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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04L
管理番号 1320207
異議申立番号 異議2016-700546  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-16 
確定日 2016-10-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第5833799号発明「プラガブルパケットマスタクロック」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5833799号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5833799号の請求項1ないし19に係る特許についての出願は,2013年9月23日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理 2012年9月25日 米国)に国際出願され,平成27年11月6日に設定登録がされ,その後,平成28年6月16日にその特許に対し,特許異議申立人 オシロクアルツ フィンランド オサケユイチアにより特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許
特許第5833799号の請求項1ないし19に係る発明(以下,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明19」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
タイミング情報を提供する装置であって,
基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)と,
前記ToD及び前記基準周波数を受信し,かつ前記ToD及び前記基準周波数に対応するタイミングオーバーパケットプロシージャに基づいて,タイミングをスレーブクロックへ分配するように構成されるパケットマスタクロックと,
前記PRTC及び前記パケットマスタクロックの両方を収容するハウジングであって,前記ハウジングが,前記パケットマスタクロックをパケット交換ネットワーク(PSN)へ接続するために既存のスモールフォームファクタ(SFP)準拠のケージに差し込むことに適した,ハウジングと,を備える装置。
【請求項2】
前記PRTCは,
グローバルサテライトナビゲーションシステム(GNSS)衛星によって送信されたGNSS伝送を受信するGNSSレシーバと,
前記基準周波数を生成するために,受信された前記GNSS伝送を処理するGNSSプロセッサと,を備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記PRTCは,前記基準周波数を生成する内部発振器を備える請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記PRTCは,外部周波数源から前記基準周波数を受信するための入力を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記PRTCは,前記装置が差し込まれるSFPケージを含む前記SFPのネットワーク構成要素のバックプレーンの物理データ速度に対応する前記基準周波数を生成するクロックエクストラクタを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記PRTCは,
グローバルサテライトナビゲーションシステム(GNSS)衛星によって送信されたGNSS伝送を受信するGNSSレシーバと,
前記ToDを生成するために,受信された前記GNSS伝送を処理するGNSSプロセッサと,を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記PRTCは,外部源からの基準ToDを受信するための入力を含む請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記PRTCは,複数の予想基準周波数を受信し,前記複数の予想基準周波数から前記基準周波数を選択する周波数セレクタを備える請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記PRTCは,
グローバルサテライトナビゲーションシステム(GNSS)衛星によって送信されたGNSS伝送を受信するGNSSグローバルサテライトナビゲーションシステムレシーバと,
前記複数の基準周波数のうちの1つの予想基準周波数を生成するために,受信された前記GNSS伝送を処理するGNSSプロセッサと,を備える請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記PRTCは,前記複数の基準周波数のうちの1つの予想基準周波数を生成する内部発振器を備える請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記PRTCは,外部周波数源から前記複数の基準周波数のうちの1つの予想基準周波数を受信するための入力を含む請求項8から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記PRTCは,前記装置が差し込まれる前記SFPケージを含む前記SFPのネットワーク構成要素のバックプレーンの物理データ速度に対応する前記複数の基準周波数のうちの1つの予想基準周波数を生成するクロックエクストラクタを含む請求項8から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記PRTCは,複数の予想基準ToDの中から1つの基準ToDを選択するToDセレクタを備える請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記PRTCは,
グローバルサテライトナビゲーションシステム(GNSS)衛星によって送信されたGNSS伝送を受信するGNSSレシーバと,
前記複数の基準ToDのうちの1つの予想基準ToDを生成するために,受信された前記GNSS伝送を処理するGNSSプロセッサと,を備える請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記PRTCは,外部源からの前記複数のToDのうちの1つの予想基準ToDを受信するための入力を含む請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
前記タイミングオーバーパケットプロシージャは,IEEE-1588-2008に準拠する請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記タイミングオーバーパケットプロシージャは,ネットワークタイムプロトコル(NTP)に準拠する請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の複数の前記装置を備えるPSN。
【請求項19】
前記複数の装置のうちの1つの装置に含まれるパケットマスタクロックによって分配されるタイミング情報を受信するスレーブクロックを備える請求項18に記載のPSN。」

第3 申立理由の概要
異議申立人は,以下の証拠を提出し,本件特許発明1ないし19は,以下のとおり,特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してされたものであるから,本件特許発明1ないし19に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

1.証拠
異議申立人が提出した証拠は以下のとおりである。(括弧内は,著者,公知日,URLを示す。)

(1)甲第1号証
米国特許出願公開第2011/0200051号明細書
(2011年8月18日)
(2)甲第2号証
Draft new Recommendation ITU-T G.8272/Y.1367
(ITU-T/2012年9月21日)
(3)甲第3号証
TimeProvider 5000 IEEE 1588 Grand Master Clock / NTP Server
(Symmetricom Inc./2011年9月)
(4)甲第4号証
IEEE-1588 Standard for a Precision Clock Synchronization Protocol for Networked Measurement and Control Systems
(Agilent Technologies, Inc./2005年10月10日)
(5)甲第5号証
欧州特許出願公開第1453346号明細書
(2004年9月1日)
(6)甲第6号証
The evolution of the pluggable module, HDTV launched fiber into the broadcast mainstream (2012年8月1日)(URL: http://www.tvtechnology.com/multiformat/0112/the-evolution-of-the-pluggable-module/267340)
(7)甲第7号証
国際公開第2006/092781号
(2006年9月8日)
(8)甲第8号証
OE Solutions and AimValley announce Smart SFP^(TM) with OC-3/STM-1 over Packet
(2012年4月12日)(URL:http://www.aimvalley.com/documents/PR_AimValley_OESolutions_TSOP_ENG_final_v2.pdf#zoom=100)
(9)甲第9号証
フィンランド国実用新案登録第7530号明細書
(2007年6月12日)
(10)甲第10号証
TimeSource 3500 GPS Primary Reference Source
(Symmetricom, Inc./2007年10月)
(11)甲第11号証
Synchronous Ethernet: A Method to Transport Synchronization
(IEEE Communications Society/2008年9月)
(12)甲第12号証
Recommendation ITU-T G.8271/Y.1366
(ITU-T/2012年2月)

2.本件特許発明と,異議申立理由及び証拠との関係
本件特許発明の各々について,特許異議申立理由と,引用する証拠との関係は次のとおりである。

(1)本件特許発明1
理由1-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由1-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
理由1-3:特許法第29条第2項に対して,甲第2,1及び5ないし8号証
理由1-4:特許法第29条第2項に対して,甲第3,1及び5ないし8号証
(2)本件特許発明2
理由2:特許法第29条第2項に対して,甲第1,2,9及び10号証
(3)本件特許発明3
理由3-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由3-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(4)本件特許発明4
理由4-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由4-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(5)本件特許発明5
理由5:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証及び甲第11号証
(6)本件特許発明6
理由6:特許法第29条第2項に対して,甲第1,2,9及び10号証
(7)本件特許発明7
理由7-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由7-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(8)本件特許発明8
理由8-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由8-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(9)本件特許発明9
理由9:特許法第29条第2項に対して,甲第1,2,9及び10号証
(10)本件特許発明10
理由10:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(11)本件特許発明11
理由11-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由11-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(12)本件特許発明12
理由12:特許法第29条第2項に対して,甲第1及び11号証
(13)本件特許発明13
理由13-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由13-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(14)本件特許発明14
理由14:特許法第29条第2項に対して,甲第1,2,9及び10号証
(15)本件特許発明15
理由15-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由15-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(16)本件特許発明16
理由16-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由16-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(17)本件特許発明17
理由17-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由17-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(18)本件特許発明18
理由18-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由18-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証
(19)本件特許発明19
理由19-1:特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証
理由19-2:特許法第29条第2項に対して,甲第1号証

第4 証拠の記載内容(証拠能力の有無)
1 甲第1号証
甲第1号証(米国特許出願公開第2011/0200051号明細書)(公知日:2011年8月18日)には,ETHERNET NETWORK SYNCHRONIZATION SYSTEMS AND METHODS(発明の名称:[当審仮訳]イーサネットネットワーク同期システム及び方法)に関し,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「[0001] The present invention relates generally to Ethernet networks. More particularly, the present invention relates to Ethernet network synchronization systems and methods utilizing Synchronous Ethernet (referred to herein as "Sync-E") and various IEEE 1588 Precision Time Protocol (PTP) standards in a combined fashion along with a set of rules on node placement, such as Boundary Clock (BC) nodes and Sync-E nodes, a clock selection algorithm, a holdover algorithm, and the like.」(第1ページ)
([当審仮訳] [0001] 本発明は,一般的にはイーサネットネットワークに関する。より具体的には,本発明は,シンクロナスイーサネット(以下,「Sync-E」とする。)及び様々なIEEE 1588 プレシジョンタイムプロトコル(PTP)の規格を,バウンダリークロック(BC)ノード,Sync-Eノード,クロック選択アルゴリズム,及びホールドオーバーアルゴリズム等のノード配置に関する一式の取り決めと共に組み合わせた方式で利用した,イーサネットネットワーク同期システム及び方法に関する。)

(2)「[0003] Alternatively IEEE 1588 can be used to distribute timing. As described herein, IEEE 1588 or just #1588# is used to refer to IEEE 1588-2002, 1588v2-2008 Precision Time Protocol (PTP) standards and any variations thereof. PTP operates on the principle of timestamps applied to packets that are sent from a timing source (reference master) to a timing slave. Timestamps are applied in order to allow a slave to synchronize to a source. A receiver slave thus can recreate the original clock by reading these timestamps and adapting its own clock to them. (i.e., typical the source clock is stratum compliant and Building Integrated Timing Supply (BITS) referenced). Timing means both frequency and phase/Time of Day (ToD). (以下省略)」(第1ページ)
([当審仮訳][0003] 代替として,タイミングを分配するためにIEEE 1588を用いることができる。ここで述べられている様に,IEEE 1588又は単に「1588」は,IEEE 1588-2002,1588v2-2008プレシジョンタイムプロトコル(PTP)標準及びその任意の派生を意味するものとする。PTPは,タイミングソース(リファレンスマスタ)タイミングスレーブに送信されるパケットに適用されるタイムスタンプの原理に基づいて動作する。タイムスタンプは,スレーブをソースに同期させるために適用される。この様に,レシーバスレーブは,これらタイムスタンプを読み込み且つ自身のクロックをこれらタイムスタンプに合わせることによって,オリジナルのクロックを再現することができる。(すなわち,典型的には,ソースクロックは,層に準拠しており,ビルディングインテグレーテッドタイミングサプライ(BITS)が参照される。)タイミングは,周波数及び位相/時刻(ToD)の両者を意味する。(以下省略))

(3)「[0004] Equivalently to 1588 PTP, Network Time Protocol (NTP) (such as NTPv4 or other variants) may be used.」(第1ページ)
([当審仮訳][0004] 1588 PTPと同等に,ネットワークタイムプロトコル(NTP)(例えば,NTPv4又は他の派生物)を使用してもよい。)

(4)「[0005](…中略…)The clock regeneration node may be configured to regenerate Sync-E for downstream nodes without requiring Sync-E upstream, and wherein the reference clock is according to the IEEE 1588 protocols and operable to transverse asynchronous nodes while being rebuilt at the clock regeneration node.」(第1ページ)
([当審仮訳][0005](…中略…)クロック再生ノードは,上流のSync-Eを必要とせずに下流ノードのためにSync-Eを再生するように構成されても良い。そして,基準クロックは,IEEE 1588プロトコルに従い,クロック再生ノードで再構築される間に非同期のノードを通過するように動作可能である。」(段落[0005]第18?23行目)

(5)「[0006](…中略…)The Boundary Clock node is configured to receive a reference clock in an Ethernet connection previously traversing asynchronous nodes and to regenerate the reference clock.」(第2ページ)
([当審仮訳](…中略…)バウンダリークロックノードは,以前は非同期ノードを通過していたリファレンスクロックをイーサネット接続において受信し,且つ,リファレンスクロックを再現するように構成される。)

(6)「[0024] Referring to FIGS.2a- 2d, in exemplary embodiments, various Ethernet networks 200a, 200b, 200c and a Transparent Clock (TC) node 202 are illustrated. The Ethernet network 200a in FIG.2a is a per-hop PTP 1588 network with Transparent Clocks at each node 202 such that Ordinary Clock (OC) Slave nodes 204 only have to filter timing jitter and wander accumulated from PHY's at every hop and a Boundary Clock (BC) node 206 that distributes the clock. The network 200a is an example of a full PTP network where each node 202,204 has PTP capability. FIGS. 2a and 2c include labels "M" for master and "S" for slave to indicate nodal clock relationships.(…中略…)FIG.2d is a block diagram of associated functionality in the TC node 202. Specifically, the node 202 is modeled as a switch with an ingress port and an egress port. From the ingress port, the node 202 provides a 1588 ingress stamp 212,performs core switching functions 214,and provides a 1588 egress stamp 216.This is because the residence time of a packet in the node 202 is not known ahead of time as it depends on a variety of factors, such as packet priority, switch load, egress port load, etc. As such, PTP requires specialized hardware support to timestamp packets entering and leaving the switch nodes. This corrects for packet residence time in the switches. PTP nodes with this capability are referred to as Transparent Clock nodes (TC).」(第3ページ)
([当審仮訳][0024] 図2a-2dを参照すると,典型的な実施例として,様々なイーサネットネットワーク200a,200b,200c及びトランスペアレントクロック(TC)ノード202が図示されている。図2aのイーサネットネットワーク200aは,オーディナリクロック(OC)スレーブノード204のみが各ホップ及びクロックを分配するバウンダリクロック(BC)ノード206からのPHYにより累積したタイミングジッタ及びワンダをフィルタしなければならない,各ノードにおいてトランスペアレントクロックを有するパー・ホップPTP1588ネットワークである。ネットワーク200aは,各ノード202,204がPTP能力を有するフルPTPネットワークの例である。図2a及び2cは,”M”をマスタ,”S”をスレーブとするラベルを含み,ノード間のクロックの関係を示す。(…中略…)図2dは,TCノード202の機能を示すブロック図である。特に,ノード202は,入口ポート及び出口ポートを含むスイッチとしてモデル化されている。入口ポートから,ノード202は,1588入口スタンプ212を提供し,コアスイッチング機能214を実行し,1588出口スタンプ216を提供する。これは,ノード202内のパケット滞在時間が,様々な要因,例えば,パケット優先度,スイッチ負荷,出口ポート負荷等により,前もって知ることができないからである。よって,PTPは,スイッチノードに入るパケット及び出るパケットにタイムスタンプするための特別なハードウェアのサポートを要する。このことにより,スイッチにおけるパケット滞在時間を修正する。この能力を有するPTPノードは,トランスペアレントクロックノード(TC)として参照される。)

(7)「[0026](…中略…)The ring 404 may include an OC node 418 connected to a branch 420 in the ring 404 with the OC node 418 receiving a BITS or Global Positioning Satellite (GPS) timing reference.」(第3ページ)
([当審仮訳][0026](…中略…)リング404は,リング404内のブランチ420に接続されたOCノード4 18であって,BITS又はグローバルポジショニングサテライト(GPS)による基準タイミングを受信するためのOCノード418を含んでもよい。)

(8)「[0027] The present invention utilizes a clock regeneration node (also known as a boundary clock BC) at a ring drop off point, e.g. nodes 406 a, 406 b, 406 c.」(第3ページ)
([当審仮訳][0027] この発明は,例えば,ノード406a,406b,406cなどのリングのドロップオフポイントでのクロック再生ノード(バウンダリクロックBCとしても知られる)を利用する。」

(9)「[0039] Referring to FIG.11, in an exemplary embodiment, a perspective view illustrates a pluggable optical transceiver 1100, such as a Small Form Factor Pluggable (SFP) or the like. The optical transceiver 1100 includes integrated circuitry 1102 mounted therein to a printed circuit board 1104. The integrated circuitry 1102 may be one or more application specific integrated circuits (ASICs) to support both the electronics of the transmit and receive (Tx/Rx). The optical transceiver 1100 further includes a light transmitter 1106 (i.e., an EO converter) and a light receiver 1108 (i.e., an OE converter). The optical transceiver 1100 can be compatible with XFP, 300-pin, XPAK, X2, XENPAK MSAs, and other proprietary or standard packages. The printed circuit board 1104 includes top and bottom pads (top pads illustrated) to form an edge connection 1110 to couple to a socket of a host device (not shown). A housing 1112 couples around the printed circuit board 1104 to protect and shield the integrated circuitry 1102 and other components in the transceiver 1100. Note, the housing 1112 is typically defined in the Multi Source Agreement (MSA). A front fiber optic plug receptacle 1120 is provided with openings 1122 to interface with one or more fiber optic cables and their plugs. A mechanical latch/release mechanism 1124 can be provided as part of the optical transceiver 1100. While the optical transceiver 1100 has been described has having both light transmission and light reception capability, it may be a fiber optic transmitter module with light transmission only or a fiber optic receiver module with light reception only.
[0040] The present invention may include 1588 TC timestamping in the transceiver 1100,e.g., an SFP, as an inexpensive way of upgrading existing equipment on a port-by-port basis. Herein, the present invention may include a method of using an Inter-Integrated Circuit (I2C) interface (I/F) to phase synchronize SFPs. SFPs are field replaceable optical units typically containing some monitoring and drivers and management (the latter over an I2C bus) and power. The present invention can incorporate the TC of FIG.2d into the SFP (or into an SFP carrier that itself is SFP compliant), in order to easily add 1588 compliance to an existing (legacy) network, i.e., adding protocol interpreting logic to an optical SFP, and thus can now timestamp ingress and egress messages (normally 1588 messages) in order to mark switch residence time and eliminate switch (or other node) jitter (usually due to traffic conditions). This may also include a BC clock embedded.」(第6-7ページ)
([当審仮訳][0039] 図11を参照すると,他の典型的な実施例において,スモールフォームファクタプラガブル(SFP)又はそのようなプラガブル光学トランシーバ1100の外観図が記載されている。光学トランシーバ1100は,プリント回路基板1104に搭載された統合的な電気回路1102を含む。統合的な電気回路1102は,送信及び受信(Tx/Rx)の電子工学をサポートする1又は複数の特定用途向け集積回路(ASICs)であってもよい。光学トランシーバ1100は,さらに,光送信器1106(例えば,EO変換器)と光受信器1108(例えばOE変換器)を含む。光学トランシーバ1100は,XFP,300-pin,XPAK,X2,XENPAK MSAs及び他の専有の又は標準的なパッケージと互換であることができる。プリント回路基板1104は,ホストデバイス(図示されない)のソケットに結合するための端部接続部1110を形成する表面パッド(図示されている)及び裏面パッドを含む。ハウジング1112は,統合的な電気回路1102及びトランシーバ1100内の他の部品を保護し遮蔽するために,プリント回路基板1104を囲むように結合する。ここで,ハウジング1112は,典型的には,メーカー間合意規格(マルチソースアグリーメント:MSA)において定義される。前面ファイバー光プラグレセプタクル1120は,開口1122とともに設けられ,1又は複数のファイバー光学ケーブル及びそのプラグとインターフェースする。機械的ラッチ/解放メカニズム1124は,光学トランシーバ1100の一部を構成してもよい。光学トランシーバ1100は,光送信及び光受信の両機能を備えるものとして述べてきたが,光送信機能のみを備えるファイバー光学送信器モジュール,又は,光受信機能のみを備えるファイバー光学受信器モジュールであってもよい。
[0040] 本発明は,例えば,ポートごとに既存の設備をアップグレードするための安価な手段として,SFP等のトランシーバ1100内に1588TCタイムスタンピングを含んでも良い。ここで,本発明は,SFPを位相同期するためのIC間(I2C)インタフェース(I/F)を用いた手段を含んでも良い。SFP は,典型的にはモニタリング,ドライバ,管理(I2Cバスを介した後者),及び,パワーを含んだ,現場で交換可能な光学ユニットである。本発明は,簡単に1588の適合性を既存の(古い仕様の)ネットワークに加えるため,すなわち,光学SFPに対するロジックを解釈するプロトコルを加えるために,図2dのTCをSFP内に(又はそれ自身がSFPに準拠したSFPキャリア内に)含んでも良く,したがって,スイッチ滞留時間を記録し且つスイッチ(又は,他のノード)のジッタ(通常はトラフィックの状況による)を排除するために,出入りするメッセージ(通常は1588のメッセージ)をタイムスタンプすることができる。これには,BCクロックが組み込まれていても良い。)

(10)「[0044](…中略…) The 1588 Best Master algorithm allows 1588 clocks to select a clock source from multiple timing masters (e.g., nodes 416, 418 in FIG. 4 ). The clock selection algorithm 1200 may based on (in order): Priority1 {clockClass, clockAccuracy, offsetScaledLogVariance}, Priority2: {clockIdentity (for tie-breaking)} and this priority information is obtained/distributed either with special G.826x series messages, or with 1588 Synch Messages (synch messages are used to build the timing tree#what timing source to use). 」(第8ページ)
([当審仮訳][0044](…中略…)1588ベストマスターアルゴリズムによって,1588クロックは,複数のタイミングマスタ(例えば,図4のノード416,418)からクロックソースを選択することが可能となる。クロック選択アルゴリズム1200は,(順番に),プライオリティ1{clockClass,clockAccuracy,offsetScaledLogVariance},プライオリティ2:{clockIdentity(タイブレーキングのための)}に基づいていても良い。このプライオリティ情報は,特別なG.826xシリーズのメッセージ,又は1588同期メッセージ(同期メッセージはタイミングツリー,すなわち,何れのタイミングを用いるかを構築するために利用される。)と共に取得/分配される。)

(11)「


(Fig2a-2d)

(12)「


(Fig.4)

(13)「


(Fig.11)

(14)「


(Fig.12)

以下,前記(1)ないし(14)の記載並びに本件特許の優先日における技術常識を参酌して,甲第1号証に記載した事項について検討する。

ア 甲第1号証の図11(Fig.11)には,「プラガブル光学トランシーバ」(1100)が記載されている。
そして,前記(9)の「SFP等のトランシーバ1100」との記載によれば,当該「プラガブル光学トランシーバ」は,それ自体が,「SFP」(スモールフォームファクタ)であるが,当該「SFP」は,光ファイバーを通信機器に接続する光学トランシーバの規格であることは技術常識であるところ,前記記載は,当該「プラガブル光学トランシーバ」が,「SFP」の規格に準拠した光学トランシーバであることを意味する。
また,当該「プラガブル光学トランシーバ」は,前記(9)によれば,「現場で交換可能な光学ユニット」であり,メーカー間合意規格であるマルチソースアグリーメント(MSA)において定義される「ハウジング」を備えるものであるが,メーカー間合意規格が,光トランシーバに関し,共通の外形寸法やピン配置に関する業界規格であって,SFPに係る規格を含むことは技術常識である。そうすると,当該「プラガブル光学トランシーバ」の「ハウジング」は,MSAにおいて定義される,SFPの規格に準拠した形状であるといえる。また,「プラガブル」が,「抜き差しできる」との意味を含み,実際,甲第1号証の図11の記載から,当該「プラガブル光学トランシーバ」の「ハウジング」が,抜き差しできる形状を備えていることは明らかである。そうすると,当該「プラガブル光学トランシーバ」の端部接続が結合されるソケットを備えるホストデバイスは,当該「プラガブル光学トランシーバ」の「ハウジング」が抜き差しできる形状を備えている必要があり,その形状も,MSAにおいて定義される,SFPの規格に準拠した形状でなければならないことは自明である。また,ホストデバイスにおいて,当該「プラガブル光学トランシーバ」の「ハウジング」が抜き差しされる部分(端部接続部1110が接続されるソケットのある部分)を「ケージ」(箱)と称することは任意である。
よって,甲第1号証には,「既存のスモールフォームファクタ(SFP)基準のケージに差し込むことに適した,ハウジング」を備える「光学トランシーバ」が記載されているといえる。

イ 前記(9)の[0039]より,「ハウジング」が,「電気回路」(1102)を収容するものであることは自明である。

ウ 前記(9)の「SFP等のトランシーバ1100内に1588TCタイムスタンピングを含んでも良い。」との記載から,「プラガブル光学トランシーバ」(1100)は,「1588TCタイムスタンピング」なる機能又は手段を含むものと解される。ここで,「1588」は「IEEE1588」の規格であることは明らかであり,また,「TC」とは,前記(6)の「トランスペアレントクロック(TC)ノード202」及び「トランスペアレントクロックノード(TC)」との記載から,「トランスペアレントクロック」又は「トランスペアレントクロックノード」のことである。また,前記(9)の「図2dのTCをSFP内に(又はそれ自身がSFPに準拠したSFPキャリア内に)含んでも良く,(…中略…),出入りするメッセージ(通常は1588のメッセージ)をタイムスタンプすることができる。」との記載から,「SFP」の規格に準拠した当該「プラガブル光学トランシーバ」は,「TC」を含むことにより,メッセージにタイムスタンプをする機能を備えるものといえる。そうすると,前記「1588TCタイムスタンピング」とは,「IEEE1588によるタイムスタンプ機能」であるといえる。
よって,甲第1号証には,「光学トランシーバ」が,「IEEE1588によるタイムスタンプ機能」を備えることが記載されているといえる。

エ 前記(9)の「これには,BCクロックが組み込まれていても良い。」との記載から,甲第1号証には,「プラガブル光学トランシーバ」(1100)に「BCクロック」なるものが組み込まれることが記載されているといえる。
ここで,前記「BCクロック」の「BC」は,前記(1)及び(6)の「バウンダリクロック(BC)ノード」との記載からすると「バウンダリクロック」のことであるが,前記(8)の「クロック再生ノード(バウンダリクロックBCとしても知られる)」との記載及び前記(5)の「バウンダリークロックノードは,以前は非同期ノードを通過していたリファレンスクロックをイーサネット接続において受信し,且つ,リファレンスクロックを再現するように構成される」との記載からすると,「クロック再生ノード」すなわち「バウンダリクロックノード」のことでもあるといえる。
そうすると,前記「BCクロック」は,「バウンダリクロッククロック」又は「バウンダリクロックノードクロック」のこととなり,意味が不明であるから,前記「BCクロック」は,「BC」又は「BCノード」の誤記と解するのが合理的である。そうすると,当該「プラガブル光学トランシーバ」は,「バウンダリクロッククロック」又は「バウンダリクロックノードクロック」の機能である,クロックを再生する機能を有しているといえる。
そして,前記(2)の「PTPは,タイミングソース(リファレンスマスタ)タイミングスレーブに送信されるパケットに適用されるタイムスタンプの原理に基づいて動作する。タイムスタンプは,スレーブをソースに同期させるために適用される。この様に,レシーバスレーブは,これらタイムスタンプを読み込み且つ自身のクロックをこれらタイムスタンプに合わせることによって,オリジナルのクロックを再現することができる。」との記載からすると,「スレーブ」は,「マスタ」からタイムスタンプを読み込んで,タイムスタンプに自身のクロックを合わせることによりクロックを再生しており,前記(6)の「図2a及び2cは,”M”をマスタ,”S”をスレーブとするラベルを含み,ノード間のクロックの関係を示す。」との記載及び図2aの記載によると,BCノード206は,上流のOCノードに対しては「スレーブ」であり,下流のOCノードに対しては,「マスタ」であるから,上流のOCノードから受信したタイムスタンプからクロックを再生して,再生したクロックに基づいてタイムスタンプを生成してタイムスタンプを送信することにより下流のOCノードにクロックを再現させていると解される。また,前記(2)の「タイミングを分配するためにIEEE 1588を用いることができる。」及び「タイミングは,周波数及び位相/時刻(ToD)の両者を意味する。」との記載から,再生したクロックに基づくタイムスタンプの送信は,「タイミングの分配」といい得るものであり,当該「タイミングの分配」は,「周波数及び位相/時刻(ToD)の分配」といい得るものである。
また,前記(2)の「代替として,タイミングを分配するためにIEEE 1588を用いることができる。ここで述べられている様に,IEEE 1588又は単に「1588」は,IEEE 1588-2002,1588v2-2008プレシジョンタイムプロトコル(PTP)標準及びその任意の派生を意味するものとする。PTPは,タイミングソース(リファレンスマスタ)タイミングスレーブに送信されるパケットに適用されるタイムスタンプの原理に基づいて動作する。」の記載及び前記ウの検討を踏まえると,前記「タイミングの分配」に係る処理は,IEEE 1588のPTP(プレシジョンタイムプロトコル)に基づいていると解される。
さらに,前記(9)の[0039]及び図11の記載より,「プラガブル光学トランシーバ」(1100)は,処理手段として,電気回路1102,光送信器1106及び光受信器1108を備えており,前記「タイミングの分配」に係る処理が,電気回路1102により実現され得ることは自明である。
以上より,甲第1号証には,「光学トランシーバ」が,「IEEE 1588のPTP(プログラムレジションタイムプロトコル)に基づいて,マスタから受信したタイムスタンプに基づいてクロックを再生し,再生したクロックに基づいてタイムスタンプを生成して,自身がマスタとして前記生成したタイムスタンプをスレーブに送信することにより,スレーブにタイミングを分配するように構成される電気回路」を備えることが記載されている。

前記(1)ないし(10)並びにアないしエの検討から,甲第1号証には,以下の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「 タイミングを分配する光学トランシーバであって,
IEEE 1588のPTP(プレシジョンタイムプロトコル)に基づいて,マスタから受信したタイムスタンプに基づいてクロックを再生し,再生したクロックに基づいてタイムスタンプを生成して,自身がマスタとして前記生成したタイムスタンプをスレーブに送信することにより,スレーブにタイミングを分配するように構成される電気回路と,
前記電気回路を収容するハウジングであって,
前記ハウジングが,既存のスモールフォームファクタプラガブル(SFP)準拠のケージに差し込むことに適した,ハウジングと,を備える光学トランシーバ。」

2 甲第2号証
甲第2号証(Draft new Recommendation ITU-T G.8272/Y.1367)の表紙脚注の枠囲いの中には,次のように記載されている。(以下,これを「脚注注意事項」という。)
「Attention: This is not a publication made available to the public, but an intentional ITU-T Document intended only for use by the Member States of ITU, by ITU-T Sector Members and Associates, and their respective staff and collaborators in their ITU related work. It shall not be made available to, and used by, any other persons or entities without the prior written consent of ITU-T.」
([当審仮訳]注意:これは,公衆に利用可能な刊行物ではなく,ITUの加入国,ITU-Tセクタの会員及び準会員,並びに,彼らのITUに関連する作業における各自の職員及び協力者のみの使用が意図された意図的なITU-T文書である。これは,書面によるITU-Tの事前の同意なしに,他のいかなる者又は機関に対して利用可能とされてはならず,及び,他のいかなる者又は機関によって利用されてはならない。)

この脚注注意事項の「公衆に利用可能な刊行物ではなく」によると,甲第2号証は,特許法第29条第1項第3号の「頒布された刊行物」ではない。また,甲第2号証が,インターネット等を介して公開されたという事実は認められないから,特許法第29条第1項第3号の「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった」ものでもない。
なお,異議申立人が別途提出した参考資料V(Kenneth Gerard Hann氏による証明書)には,甲第2号証を指すものであると異議申立人が主張する「T09-S15-120910-TD-PLEN-0686!R3!MSW-E」について,「2012年9月10?21日にスイスのジェノバにて開催されたITU-Tの第15スタディグループの全員出席の会議において,議論され,編集され,且つ,承諾されたものであることをここに証明します。更に,私は,上記の会議の出席者は,守秘義務が課せられず,且つ,添付の書類に含まれる情報を公開することが許されていたことをここに証明します。」との証言が記載されているが,当該証言において挙げられている「T09-S15-120910-TD-PLEN-0686!R3!MSW-E」(以下,「参考資料V文書」という。)が,まず,甲第2号証を指すものであるとの客観的な証拠を欠いている。仮に,参考資料V文書が甲第2号証を指すものであるとしても,甲第2号証が,守秘義務が課せられず,公開が許されていたとの証言については,主観的なものにすぎず,具体的な事実や客観的な証拠(書面によるITU-Tの事前の同意がなされた時期,仮に,書面によるITU-Tの事前の同意なしに甲第2号証が公開がなされた場合には,公開がなされた時期・公開対象等を示す具体的な事実や客観的な証拠,など)によって裏付けられたものではないから,甲第2号証が,本件特許の出願日前に「頒布された刊行物」であるということはできない。
よって,甲第2号証は,特許法第29条第1項第3号の「頒布された刊行物」又は「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった」もののいずれにもあたらない。
そうすると,甲第2号証は,各本件特許発明が,特許法第29条第1項第3号又は第2項に違反してなされたものであるか否かを判断する証拠として採用することはできない。
よって,甲第2号証は,証拠能力を有さないので,甲第2号証に記載された事項の認定は行わない。

3 甲第3号証
甲第3号証(TimeProvider 5000 IEEE 1588 Grand Master Clock / NTP Server)は,表紙に「User's Guide Revision E - September 2011」と記載され,2ページ目に「printed in U.S.A」と記載されていることから,TimeProvider 5000 IEEE 1588 Grand Master Clock / NTP Serverという製品のユーザーズガイドであって,2011年9月に米国で印刷及び頒布された刊行物と認める。

そして,甲第3号証には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「The TimeProvider 5000 is a Next Generation Network (NGN) packet-based timing and frequency device that combines the functionality of a highly-accurate, IEEE 1588 2008 Grand Master Clock and/or NTP server with T1/E1 I/O ports, 1PPS/10MHz and Expansion (DTI) output ports, and 1PPS+TOD inputs.」(第26ページ第2-5行)
([当審仮訳] TimeProvider5000は,高精度のIEEE 1588 2008グランドマスタクロック及び/又はT1/E1 I/Oポートを有するNTPサーバ,1PPS/10MHz及び拡張(DTI)出力ポート,及び1PPS+TOD入力の機能を組み合わせた,次世代ネットワーク(NGN)パケットベースのタイミング及び周波数装置である。

(2)「Figure 1-1 is a front view of the TimeProvider 5000 showing connectors and LEDs. Connections for the GPS/GNSS input signal, Ethernet Management, and EIA-232 serial connection are located on the IMC module. Small Form-factor Pluggable (SFP) connectors are located on the IOC modules. 」(第29ページ第8-11行)
([当審仮訳] 図1-1は,コネクタ及びLEDを示したTimeProvider5000の正面図である。GPS/GNSS入力信号に対する接続部,イーサネット管理,及びEIA-232シリアル接続部が,IMXモジュール上に配置されている。スモールフォームファクタプラガブル(SFP)コネクタが,IOCモジュールに配置されている。

(3)「PTP/NTP Connections
The two Ethernet 100/1000 Small-form Factor Pluggable (SFP) connections on each IOC provide redundant PTP outputs.」(第62ページ第1-3行)
([当審仮訳] 各IOCに設けられた2つのイーサネット100/1000スモールファクタプラガブル(SFP)接続部は,冗長なPTP出力を与える。)

(4)「

」(第29ページ)


(5)「

」(第62ページ)

(6)「

」(第62ページ)

(7)「

」(第269ページ)

以下,前記(1)ないし(7)の記載並びに本件特許の優先日における技術常識を参酌して,甲第3号証に記載した事項について検討する。

ア 前記(1)及び(2)より,「TimingProvider5000」は,タイミングを提供する装置であって,「GPS/GNSS入力信号」を受信する手段と,IEEE 1588 2008グランドマスタクロックを備えるものといえる。

イ 前記(3)ないし(7)より,「TimingProvider5000」は,図(6)に記載されたSFPモジュールを接続するコネクタを備えるものである。
また,前記コネクタは,「TimingProvider5000」の正面に,他の複数のインターフェースとともに配置されるものであること,及び,その形状からすれば,前記SFPモジュールが差し込まれることに適したものであることは明らかである。

前記(1)ないし(7)並びにア及びイの検討から,甲第3号証には,以下の発明(以下,「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「 タイミングを提供する装置であって,
GPS/GNSS信号を入力する手段と,
IEEE 1588 2008グランドマスタクロックと,
SFPモジュールが差し込まれることに適したコネクタとを備えた装置。」

4 甲第4号証
甲第4号証(IEEE-1588 Standard for a Precision Clock Synchronization Protocol for Networked Measurement and Control Systems)は,表紙に「A Tutorial」及び「Copyright 2005 Agilent technologies, Inc」と記載され,2ページ以降の脚注に「Tutorial on IEEE 1588 October 10, 2005」と記載され,全体がスライド形式となっているから,IEEE 1588の規格に関する指導書であって,2005年10月10日にAgilent Technologies社によって公開ないし刊行されたものと解される。
そして,甲第4号証には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「Syncronization Details (continued)
Synchronization computation (in the Slave clock):
offset = receipt time - precise sending time - one way delay (for a Sync mesage)
one way delay = {master to slave delay + slave to master delay}/2 (assumes symmetric delay)
master to slave delay = receipt time - precise sending time (for a Sync mesasge)
slave to master delay = Delay_Req receipt time - precise sending time (of a Delay_Req message)
From this offset the slave corrects its local clock !
」(第33ページ)
([当審仮訳]
同期の詳細(続き)
同期の計算(スレーブクロック内)
オフセット=受信時刻-正確な送信時刻-一方向の遅れ(Syncメッセージ)
一方向の遅れ={マスタからスレーブへの遅れ+スレーブからマスタへの遅れ}/2(対称的な遅れを仮定)
マスタからスレーブへの遅れ=受信時刻-正確な送信時刻(Syncメッセージ)
スレーブからマスタへの遅れ=Delay_Req受信時刻-正確な送信時刻(Delay_Reqメッセージ)
当該オフセットによりスレーブが自身のローカルクロックを修正する!)


前記(1)の記載並びに図面(特に,第19ページ及び第26ページに記載の図面)の記載から,甲第4号証には,以下の事項(以下,「甲4技術事項」という。)が記載されていると認める。

「マスタとスレーブとの間で,タイムスタンプを含むメッセージを交換することにより,スレーブが,自身のローカルクロックを修正することにより,マスタとスレーブとの間でクロックを同期する,IEEE 1588の規格。」

5 甲第5号証
甲第5号証(欧州特許出願公開第1453346号明細書)は,「Configurable electrical tranceiver in a small form factor pluggabule module realising coded interfaces」(発明の名称:[当審仮訳]コード化されたインタフェースを実現する,スモールフォームファクタプラガブルモジュールにおける構成可能な電子的トランシーバ)について,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「[0009] The development and implementation of the many variants of transmission interfaces, translate in :
- more development effort, in HW,SW and management,
- more cost for the customer,
- more items to handle,
- more spares parts,
and, particularly, no reusability in case of transition from electrical to optical or from Plesiochronous to synchronous.
[0010] The recent advent of Small Form Factor Pluggable(SFP)optical modules has reduced some of these problems within the category of the optical interfaces.
[0011] Several pluggable module designs and standards have been introduced in which a pluggable module plugs into a receptacle which is electronically connected to a hostcircuit board.
[0012] These standards offer a generally robust design which has been well received in industry and has been used to develop gigabit interface converter(GBIC) and optical converter(SOC) and providing an interface between a computer and a data communication network such as Ethernet or Fiber Channel.」(第2ページ)
([当審仮訳] [0009] 伝送インタフェースの多くの異形の開発及び実装は,以下の点に翻訳される:
- HW,SW及びマネージメントにおけるさらなる開発努力,
- 顧客に対するさらなるコスト,
- より多くの扱うべき項目,
- より多くのスペアパーツ
そして,特に,電気から光学へ又は従属同期(Plesiochronous)から同期へと移行する場合に,再利用可能性がないことである。
[0010] 最近のスモールフォームファクタプラガブル(SFP)光学モジュールの出現によって,光学インタフェースのカテゴリー内にこれら問題のいくつかが解消された。
[0011] プラガブルモジュールがホスト回路基板に電気的に接続されたレセプタクルに差し込まれるというプラガブルモジュールのデザイン及び規格がいくつか導入されている。
[0012] これらの規格は,概して安定したデザインを提供した。当該デザインは,市場によく受け入れられており,ギガビットインタフェースコンバータ(GBIC)及び光学コンバータ(SOC)を発展させるために用いられ,イーサネットやファイバチャネル等のコンピュータ及びデータ通信ネットワーク間のインタフェースを提供している。

前記(1)の記載並びに図面の記載から,甲第5号証には,以下の事項(以下,「甲5技術事項」という。)が記載されていると認める。

「光学コンバータに用いられ,ホスト回路基板に電気的に接続されたレセプタクルに差し込むことに適した,SFP光学モジュール。」

6 甲第6号証
甲第6号証(The evolution of the pluggable module HDTV launched fiber into the broadcast mainstream)は,インターネット上で公開されている文書であり,冒頭部分に「August 1, 2012」(2012年8月1日)との日付けを示す記載があるが,当該日付けは,当該文書を作成した日,インターネットに最初にアップロードした日,または,最後に更新した日であるのかなど,何を示す日付であるのか不明であるため,甲第6号証が,最初に公知となった日を特定することができない。
なお,異議申立人が別途提出した参考資料VI(Renaud Lavoie氏による証明書)には,甲第6号証の冒頭部分に記載の氏名「Renaud Lavoie」と同姓同名の者による署名とともに,甲第6号証が,印刷物及びインターネットにより,2012年8月1日に公知の状態とされた旨証言しているが,当該証言をした者が,仮に,甲第6号証の作成者と同一人物であるとしても,当該証言は,個人の見解によるものにすぎず,甲第6号証が,公知の状態となった日を客観的に示す証拠とはならない。
しかしながら,インターネット上で公開されている文書に付されている日付は,一般的には,最後に更新された日付である蓋然性が高いことから,ここでは,甲第6号証は,2012年8月1日にインターネット(電気通信回線)を通じて公衆に利用可能となったものとして取り扱う。

そして,甲第6号証には,The evolution of the pluggable module, HDTV launched fiber into the broadcast mainstream([当審仮訳]プラガブルモジュールの発展,HDTVは,ファイバーをブロードキャストのメインストリームの中に発進させた)について,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「The advanced emSFP is a more intelligent pluggable, offering a rich set of new features. For example, it can include features such as measuring eye diagrams and signal power level diagnostics. Or it can provide NTSC/PAL conversion to and from analog, or HDMI conversion to and from SMPTE SDI data streams. The advanced feature set and processing of these modules, combined with the modularity of the SFP form factor, provides the configurability and flexibility demanded by the broadcast and media industries in a single, comprehensive system.」(「The SFP」の項)
([当審仮訳] 進歩したemSFPは,多くの新しい特徴を提供するさらにインテリジェントなプラガブルである。例えば,アイダイアグラムの測定や信号強度レベルの診断等の特徴を含むことができる。あるいは,NTSC/PALとアナログとの間の変換や,HDMIとSMPTE SDIデータストリームとの間の変換を提供することができる。多くの進歩した特徴及びこれらのモジュールの処理は,SFPフォームファクタのモジュール方式と組み合わされることによって,単一の包括的なシステム内で,放送業界やメディア業界によって要求される設定可能性及び柔軟性を提供する。)

(2)「The embedded SFP (emSFP)
The SFP is great for basic O2E and E2O for fiber, but copper cable is still widely deployed and must be supported, and standard SFPs do not help with system integration. If a facility or installation needs to handle multiple physical layers and different signal standards, you may need multiple converters. The emSFP was created to fill this need and to build one unique platform to support exactly what the user needs.
The emSFP product line covers the standard coaxial cable, fiber optic, CVBS (NTSC/PAL) to SDI conversion, HDMI-to-SDI conversion and ASI-to-IP encapsulation. These features enable a high level of integration in the core platform and a new level of flexibility for manufacturers and users.
In every case, these modules convert a serial SDI signal to the required physical layer format and transmission standard and protocol. These modules permit users to build a product today and future-proof the platform by upgrading the emSFP, not the core.」(「THe embedded SFP(emSFP)の項」)
([当審仮訳] SFPは,ファイバによる基本的なO2E及びE2Oに対して非常に有効である。しかし,銅ケーブルは依然として広く配備されておりサポートが必要であり,標準的なSFPはシステムの統合における一助とはならない。施設又は設備が複数の物理レイヤ及び異なる信号標準を扱う必要がある場合,複数のコンバータが必要となる可能性がある。emSFPは,このニーズを満たし,ユーザがまさに必要とするものをサポートする一つのユニークなプラットフォームを構築するために作られた。
emSFPの商品ラインは,標準的な同軸ケーブル,光ファイバー,CVBS(NTSC/PAL)からSDIへの変換,HDMIからSDIへの変換,及びASIからIPへのカプセル化をカバーしている。これらの特徴によって,コアプラットフォームにおける高いレベルの統合,及び,製造業者及びユーザに対する新たなレベルでの柔軟性が可能になる。
いずれのケースにおいても,これらのモジュールは,一連のSDI信号を,要求される物理レイヤフォーマット並びに伝送規格及びプロトコルへと変換する。これらのモジュールによって,ユーザは,商品をその日に組み立てることができ,コアだけでなく,emSFPをアップグレードすることによってプラットフォームを新しく保つことができる。)

前記(1)及び(2)の記載並びに図面の記載から,甲第6号証には,以下の事項(以下,「甲6技術事項」という。)が記載されていると認める。

「 プラガブルなSFPモジュールにより,通信に関するプロトコル等の変換を行うこと。」

7 甲第7号証
甲第7号証(国際公開第2006/092781号)は,「A SMALL FORM-FACTOR DEVICE IMPLEMENTING PROTOCOL CONVERSION」(発明の名称:[当審仮訳]プロトコル変換を実装するスモールフォームファクタデバイス)について,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「Figure 1 illustrates physical configuration of the small form-factor transceiver module 100. The module consists of a housing 101, an internal connector 102 for connection to the primary network, a printed circuit board (PCB) 103 containing all the required protocol and transmission medium conversion circuitry,- and an external connector 104 for connection to the secondary network or link.」(第4ページ第10-20行)
([当審仮訳] 図1は,スモールフオームファクタトランシーバモジュール100の物理的構成を示している。モジュールは,ハウジング101と,プライマリネットワークへの接続のための内部コネクタ102と,全ての必要なプロトコル及び伝送媒体変換回路を含んだプリント回路基板(PCB)103と,第2のネットワーク又はリンクに接続するための外部コネクタ104とを有する。
図2は,TDMリンクを介したイーサネットトラフィックのトランスポートのためのスモールフォームファクタトランシーバモジュール200の簡略化したブロック図を示している。主要なブロックは,内部コネクタ202と,外部コネクタ203と,水晶発振器211を有するイーサネットPHY210と,プロトコルトランスレーションロジック220と,TDM水晶発振器231及びTDM保護回路を有するTDM PHY230とを有する。内部コネクタ202は,プライマリイーサネットネットワークに接続し,外部コネクタ203は,第2のTDMネットワーク又はリンクに接続する。)

(2)「1. A small form-factor transceiver module adapted to transfer electrical or optical transmissions between networks comprising: means for connecting to a network element on a primary network, means for feeding a secondary network or link, and means for providing protocol translation between the protocol of the primary network and that of the secondary network or link.
2. A small form-factor transceiver module of claim 1, wherein said means for providing protocol translation includes an integral protocol translation unit that performs conversion between said network protocols.
3. A small form-factor transceiver module of claim 1 wherein said transceiver conforms to one of the Small Form Factor (SFF) Multisource
Agreement, the Small Form Factor Pluggable (SFP) Multisource Agreement, or the Gigabit Interface Converter (GBIC) Specification.」(第20ページ第3-14行)
([当審仮訳] 1. ネットワーク間の電気的又は光学的変換を伝達するように適合されたスモールファクタトランシーバモジュールであって,プライマリネットワークのネットワーク要素に接続するための手段と,セカンダリネットワーク又はリンクをフィードするための手段と,プライマリネットワーク及びセカンダリネットワーク又はリンクのプロトコルの間のプロトコルトランスレーションを提供するための手段と,を備えるスモールフォームファクタトランシーバモジュール。
2. 前記プロトコルトランスレーションを提供するための手段は,前記ネットワークプロトコル間のコンバージョンを実行する統合プロトコルトランスレーション部を含む,請求項1に記載のスモールフォームファクタトランシーバモジュール。
3. 前記トランシーバは,スモールフォームファクタ(SFF)マルチソースアグリーメント,スモールフォームファクタプラガブル(SFP)マルチソースアグリーメント,又は,ギガビットインタフェースコンバータ(CBIC)仕様のうちの一つに適合する,請求項1に記載のスモールフォームファクタトランシーバモジュール。)

前記(1)及び(2)の記載並びに図面の記載から,甲第7号証には,以下の事項(以下,「甲7技術事項」という。)が記載されていると認める。

「 プライマリネットワークと接続するための内部コネクタと,
セカンダリネットワーク又はリンクと接続するための外部コネクタと,
プライマリネットワークと,セカンダリネットワーク又はリンクとの間のプロトコル変換を実行するためのプロトコルトランスレーションロジックと,
TDM水晶発振器と,
ハウジングと,
を備え,SFPマルチソースアグリーメントに適合する,スモールフォームファクタトランシーバモジュール。」

8 甲第8号証
甲第8号証(OE Solutions and Aim Valley announce Smart SFPTM with OC-3/STM-1 over Packet)は,インターネット上で公開されている文書であり,冒頭部分に「April 12, 2012」(2012年8月12日)との日付けを示す記載があるが,当該日付けは,当該文書を作成した日,インターネットに最初にアップロードした日,または,最後に更新した日であるのかなど,何を示す日付であるのか不明であるため,甲第8号証が,最初に公知となった日を特定することができない。
しかしながら,インターネット上で公開されている文書に付されている日付は,一般的には,最後に更新された日付である蓋然性が高いことから,ここでは,甲第8号証は,2012年8月12日にインターネット(電気通信回線)を通じて公衆に利用可能となったものとして取り扱う。

そして,甲第8号証には,OE Solutions and AimValley announce Smart SFP^(TM) with OC-3/STM-1 over Packet([当審仮訳]OE Solutions及びAimValleyが,OC-3/STM-1を備えたスマートSFP^(TM)を発表)について,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「OE Solutions and AimValley enable a smooth network migration with the OC-3/STM-1 over Packet Smart SFP^(TM), using Transparent SONET/SDH over Packet(TSoP). The TSoP protocol converts SONET/SDH TDM trafiic to a packet stream. Operators now can transport OC-3 or STM-1 traffic across a packet network by simply adding a TSoP SFP to any router or packet switch.」
([当審仮訳] OE Solutions及びAimValleyは,Transparent SONET/SDH over Packet(TSoP)を用いて,Packet Smart SFP^(TM)による,OC-3/STM-1によってスムーズなネットワークの移行を可能にする。TSoPプロトコルは,SONET/SDH TDMトラフィックをパケットストリームに変換する。オペレータは,任意のルータ又はパケットスイッチにTSoP SFPを加えるだけで,パケットネットワークを介してOC-3又はSTM-1トラフィックを運ぶことができる。)

(2)「"The integration of TSoP into an SFP greatly reduces system and network complexity, and offers lower carbon footprint while generationg CAPEX & OPEX savings."」
([当審仮訳] ”TSoPをSFPに統合することにより,システム及びネットワークの複雑さが大幅に削減され,そして,設備投資及び運用コストの節約を生み出しつつ二酸化炭素排出量を少なくすることができる。”)

前記(1)及び(2)の記載並びに図面の記載から,甲第8号証には,以下の事項(以下,「甲8技術事項」という。)が記載されていると認める。

「TSoPをSFPに統合したTSoP SFPを,任意のルータ又はパケットスイッチに加えることにより,パケットネットワークを介してOC-33又はSTM-1トラフィックを運ぶことができるようになること。」

9 甲第9号証
甲第9号証(フィンランド国実用新案登録第7530号明細書)については,甲第9号証の写し(添付資料9A)とともに提出された甲第9号証の英語訳文(添付資料9B)に記載されていると認める。以降は,甲第9号証として,当該英語訳文を参照する。
第9号証は,「System composed of a communication device and a GPS receiver unit and communication device」(発明の名称:[当審仮訳]通信装置及びGPSレシーバユニットを備えるシステム並びに通信装置)について,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「Fig.2 shows a system according to one embodiment of the invention, which is composed of a communication device 201 and a GPS receiver unit 202 releasably mountable thereto. The communication device 201 has its external surface providied with an opening 203, which is adapted to enable the insertion of the GPS receiver unit 202 into a space 205 in the commnication device allotted for a GPS receiver unit. Said insertion is represented by an arrow 204. The GPS receiver unit 202 includes a GPS receiver component 206, which is adapted to detect, from a radio frequency GPS signal, timing and/or positioning information provided by the GPS system. Preferably, the GPS receiver component 206 is a commercially available microcircuit. The GPS reveiver unit 202 includes electrical connectors 207, which are coupled to th GPS reveiver component 206 and which are adapted to couple with electrical connectors 208 included in the communication device 201 upon inserting the GPS receiver unit into the communication device. The GPS receiver unit 202 has its eternal surface provided with a radio frequency cable connector 209, which is adapted to enable the delivery of a GPS signal to the GPS receiver component 206 as the GPS receiver unit is in its installed position in the communication device.

In the system according to one embodiment of the invention, which is composed of the communication device 201 and the GPS receiver unit 202 releasably mountable thereto, the communication device includes a processor 210, which is coupled to at least some of the electrical connectors 208 included in the communication device and which is adapted process the timing and positioning information contained in a GPS signal.」(第2ページ第7-29行)
([当審仮訳] 図2は,本発明の一つの実施形態に係るシステムを示している。当該実施形態は,通信装置201及びGPSレシーバユニット202が着脱可能に備えられている。通信装置201の外部表面には開口部303が設けられている。開口部203は,GPSレシーバユニットのために割り当てられた通信装置のスペース205内にGPSレシーバユニット202を挿入することができるように適合している。前記開口部は,矢印204によって表されている。GPSレシーバユニット202は,GPSレシーバコンポーネント206を含む。GPSレシーバコンポーネント206は,GPSシステムによって提供されるタイミング及び/又は位置情報を,無線周波数GPS信号から検知するように適合している。GPSレシーバコンポーネント206は,商用的に利用可能な超小型回路であることが好ましい。GPSレシーバユニット202は,電気コネクタ207を含む。電気コネクタ207は,GPSレシーバコンポーネント206に取り付けられ,GPSレシーバユニットを通信装置内に挿入した際に通信装置201内に含まれる電気コネクタ208に接続するように構成されている。GPSレシーバユニット202の外部表面には無線周波数ケーブルコネクタ209が設けられている,無線周波数ケーブルコネクタ209は,GPSレシーバユニットが通信装置内に実装された状態において,GPS信号をGPSレシーバコンポーネント206に送信することができるように適合されている。

通信装置201及びそれに着脱可能に備えられたGPSレシーバユニット202からなる本発明の一実施例に係るシステムにおいて,通信装置に含まれる少なくともいくつかの電気コネクタ208に接続され,かつ,GPS信号に含まれるタイミング及び位置情報を処理するように適合されている。)

以下,前記(1)の記載並びに本件特許の優先日における技術常識を参酌して,甲第9号証に記載した事項について検討する。

ア 前記(1)及びKuvio2(図2)の記載によれば,「GPSレシーバユニット」(202)は,「通信装置」(201)に挿入されることに適合したハウジングを備えていることが明らかである。

前記(1)及びアの検討から,甲第9号証には,以下の事項(以下,「甲9技術事項」という。)が記載されていると認める。

「 GPSシステムからGPS信号を受信する無線周波数ケーブルコネクタと,
受信したGPS信号からタイミング及び/又は位置情報を検知するGPSレシーバコンポーネントと,
通信装置内の電気コネクタと接続する電気コネクタと,
前記通信装置に挿入されることに適合したハウジングと,を備えるGPSレシーバユニット。」

10 甲第10号証
甲第10号証(TimeSource 3500 GPS Primary Reference Source)は,表紙に「User's Guide Revison M - Octover 2007 」及び「Symmetricom」と記載され,第2ページに「Copyrightc1999-2006 Symmetricom, Inc. All rights reserved. Printed in U.S.A.」と記載されていることから,「TimeSouece 3500」なる製品に関するユーザーズガイドであり,Symmetricom社により,2007年10月に米国で公開ないし刊行されたものと解される。
そして,甲第10号証には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「TimeSource 3500, shown in Figure 1-1, is a Primary Reference Source (PRS) that receives and processes signals from GPS satellites, and outputs Stratum 1 synchronization signals traceable to UTC. TimeSource 3500 applications include synchronization for central offices, wireless base stations, transmission nodes, and other cases where a primary reference source can improve the performance of a telecommnications network infrastructure.」(第20ページ第2-7行)
([当審仮訳] TimeSource 3500は,図1-1に示されるとおり,GPS衛星からの信号を受信及び処理し,UTCまでトレース可能なストレータム1同期信号を出力するプライマリリファレンスソース(PRS)である。TimeSource 3500の応用場面は,主要オフィス,無線基地局,伝送ノード,及びプライマリリファレンスが電気通信ネットワークインフラストラクチャのパフォーマンスを向上させることができる他のケースを含む。)

前記(1)の記載及び図面の記載から,甲第10号証には,以下の事項(以下,「甲10技術事項」という。)が記載されていると認める。

「 GPS衛星からの信号を受信及び処理し,UTCまでトレース可能なストレータム1同期信号を出力するプライマリリファレンスソース(PRS)であって,伝送ノードに応用可能な,TimeSource 3500。」

11 甲第11号証
甲第11号証(Synchronous Ethernet: A Method to Transport Synchronization)は,第126ページ(1ページ目)の脚注に「IEEE Communications Magazine・September 2008」と記載されていることから,IEEEにより,「IEEE Communications Magazine」という刊行物において2008年9月に公開されたものと解される。
そして,甲第11号証には,Synchronous Ethernet: A Method to Transport Synchronization([当審仮訳] 同期イーサネット:伝送同期に対する方法)に関して,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「The EEC output timing reference is then distributed via the NE backplane to reach the Ethernet line cards.」(第131ページ右欄第46-49行)
([当審仮訳] EEC出力タイミング基準は,NEバックプレーンを介して分配され,イーサネットラインカードに到達する。)

前記(1)の記載及び図面の記載から,甲第11号証には,以下の事項(以下,「甲11技術事項」という。)が記載されていると認める。

「 EEC出力タイミング基準は,NEバックプレーンを介して分配され,イーサネットラインカードに到達すること。」

12 甲第12号証
甲第12号証(Recommendation ITU-T G.8271/Y.1366)は,ITU-Tによる勧告(Recommendation)文書であり,第iページの「Approval」の項目に対応する欄に「2012-02-13」と記載されていることから,2012年2月13日に承認されたものである。そうすると,甲第12号証は,2012年2月13日に公開ないし刊行されたものと解される。
そして,甲第12号証には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

(1)「The following figure shows an example of phase/time synchronization distributed via packet-based methods with timing support from the network. A Packet master clock function in a T-GM having access to a reference timing signal compliant with the PRTC limits originates the packet timing distribution, and every transport node implements a T-BC.」(第6ページ第13-16行)
([当審仮訳] 下記の図はネットワークからのタイミングサポートでのパケットベース方式を通じた位相/時刻同期分配の一例を示している。T-GM中のPRTC制限に準拠したタイミング信号基準にアクセスするパケット・マスタ・クロック機能は,パケットタイミング分配の起点となり,全トランスポートノードは,T-BCを実装する。」

以下,前記(1)ないし(6)の記載並びに本件特許の優先日における技術常識を参酌して,甲第12号証に記載した事項について検討する。

ア 図3(Figure3)の記載によれば,パケットマスタクロックが,PRTC制限に準拠して,GNSSとの間で時刻及び位相を同期し,当該同期が,下位のノードである,トランスポートノード,パケットスレーブクロック及びエンドアプリケーションに伝播することが見てとれる。

前記(1)及びアの検討から,甲第12号証には,以下の事項(以下,「甲12技術事項」という。)が記載されていると認める。

「 パケットマスタクロックが,PRTC制限に準拠して,GNSSとの間で時刻及び位相を同期し,パケットマスタクロックが起点となり,下位のノードに対してタイミング(時刻及び位相)を分配すること。」

第5 判断
1 本件特許発明1について
(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について

ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明は,「タイムスタンプ」を送信することによりスレーブに「タイミング」を分配しているから,当該「タイムスタンプ」は,「タイミング」に関する情報であるといえる。そうすると,甲1発明の「タイミングを分配する」は「タイミング情報を分配する」ことに等しい。また,「分配」は「提供」に含まれる概念であり,甲1発明の「光トランシーバ」は,「装置」の一種であることは自明である。
よって,甲1発明の「光トランシーバ」は,本件特許発明1の「装置」に相当し,また,甲1発明の「タイミングを分配する光学トランシーバ」は,本件特許発明1の「タイミング情報を提供する装置」に相当する。

甲1発明の「スレーブ」は,「光トランシーバ」から受信したタイムスタンプに基づいて「クロック」を再生することは明らかであるから,本件特許発明1の「スレーブクロック」と同一視できるものである。そうすると,甲1発明の「電気回路」は,「スレーブ」からみれば「マスタ」として機能する「クロック」であるといえるから,本件特許発明1の「パケットマスタクロック」とは,「タイミングをスレーブクロックへ分配するように構成される」機能を有する点において共通するとともに,そのような手段は「マスタクロック」といい得るものである。
他方,本件特許発明は,「パケットマスタクロック」が,「プライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」により提供された「前記ToD及び前記基準周波数」を受信して,「タイミング」を「スレーブクロック」へ分配するとの構成を備えているが,甲1発明の「マスタクロック」が,「プライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」により提供された「前記ToD及び前記基準周波数」を受信するという構成を備えることは,IEEE 1588に係る規格を参酌しても,本件特許の優先日における技術常識であったということはできない。

以上より,甲1発明の「ハウジング」と本件特許発明1の「ハウジング」とは,少なくとも前記「マスタクロック」を収容する点において共通している。
さらに,甲1発明の「スモールファクタプラガブル(SFP)」と本件特許発明の「スモールファクタプラガブル(SFP)」とは同一視できるから,甲1発明の「ハウジング」と本件特許発明1の「ハウジング」とは,「既存のスモールフォームファクタ(SFP)準拠のケージに差し込むことに適した」ものである点において共通する。

また,本件特許発明1に係る「ハウジング」は,「前記パケットマスタクロックをパケット交換ネットワーク(PSN)へ接続するため」との目的をもって,「既存のスモールフォームファクタ(SFP)準拠のケージに差し込む」ものであることから,「装置」の「ハウジング」に収容される「パケットマスタクロック」は,「ハウジング」を「ケージ」に差し込むことにより「パケット交換ネットワーク(PSN)へ接続」されるものと解される。
一方,甲第1号証には,「プラガブル光学トランシーバ」(1100)の「ハウジング」(1112)が差し込まれることにより「端部接続部」(1110)が結合されるソケットを備える「ホストデバイス」がどのような機能を有しているのかについて具体的な記載はないから,「ハウジング」をホストデバイスに差し込むことにより,「ハウジング」に収容された「電気回路」(1102)等が,何らかのネットワークへ接続されるものとは認められない。

イ 一致点・相違点
以上より,本件特許発明1と甲1発明とは,以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「 タイミング情報を提供する装置であって,
タイミングをスレーブクロックへ分配するように構成されるマスタクロックと,
前記分配手段を収容するハウジングであって,前記ハウジングが,既存のスモールフォームファクタ(SFP)準拠のケージに差し込むことに適した,ハウジングと,を備える装置。」

[相違点1]
本件特許発明1は,「基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」をさらに備え,前記「マスタクロック」が,「PRTC」によって提供される「前記ToD及び前記基準周波数」を受信して,タイミングを分配する「パケットマスタクロック」であるのに対し,
甲1発明は,「PRTC」について言及がなく,前記「マスタクロック」が,IEEE 1588のPTP(プレシジョンタイムプロトコル)に基づいて,マスタから受信したタイムスタンプに基づいてクロックを再生し,再生したクロックに基づいてタイムスタンプを生成して,自身がマスタとして前記生成したタイムスタンプをスレーブに送信することにより,スレーブにタイミングを分配する「マスタクロック」である点。
これにともない,「ハウジング」が,本件特許発明1は,「前記PRTC及び前記パケットマスタクロックの両方を収容する」ものであるのに対し,甲1発明は,「前記マスタクロックを収容する」点。

[相違点2]
「分配する」機能に関し,本件特許発明1は,「前記ToD及び前記基準周波数に対応するタイミングオーバーパケットプロシージャに基づいて,タイミングをスレーブクロックへ分配する」ように構成されるのに対し,甲1発明は,「前記ToD及び前記基準周波数に対応するタイミングオーバーパケットプロシージャに基づいて」との限定がない点。

[相違点3]
「ハウジング」が「既存のスモールフォームファクタ(SFP)準拠のケージに差し込むこと」が,本件特許発明1は,「前記パケットマスタクロックをパケット交換ネットワーク(PSN)へ接続するため」との目的を有するのに対し,甲1発明は,「ハウジング」を「既存のスモールフォームファクタ(SFP)準拠のケージに差し込むこと」により,どのような事項を実現するのか具体的に特定していない点。

ウ 判断
上記各相違点について,以下検討する。

上記各相違点に係る本件特許発明1の構成は,甲第1号証においてこれまで参照していない箇所にも記載がなく,本件特許の優先日における技術常識ないし周知技術を参酌すれば当業者にとって自明ないし容易に想到し得たものでもない。
よって,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明ではない。
また,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお,異議申立人は,甲第1号証に記載された発明(甲1発明A)と本件特許発明1との対比にあたり,別途提出した参考資料I(Jean-Loup Ferrant氏による証言書)を参酌している(異議申立書の第32ページ第23-25行)が,当該参考資料Iにおける証言は,個人による主観的な見解を述べたものであって,客観的な事実を開示するものではないから,これを参酌することはできない。

したがって,特許異議申立理由1-1及び理由1-2及び甲第1号証によっては,請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

(2)理由1-3(特許法第29条第2項に対して,甲第2,1及び5ないし8号証)について
前記「第4 証拠の記載内容(証拠能力の有無)」の「2 甲第2号証」の項で述べたように,甲第2号証は,証拠として採用することができない。
よって,特許異議申立理由1-3によっては,請求項1に係る特許を取り消すことができない。

(3)理由1-4(特許法第29条第2項に対して,甲第3,1及び5ないし8号証)について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。

甲3発明の「タイミングを提供する装置」は,本件特許発明1の「タイミングを提供する装置」に相当する。
甲3発明において,「GPS/GNSS信号を入力する手段」は,入力した「GPS/GNSS信号」をどのように処理するのか具体的に特定していないから,本件特許発明1の「基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」に相当ないし共通するものとはいえない。

甲3発明の「IEEE 1588 2008グランドマスタクロック」は,本件特許発明1の「パケットマスタクロック」と,「マスタクロック」である点において共通する。

甲3発明において,「SFPモジュールが差し込まれることに適したコネクタ」を備えることは,SFPモジュールが差し込まれる側の装置であることを示しているのに対し,本件特許発明1において,「既存のスモールフォームファクタ(SFP)準拠のケージに差し込むことに適した,ハウジング」を備えることは,「プラガブル光学トランシーバ」が,差し込む側の装置であることを示しているから,両者が対応しないことは明らかである。

イ 一致点・相違点
以上より,本件特許発明1と甲3発明とは,以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「 タイミングを提供する装置であって,
マスタクロック,
を備えた装置。」

[相違点1]
本件特許発明1は,「基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」をさらに備え,前記「マスタクロック」が,「PRTC」によって提供される「前記ToD及び前記基準周波数」を受信して,タイミングを分配する「パケットマスタクロック」であるのに対し,
甲3発明は,「PRTC」について言及がなく,前記「マスタクロック」が,「IEEE 1588 2008グランドマスタクロック」である点。

[相違点2]
本件特許発明1は,「前記PRTC及び前記パケットマスタクロックの両方を収容するハウジングであって,前記ハウジングが,前記パケットマスタクロックをパケット交換ネットワーク(PSN)へ接続するために既存のスモールフォームファクタ(SFP)準拠のケージに差し込むことに適した,ハウジング」を備え,差し込む側の装置であるのに対し,甲3発明の装置は,SFPモジュールが差し込まれることに適したコネクタ」を備え,差し込まれる側の装置である点。

ウ 判断
上記各相違点について,以下検討する。

[相違点1]に係る本件特許発明1の構成は,甲第3号証においてこれまで参照していない箇所にも,甲第1,5ないし8号証(甲1発明,甲5技術事項ないし甲8技術事項)にも記載されておらず,かつ,本件特許の優先日における技術常識ないし周知技術であったとも認められない。
また,[相違点2]に関し,甲第1号証(甲1発明)には,差し込む側の装置の「ハウジング」について記載されているが,差し込まれる側の装置に関する甲3発明に,差し込む側の装置の「ハウジング」の構成を適用することは技術的な阻害要因があり,かつ,そのように適用することの動機付けも存在しないから,甲3発明に,甲第1号証に記載された発明を適用することは,当業者が容易に想到し得たものではない。
差し込む側の装置についての発明が記載された甲第5ないし7号証についても同様である。
また,甲第8号証には,TSoPをSFPに統合したTSoP SFPについての技術事項(甲8技術事項)が記載されており,当該技術事項を甲3発明に適用しても,[相違点1]に係る本件特許発明1の構成とはならない。
よって,本件特許発明1は,甲第3,1及び5ないし8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお,異議申立人は,甲第3号証に記載された発明(甲3発明)と本件特許発明1との対比判断にあたり,別途提出した参考資料II(Jean-Loup Ferrant氏による証言書)を参酌している(異議申立書の第37ページ第7-9行)が,当該参考資料IIにおける証言は,個人による主観的な見解を述べたものであって,客観的な事実を開示するものではないから,これを参酌することはできない。

したがって,特許異議申立理由1-4並びに甲第3,1及び5ないし8号証によっては,請求項1に係る特許を取り消すことができない。

2 本件特許発明2(理由2:特許法第29条第2項に対して,甲第1,2,9及び10号証)について

甲第2号証は,前記「第4 証拠の記載内容(証拠能力の有無)」の「2 甲第2号証」の項で述べたように,証拠として採用しない。

本件特許発明2と甲1発明とを対比すると,前記「1 本件特許発明1について」の「(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について」の「イ 一致点・相違点」の項で挙げた[相違点1]ないし[相違点3]に加え,以下の点において相違する。

[相違点4]
本件特許発明2は,「前記PRTCは,グローバルサテライトナビゲーションシステム(GNSS)衛星によって送信されたGNSS伝送を受信するGNSSレシーバと,前記基準周波数を生成するために,受信された前記GNSS伝送を処理するGNSSプロセッサと,を備える」との構成を有するのに対し,甲1発明は,「PRTC」を有さない以上,当該構成も有さない点。

まず,[相違点1]に係る本件特許発明2の構成(「基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」を備え,「マスタクロック」が,「PRTC」によって提供される「前記ToD及び前記基準周波数」を受信して,タイミングを分配する「パケットマスタクロック」であること)は,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。
そうすると,「PRTC」を備えることを前提とした[相違点4]に係る本件特許発明2の構成も,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。

[相違点2]及び[相違点3]に係る本件特許発明2の構成も,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。

よって,本件特許発明2は,甲第1,9及び10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって,特許異議申立理由2並びに甲第1,9及び10号証によっては,請求項2に係る特許を取り消すことはできない。

3 本件特許発明3ないし5,7,10,11,13及び15ないし19(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証及び/又は特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について

本件特許発明3ないし5,7,10,11,13及び15ないし19と甲1発明とを対比すると,少なくとも,前記「1 本件特許発明1について」の「(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について」の「イ 一致点・相違点」の項で挙げた[相違点1]ないし[相違点3]において相違する。

そして,前記「1 本件特許発明1について」の「(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について」の「ウ 判断」の項で述べたように,前記[相違点1]ないし[相違点3]は,甲第1号証に記載したものではなく,また,本件特許の優先日における技術常識ないし周知技術を参酌すれば当業者にとって自明ないし容易に想到し得たものでもない。
よって,請求項3ないし5,7,10,11,13及び15ないし19の記載により特定ないし付加された事項について検討するまでもなく,本件特許発明3ないし5,7,10,11,13及び15ないし19は,甲第1号証に記載された発明ではなく,また,甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

したがって,特許異議申立理由3-1,3-2,4-1,4-2,5,7-1,7-2,10,11-1,11-2,13-1,13-2,15-1,15-2,16-1,16-2,17-1,17-2,18-1,18-2,19-1及び19-2並びに甲第1号証によっては,請求項3ないし5,7,10,11,13及び15ないし19に係る特許を取り消すことはできない。

4 本件特許発明6について(特許法第29条第2項に対して,甲第1,2,9及び10号証)

甲第2号証は,前記「第4 証拠の記載内容(証拠能力の有無)」の「2 甲第2号証」の項で述べたように,証拠として採用しない。

本件特許発明6と甲1発明とを対比すると,前記「1 本件特許発明1について」の「(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について」の「イ 一致点・相違点」の項で挙げた[相違点1]ないし[相違点3]に加え,以下の点において相違する。

[相違点5]
本件特許発明6は,「前記PRTCは,グローバルサテライトナビゲーションシステム(GNSS)衛星によって送信されたGNSS伝送を受信するGNSSレシーバと,前記ToDを生成するために,受信された前記GNSS伝送を処理するGNSSプロセッサと,を備える」との構成を有するのに対し,甲1発明は,「PRTC」を有さない以上,当該構成も有さない点。

まず,[相違点1]に係る本件特許発明6の構成(「基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」を備え,「マスタクロック」が,「PRTC」によって提供される「前記ToD及び前記基準周波数」を受信して,タイミングを分配する「パケットマスタクロック」であること)は,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。
そうすると,「PRTC」を備えることを前提とした[相違点5]に係る本件特許発明2の構成も,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。

[相違点2]及び[相違点3]に係る本件特許発明6の構成も,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。

よって,本件特許発明6は,甲第1,9及び10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって,特許異議申立理由6並びに甲第1,9及び10号証によっては,請求項6に係る特許を取り消すことはできない。

5 本件特許発明8について(特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)

本件特許発明8と甲1発明とを対比すると,前記「1 本件特許発明1について」の「(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について」の「イ 一致点・相違点」の項で挙げた[相違点1]ないし[相違点3]に加え,以下の点において相違する。

[相違点6]
本件特許発明8は,「前記PRTCは,複数の予想基準周波数を受信し,前記複数の予想基準周波数から前記基準周波数を選択する周波数セレクタを備える請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。」との構成を有するのに対し,甲1発明は,「PRTC」を有さない以上,当該構成も有さない点。

当該[相違点6]について検討するに,前記「第4 証拠の記載内容(証拠能力の有無)」の「1 甲第1号証」の(10)を参照すると,甲第1号証の[0044]には,「1588クロック」(IEEE 1588の規格に基づくクロック)が,「複数のタイミングマスタからクロックソースを選択すること」が記載されている。しかしながら,甲第1号証には,「1588クロック」が,「複数のタイミングマスタ」から「複数の予想基準周波数」を受信した上で,そのうちの一つを「クロックソース」として選択することまでは記載していない。
また,甲第1号証には,そもそも「PRTC」について記載されていないのであるから,仮に,「1588クロック」が,「複数のタイミングマスタ」から「複数の予想基準周波数」を受信した上で,そのうちの一つを「クロックソース」として選択することが当業者にとって容易であるとしても,「PRTC」が「周波数セレクタ」を備えることが記載されているとはいえず,本件特許の優先日における技術常識から自明ともいえない。

よって,前記[相違点1]ないし[相違点3]に加え[相違点6]に係る本件特許発明8に係る構成は,甲第1号証に記載したものではなく,また,本件特許の優先日における技術常識を参酌しても当業者が容易に想到し得たものでもない。

したがって,特許異議申立理由8-1又は理由8-2及び甲第1号証によっては,請求項8に係る特許を取り消すことはできない。

6 本件特許発明9について(特許法第29条第2項に対して,甲第1,2,9及び10号証

甲第2号証は,前記「第4 証拠の記載内容(証拠能力の有無)」の「2 甲第2号証」の項で述べたように,証拠として採用しない。

本件特許発明9と甲1発明とを対比すると,前記「1 本件特許発明1について」の「(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について」の「イ 一致点・相違点」の項で挙げた[相違点1]ないし[相違点3]及び前記「5 本件特許発明8について(特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)」の項で挙げた[相違点6]に加え,以下の点において相違する。

[相違点7]
本件特許発明9は,「前記PRTCは,グローバルサテライトナビゲーションシステム(GNSS)衛星によって送信されたGNSS伝送を受信するGNSSグローバルサテライトナビゲーションシステムレシーバと,前記複数の基準周波数のうちの1つの予想基準周波数を生成するために,受信された前記GNSS伝送を処理するGNSSプロセッサと,を備える」との構成を有するのに対し,甲1発明は,「PRTC」を有さない以上,当該構成も有さない点。

まず,[相違点1]に係る本件特許発明9の構成(「基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」を備え,「マスタクロック」が,「PRTC」によって提供される「前記ToD及び前記基準周波数」を受信して,タイミングを分配する「パケットマスタクロック」であること)は,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。
そうすると,「PRTC」を備えることを前提とした[相違点6]及び[相違点7]に係る本件特許発明9の構成も,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。

[相違点2]及び[相違点3]に係る本件特許発明9の構成も,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。

よって,本件特許発明9は,甲第1,9及び10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって,特許異議申立理由9並びに甲第1,9及び10号証によっては,請求項9に係る特許を取り消すことはできない。

6 本件特許発明12について(特許法第29条第2項に対して,甲第1及び11号証)

本件特許発明12と甲1発明とを対比すると,前記「1 本件特許発明1について」の「(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について」の「イ 一致点・相違点」の項で挙げた[相違点1]ないし[相違点3]及び前記「5 本件特許発明8について(特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)」の項で挙げた[相違点6]に加え,以下の点において相違する。

[相違点8]
本件特許発明12は,「前記PRTCは,前記装置が差し込まれる前記SFPケージを含む前記SFPのネットワーク構成要素のバックプレーンの物理データ速度に対応する前記複数の基準周波数のうちの1つの予想基準周波数を生成するクロックエクストラクタを含む」との構成を有するのに対し,甲1発明は,「PRTC」を有さない以上,当該構成も有さない点。

まず,[相違点1]に係る本件特許発明12の構成(「基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」を備え,「マスタクロック」が,「PRTC」によって提供される「前記ToD及び前記基準周波数」を受信して,タイミングを分配する「パケットマスタクロック」であること)は,甲第11号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。
そうすると,「PRTC」を備えることを前提とした[相違点6]及び[相違点8]に係る本件特許発明12の構成も,甲第11号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。

よって,本件特許発明12は,甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって,特許異議申立理由12並びに甲第1及び11号証によっては,請求項12に係る特許を取り消すことはできない。

なお,異議申立人は,異議申立書第45ページ第27-30行において「そして,バックプレーンを介したEECの分配は,バックプレーンを介したデータ/情報伝送の特別な場合であり,EECは本質的に,バックプレーンを介してEECを伝送する信号の物理データ速度に応答するものである。」と主張しているが,当該主張は,具体的な根拠を欠くものである。

7 本件特許発明14について(特許法第29条第2項に対して,甲第1,2,9及び10号証)

甲第2号証は,前記「第4 証拠の記載内容(証拠能力の有無)」の「2 甲第2号証」の項で述べたように,証拠として採用しない。

本件特許発明14と甲1発明とを対比すると,前記「1 本件特許発明1について」の「(1)理由1-1(特許法第29条第1項第3号に対して,甲第1号証)及び理由1-2(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)について」の「イ 一致点・相違点」の項で挙げた[相違点1]ないし[相違点3],前記「5 本件特許発明8について(特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項に対して,甲第1号証)」の項で挙げた[相違点6]及び前記「6 本件特許発明12について(特許法第29条第2項に対して,甲第1号証及び甲第11号証)」の項で挙げた[相違点8]に加え,以下の点において相違する。

[相違点9]
本件特許発明12は,「前記PRTCは,グローバルサテライトナビゲーションシステム(GNSS)衛星によって送信されたGNSS伝送を受信するGNSSレシーバと,前記複数の基準ToDのうちの1つの予想基準ToDを生成するために,受信された前記GNSS伝送を処理するGNSSプロセッサと,を備える」との構成を有するのに対し,甲1発明は,「PRTC」を有さない以上,当該構成も有さない点。

まず,[相違点1]に係る本件特許発明14の構成(「基準時刻(ToD)及び基準周波数を提供するプライマリリファレンスタイムクロック(PRTC)」を備え,「マスタクロック」が,「PRTC」によって提供される「前記ToD及び前記基準周波数」を受信して,タイミングを分配する「パケットマスタクロック」であること)は,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。
そうすると,「PRTC」を備えることを前提とした[相違点6],[相違点8]及び[相違点9]に係る本件特許発明14の構成も,甲第9号証及び甲第10号証には記載も示唆もなく,かつ,本件特許の優先日における技術常識であったともいえない。

よって,本件特許発明14は,甲第1,9及び10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって,特許異議申立理由14並びに甲第1,9及び10号証によっては,請求項14に係る特許を取り消すことはできない。

8 補足
(1)異議申立人は,別途提出した参考資料IIIによれば,特許権者は,甲第2号証の発行主体であるITU-Tの第15スタディグループの第13課題の参加者である旨,また,参考資料IVによれば,本件特許発明の主要部を構成する,甲第2号証に記載された事項は,特許権者とは別の主体によって提案されたものである旨主張している。(異議申立書の第50ページ18行-第51ページ第4行)
しかしながら,当該主張が正しいとしても,当該主張と特許異議の申立ての理由との関係が不明であるので,当該主張は考慮しない。
(2)異議申立人は,平成28年8月12日付けで上申書を自発的に提出しているが,当該上申書は,特許異議の申立てをすることができる期間の経過後に提出されたものであり,また,参考資料VIIIにより異議申立書の内容を補足し,及び,実質的に新たな証拠(参考資料IX)を提出し,当該新たな証拠に基づく特許異議申立理由を追加するものであるから,当該上申書は,参酌しない。

第6 むすび
したがって,特許異議申立理由及び証拠によっては,請求項1ないし19に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1ないし19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-09-23 
出願番号 特願2015-532565(P2015-532565)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H04L)
P 1 651・ 121- Y (H04L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 阿部 弘  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
林 毅
登録日 2015-11-06 
登録番号 特許第5833799号(P5833799)
権利者 ラド データ コミュニケーションズ リミテッド
発明の名称 プラガブルパケットマスタクロック  
代理人 藤田 和子  
代理人 河合 章  
代理人 齋藤 拓也  
代理人 岩池 満  
代理人 南山 知広  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 黒田 裕也  
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