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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1320595
審判番号 不服2014-23209  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-14 
確定日 2016-10-12 
事件の表示 特願2011-506473「CW/UVLED硬化を用いる選択的積層成形」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日国際公開、WO2009/132245、平成23年 6月30日国内公表、特表2011-518694〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年4月25日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月15日付けの拒絶理由通知に対して、同年11月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年7月8日付け(発送日:同年7月15日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年11月14日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び請求項8に係る発明は、平成26年11月14日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明1」及び「本願発明8」という。)。
「【請求項1】
造形環境内で3次元物体を層毎態様で形成する方法において、前記方法が、
前記物体の少なくとも1つの層に対応するコンピュータデータを生成する工程、
前記物体の前記少なくとも1つの層を形成するために、前記コンピュータデータにしたがい、前記造形環境内で硬化性材料を計量分配する工程、
前記造形環境内で前記計量分配された材料を造形台上に支持する工程、
前記計量分配された材料を硬化させるために光源からの紫外(UV)光の露光を前記少なくとも1つの層の前記計量分配された材料にかける工程、及び
前記計量分配された材料が前記光源の帯域と少なくともある程度重なる吸収帯域幅を有するように、選ばれた量の光重合開始剤を前記計量分配される材料に与える工程、
を含み、
前記光源が赤外(IR)光を実質的に含まない光を発生し、
前記光源からの照射量が10mW/cm^(2)から100mW/cm^(2)の範囲にある、
ことを特徴とする方法。」
「【請求項8】
造形環境内でUV硬化性材料から3次元物体を形成するための選択的積層成形(SDM)装置において、前記装置が前記3次元物体の層に対応するコンピュータデータを受け取り、前記装置が、
前記造形環境内で前記3次元物体を支持するように構成された造形台、
前記造形台に対向して配置され、前記3次元物体の前記層を形成するために前記コンピュータデータにしたがい前記造形環境内で前記硬化性材料を計量分配するように構成された計量分配デバイス、及び
前記造形台に対向して配置され、前記計量分配された材料の硬化を開始させるUV光で前記層を照射するように構成された1つ以上のUV発光ダイオード(LED)を有する連続波(CW)紫外(UV)光源、
を備え、
前記CW/UV光源が赤外(IR)光を実質的に発生せず、
前記UVLEDがある発光帯域幅をもつUV発光スペクトルを有し、前記UV硬化性材料がある吸収帯域幅を有し、最上層及び前記最上層の下の少なくとも1つの付加層を含む多重層をなして堆積され、前記発光帯域幅と前記吸収帯域幅が、前記UV硬化性材料を硬化させるに十分な量の前記UVLEDからの光が前記最上層及び前記少なくとも1つの付加層を通過するように、少なくともある程度重なり、
前記UV光源からの照射量が10mW/cm^(2)から100mW/cm^(2)の範囲にある、
ことを特徴とするSDM装置。」

第3 刊行物に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された特開2007-190811号公報(以下、「刊行物」という。)には、「三次元造形物造形方法」に関し、図面(特に【図1】参照。)とともに、次の事項が記載されている。
なお、下線は合議体が付した。

1 「【請求項1】
光造形法用樹脂組成物の表面に一括露光を行うことにより、前記一括露光のパターンに対応した硬化樹脂層を形成する操作を繰り返して、前記硬化樹脂層が複数積層された三次元造形物を形成する三次元造形物造形方法であって、前記一括露光を行う露光方法が、前記光造形法用樹脂組成物の表面に、光源から直接的に露光を行う方法であることを特徴とする三次元造形物造形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形物造形方法であって、前記直接的に露光を行う方法が、光源として紫外線2次元LEDアレイを使用し、その光を、直接、前記光造形法用樹脂組成物の表面に照射する方法であることを特徴とする三次元造形物造形方法。」

2 「【0024】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態である三次元造形物造形方法を示す図である。容器1の中に、光硬化性物質2を入れ、さらにその上に、光硬化性物質2より比重が小さく、紫外線を透過させ、光硬化性物質2と混じり合わず、かつ、光源からの光によって硬化しない緩衝物質3を入れる。そして、緩衝物質3の表面に接するか緩衝物質3に少し浸漬されるように、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を配置する。この例においては、光硬化性物質2として、オキセタン系樹脂(SCR950(株式会社ディーメック製)、比重1.10)を、緩衝物質3としてジメチルシリコンオイル(SH200オイル(東レ・ダウコーニング株式会社製)、比重0.76)を使用している。容器1中には支持台5が設けられており、光硬化性物質2中を昇降可能とされている。支持台5の上部表面は、光硬化性物質2の液面より、所定量だけ下に位置するようにされている。この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させる(a)。すると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成される(b)。
【0025】
この状態から支持台5を予め決められた量だけ降下させると、支持台5の上面が未硬化の光硬化性物質2で満たされる(c)。この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させる。すると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成される(d)。この操作を繰り返すことにより、(f)で示すように、目標パターンの3次元形状を有する成形物6が形成される。形成が終了したところで、成形物6を支持台5から剥離し、容器1から取り出す。」

3


4 これら記載事項及び【図1】を総合すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明1」及び「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

引用発明1
「容器1の中に、光硬化性物質2すなわちオキセタン系樹脂(SCR950(株式会社ディーメック製))を入れ、容器1中には支持台5を設け、光硬化性物質2中を昇降可能とし、支持台5の上部表面は、光硬化性物質2の液面より、所定量だけ下に位置され、この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成され、この状態から支持台5を予め決められた量だけ降下させると、支持台5の上面が未硬化の光硬化性物質2で満たされ、この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成され、この操作を繰り返すことにより、目標パターンの3次元形状を有する成形物6が形成される三次元造形物造形方法。」

引用発明2
「容器1の中で光硬化性物質2から三次元造形物を形成するための装置において、装置が容器1の中で三次元造形物を支持するように構成された支持台5、及び支持台5の上部に配置され、所定の2次元パターンが形成されるように光硬化性物質2の硬化を開始させる紫外線2次元発光ダイオードアレイ4、を備え、
容器1中の支持台5は光硬化性物質2中を昇降可能であり、支持台5の上部表面は、光硬化性物質2の液面より、所定量だけ下に位置され、この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成され、この状態から支持台5を予め決められた量だけ降下させると、支持台5の上面が未硬化の光硬化性物質2で満たされ、この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成され、この操作を繰り返すことにより、目標パターンの3次元形状を有する成形物6を形成する三次元造形物造形装置。」

第4 対比
1 本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「容器1の中」は、その機能、構造からみて、本願発明1の「造形環境内」に相当する。同様に、引用発明1の「光硬化性物質2すなわちオキセタン系樹脂(SCR950(株式会社ディーメック製))」、「容器1中には支持台5を設け、上記光硬化性物質2中を昇降可能とし、支持台5の上部表面は、光硬化性物質2の液面より、所定量だけ下に位置され」ること、「紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させる」こと、「紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成され、この状態から支持台5を予め決められた量だけ降下させると、支持台5の上面が未硬化の光硬化性物質2で満たされ、この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成され、この操作を繰り返すことにより、目標パターンの3次元形状を有する成形物6が形成される三次元造形物造形方法」は、本願発明1の「硬化性材料」、「造形環境内で材料を造形台上に支持する工程」、「光源からの紫外(UV)光の露光を1つの層の材料にかける工程」、「3次元物体を層毎態様で形成する方法」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「紫外線」が赤外(IR)光を実質的に含まない光であることは自明であるから、引用発明1の「紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させる」ことは、本願発明1の「光源が赤外(IR)光を実質的に含まない光を発生」することに相当する。

以上の点からみて、本願発明1と引用発明1とは、

[一致点]
「造形環境内で3次元物体を層毎態様で形成する方法において、方法が、
物体の少なくとも1つの層に対応するコンピュータデータを生成する工程、
前記物体の前記少なくとも1つの層を形成するために、前記コンピュータデータにしたがい、前記造形環境内で硬化性材料を計量分配する工程、
前記造形環境内で前記計量分配された材料を造形台上に支持する工程、
前記計量分配された材料を硬化させるために光源からの紫外(UV)光の露光を前記少なくとも1つの層の前記計量分配された材料にかける工程、
を含み、
前記光源が赤外(IR)光を実質的に含まない光を発生する、
ことを特徴とする方法。」
である点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点]
相違点1
本願発明1は、「物体の少なくとも1つの層に対応するコンピュータデータを生成する工程」及び「物体の少なくとも1つの層を形成するために、コンピュータデータにしたがい、造形環境内で硬化性材料を計量分配する工程」を有するのに対して、引用発明1では、当該各工程を有しない点。

相違点2
本願発明1は、計量分配された材料が光源の帯域と少なくともある程度重なる吸収帯域幅を有するように、選ばれた量の光重合開始剤を計量分配される材料に与える工程を有するのに対して、引用発明1では、当該工程を有するか否か不明である点。

相違点3
光源からの照射量に関して、本願発明1では、10mW/cm^(2)から100mW/cm^(2)の範囲であるのに対して、引用発明1では、照射量が不明である点。

2 本願発明8と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「容器1の中」は、その機能、構造からみて、本願発明8の「造形環境内」に相当する。同様に、引用発明2の「光硬化性物質2」、「三次元造形物造形装置」、「容器1の中で三次元造形物を支持するように構成された支持台5」、「支持台5の上部に配置され、所定の2次元パターンが形成されるように光硬化性物質2の硬化を開始させる紫外線2次元発光ダイオードアレイ4」は、本願発明8の「UV硬化性材料」、「三次元造形物造形装置」又は「SDM装置」、「造形環境内で3次元物体を支持するように構成された造形台」、「造形台に対向して配置され、材料の硬化を開始させるUV光で前記層を照射するように構成された1つ以上のUV発光ダイオード(LED)を有する連続波(CW)紫外(UV)光源」に、それぞれ相当する。
また、引用発明2の「紫外線2次元発光ダイオードアレイ4」が赤外(IR)光を実質的に発生しないことは自明であるから、引用発明2の「紫外線2次元発光ダイオードアレイ4を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させる」ことは、本願発明8の「CW/UV光源が赤外(IR)光を実質的に発生」しないことに相当する。

以上の点からみて、本願発明8と引用発明とは、

[一致点]
「造形環境内でUV硬化性材料から3次元物体を形成するための三次元造形物造形装置において、前記装置が、
造形環境内で3次元物体を支持するように構成された造形台、
造形台に対向して配置され、前記材料の硬化を開始させるUV光で前記層を照射するように構成された1つ以上のUV発光ダイオード(LED)を有する連続波(CW)紫外(UV)光源、
を備え、
CW/UV光源が赤外(IR)光を実質的に発生しない、
SDM装置。」
である点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点]
相違点4
本願発明8は、「前記装置が3次元物体の層に対応するコンピュータデータを受け取り」、「前記装置が、造形台に対向して配置され、前記3次元物体の前記層を形成するためにコンピュータデータにしたがい造形環境内で硬化性材料を計量分配するように構成された計量分配デバイス」を有するのに対して、引用発明2では、当該特定事項を有しない点。

相違点5
本願発明8は、「UVLEDがある発光帯域幅をもつUV発光スペクトルを有し、UV硬化性材料がある吸収帯域幅を有し、最上層及び最上層の下の少なくとも1つの付加層を含む多重層をなして堆積され、発光帯域幅と吸収帯域幅が、UV硬化性材料を硬化させるに十分な量のUVLEDからの光が最上層及び少なくとも1つの付加層を通過するように、少なくともある程度重な」るのに対して、引用発明2では、当該特定事項を有するか否か不明である点。

相違点6
UV光源からの照射量に関して、本願発明8では、10mW/cm^(2)から100mW/cm^(2)の範囲であるのに対して、引用発明2では、照射量が不明である点。

第5 判断
上記相違点について検討する。
1 相違点1について
引用発明1(三次元造形物造形方法)の技術分野において、物体の少なくとも1つの層に対応するコンピュータデータを生成する工程を有すること及び物体の少なくとも1つの層を形成するために、コンピュータデータにしたがい、造形環境内で硬化性材料を計量分配する工程は、それぞれ周知の事項であるから(前者につき;特開2008-63514号公報(拒絶査定における参考文献2)の段落【0002】、特開2007-211247号公報(拒絶査定における参考文献3)の段落【0096】、特開2007-106830号公報(拒絶査定における参考文献4)の段落【0102】、後者につき;特開2008-63514号公報の【0056】及び【表1】ないし【表4】、特開2007-211247号公報の【表1】及び【表2】、特開2007-106830号公報の【表1】参照)、引用発明1において所定の2次元パターン(本願発明1の「物体の少なくとも1つの層」に対応するパターンと解される。)に対応するコンピュータデータを生成する工程及び三次元造形物の少なくとも1つの層を形成するために、コンピュータデータにしたがい、容器1の中で光硬化性物質2を計量分配する工程を設けることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
引用発明1の「オキセタン系樹脂(SCR950(株式会社ディーメック製))」が光重合開始剤を含む光硬化性材料であるところ(特開2006-136315号公報の【0027】参照)、紫外線2次元発光ダイオードアレイ4の発光を受けて当該「オキセタン系樹脂(SCR950(株式会社ディーメック製))」の硬化が開始するということは、当該「光重合開始剤」も上記紫外線2次元発光ダイオードアレイ4の発光に係る光源の帯域と少なくともある程度重なる吸収帯域幅を有するというべきであるから、引用発明1の「オキセタン系樹脂(SCR950(株式会社ディーメック製))を入れ」ることと本願発明1の「材料が光源の帯域と少なくともある程度重なる吸収帯域幅を有するように、光重合開始剤を材料に与える工程」は、実質的に相違しない。

3 相違点3について
引用発明1は、三次元造形物造形方法であるから、所望の成形物6を形成するために、「発光」量を調整することは、当業者が通常行うことであるところ、本願の優先権主張の日前に、光源からの照射量を10mW/cm^(2)から100mW/cm^(2)の範囲にすることは、周知の事項であるから(特開2007-291393号公報の段落【0051】、WRIGHT INDUSTRIES REPORT,2006 (http://www.uvprocess.com/products/CURING%20EQUIPMENT.E1.UV%20LED%20LAMPS.UV%20LED/UV%20LED%20CURE-ALL%20LINEAR.UV%20LED%20%20%20C//SupportDocs/SUCCESS%20Story.pdf)、引用発明1において光源からの照射量を10mW/cm^(2)から100mW/cm^(2)の範囲にすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、当業者が容易に想到し得たことである。

4 相違点4について
引用発明2(三次元造形物造形装置)の技術分野において、装置が3次元物体の層に対応するコンピュータデータを受け取り、造形台に対向して配置され、3次元物体の層を形成するためにコンピュータデータにしたがい造形環境内でUV硬化性材料を計量分配するように構成された計量分配デバイスを有することは、通常のことであるから(前者につき;特開2008-63514号公報(拒絶査定における参考文献2)の段落【0002】、特開2007-211247号公報(拒絶査定における参考文献3)の段落【0096】、特開2007-106830号公報(拒絶査定における参考文献4)の段落【0102】、後者につき;特開2008-63514号公報の【0056】及び【表1】ないし【表4】、特開2007-211247号公報の【表1】及び【表2】、特開2007-106830号公報の【表1】参照)、上記相違点4は、実質的な相違点ではない。
仮に、そうでないとしても、引用発明2において上記相違点4の特定事項を有することは、当業者が容易に想到し得たことである。

5 相違点5について
引用発明2の「紫外線2次元発光ダイオード」が「ある発光帯域幅をもつUV発光スペクトルを有」すること、同じく「光硬化性物質2」が「ある吸収帯域幅を有」することは自明であるところ、「光硬化性物質2」が「硬化」することから、上記「発光帯域幅」と「吸収帯域幅」が「少なくともある程度重な」ることは明らかである。
また、引用発明2は、「紫外線が照射された部分の光硬化性物質2が硬化し、成形物6が形成され、この操作を繰り返すことにより、目標パターンの3次元形状を有する成形物6を形成する」ものであるから、引用発明2の「三次元造形物」が「最上層及び最上層の下の少なくとも1つの付加層を含む多重層をなして堆積され」るものであることも明らかである。
そうすると、引用発明2は、「紫外線2次元発光ダイオード」の発光帯域幅と「光硬化性物質2」の吸収帯域幅が、「光硬化性物質2」を硬化させるに十分な量の「紫外線2次元発光ダイオード」からの光が最上層及び少なくとも1つの付加層を通過するように、少なくともある程度重なっているというべきであるから、上記相違点5は、実質的に相違しない。

6 相違点6について
引用発明2は、三次元造形物造形装置であるから、所望の成形物6を形成するために、「発光」量を調整することは、当業者が通常行うことであるところ、本願の優先権主張の日前に、光源からの照射量を10mW/cm^(2)から100mW/cm^(2)の範囲にすることは、周知の事項であるから(特開2007-291393号公報の段落【0051】、WRIGHT INDUSTRIES REPORT,2006 (http://www.uvprocess.com/products/CURING%20EQUIPMENT.E1.UV%20LED%20LAMPS.UV%20LED/UV%20LED%20CURE-ALL%20LINEAR.UV%20LED%20%20%20C//SupportDocs/SUCCESS%20Story.pdf)、引用発明2において光源からの照射量を10mW/cm^(2)から100mW/cm^(2)の範囲にすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、当業者が容易に想到し得たことである。

7 そして、照射量を所定の範囲とした時のみ予想外の格別顕著な効果を奏するものとは本願明細書の記載から認めることができないことも併せ考慮すると、本願発明1及び本願発明8による効果も、引用発明1及び引用発明2並びに周知の事項から当業者が予測し得た程度のものである。

以上のとおり、本願発明1及び本願発明8は、引用発明1及び引用発明2並びに周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
したがって、本願発明1及び本願発明8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-11 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-05-30 
出願番号 特願2011-506473(P2011-506473)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 康之平井 裕彰  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 大島 祥吾
小柳 健悟
発明の名称 CW/UVLED硬化を用いる選択的積層成形  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  

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