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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A47L
審判 全部無効 2項進歩性  A47L
管理番号 1320454
審判番号 無効2014-800090  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-05-30 
確定日 2016-07-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5000011号発明「電気掃除機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5000011号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第5000011号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5000011号(以下「本件特許」という。)は、平成20年10月23日に出願された特願2008-272924号の一部を平成22年10月15日に新たな特許出願とした特願2010-232634号について、さらにその一部を平成23年12月27日に新たな特許出願とした特願2011-285808号に係り、平成24年5月25日に特許権の設定登録(請求項の数2)がされたものである。
また、本件審判の請求に係る経緯は、以下のとおりである。
平成26年 5月30日 審判請求
同年 8月22日 審判事件答弁書の提出、訂正の請求
同年10月 6日 審判事件弁駁書の提出
同年12月 1日 補正許否の決定
同年12月 1日 審理事項通知
平成27年 1月 5日 口頭審理陳述要領書(請求人)の提出
同年 1月 5日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
同年 1月16日 口頭審理
同年 3月 4日 審決の予告
同年 5月11日 訂正の請求
同年 6月19日 審判事件弁駁書の提出
同年 7月 2日 補正許否の決定
同年 7月31日 審判事件答弁書の提出、訂正の請求
同年 8月20日 手続中止通知
平成28年 1月22日 手続中止解除通知
同年 2月26日 審判事件弁駁書の提出
同年 5月30日 審理終結通知

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
平成27年7月31日付け訂正の請求による訂正は、「特許第5000011号の明細書、特許請求の範囲を本件請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。
なお、平成26年8月22日付け訂正請求書及び平成27年5月11日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。
「【請求項1】
掃除機本体部は、吸気口部、接続管、接続ホースを備え、前記掃除機本体部は前記掃除機本体部の前端に接続された前記接続ホースと前記接続管を介して前記吸気口部に接続される電気掃除機であって、
前記掃除機本体部は、
塵埃を含む旋回気流を導入する導入口および空気の出口となる開口を有し、
旋回気流により塵埃を集塵するダストカップと、
前記ダストカップの中心部から排気するための内筒排気口が形成され、該内筒排気口を通過する空気を濾過する内筒フィルタと、
前記内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニットと、
前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材とを有するサイクロン集塵装置と、
前記空気の出口となる前記サイクロン集塵装置の開口部から、電動送風機を内蔵した前記掃除機本体部の上部に空気を導くダクト部と、
前記ダクト部と前記サイクロン集塵装置の開口部との気密を保つ環状のパッキン部とを備え、
前記ダクト部は前記掃除機本体部に設けられて前記サイクロン集塵装置からの空気を受入れるダクト開口部を有し、
前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体部に着脱可能に設けられるとともに、前記掃除機本体部に装着したときに前記サイクロン集塵装置の軸を前記掃除機本体部の垂直方向に対して斜めに配置させ、
前記内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを通過し、
前記サイクロン集塵装置は内筒を有し、前記内筒は前記内筒フィルタを含み、前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し、
前記内筒フィルタで濾過された後の空気は、前記内筒を通じて前記上部フィルタユニットに導かれ、
前記内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材さらに備えることを特徴とする、電気掃除機。」

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を次のとおり訂正する。
「【請求項2】
前記内筒の底部は開放されており、前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体部の垂直方向より前記ダクト部がある方向の斜めに配置させることを特徴とする、請求項1に記載の電気掃除機。」

(3) 訂正事項3
明細書の段落【0006】を、次のとおり訂正する。
「【0006】
この発明に従った電気掃除機は、掃除機本体部、吸気口部、接続管、接続ホースを備え、掃除機本体部は掃除機本体部の前端に接続された接続ホースと接続管を介して吸気口部に接続される電気掃除機であって、掃除機本体部は、塵埃を含む旋回気流を導入する導入口および空気の出口となる開口を有し、旋回気流により塵埃を集塵するダストカップと、ダストカップの中心部から排気するための内筒排気口が形成され、該内筒排気口を通過する空気を濾過する内筒フィルタと、内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニットと、上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材とを有するサイクロン集塵装置と、空気の出口となるサイクロン集塵装置の開口部から、電動送風機を内蔵した掃除機本体部の上部に空気を導くダクト部と、ダクト部とサイクロン集塵装置の開口部との気密を保つ環状のパッキン部とを備え、ダクト部は掃除機本体部に設けられてサイクロン集塵装置からの空気を受入れるダクト開口部を有し、サイクロン集塵装置は、掃除機本体部に着脱可能に設けられるとともに、掃除機本体部に装着したときにサイクロン集塵装置の軸を掃除機本体部の垂直方向に対して斜めに配置させ、内筒フィルタを経た空気は上部フィルタユニットを通過し、サイクロン集塵装置は内筒を有し、内筒は内筒フィルタを含み、内筒はダストカップの底まで延びてダストカップの底と嵌合し、内筒フィルタで濾過された後の空気は、内筒を通じて上部フィルタユニットに導かれる。内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材をさらに備える。
好ましくは、内筒の底部は開放されており、サイクロン集塵装置は、掃除機本体部の垂直方向よりダクト部がある方向の斜めに配置させる。」

2 訂正の適否
(1) 訂正事項1及び2について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「電気掃除機」について、「掃除機本体部、吸気口部、接続管、接続ホースを備え、掃除機本体部は掃除機本体部の前端に接続された接続ホースと接続管を介して吸気口部に接続される電気掃除機であって」という限定事項を追加するものである。また、「サイクロン集塵装置」について、「前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材とを有する」という限定事項を追加するものである。さらに、「前記内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを通過し、」、「前記サイクロン集塵装置は内筒を有し、前記内筒は前記内筒フィルタを含み、前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し、」、「前記内筒フィルタで濾過された後の空気は、前記内筒を通じて前記上部フィルタユニットに導かれ、」及び「内筒とダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材をさらに備える」という限定事項を追加するものである。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明の「内筒」について、「前記内筒の底部は開放されており」という限定事項を追加するものである。
よって、訂正事項1及び2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1及び2における「掃除機本体」を、明細書の記載と整合させて「掃除機本体部」と訂正し、当該「掃除機本体部」が「塵埃を含む旋回気流を導入する導入口および空気の出口となる開口を有し、旋回気流により塵埃を集塵するダストカップと、前記ダストカップの中心部から排気するための内筒排気口が形成され、該内筒排気口を通過する空気を濾過する内筒フィルタと、前記内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニットと、前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材とを有するサイクロン集塵装置と、前記空気の出口となる前記サイクロン集塵装置の開口部から、電動送風機を内蔵した前記掃除機本体部の上部に空気を導くダクト部と、前記ダクト部と前記サイクロン集塵装置の開口部との気密を保つ環状のパッキン部とを備え」たものであることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項1は、「前記」を適切な個所に挿入することにより、請求項に記載されている発明特定事項の関係を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
よって、訂正事項1及び2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」又は第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ また、上記アのとおり、訂正事項1及び2は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ そして、訂正事項1及び2は、本件特許明細書の段落【0012】の「電気掃除機400は、掃除機本体部410、吸気口部420、接続管430、接続ホース440、操作ハンドル450などを備えている。」との記載、上部フィルタユニット13の上にフィルタ除塵部材132が設けられていることが看取される【図3】の記載、段落【0027】の「一方、塵埃が分離された後の空気は、集塵容器11から矢印112aで示す排気経路に沿って掃除機本体部410に設けられた排出口から外部に排気される。ここで、集塵容器11から排気口までの排気経路112上には、内筒12、塵埃受部14および上部フィルタユニット13が順に配置されており、空気流中の比較的細かい塵埃が内筒12および上部フィルタユニット13に設けられたフィルタにより取り除かれる。」との記載、回転軸部に関する段落【0034】の(内筒の一部分を構成する)「回転軸部123bは、集塵容器11の底部に設けられた嵌合部11aに嵌合される中空円筒である。」との記載、段落【0047】の「前記内筒フィルタで濾過された後の空気は、前記内筒を通じて前記上部フィルタユニットに導かれる」との記載、段落【0024】の「このシール部材11bにより、回転軸部123bおよび集塵容器11の間の空気の漏れを防止できる。」との記載、段落【0034】の「回転軸部123bは、集塵容器11の底部に設けられた嵌合部11aに嵌合される中空円筒である。」という記載、及び、回転軸部123bの下端が開放されていることが看取される【図3】の記載から、導き出せるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項1及び2は、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(2) 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正である。
よって、訂正事項3は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、訂正事項3が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは、上記「(1)ウ」に示したとおりである。
よって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるから、同法第134条の2第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、一群の請求項ごとに訂正を認める。

第3 本件特許に係る発明
上記「第2」に示したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の記載からみて、その訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
掃除機本体部は、吸気口部、接続管、接続ホースを備え、前記掃除機本体部は前記掃除機本体部の前端に接続された前記接続ホースと前記接続管を介して前記吸気口部に接続される電気掃除機であって、
前記掃除機本体部は、
塵埃を含む旋回気流を導入する導入口および空気の出口となる開口を有し、
旋回気流により塵埃を集塵するダストカップと、
前記ダストカップの中心部から排気するための内筒排気口が形成され、該内筒排気口を通過する空気を濾過する内筒フィルタと、
前記内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニットと、
前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材とを有するサイクロン集塵装置と、
前記空気の出口となる前記サイクロン集塵装置の開口部から、電動送風機を内蔵した前記掃除機本体部の上部に空気を導くダクト部と、
前記ダクト部と前記サイクロン集塵装置の開口部との気密を保つ環状のパッキン部とを備え、
前記ダクト部は前記掃除機本体部に設けられて前記サイクロン集塵装置からの空気を受入れるダクト開口部を有し、
前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体部に着脱可能に設けられるとともに、前記掃除機本体部に装着したときに前記サイクロン集塵装置の軸を前記掃除機本体部の垂直方向に対して斜めに配置させ、
前記内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを通過し、
前記サイクロン集塵装置は内筒を有し、前記内筒は前記内筒フィルタを含み、前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し、
前記内筒フィルタで濾過された後の空気は、前記内筒を通じて前記上部フィルタユニットに導かれ、
前記内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材さらに備えることを特徴とする、電気掃除機。
【請求項2】
前記内筒の底部は開放されており、前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体部の垂直方向より前記ダクト部がある方向の斜めに配置させることを特徴とする、請求項1に記載の電気掃除機。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第5000011号の請求項1に記載された発明(本件発明1)及び請求項2に記載された発明(本件発明2)についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、下記の証拠方法を提出し、以下の無効理由を主張する。

1 無効理由
(1)無効理由1[平成27年7月2日付け補正許否の決定により許可。]
本件発明1は、
・甲第1号証、周知技術[甲第1号証の1、甲第2号証(甲第2号証の1?6)、甲第3号証(甲第3号証の1?5)、甲第7号証(甲第7号証の1)]に基いて、
あるいは、
・甲第7号証、周知技術[甲第1号証、甲第2号証等、甲第3号証(甲第3号証の1?5)]に基いて、
当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、よってその特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

(2)無効理由2[平成27年7月2日付け補正許否の決定により許可。]
本件発明2は、
・甲第1号証、周知技術[甲第1号証の1、甲第2号証(甲第2号証の1?6)、甲第3号証(甲第3号証の1?5)、甲第7号証(甲第7号証の1)]に基いて、
あるいは、
・甲第7号証、周知技術[甲第1号証、甲第2号証等、甲第3号証(甲第3号証の1?5)]に基いて、
当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、よってその特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

(3)無効理由3[平成27年7月2日付け補正許否の決定により許可。]
請求項1中の「前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材」という記載及び「前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し、」という記載は不明確であり、特定しようとする発明を不明確にしている。請求項1を引用する請求項2についても同様である。
よって、請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさず、よってその特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。

(4) なお、請求人が平成26年10月6日付け審判事件弁駁書において新たに追加した甲第4?6号証により立証しようとする事実に基づく、「製品1」に係る事項による請求の理由の補正は、平成26年12月1日付け補正許否の決定により、許可しないものとされた。

2 証拠方法
審判請求書に添付して甲第1号証、甲第1号証の1、甲第2号証、甲第2号証の1?6が提出され、平成26年10月6日付け審判事件弁駁書に添付して甲第3号証、甲第3号証の1?5、甲第4?6号証が提出され、平成27年6月19日付け審判事件弁駁書に添付して甲第7号証、甲第7号証の1が提出された。

甲第1号証 特開2003-180579号公報
甲第1号証の1 特開2003-180570号公報
甲第2号証 特開2001-314354号公報
甲第2号証の1 特開2007-117465号公報
甲第2号証の2 特開2002-45313号公報
甲第2号証の3 特開2004-267680号公報
甲第2号証の4 特表2006-524062号公報
甲第2号証の5 特開2007-20769号公報
甲第2号証の6 特開2007-307352号公報
甲第3号証 特開2004-290212号公報
甲第3号証の1 特開2004-229826号公報
甲第3号証の2 特開2004-229827号公報
甲第3号証の3 特開2005-13416号公報
甲第3号証の4 特開2003-265377号公報
甲第3号証の5 特開2005-58787号公報
甲第4号証 製品1のカタログ
甲第5号証 現物1を示す写真及びその説明書
甲第6号証 現物1の取り扱い説明書
甲第7号証 特開2007-29721号公報
甲第7号証の1 特開2007-111504号公報

第5 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、請求人が主張する無効理由は理由がないものであると主張する。
具体的には、以下の点について主張する。
(1)本件発明1は、「塵埃が分離された後の空気は、矢印112cで示す方向に流れ、さらに集塵容器11から矢印112a、112bで示す排気経路に沿って掃除機本体部410に設けられた排出口から外部に排気される。・・・矢印112cで示す方向の流れの空気が上部フィルタユニット13に衝突するときに、空気は軸方向の大きな速度成分を有しているため、軸方向の速度成分を維持したまま上部フィルタユニット13を通過することができる。」(口頭審理陳述要領書第4頁10?20行)旨の主張、本件発明1の構成要件I1「前記掃除機本体に装着したときに前記サイクロン集塵装置の軸を掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置させ」及びJ1’「前記内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを上方に通過する」について、「前記相違点(構成要件I1およびJ1’の組み合わせ)に基づき、本願発明では、内筒フィルタを経た空気は上部フィルタユニットを上方に通過するため、上部フィルタユニットの全体を空気が通過する。その結果、上部フィルタユニットを効率よく利用することができる。したがって、上部フィルタユニットの寿命が長くなる。内筒フィルタを経た空気は上部フィルタユニットを上方に通過するためサイクロン集塵装置が嵩高となるが、サイクロン集塵装置の軸が掃除機本体に対して斜めに配置されているため、掃除機本体の高さを低く抑えることができる。」(答弁書第13頁20?27行)旨の主張、及び「積層体が傾斜し、かつ上部フィルタユニット上方に空気が通過する場合(本件発明)と、積層体が直立し、かつ上部フィルタ側方に空気が通過する場合(甲1)とを比較すると、本件発明では矢印112aで示す排気経路は積層体が傾斜することで直線に近い形状となり、かつ、電動送風機2に筐体10が近づく。その結果、排気効率が向上する。一方、甲1の排気経路では、上部フィルタに囲まれた狭い空間を空気は通過し、この狭い空間で経路が直角に曲げられるため、圧力損失が大きい。その結果、排気効率が低下する。」(口頭審理陳述要領書第5頁第24?31行)旨の主張。
(2)甲1発明について、「甲1発明では、掃除機全体の強度が低下するのを抑制することができるサイクロン式のキャニスタタイプの電気掃除機を提供することを目的としている(段落0008)。サイクロン集塵装置の軸が掃除機本体に対して斜めに配置されている場合には掃除機本体の前後方向の長さが長くなる。この場合、掃除機本体の強度が低下するため、かかる変更は甲1本来の目的を変更するものである。・・・そのため、甲1発明においてサイクロン集塵装置の軸を傾斜させることに関しては、阻害要因があるといえる。」(平成26年8月22日付け審判事件答弁書第14頁第6?19行)旨の主張。
(3)甲1の1発明について、「甲1の1発明では、ダストボックスを掃除機本体に上方から挿入する場合、吸気口および排気口における接合部分では接合面同士が擦りあうためシールパッキンの密着性を高くすることができず、接合部分のシールを確実に行うことが困難であるという課題が開示されている(段落0006)。サイクロン集塵装置の軸が掃除機本体に対して斜めに配置されている場合には、接合部分にサイクロン集塵装置の荷重が加わるため、接合面同士がより強く擦り合う。かかる変更は甲1の1本来の目的を変更するものであり、このような変更に関しては阻害要因があるといえる。」(平成26年8月22日付け審判事件答弁書第14頁第21?28行)旨の主張。
(4)本件発明2の構成要件J1’「内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを上方に通過する」とA2「掃除機本体の垂直方向よりダクト部がある方向の斜めに配置させる」について、「上部フィルタユニットを上方に空気が通過する(構成要件J1’)場合には、上部フィルタユニットの全体を空気が通過する。その結果、上部フィルタユニットを効率よく利用することができる。したがって、上部フィルタユニットの寿命が長くなる。上部フィルタユニット上方に空間が必要となるため、サイクロン集塵装置が軸方向に長くなるが、掃除機本体の垂直方向よりダクト部がある方向の斜めに配置させる(構成要件A2)ことにより、掃除機本体の高さを低く抑えることができ、さらに、サイクロン集塵装置が掃除機本体の電動送風機と近くなり、排気経路を短くして圧力損失を軽減することができるため、排気効率が向上する。」(平成26年8月22日付け審判事件答弁書第15頁第18?26行)旨の主張。
(5)甲第1号証を基礎とした組み合わせに関して、甲第1号証では、フィルタ29から落下した塵埃は内側フィルタ12の底に溜まり、ダストボックス本体5の底へ到達するものではない。こうした構造を考慮すれば、甲第1号証は、そもそも、ダストボックス本体5の底の空間部28に塵埃を堆積させるものではなく、さらに、内部フィルタ部7が備えられていることは、円筒状フィルタ29に濾過される塵埃をダストボックス本体5底部の空間部28に収容させることの阻害要因となる。その結果、「甲第1号証に甲第7号証を組み合わせることに関しては阻害要因があるといえる。」(平成27年7月31日付け答弁書第5頁第1?20行)旨の主張。

第6 甲各号証の記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証、甲第1号証の1、甲第2号証、甲第2号証の1?6、甲第3号証、甲第3号証の1?5、甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

1 甲第1号証
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気掃除機に関する。さらに詳しくは、サイクロン式のダストボックスを備えたキャニスタタイプの電気掃除機に関する。」
(1b)「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の電気掃除機は、キャニスタタイプの掃除機本体の前部に、サイクロン式のダストボックスが設けられ、該掃除機本体の後部に、電動送風機収納室が形成され、前記掃除機本体前部に、吸込ホースを連結するための連結口を有する前壁が設けられ、前記掃除機本体の後方上部と前記前壁とのあいだが、前記ダストボックスの側方周囲に延びる連結部によって連結され、当該連結部と前記掃除機本体の底部とのあいだには、前記ダストボックスの側面を露出させる少なくとも1つの開口が形成されてなることを特徴としている。」
(1c)「【0012】本実施の形態の電気掃除機は、図1?8に示されるように、キャニスタタイプの掃除機本体1の前部に形成されたダストボックス収容部1f(図9参照)には、サイクロン式のダストボックス2が上方から挿入されることにより着脱自在に設けられ、掃除機本体1の後部40には電動送風機収納室1d(図10参照)が形成され、この収納室1d内部に電動送風機3が内蔵された構成になっている。また、図示されていないが、掃除機本体1の前端面の連結口4には、一連の吸込ホース、吸込管および吸込具が連結されている。また、掃除機本体1は、床面を移動できるように、前輪1aおよび一対の後輪1b、1cを備えている。」
(1d)「【0027】ダストボックス2は、図4?6および図8に示されるように、略円筒状の透明樹脂などで形成された透明または半透明のダストボックス本体5の内側にそれぞれ略円筒状の外側フィルタ部6および内側フィルタ部7がダストボックス本5と同心状に配置されている。
【0028】図6に示されるように、外側フィルタ部6は、外側筒状部材8と、該外側筒状部材8側面に縦方向に沿って形成された複数本のスリット8a周囲を被覆する外側フィルタ9とからなる。」
(1e)「【0031】同様に、内側フィルタ部7は、内側筒状部材11と、該内側筒状部材11側面に縦方向に沿って形成された複数本のスリット11a周囲を被覆する内側フィルタ12とからなる。」
(1f)「【0034】外側フィルタ部6および内側フィルタ部7は、図6に示されるように、ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14の下面に垂れ下がった状態で固着されている。
【0035】具体的には、外側筒状部材8の上部に延設された中蓋部8bがシールリング8cを挟んだ状態で上蓋部14の内壁に嵌合している。中蓋部8bとダストボックス本体5とのあいだは中蓋部8bの段部に設けられたシールリング8dによって気密的に封止されている。一方、内側筒状部材11の上部に延設された複数のスリットを有する円筒状ホルダ11bは、円筒状フィルタ29を保持した状態で上蓋部14内部に収納されている。円筒状ホルダ11bと中蓋部8bとのあいだは円筒状ホルダ11bの外周面下端に設けられたシールリング11cによって気密的に封止されている。
【0036】ダストボックス2の側面には、吸気管15が突設され、吸気管15の先端側開口16は、掃除機本体の幅方向の中心に形成された前記連結口4(図1および図7参照)と直接連結できるように、ダストボックス2の幅方向の略中心付近に形成されている。
・・・
【0038】さらに、図6に示されるように、ダストボックス本体5の底部には、取手19の下部に設けられたヒンジ20により開閉自在に構成された底蓋21が取り付けられている。この底蓋21は、吸気管15の下方に設けられたレバー22の上部を押すことにより、レバー22の下端に形成されたクランプ23が底蓋21側の係止爪24より外れて、ダストボックス本体5の下端開口を開放するようになっている。」
(1g)「【0041】掃除機本体1の外部から吸入された塵埃を含む空気は、図6?7に示されるように、連結口4および吸気管15を通してダストボックス2内に入り、ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回する。具体的には、ダストボックス本体5の内壁、外側フィルタ9および鍔部10によって囲まれた第1サイクロン空間25内部において、空気が旋回しながら外側フィルタ9内部へ流れ、大きな塵埃(粗塵)は、ダストボックス本体5の内壁と鍔部10とのあいだの隙間34を通ってダストボックス本体5底部の空間部26に堆積する。
【0042】同様に、外側フィルタ9内部へ流れた空気もさらに旋回する。具体的には、外側筒状部材8、内側フィルタ12および鍔部13によって囲まれた第2サイクロン空間27内部において、空気は旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、塵埃は、外側筒状部材8と鍔部13とのあいだの隙間35を通ってダストボックス本体5底部の空間部28に堆積する。
【0043】なお、底蓋21には、外側筒状部材8の下端縁と底蓋21とのあいだの隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられているので、底蓋21に沿って空間部26から空間部28へ空気が洩れることがない。
【0044】ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気は、上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらに濾過されたのち、上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外に出てから、図7に示す連絡通路31を介して電動送風機3に取り込まれ、電動送風機3から排気フィルタ32を通して濾過され、掃除機本体1の側面に形成されたメッシュ状の排気口24および後輪1bまたは1cのメッシュを介して外部へ排出される。」
(1h)【図6】には、内側フィルタ12の内側筒状部材11の上方は開口しており、当該開口を通って、ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気は上蓋部14内部の円筒状フィルタ29に流れることが見てとれる。また、外側筒状部材8の下端縁は、ダストボックス本体5の底部の底蓋21にパッキン36を介して嵌合していることが見てとれる。

上記(1a)?(1h)の記載事項を総合すると、甲第1号証には、下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「サイクロン式のダストボックス2を備えたキャニスタタイプの電気掃除機であって、
キャニスタタイプの掃除機本体1の前部に形成されたダストボックス収容部1fには、サイクロン式のダストボックス2が上方から挿入されることにより着脱自在に設けられ、掃除機本体1の後部40には電動送風機3が内蔵された構成であり、
掃除機本体1の前端面の連結口4には、一連の吸込ホース、吸込管および吸込具が連結されており、
ダストボックス2は、略円筒状のダストボックス本体5の内側にそれぞれ略円筒状の外側フィルタ部6および内側フィルタ部7がダストボックス本体5と同心状に配置されたものであり、
外側フィルタ部6は、外側筒状部材8と、該外側筒状部材8側面に形成された複数本のスリット8a及び当該スリット8aの周囲を被覆する外側フィルタ9とからなり、
内側フィルタ部7は、内側筒状部材11と、該内側筒状部材11側面に形成された複数本のスリット11a及び当該スリット11aの周囲を被覆する内側フィルタ12とからなり、
外側フィルタ部6および内側フィルタ部7は、ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14の下面に垂れ下がった状態で固着され、
内側筒状部材11の上部に延設された複数のスリットを有する円筒状ホルダ11bは、円筒状フィルタ29を保持した状態で上蓋部14内部に収納され、
ダストボックス2の側面には、先端側開口16を有する吸気管15が突設され、
掃除機本体1の外部から吸入された塵埃を含む空気は、吸気管15を通してダストボックス2内に入り、ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回しながら外側フィルタ9内部へ流れ、大きな塵埃はダストボックス本体5底部の空間部26に堆積し、外側フィルタ9内部へ流れた空気は旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、塵埃はダストボックス本体5底部の空間部28に堆積し、ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気は、内側フィルタ12の内側筒状部材11の上方開口を通って、上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらに濾過されたのち、上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外に出てから、掃除機本体1の連絡通路31を介して電動送風機3に取り込まれ、掃除機本体1の排気口を介して外部へ排出されるものであり、
ダストボックス本体5の底部の底蓋21には、底蓋21に沿って空間部26から空間部28へ空気が洩れることがないように、外側筒状部材8の下端縁と底蓋21とのあいだの隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられ、外側フィルタ部6の外側筒状部材8の下端縁は、底蓋21にパッキン36を介して嵌合している、電気掃除機。」

2 甲第1号証の1
(2a)「0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気掃除機に関する。さらに詳しくは、サイクロン式のダストボックスを備えた電気掃除機に関する。」
(2b)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の電気掃除機は、サイクロン式のダストボックスが上方から掃除機本体に装着され、前記ダストボックスの外面において略対向して吸気口および排気口が形成され、該吸気口と排気口とのあいだの距離が上方に向かうにつれて広がるように、前記吸気口および排気口が互いに傾斜して形成されてなることを特徴とする。」
(2c)「【0013】本実施の形態の電気掃除機は、図1?8に示されるように、キャニスタタイプの掃除機本体1の前部に形成されたダストボックス収容部1f(図10?11参照)には、サイクロン式のダストボックス2が上方から挿入されることにより着脱自在に設けられ、掃除機本体1の後部には電動送風機3が内蔵された構成になっている。また、図示されていないが、掃除機本体1の前端面の連結口4には、一連の吸込ホース、吸込管および吸込具が連結されている。また、掃除機本体1は、床面を移動できるように、前輪1aおよび一対の後輪1b、1cを備えている。
【0014】図6に示されるように、ダストボックス2の外面において略対向して配置されるように、ダストボックスの前面には吸気口として吸気管15が設けられ、ダストボックス2の後面には排気口30が形成されている。」
(2d)「【0017】図6に示されるように、吸気管15の先端側開口16と排気口30の先端縁とのあいだの距離が上方に向かうにつれて広がるように、先端側開口16と排気口30とが互いに傾斜して形成されている。それにより、ダストボックス2を上方から掃除機本体1に挿入したときに、図7に示されるように、吸気管15の先端側開口16の先端縁が前方に傾斜しているシールパッキン41に面接触し、一方、排気口30の先端縁が後方に傾斜しているシールパッキン42に面接触することにより、ダストボックス2をダストボックス収容部1f(図10?11参照)に挿入する際の接合面同士の摩擦抵抗が低減し、それにより吸気口(先端側開口16)および排気口30における接合部分のシールを容易かつ確実に行なうことができる。
【0018】しかも、シールパッキン41、42はそれぞれ、上方から挿入されるダストボックスの吸気口(先端側開口16)および排気口30に対して傾斜した状態で接触するので、シールパッキン41、42がめくれたり、損傷するなどの問題が解消される。」
(2e)「【0023】ダストボックス2は、図4?6および図8に示されるように、略円筒状の透明な合成樹脂などで形成された透明または半透明のダストボックス本体5の内側にそれぞれ略円筒状の外側フィルタ部6および内側フィルタ部7がダストボックス本体5と同心状に配置されている。
【0024】図6に示されるように、外側フィルタ部6は、外側筒状部材8と、該外側筒状部材8側面に縦方向に沿って形成された複数本のスリット8a周囲を被覆する外側フィルタ9とからなる。」
(2f)「【0027】同様に、内側フィルタ部7は、内側筒状部材11と、該内側筒状部材11側面に縦方向に沿って形成された複数本のスリット11a周囲を被覆する内側フィルタ12とからなる。」
(2g)「【0030】外側フィルタ部6および内側フィルタ部7は、図6に示されるように、ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14の下面に垂れ下がった状態で固着されている。
【0031】具体的には、外側筒状部材8の上部に延設された中蓋部8bがシールリング8cを挟んだ状態で上蓋部14の内壁に嵌合している。中蓋部8bとダストボックス本体5とのあいだは中蓋部8bの段部に設けられたシールリング8dによって気密的に封止されている。一方、内側筒状部材11の上部に延設された複数のスリットを有する円筒状ホルダ11bは、円筒状フィルタ29を保持した状態で上蓋部14内部に収納されている。円筒状ホルダ11bと中蓋部8bとのあいだは円筒状ホルダ11bの外周面下端に設けられたシールリング11cによって気密的に封止されている。
【0032】ダストボックス2の側面には、吸気管15が突設され、吸気管15の先端側開口16は、掃除機本体の幅方向の中心に形成された前記連結口4(図1および図7参照)と直接連結できるように、ダストボックス2の幅方向の略中心付近に形成されている。」
(2h)「【0037】掃除機本体1の外部から吸入された塵埃を含む空気は、図6?7に示されるように、連結口4および吸気管15を通してダストボックス2内に入り、ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回する。具体的には、ダストボックス本体5の内壁、外側フィルタ9および鍔部10によって囲まれた第1サイクロン空間25内部において、空気が旋回しながら外側フィルタ9内部へ流れ、大きな塵埃(粗塵)は、ダストボックス本体5の内壁と鍔部10とのあいだの隙間34を通ってダストボックス本体5底部の空間部26に堆積する。
【0038】同様に、外側フィルタ9内部へ流れた空気もさらに旋回する。具体的には、外側筒状部材8、内側フィルタ12および鍔部13によって囲まれた第2サイクロン空間27内部において、空気は旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、塵埃は、外側筒状部材8と鍔部13とのあいだの隙間35を通ってダストボックス本体5底部の空間部28に堆積する。
【0039】なお、底蓋21には、外側筒状部材8の下端縁と底蓋21とのあいだの隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられているので、底蓋21に沿って空間部26から空間部28へ空気が洩れることがない。
【0040】ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気は、上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらに濾過されたのち、上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外に出てから、図7に示す連絡通路31を介して電動送風機3に取り込まれ、電動送風機3から排気フィルタ32を通して濾過され、掃除機本体1の側面に形成されたメッシュ状の排気口33および後輪1bまたは1cのメッシュを介して外部へ排出される。」

3 甲第2号証
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気掃除機に関わり、特に集塵装置を着脱自在に形成した電気掃除機の改良に関する。」
(3b)「【0017】20は前記掃除機本体1の集塵装置収納室9に着脱自在に収納される集塵装置で、集塵装置収納室9への収納状態で、後述する蓋体24が後方上部に向くように傾斜して装着されるようになっている。
【0018】前記集塵装置20は、透明な合成樹脂にて形成された略円筒状の集塵ケース21と、該集塵ケース21内に回転自在に装着される円筒状の筒体22と、該筒体22の内側に集塵ケース21に着脱自在に装着されるメインフィルター23と、前記集塵ケース21の上面側に形成される塵埃排出用開口部を開閉自在に閉塞する蓋体24とから構成されている。」
(3c)「【0025】前記蓋体24には、略中央部分に排出口44が形成されており、該排出口44はメインフィルター23の筒状体28内に連通すると共に、集塵装置20の掃除機本体1への装着状態で、排出口44が掃除機本体1の吸引口11にパッキン45を介して気密に連通するようになっている。前記排出口44に設けられたパッキン45は、メインフィルター23の筒状体28に当接し、筒状体28と蓋体24との間からメインフィルター23の不織布を通過しない空気が電動送風機6に向かって流れるのを防止するようになっている。」
(3d)「【0027】而して、吸込口4に可撓性ホースを接続し、電動送風機6を駆動すると、床用吸込具から吸引された塵埃が、延長管、可撓性ホースを介して吸込口4から吸塵路12、接続口10、接続口41を経て集塵ケース21内に入り、集塵ケース21内壁に沿って旋回しながら蓋体24方向に流れ、比較的大きな塵埃は蓋体24側から圧縮された状態に堆積していく。
【0028】微細な塵埃は空気と共にプレフィルター28を通過するが、メインフィルター23の不織布により濾過され、きれいな空気のみメインフィルター23を通過して吸引路15を経て電動送風機6を通って排気口18から外部に排出される。」
(3e)「【0034】集塵装置20は掃除機本体1への装着状態で、排出口44が後方上部に向かって傾斜するようになっていると共に、電動送風機6を吸気口7が上に向くように装着しているので、吸込口4から集塵装置20への吸塵路12及び集塵装置20から電動送風機6への吸引路15を空気がスムースに流れるよう構成することができ、通気抵抗を低減して吸気効率を向上することができる。」

4 甲第2号証の1
(4a)「【0001】
本発明は、集塵器およびそれを備えた電気掃除機に関するものである。」
(4b)「【0027】
自走式掃除機は、図1?図3に示すように、電動送風機13を内装した掃除機本体10と、床面のゴミや埃等を吸引する吸込口体20と、掃除機本体10に着脱自在に装着された集塵器30aとから構成される。」
(4c)「【0029】
掃除機本体10は、図3に示すように、小判型のケーシングの上面にカプセル状の集塵器30aを収容するための収容凹部15が形成され、該収容凹部15に集塵器30aが着脱自在に装着される。ケーシングの前部側には、障害物や壁面等に衝突した際の衝撃を緩和するバンパー12が取り付けられる。」
(4d)「【0036】
集塵器30aは、掃除機本体10の上面に形成された収容凹部15に着脱可能に収納されるものであって、図5に示すように、吸込口体20から集塵室32内に吸引されたゴミや埃等を含む吸気を集塵室32内で旋回させ、排気筒34のフィルタ34aにより空気と塵埃とを分離させると共に吸い込んだ空気を集塵室32外へ排出するサイクロン式の集塵器である。
【0037】
集塵室32を形成する集塵容器は、半カップ状の蓋33cとケース33dとが互いの開口縁部同士をネジ嵌合してカプセル状に形成される。
【0038】
排気筒34は、円筒状に形成され、集塵室32の中央に配設される。排気筒34の一端は、半カップ状の蓋33cの内側にネジ止め固定され、他端部が蓋33cの開口縁からケース側に突出している。この突出部の周壁には集塵室32から空気を排出するための開口が形成され、該開口を含む排気筒34の突出部全体を覆うように袋状のフィルタ34aが止着される。排気筒34の蓋33cの内側部分には、フィルタ34aを通って分離された空気を集塵容器排気口33bに導く連通口が開口され、排気筒34から排出される空気を集塵容器排気口33bから収容凹部15側の排出口18に導くようになっている。」
(4e)【図3】には、集塵器30aが掃除機本体10に対してその上部が後方の電動送風機がある方向に傾斜した姿勢で装着されていることが見てとれる。

5 甲第2号証の2
(5a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ケース体に集塵部が着脱可能に装着される電気掃除機に関する。」
(5b)「【0020】図1および図2において、1は掃除機本体で、この掃除機本体1は、ケース体2と、このケース体2の上部を回動により開放可能に後部が連結して取り付けられる蓋体3とを備えた本体ケース4を有している。
【0021】また、ケース体2は、電動送風機6を収容する電動送風機室7を内部に区画形成する駆動部8と、この駆動部8に隣接し集塵部9を着脱可能に装着する載置部10とを備えている。」
(5c)「【0032】一方、集塵部9は、上端面に排出口67を開口し底部周縁がケース体2の載置部10に載置される有底円筒状の集塵カップ65と、この集塵カップ65の上端面の開口に着脱可能に嵌挿して装着される濾過部66とを備えている。そして、濾過部66は、集塵カップ65の上端面に開口する排出口67に嵌合される略円筒状の嵌合部68と、この嵌合部68の下端面を閉塞する通気性を有した蓋部69とを備え、皿状に形成されている。
【0033】さらに、濾過部66の蓋部69には、周縁近傍に変位した位置に下方に向けて円筒状で、上端に吸込部51の吸込管53の下端が略気密に連結し下端が嵌合部68の接線方向に沿った側方に向けて吸気開口70を開口する吸気筒部71が設けられている。また、濾過部66には、嵌合部68の上端面の開口に着脱可能に取り付けられ集気開口72を複数開口する格子状の枠部73が設けられている。そして、蓋部69と枠部73との間には、通気性を有するフィルタ74が集気開口72を閉塞するように着脱可能に装着されている。
【0034】そして、濾過部66を集塵カップ65に取り付けて構成した集塵部9は、上部の濾過部66が前側上方に向く傾斜した状態で集塵カップ65の下部がケース体2の装着下凹部38に載置係合され、蓋体3がケース体2の上部を覆うように回動する状態で吸気筒部71の上端が吸込部51の吸込管53の下端に略気密に連結するとともに枠部73が吸気路56の通孔55に略密着する状態でケース体2と蓋体3とにて挟持されて本体ケース4の前側に装着される。」
(5d)「【0038】この掃除待機状態で、ホース81の先端部に配設された図示しない操作手段の設定操作により、適宜電動送風機6を駆動して掃除する。そして、この電動送風機6の駆動により、吸込口体の下面に開口する図示しない床面吸込口から空気とともに塵埃を吸い込み、延長管およびホース81を介して吸込部51の本体吸込口52に至る。さらに、吸込部51の吸込管53を通って集塵部9の吸気筒部71から集塵カップ65内に集塵カップ65の内周面の接線方向に渦巻き状に吸い込まれる。そして、塵埃は渦巻き状に吸い込まれた空気の渦流の遠心力により集塵カップ65の内面に沿って落下し、空気は集塵カップ65の中心軸に位置する渦流の中心から集塵部9の濾過部66のフィルタ74を通って枠部の集気開口72から流出し、空気と塵埃とが分離される。さらに、分離された空気は、集塵部9の枠部73と密着する蓋体3の通孔55から吸気路56を通過し、この吸気路56の下流側に略気密に連通するケース体2の連通孔25を通って電動送風機6の吸気口から吸気される。さらに、空気は、電動送風機6内を通って電動送風機室7内に排気され、さらに排気口31から外気に排気される。」

6 甲第2号証の3
(6a)「【0032】
図1?図18において、5は吸引風を発する電動送風機6と塵埃を吸引する吸込具に連通し、上方に配設され吸引した吸引風から塵埃を遠心分離する遠心分離部7と、下方に配設され前記遠心分離部7から分離された塵埃を蓄積する塵埃蓄積部8から構成された集塵部である。前記集塵部5は、前記遠心分離部7の鉛直方向の中心軸が、前記塵埃蓄積部8の鉛直方向の中心軸に対し30°傾斜させた構成となっている。
【0033】
また、前記吸込具にて吸引した塵埃を含む吸引風を集塵部5に流入するための吸気口部で、10は前記遠心分離部7の入口で前記吸気口部9から吸引された塵埃を含む吸引風を、前記遠心分離部7室内に略均等に分流するための分岐口部である。また、11は前記集塵部5を持ち運ぶための把手部で、12は前記集塵部5の略上方に開口部13を設け、前記開口部13を覆い、内部に吸引した吸引風が含む塵埃のろ過用のフィルター部14を配設した集塵部蓋で、15は前記把手部11近傍に設けて、前記集塵部蓋12と前記集塵部5の間を係止及び解除させる操作部であり、この前記操作部15は前記把手部11を持つと同時に動作させることができる。
【0034】
また、16は前記集塵部5と前記集塵部蓋12の間に配置され、前記遠心分離部7の鉛直方向の略中心軸上に位置し、略円筒形状をなす粗塵蓄積用のプレフィルターであり、17は前記プレフィルター16の下方に配置した略円盤形状の保護部材である。」
(6b)「【0039】
前記遠心分離部7で粗塵埃を分離した細塵を含む吸引風は、前記プレフィルター16を通過して、前記集塵部蓋12の内部の前記フィルター部14を通過するとき、細塵をろ過して、きれいな状態で前記電動送風機6に吸引された後、大気に排出される。
【0040】
また、前記塵埃蓄積部8に蓄積した塵埃を排出する際、1つめの方法としては、前記集塵部5を本体から取り出し前記把手部11を持ち、つまむと同時にその内側に設けた前記操作部15を押し、前記集塵部5を前記集塵部蓋12の間の固定を解除させて前記塵埃蓄積部蓋12を前記集塵部5から外す。そして、前記集塵部5の上部の前記開口部13から内部の塵埃を排出させることができる。」
(6c)「【0042】
図1?図3において、前記集塵部5は前記遠心分離部7が前記塵埃蓄積部8に対し30°の角度で傾斜させているので、前記遠心分離部7と前記塵埃蓄積部8が上下方向に直列に配設されている場合に比べ、全体高さを抑えることができ、縦型掃除機はもちろんのこと、床移動型掃除機にも搭載できる。なお、本実施例においては、30°の角度で傾斜させているが、5°から85°の間の傾斜角度であれば十分目的を満たす。」
(6d)「【0052】
図9?図11において、前記遠心分離部7で分離されずに前記集塵部蓋12内部の前記フィルター部14に付着して性能低下を発生させていた塵埃を先に前記プレフィルター16で蓄積することにより前記フィルター部14への付着を低減し性能低下を抑制させることができる。また、前記プレフィルター16の形状を略円筒形状にすることにより、前記プレフィルター16の面積を大きくすることができるので前記プレフィルター16への塵埃の蓄積による性能低下も抑制することができる。」
(6e)【図1】、【図2】には、集塵部5が本体に対してその上部が後方の電動送風機がある方向に傾斜した姿勢で装着されていることが見てとれる。

7 甲第2号証の4
(7a)「【0013】
図2および図3を参照すると、本発明に従って構成されたクリーニング装置が真空掃除機7の形態で示されている。この真空掃除機7は本体8を有し、これは真空掃除機の主要コンポーネントを支持する。従来様式で、本体8は、分離・収集機構10を支持するシャーシ9と、この分離機構内にゴミを含んだ空気を引き込む吸引力を発生させるためのモーター駆動ファン(図示せず)とを有する。本体8はまた、掃除機7が床面11を横切って移動することを可能とするための手段を有する。この実施形態では、二つ(シャーシ9のそれぞれのサイドに一つ)のサイドホイール12が設けられる。キャスターホイール13の形態のさらなるホイールが設けられ、これはシャーシ9の前部の下方に配置される。サイドホイール12、およびキャスターホイール13は、本体8が面を横切って移動することを可能にするための他の手段、たとえばスキッドまたはローラーによって補助することができ、あるいはこうした手段で置き換えることができる。」
(7b)「【0014】
分離機構10は全体として、中を空にするためそして分離機構の下方に配置された他のコンポーネントに対するアクセスのために、シャーシ9に取り外し可能に搭載される。
【0015】
分離機構10の形態は本発明では重要ではない。ゴミ、チリおよび屑を空気流から回転させるサイクロン式分離機の使用が好ましいが、他形態の分離機を使用することもできる。好ましい分離機技術の例は、慣性分離機、フィルターバッグ、多孔質容器、静電式分離機あるいは液体式分離機を含む。」
(7c)【図2】には、分離機構10が真空掃除機7の本体8に対してその上部が後方に傾斜した姿勢で装着されていることが見てとれる。

8 甲第2号証の5
(8a)「【0001】
本発明は、電気掃除機の集塵構造に関するものである。」
(8b)「【0019】
図1、図2、図3において、5は吸引風を発する電動送風機6と塵埃を吸引する吸込具に連通し、上方に配設され吸引した吸引風から塵埃を遠心分離する遠心分離部7と、下方に配設され前記遠心分離部7から分離された塵埃を堆積する塵埃蓄積部8から構成された集塵部である。
【0020】
また、9は前記吸込具にて吸引した塵埃を含む吸引風を集塵部5に流入するための吸気口部で、10は前記遠心分離部7の入口で前記吸気口部9から吸引された塵埃を含む吸引風を、前記遠心分離部7室内に略均等に分流するための分岐口部である。また、11は前記集塵部5を運ぶための把手部で、12は前記集塵部5の略上方に開口部13を設け、前記開口部13を覆い、内部に吸引した吸引風が含む塵埃の濾過用のフィルター部14を配設した集塵部蓋で、15は前記把手部11近傍に設けて、前記集塵部蓋12と前記集塵部5の間を係止及び解除させる操作部である。
【0021】
また、16は前記集塵部5と前記集塵部蓋12の間に配置され、前記遠心分離部7の鉛直方向の略中心上に位置し、略円筒状をなす粗塵蓄積用のプレフィルターである。」
(8c)「【0027】
前記遠心分離部7で粗塵埃を分離した細塵を含む吸引風は、前記プレフィルター16を通過して、前記集塵部蓋12の内部の前記フィルター部14を通過するとき、細塵を濾過して、きれいな状態で前記電動送風機6に吸引された後、大気に排出される。」
(8d)【図1】、【図2】には、集塵部5の上部が後方の電動送風機がある方向に傾斜した姿勢で装着されていることが見てとれる。

9 甲第2号証の6
(9a)「【0025】
図1乃至図3に示すように、本発明の思想による真空掃除機10は、内部に吸入力を発生させる真空モータが備えられる掃除機本体100と、前記掃除機本体100に吸入された空気に含まれている塵埃を分離させる塵埃分離装置とを含む。」
(9b)「【0031】
一方、前記塵埃分離装置は、空気に含まれている塵埃を一次的に分離する第1次サイクロン部(後述する)が備えられる集塵ユニット200と、前記第1次サイクロン部によって塵埃が分離された空気から再度塵埃が分離されるようにし、前記掃除機本体100に備えられる第2次サイクロン部300から構成される。
【0032】
詳しくは、前記集塵ユニット200は、前記掃除機本体100の前方部に着脱可能に装着される。」
(9c)「【0034】
また、前記集塵ユニット200は、サイクロン流動を発生させる第1次サイクロン部と、前記第1次サイクロン部から分離された塵埃が捕集される塵埃捕集部が形成される集塵体210とを含む。」
(9d)「【0055】
図4及び図5に示すように、本発明の思想による集塵ユニット200は、外形をなす集塵体210と、前記集塵体210の内部に選択的に収納されて吸入された空気から塵埃が分離されるようにする第1次サイクロン部230と、前記集塵体210の上側を選択的に開閉させるカバー部材250とを含む。
【0056】
詳しくは、前記集塵体210は、略円筒形に形成され、その内部に分離された塵埃が捕集される塵埃捕集部が形成される。」
(9e)【図7】には、集塵ユニット200が掃除機本体100後方の連結流路114の方向に傾斜した姿勢で装着されていることが見てとれる。

10 甲第3号証
(10a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、サイクロン式の集塵装置及びそれを用いた電気掃除機に関するものである。」
(10b)「【0023】
一方、図5?図19等に示すように、集塵装置2は、図8に示す如く横断面形状が略Dカット形状に形成されたダストボックス10の内側に、第1サイクロン筒体となる略円筒状の外側フィルタフィクスチャ(フィルタ枠体)11と、第2サイクロン筒体となる内側フィルタフィクスチャ12が配置されており、ダストボックス10は内部に溜まった塵埃や塵埃の旋回が外から見えるように透明又は半透明の合成樹脂などで形成されている。
【0024】
上記外側フィルタフィクスチャ11は、図9に示すように、その上部外周面に形成された開口部13を覆うように斜線で示したメッシュ(フィルタ)14をインサート成形している部品である。」
(10c)「【0035】
また、上記外側フィルタフィクスチャ11は、ダストボックス10の上端開口を開閉する上蓋24の下面を成す中蓋25に垂れ下がった状態に着脱可能に取り付けられるようになっている。上蓋24の下面を成す中蓋25の中央部には、下方に延びる短めの排気筒26が形成されており、この中蓋25が当該中蓋25の外周に装着されたパッキン27を挟んだ状態で上蓋24の内壁に嵌合している。また、中蓋25とダストボックス10の上端間も、上記中蓋25の外周に装着されたパッキン27によって密閉されるようになっている。すなわち、本実施形態では、図15等に示すように、ダストボックス10と中蓋25と上蓋24間を1つのパッキン27で密閉するように構成されている。従来技術で述べた本願出願人が提案したものでは、ダストボックスと中蓋と上蓋間が2?3個の複数のシール部材で密閉されるようになっていた。シール部材を複数使用する場合、部品点数が増える為、組立工数が増え、また、コストアップや部品検査作業の負担増といった問題が発生し、生産面・コスト面で大きなマイナスとなる。このように、従来、ダストボック10内の気密性保持の為に複数使用していたシール部材を本実施形態では1個で対応できるようになり、従来負担となっていた組立及び部品検査作業の時間削減や、部品や組立費の低減などで大きな効果が得られる。なお、上蓋24の上面には取手部28が設けられている。
【0036】
また、上蓋24と中蓋25との間には、排気筒26の上部開口(排気口)29を覆うようにして細塵を濾過するダストフィルタ30が、中蓋25の外周上端にパッキン31を介して配置されるフィルタ枠体32に装着されて取り付けられている。上記ダストフィルタ30は、図16?図18に示すように構成されて装着される。ここで、このダストフィルタ30が目の粗い仕様だと、細塵の中でも小さな塵埃は通ってしまい、逆に目の細かい仕様だと、細塵の中で大きな塵埃も小さな塵埃も一緒に蓄積され、ダストフィルタ30の目詰まりが早くなる。そこで、本実施形態では、ダストフィルタ30を2層構造に形成すると共に、2層構造の吸入側に排出側より目の粗いフィルタを配置したものである。具体的には、図16(b)に示すように、空気の吸入側(風の流れの上流側)に目の粗いウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFH-50)30aを使用し、排出側(風の流れの下流側)に目の細かいウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFS)30bを使用した2層構造とした。なお、本実施形態では、厚みの比率を、目の粗いウレタンフィルタ30aを2、目の細かいウレタンフィルタ30bを1としたが、掃除機の性能及びダストボックス10の形状や大きさ等により任意に選択できる。また、集塵性能を考慮して、3層構造以上の構成も任意に選択できるものとする。以上のように構成することにより、空気の浄化が1層に比べて長期にわたって安定的に行われ、また、ダストフィルタ30の取換え寿命が大幅に伸び、使用時の負担が低減されるなどの大きな効果が得られる。
【0037】
また、上記のように、ダストボックス10内で分離できなかった細塵の中で大きなものを第1層で捕り、小さなものを第2層で捕るようにした場合、目詰まりは第2層の表面で起こる。ここで、2種類のウレタンフィルタ30a、30bの張り合わせをフィルタ全面で接着して行っている場合、第2層の表面で起こった目詰まりは、水洗いによって目詰まりのない状態に復帰させなければならないので、メンテナンス性に課題が残る。そこで、本実施形態では、図17に網掛け図示したように、ダストフィルタ30の2層の張り合わせ部30cを一部分30dを除いた外周側のみの接着とした。このように構成することにより、ダストフィルタ30が目詰まりした時、2層目表面に溜まった細塵を、接着していない部分30dから落とすことが可能になる。これにより、水洗いすることなくダストフィルタ30を目詰まりのない状態に復帰させることが可能となり、ダストフィルタ30のメンテナンス性向上という効果が得られる。」
(10d)「【0045】
次に、本実施形態の電気掃除機における塵埃及び空気のそれぞれの流れについて説明する。
【0046】
掃除機本体1の外部から吸引される塵埃を含む空気は、図3に示されるように、連結口4から吸気管15を通してダストボックス10内に入り、ダストボックス10の内壁に沿って旋回する。具体的には、第1サイクロン空間22内部において、空気が旋回しながら外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部へ流れ、分離された塵埃は隙間21を通って下方に落ち、ダストボックス10底部の外側集塵部23に堆積する。
【0047】
同様に、外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部に流れた空気もさらに旋回する。具体的には、第2サイクロン空間40内部において、空気が旋回しながら遠心分離によって細塵を分離し、分離された細塵は内側フィルタフィクスチャ12の内壁に沿って下方に落下し、内側集塵部39に堆積する。」
(10e)「【0050】
上記のようにして、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、排気筒26から吸引されて上蓋24内部のダストフィルタ30により更に濾過されたのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出る。そして、掃除機本体1内の連絡通路7を介して電動送風機3に取り込まれる。図4に示したように、電動送風機3から排出される排気は、矢印で示す如く上ケース1bの排気スリット1cからケースカバー1dの排気孔1eに至る経路で上方向に風向きが規制され、排気孔1eを通過した後も上方向に向かって広がってゆくので、床面の埃の舞い上がりを確実に防ぐことができる。」
(10f)【図6】、【図7】、【図16】並びに上記(10c)、(10e)の記載から、ダストフィルタ30は平板状であり、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、ダストフィルタ30を上方に通過したのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出ることが見てとれる。

11 甲第3号証の1
(11a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、サイクロン式の集塵装置及びそれを用いた電気掃除機に関するものである。」
(11b)「【0029】
一方、図5?図16等に示すように、集塵装置2は、図8に示す如く横断面形状が略Dカット形状に形成されたダストボックス10の内側に、第1サイクロン筒体となる略円筒状の外側フィルタフィクスチャ(フィルタ枠体)11と、第2サイクロン筒体となる内側フィルタフィクスチャ12が配置されており、ダストボックス10は内部に溜まった塵埃や塵埃の旋回が外から見えるように透明又は半透明の合成樹脂などで形成されている。また、外側フィルタフィクスチャ11は、図9に示すように、その上部外周面に形成された開口部13がメッシュ状のフィルタ14で覆われている。」
(11c)「【0036】
また、上記外側フィルタフィクスチャ11は、ダストボックス10の上端開口を開閉する上蓋24の下面を成す中蓋25に垂れ下がった状態に着脱可能に取り付けられるようになっている。上蓋24の下面を成す中蓋25の中央部には、下方に延びる短めの排気筒26が形成されており、この中蓋25が当該中蓋25の外周に装着されたパッキン27を挟んだ状態で上蓋24の内壁に嵌合している。また、中蓋25とダストボックス10の上端間も、上記中蓋25の外周に装着されたパッキン27によって密閉されるようになっている。すなわち、本実施形態では、図12等に示すように、ダストボックス10と中蓋25と上蓋24間を1つのパッキン27で密閉するように構成されている。従来技術で述べた本願出願人が特願2001-384387号で提案したものでは、ダストボックスと中蓋と上蓋間が2?3個の複数のシール部材で密閉されるようになっていた。シール部材を複数使用する場合、部品点数が増える為、組立工数が増え、また、コストアップや部品検査作業の負担増といった問題が発生し、生産面・コスト面で大きなマイナスとなる。このように、従来、ダストボック10内の気密性保持の為に複数使用していたシール部材を本実施形態では1個で対応できるようになり、従来負担となっていた組立及び部品検査作業の時間削減や、部品や組立費の低減などで大きな効果が得られる。なお、上蓋24の上面には取手部28が設けられている。
【0037】
また、上蓋24と中蓋25との間には、排気筒26の上部開口(排気口)29を覆うようにして細塵を濾過するダストフィルタ30が、中蓋25の外周上端にパッキン31を介して配置されるフィルタ枠体32に装着されて取り付けられている。上記ダストフィルタ30は、図13?図15に示すように構成されて装着される。ここで、このダストフィルタ30が目の粗い仕様だと、細塵の中でも小さな塵埃は通ってしまい、逆に目の細かい仕様だと、細塵の中で大きな塵埃も小さな塵埃も一緒に蓄積され、ダストフィルタ30の目詰まりが早くなる。そこで、本実施形態では、ダストフィルタ30を2層構造に形成すると共に、2層構造の吸入側に排出側より目の粗いフィルタを配置したものである。具体的には、図13(b)に示すように、空気の吸入側(風の流れの上流側)に目の粗いウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFH-50)30aを使用し、排出側(風の流れの下流側)に目の細かいウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFS)30bを使用した2層構造とした。なお、本実施形態では、厚みの比率を、目の粗いウレタンフィルタ30aを2、目の細かいウレタンフィルタ30bを1としたが、掃除機の性能及びダストボックス10の形状や大きさ等により任意に選択できる。また、集塵性能を考慮して、3層構造以上の構成も任意に選択できるものとする。以上のように構成することにより、空気の浄化が1層に比べて長期にわたって安定的に行われ、また、ダストフィルタ30の取換え寿命が大幅に伸び、使用時の負担が低減されるなどの大きな効果が得られる。」
(11d)「【0046】
次に、本実施形態の電気掃除機における塵埃及び空気のそれぞれの流れについて説明する。
【0047】
掃除機本体1の外部から吸引される塵埃を含む空気は、図3に示されるように、連結口4から吸気管15を通してダストボックス10内に入り、ダストボックス10の内壁に沿って旋回する。具体的には、第1サイクロン空間22内部において、空気が旋回しながら外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部へ流れ、分離された塵埃は隙間21を通って下方に落ち、ダストボックス10底部の外側集塵部23に堆積する。
【0048】
同様に、外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部に流れた空気もさらに旋回する。具体的には、第2サイクロン空間40内部において、空気が旋回しながら遠心分離によって細塵を分離し、分離された細塵は内側フィルタフィクスチャ12の内壁に沿って下方に落下し、内側集塵部39に堆積する。」
(11e)「【0050】
上記のようにして、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、排気筒26から吸引されて上蓋24内部のダストフィルタ30により更に濾過されたのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出る。そして、掃除機本体1内の連絡通路7を介して電動送風機3に取り込まれる。図4に示したように、電動送風機3から排出される排気は、矢印で示す如く上ケース1bの排気スリット1cからケースカバー1dの排気孔1eに至る経路で上方向に風向きが規制され、排気孔1eを通過した後も上方向に向かって広がってゆくので、床面の埃の舞い上がりを確実に防ぐことができる。」
(11f)【図6】、【図7】、【図13】並びに上記(11c)、(11e)の記載から、ダストフィルタ30は平板状であり、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、ダストフィルタ30を上方に通過したのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出ることが見てとれる。

12 甲第3号証の2
(12a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、サイクロン式の集塵装置及びそれを用いた電気掃除機に関するものである。」
(12b)「【0023】
一方、図5?図20等に示すように、集塵装置2は、図8に示す如く横断面形状が略Dカット形状に形成されたダストボックス10の内側に、第1サイクロン筒体となる略円筒状の外側フィルタフィクスチャ(フィルタ枠体)11と、第2サイクロン筒体となる内側フィルタフィクスチャ12が配置されており、ダストボックス10は内部に溜まった塵埃や塵埃の旋回が外から見えるように透明又は半透明の合成樹脂などで形成されている。また、外側フィルタフィクスチャ11は、図9に示すように、その上部外周面に形成された開口部13がメッシュ状のフィルタ14で覆われている。」
(12c)「【0030】
また、上記外側フィルタフィクスチャ11は、ダストボックス10の上端開口を開閉する上蓋24の下面を成す中蓋25に垂れ下がった状態に着脱可能に取り付けられるようになっている。上蓋24の下面を成す中蓋25の中央部には、下方に延びる短めの排気筒26が形成されており、この中蓋25が当該中蓋25の外周に装着されたパッキン27を挟んだ状態で上蓋24の内壁に嵌合している。
また、中蓋25とダストボックス10の上端間も、上記中蓋25の外周に装着されたパッキン27によって密閉されるようになっている。すなわち、本実施形態では、図12等に示すように、ダストボックス10と中蓋25と上蓋24間を1つのパッキン27で密閉するように構成されている。従来技術で述べた本願出願人が提案したものでは、ダストボックスと中蓋と上蓋間が2?3個の複数のシール部材で密閉されるようになっていた。シール部材を複数使用する場合、部品点数が増える為、組立工数が増え、また、コストアップや部品検査作業の負担増といった問題が発生し、生産面・コスト面で大きなマイナスとなる。このように、従来、ダストボック10内の気密性保持の為に複数使用していたシール部材を本実施形態では1個で対応できるようになり、従来負担となっていた組立及び部品検査作業の時間削減や、部品や組立費の低減などで大きな効果が得られる。なお、上蓋24の上面には取手部28が設けられている。
【0031】
また、上蓋24と中蓋25との間には、排気筒26の上部開口(排気口)29を覆うようにして細塵を濾過するダストフィルタ30が、中蓋25の外周上端にパッキン31を介して配置されるフィルタ枠体32に装着されて取り付けられている。上記ダストフィルタ30は、図13?図15に示すように構成されて装着される。ここで、このダストフィルタ30が目の粗い仕様だと、細塵の中でも小さな塵埃は通ってしまい、逆に目の細かい仕様だと、細塵の中で大きな塵埃も小さな塵埃も一緒に蓄積され、ダストフィルタ30の目詰まりが早くなる。そこで、本実施形態では、ダストフィルタ30を2層構造に形成すると共に、2層構造の吸入側に排出側より目の粗いフィルタを配置したものである。具体的には、図13(b)に示すように、空気の吸入側(風の流れの上流側)に目の粗いウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFH-50)30aを使用し、排出側(風の流れの下流側)に目の細かいウレタンフィルタ(例えばポリエーテル系ウレタンフォームのタイプCFS)30bを使用した2層構造とした。なお、本実施形態では、厚みの比率を、目の粗いウレタンフィルタ30aを2、目の細かいウレタンフィルタ30bを1としたが、掃除機の性能及びダストボックス10の形状や大きさ等により任意に選択できる。また、集塵性能を考慮して、3層構造以上の構成も任意に選択できるものとする。以上のように構成することにより、空気の浄化が1層に比べて長期にわたって安定的に行われ、また、ダストフィルタ30の取換え寿命が大幅に伸び、使用時の負担が低減されるなどの大きな効果が得られる。
【0032】
また、上記のように、ダストボックス10内で分離できなかった細塵の中で大きなものを第1層で捕り、小さなものを第2層で捕るようにした場合、目詰まりは第2層の表面で起こる。ここで、2種類のウレタンフィルタ30a、30bの張り合わせをフィルタ全面で接着して行っている場合、第2層の表面で起こった目詰まりは、水洗いによって目詰まりのない状態に復帰させなければならないので、メンテナンス性に課題が残る。そこで、本実施形態では、図14に網掛け図示したように、ダストフィルタ30の2層の張り合わせ部30cを一部分30dを除いた外周側のみの接着とした。このように構成することにより、ダストフィルタ30が目詰まりした時、2層目表面に溜まった細塵を、接着していない部分30dから落とすことが可能になる。これにより、水洗いすることなくダストフィルタ30を目詰まりのない状態に復帰させることが可能となり、ダストフィルタ30のメンテナンス性向上という効果が得られる。」
(12d)「【0041】
次に、本実施形態の電気掃除機における塵埃及び空気のそれぞれの流れについて説明する。
【0042】
掃除機本体1の外部から吸引される塵埃を含む空気は、図3に示されるように、連結口4から吸気管15を通してダストボックス10内に入り、ダストボックス10の内壁に沿って旋回する。具体的には、第1サイクロン空間22内部において、空気が旋回しながら外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部へ流れ、分離された塵埃は隙間21を通って下方に落ち、ダストボックス10底部の外側集塵部23に堆積する。
【0043】
同様に、外側フィルタフィクスチャ11のフィルタ内部に流れた空気もさらに旋回する。具体的には、第2サイクロン空間40内部において、空気が旋回しながら遠心分離によって細塵を分離し、分離された細塵は内側フィルタフィクスチャ12の内壁に沿って下方に落下し、内側集塵部39に堆積する。」
(12e)「【0046】
上記のようにして、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、排気筒26から吸引されて上蓋24内部のダストフィルタ30により更に濾過されたのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出る。そして、掃除機本体1内の連絡通路7を介して電動送風機3に取り込まれる。図4に示したように、電動送風機3から排出される排気は、矢印で示す如く上ケース1bの排気スリット1cからケースカバー1dの排気孔1eに至る経路で上方向に風向きが規制され、排気孔1eを通過した後も上方向に向かって広がってゆくので、床面の埃の舞い上がりを確実に防ぐことができる。」
(12f)【図6】、【図7】、【図13】並びに上記(12c)、(12e)の記載から、ダストフィルタ30は平板状であり、ダストボックス10内で塵埃が濾過された空気は、ダストフィルタ30を上方に通過したのち、上蓋24後端の排気口50より集塵装置2外に出ることが見てとれる。

13 甲第3号証の3
(13a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、掃除機本体に着脱自在に取付けて使用される集塵カップ、及びこのカップを備えた電気掃除機に関する。」
(13b)「【0016】
この集塵カップ4は、図2?図4に示すようにカップ本体21、空気導入部31が形成された蓋32、及び例えば一対の鉄分別体41等を備えている。
【0017】
透明合成樹脂製のカップ本体21は、図2に示すように上端が開口された有底円筒状をなしていて、その上端開口縁から一体に形成されたカップハンドル22を有している。カップ本体21の上端開口は、この本体21を上下逆様にすることにより内部の塵を排出する開口として使用される。
【0018】
蓋32は、空気導入部31が一体に形成されて、カップ本体21の上端開口に着脱自在に嵌入して取付けられる合成樹脂製のフレーム33に、第1フィルタ34と第2フィルタ35とを取付けて形成されている。このため、蓋32は通気性を有している。図1中符号33aはカップ本体21から蓋32を取外す際に使用されるつまみ部を示しており、このつまみ部33aはフレーム33に一体に形成されている。
【0019】
空気導入部31はフレーム33の周部に寄せて設けられている。この空気導入部31の上部は蓋32の上方に向けて開放された空気入口31aをなしている。空気導入部31の下部は、蓋32がカップ本体21の上端開口を塞ぐように取付けられた状態で、カップ本体21の上部内周面に沿うように配置される空気出口31bをなしている。これにより、カップ本体21内に含塵空気を導入する空気導入部31は、流通する含塵空気をカップ本体21の内周面に沿って旋回させるように空気出口31bから流出させる。」
(13c)「【0020】
金網などから有底筒状に形成された第1フィルタ34は、フレーム33の略中央部に下向きに突出して取付けられている。この第1フィルタ34よりもメッシュが細かい第2フィルタ35は、平板状であって、フレーム33の上面部に装着されている。なお、図1中符号33bは第2フィルタ35を上側から保持する格子状のフィルタ押えを示している。」
(13d)「【0025】
前記構成の集塵カップ4は、既述のように閉じ位置のケース蓋8と載置部10との間に挟まれて掃除機本体2に取付けられる。これにより、図1に示すように集塵カップ4の空気入口31aがケース蓋8の吸塵口17の下流側に接続され、かつ、集塵カップ4の出口をなした上端開口を塞いで取付けられた第2フィルタ35が、吸気路15の入口15aに接続される。吸気路15の出口15bは電動送風機3の吸気口3aに連通される。
【0026】
このため、吸塵口17に気流ガイドなどを接続して電動送風機3を動作させることにより、空気導入部31を通ってカップ本体21内に導入された含塵空気が、カップ本体21の内周面に沿って旋回しつつ下向きに流動した後に、カップ本体21の略中央部で反転上昇して蓋32を通って吸気路15に流入し、この吸気路15から電動送風機3に吸込まれる。
【0027】
こうした気流の流れによって集塵カップ4内ではサイクロン式の集塵が行なわれる。この集塵では、空気中の重い塵が、遠心力によってカップ本体21の内周面に押し付けられて、空気から分離される。反転上昇する気流中に含まれる軽い塵は、第1、第2のフィルタ34、35によって捕捉される。この集塵において、集塵カップ4内に吸込まれた空気中に鉄粉や鉄の小片等の鉄塵が混入されている場合、この鉄塵も遠心力によってカップ本体21の周壁部内面に押し付けられる。」
(13e)【図1】及び上記(13c)、(13d)の記載から、第1フィルタ34は空気が旋回するカップ本体21内に位置し、第1フィルタ34を通過した空気は、平板状の第2フィルタ35を上方に通過したのち、吸気路15に流入することが見てとれる。

14 甲第3号証の4
(14a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吸込風から塵埃を分離する集塵装置およびこれを備えた電気掃除機に関する。」
(14b)「【0013】図1ないし図3において、11は掃除機本体で、この掃除機本体11は、重力により塵埃を分離するいわゆるサイクロン方式であり、床面を走行可能である。また、この掃除機本体11は、中空なケース体12と、このケース体12の上部前側に後部が回動可能に連結して回動によりこのケース体12の前側上部を開閉可能に覆う蓋体13とを備えた本体ケース14を有している。さらに、ケース体12の内部には、図1に示すように、駆動手段としての電動部である電動送風機15が収容、すなわち搭載されている。また、このケース体12の前後方向の略中心域には、電動送風機15の排気側に連通した本体排気口16がこのケース体12の前方に向けて開口されている。」
(14c)「【0017】一方、本体ケース14のケース体12のカップ保持部18と蓋体13との間である電動送風機15の吸込側には、この電動送風機15による吸込風とともに吸い込んだ塵埃を内部で旋回させて、この塵埃を自重による遠心分離により落下させて集塵する集塵装置としてのダストカップ31が着脱可能に取り付けられている。
【0018】また、このダストカップ31は、図1および図3に示すように、電動送風機15にて吸い込まれた吸込風が取り込まれ、この吸込風とともに吸い込まれた塵埃を集塵し、一端である上端に開口部32が形成された有底円筒状の集塵部としてのカップ部33を備えている。このカップ部33の開口部32には、ケース体12と蓋体13との間にダストカップ31を取り付けた際に、この蓋体13の本体吸込口21の基端側に気密に連通する吸気口34を備えた塵埃分離部としての風向制御部である略円筒状のサイクロン部35が取り付けられている。このサイクロン部35の下端は、カップ部33とこのサイクロン部35との間でありこれらカップ部33とこのサイクロン部35とを区画する分離壁36が形成されている。
【0019】さらに、このサイクロン部35の外周部には、吸気口34から吸い込んだ吸込風を旋回させる旋回風構成部としてのサイクロン構成部37が形成されている。このサイクロン構成部37には、このサイクロン構成部37にて旋回させた旋回風をカップ部33の内部へと導く図示しない旋回風流出口が開口されている。この旋回風流出口は、サイクロン部35の外側域に位置しており、カップ部33内と吸気口34とを連通させる。」
(14d)「【0021】そして、この連通口38の上方には、排気口41が開口されている。この排気口41は、連通口38を通過したカップ部33からの吸込風が排気される。さらに、この排気口41には、捕捉手段としての集塵フィルタである略有底円筒状のネットフィルタ42が取り付けられている。このネットフィルタ42は、外周面の上端部にこの外周全域に沿ってこのネットフィルタ42の径方向に突出したフランジ部42aが設けられており、このフランジ部42aが排気口41の上側に係合することにより、排気口41から取り外し可能に取り付けられている。
【0022】また、このネットフィルタ42は、サイクロン部35からカップ部33に亘って下方に向けてこのカップ部33の高さ方向の略中心域まで突出し、カップ部33から連通口38を介して排気口41へと排気される吸込風から微細な細塵を捕捉する。また、このネットフィルタ42は、上側から下側へ向かって径小となるように形成されている。さらに、このネットフィルタ42の下側は、外径がシールパッキン39の内径よりも大きく形成されており、このシールパッキン39の内周に上側から下側へと挿通されている。このため、シールパッキン39の内周の先端がこのネットフィルタ42の外周面に当接して下方へと押しやられており、このシールパッキン39にてこのネットフィルタ42の外周面と分離壁36の中心部に設けられた連通口38との隙間が気密に閉塞されている。」
(14e)「【0023】またさらに、排気口41の上方であるダストカップ31の上端には、この排気口41を通過する吸込風に漂う塵埃、すなわちネットフィルタ42では捕捉できなかったさらに微細な細塵を捕捉する細塵捕捉手段としての補助フィルタ43が取り外し可能に取り付けられている。
【0024】そして、サイクロン構成部37の排気口41は、蓋体13の下端面に設けられた細長凹状の連通凹部44を介して、ケース体12の前側に開口した通気口45により、このケース体12内の電動送風機15の吸込側に気密に連通される。さらに、ダストカップ31のカップ部33の外側面には、一端である上端が上端外周面に連続して設けられ他端である下端が自由端である取手部としてのハンドル部46が一体的に設けられている。」
(14f)「【0032】さらに、この吸気口34へと吸い込まれた吸込風は、この吸気口34からサイクロン部35のサイクロン構成部37へと吸い込まれて、このサイクロン構成部37の内部で渦巻き状に回転して旋回風となった後、このサイクロン構成部37の旋回風流出口を通過して、カップ部33の内部へと吸い込まれる。
【0033】このとき、ネットフィルタ42がカップ部33の略中心部に突出していることにより、このネットフィルタ42の外周面とカップ部33の内周面との間に風路が形成され、このカップ部33に吸い込まれた吸込風がこの風路に沿って移動し、このカップ部33内に渦巻き状の旋回風がより強く発生する。
【0034】そして、このカップ部33内での吸込風の旋回により、この吸込風とともに吸い込まれた塵埃が自重による遠心分離にてカップ部33内に落下して、このカップ部33内に集塵される。
【0035】さらに、このカップ部33内で旋回した吸込風は、このカップ部33の底部中央域からサイクロン構成部37の連通口38に挿通されたネットフィルタ42を通過する。このとき、カップ部33内での遠心分離では分離できなかった微細な塵埃がネットフィルタ42にて捕捉されるとともに、カップ部33内に集塵された塵埃が連通口38を介してこのカップ部33の外部へと排出されることを防止する。」
(14g)「【0038】この後、このネットフィルタ42を通過した吸込風は、排気口41を介してダストカップ31の上端に取り付けられた補助フィルタ43を通過する。このとき、ネットフィルタ42で捕捉できなかったさらに微細な細塵がこの補助フィルタ43に捕捉される。
【0039】そして、この補助フィルタ43を通過した吸込風は、蓋体13の連通凹部44およびケース体12の通気口45を介して電動送風機15の吸込側へと吸い込まれて、この電動送風機15を通過して排気風となり、本体排気口16から外部へと排気される。」
(14h)【図1】及び上記(14e)、(14f)、(14g)の記載から、補助フィルタ43は平板状であり、ネットフィルタ42を通過した空気は補助フィルタ43を上方に通過して蓋体13の連通凹部44に吸い込まれることが見てとれる。

15 甲第3号証の5
(15a)「【0001】
本発明は、吸気を旋回流にすることにより遠心分離により塵埃を含む空気中から塵埃を分離するサイクロン方式の集塵部を備えた電気掃除機に関する。」
(15b)「【0023】
(参考例)
図2は、本発明に関する参考例に係る集塵ケース11及びその構成を示すもので、本体ケース60の前方側に着脱可能に装着されている。集塵ケース11は、吸気された塵埃を含む空気を誘導流路14に通して形成した旋回流による遠心力によって空気中から塵埃を分離する塵埃分離室15と、この塵埃分離室15から流入した塵埃を収容する塵埃収容室16と、この塵埃収容室16の空気を略中央部上方から吸気して前記塵埃分離室15の空気と共に吸気流路26に流入させる吸気筒25と、この吸気筒25の同心円上を軸心方向に移動可能に配設され、吸気筒25の側周面の軸方向に形成された開口部に設けられたフィルタ21に接するように内周面にブラシ毛(除塵体)22が取り付けられた外筒17と、この外筒17の下端と一体に形成されて塵埃分離室15と塵埃収容室16との間を区画して外筒17の軸心方向への移動により塵埃収容室16内に進退移動する圧縮板18とを備えて構成されている。
【0024】
本体ケース60に形成された吸気口20には前記ホース継ぎ手5が連結され、本体ケース60内に配設された電動送風機61が駆動されると、前記吸込具3から吸入された塵埃を含む空気は前記吸気口20から塵埃分離室15内に流入する。図3は塵埃分離室15の水平方向断面を示すもので、誘導流路14によって流入した空気は略円筒形の塵埃分離室15の接線方向に導かれると共に、流路断面積が狭められることによって流速が増し、高速の旋回流となって塵埃分離室15の内周面に沿って下向き傾斜の流路を流れ、空気中の塵埃が遠心分離によって分離され、一部の空気と共に流入口27から塵埃収容室16内に流入する。塵埃分離室15内の旋回流の中心部分の空気は塵埃がほとんど無い状態になっているが、第2フィルタ24を通って細かい塵埃が濾過され、吸気流路26から電動送風機61に吸引される。」
(15c)「【0025】
略円筒形に形成された塵埃収容室16内に内周壁面に沿うように流入した塵埃のうち、質量の大きい砂ゴミ等の塵埃は塵埃収容室16の底面周囲に集まり、質量の小さい綿ゴミ等の塵埃は旋回する空気の流れと共に旋回し、電気掃除機1の運転が停止されたときに塵埃収容室16の底に堆積する。塵埃収容室16の略中央上方には吸気筒25に向かう吸引力が働いているので、塵埃収容室16内の空気は旋回する流れが弱まった底部側から中央に引き寄せられて上昇し、吸気筒25の底面に設けられた第1フィルタ19で微細な塵埃が濾過され、塵埃分離室15内からフィルタ21を通って吸気筒25内に入った空気と共に吸気筒25内から第2フィルタ24を通って吸気流路26から電動送風機61に吸引される。」
(15d)「【0026】
前記吸気筒25は、図3及び図4に示すように、側周面に円筒形の軸心方向にフィルタ21を設けた複数の開口部が形成されている。吸気筒25はフィルタ21を設けた開口部から塵埃分離室15の空気を吸引するので、遠心分離されなかった微細な塵埃がフィルタ21に付着するが、それを除去する作業がし難い位置にある。また、塵埃収容室16に堆積する塵埃のなかで繊維質のものは、ふんわりとして嵩高い状態で堆積し、塵埃収容室16の塵埃収容容積を占拠するので吸塵量を低下させることになる。塵埃収容室16の容積を拡大させると吸塵量を増加させることができるが、徒に掃除機本体7を大型化させ、小型軽量化の要求にそぐわないものとなる。」
(15e)【図2】及び上記(15b)、(15c)の記載から、第2フィルタ24は平板状であり、吸気筒25に入った空気は第2フィルタ24を上方に通過して吸気流路26から電動送風機61に吸引されることが見てとれる。

16 甲第7号証
(16a)「【請求項27】
吸引入り口およびゴミカップ受け取り部を有するハウジング、
上記ゴミカップ受け取り部に受け取られたゴミカップ、
上記ゴミカップに受け取られたフィルター、
上記ハウジングに支持され、かつ上記吸引入り口および上記ゴミカップと流体連絡するように配設された吸引発生装置であって、空気を吸引入り口に取り込み、かつ上記フィルターに吸引することによってゴミ屑を上記ゴミカップに捕集する吸引発生装置、
上記フィルターに係合し、ゴミ屑を振動によってふるい落とす回転クリカー、および
上記回転クリカーを駆動するモータを有することを特徴とする床クリーナ装置。」
(16b)「【0003】
ゴミ回収容器については、多くの場合、この容器に円筒形の側壁および向きが接線方向にある空気取り入れ口を配設することによって、サイクロン状の空気流れを発生するように設計されている。この構成では、空気がゴミ回収室を中心にしてサイクロン状に旋回する。遠心力が発生し、これがゴミや屑をゴミ回収室の円筒形側壁に向かわせ、比較的クリーンな空気をゴミ回収室の中心からフィルターを介して吸引発生装置に送り込むことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大半の掃除条件下では、ゴミ屑のほとんどかすべてがサイクロン状の空気流れによって空気流から除去されるが、若干のゴミ屑が空気流に連行されたままになることもある。例えば、この残留ゴミ屑は、サイクロン状の空気流れが発生する遠心分離力が作用しない軽量の比較的細かいゴミ粒子からなる。時間が経過するうちに、細かな粒子は連行され、フィルター媒体の孔を詰まらせ、空気流れを制限するため、真空掃除機の掃除効率が低下することになる。最後には、真空掃除機の掃除効率が落ちるため、フィルターを洗浄するか、あるいは交換し、掃除レベルを望むレベルに回復する必要がある。本発明は、より効率が高く、またより有効なフィルタークリーニング機構を備えた真空掃除機に関する。本発明は、特に細かい粒子を始めとするゴミ屑をフィルター孔から迅速かつ簡単に取り除くことができる作用効果をもつ。この結果、各フィルターの可使寿命が延び、従って、この延びた可使期間全体にわたって真空掃除機をより高い掃除効率で使用することができる。」
(16c)「【0016】
本明細書の一部として組み込まれ、かつこの一部を構成する添付図面に、本発明のいくつかの態様を示すが、これらを参照しながら以下の説明を読めば、本発明の原理を理解できるはずである。
図1に、本発明の床クリーナ装置10を示す。図示の実施態様の場合、床クリーナ装置10は、直立式真空掃除機である。なお、この掃除機10は、キャニスター式真空掃除機、手持ち式真空掃除機として、あるいはエクストラクターとして簡単に設計変更することができる。」
(16d)「【0019】
図2からよく理解できるように、ゴミ回収容器30はゴミカップ部分36および蓋部分38を有する。ゴミカップ部分36は、段差のついた側壁35および底壁37を有し、そして蓋部分38は、第1要素40、第2要素42および第3要素43を有する。第1要素40は、ゴミ混じり空気入り口44およびフィルターキャビティー46を有する。第2要素42は、クリーンな空気の出口48およびクリーンな空気の入り口50を有する。
【0020】
フィルター52は、第1要素40のフィルターキャビティー46に受け取られる。フィルター52は、側壁54、ハブ56、およびハブと側壁との間に配設した複数の仕切り部分58を有する(図7も参照)。仕切り板58は、フィルター52を複数の部分60に分割する作用をもつ。よく知られているタイプのフィルター媒体62を側壁54、ハブ56および各部分60を構成する仕切り板58の間に配設する。
【0021】
内側支持体64は、底壁37からゴミカップ部分36内側に配設する。この内側支持体64に、プレフィルター66を設ける。プレフィルター66は、一連の吸気開口68を有し、これら開口が、以下詳しく説明する態様で空気流れを作る。
【0022】
図示の態様の場合、ゴミ回収容器30については、サイクロン状の空気流れを発生し、これによって遠心力を使用し、ゴミ屑を空気流から取り除く効率を改善するように設計構成する。即ち、図2に明示するように、ゴミカップ部分36、蓋部分38、内側支持体64、プレフィルター66およびフィルター52についてはほぼ円筒形に構成する。図3および図5に示すように、内側支持体64およびプレフィルター66については、ゴミカップ部分36の側壁35内に同心円状に装着する。また、フィルター52については、蓋部分38の第1要素40のフィルターキャビティー46内に同心円状に装着する。ゴミ混じり空気の入り口44については、(a)外側の第1要素40および側壁35と(b)内側の内側支持体64およびプレフィルター66との間に形成した環状スペースSに接線方向に設ける。空気流は、円形パターンまたは渦巻パターンで環状スペースSの周囲に流れ、遠心力を発生する。この遠心力が、空気流内のゴミ屑を側壁35に向けて外側に流動させ、これによってゴミ屑をゴミカップ部分36に集める。同時に、フィルター52を介して方向が上向きになっている、環状スペースSの内壁にそってプレフィルター66に設けられた吸気開口68から比較的クリーンな空気が流れ込む。具体的には、ゴミ混じり空気は、フィルター媒体62を通過するさいに、空気流中に残っている細かなゴミ屑があればこれを捕集する。一方、クリーンな空気はフィルター媒体を通過し、クリーンな空気の出口48から吸引発生装置32に流れる。床クリーナ装置の通常使用時の空気流れの方向は、図3の矢印で示す方向である。」
(16e)「【0030】
床クリーナ装置の動作が続くと、環状スペースSのサイクロン作用によって空気流から除去されない細かなゴミ粒子が空気流から追い出され、フィルター52のフィルター媒体62によって捕集される。時間が経つうちに、これら細かなゴミ粒子がフィルター媒体62のフィルター孔に詰まり始め、空気流れが細くなる。この結果、吸引発生装置32のモータが熱くなり、効率が下がるだけでなく、空気流れが細くなり、床クリーナ装置のクリーニング効率に悪影響を与えることになる。結果として、空気流れが細くなりすぎ、床クリーナ装置が適正に働かなくなる。この場合には、フィルター52をクリーニング処理するか、交換する必要がある。
【0031】
本発明の場合、このフィルター52をその場でクリーニング処理できるため、きわめて便利であり、また効率がよい。具体的に説明すると、ステッパモータ84を始動し、相互に噛み合う駆動ギア80、82によって空気案内部材86を45°の円弧軌道で回動させる。これは、空気案内部材86を回動するように作動し、それにより、その出口90がフィルター52の部分60の一つと正確に一致させる。第1駆動ギア80が回動すると同時に、第1カム78が図4に示す位置から図6に示す位置まで回動する。この回動が生じると、カムフォロワー76が第1カム78の上までせり上がり、第1流れ弁72がピン74を中心に回動し、クリーンな空気の入り口50に接続する対向口73が開く。
【0032】
ステッパモータ84により駆動ギア80、第1カム78および空気案内部材86が回動すると、第2カム98も回動する。第2カムフォロワー100がカム98の上に乗り上げ、第2流れ弁92を持ち上げる。すると、その上縁部が吸気開口68の上方でその全周にわたってプレフィルター66に係合する。なお、対向口73が第1流れ弁72の作用により開くと、第2流れ弁92がプレフィルター66からクリーンな空気の出口48への空気の流れを遮断する。従って、吸引発生装置32が対向口73およびクリーンな空気の取り入れ口50を介してクリーンな空気を取り入れる。次に、この空気は、空気案内部材86の入り口88から取り込まれ、その出口90で方向を変え、上記出口と位置が一致しているフィルター52の部分60に向かう。クリーンな空気が掃除機の通常の動作方向とは逆方向にフィルター52の所定部分60に流れるため、ゴミ(特にフィルター孔からの細かいゴミ)がフィルター媒体62から追い出されることになる。クリーン処理すべきフィルター52の各部分60から追い出されたゴミは、内側支持体64の粒子トラップ120に取り込まれる。これは、大部分が、支持体の形状によるものである。即ち、実質的に円筒形の下端124に、この下端のよりも円周方向の開口が小さい中間ボトルネック部分126によって接続されている円錐台形上端124を有する支持体の形状によるものである。次に、比較的クリーンな空気が、案内部材86の出口90に位置が一致していないフィルター52の他の部分60に逆流してから、導管48を通って、吸引発生装置32に流れる。
【0033】
なお、空気案内部材の出口90は円弧状であり、その幅はフィルター52の一部分60相当である。本実施態様のこの部分の円弧角度は45°である。即ち、空気案内部材86と位置が一致しないフィルター52の他の部分の円弧角度が315°であることを意味する。これは、空気が最初に通過する45°の円弧と比較した場合、横断面がはるかに大きいことを意味する。この結果圧力が低下するため、空気案内部材86と位置が一致しているフィルターの部分60からクリーニング処理されたゴミ屑が、空気流から落下し、支持体64の粒子トラップ120に取り込まれ、保持されることを確実にできる。従って、クリーニング処理サイクル時に、フィルター52の所定部分60からクリーニング処理された細かなゴミ屑粒子がフィルターの他の部分に付着することがなくなる。
【0034】
クリーニング処理サイクルは、例えば約1秒?約30秒であればよく、特に約3秒?約15秒であればよい。次に、ステッパモータ84を再び始動させ、第1駆動ギア80、第2駆動ギア82、第1カム78、第2カム98を回動し、これによって第1流れ弁72を開放位置から閉鎖位置に移動させるとともに、第2流れ弁92を閉鎖位置から開放位置に移動させる(即ち、流れ弁72、92を図5、図6に示す位置から図3、図4に示す位置にもってくる)。こうすると、床クリーナ装置10が正常動作に戻り、吸引口18からゴミ混じり空気入り口44を介してゴミ屑をゴミ回収容器30に回収する。サイクロン状の空気流れが遠心力を利用して、ゴミ屑を空気流から効率よく取り除く。ゴミ屑は、比較的クリーンな空気がプレフィルター66の吸気開口68が取り込まれている間、ゴミカップ部分36の環状スペースSに捕集される。この空気は、次に、流路116を通ってフィルター52に流れ、細かな粒子が残留している場合には、これを空気流が取り去り、この後出口48を通過して、吸引発生装置32に移動する。次に、空気流が吸引発生装置32のモータを冷却してから、排出口を介して環境中に戻される。なお、ステッパモータ84は、簡単に始動することができるため、床クリーナ装置の使用者の判断によって、通常の掃除モードに戻る前に、任意の数のフィルター部分60をクリーニング処理することができる。」
(16f)「【0035】
図8に、フィルター52のクリーニング性をさらに改善することができる本発明の作用効果を示す。クリカー(clicker)130を設けることができる。図示の実施態様では、このクリカーは、蓋部分38に固着したスタブシャフト132の保持した細長い取り付けアーム131を有する。このアーム131の両端に弾性作用フラップ134を設ける。図8に示すように、フラップ134の先端が、側壁54とハブ56の間にあるフィルター52の媒体62に係合する。駆動モータ136を配設する。図8に実線で示すように、駆動モータをクリカー130に接続し、これを始動すると、蓋部分38およびフィルター52に対してクリカーを回動することができる。クリカー130が回動すると、フラップ134の先端が、リブ付きフィルター材料62の頂部に係合し、これによってフィルター材料を振動させ、フィルター孔からゴミ屑を効率よくふるい落とす。振動作用単独でも良好なクリーニング作用を確保できるが、前述の空気圧によるクリーニング機構を併用するのが特に好適である。
【0036】
図8に示す別な実施態様の場合、(図8に点線で示す)駆動モータをフィルター52に接続する。この構成では、クリカー130および蓋部分38を静止状態においた状態で、フィルター52を回動する。作用効果は、フィルターの回動時に、フラップ134の先端をリブ付きフィルター媒体62の頂部に係合させ、これによってこの媒体を振動させ、ゴミ屑をこれからふるい落とす場合と同じである。」
(16g) 【図2】には床クリーナ装置のゴミ回収容器、フィルター及び流れ制御弁装置を展開して示す斜視図が示され、【図3】には通常の掃除を行う第1位置におけるゴミ回収容器、フィルター及び流れ制御弁装置を示す横断面図が示され、【図5】にはフィルターの一つの部分のクリーニング処理を行う第2位置における流れ制御弁装置を示す横断面図が示され、【図8】にはゴミ回収容器内で、取り出すことなくフィルターをクリーニング処理してゴミ屑をふるい落とすために使用することができる別なフィルタークリーニング処理特徴を示す概略図が示されている。
(16h) 【図2】、【図3】及び【図8】の記載からすると、ゴミ回収容器30の内側支持体64のプレフィルター66の吸気開口68を介して排気された空気を濾過して排気するフィルター52の上に、前記フィルター52にて濾過されたゴミ屑をクリーニングするクリカー130を有することが見てとれる。

第7 当審の判断
1 無効理由3について
事案に鑑み、まず無効理由3について検討する。
(1) 請求人の主張(平成27年6月19日付け審判事件弁駁書「7.(2)」)
ア 請求項1中の「前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材」という記載は、「フィルタ除塵部材」が「上部フィルタユニット」の上に設けられていることが理解できるが、「フィルタ除塵部材」がどのような働きを有するのかが明確でない。「フィルタ除塵部材」との用語から「フィルタを除塵する部材」であるとの理解ができるが、どのフィルタを除塵するか、どのように除塵するのかが明確でない。
イ 請求項1中の「前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し、」という記載により、被請求人が主張する「内筒フィルタがダストカップの底と嵌合するため、この部分での空気に漏れを防止することができる。また、上部フィルタユニットから落下して内筒内のダストカップ底に溜まった塵埃が内筒外へ漏れることを防止できる。」という効果をなぜ奏するのか不明確である。例えば、内筒がダストカップの底と嵌合するものの両者の間に隙間があれば、上記効果を奏することはありえない。この点、本件明細書の段落【0024】には、環状のシール部材11bが設けられ、この環状のシール部材11bが内筒とダストカップの底との隙間を埋めるために、上記効果を奏することが記載されている。すなわち、上記記載では、上記のような効果を奏することができない。

(2) 被請求人の主張(平成27年7月31日付け審判事件答弁書「7.(1)」)
ア 「前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材」という記載について、フィルタ除塵部材は上部フィルタユニットの上に設けられるため上部フィルタユニットを除塵することは明らかである。また、「フィルタ除塵部材」は「フィルタを除塵する部材」であるから、具体的な除塵方法に関しては技術常識の範囲内の方法で除塵するものであると理解することができる。
イ 「前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し」という記載に関しては、発明の構成と効果との関係をより明確にするために、「前記内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材」という限定事項をさらに追加している。「前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し」かつ、「前記内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材」が設けられることで、空気の漏れを防止することができる。
ウ よって、請求項1及び2に係る発明は明確である。

(3) 当審の判断
ア 「前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材」という記載について、請求項1中の「比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニット」という記載から、「上部フィルタユニット」には比較的小さい塵埃が捕集されていることがまず理解できる。そして、「フィルタを除塵する部材」であると理解できる「フィルタ除塵部材」が当該「上部フィルタユニット」の上に設けられているのであるから、その配置からみて、「フィルタ除塵部材」は、「上部フィルタユニット」に捕集されている比較的小さい塵埃を除塵するものであると理解できる。
また、「フィルタ除塵部材」という記載は、「フィルタを除塵する」という機能を特定した「部材」であって、当該機能を果たす具体的な形状や構造までを特定したものではないものとして理解することができる。そして、その機能が特定されれば、発明を理解することができるのであり、発明を理解するのにその具体的形状や構造まで必要とするものではない。
イ 「前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し」という記載は、請求項1中の「前記内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材をさらに備える」という記載とともにみれば、「内筒フィルタがダストカップの底と嵌合するため、この部分での空気に漏れを防止することができる。」という効果は把握することができる。
ウ よって、請求項1及び2に係る発明は、不明確であるとはいえない。

(4) まとめ
以上のとおりであるから、本件特許は、請求項1及び2の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たさないとはいえず、同法123条1項4号に該当しない。
よって、本件発明1及び2についての特許は、無効理由3により無効とすることはできない。

2 無効理由1について
(1)本件発明と甲1発明との対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「掃除機本体1」、「吸込ホース」、「吸込管」及び「吸込具」は、その機能と構造からみて、本件発明1の「掃除機本体部」、「接続ホース」、「接続管」及び「吸気口部」に相当する。よって、甲1発明の「掃除機本体1の前端面の連結口4には、一連の吸込ホース、吸込管および吸込具が連結されて」いる「キャニスタタイプの電気掃除機」は、本件発明1の「掃除機本体部は、吸気口部、接続管、接続ホースを備え、前記掃除機本体部は前記掃除機本体部の前端に接続された前記接続ホースと前記接続管を介して前記吸気口部に接続される電気掃除機」に相当する。
また、甲1発明の「サイクロン式のダストボックス2」は、その機能からみて、本件発明1の「サイクロン集塵装置」に相当する。
そして、甲1発明の「ダストボックス本体5」は、本件発明1の「ダストカップ」に相当し、甲1発明の「ダストボックス2の側面に」「突設され」た「吸気管15」の「先端側開口16」は、「掃除機本体1の外部から吸入された塵埃を含む空気」が導入される箇所であるから、本件発明1の「塵埃を含む旋回気流を導入する導入口」に相当する。
また、甲1発明の「ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14」「後端の排気口30」は、「ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気」を「上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらに濾過」して「ダストボックス2外に出」す箇所であるから、本件発明1の「空気の出口となる開口」及び「前記空気の出口となる前記サイクロン集塵装置の開口部」に相当する。
また、甲1発明の「ダストボックス本体5」は、「塵埃を含む空気は、吸気管15を通してダストボックス2内に入り、ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回しながら外側フィルタ9内部へ流れ、大きな塵埃はダストボックス本体5底部の空間部26に堆積」させ、「外側フィルタ9内部へ流れた空気は旋回しながら内側フィルタ12内部へ流れ、塵埃はダストボックス本体5底部の空間部28に堆積」させているから、本件発明1の「旋回気流により塵埃を集塵するダストカップ」に相当する。
また、甲1発明の「略円筒状の外側フィルタ部6」は、「外側筒状部材8と、該外側筒状部材8側面に形成された複数本のスリット8a及び当該スリット8aの周囲を被覆する外側フィルタ9とから」なるところ、甲1発明の「略円筒状の外側フィルタ部6」及び「外側フィルタ9」は、本件発明1の「内筒」及び「内筒フィルタ」に相当する。
そして、甲1発明において、「掃除機本体1の外部から吸入された塵埃を含む空気」は、「ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回しながら」、「外側フィルタ部6」の「該外側筒状部材8側面に形成された複数本のスリット8a及び当該スリット8aの周囲を被覆する外側フィルタ9」を介して「外側フィルタ9内部へ流れ」、さらに、その内側に「同心状に配置され」た「内側フィルタ部7」の「内側フィルタ12」及び「内側筒状部材11の上方開口を通って」「ダストボックス2外に出て」いくものであるところ、「掃除機本体1の外部から吸入された塵埃を含む空気」が、「ダストボックス本体5の内壁に沿って旋回しながら」、ダストボックス本体5の中心に位置する「内側筒状部材11の上方開口を通って」「ダストボックス2外に」排気されるためには、「外側フィルタ部6」の「該外側筒状部材8側面に形成された複数本のスリット8a及び当該スリット8aの周囲を被覆する外側フィルタ9」を通過させる必要があるから、甲1発明の「外側フィルタ部6」の「該外側筒状部材8側面に形成された複数本のスリット8a」及び「当該スリット8aの周囲を被覆する外側フィルタ9」は、本件発明1の「前記ダストカップの中心部から排気するための内筒排気口」及び「該内筒排気口を通過する空気を濾過する内筒フィルタ」に相当する。
そして、甲1発明の「外側フィルタ部6」の「外側フィルタ9」を通過して、「ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気は」、「上蓋部14内部の円筒状フィルタ29によりさらに濾過されたのち、上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外に出」ることは、本件発明1の「前記内筒フィルタで濾過された後の空気は、前記内筒を通じて前記上部フィルタユニットに導かれ」、「前記内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを通過」することに相当する。
また、甲1発明において、「外側フィルタ部6および内側フィルタ部7は、ダストボックス本体5の上端開口を閉塞する上蓋部14の下面に垂れ下がった状態に固着され」、「円筒状フィルタ29」は、「上蓋部14内部に収納され」ているから、甲1発明の「円筒状フィルタ29」は、「外側フィルタ部6及び内側フィルタ部7」の上部に配置されているといえ、また、該「円筒状フィルタ29」は、「ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気」を「さらに濾過」するものである。よって、甲1発明の「円筒状フィルタ29」は、本件発明1の「前記内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニット」に相当する。
そして、甲1発明の「上蓋部14後端の排気口30よりダストボックス2外に出」た「空気」を「電動送風機3に取り込ま」せる「掃除機本体1の連絡通路31」は、本件発明1の「電動送風機を内蔵した前記掃除機本体部の上部に空気を導くダクト部」に相当し、また、甲1発明の「連絡通路31」は、その構造上、ダストボックス2からの空気を受け入れる開口部があることは明らかであるから、本件発明1の「前記掃除機本体部に設けられて前記サイクロン集塵装置からの空気を受入れるダクト開口部」を有する「前記ダクト部」に相当する。
そして、甲1発明の「サイクロン式のダストボックス2」は「掃除機本体1の前部に形成されたダストボックス収容部1fに」「上方から挿入されることにより着脱自在に設けられ」ていることは、本件発明1の「前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体部に着脱可能に設けられる」ことに相当する。
そして、甲1発明の「ダストボックス本体5の底部の底蓋21には、底蓋21に沿って空間部26から空間部28へ空気が洩れることがないように、外側フィルタ部6の外側筒状部材8の下端縁と底蓋21とのあいだの隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられ、外側筒状部材8の下端縁は、底蓋21にパッキン36を介して嵌合している」ことは、本件発明1の「前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し」、「前記内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材さらに備える」ことに相当する。

(2)一致点・相違点
よって、本件発明1と甲1発明とは、
「掃除機本体部は、吸気口部、接続管、接続ホースを備え、前記掃除機本体部は前記掃除機本体部の前端に接続された前記接続ホースと前記接続管を介して前記吸気口部に接続される電気掃除機であって、
前記掃除機本体部は、
塵埃を含む旋回気流を導入する導入口および空気の出口となる開口を有し、
旋回気流により塵埃を集塵するダストカップと、
前記ダストカップの中心部から排気するための内筒排気口が形成され、該内筒排気口を通過する空気を濾過する内筒フィルタと、
前記内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニットと、
を有するサイクロン集塵装置と、
前記空気の出口となる前記サイクロン集塵装置の開口部から、電動送風機を内蔵した前記掃除機本体部の上部に空気を導くダクト部と、
を備え、
前記ダクト部は前記掃除機本体部に設けられて前記サイクロン集塵装置からの空気を受入れるダクト開口部を有し、
前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体部に着脱可能に設けられ、
前記内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを通過し、
前記サイクロン集塵装置は内筒を有し、前記内筒は前記内筒フィルタを含み、前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し、
前記内筒フィルタで濾過された後の空気は、前記内筒を通じて前記上部フィルタユニットに導かれ、
前記内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材さらに備える、電気掃除機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件発明1においては、ダクト部とサイクロン集塵装置の開口部との気密を保つ環状のパッキン部を備えているのに対して、甲1発明においては、その点の構成は明らかでない点。
(相違点2)
本件発明1においては、サイクロン集塵装置は、掃除機本体に装着したときにサイクロン集塵装置の軸を掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置させるのに対して、甲1発明においては、ダストボックス2の軸は、そのような配置ではない点。
(相違点3)
本件発明1においては、上部フィルタユニットの上にフィルタ除塵部材を設けているのに対して、甲1発明においては、そのような構成を有していない点。

なお、本件発明1の「前記内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニット」、「前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材とを有するサイクロン集塵装置」、「前記内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを通過」、「前記サイクロン集塵装置は内筒を有し、前記内筒は前記内筒フィルタを含み」、「前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合」及び「前記内筒フィルタで濾過された後の空気は、前記内筒を通じて前記上部フィルタユニットに導かれ」という構成のみでは、上部フィルタユニットとダストカップの底との間には何らの部材も存在しないという構成が特定されたということはできない。よって、上部フィルタユニットから落下する塵埃をダストカップの底に堆積させるという作用が特定されたとは必ずしもいえず、フィルタから除塵された塵埃をどこに収容するかについての特定もないのであるから、本件発明1は、上部フィルタユニットとダストカップの底との間にフィルタをさらに設けるという構成を排除するものではない。
よって、甲1発明が外側フィルタ部6と円筒状フィルタ29との間に内側フィルタ部7をさらに備えていることによって、本件発明1と甲1発明との間に相違が生ずるとはいえない。

(3)判断
上記各相違点について検討する。
ア 上記相違点1について
吸引式の電気掃除機において、吸引流路に漏れが生じないように電気掃除機内の流路構造を気密に構成することは、吸引効率の向上、塵埃の漏出防止の観点等から当業者が当然に配慮すべき設計事項である。そして、当該気密構造のひとつの具体的手段として、流路接続部の接続口に環状のパッキン部を備えるようにすることは本件特許出願前の周知技術であるし、当該パッキン部を着脱可能なサイクロン式の集塵装置と電気掃除機本体との接続口に備えるようにすることも本件特許出願前の周知技術である(必要であれば、甲第1号証の1の記載事項(2d)中のシールパッキン42についての記載、甲第2号証の記載事項(3c)中のパッキン45についての記載等参照。)。
そうしてみると、甲1発明において、ダストボックス2の上蓋部14の排気口30と掃除機本体1の連絡通路31との接続口との気密を保つ環状のパッキン部を備えるようにすること、すなわち上記相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、電気掃除機の吸引効率の向上、塵埃の漏出防止の観点等から当業者が必要に応じて採用し得た設計的事項といえる。

イ 上記相違点2について
甲第2号証には、略円筒状の集塵ケース21を有する集塵装置20を着脱自在に形成した電気掃除機において(上記記載事項(3a)参照)、集塵装置20を、集塵装置収納室9への収納状態で、蓋体24が後方上部に向くように傾斜して装着したものが記載されている(上記記載事項(3b)参照)。そして、集塵装置20は掃除機本体1への装着状態で、排出口44が後方上部に向かって傾斜するようになっていると共に、電動送風機6を吸気口7が上に向くように装着しているので、吸込口4から集塵装置20への吸塵路12及び集塵装置20から電動送風機6への吸引路15を空気がスムースに流れるよう構成することができ、通気抵抗を低減して吸気効率を向上することができることが記載されている(上記記載事項(3e)参照)。
甲第2号証の1には、掃除機本体10に着脱自在に装着され、円筒状の排気筒34を有するサイクロン式の集塵器30aを備えた電気掃除機において(上記記載事項(4a)、(4b)、(4d)参照)、集塵器30aが掃除機本体10に対してその上部が後方の電動送風機がある方向に傾斜した姿勢で装着されていることが記載されている(上記記載事項(4e)参照)。
甲第2号証の2には、掃除機本体1のケース体2に集塵部が着脱可能に装着される電気掃除機において(上記記載事項(5a)、(5b)参照)、濾過部66を有底円筒状の集塵カップ65に取り付けて構成した集塵部9は、上部の濾過部66が前側上方に向く傾斜した状態で集塵カップ65の下部がケース体2の装着下凹部38に載置係合されて本体ケース4の前側に装着されることが記載されている(上記記載事項(5c)参照)。
甲第2号証の3には、本体から取り出し可能な集塵部5(上記記載事項(6b)参照)について、集塵部5は、遠心分離部7の鉛直方向の中心軸が、塵埃蓄積部8の鉛直方向の中心軸に対し30°傾斜させた構成とし、集塵部5が本体に対してその上部が後方の電動送風機がある方向に傾斜した姿勢で装着されたものが記載されている(上記記載事項(6a)、(6e)参照)。そして、集塵部5は遠心分離部7を塵埃蓄積部8に対し30°の角度で傾斜させていることで、全体高さを抑えることができることが記載されている(上記記載事項(6c)参照)。
甲第2号証の4には、本体8のシャーシ9に分離機構10を取り外し可能に搭載する真空掃除機7において(上記記載事項(7a)、(7b)参照)、分離機構10が真空掃除機7の本体8に対してその上部が後方に傾斜した姿勢で装着されたものが記載されている(上記記載事項(7c)参照)。
甲第2号証の5には、電気掃除機の集塵構造に関して(上記記載事項(8a)参照)、略円筒状をなすプレフィルター16を備え、運ぶことが可能な集塵部5(上記記載事項(8b)、(8c)参照)の上部が後方の電動送風機がある方向に傾斜した姿勢で装着されていることが記載されている(上記記載事項(8d))。
甲第2号証の6には、掃除機本体100の前方部に着脱可能に装着される前記集塵ユニット200を含む、真空掃除機10(上記記載事項(9a)、(9b)参照)において、略円筒形に形成された集塵体210を有する集塵ユニット200が掃除機本体100後方の連結流路114の方向に傾斜した姿勢で装着されていることが記載されている(上記記載事項(9e)参照)。
これらの文献の記載にみられるように、甲1発明の属する技術分野である着脱可能な集塵装置を備えたサイクロン式の電気掃除機において、掃除機本体の全体高さを抑えることを目的として、当該集塵装置を掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置し、集塵装置内の旋回流の中心軸も掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置する構成とすることは本件特許出願前の周知技術である。
そして、掃除機本体は嵩高であると重心が不安定化して掃除の際の取り回しが不便であるため全体高さはなるべく抑えたほうが良いという電気掃除機における一般的課題については、甲1発明の電気掃除機においても内在する課題であるから、甲1発明の「ダストボックス2」について、その軸を、上記周知技術のとおり、掃除機本体に装着したときに掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置させることには十分な動機づけが存在するといえるし、当該配置とすることに特段の阻害要因はない。
そうすると、甲1発明の「ダストボックス2」について、その軸を、上記周知技術のとおり、掃除機本体に装着したときに掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置させること、すなわち上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

ウ 上記相違点3について
甲1発明の属する技術分野であるサイクロン式の電気掃除機において、その集塵装置のフィルターは、当該集塵装置から排気される空気に含まれる細塵を捕集する機能を果たすものの、細塵が徐々に蓄積して目詰まりを起こすことが問題となっており、当該蓄積した細塵をフィルターから容易に除去して、フィルターのメンテナンス性を向上させたいということが周知の課題であった(例えば、甲第3号証の2(上記記載事項(12c))、甲第7号証(上記記載事項(16b))参照)。そうすると、上記周知の課題が内在する甲1発明においても、ダストボックス本体5で塵埃が濾過された空気をさらに濾過するものである「円筒状フィルタ29」について、付着した塵埃を容易に除去したいという動機づけは存在する。
そして、甲第7号証には、
「ゴミ混じり空気を流し環状スペースSの周囲に流れて遠心力を発生するゴミ混じり空気の入り口44を有し、サイクロン状の空気流れによって取り除かれたゴミ屑を回収するゴミカップ部分36、該ゴミカップ部分36の内側に配設され比較的クリーンな空気が流れ込む吸気開口68を有し、該吸気開口68が空気流れを作るほぼ円筒形に構成されたプレフィルター66および内側支持体64を有するサイクロン状の空気流れを発生するゴミ回収容器30において、
前記プレフィルター66および内側支持体64は、前記ゴミカップ部分36の底壁37から配設されるほぼ円筒形に構成され、
前記プレフィルター66および内側支持体64の上部には、該吸気開口68を介して排気された空気を濾過して排気するフィルター52と、該フィルター52の上に前記フィルター52にて濾過されたゴミ屑をクリーニングするクリカー130を有し、
前記クリカー130によりクリーニングされたゴミ屑は前記フィルター52からふるい落とされる、サイクロン状の空気流れを発生するゴミ回収容器30。」(上記記載事項(16a)?(16h)参照。)が記載されており、サイクロン式の電気掃除機のサイクロン集塵装置において、円筒形フィルターの上部に配置され、該円筒形フィルターを介して排気された空気を濾過して排気するフィルターの上に、当該フィルターにて濾過された塵埃を除去する塵埃除去部材(甲第7号証においては「クリカー130」)を設けることは、本件特許出願前の周知技術である。
よって、甲1発明の「円筒状フィルタ29」について、付着した塵埃を容易に除去するために、上記周知技術を適用すること、すなわち上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

エ 本件発明1の作用効果について
本件特許明細書には、本件発明1の構成により奏される作用効果について何ら記載はない。そして、本件発明1は、サイクロン集塵装置の軸の「斜め」配置が「ダクト部がある方向」に傾けたものであるかどうかなどが特定されず、空気が上部フィルタユニットを「上方に」通過するとの特定もなく、上部フィルタユニットとサイクロン集塵装置の開口部やダクトとの位置関係、これらの関連構造も明確でないから、請求人が主張する、塵埃が分離された後の空気は軸方向の速度成分を維持したまま上部フィルタユニット13を通過することができることや、排気経路は積層体が傾斜することで直線に近い形状となり電動送風機2に筐体10が近づくため排気効率が向上するという効果は、請求項の記載に基づかないものであり、これを認めることはできない。また、上部フィルタユニットから落下した塵埃が内筒内のダストカップ底に溜まる効果についても、本件発明1にはそのような効果を奏する構成は特定されておらず、請求項の記載に基づかないものである。
そして、内筒フィルタがダストカップの底と嵌合し、シール部材が設けられているため、この部分での空気に漏れを防止していることは、甲第1号証記載の公知の効果であり、サイクロン集塵装置が傾斜していることによる塵埃の堆積状態についても、同様の構成を有する甲第2号証等に記載の周知の構成から当業者が予測し得る範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び上記周知技術(甲第1号証の1、甲第2号証、甲第2号証の1?6、甲第7号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、よってその特許は同法第123条第1項第2号に該当する。
よって、本件発明1についての特許は、無効理由1により無効とすべきものである。

3 無効理由2について
(1)本件発明2と甲1発明との対比、一致点・相違点
本件発明2は、本件発明1に「前記内筒の底部は開放されており、前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体の垂直方向より前記ダクト部がある方向の斜めに配置させる」という構成を付加したものである。
そこで、本件発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ダストボックス本体5の底部の底蓋21には、底蓋21に沿って空間部26から空間部28へ空気が洩れることがないように、外側フィルタ部6の外側筒状部材8の下端縁と底蓋21とのあいだの隙間を閉塞するためのパッキン36が設けられ、外側筒状部材8の下端縁は、底蓋21にパッキン36を介して嵌合している」構成から、パッキン36がなければ、空間部26から空間部28へ空気が洩れてしまう構成であること、すなわち外側フィルタ部6の外側筒状部材8の下端は開放されたものであることが理解できる。
このことは、甲第1号証には、甲1発明の「ダストボックス本体5の底部の底蓋21」について、「ダストボックス本体5の底部には、取手19の下部に設けられたヒンジ20により開閉自在に構成された底蓋21が取り付けられている。この底蓋21は、吸気管15の下方に設けられたレバー22の上部を押すことにより、レバー22の下端に形成されたクランプ23が底蓋21側の係止爪24より外れて、ダストボックス本体5の下端開口を開放するようになっている。」(上記記載事項(1f))ことが記載され、ダストボックス本体5底部の空間部26に堆積した大きな塵埃及びダストボックス本体5底部の空間部28に堆積した塵埃をそこから廃棄するものであることが示唆されていることとも整合する。
そのほか、上記1(1)に示した本件発明1と甲1発明との相当関係を踏まえると、本件発明2と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点においては一致する。

(相違点1)
本件発明2においては、ダクト部とサイクロン集塵装置の開口部との気密を保つ環状のパッキン部を備えているのに対して、甲1発明においては、その点の構成は明らかでない点。
(相違点2’)
本件発明2においては、サイクロン集塵装置は、掃除機本体に装着したときにサイクロン集塵装置の軸を掃除機本体の垂直方向に対して、掃除機本体の垂直方向よりダクト部がある方向の斜めに配置させるのに対して、甲1発明においては、ダストボックス2の軸は、そのように配置させるとはいえない点。
(相違点3)
本件発明2においては、上部フィルタユニットの上にフィルタ除塵部材を設けているのに対して、甲1発明においては、そのような構成を有していない点。

(2)判断
上記各相違点について検討する。
ア 上記相違点1及び相違点3について
上記相違点1及び相違点3は、本件発明1と甲1発明との相違点1及び相違点3と同じであるから、上記「1(3)ア及びウ」に示したとおりである。

イ 上記相違点2’について
上記相違点2’は、本件発明1と甲1発明との相違点2について、サイクロン集塵装置の軸の傾斜方向が「ダクト部がある方向」であることを特定したものである。
しかしながら、サイクロン集塵装置の軸の傾斜方向が「ダクト部がある方向」であることも、甲第2号証、甲第2号証の1、甲第2号証の3、甲第2号証の4、甲第2号証の5、甲第2号証の6にみられるように本件特許出願前の周知技術である(上記「1(3)イ」参照)。
そして、サイクロン集塵装置の軸の傾斜方向が「ダクト部がある方向」に特定されても、上記「1(3)イ」に示した電気掃除機における一般的課題は影響を受けるものではないから、甲1発明の「ダストボックス2」に上記周知技術を適用することには十分な動機づけが存在するといえるし、適用に際しての特段の阻害要因はない。
よって、甲1発明のダストボックス2について、その軸を、上記周知技術のとおり、掃除機本体に装着したときに掃除機本体の垂直方向に対してダクト部がある方向の斜めに配置させるようにすること、すなわち上記相違点2’に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

ウ 本件発明2の作用効果について
本件特許明細書には、本件発明2の構成により奏される作用効果について何ら記載はない。そして、本件発明2は、サイクロン集塵装置の軸の「斜め」配置を「ダクト部がある方向」に傾けたものであると特定するものの、空気が上部フィルタユニットを「上方に」通過するとの特定もなく、上部フィルタユニットとサイクロン集塵装置の開口部やダクトとの位置関係、これらの関連構造が明確でないから、請求人が主張する、塵埃が分離された後の空気は軸方向の速度成分を維持したまま上部フィルタユニット13を通過することができることや、排気経路は積層体が傾斜することで直線に近い形状となり電動送風機2に筐体10が近づくため排気効率が向上するという効果は、請求項の記載に基づかないものであり、これを認めることはできない。
請求人が主張するその余の効果については、上記「1(3)エ」に示したとおりである。

(3)小括
したがって、本件発明2は、甲1発明及び上記周知技術(甲第1号証の1、甲第2号証、甲第2号証の1、甲第2号証の3?6、甲第7号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、よってその特許は同法第123条第1項第2号に該当する。
よって、本件発明2についての特許は、無効理由2により無効とすべきものである。

4 被請求人の主張について
(1)上記「第5(1)」の主張について
本件発明1においては、空気が上部フィルタユニットを「上方に」通過するとの特定はされていないから、これに基づく主張は、請求項の記載に基づかないものであり、認められない。
また、掃除機本体の全体高さを抑えることを目的として、集塵装置の軸を掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置する構成は周知技術であり、甲1発明の「ダストボックス2」について、その軸を、上記周知技術のとおり、掃除機本体に装着したときに掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置することに阻害要因はないことは上記「1(3)イ」に説示したとおりである。
そうすると、甲1発明に上記周知技術を適用した際に、掃除機本体の高さが低く抑えられることは、当業者の予測し得る範囲内のものといえる。
よって、被請求人の上記主張は理由がなく、採用できない。

(2)上記「第5(2)」の主張について
甲第1号証には、「ダストボックス内部の状況を視認することができ、かつ、掃除機全体の強度が低下するのを抑制することができるサイクロン式のキャニスタタイプの電気掃除機を提供することを目的とする。」(【0008】)との記載があるが、甲1発明について「ダストボックス2の軸を掃除機本体に装着したときに掃除機本体の垂直方向に対して斜めに配置した」場合においても、甲1発明は、斜めに配置された「ダストボックス2」に合わせて、連結部37等の掃除機本体の形状・構造、材料等を適宜に選択することにより、ダストボックス内部の視認性や掃除機全体の強度を保ったまま設計変更することが十分に可能なものである。
そうすると、甲1発明について上記場合のように設計変更しても、上記目的は必ずしも変更されないから、それにより阻害要因が生ずるともいえない。
よって、被請求人の上記主張は当を得たものでなく、採用できない。

(3)上記「第5(3)」の主張について
甲第1号証の1は、吸引式の電気掃除機において、吸引流路に漏れが生じないように電気掃除機内の流路構造を気密に構成するための周知の気密構造として、流路接続部の接続口に環状のパッキン部を備えるようにすることの例示を引用したものであり、甲第1号証の1の集塵装置の軸を掃除機本体に対して斜めに配置するよう変更することに阻害要因があるかどうかは、甲第1号証の1を引用する際には何ら問題とならないものである。
よって、被請求人の上記主張は当を得たものでなく、採用できない。

(4)上記「第5(4)」の主張について
本件発明1においては、空気が上部フィルタユニットを「上方に」通過するとの特定はされていないから、これに基づく主張は、請求項の記載に基づかないものであり、認められない。
よって、被請求人の上記主張は理由がなく、採用できない。

(5)上記「第5(5)」の主張について
本件発明1において「フィルタ除塵部材」は、「フィルタを除塵する」という機能を特定した「部材」と解されるものであって、上部フィルタユニットの上に設けられることが特定されたものである。一方、本件発明1においては、上部フィルタユニットから落下する塵埃をダストカップの底に堆積させる構成は特定されておらず、フィルタから除塵された塵埃をどこに収容するかについての特定もないことは、上記「2(2)」に説示したとおりである。
そうすると、甲1発明については、フィルタから除塵した塵埃の収容場所を特定して検討する必要はなく、単に円筒状フィルタ29に除塵部材を設けることができるかを検討すれば足りるのであるから、甲1発明が外側フィルタ部6と円筒状フィルタ29との間に内側フィルタ部7をさらに備えているものであっても、甲1発明の円筒状フィルタ29に甲第7号証記載の周知技術を適用することの阻害要因とはならない。
本件発明1には、上部フィルタユニットから落下する塵埃をダストカップの底に堆積させる構成が特定されているという前提に基づく請求人の主張は、請求項の記載に基づかないものであり、認められない。
よって、被請求人の上記主張は当を得たものでなく、採用できない。

第8 むすび
以上のとおり、本件発明1及び本件発明2についての特許は、無効理由1及び無効理由2により無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電気掃除機
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気掃除機に関し、より特定的には、旋回気流により塵埃を除去する電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気掃除機は、たとえば特開2007-252838号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-252838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電気掃除機では、ダクト部の一端では、パッキン部材がサイクロン集塵機側に接着剤で接続されている。このような接続では接着剥がれによる気密性の低下等の問題があった。
【0005】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、気密性の高いダクト部を有する電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った電気掃除機は、掃除機本体部、吸気口部、接続管、接続ホースを備え、掃除機本体部は掃除機本体部の前端に接続された接続ホースと接続管を介して吸気口部に接続される電気掃除機であって、掃除機本体部は、塵埃を含む旋回気流を導入する導入口および空気の出口となる開口を有し、旋回気流により塵埃を集塵するダストカップと、ダストカップの中心部から排気するための内筒排気口が形成され、該内筒排気口を通過する空気を濾過する内筒フィルタと、内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニットと、上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材とを有するサイクロン集塵装置と、空気の出口となるサイクロン集塵装置の開口部から電動送風機を内蔵した掃除機本体部の上部に空気を導くダクト部と、ダクト部とサイクロン集塵装置の開口部との気密を保つ環状のパッキン部とを備え、ダクト部は掃除機本体部に設けられてサイクロン集塵装置からの空気を受入れるダクト開口部を有し、サイクロン集塵装置は、掃除機本体部に着脱可能に設けられるとともに、掃除機本体部に装着したときにサイクロン集塵装置の軸を掃除機本体部の垂直方向に対して斜めに配置させ、内筒フィルタを経た空気は上部フィルタユニットを通過し、サイクロン集塵装置は内筒を有し、内筒は内筒フィルタを含み、内筒はダストカップの底まで延びてダストカップの底と嵌合し、内筒フィルタで濾過された後の空気は、内筒を通じて上部フィルタユニットに導かれる。内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材をさらに備える。
好ましくは、内筒の底部は開放されており、サイクロン集塵装置は、掃除機本体部の垂直方向よりダクト部がある方向の斜めに配置させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態に従った電気掃除機の外観図である。
【図2】この発明の実施の形態に従った電気掃除機の内部構造を説明するための断面図である。
【図3】図2中の電気掃除機を構成するサイクロン集塵機が塵埃を排出する状態を拡大して示す断面図である。
【図4】筐体10と、筐体10に取り付けられた螺旋状回転圧縮部123とを拡大して示す斜視図である。
【図5】筐体10の内部構成を説明するために示す分解斜視図である。
【図6】ダクト部1に取付けられるパッキン部材4とそのパッキン部材4と挟み込むパッキン固定部材5,6とを示す分解斜視図である。
【図7】ダクト部1に嵌められたパッキン部材4およびパッキン固定部材5,6の断面図である。
【図8】図7中のVIIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、この発明の実施の形態に従った電気掃除機の外観図である。まず図1を用いて、この発明の実施の形態に係る電気掃除機400の概略構成について説明する。図1で示すように、電気掃除機400は、掃除機本体部410、吸気口部420、接続管430、接続ホース440、操作ハンドル450などを備えている。掃除機本体部410には、図1では示さない電動送風機、サイクロン集塵機および制御装置などが内蔵されている。
【0013】
電動送風機は、吸気を行なうための送風ファンおよび送風ファンを回転駆動する送風駆動モータを有している。制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの制御機器を有しており、電気掃除機400を統括的に制御する。具体的には、制御装置では、CPUがROMに記憶された制御プログラムに従って種々の処理を実行する。
【0014】
操作ハンドル450には、ユーザが電気掃除機400の稼動の有無や運転モードの選択操作などを行なうための操作スイッチが設けられている。また、その操作スイッチ近傍には、電気掃除機400の現在の状態を表示するLED(Light Emitting Diodes)などの表示部も設けられている。
【0015】
掃除機本体部410は、掃除機本体部410の前端に接続された接続ホース440と、接続ホース440に接続された接続管430とを介して吸気口部420に接続されている。したがって、電気掃除機400では、掃除機本体部410に内蔵された電動送風機が作動することにより、吸気口部420からの吸気が行なわれる。そして、吸気口部420から吸気された空気は、接続管430および接続ホース440を通じてサイクロン集塵装置に流入する。サイクロン集塵装置では、吸い込まれた空気から塵埃が遠心分離される。なお、サイクロン集塵装置で塵埃が分離された後の空気は、掃除機本体部410の後端に設けられた排気口から排出される。
【0016】
以下、本発明に係るサイクロン集塵装置の一例であるサイクロン集塵装置について説明する。
【0017】
図2は、この発明の実施の形態に従った電気掃除機の内部構造を説明するための断面図である。図3は、図2中の電気掃除機を構成するサイクロン集塵機が塵埃を排出する状態を拡大して示す断面図である。図2および図3で示すように、サイクロン集塵装置300は、筐体10、内周面がほぼ円筒状で、上記筐体10に対して着脱自在の集塵容器11(捕集容器の一例)、内筒12、上部フィルタユニット13、塵埃受部14および除塵駆動機構などを備えて概略構成されている。
【0018】
サイクロン集塵装置300では、集塵容器11、内筒12、上部フィルタユニット13および塵埃受部14が、垂直の中心軸Pを中心に同軸上に配置されている。また、サイクロン集塵装置300は、掃除機本体部410に着脱可能に構成されている。
【0019】
上記上蓋の一例である筐体10は、内筒フィルタ122を備えた内筒12を備えている。
【0020】
このサイクロン集塵装置300では、ほぼ円筒状の集塵容器11の中心部に設けられた内筒12から集塵容器11の空気を排気することにより、集塵容器11の内周部に設けられた空気流入口111aから吸い込まれた空気を集塵容器11の内周面に沿って旋回させた後、フィルタ手段の一例である上部フィルタユニット13などを経て内筒12を経て排気し、空気に含まれる比較的大きい捕集対象物を集塵容器11の底部で捕集するとともに、比較的小さい捕集対象物を上部フィルタユニット13などにおいて捕集するものである。
【0021】
集塵容器11は、吸い込まれた空気から分離された塵埃を収容するための内周面が円筒状で、かつ外形も円筒状の容器である。集塵容器11は、サイクロン集塵装置300の筐体10に着脱可能に構成されている。
【0022】
集塵容器11の底部には、底蓋310が開閉自在に取付けられている。図2では底蓋310が閉じた状態を示している。ユーザは、掃除機本体部410からサイクロン集塵装置300を取り出した後、底蓋310を開くことで集塵容器11内の塵埃を廃棄する。
【0023】
サイクロン集塵装置300の筐体10と集塵容器11との間には、環状のシール部材161が設けられている。このシール部材161により、筐体10および集塵容器11間の空気の漏れが防止できる。
【0024】
また、集塵容器11の底蓋310には、内筒12に設けられた回転軸部123bに嵌合する嵌合部11aが設けられている。嵌合部11aの外周部には、内筒12の回転軸部123bとの隙間を埋めるための環状のシール部材11bが設けられている。このシール部材11bにより、回転軸部123bおよび集塵容器11の間の空気の漏れを防止できる。
【0025】
さらに、集塵容器11には、接続ホース440が接続される接続部111が設けられている。吸気口部420から接続管430および接続ホース440を通じて吸い込まれた空気は、接続部111から集塵容器11内に流入する。
【0026】
接続部111の集塵容器11への空気流入口111aは、接続ホース440からの空気が集塵容器11内で旋回するように形成されている。具体的には、空気流入口111aは、集塵容器11の接線方向に向くように形成されていることで、空気流入口111aから吸い込まれた空気は集塵容器11の内周に沿って旋回する。したがって、旋回する空気に含まれた塵埃は旋回により遠心力で集塵容器11の内周面に押し付けられ、そのために旋回の速度を失って集塵容器11の底に落下し、旋回空気から分離(遠心分離)される。そして、集塵容器11で遠心分離された塵埃は、集塵容器11の底部に収容される。
【0027】
一方、塵埃が分離された後の空気は、集塵容器11から矢印112aで示す排気経路に沿って掃除機本体部410に設けられた排出口から外部に排気される。ここで、集塵容器11から排気口までの排気経路112上には、内筒12、塵埃受部14および上部フィルタユニット13が順に配置されており、空気流中の比較的細かい塵埃が内筒12および上部フィルタユニット13に設けられたフィルタにより取り除かれる。
【0028】
内筒12は、集塵容器11内に配置された円筒状の部材である。ここで、内筒12は、塵埃受部14によって回転可能に支持されている。具体的に、内筒12は、内筒12の上端に設けられた環状の凹部12aが塵埃受部14の下端に設けられた環状の支持部14cに支持されることにより、塵埃受部14と一体に回転可能な状態で吊り下げられている。なお、内筒12を回転可能に支持する構成は、これに限られるものではない。たとえば内筒12の上下の端部を軸支することが一例として考えられる。
【0029】
内筒12は、傾斜除塵部材134に一体回転可能に連結されている。これにより、内筒12は、傾斜除塵部材134に連動して回転することになる。なお、内筒12および傾斜除塵部材134の連結構造はこれに限られない。たとえば、内筒12および傾斜除塵部材134各々に設けられた嵌合部を嵌合させることにより一体回転可能に連結する構成が考えられる。
【0030】
また、内筒12の上部には、集塵容器11で塵埃が分離された後の空気を、上部フィルタユニット13に向けて排気するための内筒排気口121が形成されている。そして、内筒排気口121には、内筒排気口121全体を覆う内筒状をなす内筒フィルタ122が設けられている。内筒フィルタ122は、内筒排気口121を通過する空気を濾過する。
【0031】
たとえば、内筒フィルタ122は、メッシュ状のエアフィルタなどである。なお、内筒フィルタ122は、内筒排気口121の内側または外側のいずれに設けられていてもよい。また、内筒排気口121および内筒フィルタ122に代えて、内筒12にメッシュ状の孔を形成する構成も考えられる。その場合は、メッシュ状の孔が内筒排気口121および内筒フィルタ122として機能する。
【0032】
内筒12の下部には、集塵容器11の塵埃を圧縮するための垂直中心軸周りに回転可能な螺旋状回転圧縮部123が設けられている。螺旋状回転圧縮部の斜視図である図4を参照しつつ螺旋状回転圧縮部123について説明する。
【0033】
図2および図3で示されているように、螺旋状回転圧縮部123には、螺旋状曲面を備えた螺旋部123aと、回転軸部123bと、円盤状遮蔽部材123cとが設けられている。
【0034】
回転軸部123bは、集塵容器11の底部に設けられた嵌合部11aに嵌合される中空円筒である。前述したように、回転軸部123bおよび嵌合部11aの間にはシール部材11bが介在する。
【0035】
円盤状遮蔽部材123cは、集塵容器11内において、旋回流の遠心分離力により塵埃を分離する上部空間の部分(分離部104)と、塵埃を蓄積する下部空間の部分(集塵部105)との仕切りの役割を果たす。これにより、捕集した塵埃が巻き上がり、内筒フィルタ122を詰まらせることを防ぐ。また円盤状であるため、サイクロン気流中に含まれる塵埃が引っかかることがなく、効率的に塵埃を集塵容器11の底部へ誘導することができる。
【0036】
回転軸部123bには、回転軸部123bを中心にして、集塵部105の底面に向かった螺旋状に延び、その上下面が垂直中心軸Pを中心とする螺旋状曲面を備えた湾曲した板状の螺旋部123a(圧縮部材の一部)が設けられている。螺旋部123aは、後述するように内筒12が回転するときに集塵容器11内に蓄積され、集塵容器11の内周面に接触して回転させることに抵抗がある集塵を、ねじの運び作用によって集塵容器11の底部に向かって移動させる。このとき、圧縮部材の螺旋状曲面が螺旋状曲面をねじと想定したときに圧縮部材の回転によりねじが後退するように形成されることにより、この螺旋状曲面で塵を圧縮することができる。
【0037】
このとき、螺旋部123aの螺旋状曲面は旋回気流と同様の傾斜方向をもって形成されることが好ましい。このような螺旋部123aを旋回と反対方向に回転させることで集塵容器11内の塵埃は、集塵容器11内面との摩擦によって、集塵容器11底部へ移動することになる。
【0038】
但し、螺旋部123aの螺旋状曲面を、集塵容器11の内周面に沿って旋回する気流の傾きとは反対方向に傾斜させることも可能である。このとき、螺旋部123aの回転方向は旋回気流の旋回方向と同一方向、すなわち螺旋部123aをねじと想定したとき、螺旋部123aの回転によりねじが後退する方向となる。
【0039】
さらに、内筒12が回転するとき、集塵容器11の底部まで移動した塵埃に対して螺旋部123aは集塵容器11の底部との摩擦によって上記底面との間で塵埃を回転により回転軸中心から外側に向かって押出し圧縮することになる。このような構成とすれば、塵埃が回転によって固く圧縮されるので、集塵容器11の塵埃の蓄積可能量を増加させることができる。したがって、集塵容器11の小型化を実現することも可能である。また固く圧縮された塵埃は、容易に解けないので、取出し時にも空気中に散乱する問題がなく、そのままの形で塵として廃棄することができる。
【0040】
また、上記のように螺旋状回転圧縮部123が螺旋状回転圧縮部が回転することによって螺旋部123aにより圧縮された塵埃の一部は、長い髪の毛などを含んでいるので螺旋部123aに絡みつく。そのため、上記のように底蓋310を開放して、集塵容器11の底部に形成した開口330から塵埃を放出しようとしても簡単には外部に放出されない。また、塵埃を勢いよく放出すると塵埃に含まれる細かいちりなどが空気中に散乱し、部屋を汚すことになる。そのため、何らかの方法で、簡単な操作で塵埃をゆっくり外部に放出する機構が必要である。そのために設けられた塵埃を簡単な操作でゆっくり外部に放出するための機構について以下に説明する。
【0041】
図4は、筐体10と、筐体10に取り付けられた螺旋状回転圧縮部123とを拡大して示す斜視図である。図5は、筐体10の内部構成を説明するために示す分解斜視図である。上部フィルタユニット13を内部に備えた筐体10の上面には取っ手314が設けられている。取っ手314は外部から操作可能な操作部材の一例である。
【0042】
取っ手314は、筐体10とは独立して垂直軸芯の周りに回転自在である。取っ手314の内部には、傾斜面を構成する上側取っ手内蔵ギヤ316が一体に内蔵されており、上側取っ手内蔵ギヤ316と同じく斜面を構成する下側取っ手内蔵ギヤ318が噛合っている。上側取っ手内蔵ギヤ316が回転すると下側取っ手内蔵ギヤ318が上記傾斜に押されて下方向に移動する。したがって、取っ手314を回転させることで上側取っ手内蔵ギヤ316が下側取っ手内蔵ギヤ318と噛合って取っ手314の回転が下側取っ手内蔵ギヤ318に伝えられる。
【0043】
下側取っ手内蔵ギヤ318は、中間体320の上面に形成されており、中間体320の下面にはクラッチギヤが形成されているので、下側取っ手内蔵ギヤ318の下方への移動により中間体320とともにクラッチギヤも下方向に移動することになる。
【0044】
中間体320の下方には、隙間を介してフィルタ除塵部材132に一体的に固定されたクラッチ受部が設けられており、上記中間体320の下方への移動に伴ってクラッチギヤとクラッチ受部とが噛合い、取っ手314の回転がクラッチギヤとクラッチ受部から構成されるクラッチ機構を介して、フィルタ除塵部材132に伝達され、フィルタ除塵部材132に連結された内筒12およびこれと一体に連結された螺旋状回転圧縮部123が回転し、螺旋部132aが回転する。これによって、螺旋部123aのねじの運び作用により螺旋部123aに絡まった塵埃がゆっくりと螺旋部123aの先端方向に運ばれ、底蓋310が開くことによって開放された集塵容器11の底部開口から外部に放出される。
【0045】
このように操作者によって取っ手314が回転されることで塵埃がゆっくりと外部に放出されるので、塵埃に含まれる細かい塵などが舞い上ることを防止し、また、塵が飛散することなく室内がちりによって汚染されることがない。
【0046】
なお、取っ手314から手を離すとばね収容部に内蔵されたばねによって中間体320が押し上げられ、クラッチギヤとクラッチ受部から構成されるクラッチ機構が開放される。これによって、取っ手314を操作しない限りクラッチ機構が開放状態にあるので、除塵駆動モータ151によってフィルタ除塵部材132が回転しても取っ手314が回転しないので安全である。
【0047】
内筒12の内筒フィルタ122で濾過された後の空気は、内筒12を通じて上部フィルタユニット13に導かれる。
【0048】
図6は、ダクト部1に取付けられるパッキン部材4とそのパッキン部材4と挟み込むパッキン固定部材5,6とを示す分解斜視図である。図6を参照して、掃除機本体部のダクト部1にはパッキン部材4と、これを押圧してパッキン部材4をダクト部1に固定するためのパッキン固定部材5,6が設けられる。パッキン固定部材5,6は2分割されており、パッキン部材4を上側と下側から挟み込むことでパッキン部材4をダクト部1に固定する。パッキン部材4の材質はゴムであり、パッキン部材4はダクト部1と筐体10との間の気密性を保ち、音の発生などを防止する働きがある。パッキン固定部材5,6の分割数は2に限られず、さらに多くの数に分割されていてもよい。
【0049】
図7は、ダクト部1に嵌められたパッキン部材4ならびにパッキン固定部材5,6の断面図である。図8は、図7中のVIIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図7および図8を参照して、ダクト部1の先端にはパッキン固定部材5,6と係合するための立壁501が設けられており、立壁501にパッキン固定部材5,6の一部分が係合している。パッキン固定部材5,6はパッキン部材4の一部分と立壁501とを挟持し、パッキン部材4を立壁501側へ押圧する。これにより、パッキン部材4がダクト部1に密着する。パッキン部材4には凸部41,42が設けられており、凸部41,42が空気導入孔の全周に亘って設けられている。立壁501は環状に設けられており、リブ形状である。凸部41,42の数は2つに限られず、さらに多い、または少ない凸部を設けてもよい。さらに二つの凸部41,42の高さは同じである必要はなく、一方の凸部が他方の凸部より高く形成されていてもよい。凸部41,42はパッキン固定部材5によって押圧されることで弾性変形して立壁501に密着している。これにより、空気の漏れを防止することができる。
【0050】
この発明に従った電気掃除機は、塵埃を含む旋回気流を導入する導入口および空気の出口となる開口を有し、旋回気流により塵埃を集塵するダストカップとしての集塵容器11を有するサイクロン集塵装置300と、空気の出口となる開口から電動送風機2を内蔵した掃除機本体に空気を導くダクト部1と、ダクト部1とサイクロン集塵装置300の開口部との気密性を保つパッキン部材4と、パッキン部材をダクト部1に固定するパッキン固定部材5,6とを有する。
【0051】
パッキン部材4のダクト部1との接触面には、パッキン部材4とダクト部1との気密性を保つための突起41,42が設けられている。ダクト部1の空気流入面全周には、パッキン部材のダクト部の空気流入部への脱落防止のための脱落防止壁面としての立壁501が設けられている。パッキン固定部材5,6はほぼU字形状である。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 ダクト部、2 電動送風機、4 パッキン部材、5,6 パッキン固定部材、10 筐体、11b シール部材、11a 嵌合部、11 集塵容器、12 内筒、12a 凹部、13 上部フィルタユニット、14 塵埃受部、14c 支持部、41,42 凸部、104 分離部、105 集塵部、111 接続部、111a 空気流入口、112 排気経路、112a 矢印、121 内筒排気口、122 内筒フィルタ、123c 円盤状遮蔽部材、123b 回転軸部、123 螺旋状回転圧縮部、123a 螺旋部、132 フィルタ除塵部材、132a 螺旋部、134 傾斜除塵部材、161 シール部材、300 サイクロン集塵装置、310 底蓋、320 中間体、330 開口、400 電気掃除機、410 掃除機本体部、420 吸気口部、430 接続管、440 接続ホース、450 操作ハンドル、501 立壁。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃除機本体部、吸気口部、接続管、接続ホースを備え、前記掃除機本体部は前記掃除機本体部の前端に接続された前記接続ホースと前記接続管を介して前記吸気口部に接続される電気掃除機であって、
前記掃除機本体部は、
塵埃を含む旋回気流を導入する導入口および空気の出口となる開口を有し、
旋回気流により塵埃を集塵するダストカップと、
前記ダストカップの中心部から排気するための内筒排気口が形成され、該内筒排気口を通過する空気を濾過する内筒フィルタと、
前記内筒フィルタを経た空気をさらに排気することにより比較的小さい塵埃を捕集するフィルタが設けられた上部フィルタユニットと、
前記上部フィルタユニットの上に設けられたフィルタ除塵部材とを有するサイクロン集塵装置と、
前記空気の出口となる前記サイクロン集塵装置の開口部から、電動送風機を内蔵した前記掃除機本体部の上部に空気を導くダクト部と、
前記ダクト部と前記サイクロン集塵装置の開口部との気密を保つ環状のパッキン部とを備え、
前記ダクト部は前記掃除機本体部に設けられて前記サイクロン集塵装置からの空気を受入れるダクト開口部を有し、
前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体部に着脱可能に設けられるとともに、前記掃除機本体部に装着したときに前記サイクロン集塵装置の軸を前記掃除機本体部の垂直方向に対して斜めに配置させ、
前記内筒フィルタを経た空気は前記上部フィルタユニットを通過し、
前記サイクロン集塵装置は内筒を有し、前記内筒は前記内筒フィルタを含み、前記内筒は前記ダストカップの底まで延びて前記ダストカップの底と嵌合し、
前記内筒フィルタで濾過された後の空気は、前記内筒を通じて前記上部フィルタユニットに導かれ、
前記内筒と前記ダストカップの底との間の空気の漏れを防止するシール部材をさらに備えることを特徴とする、電気掃除機。
【請求項2】
前記内筒の底部は開放されており、前記サイクロン集塵装置は、前記掃除機本体部の垂直方向より前記ダクト部がある方向の斜めに配置させることを特徴とする、請求項1に記載の電気掃除機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-05-30 
結審通知日 2016-06-03 
審決日 2016-06-14 
出願番号 特願2011-285808(P2011-285808)
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (A47L)
P 1 113・ 537- ZAA (A47L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早房 長隆長馬 望  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 千壽 哲郎
山崎 勝司
登録日 2012-05-25 
登録番号 特許第5000011号(P5000011)
発明の名称 電気掃除機  
代理人 岡 始  
代理人 岡 始  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 深見 久郎  
代理人 堀井 豊  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 深見 久郎  
代理人 堀井 豊  

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