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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04M |
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管理番号 | 1320497 |
審判番号 | 不服2015-10362 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-03 |
確定日 | 2016-11-01 |
事件の表示 | 特願2011- 64781「住宅情報盤および集合住宅用インターホンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-204868、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年3月23日の出願であって、平成26年7月31日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月25日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月3日付けで拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において同年12月24日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月7日に手続補正がされ、同年6月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月29日付けで手続補正がされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし請求項4に係る発明は、平成28年8月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された以下のとおりのものである。(以下、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。) 「【請求項1】 画像表示機能を有した住宅情報盤において、 時刻を計時するクロック部と、 表示期間が指定された生活環境情報を情報配信装置から受信して、記憶部に記憶させる情報受信部と、 表示期間が到来した生活環境情報を判別し選択して、表示期間中に表示させる表示制御部とを備え、 該表示制御部は、表示時間帯の設定操作を受付け、生活環境情報を、指定された表示期間中の表示すべき表示時間帯に制限して表示させ、該生活環境情報が表示期間の終了、または、表示時間帯の終了のいずれかにより表示終了したときには該生活環境情報を所定時間保存した後自動的に消去する住宅情報盤。 【請求項2】 請求項1に記載の住宅情報盤を、各住戸に備えた集合住宅用インターホンシステムであって、住宅情報盤は、ロビーインターホンと通信するためのインターホン回線を通じて、生活環境情報を受信する集合住宅用インターホンシステム。 【請求項3】 請求項2において、インターホン回線には、住宅情報盤とロビーインターホンとの呼出、通話を制御する通信制御装置が設けられており、住宅情報盤は、通信制御装置を介して、情報配信装置と通信する集合住宅用インターホン システム。 【請求項4】 請求項3において、通信制御装置は、広域ネットワークに接続されており、 情報配信装置は、その広域ネットワーク上に設けられている集合住宅用インターホンシステム。」 3.当審の拒絶理由 (1)当審の拒絶理由の概要 平成27年12月24日付けの拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)の概要は、以下のとおりである。 「 1 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (1)請求項1について 引用文献1(段落0001ないし0004、0020、0022、段落0023ないし0036、段落0038、0039、段落0048、0050、0051、0053、図1,2,4,7、11)には、「管理端末(情報配信装置)20が時刻情報を伝送路1を介して所定の周期で送信し、住戸端末10が前記時刻情報を受信し、 管理端末(情報配信装置)20から伝送路1を介して配信される掲示板情報及び属性情報を受信する受信手段11と、前記掲示板情報及び属性情報を一旦記録する記録手段14と、前記記録された掲示板情報が読み出されて表示される表示手段12と、前記記録された属性情報に基づいて前記記録された掲示板情報を表示するか否かを判定する制御手段15と、を備えた住戸端末10において、 前記制御手段15は、受信した時刻情報に基づいて属性情報に含まれる自動表示日時と自動消去日時との間の期間自動的に、属性情報の時刻と適合する掲示板情報を、表示する住戸端末10」が記載されている。 本願発明と引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明の「表示手段12を備えた住戸端末10」は、以下の相違点を除くと、本願発明の「画像表示機能を有した住宅情報盤」に相当し、引用発明の「掲示板情報」は、本願発明の「生活環境情報」に含まれ、引用発明の「管理端末(情報配信装置)20」は、本願発明の「情報配信装置」に相当し、引用発明の「受信手段11」は、以下の相違点を除くと、本願発明の「情報受信部」に相当し、引用発明の「制御手段15」は、以下の相違点を除くと、本願発明の「表示制御部」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、相違する。 (一致点) 「画像表示機能を有した住宅情報盤において、 表示期間が指定された生活環境情報を情報配信装置から受信して、記憶部に記憶させる情報受信部と、 表示が到来した生活環境情報を判別し選択して、表示期間中に表示させる表示制御部とを備える住宅情報盤。」 (相違点1) 生活環境情報を指定された表示期間中に表示させる際に、本願発明が、表示時間帯の設定操作を受付け、表示期間中であって、さらに、表示時間帯に制限して表示させるのに対して、引用発明においては、このような表示時間帯の設定操作は受け付けていない点。 (相違点2) 「住宅情報盤」について、本願発明が、時刻を計時するクロック部を備えているのに対して、引用発明は、クロック部は有さず時刻情報を所定の周期で受信する点。 相違点1について検討すると、 「ユーザによる表示時間帯の設定を受付け、表示時間帯を制限して表示させること。」は周知技術(例えば、引用文献3(段落0001、0011、0018、図5及びその説明である段落0049、0050、0046?0056)には、「ユーザの眠りを妨げないように、就寝中の時間帯を設定して表示部を暗くする表示制御」が記載されている。また、引用文献4(段落0001、0006、0007、0026)には、「所望の時間帯を設定してLCD表示部の表示を停止させ、消費電力を減少させること。」が記載されている。)である。 したがって、引用発明に、上記周知技術を適用して、住戸人による表示を制限する表示時間帯の設定を受付け、表示時間帯を制限して表示することは、当業者が容易に想到できることである。その際、自動表示日時と自動消去日時との間の期間において、更に住戸人による表示を制限する表示時間帯とすることは、当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。 相違点2について検討すると、 一般に、時刻情報に基づいて各種制御を行う装置において、時刻を計時するための計時手段を設けることは普通に行われるようなことであるから、引用発明において、計時手段を備えることは、適宜なし得た事項にすぎない。 (2)請求項2、3について ・・・(中略)・・・ (3)請求項4について ・・・(中略)・・・ 引用文献一覧 1.特開2002-14900号公報 ・・・(中略)・・・ 3.特開2008-109540号公報 4.特開平7-162914号公報 ・・・(中略)・・・ 」 (当審注:相違点1の検討において、「引用文献6」、「引用文献7」と記載されていたものは、それぞれ、「引用文献3」、「引用文献4」の誤記である。さらに、引用文献2は、請求項1に対して引用されていない。) (2)当審拒絶理由2の概要 平成28年6月23日付けの拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)の概要は、以下のとおりである。 「 1.本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1について、 ・・・(中略)・・・ よって、特許請求の範囲の請求項1、請求項1を引用する請求項2?4に記載された発明の構成は不明瞭である。 ・・・(中略)・・・ 」 (3)当審拒絶理由1についての当審の判断 ア.引用発明1 当審拒絶理由1で引用された特開2002-14900号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「情報提示システム」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、情報配信装置から複数の個別端末装置に情報を配信し、個別端末装置を介して情報を提示する情報提示システムに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、集合住宅に設置された情報提示システムは、各住戸にそれぞれ設置された複数の住戸端末(個別端末装置)と、管理室に設置され、各住戸端末に情報を配信する管理端末(情報配信装置)と、住戸端末および管理端末間を接続するシステム制御装置を備え、各住戸端末は管理端末から配信された情報を順次表示するようになっていた。このような情報提示システムにおいて、管理人は、管理端末を操作して、提示する必要が生じた情報から順次配信し、各住戸の住人は、住戸端末が有する操作手段を操作して、配信された順に情報を閲覧するようになっていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の情報提示システムでは、管理人側から一方的に情報を送りつけるだけであり、各住戸の住人は閲覧する必要のない情報まで閲覧させられるという問題があった。また、提示すべき時間に情報が出力されないため、各住戸の住人はタイムリーに情報を閲覧することができないという問題があった。また、前もって情報を配信することができないため、管理人の勤務時間外には情報を提示することができないという問題があった。また、定期的に繰り返し提示すべき情報があった場合、管理人は繰り返し配信操作をしなければならないという問題があった。また、必要がなくなった情報が消去されないまま住戸端末に放置され、新たな情報を配信できなくなるという問題があった。また、誤って情報を消去してしまい、重要な情報を閲覧することができなくなるという問題があった。 【0004】本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、各住戸の住人が提示情報を効率よく閲覧することができる情報提示システムを提供するものである。」(2?3頁) (イ)「【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。 【0020】図1は本発明に係わる情報提示システムの一実施形態を示すブロック図である。図1において、情報提示システムは、集合住宅に適用されており、集合住宅の各住戸に設置された複数の住戸端末(個別端末装置)10と、複数の住戸を管理する管理事務室に設置されて住戸端末に情報を配信する管理端末(情報配信装置)20と、伝送路1を介して各端末間の接続を制御するシステム制御装置30と、を備え、住戸端末10を介して各住戸に情報を提示するようになっている。なお、住戸端末10のそれぞれには、互いに異なる住戸番号が設定されており、管理端末20において所望の住戸番号が選択されると、システム制御装置30により、管理端末20は選択した住戸端末10と接続されるようになっている。 【0021】管理端末20は、所定の通信プロトコルを実行する送信手段21と、ディスプレイからなる表示手段22と、情報記録媒体から情報を読み込む読込手段(情報入力手段)23と、ディスク等からなる記録手段24と、CPUからなる制御手段25と、操作を行う操作手段(情報入力手段)26とを有している。住戸端末10に配信する掲示板情報(提示情報)は、操作手段26または読込手段23から入力され、一旦、記録手段24に記録されるようになっている。また、各掲示板情報の属性を示す属性情報は、操作手段26からの操作に基づいて、制御手段25が設定し、掲示板情報に対応付けられて記録手段24に記録されるようになっている。また、掲示板情報および属性情報は、表示手段22に表示し、配信する前に確認することができるようになっている。また、掲示板情報は属性情報とともに記録手段24から読み出されて、送信手段21により送信されるようになっている。 【0022】住戸端末10は、所定の通信プロトコルを実行する受信手段11と、ディスプレイからなる表示手段(情報出力手段)12と、報知音を鳴動(出力)する報知手段13と、ディスク等からなる記録手段14と、CPUからなる制御手段15と、タッチパネルを備えた操作手段16を有している。管理端末20から配信された掲示板情報および属性情報は、一旦、記録手段14に記録されるようになっている。制御手段15は、属性情報に基づいて掲示板情報を出力するか否か判定し、必要に応じて、表示手段12が掲示板情報を表示(出力)するようになっている。また、制御手段15は、属性情報に基づいて報知音を鳴動(出力)するか否か判定し、必要に応じて、報知手段13が報知音を鳴動するようになっている。また、制御手段15は、属性情報に基づいて掲示板情報を消去するか否か判定し、不要な掲示板情報および属性情報を記録手段14から消去するようになっている。また、操作手段16は、掲示板情報を選択するときに押す選択ボタン、掲示板情報を保存するときに押す保存ボタン、掲示板情報を消去するときに押す消去ボタン、掲示板情報の表示を中止するときに押す表示中止ボタンを有している。」(4頁) (ウ)「【0038】まず、図8において、管理端末が掲示板情報および属性情報を送信する(S11)。送信する掲示板情報は、図1の管理端末20において、操作手段26または読込手段23から予め入力され、記録手段24に記録されている。また、属性情報は、管理端末20において、操作手段26からの操作に基づいて、制御手段25が設定し、掲示板情報に対応付けられて記録手段24に記録されている。例えば、集合住宅の管理人が、各住戸に知らせる画像を読込手段23から入力し、画像に添付するメッセージを操作手段26から入力するとともに、操作手段26を操作して属性情報を設定させておく。また、管理人は、表示手段22で掲示板情報の内容を確認した後、操作手段26を操作して配信を指示する。記録手段24から掲示板情報および属性情報が読み出され、送信手段21が住戸端末10宛に掲示板情報および属性情報を送信する。なお、管理端末20と住戸端末10との接続はシステム制御装置30が行う。 【0039】次に、住戸端末10の受信手段11が掲示板情報および属性情報を受信する(S12)。次に、制御手段15が情報認識を行い(S13)、掲示板情報および属性情報を一旦記録手段14に記録し(S14)、属性情報の確認を行う(S15)。」(6頁) (エ)「【0048】図11は本発明に係わる情報提示システムの一実施形態における自動表示を示すフローチャートである。図1?図9および図11を用いて自動表示について説明する。 【0049】まず、図11において、住戸端末10は所定の周期で時刻情報を受信するようになっている(S41、S42)。なお、掲示板情報および属性情報は、図8を用いて説明したように、予め住戸端末に配信されて住戸端末の記録手段14が記録している(S11、S12、S13、S14)。 【0050】また、管理端末20が計時手段(図示を省略)を有し、管理端末20が時刻情報を所定の周期で送信するようになっている(S41)が、本発明はこれに限るものではなく、図1のシステム制御装置30が時刻情報を所定の周期で送信するようになっていてもよい。システム制御装置30が時刻情報を送信するシステムの場合、システム制御装置30が計時手段(図示を省略)を有し、システムにおける時刻を一元的に管理する。 【0051】次に、住戸端末の制御手段15は、自動表示する掲示板情報があるか否か判定する(S43)。具体的には、図4に示す42bの欄に「1:期日が来たら自動的に表示」が設定され、かつ、受信した時刻情報と図2に示す表示日時45が適合する属性の掲示板情報がある場合、自動表示する掲示板情報があると判定し、制御手段15は、さらにその他の属性を確認する(S45)。 【0052】制御手段15は、自動表示時報知音を出力するか否か判定する(S46)。具体的には、図5に示す43dの欄に「1:自動で表示時報知音を鳴らす」が設定されていた場合、制御手段15は報知手段13に鳴動指示を行い(S47)、報知手段13が報知音を鳴動する(S48)。 【0053】また、制御手段15は、図9に示すように、掲示板情報の表示指示を行い(S31)、記録手段14から該当する掲示板情報を読み出し(S32)、表示手段12は掲示板情報を表示する(S33)。」(6?7頁) 上記摘記事項(ア)?(エ)及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、 a.上記摘記事項(エ)の【0050】の「管理端末20が計時手段(図示を省略)を有し、管理端末20が時刻情報を所定の周期で送信するようになっている(S41)」と、同【0049】の「住戸端末10は所定の周期で時刻情報を受信するようになっている(S41、S42)」と、上記摘記事項(イ)の【0019】の「集合住宅の各住戸に設置された複数の住戸端末(個別端末装置)10と、複数の住戸を管理する管理事務室に設置されて住戸端末に情報を配信する管理端末(情報配信装置)20と、伝送路1を介して各端末間の接続を制御するシステム制御装置30と、を備え、」との各記載より、「管理端末(情報配信装置)が時刻情報を伝送路1を介して所定の周期で送信し、住戸端末が前記時刻情報を受信し、 」といえる。 b.上記摘記事項(イ)の【0022】の「住戸端末10は、所定の通信プロトコルを実行する受信手段11と、ディスプレイからなる表示手段(情報出力手段)12と、」と、同「管理端末20から配信された掲示板情報および属性情報は、一旦、記録手段14に記録されるようになっている。制御手段15は、属性情報に基づいて掲示板情報を出力するか否か判定し、必要に応じて、表示手段12が掲示板情報を表示(出力)するようになっている。」との各記載より、「管理端末(情報配信装置)から伝送路を介して配信される掲示板情報及び属性情報を受信する受信手段と、前記掲示板情報及び属性情報を一旦記録する記録手段と、前記記録された掲示板情報が読み出されて表示される表示手段と、前記記録された属性情報に基づいて前記記録された掲示板情報を表示するか否かを判定する制御手段と、を備えた住戸端末」であるといえる。 c.上記摘記事項(エ)の【0051】の「住戸端末の制御手段15は、自動表示する掲示板情報があるか否か判定する(S43)。具体的には、図4に示す42bの欄に「1:期日が来たら自動的に表示」が設定され、かつ、受信した時刻情報と図2に示す表示日時45が適合する属性の掲示板情報がある場合、自動表示する掲示板情報があると判定し、制御手段15は、さらにその他の属性を確認する(S45)。」の記載より、「前記制御手段は、受信した時刻情報に基づいて属性情報に含まれる自動表示日時と自動消去日時との間の期間、自動的に属性情報の時刻と適合する掲示板情報を、表示する住戸端末。」といえる。 以上を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 (引用発明1) 「管理端末(情報配信装置)が時刻情報を伝送路1を介して所定の周期で送信し、住戸端末が前記時刻情報を受信し、 管理端末(情報配信装置)から伝送路を介して配信される掲示板情報及び属性情報を受信する受信手段と、前記掲示板情報及び属性情報を一旦記録する記録手段と、前記記録された掲示板情報が読み出されて表示される表示手段と、前記記録された属性情報に基づいて前記記録された掲示板情報を表示するか否かを判定する制御手段と、を備えた住戸端末において、 前記制御手段は、受信した時刻情報に基づいて属性情報に含まれる自動表示日時と自動消去日時との間の期間、自動的に属性情報の時刻と適合する掲示板情報を、表示する住戸端末。」 イ.引用文献3,引用文献4 当審拒絶理由1で引用された特開2008-109540号公報(以下、「引用文献3」という。)には、段落【0001】、【0011】、【0018】、【0046】?【0056】及び図5より、「ユーザの眠りを妨げないように、就寝中の時間帯を設定して表示部を暗くすること。」が記載されている。 また、当審拒絶理由1で引用された特開平7-162914号公報(以下、「引用文献4」という。)には、段落【0001】、【0006】、【0007】、【0021】、【0026】より、「所望の時間帯を設定してLCD表示部の表示を停止させ、消費電力を減少させること。」が記載されている。 ウ.対比・判断 本願発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「表示手段を備えた住戸端末」は、本願発明1の「画像表示機能を有した住宅情報盤」に相当する。 (イ)引用発明1の「掲示板情報」は、本願発明1の「生活環境情報」に含まれる。 (ウ)引用発明1の「管理端末(情報配信装置)」は、本願発明1の「情報配信装置」に相当する。 (エ)引用発明1の「受信手段」は、本願発明1の「情報受信部」に相当する。 (オ)引用発明1の「制御手段」と、本願発明1の「表示制御部」とは、以下の相違点を除くと「表示制御手段」がある点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明1とは以下の点で一致し、相違する。 (一致点) 「画像表示機能を有した住宅情報盤において、 表示期間が指定された生活環境情報を情報配信装置から受信して、記憶部に記憶させる情報受信部と、 表示期間が到来した生活環境情報を判別し選択して、表示期間中に表示させる表示制御手段とを備える住宅情報盤。」 (相違点1) 一致点の「生活環境情報を」指定された「表示期間中に表示させる」際に、本願発明1が、「表示時間帯の設定操作を受付け」、「指定された期間中の表示すべき表示時間帯に制限して表示させ」るのに対して、引用発明1は、表示時間帯の設定操作について記載されていない点。 (相違点2) 一致点の「住宅情報盤」について、本願発明1が、「時刻を計時するクロック部」を備えているのに対して、引用発明1は、時刻情報を所定の周期で外部から受信する点。 (相違点3) 一致点の「表示制御手段」について、本願発明1が、「該生活環境情報が表示期間の終了、または、表示時間帯の終了のいずれかにより表示終了したときには該生活環境情報を所定時間保存した後自動的に消去する」のに対して、引用発明1は、自動消去日時が来たら該当する掲示板情報を記録手段から消去する点。 事案に鑑み(相違点3)について、検討する。 当審拒絶理由1で引用した引用文献3、引用文献4には、本願発明1の(相違点3)に相当する構成について、記載も示唆もされておらず、また本願出願時の技術常識でもなく当業者に自明の事項でもない。よって、本願発明1は、引用文献1、引用文献3、引用文献4に基づいて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 本願発明2ないし本願発明4は、本願発明1の発明特定事項を含む引用発明であって、本願発明1をさらに限定した発明であるので、本願発明1と同様に、引用文献1、引用文献3、引用文献4に基づいて、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、当審拒絶理由1は解消した。 (4)当審拒絶理由2についての当審の判断 平成28年8月29日付けの手続補正により、本願特許請求の範囲の請求項1が「・・・(略)・・・該表示制御部は、表示時間帯の設定操作を受付け、生活環境情報を、指定された表示期間中の表示すべき表示時間帯に制限して表示させ、該生活環境情報が表示期間の終了、または、表示時間帯の終了のいずれかにより表示終了したときには該生活環境情報を所定時間保存した後自動的に消去する住宅情報盤。」と補正されたので、当該補正前の「表示終了」が「表示期間の終了、または、表示時間帯の終了のいずれかにより」表示終了するものである点が明確になり、本願明細書の段落【0037】の記載と図8のフローに沿ったものとなったので、特許請求の範囲の請求項1、該請求項1を引用する請求項2ないし請求項4に係る発明の構成も明瞭となった。 よって、当審拒絶理由2は解消した。 (5)小括 本願発明1ないし本願発明4は、当審拒絶理由1、当審拒絶理由2によって特許を受けることができないとはいえない。 4.原審の拒絶理由 (1)原審の拒絶理由の概要 平成26年7月31日付けの原審における拒絶理由(以下、「原審拒絶理由」という。)の概要は以下のとおりである。 「【理由1】この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1 ・引用文献1-2 ・備考 引用文献1には、表示手段を有する住戸端末(本願発明の「住宅情報盤」に相当)において、掲示板情報及び属性情報(本願発明の「生活環境情報」に相当)を管理端末(本願発明の「情報配信装置」に相当)から受信して記録手段に記録し、期日の到来により該掲示板情報を表示し、所定のタイミングで消去する旨記載されている(特に、【0055】-【0065】を参照)。 引用文献2には、公開日及び非公開日等の情報表示期間を設定した生活情報盤で表示される情報が記載されており(特に、【0034】を参照)、引用文献1に記載された発明において引用文献2に記載の技術を採用し、掲示板情報に情報表示期間を設けることは当業者が容易になし得たことである。その際に、情報表示期間に応じて表示・非表示を制御することは適宜なし得たことである。 ・請求項2-5 ・引用文献1-3 ・・・(中略)・・・ 拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2002-014900号公報 2.特開2004-128624号公報 3.特開2010-200067号公報 」 (2)原審の拒絶査定の備考 平成27年6月3日付けの原審の拒絶査定の備考は以下のとおりである。 「備考 平成26年10月6日付け手続補正書により補正された請求項1-4に係る発明について検討する。 <第29条第2項(理由1)について> 出願人は、平成26年10月6日付け意見書において、引用文献1-3には、表示期間が到来した生活環境情報を、表示期間であり、かつ表示時間帯でのみ表示させる点について記載されておらず、本願発明は特許性を有する旨主張している。 しかしながら、引用文献1には、「定期表示情報を提示する場合、図4の42cに定期表示分類(1以上)を設定するとともに・・・図4の42dに「1:期日が来たら自動で消す」、図2の消去日時46をそれぞれ設定する」こと(【0062】)、「管理端末側が定期表示日時を属性情報に予め設定し、所定の周期で受信した時刻情報と属性情報に設定された定期表示日時とに基づいて、住戸端末側で表示すべき日時になったことを検出するようにしてもよい」こと(【0063】)が記載されている。 してみれば、請求項1-4に係る発明は、依然として引用文献1-3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、上記主張は採用することができない。 以上のとおり、出願人の主張についても検討したが、本願発明は特許を受けることができないものである。 引用文献等一覧 1.特開2002-014900号公報 2.特開2004-128624号公報 3.特開2010-200067号公報 」 (3)原審の拒絶理由についての当審における判断 ア.引用発明 原審の拒絶理由に引用された特開2004-128624号公報は、当審拒絶理由1に引用された引用文献1であるので、上記「3.当審の拒絶理由」の項中の「(3)当審拒絶理由1についての当審の判断」の「ア.引用発明1」で「(引用発明1)」と認定したとおりである。 イ.引用文献2 原審の拒絶理由に引用された特開2004-128624号公報(以下、「引用文献5」という。)には、段落【0034】の記載により、「生活情報盤において、公開日及び非公開日の情報表示期間が設定された各種情報を受信し、該情報表示期間中に表示すること。」が記載されている。 ウ.引用文献3 原審の拒絶理由に引用された特開2010-200067号公報(以下、「引用文献6」という。)には、段落【0013】?【0016】の記載により、「インターホン装置において、呼出規制する時間帯を指示すること。」が記載されている。 エ.対比・判断 上記「3.当審の拒絶理由」の項中の「(3)当審拒絶理由1についての当審の判断」の項中の「ウ.対比・判断」においてした(相違点3)に関する検討に加えて、原審の拒絶理由で引用した引用文献5、引用文献6にも、本願発明1の「該生活環境情報が表示期間の終了、または、表示時間帯の終了のいずれかにより表示終了したときには該生活環境情報を所定時間保存した後自動的に消去する」点(相違点3)に相当する構成ついて記載も示唆もされておらず、本願出願時の技術常識でもなく、当業者にとって自明の事項でもない。よって、本願発明1は、当業者が引用文献1、引用文献5、引用文献6に記載された発明に基づいて容易に想到し得たものとはいえない。また、さらに本願発明1をさらに限定した、本願発明2ないし本願発明4についても、同様である。 オ.小括 本願発明1ないし本願発明4は、原審の拒絶理由によって特許を受けることができないとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、原審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-10-17 |
出願番号 | 特願2011-64781(P2011-64781) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04M)
P 1 8・ 537- WY (H04M) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩田 淳 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
林 毅 山中 実 |
発明の名称 | 住宅情報盤および集合住宅用インターホンシステム |
代理人 | 奥村 公敏 |
代理人 | 沖本 周子 |
代理人 | 中井 宏行 |