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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1320179
審判番号 不服2015-22371  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-18 
確定日 2016-10-25 
事件の表示 特願2014- 90234「高速ダウンリンク共有チャネルを介したページング」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月11日出願公開、特開2014-168275、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、2008年2月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年2月5日、米国、2007年3月13日、米国、2007年3月16日、米国)を国際出願日とする特願2009-549098号の一部を2012年9月5日に出願した特願2012-195130号の一部を2014年4月24日に出願したものであって、平成27年2月27日付けで拒絶理由が通知され、平成27年7月10日付けで手続補正がされ、平成27年8月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年12月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、平成28年1月15日に前置報告がなされたものである。


第2 原査定の理由の概要と前置報告の内容

1.原査定の理由の概要

<分割不適法>
本願は、特願2009-549098号の分割出願である特願2012-195130号に基づく分割出願である。
ここで、本願が特願2009-549098号の出願日にしたものとみなされるには、次の条件を満たす必要がある。

本願が、特願2009-549098号との分割要件を満たすこと
本願が、特願2012-195130号との分割要件を満たすこと
特願2012-195130号が、特願2009-549098号との分割要件を満たすこと

ここで、「特願2012-195130号が、特願2009-549098号との分割要件を満たすこと」について、拒絶理由通知書で次の指摘をした。

特願2012-195130号の請求項1などの「前記PICH情報から導出されたページング機会の間に、スリープモードからアウェイクするステップと、前記選択されたPICH情報を使用して、PICH上でページングインジケータを監視するステップ」が、特願2009-549098号(出願日 平成20年2月5日)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内ではない。
よって、特願2012-195130号も分割不適法である。

したがって、本願は、特願2009-549098号の出願日にしたものとはみなされない。そして、本願は、特願2012-195130号の出願日である平成24年9月5日にしたものとみなされる。

●理由1(特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号)について
1.請求項1-11に係る発明は、明確ではない。また、発明の詳細な説明は、請求項1-11に係る発明について、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。(理由1.1-6)
出願人は、請求項1-11に係る発明は、[0012]に係る課題を解決するためのものであると主張している。
しかし、[0012]に係る課題を、請求項に係る発明がどのように解決しているか、請求項の記載から理解できない。
また、発明の詳細な説明に、この課題を解決する技術を見つけることができない。

そして、「0013」の課題も[0012]の課題も解決しないと、HSDPAによる通信ができないと思われる。よって、請求項1-11に係る発明は通信ができないから、請求項1-11に係る発明は、明確ではない。

2.請求項1-5に係る発明は、明確ではない。(理由1.2)
出願人は意見書で、請求項1-5はケース1及びケース3を含むと主張している。このケース3とは、HS-SCCHを受信することなく、HS-PDSCHを受信するものである。
ここで、HS-SCCHが、「受信側WTRUが、HS-DPSCH(審査官補足:HS-PDSCHの誤記と理解される。)上で送信されたどの情報が特定のWTRUに宛てられているかを決定できるようにし、また特定のWTRUが、送信された情報を回復できるようにする詳細なデータを提供する」([0003])ものであることが、本願出願時の技術常識である。そして、この技術常識を踏まえると、WTRUはHS-SCCHに含まれる情報なしで、HS-PDSCHを受信することは実現できないことである。

出願人は、これに対し、意見書で次の主張をしている。
『本願の図4に記載されたケース3においては、HS-SCCHを必要としません。これは、HS-PDSCHが複数のWTRUに共有されており、例えば、表1に示した情報要素の中には、HS-PDSCHチャネライゼーションコードが含まれているので、各WTRUは、HS-PDSCHを監視することができます。上述したようにケース3においては、共通のH-RNTIを使用するので、PICHの検出後にHS-PDSCHを監視すればよいだけです(段落番号[0034])。以上により理由1.2および1.5は解消したものと思料いたします。』

請求項には、上記主張に対応する仕掛け・発明特定事項(従来技術において必須のHS-SCCHを必要としない代わりに採用した仕掛け)が存在しない。請求項には、例えば、WTRUがHS-SCCHを受信しないでHS-PDSCHを受信するために、当該WTRUが表1に示した情報要素を入手する仕掛けを備えることが存在しない。
よって、請求項に係る発明は、依然として、WTRUがHS-PDSCHを受信するのに必要な発明特定事項が記載されていないことが明らかであるから、明確ではない。


発明の詳細な説明([0021]-[0025]など)には、高速チャネル構成情報をWTRUに提供するために、SIBに新しい情報要素を追加することが記載されている。これが、ケース3で、HS-SCCHを受信することなく、HS-PDSCHを受信することを実現する仕掛けなのではないか。そして、請求項には、この仕掛けは(WTRUがSIB表1の)記載されていないから、請求項に係る発明により、HS-PDSCHが受信できないことが明らかである。
よって、出願時の技術常識を考慮すると、請求項に発明を特定するための事項が不足していることが明らかである。

3.請求項4に係る発明は、明確ではない。(理由1.5)
次のことが、本願出願時の技術常識である。
WTRUが、事前にH-RNTIを割り当てられること
WTRUが、当該H-RNTIをHS-SCCHの監視に利用すること
当該HS-SCCHにより、WTRUが、HS-PDSCH上で送信された どの情報が当該WTRUに宛てられているかを決定でき、また当該WTRUが 、送信された情報を回復できるようにする詳細なデータを提供されること
WTRUがHS-PDSCHを受信する際に、H-RNTIを利用しないこ と(HS-SCCHから得た上記詳細なデータを利用すること)

すると、請求項の「共通高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を受信し、および、前記受信された共通H-RNTIを使用して、前記HS-PDSCH上で前記メッセージを受信する」は、上記技術常識に反する。

そして、「共通高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を受信し、および、前記受信された共通H-RNTIを使用して、前記HS-PDSCH上で前記メッセージを受信する」が、発明の詳細な説明の何に対応し、何のために、どのようにH-RNTIを利用することか、発明の詳細な説明を参照しても理解できず、不明りょうである。

また、発明の詳細な説明は、請求項5に係る発明(ケース3において共通のH-RNTIを利用すること)を、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

4.請求項6-11に係る発明は、明確ではない。また、発明の詳細な説明は、これらの請求項に係る発明を、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。(理由1.6及び1.7)

次のことが、本願出願時の技術常識である。
WTRUが、事前にH-RNTIを割り当てられること
WTRUが、当該H-RNTIをHS-SCCHの監視に利用すること
当該HS-SCCHにより、WTRUが、HS-PDSCH上で送信された どの情報が当該WTRUに宛てられているかを決定でき、また当該WTRUが 、送信された情報を回復できるようにする詳細なデータを提供されること
WTRUがHS-PDSCHを受信する際に、H-RNTIを利用しないこ と(HS-SCCHから得た上記詳細なデータを利用すること)

すると、請求項の「前記ページングインジケータを検出した後に、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視するステップと、前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視するステップ」は、上記技術常識に反する。

そして、「前記ページングインジケータを検出した後に、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視するステップと、前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視するステップ」が、発明の詳細な説明の何に対応し、何のために、どのようにH-RNTIを利用することか、発明の詳細な説明を参照しても理解できず、不明りょうである。


同様に、請求項7の「前記H-RNTIを受信するステップと、前記受信されたH-RNTIに基づいて、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS-PDSCH)を受信するステップ」並びに請求項10の同様の記載も、発明の詳細な説明に係るどの記載に対応するか不明である。
さらに、「前記H-RNTIを受信するステップ」は、請求項6の「高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視するステップ」とは別のステップか不明である。また、該ステップは、請求項6の「H-RNTIが受信されない場合に、前記スリープモードに戻るステップ」に係るH-RNTIの受信とは別のステップか不明である。
また、「前記受信されたH-RNTIに基づいて、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS-PDSCH)を受信するステップ」は、請求項6の「前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視するステップ」とは別のステップか不明である。

<補足>
請求項に「前記受信されたH-RNTIを使用して、」とあるから、WTRUは当該受信によりH-RNTIを得ている/WTRUは当該受信の前にH-RNTIの割り当てをされていないと理解される。

●理由2(特許法第29条第1項第3号及び第2項)について
・請求項 1-11
・引用文献等 1-2
本願は、平成24年9月5日にしたものとみなされる。
そして、引用文献1-2は、いずれも、平成24年9月5日より前に公開されている。

<引用文献等一覧>
1.3GPP TS 25.331 V8.1.0,2007年12月,pages 44-46, 304-306, 310-311, 699-700,URL,http://www.qtc.jp/3GPP/Specs/25331-810.pdf
2.特表2010-518747号公報

2.前置報告の内容

1.補正の目的
補正前請求項1の「ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信するステップと、前記情報要素を受信した後に、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集するステップと、候補の数に対応する値kを決定するステップと、U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算するステップであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)である、ステップと、前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択するステップと、」を、
補正後請求項1の「ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信するステップ、前記情報要素を受信した後に、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集するステップ、候補の数に対応する値kを決定するステップ、U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算するステップであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)である、ステップ、および前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択するステップを備え、さらに、」にする補正について検討する。

この補正の目的は、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当しない。

同様に、次の補正の目的は、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当しない。
補正前請求項3を補正後請求項3にする補正
補正前請求項6を補正後請求項6にする補正
補正前請求項8を補正後請求項9にする補正

2.まとめ
したがって、この補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。

3.補足
補正後請求項に係る発明について判断を示す。

<分割不適法>
本願は、特願2009-549098号の分割出願である特願2012-195130号に基づく分割出願である。ここで、本願が特願2009-549098号の出願日にしたものとみなされるには、次の条件を満たす必要がある。

本願が、特願2009-549098号との分割要件を満たすこと
本願が、特願2012-195130号との分割要件を満たすこと
特願2012-195130号が、特願2009-549098号との分割要件を満たすこと

条件「特願2012-195130号が、特願2009-549098号との分割要件を満たすこと」について、拒絶理由通知書で次の指摘をした。

『<特願2012-195130号について>
特願2012-195130号の請求項1などの「前記PICH情報から導出されたページング機会の間に、スリープモードからアウェイクするステップと、前記選択されたPICH情報を使用して、PICH上でページングインジケータを監視するステップ」が、特願2009-549098号(出願日 平成20年2月5日)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内ではない。
よって、特願2012-195130号も分割不適法である。』

拒絶理由通知・拒絶査定に係るこの指摘に対して請求人は何ら釈明していない。審判請求書の(5)欄に係る主張は、この指摘に対応しない。

したがって、本願は、特願2009-549098号の出願日にしたものとはみなされない。そして、本願は、特願2012-195130号の出願日である平成24年9月5日にしたものとみなされる。

3-1.根拠条文 第36条第4項第1号及び第6項第2号
(1)請求項1-9に係る発明は、明確ではない。また、発明の詳細な説明は、請求項1-9に係る発明について、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。(理由1.1-6)
請求人は、請求項1-9に係る発明は、[0012]に係る課題を解決するためのものであると主張している。しかし、[0012]に係る課題を、請求項に係る発明がどのように解決しているか、請求項の記載から理解できない。

意見書で、例えば、請求項1-5はケース1及びケース3を含むと主張している。両ケースの内容の一部を確認する。ケース1ではHS-SCCH上で共通のH-RNTIアドレス又はWTRU固有のH-RNTIアドレスを使用する([0030]、ステップ455)。ケース3では共通のH-RNTIアドレスが使用される場合にHS-SCCHが必要とされない([0034])。
すると、請求人の主張によると、請求項1-5に係る発明は、[0012]に係る次の課題を解決できない。
WTRUにH-RNTIを割り当てる必要があるという課題
HS-SCCHチャネライゼーションコードを構成する必要があるという課題
また、請求項には、HARQ情報を構成する必要が無くなる仕掛けがないから、請求項に係る発明は、HARQ情報を構成する必要があるという課題を解決できない。
よって、請求項に係る発明は、[0012]に係る課題を解決することができる発明ではない。そして、請求項に係る発明により何が達成されるか理解できず、請求項に係る記載は明確ではない。

(2)請求項1-5に係る発明は、明確ではない。(理由1.2)
依然として、請求項には意見書で主張する仕掛け・発明特定事項が存在しない。

この指摘に対して請求人は次の主張をしている。しかし、請求項1、3-4には、主張に係る技術に関連することは記載も示唆もされておらず、この主張は、請求項1、3-4に係る発明に対応する主張ではない。

『ケース3においては、段落番号[0034]に記載されているように、WTRUは、PICHの検出後、これに基づくタイミング(例えば、τPICH_HSPDSCH_MINとτPICH_HSPDSCH_MAXとの間の時間間隔τPICH)で送信されたHS-PDSCHを、共通のH-RNTIを使用して受信することができ、HS-SCCHは必要とされません。従って、発明特定事項は明確であると思料いたします。』

また、請求項2、5に係る「遅延時間」は、意味・内容を明確に特定・把握することができない。そして、その結果、該「遅延時間」が例えば主張に係る「τPICH_HSPDSCH_MIN」、「τPICH_HSPDSCH_MAX」、「τPICH_HSPDSCH_MINとτPICH_HSPDSCH_MAXとの間の時間間隔τPICH」のどれのことかわからない。
そして、請求項2、5においても、拒絶理由・拒絶査定に係る指摘は解消しない。

ところで、意見書で、請求項1-5はケース1及びケース3を含むと主張している。両ケースの内容の一部を確認する。ケース1ではHS-SCCH上で共通のH-RNTIアドレス又はWTRU固有のH-RNTIアドレスを使用する([0030]、ステップ455)。ケース3では共通のH-RNTIアドレスが使用される場合にHS-SCCHが必要とされない([0034])。
すると、ケース1とケース3とは、通信を実現するために必要なアドレス及びチャネルが相違する。そして、請求項1-5の記載は、このように動作原理が異なる2つの技術の両方を明確に特定していると理解できない。

(3)請求項4-5に係る発明は、明確ではない。(理由1.5)
依然として、請求項の「共通高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を受信し、および、前記受信された共通H-RNTIを使用して、前記HS-PDSCH上で前記メッセージを受信する」が、発明の詳細な説明の何に対応し、何のために、どのようにH-RNTIを利用することか、発明の詳細な説明を参照しても理解できず、不明りょうである。つまり、この記載に係る「共通H-RNTIを使用して、前記HS-PDSCH上で前記メッセージを受信する」が、どのような処理か理解できない。

この指摘に対して請求人は次の主張をしている。しかし、この主張を参照しても、請求項の「共通高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を受信し、および、前記受信された共通H-RNTIを使用して、前記HS-PDSCH上で前記メッセージを受信する」が、発明の詳細な説明の何に対応し、何のために、どのようにH-RNTIを利用することか、理解できない。

『ケース1においては、段落番号[0033]-[0034]に記載されているように、PICH上でページングインジケータが送信されると、時間間隔τPICHの後、HS-SCCH上でH-RNTIを使用してメッセージが送信され、メッセージはHS-PDSCHにマップされます。従って、請求項4及び5の記載は、当初明細書の記載から明らかな事項です。』


また、発明の詳細な説明は、請求項5に係る発明を、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
この指摘に対し請求人は意見を主張していない。

(4)請求項6-9に係る発明は、明確ではない。また、発明の詳細な説明は、これらの請求項に係る発明を、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。(理由1.6及び1.7)
依然として、「前記ページングインジケータを検出した後に、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視するステップと、前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視するステップ」が、発明の詳細な説明の何に対応し、何のために、どのようにH-RNTIを利用することか、発明の詳細な説明を参照しても理解できず、不明りょうである。

3-2.根拠条文 第29条第1項第3号及び第2項
・請求項 1-9
・引用文献等 1-2
・特許査定できない理由
請求項1-9に係る発明は引用文献1に記載された発明と同一である。
請求項1-9に係る発明は引用文献2に記載された発明と同一である。

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<引用文献等一覧>
1.3GPP TS 25.331 V8.1.0,2007年12月,pages 44-46, 304-306, 310-311, 699-700,URL,http://www.qtc.jp/3GPP/Specs/25331-810.pdf
2.特表2010-518747号公報



第3 平成27年12月18日付けの手続補正の適否について

本件補正の目的

平成27年12月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、

「 【請求項1】
高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信においてページングを容易にする、無線送信/受信ユニット(WTRU)のための方法であって、
前記WTRUが、CELL_PCHまたはURA_PCH状態において動作しているときに、
ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信するステップと、
前記情報要素を受信した後に、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集するステップと、
候補の数に対応する値kを決定するステップと、
U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算するステップであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)である、ステップと、
前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択するステップと、
ページング機会の間に、スリープモードからアウェイクするステップと、
前記選択されたPICHを介してページングインジケータを監視するステップと、
前記ページングインジケータを検出した後に、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS-PDSCH)上でメッセージを監視するステップと、
前記HS-PDSCH上でメッセージが検出されなかった場合に、前記スリープモードに戻るステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記メッセージを監視するステップは、遅延期間を待った後に、前記メッセージの受信を監視するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信に対して構成された無線送信/受信ユニット(WTRU)であって、前記WTRUは、少なくとも部分的には、
前記WTRUが、CELL_PCHまたはURA_PCH状態において動作しているときに、
ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信し、
前記情報要素を使用して、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集し、
候補の数に対応する値kを決定し、
U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算することであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)であり、および、
前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択し、
ページング機会の間に、スリープモードからアウェイクし、
前記選択されたPICHを介してページングインジケータを監視し、
前記ページングインジケータを検出した後に、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS-PDSCH)上でメッセージを監視し、ならびに、
前記HS-PDSCH上でメッセージが検出されなかった場合に、前記スリープモードに戻る
ように構成されていることを特徴とするWTRU。
【請求項4】
前記WTRUは、
共通高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を受信し、および、
前記受信された共通H-RNTIを使用して、前記HS-PDSCH上で前記メッセージを受信する
ように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のWTRU。
【請求項5】
前記WTRUは、遅延期間を待った後に、前記メッセージの受信を監視するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のWTRU。
【請求項6】
高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信においてページングを容易にする、無線送信/受信ユニット(WTRU)のための方法であって、
前記WTRUが、CELL_PCHおよびURA_PCH状態のうちの1つにあるときに、
ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信するステップと、
前記情報要素を受信した後に、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集するステップと、
候補の数に対応する値kを決定するステップと、
U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算するステップであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)である、ステップと、
前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択するステップと、
ページング機会の間に、スリープモードからアウェイクするステップと、
前記選択されたPICHを介してページングインジケータを監視するステップと、
前記ページングインジケータを検出した後に、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視するステップと、
前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視するステップと、
H-RNTIが受信されない場合に、前記スリープモードに戻るステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記H-RNTIを受信するステップと、
前記受信されたH-RNTIに基づいて、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS-PDSCH)を受信するステップと
をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記H-RNTIを監視するステップは、遅延期間を待った後に、前記H-RNTIの受信に対して高速共有チャネルを監視するステップを備えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信に対して構成された無線送信/受信ユニット(WTRU)であって、前記WTRUは、少なくとも部分的には、
前記WTRUが、CELL_PCHおよびURA_PCH状態のうちの1つにあるときに、
ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信し、
前記情報要素を受信した後に、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集し、 候補の数に対応する値kを決定し、
U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算することであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)であり、および、
前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択し、
ページング機会の間に、スリープモードからアウェイクし、
前記選択されたPICHを介してページングインジケータを監視し、
前記ページングインジケータを検出した後に、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視し、
前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視し、ならびに、
H-RNTIが受信されない場合に、前記スリープモードに戻る
ように構成されていることを特徴とするWTRU。
【請求項10】
前記WTRUは、
前記H-RNTIを受信し、および、
前記受信されたH-RNTIに基づいて、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS-PDSCH)を受信する
ように構成されていることを特徴とする請求項9に記載のWTRU。
【請求項11】
前記WTRUは、遅延期間を待った後に、前記H-RNTIの受信を監視するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載のWTRU。」(以下「補正前発明」という。)

から

「 【請求項1】
高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信においてページングを容易にする、無線送信/受信ユニット(WTRU)のための方法であって、
前記WTRUが、CELL_PCHまたはURA_PCH状態において動作しているときに、
ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信するステップ、
前記情報要素を受信した後に、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集するステップ、
候補の数に対応する値kを決定するステップ、
U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算するステップであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)である、ステップ、および
前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択するステップを備え、さらに、
ページング機会の間に、スリープモードからアウェイクするステップと、
前記選択されたPICHを介してページングインジケータを監視するステップと、
前記ページングインジケータを検出した後に、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS-PDSCH)上でメッセージを監視するステップと、
前記HS-PDSCH上でメッセージが検出されなかった場合に、前記スリープモードに戻るステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記メッセージを監視するステップは、遅延期間を待った後に、前記メッセージの受信
を監視するステップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信に対して構成された無線送信/受信ユニット(WTRU)であって、前記WTRUは、少なくとも部分的には、
前記WTRUが、CELL_PCHまたはURA_PCH状態において動作しているときに、
ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信し、
前記情報要素を使用して、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集し、
候補の数に対応する値kを決定し、
U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算することであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)であり、および、
前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択するように構成され、さらに、
ページング機会の間に、スリープモードからアウェイクし、
前記選択されたPICHを介してページングインジケータを監視し、
前記ページングインジケータを検出した後に、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS-PDSCH)上でメッセージを監視し、ならびに、
前記HS-PDSCH上でメッセージが検出されなかった場合に、前記スリープモードに戻る
ように構成されていることを特徴とするWTRU。
【請求項4】
前記WTRUは、
共通高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を受信し、および、
前記受信された共通H-RNTIを使用して、前記HS-PDSCH上で前記メッセージを受信する
ように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のWTRU。
【請求項5】
前記WTRUは、遅延期間を待った後に、前記メッセージの受信を監視するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のWTRU。
【請求項6】
高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信においてページングを容易にする、無線送信/受信ユニット(WTRU)のための方法であって、
前記WTRUが、CELL_PCHおよびURA_PCH状態のうちの1つにあるときに、
ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信するステップ、
前記情報要素を受信した後に、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集するステップ、
候補の数に対応する値kを決定するステップ、
U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算するステップであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)である、ステップ、および、
前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択するステップを備え、さらに、
ページング機会の間に、スリープモードからアウェイクするステップと、
前記選択されたPICHを介してページングインジケータを監視するステップと、
前記ページングインジケータを検出した後に、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視するステップと、
前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視するステップと、
H-RNTIが受信されない場合に、前記スリープモードに戻るステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記H-RNTIを監視するステップは、遅延期間を待った後に、前記H-RNTIの受信に対して高速共有チャネルを監視するステップを備えていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信に対して構成された無線送信/受信ユニット(WTRU)であって、前記WTRUは、少なくとも部分的には、
前記WTRUが、CELL_PCHおよびURA_PCH状態のうちの1つにあるときに、
ページングインジケータチャネル(PICH)情報を備える、HSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信し、
前記情報要素を受信した後に、HSDPAに対する候補PICHのリストを編集し、 候補の数に対応する値kを決定し、
U_RNTI mod kに等しい選択指数を計算することであって、U_RNTIは、前記WTRUのユニバーサル移動通信システム(UMTS)地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)無線ネットワークトランザクション識別子(U-RNTI)であり、および、
前記選択指数に基づいて、候補PICHの前記リストからPICHを選択するように構成され、さらに、
ページング機会の間に、スリープモードからアウェイクし、
前記選択されたPICHを介してページングインジケータを監視し、
前記ページングインジケータを検出した後に、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視し、
前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視し、ならびに、
H-RNTIが受信されない場合に、前記スリープモードに戻る
ように構成されていることを特徴とするWTRU。
【請求項9】
前記WTRUは、遅延期間を待った後に、前記H-RNTIの受信を監視するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のWTRU。」(以下「補正後発明」という。)

と補正された。

上記補正は、補正前発明の請求項7および10を削除するとともに、補正前発明を特定するために必要な事項である各ステップや動作のうち「前記WTRUが、CELL_PCHまたはURA_PCH状態において動作しているとき」のステップや動作を明確にするものであって、拒絶査定で「明確ではない」と指摘された請求項について行うものであるから、請求項の削除、および明りょうでない記載の釈明に該当する。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号、第4号を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項の規定にも適合する。


第4 本願発明

1.本願発明について

本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。

2.分割の適法性について、

特願2012-195130号は、平成25年10月25日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月28日に手続補正がされ、平成26年3月17日付けで特許査定がされ、平成26年7月22日付けで出願却下の処分がされたものである。

平成25年10月25日付けの拒絶理由通知においては、特願2009-549098号と同一であるから、特許法第39条第2項により特許を受けることができない旨の通知がなされ、特許査定においても「出願日の遡及を認めない旨の表示」は存在しないから、特願2012-195130号の審査において、出願日が遡及したものとして扱われていることは明らかである。

したがって、特願2012-195130号の出願日は2008年2月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年2月5日、米国、2007年3月13日、米国、2007年3月16日、米国)である。

上記によれば、本願についても、出願日は2008年2月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年2月5日、米国、2007年3月13日、米国、2007年3月16日、米国)である。


3.特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号について

3-1.原査定の理由における特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号について

(1)本件補正前の請求項1-11に係る発明が、明確ではなく、発明の詳細な説明は、本件補正前の請求項1-11に係る発明について、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない、とした点について

審査官は、「請求項に係る発明は、[0012]に係る課題を解決することができる発明ではない。そして、請求項に係る発明により何が達成されるか理解できず、請求項に係る記載は明確ではない。」と主張しているが、課題解決の技術については、本願明細書(下線は当審が付与。)に

「【0020】
以下、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)無線通信システム内のCell_PCHおよびURA_PCH状態におけるページングのための装置および方法を説明する。すなわち、3つの好ましいWTRU構成および方法を説明するが、その1つでは、ページングインジケータチャネル(PICH)の使用は任意選択による。第1の好ましい構成および方法では、PICHおよびページンググループが使用される。第2の好ましい構成および方法では、PICHを使用するのではなく、ページンググループが使用され、高速共有制御チャネル(HS-SCCH)シグナリング手順によって、各ページンググループをそれ自体のグループ高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI:HS-DSCH radio network transaction identifier)に関連付けることが可能となる。ただし、PICHは任意選択により、従来の(legacy)WTRUをサポートするために維持することもできる。第3の好ましい構成および方法では、PICHおよび高速ダウンリンク物理共有チャネル(HS-DPSCH)が使用される。
【0021】
以上の3つの好ましい構成および方法のすべてにおいて、ページング制御チャネル(PCCH)をHS-DSCHにマップするためには、高速チャネル構成情報をWTRUに提供しなければならない。この構成情報は、既存のシステム情報ブロック(SIB:system information block)に新しい情報要素を追加し、かつ/または新しいSIBおよび関連するスケジュールを定義することによって、システム情報の一部として基地局のブロードキャストにおいて受信することができる。」

の記載があるから、HSDPAにおけるCell_PCHおよびURA_PCH状態におけるページングにおいては、HS-DSCHにPCCHをマップするにあたり、高速チャネル構成情報をWTRUに提供しなければならないものであるが、その方法の1つとして、PICHおよびHS-DPSCHを使用する方法が存在することが記載されている。

一方、本願発明は、受信したPICHの情報要素からPICHを選択し、選択したPICHを解してページングインジケータを監視し、ページングインジケータを検出した後に、HS-PDSCH上でのメッセージを監視することを構成要件としているから、HSDPSにおけるCell_PCHおよびURA_PCH状態におけるページングの方法の1つが記載されていることは明らかである。

したがって、本願発明が明確でないとも、発明の詳細な説明は、本願発明について、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとも、することはできない。

(2)本件補正前の請求項1-5に係る発明は、明確ではない、とした点について

審査官は、「請求項には、上記主張に対応する仕掛け・発明特定事項(従来技術において必須のHS-SCCHを必要としない代わりに採用した仕掛け)が存在しない。請求項には、例えば、WTRUがHS-SCCHを受信しないでHS-PDSCHを受信するために、当該WTRUが表1に示した情報要素を入手する仕掛けを備えることが存在しない。」と主張しているものの、本願明細書(下線は当審が付与。)に

「【0025】
表1に示すHSDPA関連のPICH情報要素は、CELL_FACH状態で動作するWTRUのために使用する情報要素DL-HSPDSCHシステム情報と共にブロードキャストし、また受信することもでき、あるいはこれらの要素は、CELL_PCHまたはURA_PCH状態で動作するWTRUだけにブロードキャストしてもよい。」

と記載しているように、表1に示した情報要素は、「PICH情報要素」であることは明らかである。

そして、本願発明は、「PICH情報を備えるHSDPA関連のPICHの情報要素を、基地局から受信」することを構成要件の1つとしているから、審査官が主張する「表1に示した情報要素を入手する仕掛け」を備えていることは明らかである。

したがって、本願発明が明確でないとすることはできない。

(3)本件補正前の請求項4-5に係る発明は、明確ではない、とした点について

審査官は、「発明の詳細な説明の何に対応し、何のために、どのようにH-RNTIを利用することか、発明の詳細な説明を参照しても理解できず、不明りょうである。」と主張しているものの、本願明細書(下線は当審が付与。)に

「【0034】
あるいは、図4に示すケース3で、PICHは使用されるが、HS-SCCHは不要である。Iubインターフェースを介してCRNC410から、ページングタイプIメッセージなどのメッセージを受信すると、基地局415は、Uuインターフェースを介してPICH上でWTRU-L1 425にメッセージを送信する(ステップ485)。式(3)を参照して以下に述べるようにτPICH_HSPDSCH_MINとτPICH_HSPDSCH_MAXとの間の時間間隔τPICHの後、基地局415は、HS-PDSCHを送信する(ステップ490)。WTRU420が共通のH-RNTIで動作するように構成されている(換言すると、専用のH-RNTIが割り当てられていない)場合、WTRU-L1 425は、PICHの検出後、τPICH_HSSCCH_MINとτPICH_HSSCCH_MAXとの間に送信された送信済みHS-PDSCHを受信する。すなわち、HS-SCCHは必要とされない。HS-PDSCHのうちの1つまたはいずれかのソフト合成(soft-combination)から肯定的なCRCが得られる場合、受信したメッセージは、上位層に転送される(ステップ495)。」

と記載されているように、WTRUは「共通のH-RNTI」を用いて、PICHを検出し、HS-PDSCHを受信することが記載されているから、本願発明の構成要素である「共通H-RNTI」について、どのように利用するかは明細書に記載されている。

(4)本件補正前の請求項6-9に係る発明は、明確ではなく、発明の詳細な説明は、これらの請求項に係る発明を、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない、とした点について

審査官は、「依然として、「前記ページングインジケータを検出した後に、高速ダウンリンク共有チャネル(HS-DSCH)無線ネットワークトランザクション識別子(H-RNTI)を監視するステップと、前記受信されたH-RNTIを使用して、高速共有チャネルを監視するステップ」が、発明の詳細な説明の何に対応し、何のために、どのようにH-RNTIを利用することか、発明の詳細な説明を参照しても理解できず、不明りょうである。」と主張しているものの、(2)で記載したと同様に、共通H-RNTIについては、どのように利用するかは明細書に記載されている。


3-2.前置報告書における特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号について

上記(1)乃至(4)で記載した理由と同様の理由により、本願発明に対する特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号については、本願発明が明確でないとも、発明の詳細な説明が当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとも、することはできない。


3-3.小括

したがって、特許法第36条第4項第1号及び第6号第2号に規定する要件を満たしていない、とすることはできない。


4.特許法第29条第1項第3号及び第2項について

原査定の拒絶の理由に引用された3GPP TS25.331 V8.1.0(2007-12)は2007年12月の公開であり、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特表2010-518747号公報は2010年5月27日の公表であって、パリ条約による優先権主張の日の後に公開された文献である一方、本願発明に関する記載は、少なくとも2007年3月16日の米国出願に記載されているから、パリ条約第4条Bにより、特許法第29条第1項第3号の判断に用いる文献に該当しないことは明らかである。

したがって、特許法第29条第1項第3号には該当しない。
同様に、特許法第29条第2項にも該当しない。


第5 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-10-11 
出願番号 特願2014-90234(P2014-90234)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 536- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 113- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 北岡 浩
吉田 隆之
発明の名称 高速ダウンリンク共有チャネルを介したページング  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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