから受信するかは当業者が適宜決定し得る設計的事項というべきところ、上記刊行物1の記載を踏まえると、フィーダ制御装置が、ペット状態情報取得装置が無線送信するペット状態情報を受信するよう構成すること、すなわち上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
ペット用の給餌装置において、餌の温度を制御する手段を備えることは周知技術である(刊行物3には、ペットに餌および水を与えるための装置において、餌を冷凍保存するための冷凍コイル、加熱し給餌位置に送り込むための再加熱装置用レジスタを設ける点が記載されている(上記(1)ウを参照。)。刊行物4には、ペット用自動餌供給器において、貯蔵室内の温度を一定に保つための保温冷却機能を有する定温度装置を設ける点が記載されている(上記(1)エを参照。)。)
そして、刊行物1発明及び上記周知技術は、ともにペット用の給餌装置に関するものであり、刊行物1発明においても餌または飲料の腐敗を防止するとの課題や適温の餌または飲料を供給するとの課題は内在するから、刊行物1発明に上記周知技術を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
本願明細書には、「さまざまな実施形態において、分配装置は、食物が消費される用意ができている時に信号、たとえば視覚信号、可聴(たとえば人間の音声)信号又は嗅覚信号を放出するか又は他の方法で送信するように設計され且つ構成されている。」(段落【0032】)と記載されている。
一方、刊行物2には、犬や猫等の愛玩動物の餌の自動供給装置において、餌を供給するとき、記憶させた飼い主の音声を再生して餌の供給を知らせることが記載されており(上記(1)イ(オ)を参照。以下「刊行物2記載の技術」という。)、上記本願明細書の記載に照らせば、刊行物2記載の技術の「飼い主の音声」は、本願補正発明の「信号」に相当する。
そして、刊行物1発明及び刊行物2記載の技術は、ともにペット用の給餌装置に関するものであり、刊行物1発明においてもペットに確実に給餌するとの解題は内在するから、刊行物1発明に刊行物2記載の技術を適用して、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ 本願補正発明の効果について
本願補正発明によってもたらされる効果を全体としてみても、刊行物1発明、刊行物2記載の技術及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

オ 小括
よって、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の技術及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
1 本願発明
平成27年8月24日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年1月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし55に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2,1において、本件補正前の請求項1として示したとおりのものである。

2 対比・判断
本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに「分配装置が、前記製品の温度を制御する手段を備えている」ことを限定したものが本願補正発明であるから、本願発明と刊行物1発明とを対比すると、両者は、上記相違点1及び3で相違し、その余の点で一致する。
そして、上記相違点1及び3については、上記第2、2(3)ア及びウにおいて検討したとおりであるから、結局、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び刊行物2記載の技術に基いて容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び刊行物2記載の技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-09 
結審通知日 2016-05-10 
審決日 2016-05-23 
出願番号 特願2011-527818(P2011-527818)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A01K)
P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 靖典  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 住田 秀弘
中田 誠
発明の名称 動物に製品を与えるシステム及び方法  
代理人 池田 成人  
代理人 城戸 博兒  
代理人 戸津 洋介  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 池田 正人  
代理人 酒巻 順一郎  

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