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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1320729
審判番号 不服2015-11400  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-17 
確定日 2016-10-19 
事件の表示 特願2011-540088「分析装置のデータ管理方法、分析装置、分析装置を備えるシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月17日国際公開、WO2010/066816、平成24年 5月24日国内公表、特表2012-511757〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年12月9日(優先権主張 2008年12月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年9月3日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年12月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年5月9日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年10月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年2月23日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年3月3日に請求人に送達された。これに対して、同年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、同年7月9日付けで前置報告書が作成されたものである。
第2 平成27年7月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年7月9日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「データを第1分析装置と第2分析装置の間で転送する方法であって、
前記第1分析装置は、内部メモリ媒体内でデータを新たに生成または修正し、エラーが生じていない通常動作中に継続的に新たに生成または修正された前記データをその生成または修正の後に即座に不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納し、
前記不揮発性のリムーバブル記憶媒体は、前記第1分析装置のスライドインモジュール内に直接挿入され、または前記第1分析装置に接続され、
前記第1分析装置の前記リムーバブル記憶媒体上に冗長的に格納された前記データは、前記外部のリムーバブル記憶媒体を前記分析装置間で物理的に移動することにより、等価な第2分析装置の内部メモリ媒体にインポートされ、
前記リムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納された前記データは、前記第1分析装置の構成データである
ことを特徴とする方法。」と補正された。(下線部は補正箇所である。)
(2)本件補正前の、平成26年10月31日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「データを第1分析装置と第2分析装置の間で転送する方法であって、
前記第1分析装置は、内部メモリ媒体内でデータを新たに生成または修正し、動作中に継続的に新たに生成または修正された前記データを不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納し、
前記不揮発性のリムーバブル記憶媒体は、前記第1分析装置のスライドインモジュール内に直接挿入され、または前記第1分析装置に接続され、
前記第1分析装置の前記リムーバブル記憶媒体上に冗長的に格納された前記データは、前記外部のリムーバブル記憶媒体を前記分析装置間で物理的に移動することにより、等価な第2分析装置の内部メモリ媒体にインポートされ、
前記リムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納された前記データは、前記第1分析装置の構成データである
ことを特徴とする方法。」

(3)上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「データを」「不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納」するタイミングについて、「エラーが生じていない通常動作中に」との限定および「前記データをその生成または修正の後に即座に」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
2 本件補正発明の独立特許要件についての検討
(1)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由(平成26年5月9日付けの拒絶理由)に(引用文献3として)引用された特開2008-209328号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。)
「【0001】
本発明は血液,尿等の生体試料の化学的,物理的性質を測定する自動分析装置に係り、特に装置内情報を記憶する記憶手段を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液,尿等の生体サンプルの化学的,物理的性質を測定する自動分析装置は、疾病の診断に用いられる特性上、緊急に測定の実施を求められることがある。そのため、昼夜を問わず常時稼動であることが求められる。
【0003】
一方、自動分析装置(自動分析システム)においては未知の試料を測定していることに加え、その測定対象となる物質の種類の増加,測定方法の高度化,複雑化により、複数の原因による予測の困難な障害が発生する可能性が高まっている。このような未知の障害に遭遇した場合、障害を発生した当該システムの運用稼動を停止させ、原因究明を行うことが望ましい。しかし、当該システムを保有する医療機関,検査機関において、障害発生後も依然として新たな測定が必要とされる場合においては、当該問題点が致命的なものでない限りにおいて、当該システムの運用操業を継続し、同時に障害については別個に解析することが望ましい。この場合、当該システムに保存された情報をもとに解析する場合や、別個のシステムに当該システムの測定に関わる諸条件を改めて設定し、再現実験が行われる。
【0004】
このようなシステムにおいては、システムの設定,システムに用いる消耗品および廃棄物の管理,測定対象となる個々の項目に対する校正,試料単位の測定項目の選択,試料単位の測定結果および既知試料の測定の定期的な実施とその長期的な管理といった機能が搭載されている場合がある。そのため、真に問題となった装置以外で再現実験を行うためには、上記のような情報がすべてそろっていることが必要である。」
「【0012】
本発明は、このようなシステム情報のバックアップ方法に関して、臨床検査の実態に鑑み解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その方法として、常時システムの情報を保持する保存媒体を少なくとも二つ以上用意し、この書き込み動作を同時とみなせるタイミングで行うことで障害時点における複製作業を不要とする。さらに、少なくとも一方の保存媒体をシステムから取り外し可能とし、任意の時点において保存媒体を取り外し可能とする。さらに、あらかじめ個人情報を含むファイルについては特定可能として、これをシステムから保存媒体を取り除く場合には消去するか、もしくは暗号化することにより、システムに接続した場合にのみ読み取り可能とする。この構成とすることにより、システムはシステムを停止することなく、外部にて障害の解析等を実施し、かつ個人情報の保護を可能とする。またシステムの処理が十分な速度が得られない場合については、システム全体の稼動状況を鑑みて、あらかじめ設定したタイミングにおいて、当該バックアップ作業を実施するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、システムに関する情報をシステムから取得するにあたり、システムの停止時間を実質的になしで得ることができる。」
「【0016】
本発明の好適な実施例を図1により説明する。システムは、入力手段としてのキーボード101,表示画面102,CPUシステム103からなり、このCPUシステム103は、分析部110と接続されている。分析部110には、試料容器を架設する部分111と試料容器に付された情報読取手段112と、試料容器に収められた液体試料を分取する手段113と、分取された試料を処理する手段114と、処理された試料の化学的,物理的性質を測定する手段115と、測定結果をCPUシステム103に伝達する手段を備える。CPUシステム103には、第一の記録媒体としてハードディスク104と、第二の記録媒体としてハードディスク105を備える。また、本システムは、上位の情報システム120と通信手段121により接続されている。ここで通信手段を介して伝達される個々の検体に対する測定項目の選択内容を「依頼内容」と称する場合がある。試料を処理する手段114には、公知例 特開2000-46842に示すような自動分析システムを用いることができる。
【0017】
試料容器が試料容器を架設する部分111に架設されると、試料容器は試料容器情報読取手段112により情報を読み取られ、当該情報は分析部110を介してCPU103に送付され、CPU103は通信手段121を介して上位情報システム120にシステムIDとあわせて問合せを行う。問合せを受けた上位情報システム120は、あらかじめ試料を患者から採取するに先立って決定した測定項目を格納しており、この格納情報のうち、システムIDに該当する測定項目を通信手段121を介してCPU103に送付し、CPU103は測定項目を分析部110に送付する。尚、検体に関する情報および、検体と依頼に関する情報については入力装置101によってシステムに対して直接行っても良い。分析部110は、分析に関わる液体試料の分取手段113,試料処理手段114および測定手段115を連携させ、測定結果を得る。測定結果はCPU103に送付される。CPU103はこれを第一の記録媒体104および第二の記録媒体105に同時に記録し、さらに第一の記憶媒体104に記録された表示画面102に表示し、かつ通信手段121を介して上位情報システム120に報告される。
【0018】
ここで、システムにおけるファイルに収められる情報の概要を図2に示す。ファイルシステム201は複数のファイルから構成されており、個人情報ファイルとして処理情報202には検体の属性に関する情報と、システム内部で当該検体を追跡可能な内部処理番号を関連付ける。これ以外のファイルは個人情報を直接含まないファイルとなっており、依頼情報203には、前記内部処理番号と測定項目の関係が記録されている。結果情報204には前記内部処理番号と測定結果の関係が記録されている。これ以外の情報は、システムでの測定を行ううえで必要とされる情報であって、個々の測定項目や測定にかかわる構成要素の組合せに対してあらかじめ行われた既知濃度の物質の測定に基づく校正情報205,測定に用いられる試薬や消耗品の残量を管理する物品管理情報206,装置の実際の動作を障害に備えて記録する装置動作情報207,測定システムに対して既知濃度の物質を定期的に測定し、個々の分析項目が適切に測定可能であることを証明するための精度管理情報208等がある。ここに示される情報はあくまでも分析システムとして一般的なものであって、これ以外にもシステムにとって必要な情報がある場合もある。また、ここで示すファイル構成は、個人情報がシステムにとって必要ではあるものの、実質的にはシステム内部ではほぼすべての処理が内部処理番号にて処理が可能であることを説明するものであって、このように個人情報を含むデータ要素については特定のファイルに限定して記憶することが可能であることを示すものである。
【0019】
このような構成において、図3に示すような記憶媒体の取り外し画面によってディスクの選択画面301において、取り外しディスクの選択画面が表示され、前記第一のハードディスク104をシステムから取り外す場合にはメインハードディスク302を、前記第二のハードディスク105を取り外す場合にはセカンダリハードディスク303を選択する。システムには少なくともひとつのハードディスクを備えていることが必要であるため、ここでは、どちらか一方を取り外す画面となっている。さらに、個人情報を消去するためにチェックボックス304を備え、この画面から個人情報の消去を指示できる。当該処理をこの時点でキャンセルする場合にはキャンセルボタン305もしくは307を押す。また、記録媒体を取り除く場合には306を押す。このような操作により、システムは、記録媒体の取り外しを適切に行うことができるようにする。」
以上の引用例1の記載によれば、引用例1には以下の事項を含む発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。
「血液,尿等の生体試料の化学的,物理的性質を測定する自動分析装置(自動分析システム)に係り、
常時システムの情報を保持する保存媒体を少なくとも二つ以上用意し、この書き込み動作を同時とみなせるタイミングで行うことで障害時点における複製作業を不要とし、
さらに、少なくとも一方の保存媒体をシステムから取り外し可能とし、任意の時点において保存媒体を取り外し可能とし、
この構成とすることにより、システムはシステムを停止することなく、外部にて障害の解析等を実施可能としており、
システムは、入力手段としてのキーボード101,表示画面102,CPUシステム103からなり、このCPUシステム103は、分析部110と接続されており、
分析部110には、試料容器を架設する部分111と試料容器に付された情報読取手段112と、試料容器に収められた液体試料を分取する手段113と、分取された試料を処理する手段114と、処理された試料の化学的,物理的性質を測定する手段115と、測定結果をCPUシステム103に伝達する手段を備え、
CPUシステム103には、第一の記録媒体としてのハードディスク104と、第二の記録媒体としてのハードディスク105を備え、
分析部110は、分析に関わる液体試料の分取手段113,試料処理手段114および測定手段115を連携させ、測定結果を得て、測定結果はCPU103に送付され、
CPU103はこれを第一の記録媒体104および第二の記録媒体105に同時に記録し、
システムにおけるファイルに収められる情報としてファイルシステム201は複数のファイルから構成されており、
結果情報204には前記内部処理番号と測定結果の関係が記録され、これ以外の情報は、システムでの測定を行ううえで必要とされる情報であって、個々の測定項目や測定にかかわる構成要素の組合せに対してあらかじめ行われた既知濃度の物質の測定に基づく校正情報205,測定に用いられる試薬や消耗品の残量を管理する物品管理情報206,装置の実際の動作を障害に備えて記録する装置動作情報207,測定システムに対して既知濃度の物質を定期的に測定し、個々の分析項目が適切に測定可能であることを証明するための精度管理情報208等があり、
このような構成において、記憶媒体の取り外し画面によってディスクの選択画面301において、取り外しディスクの選択画面が表示され、前記第一のハードディスク104をシステムから取り外す場合にはメインハードディスク302を、前記第二のハードディスク105を取り外す場合にはセカンダリハードディスク303を選択し、
システムには少なくともひとつのハードディスクを備えていることが必要であるため、ここでは、どちらか一方を取り外す画面となっている、
自動分析装置」
イ 引用例2
原査定の拒絶の理由(平成26年5月9日付けの拒絶理由)に(引用文献4として)引用された特開2001-53913号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、単数または複数の機能を有する画像処理装置および画像処理装置の制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の複写機等の画像処理装置においては、コンピュータからの画像情報をプリンタ部で出力するプリンタ機能およびリーダ部の原稿台上に載置される原稿画像を読み取りコンピュータに入力するスキャナ機能および電話回線,インターネット回線等の公衆回線を介して他のファクシミリ装置等と接続され画像の送受信が可能なファクシミリ機能等を実現するための付属装置が付加された多機能複写機(複合機)が実用化されている。
【0003】上記複合機では、1台の複合機にて複数のジョブを受け付けることが可能であり、それらジョブのデータを蓄積するためにかなり大容量のHDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置を備えているものが提案されている。
【0004】その記憶装置は、外部から受け付けたジョブデータの一時的な保存のためや、外部から受け付けたジョブデータを必要に応じて取り出せるようなエリアとして利用されたり、ある記憶エリアに対してセキュリティを施してユーザ毎、またはグループ毎で利用することができるなどさまざまな用途を持っている。
【0005】また、上述した複合機のように、さまざまな機能を有する複合画像処理装置においては、複数のユーザからの要求をもとに多数のジョブ(ユーザに指示された印刷用データ,送信データとその指示情報等)を記憶するHDD(ハードディスクドライブ)などの記憶手段を備えており、このHDDの記憶エリアを有効に利用して処理の効率化を図り、ジョブの優先度の変更や、特別な記憶エリアを設けてある特定の個人、またはグループのみ読み書き可能なエリアとしての利用や、そのエリアにセキュリティをかけて秘匿性のある文書(ジョブデータ)の保存を行うことが可能である。
【0006】加えて、HDDに代表される装置内の記憶部には、各種設定情報(Configuration情報,FAX用アドレス帳,ユーザ毎の設定)や、複合画像処理装置内の機能を利用して動作するアプリケーションソフトウエアなどが点在して保持されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の複合画像処理装置において、ある複合画像処理装置の記憶部に格納されている各種設定情報等を他の複合画像処理装置に利用させるための手段やバックアップするための手段は備えられていなかった。
【0008】また、複合画像処理装置自体の致命的な障害や故障に対して複合画像処理装置内部のHDDに保存しているデータの保証や、複合画像処理装置を他の複合画像処理装置に置き換える際に、HDDに保存しているデータを他の複合画像処理装置のHDDに移行させる手段は提供されておらず、装置の故障や、複合画像処理装置の置き換えにおいて、利用者が作成しHDDに保存したデータ,FAX用のアドレス帳,ユーザ毎の設定等を復旧させるには大変な手間と労力を必要とするという問題点があった。
【0009】また、複合複写機におけるプリントジョブ等のジョブ処理中に異常,故障等が発生した場合に、処理中,未処理のジョブに関するデータは保証されていないので、ネットワークを介したコンピュータから複合画像処理装置に実行が指示されたプリントジョブ処理は、再度コンピュータから別のプリント機能を備える装置に送り直さねばならず、オペレータ(ユーザ)は余計な時間、手間をかける必要があり仕事の効率が落ちてしまうという問題点があった。
【0010】さらに、HDD内のエリアの利用による、秘匿性の高いデータを移動させる際にセキュリティ情報(パスワード等の該データに対し出力,編集等の操作を行うことを許可されているユーザを識別する情報も含む)も含めてデータを移動する手段は提供されていないという問題点があった。
【0011】本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、第1記憶手段に記憶される前記画像処理装置に関する情報を収集し、該収集した情報を着脱可能な記憶媒体に記憶させることにより、画像処理装置内に格納される各種設定情報,ソフトウエア,ユーザデータ,ジョブ情報等を着脱可能な記憶媒体にバッグアップさせることができ、故障が発生しても画像処理装置内部に格納される情報を確実に保全させることができる画像処理装置および画像処理装置の制御方法に関するものである。」
「【0034】図2は、本実施形態を示す画像処理装置の制御構成を説明するブロック図である。
【0035】図2において、101は画像入力装置(以下、「リーダ部」と称する)であり、原稿を光学的に読み取り、画像データに変換する。リーダ部101は、実際に原稿を光学的に読み取る機能を持つスキャナユニット103と、スキャナユニット103が原稿を読み取れるように原稿を自動搬送する機能を持つDFユニット102で構成される。
【0036】105は画像出力装置(以下、「プリンタ部」と称する)であり、複数種類の記録紙カセット(上段,下段記録紙カセット331,332)を有し、プリント命令に従って画像データを記録紙カセットから搬送される記録紙上に可視像として出力する。プリンタ部105は画像データを記録紙に転写、定着させる機能を持つプリンタユニット106と画像が定着した記録紙ノート、ステイプル等を行うフィニッシャユニット107で構成される。
【0037】104は制御装置(以下、「制御部」と称する)であり、リーダ部101,プリンタ部105と電気的に接続され、画像入出力装置100および画像入出力装置100に接続されている各種装置等を統括制御するものであり、各種の機能を有する。この制御部104には各種機能を実行する回路として、ファックス通信部,各コンピュータI/F(インタフェース)通信部,画像処理部,PDLフォーマッタ部,操作部I/Fを備えている。
【0038】108は画像入出力装置100の操作部であり、大型液晶タッチパネル108aを備え、画像入出力装置100に対してユーザが容易に実行指示等を与えることができるようなユーザI/F部である。
【0039】前述のリーダ部101,制御部104,プリンタ部105および操作部108で構成される画像入出力装置100は制御部104を介して外部の各種装置と通信が可能である。
【0040】また、112および118は通常ユーザーが使用するパーソナルコンピュータ(PC)で、ドキュメントを作成したりするものであり、PC112はネットワーク(LAN(ローカルエリアネットワーク),WAN(ワイドエリアネットワーク)等)120を介して制御部104と接続し、PC118は、コンピュータI/F121を介して制御部104と接続している。
【0041】また、PC112に関してはネットワーク120に接続された他のコンピュータとの電子メールのやり取りを行ったり、ネットワーク120上のHTTPサーバなどのサーバのサービスによりHTMLファイルを閲覧したりすることが可能である。
【0042】114はワークステーション(WS)としての機能を有するコンピュータであり、113および117はファクシミリ装置(ファックス)である。ファックス装置113はネットワーク120を介して画像入出力装置100と通信可能であり、ファックス117は公衆回線(ファックスの国際通信規格であるG3もしくはG4)を介して画像入出力装置100と通信可能である。111はプリンタ、115はスキャナである。
【0043】123は情報記録再生装置であり、制御部104に接続することにより大容量の着脱可能な記憶媒体124を記憶装置として利用することも可能となる。この情報記録再生装置123は、画像入出力装置100が扱うさまざまな情報やジョブを記録,再生するため装置である。
【0044】また、ネットワーク120は、一般的にはEther Net等が挙げられる。さらに、コンピュータI/F121は、一般的にはRS232C,セントロニクスI/F,IEEE1284,SCSIなどが挙げられる。
【0045】このように上述した画像出入力装置100は、複数の機能を有する付属装置を接続することが可能な制御部104を備えた画像処理装置の一例であり、特に大容量の着脱式の記憶媒体124を駆動する情報記録再生装置123を備えたものであり、ネットワーク120等の接続媒介を通してPC112,118と接続することが可能でPC112,118上のデータをプリント出力、ファクシミリ送信等を行うことができ、さらに記憶媒体124に画像入出力装置100内のデータを記録する機能を有する。」
「【0047】図3は、図2に示した制御部104の構成を説明するブロック図である。
【0048】図3において、201はコントローラチップで、主にCPU202,RIP203等によって構成されるワンチップマイコンである。CPU202は、制御部104に備わる各機能ブロックに以下に述べるような処理を実行させる。また、RIP203は、図2に示したPC112,118等から制御部104に入力されるPS,PCL等のPDL(ページ記述言語)フォーマットを、CPU202の指示に従って展開し、制御部104に接続されるプリンタ部105が出力可能な画像フォーマット(ビットマップデータ)に変換する機能を有する。また、コットローラチップ201は後述するPCIバスを制御するための図示しないPCIコントローラを内蔵する。
(中略)
【0067】232はPCIバスで、PCIバスのアービトレーション機能を実行するPCIアービタ230によりアービトレーションが行われることで制御される。CPU202はコントローラチップ201内蔵の図示しないPCIコントローラを介して、PCIバス232上にデータを転送することが可能であり、これによりI/O227にアクセスしたり、PCIコネクタ231の先に接続される他の周辺機器と通信を行うことが可能である。
【0068】228はHDI/Fで、HDD229を接続するためのI/Fである。一般的にはE-IDEや、SCSIなどのインタフェースが挙げられる。HDD229は大容量の不揮発性記憶装置で、CPU202が動作する上での複数のアプリケーション,画像データ等を蓄積しておくものである。なお、画像入出力装置100で実行されるほとんどのジョブのジョブデータ(画像データ)およびジョブの実行に必要となる各種データ等を含むジョブ情報はこのHDD229(記憶装置)に対して、一時的に記録されプリンタ部105や、ネットワークコネクタ211等を介して外部装置(PC112,118,WS114,プリンタ111,ファックス113等)へのデータの転送が行われる。
【0069】また、HDI/F228の先に接続されている着脱可能な記憶媒体124の記録再生を行う情報記録再生装置123がSCIS等のI/Fをもって接続されている。この情報記録再生装置123により、着脱式の記憶媒体124に画像入出力装置100内の情報を記録,再生することが可能となる。」
「【0078】図5は、図2に示した着脱可能な記憶媒体124の記録エリアを説明する模式図である。
【0079】501は装置ID保全エリアで、画像入出力装置100のID番号等を格納する。502は、装置構成情報保全エリアで、画像入力装置100の構成(機能構成)を示す画像入出力装置100の構成情報を格納する。」
「【0101】以下、図8,図9のフローチャート等を参照して、記憶媒体124に記憶させた情報を読み出す場合の制御手順について説明する。
【0102】図8は、本実施形態の画像処理装置における第3のデータ処理手順の一例を説明するフローチャートであり、図3に示したROM204に格納される制御プログラムに基づいてCPU202により実行される制御手順に対応する。なお、(801)?(807)は各ステップを示す。なお、ここでは、記憶媒体124に記録される装置構成情報と読み出す画像入出力装置100に格納される装置構成情報とは同一である場合について説明する。
【0103】まず、記憶媒体124内に記録される情報を読み出す場合に、各種装置情報(図5に示した各エリアに記録される情報等)が記録された記憶媒体124を装置に挿入し(801)、記憶媒体124に記録されている各種装置情報を読み出し(802)、管理者が記憶媒体124に記録されている装置の管理パスワードを入力し(803)、パスワードの照合を行い(804)、パスワードが一致しなかった場合は、処理を終了する。
【0104】一方、パスワードが一致した場合は、記憶媒体124内に記録されるすべての情報にアクセスが可能となり、記憶媒体124に記録されている情報の項目が後述する図11に示す読み出し項目選択画面1100のように大型液晶タッチパネル108aに表示し(805)、管理者により読み出し項目選択画面1100上で読み出す項目が選択され(チェックボックス1001に対する選択入力)、選択された項目の情報の読み出しが指示(OKキー1003が押下)されたかどうかを判断し(806)、指示がされないと判断した場合は、ステップ(806)に戻って、管理者から読み出しが指示がなされるまで待ち、管理者から読み出し指示がなされた場合は、読み出しが指示された項目があれば、指示された項目の情報を記憶媒体124内から読み出して、該読み出した情報を格納する画像入出力装置内のいずれかの記憶装置に対して書き込み(807)、処理を終了する。
【0105】さらに、本実施形態では、管理者により入力された管理パスワードを照合した後に、選択された項目の情報をHDD229,SDRAM205等に格納する場合について説明したが、情報記録再生装置123に記憶媒体124に装着されたときに、コントローラチップ201が自動的に記憶媒体124に格納される情報を読み出してHDD229,SDRAM205に格納するように構成してもよい。
【0106】なお、上述した処理を、例えば画像入出力装置100内の記憶装置の障害(HDDの寿命,破損、SDRAM205のバックアップ電源の故障等)や、プリンタ部105、リーダ部101など画像入出力装置100を構成している部分の機能障害等が発生した場合や、画像入出力装置自体を他の画像入出力装置に置き換える場合に、修理または回復した画像入出力装置または新しく置き換えられた画像入出力装置に対し行うことにより、新たに設定入力や各種データの作成等を行うことなく、記憶媒体に書き込まれた情報を読み取らせるという簡単な操作だけで、以前の画像入出力装置に保持されていた各種情報を容易に復元できる。」
「【0133】さらに、上記実施形態では、画像処理装置を一例に挙げて説明しているが、種々の画像処理装置、例えば電子写真装置,デジタル複写機,モノクロ複写機,カラーレーザ複写機,レーザビームプリンタ,カラーレーザプリンタ,インクジェットプリンタ,熱転写プリンタ,ファクシミリ装置,コピー機能および/またはプリント機能および/またはファクシミリ機能等を備える複合複写機等、および種々の画像処理装置を制御する制御装置,情報処理装置,データ処理装置等に対し、本発明または本実施形態で示した技術を適用するように構成してもよい。」
「【0148】第5の発明によれば、前記制御手段は、前記読み出し手段に前記記憶媒体が装着された場合に、自動的に前記着脱可能な記憶媒体から前記画像処理装置に関する情報を前記読み出し手段で読み出させて前記第1記憶手段に記憶させるので、装置内の情報を容易にかつスピーディに復帰させることができる。」
以上の引用例2の記載によれば、引用例2には以下の事項を含む発明(以下「引用例2発明」という。)が開示されていると認められる。
「第1記憶手段に記憶される画像処理装置に関する情報を収集し、該収集した情報を着脱可能な記憶媒体に記憶させることにより、画像処理装置内に格納される各種設定情報,ソフトウエア,ユーザデータ,ジョブ情報等を着脱可能な記憶媒体にバッグアップさせることができ、故障が発生しても画像処理装置内部に格納される情報を確実に保全させることができる画像処理装置の制御方法であって、
画像入出力装置100内の記憶装置の障害(HDDの寿命,破損、SDRAM205のバックアップ電源の故障等)や、プリンタ部105、リーダ部101など画像入出力装置100を構成している部分の機能障害等が発生した場合や、画像入出力装置自体を他の画像入出力装置に置き換える場合に、修理または回復した画像入出力装置または新しく置き換えられた画像入出力装置に対し行うことにより、新たに設定入力や各種データの作成等を行うことなく、記憶媒体に書き込まれた情報を読み取らせるという簡単な操作だけで、以前の画像入出力装置に保持されていた各種情報を容易に復元できる、
さらに、制御手段は、読み出し手段に記憶媒体が装着された場合に、自動的に着脱可能な記憶媒体から画像処理装置に関する情報を読み出し手段で読み出させて第1記憶手段に記憶させることにより、装置内の情報を容易にかつスピーディに復帰させることができる
画像処理装置の制御方法」
(2)対比
そこで、本件補正発明と引用例1発明とを対比する。
ア 引用例1発明と本件補正発明とは、分析装置のデータの管理方法という共通の技術分野に属し、分析装置の動作中にデータを複数の記憶媒体に格納するという点で、課題が共通しているといえる。
イ 引用例1発明の「自動分析装置(自動分析システム)」は、本件補正発明の「第1分析装置」に、対応している。
ウ 引用例1発明の「自動分析装置(自動分析システム)」は、、データを外部にて障害の解析等を実施するため取り出しているから、本件補正発明の「第1分析装置」と同様に、データを転送しているといえる。しかし、本件補正発明の「第1分析装置」では、データを第2分析装置に転送しているのに対して、引用例1発明の「自動分析装置(自動分析システム)」がデータを何に転送しているのか明らかでない点で相違している。
エ 本件補正発明の「内部メモリ媒体」について、背景技術を記載している本願明細書の段落0006には、「分析装置は、メモリ部(例えば、主データ記憶装置として2.5インチハードディスク)を備える。メモリ部は、内部メモリ媒体とも呼ぶ。」(下線は当審が付与した)と記載されており、段落0019にも「本明細書において、「内部メモリ」という用語は、分析装置の動作中に取り外してはならず、分析装置の動作に必要になる、揮発性または不揮発性メモリを意味する。内部メモリは、例えば半導体メモリまたは磁気メモリ(ハードディスク)または光メモリとして設計することができる。」(下線は当審が付与した)と記載されていることから、「メモリ媒体」といっても、必ずしも半導体メモリを意味するわけではなく、ハードディスクも含んだ概念であると認められる。したがって、引用例1発明の「第一の記録媒体としてのハードディスク104」は、本件補正発明の「内部メモリ媒体」に、対応しているといえる。ただし、本件補正発明の「内部メモリ媒体」が分析装置の内部に備えられているのに対して、引用例1発明の「第一の記録媒体としてのハードディスク104」が「自動分析装置」の「内部」に備えられているか否かは明らかでない点で相違している。
オ 引用例1発明の「第二の記録媒体としてのハードディスク105」は、本件補正発明の「不揮発性のリムーバブル記憶媒体」と同様に、取り外し可能な(リムーバブルな)不揮発性(電源をOFFしても記憶内容が消えない)の記憶媒体であるから、引用例1発明の「第二の記録媒体としてのハードディスク105」は、本件補正発明の「不揮発性のリムーバブル記憶媒体」に対応しているといえる。
カ 引用例1発明の「自動分析装置(自動分析システム)」は、測定された測定結果を「第一の記録媒体としてのハードディスク104」に記録しているから、本件補正発明の「第1分析装置」と同様に、メモリ媒体内でデータを新たに生成しているといえる。ただし、上述したように、本件補正発明の「内部メモリ媒体」が分析装置の内部に備えられているのに対して、引用例1発明の「第一の記録媒体としてのハードディスク104」が「自動分析装置」の「内部」に備えられているか否かは明らかでない点で相違している。
キ 引用例1発明の「自動分析装置(自動分析システム)」は、常時システムの情報を保持する保存媒体を少なくとも二つ以上用意し、この書き込み動作を同時とみなせるタイミングで行うことで障害時点における複製作業を不要としており、測定された測定結果を「第一の記録媒体としてのハードディスク104」と同時に「第二の記録媒体としてのハードディスク105」にも記録しており、測定結果が得られて、記録出来ていることから、エラーが生じていない通常動作中も記録しているといえる。そして、測定結果の記録手段が他に開示されていないから、測定結果は測定(測定データ生成)後即座に「第二の記録媒体としてのハードディスク105」にも格納しているといえる。また、「第一の記録媒体としてのハードディスク104」と「第二の記録媒体としてのハードディスク105」に同じ測定結果が記録されているから冗長的に格納しているといえる。したがって、引用例1発明の「自動分析装置(自動分析システム)」も、本件補正発明の「第1分析装置」と同様に、エラーが生じていない通常動作中に継続的に新たに生成されたデータをその生成の後に即座に不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納しているといえる。ただし、本件補正発明の「第1分析装置」は、選択的構成として、修正されたデータを修正の後に即座に不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納しているのに対し、引用例1発明の「自動分析装置(自動分析システム)」が修正されたデータを修正の後に即座に不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納しているのか否か不明である点で相違している。
ク 引用例1発明の「第二の記録媒体としてのハードディスク105」も、本件補正発明の「不揮発性のリムーバブル記憶媒体」と、同様に、分析装置に接続されているといえる。ただし、本件補正発明の「第1分析装置」は、選択的構成として、スライドインモジュールを備え、不揮発性のリムーバブル記憶媒体が直接挿入可能となっているのに対し、引用例1発明の「自動分析装置(自動分析システム)」は、スライドインモジュールを備えていない点で相違している。
ケ 引用例1発明の「第二の記録媒体としてのハードディスク105」に記録されたデータも、取り外して外部にて障害の解析等が実施可能であるから、本件補正発明の「不揮発性のリムーバブル記憶媒体」に格納されたデータと、同様に、物理的に移動することにより転送できるといえる。ただし、本件補正発明の「不揮発性のリムーバブル記憶媒体」に格納されたデータが等価な第2分析装置の内部メモリ媒体にインポートされているのに対して、引用例1発明の「第二の記録媒体としてのハードディスク105」に記録されたデータが外部にて障害の解析等を実施するためどのように用いられるのか明らかでない点で相違している。
コ 本件補正発明の「構成データ」には、明細書の段落0028を参酌すると、較正も含まれており、引用例1発明の「第二の記録媒体としてのハードディスク105」に記録されたデータには、測定結果だけでなく、個々の測定項目や測定にかかわる構成要素の組合せに対してあらかじめ行われた既知濃度の物質の測定に基づく校正情報等も含まれているから、引用例1発明の「第二の記録媒体としてのハードディスク105」に記録されたデータと、本件補正発明の「不揮発性のリムーバブル記憶媒体」に格納されたデータとは、分析装置の構成データの一つである較正情報を含んでいる点で共通している(ここで、「較正」と「校正」は、測定装置の技術分野において、両者とも、英語のcalibrationの意味で用いられている。「較正」がより適切な表記であるものの、「較」は常用漢字でないため、JIS標準等では「校正」という表記が用いられている。)。しかし、本件補正発明では、較正情報以外の分析装置の構成データも格納しているのに対し、引用例1発明においては、較正情報以外の分析装置の構成データしているか否かは明らかでない点で相違している。
サ 以上のア?コによると、両者は、
「データを分析装置から転送する方法であって、
分析装置は、メモリ媒体内でデータを新たに生成し、エラーが生じていない通常動作中に継続的に新たに生成されたデータをその生成の後に即座に不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納し、
不揮発性のリムーバブル記憶媒体は、分析装置に接続され、
分析装置のリムーバブル記憶媒体上に冗長的に格納されたデータは、リムーバブル記憶媒体を物理的に移動することにより、転送可能であり、
リムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納されたデータには、分析装置の構成データの一つである較正情報を含んでいる
ことを特徴とする方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本件補正発明の分析装置では、データを等価な第2分析装置に転送しているのに対して、引用例1発明の分析装置がデータを何に転送しているのか明らかでない点。
[相違点2]本件補正発明のメモリ媒体が分析装置の内部に備えられているのに対して、引用例1発明のメモリ媒体が分析装置の内部に備えられているか否かは明らかでない点。
[相違点3]本件補正発明の不揮発性のリムーバブル記憶媒体に格納されたデータが等価な第2分析装置の内部メモリ媒体にインポートされているのに対して、引用例1発明の不揮発性のリムーバブル記憶媒体に記録されたデータが外部にて障害の解析等を実施するためどのようにもちいられるのか明らかでない点。
[相違点4]本件補正発明では、較正情報以外の分析装置の構成データも格納しているのに対し、引用例1発明においては、較正情報以外の分析装置の構成データを格納しているか否かは明らかでない点。
なお、本件補正発明の選択的構成に係る相違点についても、念のため、列挙しておく。
[相違点5]本件補正発明の分析装置では、修正したデータも内部メモリおよび不揮発性のリムーバブル記憶媒体に格納しているのに対し、引用例1発明において、修正したデータも内部メモリおよび不揮発性のリムーバブル記憶媒体に格納しているのか否かは明らかでない点。
[相違点6]本件補正発明の分析装置では、不揮発性のリムーバブル記憶媒体が、分析装置のスライドインモジュール内に直接挿入されるのに対して、引用例1発明において、不揮発性のリムーバブル記憶媒体がどのように分析装置と接続されるのか明らかでない点。
(3)判断
[相違点1および4について]

引用例1の段落0003および0004には、引用例1発明の背景技術が以下のように記載されている。
「自動分析装置(自動分析システム)においては未知の試料を測定していることに加え、その測定対象となる物質の種類の増加,測定方法の高度化,複雑化により、複数の原因による予測の困難な障害が発生する可能性が高まっている。このような未知の障害に遭遇した場合、障害を発生した当該システムの運用稼動を停止させ、原因究明を行うことが望ましい。しかし、当該システムを保有する医療機関,検査機関において、障害発生後も依然として新たな測定が必要とされる場合においては、当該問題点が致命的なものでない限りにおいて、当該システムの運用操業を継続し、同時に障害については別個に解析することが望ましい。この場合、当該システムに保存された情報をもとに解析する場合や、別個のシステムに当該システムの測定に関わる諸条件を改めて設定し、再現実験が行われる。
【0004】
このようなシステムにおいては、システムの設定,システムに用いる消耗品および廃棄物の管理,測定対象となる個々の項目に対する校正,試料単位の測定項目の選択,試料単位の測定結果および既知試料の測定の定期的な実施とその長期的な管理といった機能が搭載されている場合がある。そのため、真に問題となった装置以外で再現実験を行うためには、上記のような情報がすべてそろっていることが必要である。」(下線は当審で付加した。)
すなわち、引用例1には、障害の解析のために、別個のシステムに当該システムの測定に関わる諸条件を改めて設定し、再現実験が行うことが示唆されている。そして、別個のシステムで再現実験を行う際には、障害が発生したシステムと等価なシステムを用意し、別個の等価なシステムに対して、障害が発生したシステムのシステム設定等のデータをすべて転送しなくてはならないことは、再現実験の前提条件を同じにする必要性から、当業者にとって自明である。
したがって、引用例1発明においても、本件補正発明と同様に、分析装置の構成データを含んだデータを等価な第2分析装置に転送することは、本願の優先日前に当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点2について]
引用例1の段落0016には、自動分析システムが備える「CPUシステム103には、第一の記録媒体としてのハードディスク104と、第二の記録媒体としてのハードディスク105を備える。」と記載されている。ここで、CPUシステムの技術分野において、ハードディスクを内蔵して、内部メモリとして用いる構成は、通常行われている構成である。
したがって、引用例1発明においても、当該通常の構成を採用して、本件補正発明と同様に、メモリ媒体を内部に備える構成することは、当業者が本願優先日前に容易に想到し得たものである。
[相違点3について]
相違点1及び4についての検討で上述したように、引用例1には、障害の解析において、システム設定等のデータを等価な別個の分析装置に転送して再現実験を行うことが示唆されている。ここで、引用例1発明は、2つのハードディスクに常時同時に記録するミラー型ファイルシステムを採用しており、再現実験をする際に、取り外した第二の記録媒体としてのハードディスク105を等価な別個の分析装置に取り付けた後、当該別個の分析装置の第一の記録媒体としてのハードディスク104に、取り外した第二の記録媒体としてのハードディスク105の内容をコピーしておかなくては、前提条件が同じとならず、正確な再現実験が行えないことは、当業者にとって自明である。
また、上記第2 2(2)で上述したように、引用例2には、以下のような引用例2発明が開示されている。
「第1記憶手段に記憶される前記画像処理装置に関する情報を収集し、該収集した情報を着脱可能な記憶媒体に記憶させることにより、画像処理装置内に格納される各種設定情報,ソフトウエア,ユーザデータ,ジョブ情報等を着脱可能な記憶媒体にバッグアップさせることができ、故障が発生しても画像処理装置内部に格納される情報を確実に保全させることができる画像処理装置の制御方法であって、
例えば画像入出力装置100内の記憶装置の障害(HDDの寿命,破損、SDRAM205のバックアップ電源の故障等)や、プリンタ部105、リーダ部101など画像入出力装置100を構成している部分の機能障害等が発生した場合や、画像入出力装置自体を他の画像入出力装置に置き換える場合に、修理または回復した画像入出力装置または新しく置き換えられた画像入出力装置に対し行うことにより、新たに設定入力や各種データの作成等を行うことなく、記憶媒体に書き込まれた情報を読み取らせるという簡単な操作だけで、以前の画像入出力装置に保持されていた各種情報を容易に復元できる、
さらに、制御手段は、読み出し手段に記憶媒体が装着された場合に、自動的に着脱可能な記憶媒体から画像処理装置に関する情報を読み出し手段で読み出させて第1記憶手段に記憶させることにより、装置内の情報を容易にかつスピーディに復帰させることができる
画像処理装置の制御方法」
ここで、引用例1発明と引用例2発明とは、いずれも装置の障害対策の技術分野に属し、装置に障害が発生しても、装置内のデータを確実に保全するという共通の課題を有している。
引用例1発明において、再現実験を行う際に、正確な再現実験を行うために、引用例1発明において、引用例2発明を適用して、装置構成情報等を格納した着脱可能な第二の記録媒体としてのハードディスクを、他の装置に装着したときに、自動的に当該第二の記録媒体としてのハードディスクに格納される装置構成情報等を読みだして、第一の記録媒体としてのハードディスクに記憶させる構成を採用することは、本願の優先日前に当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、引用例1発明においても、引用例2発明に基づいて、本件補正発明と同様に、不揮発性のリムーバブル記憶媒体に格納されたデータが等価な第2分析装置の内部メモリ媒体にインポートされる構成を採用することは、当業者が本願優先日前に容易に想到し得たものである。
[相違点5について]
引用例1発明においても、生成されたデータである測定結果の他に、適宜修正可能なデータである校正情報等のデータも格納されていることが開示されている。また、引用例1の段落0019及び図3には、引用例1発明では、第一の記録媒体としてのハードディスクおよび第二の記録媒体としてのハードディスク、のどちらも、選択的に取り出すことができる旨記載されている。さらに、引用例1の段落0018及び図2には、ハードディスクに格納されているファイルシステムのファイル構成が一つだけ記載されている。これらの記載から、引用例1発明のファイルシステムは、第一の記録媒体としてのハードディスクおよび第二の記録媒体としてのハードディスクとが全く同じファイル構成となる完全ミラー型ファイルシステムを採用していると解釈できる。
したがって、引用例1発明において、生成されたデータである測定結果だけでなく、適宜修正可能なデータである校正情報等のデータについても、第一の記録媒体としてのハードディスクおよび第二の記録媒体としてのハードディスクの両方に常時同時に格納しておく構成を採用することは、本願の優先日前に当業者が容易に想到し得たものである。
よって、引用例1発明においても、本件補正発明と同様に、修正したデータを内部メモリ媒体内および不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納する構成を採用することは、本願の優先日前に当業者が容易に想到し得たものである。
[相違点6について]
不揮発性のリムーバブル記憶媒体の技術分野において、ハードディスクと同様に、コンパクトフラッシュや、SDカードのような、スライドインモジュール内に直接挿入される記憶媒体は、本願の優先日前に周知の技術にすぎない。
したがって、引用例1発明においても、本件補正発明と同様に、不揮発性のリムーバブル記憶媒体が、分析装置のスライドインモジュール内に直接挿入される構成を採用することは、本願の優先日前に当業者が容易に想到し得たものである。
また、本件補正発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って、当然に予測される程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
したがって、本件補正発明は、引用例1および引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
前記のとおり、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるということはできないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年6月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年10月31日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「データを第1分析装置と第2分析装置の間で転送する方法であって、
前記第1分析装置は、内部メモリ媒体内でデータを新たに生成または修正し、動作中に継続的に新たに生成または修正された前記データを不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納し、
前記不揮発性のリムーバブル記憶媒体は、前記第1分析装置のスライドインモジュール内に直接挿入され、または前記第1分析装置に接続され、
前記第1分析装置の前記リムーバブル記憶媒体上に冗長的に格納された前記データは、前記外部のリムーバブル記憶媒体を前記分析装置間で物理的に移動することにより、等価な第2分析装置の内部メモリ媒体にインポートされ、
前記リムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納された前記データは、前記第1分析装置の構成データである
ことを特徴とする方法。」
3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1および引用例2ならびにその記載事項は、前記「第2 2(1)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明において、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「データを」「不揮発性のリムーバブル記憶媒体内に冗長的に格納」するタイミングについて、「エラーが生じていない通常動作中に」との限定および「前記データをその生成または修正の後に即座に」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらにより詳細な限定を加えたものに相当する本件補正発明が、前記第2 2(3)に記載したとおり、引用例1および引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定を削除した本願発明も同様の理由により、引用例1および引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願優先日前に頒布された引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-13 
結審通知日 2016-05-17 
審決日 2016-06-06 
出願番号 特願2011-540088(P2011-540088)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 野崎 大進
石川 正二
発明の名称 分析装置のデータ管理方法、分析装置、分析装置を備えるシステム  
代理人 関谷 三男  
代理人 平木 祐輔  
代理人 渡辺 敏章  

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