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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1320438
審判番号 不服2016-4085  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-29 
確定日 2016-07-15 
事件の表示 特願2015-112655「書籍」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件出願は、2015年5月16日を出願日とする出願であって、平成27年9月16日付けで手続補正書が提出され、平成28年2月10日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年2月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願の発明

本願の請求項1に係る発明は、上記の平成27年9月16日付けの手続補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。

【請求項1】
見返しの遊び紙の紙面において、略長方形に画された長方形領域を有し、
前記長方形領域は、短辺が80mm?120mm、又は、長辺が130mm?165mmであり、
前記長方形領域又はその裏面に、当該書籍の読者アンケートとしての記入欄が設けられており、
前記長方形領域と、当該紙面における前記長方形領域以外の領域とは、第一の切離し線が境界となって区別されている、書籍。」

3.引用例

(1)原査定に係る平成27年11月18日付けの拒絶理由通知で引用された本願の出願日前の平成10年10月6日に頒布された刊行物である特開平10-264551号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(なお、下線は、審決で付した。以下同じ)。

ア.「【0006】
【発明の実施の形態】つぎに本発明を図1から図8に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、図9と図10に示す従来例と構成が重複する部分は同符号を付してその説明を省略する。本発明に係る装丁本1にあっては図1に示すように、それぞれ所要の用紙を二つ折りしてなる二つの見返し11の間に本本体3を配置しており、この本本体3の背部12と前記見返し11の折り部13とを揃えた状態にして、前記背部12と見返し11の折り部13とに補強紙4をホットメルト接着剤などの接着剤を用いて接着している。」

イ.「【0008】上記本本体3の両側に位置する見返し11それぞれにあっては上述したように本本体3の背部12に折り部13が揃うようにしており、上記補強紙4に対してその折り部13においてのみ接着されている。そして、その折り部13と補強紙4とを接着してなる見返し接着部20(審判註:19の誤記と解される)は本本体3の背部側に位置していることから、その一方の見返し接着部20は貼着片(側縁5a)と表表紙6とを接着してなる上記貼着片接着部17に対して本幅方向に離間配置され、及び他方の見返し接着部20も貼着片5(側縁5b)と裏表紙8とを接着してなる貼着片接着部17に対して本幅方向に離間配置された状態となる。さらに、前記見返し11それぞれの装丁紙9(表表紙、裏表紙)に対応する外側面部14は、表表紙6の内面と裏表紙8の内面における上記貼着片接着部17に沿った近傍位置のみに接着されており、一方の外側面部14と表表紙6の内面とを接着してなる見返し外側面部接着部20から前記見返し接着部19との間に亘って、一方の外側面部14と表表紙6とが非接着状態で相対する第一分離部21が設けられ、同様にして他方の外側面部14と裏表紙8の内面とを接着してなる見返し外側面部接着部20から見返し接着部19との間に亘っても、他方の外側面部14と裏表紙8とが非接着状態で相対する第一分離部21が設けられている。」

ウ.「【0012】さらに、この実施の例において、見返し11は各表紙の内面に対して上記見返し外側面部接着部20にのみ接着されているものであり、例えば、図2に示すように、見返し外側面部接着部20から本の小口に亘っては、見返し11の外側面部14と表表紙6、裏表紙8とが非接着状態とされ、この外側面部14と表表紙6、裏表紙8とが見開き可能に相対することで第二分離部23が設けられている(図6参照)。この第二分離部23では、相対する外側面部14の対向面と各表紙6,8の内面とを情報を掲載する印刷紙面として利用でき、本全体の情報量を多くすることができるように設けられている。なお、外側面部14において見返し外側面部接着部20の小口側に沿って切取りミシン目などを穿設するようにしておくことも可能であり、このようにすれば申し込み葉書などとして利用できる分離容易な紙片を備えた装丁本となる。」

図6は次のものである。


上記ウの「外側面部14において見返し外側面部接着部20の小口側に沿って切取りミシン目などを穿設するようにしておくことも可能であり、このようにすれば申し込み葉書などとして利用できる分離容易な紙片」をふまえて図6をみると、「分離容易な紙片」は、長方形の「外側面部14」に、直線状の「見返し外側面部接着部20」の、「小口側に沿って切取りミシン目」に沿って切り離し可能なものであるから、長方形であるといえる。

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「所要の用紙を二つ折りしてなる二つの見返し11の間に本本体3を配置しており、この本本体3の背部12と前記見返し11の折り部13とを揃えた状態にして、折り部13と補強紙4とを接着してなる見返し接着部19と、見返し11それぞれの装丁紙9(表表紙、裏表紙)に対応する外側面部14と、表表紙6の内面とを接着してなる見返し外側面部接着部20から前記見返し接着部19との間に亘って、一方の外側面部14と表表紙6とが非接着状態で相対する第一分離部21が設けられ、見返し外側面部接着部20から本の小口に亘っては、見返し11の外側面部14と表表紙6、裏表紙8とが非接着状態とされ、外側面部14において見返し外側面部接着部20の小口側に沿って切取りミシン目などを穿設して、申し込み葉書などとして利用できる長方形の分離容易な紙片を備えた装丁本。」

(2)原査定に係る平成27年11月18日付けの拒絶理由通知で引用された本願の出願日前の平成27年3月18日に頒布された刊行物である特許第5686355号公報(以下「引用例2」という。)には、(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている

ア.「【0020】
図1に示されているとおり、本実施形態の書籍1は、本文が横書きである書籍(すなわち左開きの本)であり、その表表紙側の見返し2に、メモ欄3が設けられている。より詳しくは、見返し2のうち、効き紙2aのほうではなく遊び紙2bのほうであって、その表裏二つの面のうち表表紙に近い側の面に、メモ欄3が印刷されている。ここで、「効き紙」とは、見返しのうち表表紙の内側面(裏側面)に貼り合わされている部分をいい、「遊び紙」とは、見返しのうち、見開きで効き紙の反対側にあって、書籍を閉じたときに効き紙と対面する部分をいう。なお、図1では、書籍1の表紙や背を覆う書籍カバーを取り外した状態を示している。」

イ.「【0033】
・・・メモ欄3が印刷された遊び紙2bには、メモ欄3が印刷された部分を書籍1から切り離すことができるミシン目4が設けられている。・・・」

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる

「表表紙側の見返し2のうち、効き紙2aのほうではなく遊び紙2bのほうであって、その表裏二つの面のうち表表紙に近い側の面に、メモ欄3が印刷され、メモ欄3が印刷された遊び紙2bには、メモ欄3が印刷された部分を書籍1から切り離すことができるミシン目4が設けられている書籍1。」

4.対比

本願発明と引用発明1とを対比すると、

後者の「見返し11」は、前者の「見返し」に相当し、以下同様に、「切取りミシン目」は「第1の切り離し線」に、「長方形の分離容易な紙片」は「長方形領域」に、「装丁本」は「書籍」に相当する。

したがって、両者は、

「見返しの紙面において、略長方形に画された長方形領域を有し、
前記長方形領域と、当該紙面における前記長方形領域以外の領域とは、第一の切離し線が境界となって区別されている、書籍。」

の点で一致し、以下の相違点1ないし3で相違している。

相違点1:本願発明は、見返しの「遊び紙」の紙面において、・・・長方形領域を有していると特定しているのに対して、引用発明1は、「分離容易な紙片」(長方形領域)は、見返しの「遊び紙」の紙面におけるものなのか明らかでない点。

相違点2:本願発明では、「長方形領域」は、「短辺が80mm?120mm、又は、長辺が130mm?165mmであ」るのに対して、引用発明1は、「分離容易な紙片」(長方形領域)について、寸法の特定をしていない点。

相違点3:本願発明は、「長方形領域又はその裏面に、当該書籍の読者アンケートとしての記入欄が設けられて」いると特定されているのに対して、引用発明1の「分離容易な紙片」(長方形領域)には、該特定はされていない点。

5.判断

上記の各相違点について検討する。

(1)相違点1について
引用発明1の「分離容易な紙片」は、「見返し外側面部接着部20から本の小口に亘っては、見返し11の外側面部14と表表紙6、裏表紙8とが非接着状態とされ」とされた箇所に位置するものであるから、「効き紙」に設けるとはいえず「見返しの遊び紙」に設けるものであるといえる。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。
また、仮に引用発明1の「分離容易な紙片」(長方形領域)が設けられている、「外側面部14」が、「遊び紙」ではないとしても、引用発明2の「メモ欄3」(「メモ欄3が印刷された部分を書籍1から切り離すことができるミシン目4が設けられて」おり、長方形であるから、本願発明の「長方形領域」に相当する。)は、「遊び紙2b」に設けられている。
してみると、引用発明2には、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項が示されている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、書籍という共通の技術分野に属し、書籍の見返しに、分離容易な紙片を設けるという共通の課題を有するものであるから、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
引用発明1の「分離容易な紙片」をどのような大きさとするかは、当業者が必要に応じて、適宜選択し得る設計的事項であるところ、本願明細書をみても、相違点2に係る本願発明の発明特定事項に格別の技術的意義は記載されていない。
したがって、引用発明1において、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)相違点3について
本願発明の「長方形領域又はその裏面に、当該書籍の読者アンケートとしての記入欄が設けられており」は、「長方形領域」の「表面」「又は裏面に、当該書籍の読者アンケートとしての記入欄が設けられており」の意味であると解される。
引用発明1の「分離容易な紙片」は、「申し込み葉書などとして利用できる」ものであるから、何らかの記入欄が設けられていると解するのが自然であって、その記入欄の内容をどのようなものとするかは、当業者が適宜なしえる設計的事項であるところ、一般に書籍においてアンケートの記入欄が設けられた用紙(はがき)が添付されていることも普通になされており、また「読者アンケート」を前記「記入欄」の内容とすることに技術的意義はない。
また、上記のとおり、引用発明1の「記入欄」は、「分離容易な紙片」に設けられているのであるから必然的に表面又は裏面のどちらかに設けていることになる。
したがって、引用発明1において、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の全体の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1または、引用発明1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-15 
結審通知日 2016-05-10 
審決日 2016-05-26 
出願番号 特願2015-112655(P2015-112655)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 茂樹  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
畑井 順一
発明の名称 書籍  

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