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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1320616
審判番号 不服2015-15825  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-27 
確定日 2016-10-12 
事件の表示 特願2010-38066号「ガスタービン用のNO2形成を少なくするためにCO/VOC酸化触媒を作用させる方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年9月9日出願公開、特開2010-196708号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年2月24日(パリ条約による優先権主張 2009年2月25日 米国)の出願であって、平成26年2月7日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月12日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年9月22日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成26年12月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年4月22日付けで平成26年12月16日提出の手続補正書による補正の却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年8月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年10月7日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年8月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
[1]本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年8月12日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1を下記の(2)に示す請求項1に補正することを含むものである。
(なお、平成26年12月16日付け手続補正は、平成27年4月22日付けの補正却下の決定により却下された。)

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
空気中で燃料を燃焼させて軸動力を生成し、窒素酸化物(NO_(X))、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流(615)を生成するガスタービン(610)と、
排気筒(660)から前記排気ガスを放出する前に、前記排気ガス流(615)を受ける処理装置(605)と
を含む発電装置(600)であって、前記処理装置(605)が、
前記ガスタービン(610)の出口の下流側で前記排気ガス流内の前記出口と高圧熱交換器(625)の間の位置に配置された一酸化炭素(CO)酸化触媒(635)であって、介在する加熱素子も介在する冷却素子もなしで前記出口に直接前記CO触媒が配置されることによって前記CO酸化触媒によるNOからのNO_(2)生成を制限する、一酸化炭素(CO)酸化触媒(635)と、
前記排気ガス流内で前記CO酸化触媒(635)及び高圧熱交換器(625)の下流側に配置されたアンモニア注入グリッド(AIG)(640)と、
前記アンモニア注入グリッド(640)の下流側に配置され、前記排気ガス流(615)とアンモニアを混合する混合チャンバ(645)と、
前記混合チャンバ(645)の下流側に配置され、前記排気ガス流(615)中のNO_(X)を還元する選択接触還元(SCR)触媒要素(650)と
を含んでいる、発電装置(600)。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
空気中で燃料を燃焼させて軸動力を生成し、窒素酸化物(NO_(X))、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流(615)を生成するガスタービン(610)と、
排気筒(660)から前記排気ガスを放出する前に、前記排気ガス流(615)を受ける処理装置(605)と
を含む発電装置(600)であって、前記処理装置(605)が、
前記ガスタービン(610)の出口の下流側で前記排気ガス流内の前記出口と高圧熱交換器(625)の間の位置に配置された一酸化炭素(CO)酸化触媒(635)であって、介在する加熱素子も介在する冷却素子もなしで前記出口に直接前記CO触媒が配置されることによって前記CO酸化触媒によるNOからのNO_(2)生成を制限する、一酸化炭素(CO)酸化触媒(635)と、
前記排気ガス流内で前記CO酸化触媒(635)及び高圧熱交換器(625)の下流側に配置されたアンモニア注入グリッド(AIG)(640)と、
前記アンモニア注入グリッド(640)の下流側に配置され、前記排気ガス流(615)とアンモニアを混合する混合チャンバ(645)と、
前記混合チャンバ(645)の下流側に配置され、前記排気ガス流(615)中のNO_(X)を還元する選択接触還元(SCR)触媒要素(650)と
を含んでおり、当該発電装置が、高圧熱蒸発器(620)並びに低圧熱蒸発器(350)及び複数の追加の熱交換器(625、655)の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)(601)をさらに備えており、前記CO酸化触媒(635)が前記高圧熱蒸発器(620)の上流側に配置されており、前記アンモニア注入グリッド(640)が前記高圧熱蒸発器(620)の下流側に配置されている、発電装置(600)。」(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)

[2]本件補正の目的について
本件補正は、「発電装置」について「高圧熱蒸発器(620)並びに低圧熱蒸発器(350)及び複数の追加の熱交換器(625、655)の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)(601)をさらに備え」ることを限定し、「CO酸化触媒(635)」について「高圧熱蒸発器(620)の上流側に配置され」ることを限定し、さらに、「アンモニア注入グリッド(640)」について「高圧熱蒸発器(620)の下流側に配置されている」ことを限定するものであり、
本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

[3]独立特許要件の判断
1.刊行物
(1)刊行物の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-118028号公報(以下、「刊行物」という。)には、排ガス浄化装置に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

1a)「〔従来の技術〕
近年、米国を中心に我が国においても、ガスタービン(GT)と廃熱回収ボイラ(HRSG)とを組合わせた、いわゆるコンバインド・サイクルシステムが数多く稼働され始めている。コンバインド・サイクルシステムは、大幅な負荷変動を短時間に行えること、エネルギーの利用効率が高いことなど多くの利点を有しており、今後さらに増加する傾向にある。ところが、本システムは、分散型発電設備として、あるいは昼夜および季節間の電力需要の変動に対応する目的で都市近郊に建設される場合が多く、公害防止策も厳重に施す必要がある。
このため、従来の装置では、第4図に示すように、ガスタービン1の出口部に貴金属を担持した酸化触媒5aを設置して燃料中の未燃分、例えば一酸化炭素(CO)を酸化した後、その後流側に設けた脱硝触媒5cによって排ガス中の窒素酸化物(NO_(X))をアンモニア注入装置6からのアンモニアによって還元する方法により、COおよびNO_(X)の低減が図られている。2は過熱器、3、4は蒸発器、7はHRSGで発生した蒸気で回転する蒸気タービン、8は煙突である。
一般に上記従来技術には、CO酸化触媒としてセラミックス、あるいは金属製のハニカム担体に白金(Pt)、パラジウム(Pd)あるいはロジウム(Rh)などの貴金属や、これらを担持したアルミナ(Al_(2)O_(3))などを含浸、もしくはスラリ状でコーティングしたものが550?400℃の領域で用いられている。また、アンモニアを還元剤とする脱硝用触媒としては、主に酸化チタンを主成分とするボイラの排煙脱硝と同等の触媒が、400?250℃の排ガス温度領域で用いられることが多い。両触媒とも個別では多数の実用実績があり、プラントの初期性能としては極めて優れたものが得られている。」

(2)上記(1)1a)及び第4図の記載から分かること
1b)上記(1)1a)から、ガスタービン1は、窒素酸化物(NO_(X))、一酸化炭素(CO)等の燃料中の未燃分を含む排ガスを排出することが分かる。

1c)上記(1)1a)及び第4図の記載から、煙突8からガスタービン1の排ガスを放出する前に、排ガスを処理する排ガス浄化装置が設けられていることが分かる。

1d)上記(1)1a)及び第4図の記載から、排ガス浄化装置は、ガスタービン(GT)と廃熱回収ボイラ(HRSG)とを組合わせた、いわゆるコンバインド・サイクルシステムによる分散型発電設備に含まれるものであることが分かる。

1e)上記(1)1a)及び第4図の記載から、排ガス処理装置において、CO酸化触媒5aは、ガスタービン1の排ガス出口の下流側で排気ガスの出口と過熱器2の間の位置に設置されていることが分かる。

1f)第4図の記載から、ガスタービン1の排ガス出口に、介在する冷却機器や加熱機器を設けずに直接CO酸化触媒5aが設置されることが分かる。

1g)第4図の記載から、アンモニア注入装置6は、CO酸化触媒5a及び過熱器2の下流側に設置されることが分かる。

1h)上記(1)1a)及び第4図の記載から、アンモニア注入装置6の下流側に、排ガス中の窒素酸化物(NO_(X))を還元する脱硝触媒5cが設置されることが分かる。

1i)上記(1)1a)及び第4図の記載から、分散型発電設備が、蒸発器3、蒸発器4及び過熱器2を備える廃熱回収ボイラ(HRSG)を備えていることが分かる。

1j)上記(1)1a)及び第4図の記載から、CO酸化触媒5aが蒸発器3の上流側に設置されており、アンモニア注入装置6が蒸発器3の下流側に設置されていることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに第4図の記載を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「窒素酸化物(NO_(X))、一酸化炭素(CO)等の燃料中の未燃分を含む排ガスを排出するガスタービン1と、
煙突8から排ガスを放出する前に、排ガスを処理する排ガス浄化装置と、
を含む分散型発電設備であって、排ガス浄化装置が、
ガスタービン1の排ガス出口の下流側で排ガス出口と過熱器2との間の位置に設置されているCO酸化触媒5aであって、
介在する冷却機器や加熱機器を設けずに排ガス出口に直接設置されるCO酸化触媒5aと、
排ガス流内で、CO酸化触媒5a及び過熱器2の下流側に設置されるアンモニア注入装置6と、
アンモニア注入装置6の下流側に設置され、排ガス中の窒素酸化物(NO_(X))を還元する脱硝触媒5cと
を含んでおり、分散型発電設備が、蒸発器3、蒸発器4及び過熱器2を備える廃熱回収ボイラ(HRSG)をさらに備えており、CO酸化触媒5aが蒸発器3の上流側に設置されており、アンモニア注入装置6が蒸発器3の下流側に設置されている、分散型発電設備。」

2.本願補正発明と引用発明との対比・判断
引用発明における「ガスタービン1」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「空気中で燃料を燃焼させて軸動力を生成」する「ガスタービン」あるいは「ガスタービン」に相当し、引用発明における「一酸化炭素(CO)等の燃料中の未燃分」は、技術常識からみて、一酸化炭素(CO)のほか、炭化水素(HC)を含むものであるから、本願補正発明における「一酸化炭素(CO)」及び「炭化水素(HC)」に相当し、引用発明における「排ガスを排出する」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明の「排気ガス流を生成する」に相当する。
さらに、引用発明における「煙突8」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「排気筒」に相当し、以下同様に、「排ガス」は「排気ガス」に、「排ガスを処理する」は、「排気ガス流を受ける」に、「排ガス浄化装置」は「処理装置」に、「分散型発電設備」は「発電装置」に、「排ガス出口」は「出口」あるいは「排気ガス流内の出口」に、「過熱器2」は「高圧熱交換器」あるいは「追加の熱交換器」に、「設置」は「配置」に、「CO酸化触媒5a」は「一酸化炭素(CO)酸化触媒」あるいは「CO酸化触媒」に、「介在する冷却機器や加熱機器を設けずに」は「介在する過熱素子も介在する冷却素子もなしで」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「介在する冷却機器や加熱機器を設けずに排ガス出口に直接設置されるCO酸化触媒5a」と、本願補正発明における「介在する加熱素子も介在する冷却素子もなしで出口に直接CO触媒が配置されることによってCO酸化触媒によるNOからのNO_(2)生成を制限する、一酸化炭素(CO)酸化触媒」とは、「介在する加熱素子も介在する冷却素子もなしで出口に直接CO触媒が配置されることによる一酸化炭素(CO)酸化触媒」という限りにおいて一致する。
さらに、引用発明における「アンモニア注入装置6」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「アンモニア注入グリッド(AIG)」に相当し、以下同様に、「脱硝触媒5c」は「選択還元(SCR)触媒要素」に、「蒸発器3」は「高圧熱蒸発器」に、「蒸発器4」は「低圧熱蒸発器」に、「廃熱回収ボイラ(HRSG)」は「熱回収蒸気発生器(HRSG)」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「蒸発器3、蒸発器4及び過熱器2を備える廃熱回収ボイラ(HRSG)」と、本願補正発明における「高圧熱蒸発器並びに低圧熱蒸発器及び複数の追加の熱交換器の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)」とは、「高圧熱蒸発器並びに低圧熱蒸発器及び追加の熱交換器の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「空気中で燃料を燃焼させて軸動力を生成し、窒素酸化物(NO_(X))、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を含む排気ガス流を生成するガスタービンと、
排気筒から前記排気ガスを放出する前に、前記排気ガス流を受ける処理装置と
を含む発電装置であって、前記処理装置が、
前記ガスタービンの出口の下流側で前記排気ガス流内の前記出口と高圧熱交換器の間の位置に配置された一酸化炭素(CO)酸化触媒であって、介在する加熱素子も介在する冷却素子もなしで前記出口に直接前記CO触媒が配置されることによる一酸化炭素(CO)酸化触媒と、
前記排気ガス流内で前記CO酸化触媒及び高圧熱交換器の下流側に配置されたアンモニア注入グリッド(AIG)と、
当該発電装置が、高圧熱蒸発器並びに低圧熱蒸発器及び追加の熱交換器の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)をさらに備えており、前記CO酸化触媒が前記高圧熱蒸発器の上流側に配置されており、前記アンモニア注入グリッドが前記高圧熱蒸発器の下流側に配置されている、発電装置。」

[相違点1]
「介在する加熱素子も介在する冷却素子もなしで出口に直接CO触媒が配置されることによる一酸化炭素(CO)酸化触媒」に関して、本願補正発明においては、「介在する加熱素子も介在する冷却素子もなしで出口に直接CO触媒が配置されることによってCO酸化触媒によるNOからのNO_(2)生成を制限する、一酸化炭素(CO)酸化触媒」であるのに対して、引用発明においては、「介在する冷却機器や加熱機器を設けずに排ガス出口に直接設置されるCO酸化触媒5a」であるものの、CO酸化触媒5aによるNOからのNO_(2)生成を制限するものであるか不明である点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
本願補正発明においては、「アンモニア注入グリッドの下流側に配置され、排気ガス流とアンモニアを混合する混合チャンバ」を備え、「排気ガス流中のNO_(X)を還元する選択接触還元(SCR)触媒要素」が「混合チャンバの下流側に配置」されるのに対して、引用発明においては、アンモニア注入装置6の下流側に「混合チャンバ」を備えるものか明らかではなく、「排ガス中の窒素酸化物(NO_(X))を還元する脱硝触媒5c」が「混合チャンバの下流側に配置」されるかも不明である点(以下、「相違点2」という。)。

[相違点3]
「高圧熱蒸発器並びに低圧熱蒸発器及び追加の熱交換器の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)」に関して、本願補正発明においては、「高圧熱蒸発器並びに低圧熱蒸発器及び複数の追加の熱交換器の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)」であるのに対して、引用発明においては、「蒸発器3、蒸発器4及び過熱器2を備える廃熱回収ボイラ(HRSG)」である点(以下、「相違点3」という)。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
燃焼機関の排気中のHC及びCO成分を酸化してH_(2)O、CO_(2)を生成することにより排気を浄化するための酸化触媒が、併せて、NOを酸化してNO_(2)を生成するものであって、その際、温度により定まる平衡状態におけるNOとNO_(2)の比率以上にNO_(2)の割合を増大することが制限され(例えば、特開平9-79024号公報、段落【0014】及び段落【0018】を参照。)、さらに、酸化触媒の温度が高温の領域(特に400℃付近より高温の領域)においてNO_(X)中のNO_(2)の割合が小さくなること(例えば、特表2010-519458号公報、図4を参照)は、当業者にとって周知の事項(以下、「周知の事項」という。)である。そして、上記「1.(1)1a)」の刊行物の記載によれば、ガスタービン1の出口部に設置されたCO酸化触媒は550?400℃の領域で用いられているから、引用発明のCO酸化触媒5aは、550?400℃の高温の領域で用いられるものである。
そうすると、引用発明における「CO酸化触媒5a」が「介在する冷却機器や加熱機器を設けずに排ガス出口に直接設置される」ことによって、「CO酸化触媒5aによるNOからのNO_(2)生成を制限する」ことは、上記周知の事項に接した当業者であれば容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
燃焼機関の排気浄化装置における、アンモニアの注入を行う噴射ノズルの下流であって、選択接触還元(SCR)触媒との間に、排気ガスとNO_(X)還元剤との混合を促進するための混合チャンバを設けることは周知の技術(例えば、特許第3892452号公報、段落【0016】、図1における空間8、及び特開2009-2213号公報、図1におけるミキサー20を参照。)である(以下、「周知の技術」という。)。
よって、引用発明において、アンモニアと排気ガスとの混合を促進するために上記周知の技術を適用して、混合チャンバをアンモニア注入装置6の下流側に配置し、さらに、排ガス中の窒素酸化物(NO_(X))を還元する脱硝触媒5cを混合チャンバの下流側に配置することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点3について]
引用発明における「蒸発器3、蒸発器4及び過熱器2を備える廃熱回収ボイラ(HRSG)」は、廃熱回収ボイラ(HRSG)が、少なくとも蒸発器3(高圧熱蒸発器)及び蒸発器4(低圧熱蒸発器)を備えることから、本願補正発明における「高圧熱蒸発器並びに低圧熱蒸発器及び複数の追加の熱交換器の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)」に含まれる。
よって、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明、周知の事項及び周知の技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

3.まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、周知の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び平成26年8月12日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面からみて、上記「第2[理由][1](1)」に記載したとおりのものである。

2.刊行物の記載等
原査定の理由に引用された刊行物及び引用発明は、上記「第2[理由][3]1.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由][2]」で検討した、「発電装置」についての「高圧熱蒸発器(620)並びに低圧熱蒸発器(350)及び複数の追加の熱交換器(625、655)の少なくとも1つを備える熱回収蒸気発生器(HRSG)(601)をさらに備え」ることの限定を削除し、「CO酸化触媒(635)」についての「高圧熱蒸発器(620)の上流側に配置され」ることの限定を削除し、さらに、「アンモニア注入グリッド(640)」についての「高圧熱蒸発器(620)の下流側に配置されている」ことの限定を削除したものに相当する。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2[理由][3]2.」に記載したとおり、引用発明、周知の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知の事項、及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-11 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-05-30 
出願番号 特願2010-38066(P2010-38066)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 健晴  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
松下 聡
発明の名称 ガスタービン用のNO2形成を少なくするためにCO/VOC酸化触媒を作用させる方法および装置  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
代理人 田中 拓人  
代理人 荒川 聡志  

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