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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B32B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 B32B 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 B32B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B32B |
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管理番号 | 1320192 |
異議申立番号 | 異議2015-700052 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-10-01 |
確定日 | 2016-07-28 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5695253号発明「銅張積層板および該銅張積層板を用いたフレキシブルプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5695253号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第5695253号の請求項1?5に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5695253号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成26年6月23日に特許出願され、平成27年2月13日にその特許権の設定登録がされた。 その後、請求項1?5に係る特許について、特許異議申立人須藤晃伸(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年2月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年5月24日(特許庁受付)に意見書の提出及び訂正の請求があり、平成28年5月26日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知がなされたが、その指定期間内に申立人からの応答はなかった。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 ア.請求項1の記載を 「樹脂フィルムと銅箔とが直接積層された銅張積層板であって、 前記樹脂フィルムがポリイミドフィルムで、前記銅箔が圧延銅箔であり、 前記樹脂フィルムに対向する前記銅箔の接合面には、平均厚さが0.05μm以上0.3μm以下の粗化銅めっき層が形成されており、 前記樹脂フィルムと前記銅箔とのピール強度が0.5 N/mm以上であり、 前記銅箔の一部が化学エッチング除去されたとき、化学エッチング除去後の残存した前記樹脂フィルムにおいて、式「V_(t) = (T_(t) - T_(d)) × C/100」(T_(t):全光線透過率(単位:%)、T_(d):拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義される透過視認度V_(t)が「V_(t)≧10%」であることを特徴とする銅張積層板。」から、 「樹脂フィルムと銅箔とが直接積層された銅張積層板であって、 前記樹脂フィルムがポリイミドフィルムで、前記銅箔が圧延銅箔であり、 前記樹脂フィルムに対向する前記銅箔の接合面には、平均厚さが0.05μm以上0.3μm以下の粗化銅めっき層が形成されており、 前記銅箔と前記粗化銅めっき層との間に下地銅めっき層が形成されており、 前記樹脂フィルムと前記銅箔とのピール強度が0.5 N/mm以上であり、 前記銅箔の一部が化学エッチング除去されたとき、化学エッチング除去後の残存した前記樹脂フィルムにおいて、式「V_(t) = (T_(t) - T_(d)) × C/100」(T_(t):全光線透過率(単位:%)、T_(d):拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義される透過視認度V_(t)が「V_(t)≧10%」であることを特徴とする銅張積層板。」に訂正する。 イ.請求項2の「前記銅箔と前記粗化銅めっき層との間に下地銅めっき層が形成されており、」という記載を削除する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記(1)ア.の訂正は、請求項1に係る発明に請求項2で特定する事項の一部を加入するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 上記(1)イ.の訂正は、上記(1)ア.の訂正に伴い、請求項2で特定する事項のうち、請求項1に係る発明に加入した結果、重複することとなった事項を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 そして、請求項2?5は請求項1を引用する請求項であるから、請求項1?5は一群の請求項であるところ、これらの訂正は一群の請求項1?5に対し請求されたものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 樹脂フィルムと銅箔とが直接積層された銅張積層板であって、 前記樹脂フィルムがポリイミドフィルムで、前記銅箔が圧延銅箔であり、 前記樹脂フィルムに対向する前記銅箔の接合面には、平均厚さが0.05μm以上0.3μm以下の粗化銅めっき層が形成されており、 前記銅箔と前記粗化銅めっき層との間に下地銅めっき層が形成されており、 前記樹脂フィルムと前記銅箔とのピール強度が0.5 N/mm以上であり、 前記銅箔の一部が化学エッチング除去されたとき、化学エッチング除去後の残存した前記樹脂フィルムにおいて、式「V_(t) = (T_(t) - T_(d)) × C/100」(T_(t):全光線透過率(単位:%)、T_(d):拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義される透過視認度V_(t)が「V_(t)≧10%」であることを特徴とする銅張積層板。 【請求項2】 請求項1に記載の銅張積層板において、 前記下地銅めっき層の平均厚さが0.1μm以上0.6μm以下であることを特徴とする銅張積層板。 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の銅張積層板において、 前記透過視認度V_(t)が「V_(t)≧20%」であることを特徴とする銅張積層板。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の銅張積層板の前記銅箔の一部が化学エッチング除去されて回路配線が形成されたフレキシブルプリント配線板であって、 化学エッチング除去後の残存した前記樹脂フィルムにおいて、式「V_(t) = (T_(t) - T_(d)) × C/100」(T_(t):全光線透過率(単位:%)、T_(d):拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義される透過視認度V_(t)が「V_(t)≧10%」であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。 【請求項5】 請求項4に記載のフレキシブルプリント配線板において、 前記透過視認度V_(t)が「V_(t)≧20%」であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1?5に係る特許に対して、通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 《刊行物》 甲2:国際公開第2012/132576号 甲3:特開2010-37585号公報 甲4:特開2011-179053号公報 ア.請求項1に係る発明は、下地銅めっき層を有していないものまで含んでおり、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない(以下、「取消理由ア」という。)。 イ.請求項1に係る発明は、粗化処理液中にFeを添加しない場合を含んでおり、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない(以下、「取消理由イ」という。)。 ウ.請求項1?5に係る発明は、甲2発明、甲3発明、又は、甲4発明と実質的に同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、あるいは、甲2発明、甲3発明、又は、甲4発明から容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、「取消理由ウ」という。)。 (3)判断 ア.取消理由アについて 請求項1に係る発明は、訂正により、下地銅めっき層を有するものとなった。 よって、取消理由アによっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことができない。 イ.取消理由イについて 本件明細書の段落[0080]以降には、粗化処理液中にFeを添加した場合の、請求項1?5に係る発明に対応する実施例が記載されている。 一方、本件明細書の段落[0068]には、粗化処理液中に添加するものとして、Fe以外に、Mo、Ni、Co、Cr、Zn、Wがあることが記載されている。 また、甲3の段落[0039]、[0051]の記載や、意見書に乙1として挙げられている特開2014-111814号公報の段落[0036]、[0069]の記載によると、所望の粗化形状を得るために、粗化処理液中にMo、Co、Ni、W、ZnのようなFe以外の金属を適宜の形態で添加することは、本件特許の出願時において当業者が通常行う程度の技術常識であったと認められる。 よって、本件明細書の上記記載事項、及び、上記技術常識から判断すると、粗化処理液中にFeを添加しない場合でも、Mo、Ni、Co、Cr、Zn、Wのような金属を適宜添加することで粗化形状を所望のものとすることができることは、当業者には自明であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとすることはできない。 また、粗化処理液中にFe以外の金属を添加することによっても粗化制御することができることは技術常識であるところ、粗化処理液中にFeを添加することが請求項1に特定されていないことをもって、請求項1?5に係る発明が、発明の詳細な説明に記載したものでないとまではいえない。 よって、取消理由イによっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことができない。 ウ.取消理由ウについて 甲2?4のいずれにも、請求項1?5に係る発明の発明特定事項である「前記銅箔の一部が化学エッチング除去されたとき、化学エッチング除去後の残存した前記樹脂フィルムにおいて、式「V_(t) = (T_(t) - T_(d)) × C/100」(T_(t):全光線透過率(単位:%)、T_(d):拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義される透過視認度V_(t)が「V_(t)≧10%」である」という事項は記載されていない。 また、甲2?4が上記事項を備えることが自明のことともいえない。 そして、請求項1?5に係る発明は、甲2?4のいずれにも記載がない上記事項を発明特定事項とすることで、「樹脂フィルムと銅箔との優れた接合性が維持され、かつ銅箔を化学エッチング除去して露出させた樹脂フィルム部分での透過視認性に関して、樹脂フィルムと位置決めマーカーとの配置関係によらず、優れた透過視認性を確保できる」という効果(本件明細書の段落[0128]を参照。)を奏するものである。 よって、請求項1?5に係る発明は、甲2発明、甲3発明、又は、甲4発明と実質的に同一であるとすることはできず、甲2発明、甲3発明、又は、甲4発明から容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 よって、取消理由ウによっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことができない。 なお、異議申立書に甲1として挙げられている特公平5-82996号公報にも、上記事項は記載されていない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことができない。 また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 樹脂フィルムと銅箔とが直接積層された銅張積層板であって、 前記樹脂フィルムがポリイミドフィルムで、前記銅箔が圧延銅箔であり、 前記樹脂フィルムに対向する前記銅箔の接合面には、平均厚さが0.05μm以上0.3μm以下の粗化銅めっき層が形成されており、 前記銅箔と前記粗化銅めっき層との間に下地銅めっき層が形成されており、 前記樹脂フィルムと前記銅箔とのピール強度が0.5N/mm以上であり、 前記銅箔の一部が化学エッチング除去されたとき、化学エッチング除去後の残存した前記樹脂フィルムにおいて、式「V_(t)=(T_(t)-T_(d))×C/100」(T_(t):全光線透過率(単位:%)、T_(d):拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義される透過視認度V_(t)が「V_(t)≧10%」であることを特徴とする銅張積層板。 【請求項2】 請求項1に記載の銅張積層板において、 前記下地銅めっき層の平均厚さが0.1μm以上0.6μm以下であることを特徴とする銅張積層板。 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の銅張積層板において、 前記透過視認度V_(t)が「V_(t)≧20%」であることを特徴とする銅張積層板。 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の銅張積層板の前記銅箔の一部が化学エッチング除去されて回路配線が形成されたフレキシブルプリント配線板であって、 化学エッチング除去後の残存した前記樹脂フィルムにおいて、式「V_(t)=(T_(t)-T_(d))×C/100」(T_(t):全光線透過率(単位:%)、T_(d):拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義される透過視認度V_(t)が「V_(t)≧10%」であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。 【請求項5】 請求項4に記載のフレキシブルプリント配線板において、 前記透過視認度V_(t)が「V_(t)≧20%」であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-07-20 |
出願番号 | 特願2014-127997(P2014-127997) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B) P 1 651・ 851- YAA (B32B) P 1 651・ 853- YAA (B32B) P 1 651・ 536- YAA (B32B) P 1 651・ 121- YAA (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岸 進 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
見目 省二 山田 由希子 |
登録日 | 2015-02-13 |
登録番号 | 特許第5695253号(P5695253) |
権利者 | 長春石油化學股▲分▼有限公司 |
発明の名称 | 銅張積層板および該銅張積層板を用いたフレキシブルプリント配線板 |
代理人 | 特許業務法人津国 |
代理人 | 特許業務法人 津国 |