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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1320846
審判番号 不服2015-20147  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-09 
確定日 2016-11-15 
事件の表示 特願2013-34068「端子、端子材とその製造方法およびそれを用いる端子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年9月8日出願公開、特開2014-164971、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月24日の出願であって、平成27年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日付けで手続補正がされ、同年4月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月22日付けで手続補正がされ、同年8月3日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、同年11月9日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされ、その後、当審において平成28年6月2日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年8月9日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成28年8月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
管体の内部空間に挿入される電線導体を圧着接合するための管体かしめ部を有する端子の展開図形状を有する、銅又は銅合金からなる端子材であって、前記端子材が管体かしめ部を形成する管展開部を有してなり、該管展開部は、前記管体かしめ部とする際に互いに突き合わされて管体のレーザ溶接部となる端面を備え、突き合わされる前記端面とその周辺部にスズめっき層を有する、端子材。
【請求項2】
前記スズめっき層のめっき厚が1?5μm±0.2μmであることを特徴とする請求項1記載の端子材。
【請求項3】
管体の内部空間に挿入される電線導体を圧着接合するための管体かしめ部を有する端子の展開図形状を有する、銅又は銅合金からなる端子材であって、管体かしめ部を形成する管展開部を有し、該管展開部のそれぞれ端部の端面とその周辺部にスズめっき層を有してなる前記端子材の前記管展開部をそれぞれ湾曲させ、管展開部の端部の端面同士を突き合わせて管体形状に成形する工程、
この突き合わせた部分をレーザ溶接によって端子長手方向に接合し、前記管体かしめ部を形成する工程
をこの順に実施する端子の製造方法。
【請求項4】
前記スズめっき層のめっき厚が1?5μm±0.2μmであることを特徴とする請求項3記載の端子の製造方法。
【請求項5】
銅又は銅合金板材から、管体の内部空間に挿入される電線導体を圧着接合するための管体かしめ部を有する端子の展開図形状に端子材をプレス打ち抜きすることで、前記端子材に、管体かしめ部を形成する管展開部を設ける工程、
前記管展開部の、前記管体かしめ部とする際に互いに突き合わされて管体のレーザ溶接部となる端面とその周辺部にスズめっきを施してスズめっき層を設ける工程
をこの順に有してなる、端子材の製造方法。
【請求項6】
前記スズめっき層のめっき厚が1?5μm±0.2μmであることを特徴とする請求項5記載の端子材の製造方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
平成27年6月22日付けで手続補正された請求項1ないし7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開2004-71437号公報
刊行物2:特許第4739075号公報
刊行物3:特開平11-5182号公報
刊行物4:特開昭51-62377号公報
刊行物5:特許第4848040号公報

請求項1ないし7に係る発明は、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載の周知の技術手段、刊行物3に記載された事項、及び刊行物4,5に記載の周知の技術手段を適用して、当業者が容易に想到し得たものである。

2 原査定の理由の判断
(1)本願発明1について
ア 刊行物
(ア)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物1には、「自動車用アース端子と電線の防水接続構造」に関して、図面(特に、図1ないし図3参照)とともに、次の事項が記載されている。

(ア-1)「【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、自動車用アース端子と電線の防水接続構造に関し、詳しくは、アース端子と電線との接続部から電線内部に水が浸透するのを防止するものである。」

(ア-2)「【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図3を参照して説明する。
アース端子10はボルト取付穴11を有する丸形状の電気接触部12と、該電気接触部12と連続する筒状で且つ電気接触部側が閉鎖されていると共に他端の電線接続側は開口としている電線接続部14を備えている。該電線接続部14は略円筒形状とし、電気接触側の端部14aは円形を押し潰して溶接して閉鎖し、電線挿入側の他端14bは開口としている。
【0010】
アース端子10の電線接続部14は、図2(A)に示す形状に金属板を打ち抜き加工し、電気接触部12と連続した幅広の平板状の基板部13を設けている。
該形状に打ち抜いた金属板は、基板部13の幅方向の両側をアース端子10の中心線L側へ円弧形状となるように屈曲させ、図2(B)に示すように、基板部13の両端縁13a、13bを当接させ、この状態で両端縁13aと13bとを溶接する。ついで、上記方法で形成された円環形状部は電気接触部12側の一端14aを、図2(C)に示すように、上方から押し潰し、溶接により閉鎖している。
【0011】
上記アース端子10と電線wとを接続する際、電線接続部14に低温で溶融する半田20を充填する。
電線wは先端の絶縁被覆w-2を皮剥ぎして芯線w-1を露出させておき、この電線wを、図3(A)に示すように、半田20の中に挿入する。その際、図3(B)に示すように、露出させた芯線w-1に連続する絶縁被覆w-2を備えた先端部も半田20に挿入する。
この状態で半田20を硬化させ、電線wを半田20を介して強固にアース端子10に固着している。
【0012】
上記のようにアース端子10と電線wとを接続すると、半田20により電線wとアース端子10が接続されると共に、芯線w-1の露出部分が完全に半田20内に埋設され、かつ、芯線が絶縁被覆から露出する境界においても、絶縁被覆は半田に埋設されているため、芯線の隙間や芯線と絶縁被覆との隙間から浸水が生じるのを確実に防止できる。」

上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「電線接続部14の略円筒形状部の内部空間に挿入される電線wを半田接続するための電線接続部14を有するアース端子10の展開図形状を有する金属板であって、前記金属板が電線接続部14を形成する基板部13を有してなり、該基板部13は、前記電線接続部14とする際に互いに突き合わされて略円筒形状部の溶接部となる端縁13a、13bを備える、金属板。」

(イ)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物2には、「アルミ電線の端子圧着方法」に関して、図面(特に、図1、図18参照)とともに、次の事項が記載されている。

(イ-1)「【0007】
以下、図面に基づき本発明を詳説する。
図1(a)に於て、1は自動車用のワイヤーハーネスに使用するアルミ電線であり、アルミ電線1は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の多数本の素線2を撚り合わせた導線(撚線)70を絶縁体3で被覆して成るものである。
【0008】
まず、上記アルミ電線1を図18(イ)に示す端子4に圧着させる方法について説明する。なお、図18(イ)に示す端子4について説明しておくと、この端子4は金属板を所定形状に打ち抜いてプレス加工したものであり、図外の電気機器の端子等に接続される端子接続部12と、一対の圧着片14,14を連結部15にて一体状に連結して成る電線接続部13と、を備えている。」

(イ-2)「【0013】
図6?図9に示すのは、本発明に係るアルミ電線の端子圧着方法と関連の深い他の参考例であり、つまり、図1(a)に示すアルミ電線1を、図18(ロ)に示す端子4に圧着する方法である。図18(ロ)に示す端子4について説明すると、図外の電気機器の端子等に接続される端子接続部16と、円筒部18から成る電線接続部17と、を備えている。」

(イ-3)「【0018】
そして、圧着させる端子4は、図18(ハ)に示すものを使用する。図18(ハ)の端子4は、図外の電気機器の端子等に接続される端子接続部19と、有底円筒部21から成る電線接続部20と、を備えている。」

(ウ)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物3には、「レーザ溶接材料及びレーザ溶接構造」に関して、図面(特に、図1参照)とともに、次の事項が記載されている。

(ウ-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気接続箱に収容するバスバーに最適なレーザ溶接材料及びレーザ溶接構造に関し、特に、接合強度を安定に向上できるようにしたものである。」

(ウ-2)「【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、タブ端子は銅材製であることから、レーザの吸収率が10%未満と低いために、レーザビームを照射したときの熱影響が不安定で、接合強度等の接続特性が安定しないという問題がある。」

(ウ-3)「【0025】図1に示すように、第1実施形態として、溶接体17′に被溶接体17a′を当てがう。上記溶接体17′は、例えばレーザ吸収率の高いニッケル(レーザ吸収率 28%)板である。なお、錫(レーザ吸収率 46%)板でも良い。
【0026】上記被溶接体17a′は、図1(A)では、例えば直径2mmの中心材としての銅線(レーザ吸収率 10%未満)17dを、内径2.2mm、肉厚1mmの外殻としてのニッケルパイプ17eに挿入して、1.8mm用ダイスで伸線した線状の複合材である。なお、外殻17eは錫パイプでも良い。また、中心材17dに外殻(ニッケル又は錫)17eをメッキしたものでも良い。
【0027】また、図1(B)では、例えば板厚2mmの中心材としての銅板17dに、上下の厚みがそれぞれ0.5mmとなるように、外殻としてのニッケルメッキ17e,17eを施した板状の複合材である。
【0028】そして、図1(C)のように、この各複合材の被溶接体17a′に真上からレーザビームLBを照射すると、外殻17eの材料はレーザ吸収率が大きいニッケルであることから、外殻17eが直ちに熱影響を受け、この熱がスムーズに中心材17eに伝播されて、外殻17eと中心材17dが効率良く溶融されて、溶接体体17′(当審注:「溶接体17′」の誤記)に溶接aされるようになる。
【0029】したがって、熱影響部(金属組織の結晶粒度が粗大化)の形状が安定し、これにより、接合強度等の接続特性が安定に向上する。」

(エ)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物4には、「端子金具」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。

「このような問題に対する対策として、アルミニウムとの電位差の比較的少ないスズ等をメッキした条(当審注:「板」の誤記)をプレス加工して得た端子金具を使用することができるが、打抜部にはメッキが施されていないため、銅合金が露出している部分とアルミニウムが接触すると、その接触個所においてやはり腐食が進行する。
また、最後にメッキ処理を施した端子を使用する場合には、腐食の点では前述の場合よりもある程度良い結果が得られるが、プレス加工した後にメッキ処理を施すものであるため、作業性が悪く、またピンホール等があるとその部分から腐食が進行するという問題が生じる。」(第2頁左上欄第5行?右上欄第2行)

(オ)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物5には、「ワイヤーハーネスの端末構造」に関して、図面(特に、図1参照)とともに、次の事項が記載されている。

「【0021】
そして、この被覆電線10の端末部分に端子金具1が固定される。すなわち、被覆電線10の端末領域において、端子金具1の一方端に形成されるかしめ部1Aが被覆電線10の被覆部分の外周に沿ってかしめられ、加えて、端子金具1のかしめ部1B(かしめ部1Aより内部に形成)が電線露出部22における導体群12の外周に沿ってかしめられることにより、端子金具1は被覆電線10の端末部分に固定される。なお、端子金具1の構成材料として例えば黄銅や銅合金が用いられる。
【0022】
また、端子金具1は予め表面が錫メッキされることによりメッキ領域1mを有しているが、かしめ部1A及びかしめ部1Bを加工する際、表面の銅が露出した破断面1rが存在している。図1において、破断面1rの表面部分を太線で示している。
【0023】
そして、少なくともかしめ部1Aの端部露出領域(図中右端の破断面1r及び根元エッジ部1eを含む領域)及びその近傍領域の全外周を完全に覆ってモールド樹脂20が形成される。モールド樹脂20は、さらに、端子金具1の上方領域において、かしめ部1Aから電線露出部22及びかしめ部1Bにかけても形成される。」

イ 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「電線接続部14の略円筒形状部」は前者の「管体」に相当し、以下同様に、「電線w」は「電線導体」に、「アース端子10」は「端子」に、「金属板」は「端子材」に、「基板部13」は「管展開部」に、「端縁13a、13b」は「端面」にそれぞれ相当する。

また、後者の「半田接続」することと前者の「圧着接合」することとは「接続」するという限りで共通し、後者の「電線接続部14」と前者の「管体かしめ部」とは「管体部」という限りで共通する。

したがって、両者は、
「管体の内部空間に挿入される電線導体を接続するための管体部を有する端子の展開図形状を有する端子材であって、前記端子材が管体部を形成する管展開部を有してなり、該管展開部は、前記管体部とする際に互いに突き合わされて管体の溶接部となる端面を備える、端子材。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1は、電線導体を「圧着接合」するための「管体かしめ部」を有するのに対し、
引用発明は、電線wを「半田接続」するための「電線接続部14」を有する点。

〔相違点2〕
本願発明1は、「銅又は銅合金からなる」端子材の管展開部の端面が「レーザ」溶接部であり、「突き合わされる前記端面とその周辺部にスズめっき層を有する」のに対し、
引用発明は、金属板の材質が不明であり、基板部13の端縁13a、13bが溶接部であるが、スズめっき層を有していない点。

ウ 判断
まず、相違点2について検討する。
刊行物1には、電気接触部12と連続する基板部13を打ち抜く金属板の材質について明示的記載はないが、端子を形成する端子材としては銅あるいは銅合金が一般的なものであるから、引用発明の基板部13を打ち抜く金属板を銅又は銅合金とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

また、刊行物1には、溶接に関し、具体的な手段は記載されてはいないが、溶接手段としてレーザー溶接は周知のものであり、また、レーザー溶接が狭い間隙を溶接するのに適した溶接手段であることは技術常識であるから、引用発明に対する溶接手段としてレーザー溶接を採用することは、設計事項にすぎない。

刊行物3には、「タブ端子は銅材製であることから、レーザの吸収率が10%未満と低いために、レーザビームを照射したときの熱影響が不安定で、接合強度等の接続特性が安定しないという問題がある。」(段落【0016】)と銅材製のレーザー溶接についての課題が記載されており、この記載に照らせば、引用発明においてレーザー溶接を行った場合、同様の課題が生じることは、当業者であれば把握できることである。

そして、刊行物3には、上記課題を解決するために、ニッケル或いは錫からなる溶接体17′に、中心材としての銅線17dに外殻17eとしてニッケル或いは錫メッキした線状の複合材、又は中心材としての銅板17dに外殻としてニッケルメッキ17e,17eを上下に施した板状の複合材を、被溶接体17a′に真上からレーザビームLBを照射することで、レーザ吸収率が大きい外殻17eが直ちに熱影響を受け、この熱がスムーズに中心材17eに伝播されて、外殻17eと中心材17dが効率良く溶融されて、溶接体17′に溶接されることが記載されており、当該記載によれば、刊行物3には、ニッケル或いは錫からなる溶接体17′に表面を錫メッキした銅材をレーザー溶接することが開示されているといえる。

しかしながら、引用発明の端縁13a、13bが仮に銅あるいは銅合金であったとしても、刊行物3に開示された上記事項と対比すると、引用発明では、銅又は銅合金からなる端縁同士の溶接であるのに対して、刊行物3に開示されたものは、あくまで銅製の中心材17dとニッケル又は錫製の溶接体17′の溶接であり、溶接の母材が異なるものと認められ、引用発明に刊行物3に開示された上記事項を適用する動機付けがあるとはいえない。

また、刊行物4及び刊行物5には腐食防止等のために銅合金からなる端子に予めメッキ処理を施すことが記載されているが、レーザー溶接の上記課題に関する記載や示唆はないから、引用発明に刊行物4及び刊行物5に記載された事項を適用する動機付けはない。さらに、刊行物2にも上記課題に関する記載や示唆はない。

以上から、引用発明において、刊行物2ないし刊行物5に記載された事項を適用して、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

エ 小括
したがって、本願発明1は、相違点1を検討するまでもなく、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載の周知の技術手段、刊行物3に記載された事項、及び刊行物4,5に記載の周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本願発明2ないし6について
本願発明3及び5は、「端子の製造方法」及び「端子材の製造方法」に関する発明であり、それぞれ「銅又は銅合金からなる端子材であって、管体かしめ部を形成する管展開部を有し、該管展開部のそれぞれ端部の端面とその周辺部にスズめっき層を有してなる前記端子材の前記管展開部をそれぞれ湾曲させ、管展開部の端部の端面同士を突き合わせて管体形状に成形する工程、この突き合わせた部分をレーザ溶接によって端子長手方向に接合し、前記管体かしめ部を形成する工程」及び「銅又は銅合金板材から、管体の内部空間に挿入される電線導体を圧着接合するための管体かしめ部を有する端子の展開図形状に端子材をプレス打ち抜きすることで、前記端子材に、管体かしめ部を形成する管展開部を設ける工程、前記管展開部の、前記管体かしめ部とする際に互いに突き合わされて管体のレーザ溶接部となる端面とその周辺部にスズめっきを施してスズめっき層を設ける工程」との構成を備えるものであるから、上記(1)ウでの検討を踏まえると、本願発明1と実質的に同様の理由により、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載の周知の技術手段、刊行物3に記載された事項、及び刊行物4,5に記載の周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、本願発明2、4、6は、それぞれ本願発明1、3、5をさらに限定したものであるから、同様に、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載の周知の技術手段、刊行物3に記載された事項、及び刊行物4,5に記載の周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)まとめ
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)平成27年11月9日付けで手続補正された請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物A:特開2004-71437号公報
刊行物B:特許第4739075号公報
刊行物C:特開平11-5182号公報

請求項1ないし6に係る発明は、刊行物Aに記載された発明に刊行物B,Cに記載された事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1の3?4行目の「打ち抜き端面同士を突き合わせてレーザ溶接し前記管体かしめ部とするための」スズめっき層を有してなるという特定事項は、端子材を特定するための技術事項として明確でない。
したがって、上記特定事項による本願発明1は明確でなく、また、請求項1を引用する本願発明2も明確でない。

イ 同じく請求項5の4?5行目の「打ち抜き端面同士を突き合わせてレーザ溶接し前記管体かしめ部とするための」という特定事項についても、上記アと同様に、端子材の製造方法を特定するための技術事項として明確でない。
したがって、本願発明5は明確でなく、請求項5を引用する本願発明6も明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
(1)当審拒絶理由(1)について
ア 刊行物の記載事項
刊行物AないしCは、原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1ないし3であるから、それらの記載事項、及び引用発明は、前記「第3」の「2(1)ア」に記載したとおりである。

イ 対比・判断
本願発明1と引用発明の対比・判断は、前記「第3」の「2(1)イ及びウ」に記載したとおりであるから、本願発明1は、引用発明及び刊行物B,Cに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、本願発明2ないし6も、前記「第3」の「2(2)」に記載したとおりであるから、引用発明及び刊行物B,Cに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)当審拒絶理由(2)について
平成28年8月9日付けの手続補正により請求項1,2,5,6に記載されていた「打ち抜き端面同士を突き合わせてレーザ溶接し前記管体かしめ部とするための」という文言が削除された。このことにより、請求項1,2,5,6に係る発明は明確となった。
よって、当審拒絶理由(2)は解消した。

(3)まとめ
そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-02 
出願番号 特願2013-34068(P2013-34068)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
P 1 8・ 537- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 阿部 利英
特許庁審判官 冨岡 和人
小関 峰夫
発明の名称 端子、端子材とその製造方法およびそれを用いる端子の製造方法  
代理人 飯田 敏三  
代理人 後藤 隆  
代理人 飯田 敏三  
代理人 後藤 隆  

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