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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
管理番号 1320222
異議申立番号 異議2016-700341  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-20 
確定日 2016-10-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第5796690号発明「電磁波シールドシートおよびプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5796690号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5796690号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成27年2月2日に特許出願され、同年8月28日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年4月22日に特許異議申立人田村良介により特許異議の申立てがされ、当審において同年6月24日付けで取消理由を通知し、同年8月29日付けで意見書および実験成績証明書(乙第1号証)が提出されたものである。


2.本件特許発明
特許第5796690号の請求項1ないし5に係る特許は、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、それぞれ「本件特許発明1ないし5」という。)である。

「【請求項1】
導電層、および絶縁層を備え、
前記絶縁層が熱硬化性樹脂、硬化剤、および黒色系着色剤を含み、
前記黒色系着色剤は、平均一次粒子径が20?100nmであり、
前記黒色系着色剤の含有量が、絶縁層100重量%中、12.2?40重量%であり、
さらに絶縁層の85°光沢度が15?50、かつL*a*b*表色系におけるL*値が20?30であることを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項2】
前記絶縁層の表面抵抗値が1×10^(5)?1×10^(14)Ω/□であることを特徴とする、請求項1記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
導電層、金属薄膜層および絶縁層を備えた、請求項1または2に記載の電磁波シールドシート。
【請求項4】
請求項1?3いずれか1項に記載の電磁波シールドシート、カバーコート層ならびに信号配線および絶縁性基材を含む配線板を備えた、プリント配線板。
【請求項5】
請求項4に記載のプリント配線板を備えた、電子機器。」


3.取消理由の概要
当審において、請求項1ないし4に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)刊行物1(特開2010-229282号公報、甲第1号証)により、請求項1および4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反する。
(2)刊行物1、刊行物2(特開2012-124465号公報、甲第3号証)、刊行物3(特開2014-058108号公報、甲第4号証)、刊行物4(特開2004-273577号公報、甲第5号証)により、請求項1ないし4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反する。


4.刊行物の記載
(1)刊行物1の記載
刊行物1(特開2010-229282号公報、甲第1号証)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0001】
本発明は,耐熱性、耐磨耗性を有するポリウレタンポリウレア樹脂組成物に関し、さらには、繰り返し屈曲を受けるフレキシブルプリント配線板などに貼着して、電気回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する用途に好適に用いられる電磁波シールド性接着フィルム及びその製造方法に関する。」

イ.「【0013】
本発明の電磁波シールド性接着フィルムは、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)とフィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)とを有する硬化性電磁波シールド性接着性フィルムであって、
前記硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)が、カルボキシル基を有するジオール化合物(a1)、数平均分子量500?8000の他のポリオール(a2)および有機ジイソシアネート(a3)を反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a4)と、ポリアミノ化合物(a5)とを反応させて得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)と、前記ポリウレタンポリウレア樹脂(A)と前記エポキシ樹脂(B)との合計100重量部に対して10?700重量部の導電性フィラーとを含有し、
前記フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)が、前記いずれか記載のフィルム形成能を有する硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物から形成されていることが好ましい。」

ウ.「【0023】
まず、本発明のフィルム形成能を有する硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物に関して説明する。
フィルム形成能を有する硬化性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物は、カルボキシル基を有するジオール化合物(c1)、数平均分子量500?8000の他のポリオール(c2)および有機ジイソシアネート(c3)を反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(c4)と、ポリアミノ化合物(c5)とを反応させて得られるポリウレタンポリウレア樹脂(C)と、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(D)と、黒色、緑色、青色及び赤色からなる群より選ばれる着色剤(E)とを含有する。
このようなポリウレタンポリウレア樹脂組成物から形成したフィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)は、被着体に電磁波シールド性接着フィルムを熱と圧着をかけて貼着する際に、はみ出しが少なく、貼着後は鉛フリーハンダリフローに耐え得る、優れた耐熱性、耐屈曲性、耐磨耗性を発現する。」

エ.「【0044】
また、ポリウレタンポリウレア樹脂(C)とエポキシ樹脂(D)との反応や、エポキシ樹脂(D)の単独での反応を促進させる目的で、硬化促進剤、硬化剤を含有させることができる。エポキシ樹脂(D)の硬化促進剤としては、3級アミン化合物、ホスフィン化合物、イミダゾール化合物等が使用でき、硬化剤としては、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド、酸無水物等が使用できる。
硬化促進剤のうち、3級アミン化合物としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン-5等が挙げられる。また、ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。また、イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、更にはイミダゾール化合物とエポキシ樹脂を反応させて溶剤に不溶化したタイプ、またはイミダゾール化合物をマイクロカプセルに封入したタイプ等の保存安定性を改良した潜在性硬化促進剤が挙げられるが、これらの中でも、潜在性硬化促進剤が好ましい。
【0045】
硬化剤としてのカルボン酸ヒドラジドとしては、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。また、酸無水物としては、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
これらの硬化促進剤または硬化剤としては、それぞれ2種類以上を併用してもよく、その使用量は合計で(硬化促進剤または硬化剤のどちらか一方のみを使用する場合も含まれる)、エポキシ樹脂(D)100重量部に対して0.1?30重量部の範囲であることが好ましい。」

オ.「【0052】
本発明で用いられるフィルム形成能を有する硬化性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物において、ポリウレタンポリウレア樹脂(C)と黒色、緑色、青色及び赤色からなる群より選ばれる着色剤(E)との配合比率は、ポリウレタンポリウレア樹脂(C)100重量部に対して、黒色、緑色、青色及び赤色からなる群より選ばれる着色剤(E)3?200重量部が好ましい。さらに10?100重量部であることが好ましく、20?70重量部であることがより好ましい。ポリウレタンポリウレア樹脂(C)100重量部に対して、着色剤(E)が3重量部より少ないと、隠蔽性が足らず、硬化後のフィルム状絶縁層を通して硬化導電層の色が見えてしまう。一方、着色剤(E)が200重量部より多いと、硬化後のフィルム状絶縁層の耐熱性、強度が低下してしまう。
【0053】
また、黒色、緑色、青色及び赤色からなる群より選ばれる着色剤(E)の中で、隠蔽性の点でカーボンブラックが好ましい。なお、カーボンブラックの中には、導電性に優れるものもあるが、本発明の場合、そのようなものは好ましくない。導電性に優れるカーボンブラックは、一般にπ電子導電性を有している。従って、本発明で好適に用いられるカーボンブラックは、粒子表面がπ電子共役を妨げるように表面修飾を施したものが好適である。例えば、三菱化成工業(株)製のMA-100が挙げられる。」

カ.「【0090】
【表1】
(表1の掲載は省略。実施例10において、絶縁層の着色剤として樹脂組成物中20重量%のカーボンブラック(三菱化成工業(株)製のMA-100)を用いていることが読み取れる。)」

上記アないしカから、刊行物1には以下のことが記載されている。

・上記アによれば、刊行物1は、電磁波シールド性接着フィルムに関するものである。

・上記イによれば、電磁波シールド性接着フィルムは、導電フィラーを含有した硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層と硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物とで構成されているものである。

・上記ウ、エによれば、硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物は、ポリウレタンポリウレア樹脂、エポキシ樹脂、硬化促進剤または硬化剤、および黒色の着色剤を含有するものである。

・上記オ、カ(表1の実施例10に注目。)によれば、絶縁層の黒色着色剤として樹脂組成物中20重量%のカーボンブラック(三菱化成工業(株)製「MA-100」)を用いているものである。なお、絶縁層とは、硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物で構成された層である。

したがって、上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「導電フィラーを含有した硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層、および硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物を備え、
前記硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物は、ポリウレタンポリウレア樹脂、エポキシ樹脂、硬化促進剤または硬化剤、および黒色の着色剤を含有し、
前記黒色の着色剤は、カーボンブラック(三菱化成工業(株)製「MA-100」)であり、
前記黒色の着色剤の含有量は、前記硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物中20重量%である、電磁波シールド性接着フィルム。」

(2)刊行物2の記載
刊行物2(特開2012-124465号公報、甲第3号証)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

キ.「【0020】
(フリップチップ型半導体裏面用フィルム)
まず、本発明の一実施形態に係るフリップチップ型半導体裏面用フィルム(以下、「半導体裏面用フィルム」という場合がある)について、以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るフリップチップ型半導体裏面用フィルムを示す断面模式図であり、図2は、他の実施形態に係るフリップチップ型半導体裏面用フィルムを示す断面模式図である。図1に示すように、半導体裏面用フィルム40は、接着剤層30上に電磁波シールド層31が積層された構成を有する。また、本発明に係る半導体裏面用フィルムは、図2に示す半導体裏面用フィルム41のように、電磁波シールド層31上にさらに接着剤層32が積層された構成であってもよい。さらに、本発明に係る半導体裏面用フィルムは、接着剤層と電磁波シールド層とを有していれば、半導体裏面用フィルム40、半導体裏面用フィルム41に限定されず、例えば、接着剤層及び電磁波シールド層以外の他の層を有するものであってもよい。」

ク.「【0051】
半導体裏面用フィルム40において、接着剤層30は着色されていることが好ましい。
また、半導体裏面用フィルム41において、接着剤層30及び接着剤層32の少なくとも一方は着色されていることが好ましい。これにより、半導体裏面用フィルム40、41は、優れたマーキング性及び外観性を発揮させることができ、付加価値のある外観の半導体装置とすることが可能になる。このように、着色された半導体裏面用フィルムは、優れたマーキング性を有しているので、半導体素子又は該半導体素子が用いられた半導体装置の非回路面側の面に、半導体裏面用フィルムを介して、印刷方法やレーザーマーキング方法などの各種マーキング方法を利用することにより、マーキングを施し、文字情報や図形情報などの各種情報を付与させることができる。特に、着色の色をコントロールすることにより、マーキングにより付与された情報(文字情報、図形情報など)を、優れた視認性で視認することが可能になる。また、半導体裏面用フィルムは着色されているので、ダイシングテープと、半導体裏面用フィルムとを、容易に区別することができ、作業性等を向上させることができる。更に、例えば半導体装置として、製品別に色分けすることも可能である。半導体裏面用フィルムを有色にする場合(無色・透明ではない場合)、着色により呈している色としては特に制限されないが、例えば、黒色、青色、赤色などの濃色であることが好ましく、特に黒色であることが好適である。
【0052】
本実施の形態において、濃色とは、基本的には、L*a*b*表色系で規定されるL*が、60以下(0?60)[好ましくは50以下(0?50)、さらに好ましくは40以下(0?40)]となる濃い色のことを意味している。
【0053】
また、黒色とは、基本的には、L*a*b*表色系で規定されるL*が、35以下(0?35)[好ましくは30以下(0?30)、さらに好ましくは25以下(0?25)]となる黒色系色のことを意味している。なお、黒色において、L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも、-10?10であることが好ましく、より好ましくは-5?5であり、特に-3?3の範囲(中でも0又はほぼ0)であることが好適である。」

上記キおよびクによれば、刊行物2には、以下の技術事項が記載されている。
「接着剤層(絶縁層に相当。)と電磁波シールド層を備えた半導体裏面用フィルムにおいて、該接着剤層をL*a*b*表色系で規定されるL*値が30以下の黒色にして視認性を向上させた」こと。

(3)刊行物3の記載
刊行物3(特開2014-58108号公報、甲第4号証)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ケ.「【0011】
ベース基材の片面に導電性粘着層が積層され、ベース基材の他面に遮光性絶縁層が積層された本発明の導電性シートは、ベース基材として、樹脂フィルムの両面に同種の金属層が形成された構造を有しているものを使用する。このため、導電性シートにテンションがかかっても、樹脂フィルムの両面での金属層は同じ伸び率を示すために、カールの発生を大きく抑制することができる。また、絶縁フィルムの両側に金属層が配置されているので、曲面や屈折部(角部)等の変化する形状に対して良好な形状追随性で貼付することができ、しかも形状保持性にも優れている。」

コ.「【0029】
<遮光性絶縁層>
本発明の導電性シート100を構成する遮光性絶縁層30は、導電性シート100に遮光性と絶縁性とを付与する層である。ここで、導電性シート100の遮光性絶縁層30表面の絶縁性レベルは、低すぎるとショートの発生が懸念されるので、表面抵抗値が好ましくは1.0×10^(8)Ω/□以上、より好ましくは1.0×10^(10)Ω/□以上である。」

上記ケおよびコよれば、刊行物3には、以下の技術事項が記載されている。
「導電層以外に金属層を備えている」こと。(本件特許発明3に対応した事項)
「導電性シートの絶縁層の表面抵抗値が1×10^(8)Ω/□以上である」こと。(本件特許発明2に対応した事項)

(4)刊行物4の記載
刊行物4(特開2004-273577号公報、甲第5号証)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

サ.「【請求項1】
シールド層と芳香族ポリアミド樹脂からなるベースフィルムを有することを特徴とするシールドフィルム。
【請求項2】
ベースフィルムの厚みが2?12μmであることを特徴とする請求項1に記載のシールドフィルム。
【請求項3】
シールド層が導電性接着剤層および/または金属薄膜を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシールドフィルム。」

上記サによれば、刊行物4には、以下の技術事項が記載されている。
「導電層(導電性接着剤層)以外に金属薄膜を備えている」こと。(本件特許発明3に対応した事項)


5.対比・判断
本件特許発明1と刊行物1発明とを対比する。
なお、下記aないしfは、平成28年4月22日付け特許異議申立書(第2頁や第15頁を参照。)において異議申立人が本件特許発明1を分説したAないしFに対応させた。

a.刊行物1発明の「導電フィラーを含有した硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層」は、導電フィラーを含有しており導電層といえるから、本件特許発明1の「導電層」に相当する。
また、刊行物1発明の「硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物」は、絶縁材料から構成され、該接着剤層に接している層であるから、本件特許発明1の「絶縁層」に相当する。

b.刊行物1発明の「前記硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物は、ポリウレタンポリウレア樹脂、エポキシ樹脂、硬化促進剤または硬化剤、および黒色の着色剤を含有し」は、ポリウレタンポリウレア樹脂が熱硬化性樹脂であるから、本件特許発明1の「前記絶縁層が熱硬化性樹脂、硬化剤、および黒色系着色剤を含み」に相当する。

c.刊行物1発明の「前記黒色の着色剤は、カーボンブラック(三菱化成工業(株)製「MA-100」)であり」は、当該MA-100の粒子径は24nmであるから、本件特許発明1の「前記黒色系着色剤は、平均一次粒子径が20?100nmであり」に相当する。

d.刊行物1発明の「前記黒色の着色剤の含有量は、前記硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物中20重量%」は、本件特許発明1の「前記黒色系着色剤の含有量が、絶縁層100重量%中、12.2?40重量%」に相当する。

e.絶縁層の光沢度について、本件特許発明1は「85°光沢度が15?50」であるのに対し、刊行物1発明にはその旨の特定がない。
また、絶縁層のL*a*b*表色系におけるL*値について、本件特許発明1は「L*値が20?30」であるのに対し、刊行物1発明にはその旨の特定がない。

f.刊行物1発明の「電磁波シールド性接着フィルム」は、上記aのとおり、導電層および絶縁層を備えているものであるから、本件特許発明1の「電磁波シールドシート」に相当する。

したがって、本件特許発明1と刊行物1発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「導電層、および絶縁層を備え、
前記絶縁層が熱硬化性樹脂、硬化剤、および黒色系着色剤を含み、
前記黒色系着色剤は、平均一次粒子径が20?100nmであり、
前記黒色系着色剤の含有量が、絶縁層100重量%中、12.2?40重量%である
ことを特徴とする電磁波シールドシート。」

<相違点1>
絶縁層の光沢度について、本件特許発明1は「85°光沢度が15?50」であるのに対し、刊行物1発明にはその旨の特定がない。

<相違点2>
絶縁層のL*a*b*表色系におけるL*値について、本件特許発明1は「L*値が20?30」であるのに対し、刊行物1発明にはその旨の特定がない。

そこで、上記相違点1について判断する。
刊行物1には、光沢度についての記載が一切なく、光沢度を具体的に算出し得る記載もないので、相違点1は、刊行物1発明と明らかに相違する事項であり、また、刊行物1発明から容易になし得た事項でもない。なお、平成28年8月29日付けの実験成績証明書(乙第1号証)には、本件特許発明1における黒色系着色剤の平均一次粒子径と含有量を満たす刊行物1の実施例4、10ないし13の光沢度について解析を行っているが、85°光沢度における数値は90?100である旨の記載があり、この点からも刊行物1発明の絶縁層の光沢度が相違点1のものであるとはいえない。
そして、同様に刊行物2ないし4にも記載がなく(なお、刊行物3の段落【0030】には、絶縁層において「入射角60°による光沢度が80%、より好ましくは40%以下」との記載が認められるが、「85°光沢度」における測定の記載はない。)、刊行物1発明と組み合わせても相違点1の光沢度を導き出すことはできない。
よって、相違点1は、刊行物1発明に記載された事項ではなく、また、刊行物1発明および刊行物2ないし4に記載された技術事項により当業者が容易になし得た事項でもない。

したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明と同一ではなく、また、刊行物1に記載された発明に刊行物2ないし4に記載された技術事項を組み合わせても当業者が容易になし得たものでもないから、特許法第29条第1項第3号および同条第2項に違反したものではない。

そして、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1に更なる構成を付加したものであるから、本件特許発明1と同様に、刊行物1に記載された発明と同一ではなく、また、刊行物1に記載された発明に刊行物2ないし4に記載された技術事項を組み合わせても当業者が容易になし得たものでもないから、特許法第29条第1項第3号および同条第2項に違反したものではない。


6.むすび
したがって、上記取消理由によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-09-30 
出願番号 特願2015-18094(P2015-18094)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H05K)
P 1 651・ 121- Y (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 酒井 朋広
森川 幸俊
登録日 2015-08-28 
登録番号 特許第5796690号(P5796690)
権利者 トーヨーケム株式会社 東洋インキSCホールディングス株式会社
発明の名称 電磁波シールドシートおよびプリント配線板  
代理人 家入 健  
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