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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1320839
審判番号 不服2015-7901  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-28 
確定日 2016-10-25 
事件の表示 特願2013-528283「ビデオクリップ及びその作成を提供するためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月15日国際公開、WO2012/033903、平成25年12月12日国内公表、特表2013-544450〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本願は、2011年(平成23年)9月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2010年9月8日、米国、2010年12月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成26年 2月19日(起案日)
手続補正 :平成26年 6月10日
拒絶査定 :平成27年 1月26日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成27年 4月28日
手続補正 :平成27年 4月28日
前置審査報告 :平成27年 7月23日
上申書 :平成27年10月20日

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の各請求項に係る発明(平成26年6月10日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開2002-269151号公報
刊行物2:特表2009-543191号公報
刊行物3:特開平10-22955号公報
刊行物4:特開2009-4910号公報

第2 補正却下の決定
平成27年4月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成27年4月28日付けの手続補正を却下する。

《理由》
本件補正は、補正前の請求項1の記載を、以下のように、補正後の請求項1の記載とする補正事項を含むものである。

(補正前の請求項1)
【請求項1】
クリップエンジンがクリップを提供する方法であって、
a.クリップのための要求をクライアントデバイスから受け取る段階、
b.前記要求に応答するクリップを、クリップを取り出す時間、クリップを取り出す日の曜日、クリップを取り出す日が休日であるか否か及びクリップを取り出す日のニュースの少なくとも一つに基づいて決定し、クリップデータベースから取り出す段階、及び
c.前記クリップを前記クライアントデバイスに配信する段階、
を含むことを特徴とする方法。

(補正後の請求項1)
【請求項1】
クリップエンジンがクリップを提供する方法であって、
a.クリップのための要求をクライアントデバイスから受け取る段階、
b.前記要求に応答するクリップを、クリップを取り出す日のニュースに基づいて決定し、クリップデータベースから取り出す段階、及び
c.前記クリップを前記クライアントデバイスに配信する段階、
を含むことを特徴とする方法。

2.本件補正の適合性
(2-1)補正の範囲
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2-2)補正の目的
上記補正事項は、「前記要求に応答するクリップを、クリップデータベースから取り出す段階」において、取り出すクリップを決定する条件について、補正前は「クリップを取り出す時間」、「クリップを取り出す日の曜日」、「クリップを取り出す日が休日であるか否か」、「クリップを取り出す日のニュース」の少なくとも一つに基づいて決定する構成であったのに対し、補正後は「クリップを取り出す日のニュース」に基づいて決定する構成とするものであり、上記条件について、補正前は複数ある中から択一的に選択できる構成であったのに対し、補正後は一つの条件に限定されているといえ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2-3)独立特許要件
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであるから、以下、独立特許要件について検討する。

(ア)補正後発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、以下のとおりである。
((A)ないし(E)は当審において付与した。以下「構成要件(A)」等として引用する。)

(A)クリップエンジンがクリップを提供する方法であって、
(B)a.クリップのための要求をクライアントデバイスから受け取る段階、
(C)b.前記要求に応答するクリップを、クリップを取り出す日のニュースに基づいて決定し、クリップデータベースから取り出す段階、及び
(D)c.前記クリップを前記クライアントデバイスに配信する段階、
(E)を含むことを特徴とする方法。

(イ)引用刊行物の記載
(イ-1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-269151号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クライアントで発生するイベント(アプリケーションの起動や動作等)とサーバからクライアントに対して発信する情報を連携させる技術に関し、特に、クライアントの各種動作に対応した広告やコンテンツ等の情報をクライアントで表示するイベント連動型情報表示システム及びイベント連動型情報表示方法に関するものである。

【0011】
【発明の実施の形態】以下、図を用いて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるイベント連動型情報表示システムの基本構成を簡略的に示したブロック図である。図において、イベント連動型情報表示システム1では、サーバ10とクライアント30がインターネット20を介して通信可能となっており、クライアント30でアプリケーションの起動や動作等のイベントが発生した場合に、サーバ10またはクライアント30自身が保持する広告情報が当該発生したイベントに対応してクライアント30で表示されるシステムとなっている。なお、クライアント30はパソコンや携帯端末等であり、通信機能を有するものである。また、本実施の形態においては、発生したイベントからそのカテゴリを特定し、カテゴリに対応した広告情報がクライアント30で表示されるようなシステムとなっている。図1の画面40は広告情報の表示例であり、aaaワープロ42の起動時に広告41(広告AからE)が表示された様子を示している。なお、イベントに対応して表示する広告41は、広告AからEの全てに及んでも良いし、そのうちの数カ所あるいは1カ所でも良い。
【0012】サーバ10は、クライアント30がオンライン状態である場合に、クライアント30で発生したイベントに対応するカテゴリをクライアント30から受信し、受信したカテゴリに関連する広告情報をクライアント30へ送信する。サーバ10には、各機能を制御する制御部11、クライアント30が保持するデータベースのバージョン(版数)を判定する版判定部12、インターネット20に接続し通信を制御する送受信部13、クライアント30から受信したカテゴリをクライアント30で表示されるべき広告内容に対応付けるブラウザ制御部17を有し、各種データベースとして、クライアント30で発生するイベントとイベントに対応したアプリケーション名が対応付けられて格納されたイベント/アプリケーション名対応表14、アプリケーション名とカテゴリが対応付けられて格納されたアプリケーション名/カテゴリ対応表15、カテゴリと広告情報が対応付けられて格納されたカテゴリ/内容対応表16を有している。
【0013】クライアント30は、クライアント30がオンライン状態である場合には、発生したイベントに対応した広告情報をサーバ10から受信して表示し、オフライン状態である場合には、クライアント30自身が保持するデータベースから関連する広告情報を読み出して表示する。クライアント30には、クライアント30でユーザがアプリケーションを動作した場合にOSや他のアプリケーションからの動作イベントをキャッチすると共にクライアント30内の各機能を制御する制御部31、インターネット20に接続し通信を制御する送受信部32、クライアント30がオンライン状態であるかオフライン状態であるかを判定する判定部33、動作したアプリケーション名をカテゴリに対応付けるDB部34、広告を表示するためのブラウザ36、ブラウザ36を管理すると共にクライアント30がオフラインの場合にカテゴリを表示すべき広告内容に対応付けるブラウザ制御部35を有する。
【0014】また、各種データベースとして、クライアント30で発生するイベントとイベントに対応したアプリケーション名が対応付けられて格納されたイベント/アプリケーション名対応表37、アプリケーション名とカテゴリが対応付けられて格納されたアプリケーション名/カテゴリ対応表38、カテゴリと広告情報が対応付けられて格納されたカテゴリ/内容対応表39を有している。なお、クライアントの各種データベースは、クライアントがオンライン状態の場合に、それらデータベースが最新版であるか否かが確認され、最新でない場合には更新される。
【0015】図2乃至図4は、本実施の形態におけるイベント連動型情報表示システムの動作を詳細に説明したフローチャートである。まず、クライアント30のユーザ(以下、ユーザ)がクライアント30でクライアント30にインストールされているアプリケーションを操作すると(S100)、当該アプリケーションの動作(イベント)をクライアント30の制御部31が検出する(S101)。なお、イベントには、アプリケーションの起動のみならず、アプリケーション内のコマンドの実行、さらにはアプリケーション内のステータスの変化も含まれ、こうしたイベントの検出は、アプリケーションまたはOSが発信したイベント発生の信号を制御部31が検出することによって行われる。制御部31は、イベント/アプリケーション名対応表37を参照して、当該イベントから「アプリケーション名およびその動作」(以下、アクション)を特定する(S102)。
【0016】イベント/アプリケーション名対応表37の格納状況の一例を図5(a)に示す。例えば、発生したイベントが、aaaワープロというアプリケーションの起動であった場合、制御部31は、OSが発信した信号(ここではOSイベント5とする)からイベント/アプリケーション名対応表37を参照し、アプリケーション名は「aaaワープロ」であり、その動作は「起動」であると特定する。
【0017】次に、制御部31は、該当のアクションをDB部34に送信する。DB部34では、アプリケーション名/カテゴリ対応表38を参照して、アクションがどのカテゴリに相当するかを特定する(S103)。アプリケーション名/カテゴリ対応表38の格納状況の一例を図5(b)に示す。例えば、アクションがaaaワープロの起動であった場合、DB部34は、アプリケーション名/カテゴリ対応表38を参照し、カテゴリはaaa社及びワープロであると特定する。DB部34は、カテゴリが特定されると、当該カテゴリを制御部31に返信する。
【0018】次に、制御部31は、判定部33を参照し、クライアント30がオンライン状態にあるかオフライン状態にあるかを判定する(S104)。クライアント30がオンライン状態であれば、オンライン処理が実行され(S105)、オフライン状態であれば、オフライン処理が実行される(S106)。
【0019】以下、図3を参照し、クライアント30がオンライン状態である場合の処理の詳細を説明する。制御部31はDB部34から受信したカテゴリをサーバ10のブラウザ制御部17が受信できるデータに変換する。この変換は、例えば、ブラウザ36のCookieを書きかえてもよいし、URLの後にキーワードを付加してもよい。この変換されたデータは送受信部32からインターネット20を介してサーバ10のブラウザ制御部17が存在するURLに送信される。このようにしてカテゴリがサーバ10に送信される(S200)。
【0020】カテゴリを受信したサーバ10において、ブラウザ制御部17は、カテゴリ/内容対応表16を参照して、受信したカテゴリに対応した広告情報(コンテンツ等を含む)を読み出す(S201)。カテゴリ/内容対応表16の格納状況の一例を図5(c)に示す。例えば、カテゴリがaaa社及びワープロであった場合、制御部11は、カテゴリ/内容対応表16を参照し、クライアント30へ送信すべき広告情報として広告タイプAを読み出す。読み出された広告情報は送受信部13からインターネット20を介してクライアント30のブラウザ36に送信される(S202)。広告情報を受信したクライアント30では、図1の画面40に示されるようにブラウザ36が受信した広告情報を表示する(S203)。
【0021】表示する広告として具体的には、ワープロ関連のアプリケーションが起動された場合には、当該ワープロを発売する企業の広告や、ワープロのバージョンアップ情報等が表示されるようにしてもよいし、経路探索アプリケーションが起動された場合には、旅行、チケット、予約等に関する広告や内容が表示されるようにしてもよい。また、イベントはアプリケーションの起動だけでなく、「図面の作成」や「オプションの選択」等、アプリケーション内の様々なコマンドを実行した場合においても、実行されたイベントに対応する広告情報を表示することができるのはもちろんである。さらにまた、表示された広告をバナー広告とし、表示されたバナーの絵にURLを関連付け、クライアント30でクリックするだけで、有用な情報を掲載したWebページを表示させることができれば、ユーザはより多くの情報を得ることができ、さらに好ましい実施の形態となる。

【0035】さらに、本発明において、表示用の広告やコンテンツはサーバが管理するため、最新のバージョンの広告とURLをサーバからダウンロードし、期間限定の広告や地域に応じた広告をデスクトップ上に表示することができる。

(ウ)刊行物1に記載された発明
(ウ-1)刊行物1の【0011】、【0012】の記載によれば、クライアント30でアプリケーションの起動や動作等のイベントが発生した場合に、クライアント30で発生したイベントに対応するカテゴリをクライアント30から受信し、受信したカテゴリに関連する広告情報をクライアント30へ送信するサーバ10が開示されている。
いいかえると、サーバが広告情報をクライアントに送信する方法が開示されているといえる。

(ウ-2)【0019】-【0020】の記載によれば、サーバは、カテゴリをクライアントから受信している。
上記カテゴリとは、【0011】-【0019】の記載によれば、「クライアント30にインストールされているアプリケーションの動作(イベント)をクライアント30の制御部31が検出し、当該イベントから「アプリケーション名およびその動作」(以下、アクション)を特定し(例えば、発生したイベントが、aaaワープロというアプリケーションの起動であった場合、アプリケーション名は「aaaワープロ」であり、その動作は「起動」であると特定する。)、アクションがどのカテゴリに相当するかを特定し、サーバに送信される」ものであるから、カテゴリとは、クライアントから受信する、クライアントにて行われた動作の種類を特定する情報であるといえる。
したがって、刊行物1には、サーバが、クライアントにて行われた動作の種類を特定する情報(カテゴリ)を受信することが開示されている。

(ウ-3)刊行物1の【0020】の記載によれば、刊行物1のサーバは、受信したカテゴリに対応した広告情報(コンテンツ等を含む)を読み出すことが記載されている。

(ウ-4)刊行物1の【0020】の記載によれば、刊行物1のサーバは、読み出した広告情報をインターネットを介してクライアントのブラウザに送信して、クライアントの画面に表示させることが開示されている。

(ウ-5)まとめ
以上(ウ-1)ないし(ウ-4)の記載によれば、刊行物1には以下の発明(以下、刊行物1発明という。)が開示されている。
((a)ないし(d)は当審において付与し、以下「構成要件(a)」等として引用する。)

(a)サーバが広告情報をクライアントに送信する方法であって、
(b)サーバが、クライアントにて行われた動作の種類を特定する情報(カテゴリ)を受信する段階、
(c)受信したカテゴリに対応した広告情報(コンテンツ等を含む)を読み出す段階、
(d)読み出した広告情報をインターネットを介してクライアントのブラウザに送信して、クライアントの画面に表示させる段階、
(エ)を含む方法。

(エ)対比
補正後発明と刊行物1発明とを対比する。

(エ-1)補正後発明の構成要件(A)、(E)と刊行物1発明の構成要件(a)、(e)とを対比する。
刊行物1発明の広告情報は、構成要件(c)によればコンテンツを含む広告情報であり、補正後発明のクリップもコンテンツといえる点で共通するといえるが、刊行物1発明では、コンテンツ(を含む広告情報)であることが特定されるだけで、クリップであることは特定されていないから、この点で補正後発明の構成要件(A)と異なる。
刊行物1発明のサーバは、上記構成要件(b)ないし(d)を含み、サーバにコンテンツを提供しているから、コンテンツ(を提供する)エンジンであるといえ、上記エンジンがコンテンツを提供する方法である点で補正後発明と共通する。
以上まとめると、補正後発明と刊行物1発明とは、コンテンツエンジンがコンテンツを提供する方法であって、上記方法は、各段階を含む方法である点で一致するといえる。
もっとも、上記コンテンツが、補正後発明ではクリップであるのに対し、刊行物1発明ではコンテンツを含む広告情報である点で相違する。

(エ-2)補正後発明の構成要件(B)と刊行物1発明の構成要件(b)とを対比する。
刊行物1発明は、「サーバが、クライアントにて行われた動作の種類を特定する情報(カテゴリ)を受信する段階」を有している。
サーバは、上記情報を受信すると、当該受信を契機として、クライアントに広告情報を提供する動作を開始し、広告情報を提供しているから、上記特定する情報を受信することは、クライアントから広告情報を提供することを要求されていることと同じであるといえる。
したがって、刊行物1発明は、広告情報のための要求をクライアントデバイスから受け取る段階を有しているといえる。
上記広告情報は、補正後発明のクリップと、コンテンツである点で共通していることは、上記(エ-1)のとおりである。
以上まとめると、刊行物1発明は、コンテンツのための要求をクライアントデバイスから受け取る段階を有している点で、補正後発明の構成要件(B)と相違がない。
もっとも、上記コンテンツが補正後発明ではクリップであるのに対し、刊行物1発明ではコンテンツを含む広告情報である点で相違するのは、上記(エ-1)と同様である。

(エ-3)補正後発明の構成要件(C)と刊行物1発明の構成要件(c)とを対比する。
刊行物1発明は、「受信したカテゴリに対応した広告情報(コンテンツ等を含む)を読み出す段階」を有している。
上記カテゴリを受信することは、要求を受信することと同じであることは、上記(エ-2)のとおりであるから、上記構成要件(c)は、前記要求に応答するコンテンツを取り出す段階といえる。
上記対応するコンテンツを取り出すためには、上記要求に応じてコンテンツが取り出されるように多数のコンテンツが蓄積手段に蓄積されていることは必須であり、上記蓄積手段を通常データベースと称しているから、刊行物1発明は、コンテンツデータベースを有しそこからコンテンツを取り出している点でも補正後発明の構成要件(C)と共通する。
もっとも、
先に検討したとおり、刊行物1発明では、コンテンツがクリップではない点、
コンテンツを取り出す段階に関して、刊行物1発明では、前記要求に応答するコンテンツを取り出すことが特定されているのみで、クリップを取り出す日のニュースに基づいて決定し、取り出すことまで特定されていない点、
で補正後発明と異なる。
以上まとめると、刊行物1発明は、前記要求に応答するコンテンツを、コンテンツデータベースから取り出す段階を有している点で補正後発明と相違がない。
もっとも、
刊行物1発明では、コンテンツがクリップではない点、
コンテンツを取り出す段階に関して、刊行物1発明では、前記要求に応答するコンテンツを取り出すことが特定されているのみで、クリップを取り出す日のニュースに基づいて決定し、取り出すことまで特定されていない点、
で補正後発明と異なる。

(エ-4)補正後発明の構成要件(D)と刊行物1発明の構成要件(d)とを対比する。
刊行物1発明の広告情報がコンテンツという点で補正後発明のクリップと共通することは、先に検討したとおりであり、また、インターネットとを介してクライアントに上記コンテンツである広告情報を送信することは、配信と称してもよいことは明らかである。
したがって、刊行物1発明は、前記コンテンツを前記クライアントデバイスに配信する段階を有している点で、補正後発明と相違がない。
もっとも、上記コンテンツが補正後発明ではクリップであるのに対し、刊行物1発明ではコンテンツを含む広告情報である点で相違するのは、上記(エ-1)と同様である。

(エ-5)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、補正後発明と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
コンテンツエンジンがコンテンツを提供する方法であって、
a.コンテンツのための要求をクライアントデバイスから受け取る段階、
b.前記要求に応答するコンテンツを、コンテンツデータベースから取り出す段階、及び
c.前記コンテンツを前記クライアントデバイスに配信する段階、
を含むことを特徴とする方法。

(相違点)
相違点1
上記コンテンツが補正後発明ではクリップであるのに対し、刊行物1発明ではコンテンツを含む広告情報である点。

相違点2
コンテンツを取り出す段階に関して、刊行物1発明では、前記要求に応答するコンテンツを取り出すことが特定されているのみで、クリップを取り出す日のニュースに基づいて決定し、取り出すことまで特定されていない点。

(オ)判断
(オ-1)相違点1について
補正後発明の「クリップ」は、本件明細書の発明の詳細な説明【0007】の記載によれば「1つの実施において、コンピュータシステムは、要求を行うクライアント、例えば、システム、ユーザ、又は処理にビデオクリップを送信するためのクリップエンジンを提供する。クリップエンジンは、ビデオクリップを保存する、例えば、MPEGファイルのビデオデータを保存するデータベースと対話し、クライアントの要求に適合するクリップを取り出す。」とあるから、ビデオクリップのようなコンテンツも含むものである。
これに対して、刊行物1発明のコンテンツを含む広告情報として、ビデオクリップのようなコンテンツも存在することは、審査官が拒絶理由通知書にて提示した刊行物2(特表2009-543191号公報、例えば【0019】)に「広告コンテンツ(またはデータ)を、例えばテキスト、グラフィックス、イメージ、オーディオデータ、ビデオデータ、および短編のアニメーションクリップの形で、多くの異なるフォーマットタイプを用いて挿入することができる。」とあるとおり、普通に知られたことであり、刊行物1発明のコンテンツを含む広告情報としてクリップを採用することは、当業者が容易になしえたことである。

(オ-2)相違点2について
刊行物1の【0035】には「さらに、本発明において、表示用の広告やコンテンツはサーバが管理するため、最新のバージョンの広告とURLをサーバからダウンロードし、期間限定の広告や地域に応じた広告をデスクトップ上に表示することができる。」と記載されているから、広告コンテンツについて、最新のバージョンであることが望ましいことが開示されている。
また、刊行物1の【0021】には「ワープロのバージョンアップ情報等が表示されるようにしてもよい」との記載もあることからみて、上記最新のバージョンにバージョンアップした日に、最新のバージョンが発表されたことやその内容を示すニュースとしてユーザに広告したいことは明らかであり、上記広告に係る情報を取り出す際に、上記バージョンアップした日に、バージョンアップしたニュースに基づいたコンテンツを取り出すことは、当業者であれば容易に想定できたことである。
したがって、刊行物1発明において、相違点2の構成を採用することは当業者が容易になしえたことである。

(カ)効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

(キ)まとめ(独立特許要件)
以上によれば、補正後発明は、刊行物1、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項38に係る発明は、平成26年6月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項38に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
(A’)クリップエンジンがクリップを提供する方法であって、
(B’)a.クリップのための要求をクライアントデバイスから受け取る段階、
(C’)b.前記要求に応答するクリップを、クリップを取り出す時間、クリップを取り出す日の曜日、クリップを取り出す日が休日であるか否か及びクリップを取り出す日のニュースの少なくとも一つに基づいて決定し、クリップデータベースから取り出す段階、及び
(D’)c.前記クリップを前記クライアントデバイスに配信する段階、
(E’)を含むことを特徴とする方法。

2.刊行物1の記載
審査官が拒絶の査定で引用した刊行物1には、上記第2 2.(2-3)(イ)(イ-1)に示したとおりの事項が記載されている。

3.刊行物1記載の発明
上記刊行物1には、上記第2 2.(2-3)(ウ)に示した、刊行物1発明が記載されている。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2 2.(2-3)(ア)で認定した補正後発明との対比で見ると、要求に応答するクリップを決定する条件が、補正後発明の構成要件(C)では、「クリップを取り出す日のニュースに基づいて決定」の構成であったのに対し、構成要件(C’)では、「クリップを取り出す時間、クリップを取り出す日の曜日、クリップを取り出す日が休日であるか否か及びクリップを取り出す日のニュースの少なくとも一つに基づいて決定」の構成であって、その余の点は、補正後発明と本願発明との間に相違はない。
すなわち、上記条件について、補正後発明では一つの条件に限定されていたのに対し、本願発明では、上記一つの条件を含み、さらに他の条件を含む複数ある条件の中から択一的に上記条件を選択できる構成であるといえる。
そして、本願発明が含む限定された一つの条件の構成を有する補正後発明が上記第2 2.に記載したとおり、刊行物1、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるし、また、他の条件である「クリップを取り出す時間」、「クリップを取り出す日の曜日」等に基づき選択するCMコンテンツを決定することは、審査官が拒絶査定で提示した上記刊行物3、刊行物4にあるとおり本願出願前周知の事項であるから、本願発明は、刊行物1、刊行物2に記載された発明、および本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1、刊行物2に記載された発明、および本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2ないし請求項38に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2016-05-26 
結審通知日 2016-05-30 
審決日 2016-06-13 
出願番号 特願2013-528283(P2013-528283)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 嘉宏  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 渡辺 努
渡邊 聡
発明の名称 ビデオクリップ及びその作成を提供するためのシステム及び方法  
代理人 大塚 文昭  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 上杉 浩  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 須田 洋之  
代理人 山崎 貴明  
代理人 近藤 直樹  
代理人 近藤 直樹  
代理人 大塚 文昭  
代理人 辻居 幸一  
代理人 須田 洋之  
代理人 上杉 浩  
代理人 辻居 幸一  
代理人 山崎 貴明  

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