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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N |
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管理番号 | 1320699 |
審判番号 | 不服2015-3282 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-20 |
確定日 | 2016-10-19 |
事件の表示 | 特願2011-549204「側面照射型多点式多重パラメータ光ファイバセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月 5日国際公開、WO2010/088591、平成24年 7月26日国内公表、特表2012-517019〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年(平成22年)2月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年1月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年2月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされた。 その後、当審において、同年9月25日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対して、平成28年3月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし26に係る発明は、平成28年3月29日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 「 測定対象媒体からの光を検出するセンシング・システムであって、 感受性光ファイバ(98)を備え、 前記感受性光ファイバ(98)は、 第1(120)および第2(118)の末端と、 前記第1の末端および前記第2の末端の間に位置し、当該感受性光ファイバの外側における環境と物理的に接触する、クラッドの無い少なくとも1つの露出したコア領域を有するコア(106)と、 前記測定対象媒体は、変化したプロービング光を生成し、 前記変化したプロービング光は、前記感受性光ファイバの前記露出したコア領域に側面照射され、少なくとも1つの光学的信号(104)として前記コア中へ実質的に結合される、センシング・システム。」 第3 当審の平成27年9月25日付け拒絶理由の概要 当審の平成27年9月25日付け拒絶理由のうち、請求項1に係る発明に対する特許法第29条第2項の規定に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。 本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特表2008-539447号公報(以下「引用例1」という。)に記載された発明及び本願優先日前において周知の事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 引用例記載の事項 1 引用例1には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。)。 (引1ア) 「【請求項1】 敏感な光ファイバー、少なくとも一つのプローブ用光源、検出手段、シグナルプロセス手段、表示手段、パワーサプライより構成されるセンシング・システム。 前記敏感な光ファイバーがコアを持つこと、前記敏感な光ファイバーがクラッディングを持つこと、前記クラッディングが少なくとも一つの敏感な部位を持つこと、また、前記敏感な部位が少なくとも一つの測定に対して敏感であること 前記プローブ用光源がプローブ光を発すること、そして、前記プローブ用光源が前記敏感な部位の敏感な光ファイバーに隣接すること 前記検出手段が、前記敏感な光ファイバーの第1末端との軸方向の光通信を行うこと 前記シグナルプロセス手段が、前記検出手段とのデータ通信を行うこと 前記表示手段が、前記シグナルプロセス手段とのデータ通信を行うこと 前記パワーサプライが前記プローブ用光源、前記検出手段、前記シグナルプロセス手段、および前記表示手段に電力を供給すること また 前記敏感な光ファイバーが、その周辺環境での前記の少なくとも1回の測定に、り(当審注:「測定に、り」は「測定により」の誤記と認める。)、単調な相互作用で光学的に影響を受けること また、前記プローブ光が、前記敏感な光ファイバーの前記敏感な部位と相互に作用し、改良されたプローブ光を発生すること。実際、このような改良が、前記測定によってなされ、前記改良されたプローブ光が、光シグナルで前記コアとカップリンク(当審注:「カップリンク」は「カップリング」の誤記と認める。)すること また、前記検出手段が、前記敏感な光ファイバーの前記第1末端の励起によって、前記光シグナルを受け取ること。前記検出手段が前記光シグナル強度を電気シグナルと関連付け、さらに、前記電気シグナルが前記シグナルプロセス手段に伝達されること また、前記電気シグナルが測定した前記測定量と関連付けられ、前記測定量が伝達され、前記表示手段で表示されるこを特徴とする。 ・・・ 【請求項5】 請求項1に記載したセンシング・システムにおいて、前記敏感な部位がグループから選択された試薬で作られること、そのグループが比色試薬、吸収ベースの試薬、蛍光試薬、および化学発光試薬からなることを特徴とする。 ・・・ 【請求項16】 請求項1に記載したセンシング・システムにおいて、反射機が、前記敏感な光ファイバーの第2末端に位置すること、また、前記反射機が、前記検出手段への後方伝播モードの新たな方向付けにより、前記光シグナルを増加させることを特徴とする。」 (引1イ) 「【0001】 本発明は主に分光法に基づいた光ファイバー・センサーに関する。特に本発明は、吸収、蛍光、燐光及び化学発光に基づいたセンサーに関する。」 (引1ウ) 「【0019】 本発明の好適な実施形態は、一般的に、敏感な光ファイバー、プローブ用あるいは励起光源、パワーサプライ、検出手段、シグナルプロセス手段、表示手段から構成される。プローブ用あるいは励起光源は、光ファイバーの敏感な部位と隣接し、直接的な光通信を行う。光ファイバーは、温度および(または)少なくとも1つの化学種に敏感で、これらの測定量によって単調な相互作用により光学的に影響される。敏感な光ファイバーは、横方向に、光源からのプローブ光を受け取り、プローブ光は光ファイバーの敏感な部位と相互に作用する。ファイバーの敏感な部位は、プローブされた上で、温度および(または)1つの化学種の存在によって影響される光シグナルを発生するプローブ光を修正する。光シグナルは、光シグナルとして光ファイバー・コアへカップリングされ、ファイバーの末端との軸方向の光通信によって、検出手段へと取り入れられる。検出手段は、光シグナルの強度を電気シグナルと関連させる。電気シグナルは、シグナルプロセス手段に伝達される。そこでは電子シグナルは、測定された測定量(温度、化学種の濃度など)と関連する。相関量が送信され、表示手段に表示される。」 (引1エ) 「【0048】 センサー98のブロック図は図1に示される。結果として、UV発光ダイオード(UV LED)100のような励起(プローブ用)UV光源は、蛍光体で作られた敏感なクラッディング102のセクションを横方向に照射し、矢印で示される照射灯、蛍光104を発生する。UV LED100は、UV LED100への電流を供給する電源114に繋がっている。UV LED100は、隣接する敏感なクラッディング102と光通信を行う。 【0049】 蛍光104の一部はファイバー・コア106へカップリングされ、シリコン光検出器のような検出器108に導入される。この光検出器は蛍光104の光度を出力電気シグナルと関連付ける。この電気シグナルはケーブル112によって、マルチメーターのようなシグナルプロセス手段110に伝達される。シグナルプロセス手段110において、シグナルが増幅され、その光強度が表示される。シグナルプロセス手段110によって読み取られた強度は、その後、センサー98周辺の化学種の濃度と関連付けられる。」 (引1オ) 「【0050】 同様のアプローチも図1Aの中で示されたような吸収ベースの敏感な光ファイバーに使用することができる。従って、白色光発光ダイオード(白色LED)103のようなプローブ用光源は、吸収ベースの色素からなる敏感なクラッディング102(矢印で示された照射灯)のセクションを横方向に照射する。プローブ用光源103は、それに電流を供給するパワーサプライ114に繋がっている。パワーサプライ114は隣接した敏感なクラッディング102との光通信を行う。 【0051】 元のプローブ光は、敏感な吸収ベース・クラッディング102によりフィルターされ、その光の一部が低減衰漏えいモード105のようにファイバー・コア106にカップリングされる。その後、低減衰漏えいモード105はシリコン光検出器のような検出器108に導入される。検出器108は吸収光の強度を出力電気シグナルに関連付ける。この電気シグナルはケーブル112により、マルチメーターのようなシグナルプロセス手段110に伝達される。シグナルプロセス手段110において、シグナルが増幅され、その光強度が表示される。その後、シグナルプロセス110によって読み込まれた強度が、センサー98周辺の化学種の濃度と関連付けられる。」 (引1カ) 「【0052】 一例として、ルシゲニンのような市販の反応色素は、塩化物イオンによりその蛍光出力を弱め、また、その反応色素はこのイオンの指示標識として使用することができる。従って、高いシグナル出力は、塩化物イオンの低濃度に対応し、逆もまた同様である。同様に、市販の吸収ベース色素(ライハルト色素)は、相対湿度を決定するために使用することができる。従って、高いシグナル出力は高い相対湿度レベルに対応している。」 (引1キ) 「【0058】 光ファイバー96からのセンサー98の製造は、感度が必要な特定の部位92において、コア106周辺のプラスチック・クラッディング116およびプラスチック・ジャケット101の除去を必要とする。この除去は、化学的手段、機械的手段(ブレードを使用)、あるいはジャケット101およびプラスチック・クラッティング116を燃焼する熱源を使用することにより行われる。選ばれたいずれの方法でも、ガラスコア106は外部環境に露出され、そして塩化物イオンに敏感なコーティングで覆われる。結果は、図3の中で示されたファイバーの除去された部位92である。この部位では、元のジャケット101およびクラッディング116が除去されている。この実例は一つの除去された部位92を示すが、多数のセクションが同様にセンサーから除去される可能性がある。あるいは、コア106の全長が露出される可能性がある。」 (引1ク) 「【0061】 図4はこの手順から得られた結果のセンサー98を示す。ファイバー・コア106、プラスチック・クラッディング116、およびその新しい敏感な部位102が含まれている。結果として、この部位の屈折率は、PVA.n=1.47(表1参照)の屈折率と類似する。」 (引1ケ) 「【0065】 図5に示すように、他の実施例は、検出器108の反対側の、センサー98の末端に反射機122を取り入れることができ、蛍光シグナルを増加する検出器108への後方伝播モード124の新たな方向付けによって、光シグナルを増幅する。」 (引1コ) 「【図面の参照番号】 ・・・ 118 光ファイバーの第2末端・・・ 120 光ファイバーの第1末端」 (引1サ) 【図1】 「 」 (引1シ) 【図1A】 「 」 (引1ス) 【図4】 「 」 (引1セ) 【図5】 「 」 (引1ソ) (引1シ)の【図4】及び(引1ス)の【図5】から、光ファイバーの第1末端120と第2末端118との間の位置において、コア106側面の回りに塩化物イオンに敏感なコーティングが施され、敏感な部位が形成されていることが見てとれる。 2 引用例1に記載された発明の認定 上記(引1ア)ないし(引1ソ)を含む引用例1全体の記載を総合すると、引用例1には、 「 敏感な光ファイバー、少なくとも一つのプローブ用光源、検出手段、シグナルプロセス手段、表示手段、パワーサプライより構成されるセンシング・システムであって、 前記敏感な光ファイバーがコアを持つこと、前記敏感な光ファイバーがクラッディングを持つこと、前記クラッディングが少なくとも一つの敏感な部位を持つこと、また、前記敏感な部位が少なくとも一つの測定に対して敏感であること、さらに、前記敏感な部位は、前記敏感な光ファイバーの第1末端と第2末端との間の位置において、前記コア側面の回りに塩化物イオンに敏感なコーティングが施されて形成されていること、 前記プローブ用光源がプローブ光を発すること、そして、前記プローブ用光源が前記敏感な部位の敏感な光ファイバーに隣接すること、 前記敏感な光ファイバーは、横方向に、前記プローブ用光源からのプローブ光を受け取り、前記プローブ光が、前記敏感な光ファイバーの前記敏感な部位と相互に作用し、改良されたプローブ光を発生すること、 前記改良されたプローブ光が、光シグナルで前記コアとカップリングされ、前記敏感な光ファイバーの前記第1末端との軸方向の光通信によって前記検出手段へと取り入れられること、 を含むセンシング・システム。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 第5 本願発明と引用発明との対比 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) ア 引用発明の「コア」は、本願発明の「コア」に相当する。 イ 本願発明は「測定対象媒体からの光を検出するセンシング・システム」であって、感受性光ファイバを備え、「当該感受性光ファイバの外側における環境と物理的に接触する、クラッドの無い少なくとも1つの露出したコア領域を有するコア」を備えたものであることから、本願発明において、「露出したコア領域」の回りに「測定対象媒体」が存在することは明らかであるから、引用発明の「コア側面の回りに」「施され」た「塩化物イオンに敏感なコーティング」と、本願発明の「測定対象媒体」とは、「コア側面の回りに存在する物体」である点において共通する。 ウ 引用発明の「プローブ光」及び「改良されたプローブ光」は、それぞれ本願発明の「プロービング光」及び「変化したプロービング光」に相当する。 エ 引用発明は「プローブ光が」、「敏感な光ファイバーの」「敏感な部位と相互に作用し、改良されたプローブ光を発生」し、「前記改良されたプローブ光が、光シグナルで」「コアとカップリングされ」るものであるところ、「前記敏感な部位」は「前記コア側面の回りに塩化物イオンに敏感なコーティングが施されて形成されている」ことから、「改良されたプローブ光」が「コア側面の回りに」「施された」「塩化物イオンに敏感なコーティング」で発生することは明らかである。 オ 上記アないしエを踏まえると、引用発明の「プローブ光が」、「敏感な光ファイバーの」「敏感な部位と相互に作用し、改良されたプローブ光を発生する」ことと、本願発明の「測定対象媒体は、変化したプロービング光を生成」することとは、「コア側面の回りに存在する物体は、変化したプロービング光を生成」することである点において共通する。 カ 引用発明は、「プローブ光が」、「敏感な光ファイバーの」「敏感な部位と相互に作用し、改良されたプローブ光を発生」し、「前記改良されたプローブ光が、光シグナルで」「コアとカップリングされ」、「前記敏感な光ファイバーの」「第1末端との軸方向の光通信によって」「検出手段へと取り入れられる」ものであるから、引用発明の「センシング・システム」は、「コア側面の回りに施された塩化物イオンに敏感なコーティングからの改良されたプローブ光を検出するセンシング・システム」であるといえる。 キ 上記アないしカを踏まえると、引用発明の「コア側面の回りに施された塩化物イオンに敏感なコーティングからの改良されたプローブ光を検出するセンシング・システム」であるといえる「センシング・システム」と、本願発明の「測定対象媒体からの光を検出するセンシング・システム」であって、「前記測定対象媒体は、変化したプロービング光を生成」するセンシング・システムとは、「コア側面の回りに存在する物体からの変化したプロービング光を検出するセンシング・システム」である点において共通する。 (2)引用発明の「敏感な光ファイバー」、「第1末端」、「第2末端」及び「クラッディング」は、それぞれ本願発明の「感受性光ファイバ」、「第1の末端」、「第2の末端」及び「クラッド」に相当する。 (3) ア 引用発明において、「敏感な部位」が敏感な光ファイバーの外側における環境と物理的に接触することは明らかである。 イ 引用発明の「敏感な部位」と、本願発明の「クラッドの無い」「露出したコア領域」とは、「センシング領域」である点において共通する。 ウ 上記ア及イを踏まえると、引用発明の「敏感な光ファイバーの第1末端と第2末端との間の位置において」、「コア側面の回りに塩化物イオンに敏感なコーティングが施されて形成されている」「敏感な部位」と、本願発明の「第1の末端および」「第2の末端の間に位置し」、「感受性光ファイバの外側における環境と物理的に接触する、クラッドの無い少なくとも1つの露出したコア領域」とは、「第1の末端および第2の末端の間に位置し、感受性光ファイバの外側における環境と物理的に接触する、少なくとも1つのセンシング領域」である点において共通する。 (4) ア 引用発明は、「敏感な光ファイバーは、横方向に、前記プローブ用光源からのプローブ光を受け取り、前記プローブ光が、前記敏感な光ファイバーの前記敏感な部位と相互に作用し、改良されたプローブ光を発生」し、「前記改良されたプローブ光が、光シグナルで」「コアとカップリングされ」るものであることから、引用発明において、改良されたプローブ光が敏感な光ファイバーの敏感な部位におけるコア側面に到達することは明らかである。 イ 引用発明の「光シグナル」及び「カップリング」されることは、それぞれ本願発明の「光学的信号」及び「実質的に結合」されることに相当する。 ウ 上記ア及イを踏まえると、引用発明の「敏感な光ファイバーは、横方向に、前記プローブ用光源からのプローブ光を受け取り、前記プローブ光が、前記敏感な光ファイバーの前記敏感な部位と相互に作用し、改良されたプローブ光を発生」し、「前記改良されたプローブ光が、光シグナルで」「コアとカップリングされ」ることと、本願発明の「変化したプロービング光は」、「感受性光ファイバの」「露出したコア領域に側面照射され、少なくとも1つの光学的信号として前記コア中へ実質的に結合される」こととは、「変化したプロービング光は、感受性光ファイバのセンシング領域におけるコア側面に到達し、少なくとも1つの光学的信号として前記コア中へ実質的に結合される」ことである点において共通する。 2 一致点及び相違点 よって、本願発明と引用発明とは、 「 コア側面の回りに存在する物体からの変化したプロービング光を検出するセンシング・システムであって、 感受性光ファイバを備え、 前記感受性光ファイバは、 第1および第2の末端と、 前記第1の末端および前記第2の末端の間に位置し、当該感受性光ファイバの外側における環境と物理的に接触する、少なくとも1つのセンシング領域と、 コアと、を備え、 前記コア側面の回りに存在する物体は、変化したプロービング光を生成し、 前記変化したプロービング光は、前記感受性光ファイバの前記センシング領域におけるコア側面に到達し、少なくとも1つの光学的信号として前記コア中へ実質的に結合される、センシング・システム。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 「変化したプロービング光」及び「センシング領域」に関して、本願発明においては、「測定対象媒体」が「変化したプロービング光を生成」し、「変化したプロービング光」は、「感受性光ファイバの外側における環境と物理的に接触する、クラッドの無い」「露出したコア領域」に「側面照射」されるのに対し、引用発明においては、「敏感な光ファイバ」の外側における環境と物理的に接触する「敏感な部位」を形成する、「コア側面の回り」に「施され」た「塩化物イオンに敏感なコーティング」が、「横方向に」「プローブ光を受け取り」、「改良されたプローブ光を発生」し、「改良されたプローブ光」が「コア側面」に到達する点。 第6 当審の判断 1 上記相違点について検討する。 上記相違点は、本願発明は、変化したプロービング光を生成することができる、感受性光ファイバの外側において物理的に接触する環境の測定対象媒体を検出対象としているのに対し、引用発明は、改良されたプローブ光を発生することができない、敏感な光ファイバの外側において物理的に接触する環境の塩化物イオンを検出対象としているため、センシング領域である敏感な部位のコア側面の回りに塩化物イオンの存在により改良されたプローブ光を発生することができる塩化物イオンに敏感なコーティングを必要とすることに起因するものと認められる。 そして、環境中に存在する物質の検出又は濃度測定を、当該物質による光の吸収又は散乱等によって生じる受光量の変化を検出することによって行うことが慣用されていることに鑑みると、引用例1に接した当業者にとって、検出対象とする物質が改良されたプローブ光を発生することができるものである場合には、引用発明の敏感な部位において、検出対象に敏感で改良されたプローブ光を発生するコーティングを必要とせず、検出対象とする物質により生じた改良されたプローブ光を入射させることができる露出したコア領域を設ければ十分であることは、明らかな技術的事項であるといえる。 このことは、特開昭57-61962号公報において、パルス状の光信号を伝搬する導光体(引用発明の「プローブ光」を発する「プローブ用光源」に相当。)と、コアが露出せる切除面を有する光検知手段としての導光体との間に、パラフィンを固着した光結合感知装置が開示され、光検知手段としての導光体の露出したコアに、その外側において物理的に接触する環境であるといえるパラフィンの状態により変化する透過光(引用発明の「改良されたプローブ光」に相当。)を入射させている技術が記載され、また、特開昭56-8512号公報において、液量測定範囲における片側のクラッドを除去しコアを露出させた形で、発光用光ファイバと受光用光ファイバとを互いに対向させた液量検出器が開示され、受光用光ファイバの露出したコアに、その外側において物理的に接触する環境であるといえる液の存在により生じた光(引用発明の「改良されたプローブ光」に相当。)を入射させている技術が記載されているように、本願優先日前にこのような技術が既に存在していることからも裏付けられる。 してみると、光ファイバの外側における環境が、改良されたプローブ光を発生することができる物質を包含するものであり、当該物質を検出対象とするのであれば、引用発明の様な、改良されたプローブ光を発生することができる、検出対象に敏感なコーティングを必要とせず、露出したコア領域を設ければ十分であることは、当業者にとって明らかな技術的事項であり、検出対象に敏感なコーティングを施すか否かは、検出対象に応じて適宜選択し得る設計的事項であるといえる。 よって、引用発明において、検出対象を塩化物イオンではなく、敏感な光ファイバの外側において物理的に接触する環境に含まれる、改良されたプローブ光を発生することができる物質を検出対象とし、塩化物イオンに敏感なコーティングを施さないクラッドが無い露出したコア領域を設け、改良されたプローブ光が当該露出したコア領域に側面照射されるようにして、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到しうることである。 2 本願発明の奏する作用効果 本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び本願優先日前において周知な事項から当業者が予測しうる程度のものである。 3 まとめ 以上のとおりであり、本願発明は、引用発明及び本願優先日前において周知な事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-19 |
結審通知日 | 2016-05-24 |
審決日 | 2016-06-06 |
出願番号 | 特願2011-549204(P2011-549204) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷垣 圭二 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 側面照射型多点式多重パラメータ光ファイバセンサ |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |