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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C22C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C22C
管理番号 1320182
異議申立番号 異議2015-700321  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-17 
確定日 2016-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5737951号発明「Ti含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルおよび製造法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5737951号(請求項の数9)の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔6?9〕について訂正することを認める。 特許第5737951号の請求項1?9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5737951号(請求項の数9)に係る特許出願(特願2011- 855号)は、平成23年 1月 5日に出願され、平成27年 5月 1日に特許権の設定の登録がなされたものである。
その後、本件特許について、平成27年12月17日に特許異議申立人 杉本 ゆみ子 より特許異議の申立てがなされ、平成28年 2月 8日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年 4月 7日に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のアのとおりである。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項6に「巻取終了時から5分以上経過後で」とあるのを、「そのコイルを巻き取り終了時から5分以上大気中に放置した後で」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7?9も同様に訂正する。)。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項6では、「巻取終了時から5分以上経過後で」と、その間のコイルの取扱について特定しないものであるのを、このコイルの取扱について、「大気中に放置する」ことを特定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、この訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に該当する。

(2)一群の請求項であるか否か
本件訂正前の請求項6を、本件訂正前の請求項7?9はそれぞれ引用しているから、本件訂正前の請求項6?9に対応する本件訂正後の請求項6?9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(3)新規事項(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正)であるか否か
訂正事項1は、訂正前の請求項6では、「巻取終了時から5分以上経過後で」と、その間のコイルの取扱について特定しないものであるのを、このコイルの取扱について、「大気中に放置する」ことを特定するものであるが、願書に添付した明細書には、「巻取り後には、そのコイルを直ちに水冷するのではなく、しばらくの間、放置(大気中に保持)することが必要である。」(【0036】)、「水槽浸漬を行う場合には、巻取後直ちに浸漬を開始するのではなく、5分以上の放置時間(大気に曝している時間)を設けた後、浸漬を開始した。」(【0040】)と記載されており、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。

(4)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項6では、「巻取終了時から5分以上経過後で」と、その間のコイルの取扱について特定しないものであるのを、このコイルの取扱について、「大気中に放置する」ことを特定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔6?9〕について、訂正することを認める。

第3 取消理由についての判断
1 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件特許第5737951号の請求項1?9に係る発明(以下「本件特許発明1?9」という。)は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
質量%で、C:0.030%以下、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.040%以下、Cr:10.00?25.00%、N:0.030%以下、Ti:0.10?0.50%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、硬さが180HV以下、25℃におけるシャルピー衝撃値が20J/cm^(2)以上に調整されている板厚5.0?12.0mmのTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイル。
【請求項2】
さらに、Ni:2.00%以下、Mo:2.50%以下、Cu:1.80%以下、Co:0.50%以下、Al:0.50%以下、W:1.80%以下、V:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.0050%以下、REM(希土類元素):0.100%以下、Ca:0.0050%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項1に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイル。
【請求項3】
25℃におけるシャルピー衝撃値が22.5J/cm^(2)以上に調整されている請求項1または2に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイル。
【請求項4】
質量%で、C:0.030%以下、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.040%以下、Cr:10.00?25.00%、N:0.030%以下、Ti:0.10?0.50%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、硬さが165HV以下、25℃におけるシャルピー衝撃値が15J/cm^(2)以上に調整されている板厚5.0?12.0mmのTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延焼鈍コイル。
【請求項5】
さらに、Ni:2.00%以下、Mo:2.50%以下、Cu:1.80%以下、Co:0.50%以下、Al:0.50%以下、W:1.80%以下、V:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.0050%以下、REM(希土類元素):0.100%以下、Ca:0.0050%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項4に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延焼鈍コイル。
【請求項6】
質量%で、C:0.030%以下、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.040%以下、Cr:10.00?25.00%、N:0.030%以下、Ti:0.10?0.50%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成のステンレス鋼スラブを熱間圧延して板厚5.0?12.0mmとしたのち巻取温度570℃以上で巻取ってコイルとし、そのコイルを巻き取り終了時から5分以上大気中に放置した後で、かつコイル最外周の表面温度が550℃以上である時にコイルを水中に浸漬し、当該水中で15分以上保持することにより、硬さが180HV以下、25℃におけるシャルピー衝撃値が20J/cm^(2)以上である熱延コイルを製造する、Ti含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルの製造法。
【請求項7】
ステンレス鋼スラブが、さらに、Ni:2.00%以下、Mo:2.50%以下、Cu:1.80%以下、Co:0.50%以下、Al:0.50%以下、W:1.80%以下、V:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.0050%以下、REM(希土類元素):0.100%以下、Ca:0.0050%以下の1種以上を含有する組成を有するものである請求項6に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルの製造法。
【請求項8】
巻取温度を730℃以上とする請求項6または7に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルの製造法。
【請求項9】
請求項6?8のいずれかに記載の製造法で得られたTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルに対して、連続焼鈍酸洗ラインにて焼鈍酸洗を施すことにより、硬さが165HV以下、25℃におけるシャルピー衝撃値が15J/cm^(2)以上である熱延焼鈍コイルを製造する、Ti含有フェライト系ステンレス鋼熱延焼鈍コイルの製造法。

2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項6?9に係る発明に対して、平成28年 2月 8日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。

本件訂正前の請求項6?9に係る発明がを解決しようとする課題は、【0008】の記載からみて、「熱延コイルや熱延焼鈍コイルを展開して通板するラインにおいて材料割れの問題が安定して防止できるに足る靱性・延性を有する、厚ゲージのTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルあるいは熱延焼鈍コイルを提供すること」であり、発明の詳細な説明の【0009】?【0011】、【0036】、【0039】?【0054】の記載からみて、上記課題を解決するためには、コイルを大気中に放置し、その放置時間を利用して熱延ひずみを除去するための「ひずみ取り焼鈍」を実施することが必要であるといえる。
一方、訂正前の請求項6?9に係る発明は、熱間圧延して巻取ったコイルについて「巻取終了時から5分以上経過後で、かつコイル最外周の表面温度が550℃である時にコイルを水中に浸漬」することを発明特定事項とするものであるが、巻取終了後のコイルの取扱について特定するものではなく、コイルを大気中に放置しないものを包含し、その放置時間を利用して「ひずみ取り焼鈍」の効果を得られないものを包含するといえるから、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段を反映しているとはいえず、本件訂正前の請求項6?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
よって、本件訂正前の請求項6?9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3.判断
本件特許発明6?9は、「そのコイルを巻き取り終了時から5分以上大気中に放置した後で」との発明特定事項を有し、コイルの取扱について、「大気中に放置する」ことが特定され、これにより、その放置時間を利用して「ひずみ取り焼鈍」の効果を得られないものを包含しないものに特定されたから、本件特許発明6?9に係る特許が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、上記取消理由によっては、本件請求項6?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.030%以下、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.040%以下、Cr:10.00?25.00%、N:0.030%以下、Ti:0.10?0.50%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、硬さが180HV以下、25℃におけるシャルピー衝撃値が20J/cm^(2)以上に調整されている板厚5.0?12.0mmのTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイル。
【請求項2】
さらに、Ni:2.00%以下、Mo:2.50%以下、Cu:1.80%以下、Co:0.50%以下、Al:0.50%以下、W:1.80%以下、V:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.0050%以下、REM(希土類元素):0.100%以下、Ca:0.0050%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項1に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイル。
【請求項3】
25℃におけるシャルピー衝撃値が22.5J/cm^(2)以上に調整されている請求項1または2に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイル。
【請求項4】
質量%で、C:0.030%以下、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.040%以下、Cr:10.00?25.00%、N:0.030%以下、Ti:0.10?0.50%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、硬さが165HV以下、25℃におけるシャルピー衝撃値が15J/cm^(2)以上に調整されている板厚5.0?12.0mmのTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延焼鈍コイル。
【請求項5】
さらに、Ni:2.00%以下、Mo:2.50%以下、Cu:1.80%以下、Co:0.50%以下、Al:0.50%以下、W:1.80%以下、V:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.0050%以下、REM(希土類元素):0.100%以下、Ca:0.0050%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項4に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延焼鈍コイル。
【請求項6】
質量%で、C:0.030%以下、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.050%以下、S:0.040%以下、Cr:10.00?25.00%、N:0.030%以下、Ti:0.10?0.50%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成のステンレス鋼スラブを熱間圧延して板厚5.0?12.0mmとしたのち巻取温度570℃以上で巻取ってコイルとし、そのコイルを巻取終了時から5分以上大気中に放置した後で、かつコイル最外周の表面温度が550℃以上である時にコイルを水中に浸漬し、当該水中で15分以上保持することにより、硬さが180HV以下、25℃におけるシャルピー衝撃値が20J/cm^(2)以上である熱延コイルを製造する、Ti含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルの製造法。
【請求項7】
ステンレス鋼スラブが、さらに、Ni:2.00%以下、Mo:2.50%以下、Cu:1.80%以下、Co:0.50%以下、Al:0.50%以下、W:1.80%以下、V:0.30%以下、Zr:0.20%以下、B:0.0050%以下、REM(希土類元素):0.100%以下、Ca:0.0050%以下の1種以上を含有する組成を有するものである請求項6に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルの製造法。
【請求項8】
巻取温度を730℃以上とする請求項6または7に記載のTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルの製造法。
【請求項9】
請求項6?8のいずれかに記載の製造法で得られたTi含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルに対して、連続焼鈍酸洗ラインにて焼鈍酸洗を施すことにより、硬さが165HV以下、25℃におけるシャルピー衝撃値が15J/cm^(2)以上である熱延焼鈍コイルを製造する、Ti含有フェライト系ステンレス鋼熱延焼鈍コイルの製造法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-06-23 
出願番号 特願2011-855(P2011-855)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C22C)
P 1 651・ 121- YAA (C22C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 守安 太郎  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 木村 孔一
富永 泰規
登録日 2015-05-01 
登録番号 特許第5737951号(P5737951)
権利者 日新製鋼株式会社
発明の名称 Ti含有フェライト系ステンレス鋼熱延コイルおよび製造法  
代理人 小松 高  
代理人 小松 高  
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