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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) H01L
管理番号 1320234
判定請求番号 判定2016-600009  
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 判定 
判定請求日 2016-03-31 
確定日 2016-10-06 
事件の表示 上記当事者間の特許第5869058号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号写真・図面及びその説明書に示す「ソリッドステートドライブ」は、特許第5869058号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号写真・図面及びその説明書に示す「ソリッドステートドライブ」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第5869058号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1、2、7に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明7」という。総称して「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。


第2 本件特許発明
特許第5869058号の特許請求の範囲の請求項1、2、7に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1、2、7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、平成28年3月31日付け判定請求書で記載されたとおり、特許請求の範囲の構成要件を分説する(以下、「構成要件A」などという。)。

「【請求項1】
A 基板と、
B この基板に搭載される複数の不揮発性半導体メモリと、を備え、
C 前記基板は、第1の主面と、前記第1の主面とは反対側を向いた第2の主面と、を有し、
D 前記第1の主面に設けられ、前記複数の不揮発性半導体メモリが搭載される第1の配線層と、
E 前記第2の主面に設けられた第2の配線層と、
F 内層として形成される複数の配線層と、
G これら配線層間にそれぞれ設けられる複数の絶縁層と、を備え、
H 前記複数の絶縁層の1つは、前記基板の層構造の中心線を含む領域に形成され、
I 前記基板の層構造の中心線よりも前記第1の主面側に形成された前記配線層および前記第1の配線層の配線密度の平均値である第1の平均値と、
J 前記基板の層構造の中心線よりも前記第2の主面側に形成された前記配線層および前記第2の配線層の配線密度の平均値である第2の平均値との差の絶対値である第1の値が7.5%以下であり、
K 前記第1の平均値と前記第2の平均値はともに60%以上であり、
L 前記内層として形成される複数の配線層のうち前記基板の層構造の中心線よりも前記第1の主面側に形成され前記中心線に最も近い前記配線層の配線密度と、前記内層として形成される複数の配線層のうち前記基板の層構造の中心線よりも前記第2の主面側に形成され前記中心線に最も近い前記配線層の配線密度との差の絶対値である第2の値が前記第1の値よりも大きく、
M 前記内層として形成される複数の配線層のうち少なくとも1の前記配線層は、配線密度が80%以上である
N 半導体装置。

【請求項2】
O 前記内層として形成される複数の配線層のうち絶縁層を隔てて前記第1の配線層と対向する第3の配線層は配線密度が80%以上である請求項1に記載の半導体装置。

【請求項7】
P 前記内層として形成される複数の配線層のうち絶縁層を隔てて前記第2の配線層と対向する第5の配線層と絶縁層を隔てて対向する第8の配線層の配線密度が前記第2の平均値より小さい請求項2に記載の半導体装置。」


第3 イ号物件

1.イ号物件(モデル名)の特定
請求人は、被請求人のソリッドステートドライブ(半導体記憶装置)のうちモデル名「TS512GSSD370」をイ号物件として主張している。
一方、被請求人は、上記「TS512GSSD370」には、多くの種類からなる回路基板が使われていて、請求人が説明しているイ号物件はそのうち1つに過ぎないとし、イ号物件説明書第5図の左上に印字されている「29-5000 V1.1 VIC 3C」に限定すべきと主張している。
よって、当審では、少なくとも両者に争いのないモデル名「TS512GSSD370 29-5000 V1.1 VIC 3C」をイ号物件として特定する。

2.イ号物件の構成の特定
イ号物件の構成については、請求人と被請求人において争いはないから、当審では、イ号物件を以下のとおりものものであると特定し認定する。なお、下記aないしpは、イ号物件を本件特許発明に対応するように分説し、各分説に付した符号であり、以下「構成a」などという。

「a:基板と、
b:基板の表面および裏面に搭載されるそれぞれ4つの半導体素子(NAND型フラッシュメモリ)と、
c:基板は、表面と、表面とは反対側を向いた裏面とを有し、
d:基板の表面に設けられ、4つの半導体素子(NAND型フラッシュメモリ)が搭載される第1層の配線層と、
e:基板の裏面に設けられ、4つの半導体素子(NAND型フラッシュメモリ)が搭載される第8層の配線層と、
f:基板の内層に形成された第2層ないし第7層の配線層と、
g;配線層間にそれぞれ設けられる第1層ないし第7層の絶縁層と、
h:第4層の絶縁層は、基板の層構造の中心線を含む領域に形成され、
i:第2層ないし第4層の配線層、および基板の表面に設けられた第1層の配線層の配線密度の平均値(70.1%)と、
j:第5層ないし第7層の配線層、および基板の裏面に設けられた第8層の配線層の配線密度の平均値(72.0%)との差は1.5%であり、
k:上記2つの平均値は、70.1%と72.0%であり、
l:第4層の配線層の配線密度(74.7%)と第5層の配線層の配線密度(84.3%)との差は9.6%であり、
m:第2層の配線層の配線密度は81.6%であり、第5層の配線層の配線密度は84.3%である
n:ソリッドステートドライブ(半導体記憶装置)。」

「o:第2層の配線層の配線密度は81.6%である。」

「p:第6層の配線層の配線密度は63.1%である。」


第4 本件特許発明とイ号物件との充足性についての当事者の主張

1.請求人の主張
・イ号物件は、本件特許発明の全ての構成要件を充足する。
・構成要件Eは、「不揮発性半導体メモリを搭載しない」と限定していないのであるから、第2の配線層に不揮発性半導体メモリを搭載する構成も搭載しない構成もどちらも含んでいる。
・構成要件I及びJは、当初明細書の段落【0023】及び【0024】の記載によれば、基板の下層と上層との配線密度が異なることによって、温度変化における基板の反りが発生しやすくなることがわかるが、この効果は配線密度が「約60?67.5%」以外の場合、たとえば配線密度の平均値が70%や80%の場合にもあてはまることである。

2.被請求人の主張
・構成要件Dに記載される「前記複数の不揮発性半導体メモリ」は、構成要件Bで特定される「複数の不揮発性半導体メモリ」を指しており、第1の配線層に、本件特許発明1に係る全ての不揮発性半導体メモリが搭載されるということができる。また、本件特許の明細書及び図面には、不揮発性半導体メモリが第1の配線層以外の配線層に搭載される旨の記載はない。よって、構成要件Eにおける第2の配線層には、不揮発性半導体メモリが搭載されていないものに限定して解釈されるべきである。
・本件特許の原出願の出願当初における特許請求の範囲、明細書又は図面には、上層の配線密度の平均値として約60%、下層の配線密度の平均値として約60%?約67.5%と記載されているに過ぎず、上層及び下層の配線密度の平均値として、これら以外の数値が開示されているものではない。よって、構成要件I及びJにおける第1の平均値と第2の平均値は、それぞれ上層及び下層の配線密度である「約60%」と「約60%?約67.5%」に限定して解釈されるべきである。


第5 当審の判断

1.構成要件AないしD、Nについて
当該構成要件については請求人と被請求人との間に充足性に関して争いがないところ、構成bおよびdの「4つの半導体素子(NAND型フラッシュメモリ)」は構成要件B、Dの「複数の不揮発性半導体メモリ」に相当し、構成nの「ソリッドステートドライブ(半導体記憶装置)」は構成要件Nの「半導体装置」に相当する。
よって、イ号物件(構成aないしd、n)は、本件特許発明1の構成要件AないしD、Nを充足する。

2.構成要件Eについて
当該構成要件が、「第2の主面に設けられた第2の配線層」に不揮発性半導体メモリが搭載されていないものに限定されるか否かを検討する。
本件特許明細書及び図面には、被請求人が主張するように、不揮発性半導体メモリは第1層(第1の主面)の配線層にしか搭載されておらず、第8層(第2の主面)の配線層は、基板下層(第5層?第8層)の配線密度の平均値を調整するために網状配線層(GND)になっている例しか記載されていない。
しかしながら、そもそも構成要件Eは、第2の主面に配線層が設けられたことのみを特定しているのであって、文言上、不揮発性半導体メモリの搭載の有無を特定する記載は認められない。そして、構成要件Bを参照しても、不揮発性半導体メモリは、単に基板に搭載されると記載されているだけであって、基板のどの面に搭載されるのか限定はされているわけではない。
また、(1)本件特許明細書の段落【0028】には第8層以外で配線密度の調整を行い得ること、(2)図5の記載によれば、第8層は配線密度60%を選択することができ、配線密度60%は第1の主面である第1層(信号層(部品実装面))と同じものであること、(3)本件特許発明の目的は、不揮発性半導体メモリをどこに搭載するかということではなく、基板の反りを防止するために上層と下層の配線密度の平均値を略等しくすることであること、これら(1)ないし(3)を総合的に判断すると、第2の配線層に不揮発性半導体メモリを搭載すること(第8層を信号層にして不揮発性半導体メモリを搭載すること)が、本件特許明細書及び図面の記載により排除されるものとは認められない。
よって、裏面に半導体素子が搭載されたイ号物件(構成要件e)は、本件特許発明1の構成要件Eを充足する。

3.構成要件FないしHについて
当該構成要件については請求人と被請求人との間に充足性に関して争いがないところ、構成fの「第2層ないし第7層の配線層」は構成要件Fの「複数の配線層」に相当し、構成gの「第1層ないし第7層の絶縁層」は構成要件Gの「複数の絶縁層」に相当し、構成hの「第4の絶縁層」は、構成要件Hの「複数の絶縁層の1つ」に相当する。
よって、イ号物件(構成fないしh)は、本件特許発明1の構成要件FないしHを充足する。

4.構成要件IないしKについて
当該構成要件が、前記第1の主面側に形成された前記配線層および前記第1の配線層の配線密度の平均値である第1の平均値を約60%、第2の主面側に形成された前記配線層および前記第2の配線層の配線密度の平均値である第2の平均値を約60%?約67.5%に限定されるか否かを検討する。
本件特許明細書及び図面には、被請求人が主張するように、基板の上層全体の配線密度を約60%、基板の下層全体の配線密度を約60%?約67.5%とした例しか記載されていない。
しかしながら、そもそも構成要件I及びJには、配線密度の平均値そのものを特定している記載は認められない。
そして、本件特許発明の目的は、上層及び下層の配線密度の平均値をそれぞれ所定範囲にすることではなく、基板の反りを防止するために上層と下層の配線密度の平均値を略等しくすることであり、そのために互いの平均値の差を7.5%以内に特定したものであるから、第1の平均値を約60%、第2の平均値を約60%?約67.5%に限定解釈すべきものではなく、例えば平均値が67.5%を超えたものでも互いの平均値の差が7.5%以内であれば、構成要件IおよびJを充足するものである。
よって、構成iないしkの「配線密度の平均値70.1%、72.0%」は、構成要件IないしKの「第1の平均値と第2の平均値はともに60%以上」、「第1の平均値と第2の平均値との差の絶対値が7.5%以下」に相当するから、イ号物件(構成iないしk)は、本件特許発明1の構成要件IないしKを充足する。

5.構成要件LおよびMについて
当該構成要件については請求人と被請求人との間に充足性に関して争いがないところ、構成lの「第4層の配線層」、「第5層の配線層」、「差は9.6%」は、それぞれ構成要件Lの「前記基板の層構造の中心線よりも前記第1の主面側に形成され前記中心線に最も近い前記配線層」、「前記基板の層構造の中心線よりも前記第2の主面側に形成され前記中心線に最も近い前記配線層」、「第2の値が前記第1の値よりも大きく」に相当する。また、構成mの「第2層の配線層」及び「第5層の配線層」は、構成要件Mの「複数の配線層のうち少なくとも1の前記配線層」に相当する。
よって、イ号物件(構成lおよびm)は、本件特許発明1の構成要件LおよびMを充足する。

6.構成要件OおよびPについて
当該構成要件については請求人と被請求人との間に充足性に関して争いがないところ、構成oの「第2層の配線層」は構成要件Oの「前記第1の配線層と対向する第3の配線層」に相当し、第2層の配線密度は81.6%であるから「80%以上」である。また、構成pの「第6の配線層」は構成要件Pの「前記第2の配線層と対向する第5の配線層と絶縁層を隔てて対向する第8の配線層」に相当し、第6の配線密度は63.1%であるから「第2の平均値である72.0%より小さい」ものである。
よって、イ号物件(構成oおよびp)は、本件特許発明2の構成要件Oおよび本件特許発明7の構成要件Pを充足する。

7.小括
以上のことから、イ号物件は、構成要件AないしN(本件特許発明1)、構成要件O(本件特許発明2)、構成要件P(本件特許発明7)を充足する。


第6 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件AないしPをすべて充足するから、本件特許発明1、2、7の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。



 
判定日 2016-09-26 
出願番号 特願2014-134709(P2014-134709)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金田 孝之木下 直哉  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 酒井 朋広
井上 信一
登録日 2016-01-15 
登録番号 特許第5869058号(P5869058)
発明の名称 半導体装置およびシステム  
代理人 大西 邦幸  
代理人 村井 賢郎  
代理人 弁護士法人 ベリーベスト法律事務所  
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