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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1320655 |
審判番号 | 不服2015-14195 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-28 |
確定日 | 2016-10-20 |
事件の表示 | 特願2011- 15215「伝送線路、集積回路搭載装置および通信機モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月16日出願公開、特開2012-156362〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年1月27日に特許出願したものであって、平成26年8月18日付け拒絶理由通知に対して、同年10月27日付けで手続補正がなされたが、平成27年4月17日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成27年7月28日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ、平成28年5月19日付け当審の拒絶理由通知に対して、同年7月25日付けで手続補正がなされた。 2.本願発明 本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年7月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 テーパー状の平面形状を有する並列に配置された2本のテーパー線路と、 前記2本のテーパー線路の幅の狭い側に対向して設けられた線路と、 前記2本のテーパー線路の幅の狭い側と前記線路とを接続するワイヤボンディングと、 を備え、 並列に配置された前記2本のテーパー線路の幅の狭い側の2つの外側のエッジ間の幅は、前記2本のテーパー線路の幅の狭い側に対向する前記線路の対向側の外側のエッジ間の幅より大きいことを特徴とする伝送線路。」 3.引用例 平成28年5月19日付け当審の拒絶理由通知に引用された特許第3303845号公報(平成14年7月22日発行、以下「引用例」という。)には、「内部整合型出力FET」に関して図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0006】 図6は、従来の内部整合型FETの構成を示す図である。・・・(中略)・・・ 【0008】 また、FETチップ2のドレイン電極は、出力側外部回路とインピーダンス整合をとる出力整合回路に、ボンディングワイヤー(L4,L5)により接続される。 【0009】 出力整合回路は、高誘電率基板上に金属線路が形成された分布定数回路5で構成される。・・・(以下、省略)」 イ.「【0023】 本発明の第1の実施の形態の内部整合型出力FETの実装構造を模式的に示す図を、図1に示す。 【0024】 図1を参照すると、本発明の第1の実施の形態の内部整合型出力FET100は、金属製のパッケージ1を備え、パッケージ1の中央に並列に配置される2個のGaAs FETチップ2を備える。・・・(中略)・・・ 【0027】 また、FETチップ2のドレイン電極は、アルミナ基板上に金属線路が形成された分布定数回路5で構成される出力整合回路にボンディングワイヤーL4により接続される。」 上記アないしイ、図1および図6によれば、FETチップ2とボンディングワイヤーL4により接続された分布定数回路5は、ボンディングワイヤーL5によって出力側外部回路に至る線路であるボンディングワイヤーL5の先に繋がった部分(図1において、ボンディングワイヤーL5と金属パッケージ1との間にある部分)と接続されるものである。 よって、上記記載事項および図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「分布定数回路5と、 ボンディングワイヤーL5と、該ボンディングワイヤーL5によって該分布定数回路5と接続された出力側外部回路に至る線路であるボンディングワイヤーL5の先に繋がった部分と を備えた内部整合型出力FET。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「分布定数回路5」は、引用例の図1や図6を参照すると、ボンディングワイヤーL4とボンディングワイヤL5とに接続された(略T字状の)2本の線路を備えたものであるから、本願発明の「平面形状を有する並列に配置された2本の線路」に相当するものを備えている。 但し、本願発明は「テーパー状」の線路であるのに対し、引用発明は「テーパー状」に特定されていない。 b.引用発明の「分布定数回路5」は、上記aのとおり2本の線路を備えており、各線路のボンディングワイヤーL5の先に繋がった部分は(ボンディングワイヤーL4と接続される部分よりも)幅が狭くなっている。 また、引用発明の「出力側外部回路に至る線路であるボンディングワイヤーL5の先に繋がった部分」は、引用例の図1や図6を参照すると、金属パッケージ1内にボンディングワイヤーL5と接続される線路(用語・図番なし。)であり、当該線路は、本願発明の「対向して設けられた線路」に相当する。 よって、引用発明の「ボンディングワイヤーL5と、該ボンディングワイヤーL5によって該分布定数回路5と接続された出力側外部回路に至る線路であるボンディングワイヤーL5の先に繋がった部分」は、本願発明の「前記2本の線路の幅の狭い側に対向して設けられた線路と、前記2本の線路の幅の狭い側と前記線路とを接続するワイヤボンディング」に相当するものを備えている。 但し、上記aのとおり、本願発明は「テーパ-」線路であるのに対し、引用発明は「テーパー」に特定されていない。 c.引用例の図1や図6を参照すると、引用発明の「分布定数回路5」の2本の線路におけるボンディングワイヤーL5と接続される箇所の外側エッジ間の幅は、ボンディングワイヤーL5と接続される「出力側外部回路に至る線路であるボンディングワイヤーL5の先に繋がった部分」の幅よりも大きいことが読み取れる。 よって、引用発明の「分布定数回路5」と「出力側外部回路に至る線路であるボンディングワイヤーL5の先に繋がった部分」は、本願発明の「並列に配置された前記2本の線路の幅の狭い側の2つの外側のエッジ間の幅は、前記2本の線路の幅の狭い側に対向する前記線路の対向側の外側のエッジ間の幅より大きい」点に相当するものを備えている。 但し、上記aのとおり、本願発明は「テーパ-」線路であるのに対し、引用発明は「テーパー」に特定されていない。 d.引用発明の「内部整合型出力FET」は、FETチップ2から出力側外部回路に至るまでの線路を備えているから、本願発明の「伝送線路」に相当するものを備えている。 そうすると、本願発明と引用発明とは以下の点で、一致ないし相違する。 <一致点> 「平面形状を有する並列に配置された2本の線路と、 前記2本の線路の幅の狭い側に対向して設けられた線路と、 前記2本の線路の幅の狭い側と前記線路とを接続するワイヤボンディングと、 を備え、 並列に配置された前記2本の線路の幅の狭い側の2つの外側のエッジ間の幅は、前記2本の線路の幅の狭い側に対向する前記線路の対向側の外側のエッジ間の幅より大きいことを特徴とする伝送線路。」 <相違点> 2本の線路について、本願発明は、「テーパー(状)」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない。 5.判断 上記相違点について判断する。 本願発明の「テーパー線路」は、集積回路チップ(複数のトランジスタ)の出力を次段の線路に伝えるものであって、集積回路チップから受け取った複数の出力信号を中心方向に集めるためのものと認められる。なお、本願明細書によれば「集積回路チップの両端部と中心部から出力される信号の信号経路長の差を小さくする」ことが目的と読めるが、本願発明は、1つのチップに対して2つのテーパ線路を設けた旨を特定していないので(2つのチップに対して1つずつテーパー線路を設ける構成も含まれるので)、当該目的を達成し得る構成に特定されていないものである。 一方、引用発明の「分布定数回路5」におけるボンディングワイヤーL5と接続される2本の線路は、略T字状をしており、このT字状の「-」部分においてFETチップの出力信号を受け取り、略中心部にある「|」部分に信号を集めて次段の線路に信号を伝えているものであるから、本願発明の「2本のテーパー線路」と同じ機能を有するものである。 よって、中心に信号を集め得る構成として「テーパー状」も「略T字状」も普通に選択し得るものであるから、引用発明の「ボンディングワイヤーL5と接続される2本の線路」の形状としてテーパー状のものを採用し相違点の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。 そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用発明から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。 なお、審判請求人は、平成28年7月25日付け意見書において、「引用文献1の図1の形状(T字状の形状)において、両端部から出力される信号は、表皮効果の影響により、線路の端側の経路を通ることになります。また、中心部から出力される信号は、線路の中心付近を通るため、チップの両端部と中心部から出力される信号の信号経路の差を小さくすることが困難な形状となっています。」と主張している。 しかしながら、上記主張は一般的な事項であって、表皮効果の影響は当然に本願発明の「テーパ線路」にも当てはまるものである。仮に、引用発明の「分布定数回路5」におけるボンディングワイヤーL5と接続される2本の線路が略T字状の「-」の両端に角部を有しているが故の主張であったとしても、本願明細書に記載された第5実施例(段落【0058】、図11を参照。)は本願発明に含まれるところ、2線路を組み合わせてテーパー線路になっており、2線路それぞれは引用例と同様に角部を有したものであるから、審判請求人の主張は本願発明にも当てはまるものである。 よって、審判請求人の主張を認めることができない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-08-17 |
結審通知日 | 2016-08-23 |
審決日 | 2016-09-05 |
出願番号 | 特願2011-15215(P2011-15215) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原田 貴志、石坂 博明、鈴木 駿平、小山 和俊 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
酒井 朋広 関谷 隆一 |
発明の名称 | 伝送線路、集積回路搭載装置および通信機モジュール |
代理人 | 河野 努 |
代理人 | 伊坪 公一 |
代理人 | 宮本 哲夫 |
代理人 | 青木 篤 |