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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C |
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管理番号 | 1320867 |
審判番号 | 不服2015-4674 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-03-10 |
確定日 | 2016-10-26 |
事件の表示 | 特願2012-521031「電子豊富な置換ジフェニルアセチレンの生成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月27日国際公開、WO2011/009888、平成24年12月27日国内公表、特表2012-533600〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、2010年7月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2009年7月22日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。 平成26年 7月 4日付け 拒絶理由通知 平成26年10月 9日 意見書提出・誤訳訂正 平成26年11月 7日付け 拒絶査定 平成27年 3月10日 審判請求 平成27年 4月 7日 手続補正(方式) 第2 本願発明の認定 この出願の発明は、平成26年10月9日付けの誤訳訂正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「式(I)の化合物【化1】 [式中、 R_(1)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)アルキル;テトラヒドロピリル、または-CH_(2)-フェニルであり; R_(2)はHまたはOR’_(2)であり、ここでR’_(2)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)-アルキルまたは-CH_(2)-フェニルである; R_(3)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)アルキル;テトラヒドロピリル、または-CH_(2)-フェニルであり; R_(4)はHまたはOR’_(4)であり、ここでR’_(4)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)-アルキルまたは-CH_(2)-フェニルであり; R_(5)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)アルキル;テトラヒドロピリル、または-CH_(2)-フェニルである] の生成方法であって、式(IIa)または(IIb)の化合物 【化2】 [式中、 置換基R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、およびR_(5)は、式(I)について定義されたのと同じ意味を有し、 Xは、-I;-Br;-Cl;または-N_(2)である] と式(IIIa)または(IIIb)の化合物 【化3】 [式中、 置換基R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、およびR_(5)は、式(I)について定義されたのと同じ意味を有する] を反応させる方法において、 不均一系触媒系が使用されることを特徴とする方法。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、平成26年7月4日付けの拒絶理由通知における理由1であり、その概要は、この出願の請求項1ないし11に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された引用文献1ないし12に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 その引用文献1は特表2004-505998号公報(以下「刊行物1」という。)であり、引用文献2は国際公開第2008/157745号、引用文献3は韓国登録特許第10-0878394号公報、引用文献4はTetrahedron Letters、2009年2月14日、Vol.50、p.1969-1972、引用文献5はJ. Org. Chem.、2006年、Vol.71、p.4349-4352、引用文献6はSynthetic Communications、1998年、Vol.28、No.8、p.1421-1431、引用文献7はTetrahedron Letters、2007年、Vol.48、p.7007-7010、引用文献8はSynthesis、1999年、No.9、p.1656-1660.引用文献9はBull. Korean Chem. Soc.、2008年、Vol.29、No.9、p.1800-1802、引用文献10は特開2006-193483号公報(以下「刊行物3」という。)、引用文献11はSynlett、2005年、No.4、p.619-622(以下「刊行物2」という。)であり、引用文献12はOrg. Biomol. Chem.、2006年、Vol.4、p.111-115である。本願発明は拒絶理由通知で言及された請求項1に係る発明である。 第4 当審の判断 当審は、原査定の理由のとおり、本願発明は、上記刊行物1ないし3に記載された発明及び本願優先日前の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。その理由は、以下のとおりである。 1 刊行物 刊行物1:特表2004-505998号公報 刊行物2:Synlett、2005年、No.4、p.619-622 刊行物3:特開2006-193483号公報 刊行物A:長倉三郎等編集「岩波 理化学事典 第5版」(2004年)株式会社岩波書店発行、p.921「電子吸引基」の項 刊行物Aは、この出願の優先日における周知技術を示すために引用するものである。 2 刊行物に記載された事項 この出願の優先日前に頒布された、刊行物である刊行物1ないし3並びに刊行物Aには、以下の事項がそれぞれ記載されている。 (1)刊行物1 1a「【請求項1】感染性ヘルペスウイルス粒子の形成を、宿主細胞内で阻害する方法であって、ヒドロキシル化トランを該宿主細胞に投与する工程を包含する、方法。」 1b「【0023】(ヒドロキシル化トラン) 本発明中で用いられる化合物(すなわち、ヒドロキシル化トラン)の構造骨格は、アセチレン架橋により連結される2つの芳香族環を含む。好ましくは、このヒドロキシル化トランは、ポリヒドロキシル化トランであり、より好ましくはジヒドロキシトランまたはトリヒドロキシトランであり、もっとも好ましくはトリヒドロキシトランである。ポリヒドロキシル化トランを調製するための一般的なスキームは、図2に示される。」 1c「【0034】(実施例1:ポリ-ヒドロキシル化トランの合成) ・・・・・ 【0041】 ・・・・・ (D.メトキシトランの合成) (一般的な手順) イソプロピルアミン(120ml)中のメトキシエチルニルベンゼン(20mmol)およびメトキシ置換したヨウ化アリール(22mmol)の溶液に、Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)(0.2mmol)およびCuI(0.4mmol)を添加した。反応混合物を、ゆっくりとした窒素流の下で、周囲温度で6時間攪拌した。反応混合物を濾過し、残渣を酢酸エチルで洗浄し、合わせた濾過液から溶媒をエバポレートした。粗生成物を、溶離剤として石油エーテル/酢酸エチル(9:1)を用いたシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製し、メトキシトランを得た。 【0042】((1)3,4’,5-トリメトキシルトラン) 淡黄色のオイルを93%収率で得た。 【0043】 」 1d「【図面の簡単な説明】 ・・・・・ 【図2】図2は、ヒドロキシル化トランを作製するための合成スキームである。」 1e「【図2】 」 (2)刊行物2 訳文にて示す。 2a「低触媒装填のパラジウム炭素及び空気暴露により触媒される、簡単な、銅、リガンド、アミン無しの薗頭カップリング反応」(619頁 標題) 2b「末端アセチレンとハロゲン化アリールやビニルとのパラジウム触媒カップリング(薗頭反応)は、有機合成において最も重要で広く使用されている炭素-炭素結合形成反応の一つである。^(1)この反応は、天然物^(2)や医薬品^(3)から分子有機材料に至るまで応用して多くの標的化合物を製造する興味深い中間体であるアルキニル化アリールへの効率的なルートを提供する。^(4) 薗頭反応は、一般に、ベンゼン、トルエン、THF、DMF又はジオキサンのような有機溶媒中で行われる。この反応は、通常、トリエチルアミン、ジエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンのようなアミンである塩基を必要とする。最も広く用いられる触媒は、ヨウ化銅と併せたPd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)又はPd(PPh)_(4)である。薗頭反応プロトコルを簡素化するため、近年いくつかの重要な側面が改良されている。最も重要な改良は、酸素存在下でジインとする末端アルキンのホモカップリング反応(グレーサー型反応)を含み得るので共触媒として使用される、ヨウ化第一銅の排除である。^(5)薗頭反応で銅を含まないアプローチは、通常、溶媒として又は大過剰で、トリエチルアミン又はピペリジンのようなアミンの使用を含む。^(6)最近、薗頭反応で銅及びアミンを含まない方法がいくつか報告された。活性化剤として、ヨウ化アリール用の酸化銀(I)及び臭化アリール用のフッ化テトラブチルアンモニウム又は水酸化テトラブチルアンモニウムの化学量論量が使用された。^(7)添加剤として、オキシムパラダサイクルリガンドとテトラブチルアンモニウムアセテートが使用された。^(8)嵩高い電子豊富なオルトビフェニルホスファン配位子が使用された。^(9)ホスフィン-ホスフィン配位子ベースのフェロセンと活性化剤としてテトラブチルアンモニウムアセテートが使用された。^(10)アミノホスフィン配位子が使用された。^(11)配位子、銅及びアミンを含まない薗頭反応も報告された。^(12) これらの実施例は薗頭カップリング反応を改良したものの、これらの方法論は均一系パラジウム触媒に基づく反応のままであって、均一系パラジウム触媒では触媒の分離や回収が不可能ではないにしても煩雑であり、結果として生成物の高パラジウム汚染に繋がる可能性があった。さらに、これらの銅、アミンを含まない方法は、高価で合成が困難な、高パラジウム触媒使用量、パラジウム錯体やリガンドを必要とした。これらの問題を克服する方法は、固体に金属が担持されたような不均一系パラジウム触媒を使用することであった。最も容易に入手可能な担持触媒の形態はパラジウム炭素であり、これは、不均一系水素化反応で広く使用され、また炭素-炭素結合形成反応にて重要性を増しているものでもある。^(13)薗頭反応における触媒としてパラジウム炭素の使用を報告する論文が複数ある。^(14,15)しかし、これらのプロトコルの多くは、共触媒としてヨウ化銅を、リガンドとしてトリフェニルホスフィンを、塩基としてアミンを依然として使用するものであった。 金属の容易な分離や再生利用、生成物中の最低レベル(通常1ppm以下)^(13d)の金属混入といったパラジウム炭素触媒系の潜在的利点は、パラジウム炭素触媒系使用に基づく銅、リガンド、アミン無しの薗頭カップリングプロトコルが、産業及び学術用途の両方の主要な関心事であろうことを示唆している。」(619頁左欄要約の下1行?右欄31行) 2c「表2 パラジウム炭素(0.2モル%)により触媒されるヨウ化アリールと末端アルキンとのアミン及び銅無しの薗頭カップリング反応 a 反応は2mLイソプロピルアルコール-水(1:1)中0.5mmolヨウ化アリール、0.6mmolアルキン、1% Pd/C(0.2mol%Pd)を用いて行われた。反応混合物を割り当てられた時間の間80℃に予備加熱されたケミステーションパーソナル有機合成装置に置いた。 b カラムクロマトグラフィー後の単離収率」(621頁 表2) 2d「一般的方法 適切なヨウ化アリール(0.5mmol)、適切な末端アルキン(0.6mmol)、1%Pd/C(10.6mg、0.001mmol)、水(1mL)及び2-プロパノール(1mL)を15mLガラスチューブに充填した。反応混合物を80℃に予熱したケミステーションパーソナル有機合成装置へ入れ、所定時間攪拌した。この後、その混合物を12mL水と12mLジエチルエーテルで希釈し、膜フィルター(Advantec Dismic-13HP、 0.45μm)を用いて濾過した。有機相を分離し、水層をジエチルエーテル(2×12mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水(12mL)、水(12mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を真空中で蒸発させ除去した。残留物を溶離剤としてヘキサンを使用してシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーにかけた。 ・・・・・ 4-(4′-メトキシフェニル)-3-ブチン-1-オール(3c) 白色固体, mp 65-66℃. ^(1)H NMR (CDCl_(3)):δ=1.88 (br s,1H, D_(2)Oと変換後消失), 2.67 (t,J=6.0Hz,2H), 3.79(m,5H), 6.82 (dd, j = 2.0Hz, J = 8,8Hz,2H), 7.34 (dd,J = 2.0 Hz, J = 8.8 Hz, 2 H). ^(13)C NMR (CDCl_(3)):δ= 23.9, 55.3, 61.3, 82.3, 84.7, 113.9, 115.5, 133.0, 159.4. HRMS (EI): m/z 計算値C_(11)H_(12)O_(2 )[M^(+)]: 176.0837; 実測値: 176.0830. MS (EI): m/z=176, 145 (base peak). ・・・・・ 4-(フェニルエチニル)アニソール(3g) 淡黄色固体, mp 63-64 ℃(lit.^(16) mp 60-62℃), ^(1)H NMR(CDCl_(3)):δ=3.81(s,3H), 6.87(dd, J=2.0 Hz, J=8.8 Hz, 2H), 7.33 (m, 3H), 7.45 -7.52(m, 4H). MS(EI): m/z = 208, 164 (basepeak). ・・・・・ 4-(2-トリフルオロメチルフェニルエチニル)アニソール(3k) 白色固体, mp 66-68℃. ^(1)H NMR(CDCl_(3)):δ=3.82(s, 3 H),6.87(dd,J=2.0Hz, J=6.8 Hz,2H), 7.37 (t,J=7.6Hz,1H), 7.46-7.51(m,3H), 7.62-7.67(m,2 H). ^(13)C NMR(CDCl_(3)):δ=55.3, 84.3, 95.2, 114.1, 114.3, 114.9, 126.0, 126.8, 127.5, 128.2, 131.4, 133.3, 133.5, 160.2. HRMS(EI): m/z 計算値C_(16)H_(12)OF_(3 )[M^(+)]: 276.0762; 実測値: 276.0756. MS (EI): m/z=276 (base peak), 261, 233. ・・・・・ (4,4′-ジメトキシ)ジフェニルアセチレン(3o) 明黄色固体, mp 144-146℃. ^(1)H NMR(CDCl_(3)):δ= 3.82(s, 6 H), 6.85 (dd. J = 1.2 Hz, J =7.2 Hz, 4 H), 7.44 (dd, J =1.2 Hz, J =7.2 Hz, 4 H). ^(13)C NMR (CDCl_(3)):δ= 55,3, 88.0, 114.0, 115.8, 132.9, 159.4. HRMS(EI): m/z 計算値C_(16)H_(14)O_(2 )[M^(+)]: 238.0994; 実測値: 238. 1000. MS(EI): m/z = 238 (base peak), 223.」(620頁右欄下から7行?622頁下から12行) (3)刊行物3 3a「【特許請求の範囲】 【請求項1】パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行う方法であって、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることを特徴とする方法。 ・・・・・ 【請求項6】基質と反応生成物との組み合わせが、 (1)R-X+H_(2)C=CH-R”→ R-HC=CH-R” (2)R-X+HC≡C-R”→ R-C≡C-R” または (3)R-X+A^(1)-R”→ R-R” [RおよびR”は、不飽和または飽和の脂肪族基、芳香族基、芳香脂肪族基、Xは、ハロゲン原子、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナート、A^(1)は、脱離する基である。] である請求項1または2に記載の方法。」 3b「【背景技術】 【0002】パラジウム触媒を用いるカップリング反応には、例えば、Mizoroki-Heck反応、Sonogashira反応、Suzuki-Miyaura反応、Stille反応がある。これらカップリング反応においては、一般に、パラジウム触媒は、触媒が反応溶液中に溶解した均一系触媒として使用される。 【0003】パラジウム化合物は高価であるため、繰り返しての使用が求められる。しかしながら、均一系の反応では、反応溶液中にパラジウム触媒が溶解しており、パラジウム触媒を反応溶液から分離するためには煩雑な操作が必要となる。そこで近年、固体の状態でパラジウム触媒を用いること、すなわち、パラジウム触媒を不均一系触媒として用いることが検討されはじめている。不均一系触媒には、反応終了後に濾過という操作だけで反応溶液とパラジウム触媒とを分離出来る長所がある。」 3c「【発明が解決しようとする課題】 【0007】本発明の目的は、複雑な触媒固定化操作を必要とせず、高い収率を与える、不均一系の固体パラジウム触媒を用いたカップリング反応を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることによって、反応基質と固体触媒との接触を改善させることが可能となり、カップリング反応の収率を向上できることを見出し、本発明を完成した。 【0009】本発明は、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行う方法であって、固体のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターを用いることを特徴とする方法に関する。 本発明は、流通式マイクロリアクターにおいて、パラジウム触媒の存在下で第1基質および第2基質からカップリング反応生成物を製造する方法であって、固体粒子のパラジウム触媒がマイクロリアクターに充填されている方法にも関する。 さらに、本発明は、固体粒子のパラジウム触媒を充填した流通式マイクロリアクターにも関する。 【発明の効果】 【0010】本発明によれば、カップリング生成物の収率が高い。 本発明によれば、激しい物理的撹拌などを用いずに、反応基質と固体触媒との接触を改善できる。 回分式反応器に比較して、高い安全性で、高温および高圧の反応条件を使用できる。 【0011】また、本発明によれば、カップリング反応の際に生じる反応熱を効率的に除去できる。 さらに、本発明によれば、パラジウム触媒の分離工程に必要なエネルギーやコストが省略できる。 本発明においては、固体パラジウム触媒をマイクロリアクターの壁面に固着していないため、触媒の交換が簡単に行える。また、激しい物理的撹拌による固体触媒の粉砕も生じないため、反応後の触媒回収も容易に行える。回収後の触媒を再生し、再び反応に使用することも可能である。」 3d「【0013】流通式マイクロリアクターには、粒状のパラジウム触媒が充填されている。パラジウム触媒は、金属パラジウムが担体(または支持体)に担持されているものである。担体は、炭素(特に、活性炭)、金属酸化物、炭化ケイ素であることが好ましい。金属酸化物の例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム又はそれらの混合物である。金属酸化物の別の例としては、アルミナ、シリカ、ゼオライト、メソポーラスモレキュラーシーブ、ガラス(特に、多孔質ガラス)、クレーなどが挙げられる。 ・・・・・ 【0015】本発明は、パラジウム触媒によって触媒されるあらゆるカップリング反応に使用できる。 ・・・・・ 【0018】カップリング反応の具体例は、次のとおりである。 ・・・・・ (2)R-X+HC≡C-R” →R-C≡C-R” (Sonogashiraカップリング反応) ・・・・・ 【0019】上記式において、 RおよびR”の例は、不飽和または飽和の脂肪族基(炭素数:例えば、1?20)、芳香族基(炭素数:例えば、6?40)、芳香脂肪族基(炭素数:例えば、7?40)である。RおよびR”は、構成原子(例えば、環構成原子)として酸素および/または窒素を有していてもよい。脂肪族基、芳香族基および芳香脂肪族基は、置換基で置換されていても置換されていなくてもどちらでもよい。置換基の例は、ヒドロキシル基、オキシアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、イミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基又は シリル基である。置換基の炭素数は、一般に、0?40である。RおよびR”の具体例は、アルキル基(炭素数:例えば、1?20)、アリール基(炭素数:例えば、6?40)、アルケニル基(炭素数:例えば、2?20)、アルキニル基(炭素数:例えば、2?20)である。 Xは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、トリフラート、ジアゾニウム塩、またはスルホナートである。」 3e「【0030】実施例2 薗頭カップリング反応 パラジウム触媒として、N.E.Chemcat(株)から入手できるAER型を用いた。 ヨードベンゼン(第1基質)0.51g(0.0025モル)とフェニルアセチレン(第2基質)0.306g(0.003モル)(第1基質と第2基質のモル比1:1.2)に、ピロリジン0.213g(0.003モル)およびN、N-ジメチルアセトアミド5.0mLを混合し、シリンジに装填した。シリンジから溶液を流速0.1mL/hでパラジウム充填マイクロリアクター(温度:100℃)に注入し、反応を行い、カップリング生成物を得た。以下のような収率を得た。 」 (4)刊行物A 4a「電子吸引基[electron-withdrawing group, elec-tron attracting group]電子受容性基ともいう.電子説^(*)において共鳴効果や誘起効果によって相手から電子をひきつける原子団をいう.これに対し相手に電子を与えるものを電子供与基(electron-releasing group, electron donating group)という.ニトロベンゼンのニトロ基-NO_(2)は代表的な電子吸引基であって、次の共鳴構造に窒素原子の誘起効果が加わって、ベンゼン核から電子をひきつける. ・・・・・ 電子吸引基としては、ほかにニトロソ、カルボニル、カルボキシ、シアノ、トリアルキルアンモニウム、トリフルオロメチル基などがある.アニリンのアミノ基、フェノールのヒドロキシ基にアニソールのメトキシ基は電子供与基であり、これらの基の窒素、酸素の非結合電子対は次の図のように共鳴構造に寄与し、ベンゼン核の・・・オルト、パラ位の電子密度を特に大きくしている.」(921頁 電子吸引基の項) 3 刊行物1に記載された発明 刊行物1は、「感染性ヘルペスウイルス粒子の形成を、宿主細胞内で阻害する方法であって、ヒドロキシル化トランを該宿主細胞に投与する・・方法」(1a請求項1)に関し記載するものであって、この「ヒドロキシル化トラン」の具体的な合成方法として、刊行物1の「実施例1:ポリ-ヒドロキシル化トランの合成」中の「D.メトキシトランの合成」には、「メトキシトランの合成」の「一般的な手順」及び該方法により具体的に「3,4’,5-トリメトキシルトラン」を合成したことが記載されている(1c)。 この「メトキシトランの合成」の「一般的な手順」に、「3,4’,5-トリメトキシルトラン」を合成するための方法を具体的にあてはめると、原料の一つである「メトキシエチルニルベンゼン」として、3,5-ジメトキシエチニルベンゼン又は4’-メトキシエチニルベンゼン[審決注:前記摘記事項中の「エチルニル」という記載は、IUPACの命名法上「エチニル」の誤記と認められ、摘記事項以外は該命名法に基づく名称で記載する。]を、原料のもう一方である「メトキシ置換したヨウ化アリール」として、(前記3,5-ジメトキシエチニルベンゼンを用いる場合は)4’-メトキシヨウ化アリール又は(前記4’-メトキシエチニルベンゼンを用いる場合は)3,5-ジメトキシヨウ化アリールを、それぞれ用いるものと解される。 したがって、刊行物1には、この「3,4’,5-トリメトキシルトラン」の合成方法において、原料として3,5-ジメトキシエチニルベンゼンと4’-メトキシヨウ化アリールとを用いるものである、 「イソプロピルアミン中の3,5-ジメトキシエチニルベンゼンおよび4’-メトキシヨウ化アリールの溶液に、Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuIを添加し、反応混合物を、ゆっくりとした窒素流の下で、周囲温度で6時間攪拌し、反応混合物を濾過し、残渣を酢酸エチルで洗浄し、合わせた濾過液から溶媒をエバポレートし、粗生成物を、溶離剤として石油エーテル/酢酸エチル(9:1)を用いたシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製することによる、3,4’,5-トリメトキシルトランの合成方法」 の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。 4 本願発明と引用発明との対比 (1)引用発明の「3,5-ジメトキシエチニルベンゼン」は、本願発明において、本願発明の「式(IIIa)の化合物」における、R_(3)及びR_(5)がC_(1)アルキルであるメチル、並びに、R_(4)がHである化合物に該当し、引用発明の「4’-メトキシヨウ化アリール」は、本願発明の「式(IIa)の化合物」における、R_(2)がH、R_(1)がC_(1)アルキルであるメチル、及び、Xが-Iの化合物に該当し、引用発明の「3,5-ジメトキシエチニルベンゼン」と「4’-メトキシヨウ化アリール」とを反応させる方法は、本願発明の「式(IIa)の化合物」「と式(IIIa)の化合物」「を反応させる方法」に相当する。 (2)引用発明に記載の「3,4’,5-トリメトキシルトラン」[審決注:下線は当審が付与。以下同様。]について、一般に、「ヒドロキシル基」は原子-OH(ヒドロキシ基)の旧名称であり、IUPACの命名法1993年勧告では遊離基名と置換基名は明確に区別され、ヒドロキシル基は遊離基-OHに限られた名称となっている(長倉三郎等編集「岩波 理化学事典 第5版」(2004年)株式会社岩波書店発行、p.1119「ヒドロキシル基」の項)。引用発明の前記記載「3,4’,5-トリメトキシルトラン」は、3,4’,5-位のヒドロキシル基のメチル置換基で、旧名称のまま表記されていると認められ、正確には3,4’,5-トリメトキシトランであると認める。 そうすると、引用発明に記載の「3,4’,5-トリメトキシルトラン」は、前記(1)で述べたことを踏まえると、本願発明の「式(I)の化合物」における、R_(1)、R_(3)及びR_(5)がメチル、並びに、R_(2)及びR_(4)がHの化合物に相当する。 (3)引用発明の「Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuI」について、引用発明では「イソプロピルアミン中の3,5-ジメトキシエチルニルベンゼンおよび4’-メトキシヨウ化アリールの溶液に、Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuIを添加し、反応混合物を」反応させて「3,4’,5-トリメトキシルトラン」を得ている。この「ヒドロキシル化トラン」を調製するための一般的なスキームが示されている図2(1b、1d、1e)を参酌すると、引用発明の「Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuI」は、触媒であることが分かる。 そして、引用発明は「イソプロピルアミン中のメトキシエチニルベンゼンおよびメトキシ置換したヨウ化アリールの溶液に」、触媒である「Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuIを添加し、反応混合物を・・攪拌し」て反応させていることから、この反応における触媒は、反応溶液中に溶解した均一系触媒として使用されているものといえる。 そうすると、本願発明の「不均一系触媒系」と引用発明の「Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuI」とは、触媒系である点で、共通する。 そうすると、両者は、 「式(I)の化合物【化1】 [式中、 R_(1)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)アルキル;テトラヒドロピリル、または-CH_(2)-フェニルであり; R_(2)はHまたはOR’_(2)であり、ここでR’_(2)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)-アルキルまたは-CH_(2)-フェニルである; R_(3)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)アルキル;テトラヒドロピリル、または-CH_(2)-フェニルであり; R_(4)はHまたはOR’_(4)であり、ここでR’_(4)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)-アルキルまたは-CH_(2)-フェニルであり; R_(5)は、H;線状、分枝状、もしくは環状のC_(1)?C_(6)アルキル;テトラヒドロピリル、または-CH_(2)-フェニルである] の生成方法であって、式(IIa)または(IIb)の化合物 【化2】 [式中、 置換基R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、およびR_(5)は、式(I)について定義されたのと同じ意味を有し、 Xは、-I;-Br;-Cl;または-N_(2)である] と式(IIIa)または(IIIb)の化合物 【化3】 [式中、 置換基R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)、およびR_(5)は、式(I)について定義されたのと同じ意味を有する] を反応させる方法において、 触媒系が使用されることを特徴とする方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点:触媒系が、本願発明では、不均一系触媒系であるのに対し、引用発明では、Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuIである点 5 判断 (1)相違点について 刊行物2、3には、パラジウム触媒を含む触媒の存在下、末端アルキンとハロゲン化アリールとをカップリング反応させアルキニル化アリールを得る薗頭カップリング反応[表2の標題及び化学反応式、3d【0018】(2)(Sonogashiraカップリング反応)の化学反応式、3e【0031】【化2】の化学反応式]が記載されている。 そして、この薗頭カップリング反応において、均一系触媒を用いる場合、反応溶液中に溶解している触媒の分離や回収が煩雑であり、結果として生成物の高パラジウム汚染につながる可能性があるという問題があること、これらの問題を解決するために、パラジウム触媒を不均一系触媒として用いると、触媒を反応溶液から容易に分離、再生利用でき、生成物中の最低レベルでの触媒混入にとどめることができることが記載されている(2b、3b)。 引用発明は、パラジウム触媒を含む触媒である「Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuI」の存在下、末端アルキンである「3,5-ジメトキシエチルニルベンゼン」と、ハロゲン化アリールである「4’-メトキシヨウ化アリール」とをカップリング反応させ、アルキニル化アリールである「3、4’、5-トリメトキシルトラン」を合成する方法であり、これは薗頭カップリング反応による合成方法といえる。 そして、触媒である「Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuI」は、前記4(3)で述べたように、反応溶液中に溶解した均一系触媒といえる。 そうすると、刊行物2、3の前記記載事項を踏まえると、引用発明は、薗頭カップリング反応において均一系触媒を用いる場合の前記問題である、反応溶液中に溶解している触媒の分離や回収が煩雑であり、生成物の高パラジウム汚染につながる可能性があるという問題があるといえ、これらの問題を解決しようとする動機付けがあるといえる。 そして、刊行物2には、不均一系触媒を用いて薗頭カップリング反応行う一般的方法が記載されており(2d)、その方法に基づいて実際に、刊行物2の表2のエントリー3、7、11、15(2c)には、不均一系触媒であるパラジウム炭素の存在下、ハロゲン化アリールとして4’-メトキシヨウ化アリールを用い、末端アルキンとして4種類の末端アルキン[3-ブチンー1ーオール、フェニルアセチレン、[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アセチレン、4-メトキシフェニルアセチレン]を用いた薗頭カップリング反応を行い、各々対応する4種類のアルキニル化アリールを合成したこと、中でもエントリー15は、末端アルキンとして4-メトキシフェニルアセチレンを用いて薗頭カップリング反応を行い、4、4’-ジメトキシジフェニルアセチレンを得たこと(2c、2d)が記載されている。 ここで、前記4種類の末端アルキンにおける、表2の化学反応式のR^(1)について検討すると、エントリー3の3-ブチンー1ーオールは、該R^(1)がCH_(2)CH_(2)OHという、非環式脂肪族基にヒドロキシ置換基の有るもの、エントリー7のフェニルアセチレンは、該R^(1)がフェニルという、芳香族基に置換基が無いもの、エントリー11の[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アセチレンは、該R^(1)が2-(トリフルオロメチル)フェニルという、芳香族基で2位に電子吸引基であるトリフルオロメチル基(摘記4a参照)が有るもの、エントリー15の4-メトキシフェニルアセチレンは、該R^(1)が4-メトキシフェニという、芳香族基で4位に電子供与基であるメトキシ基(摘記4a参照)が有るものである。 この表2の記載から、不均一系触媒を用いた薗頭カップリング反応は、該R^(1)が脂肪族基であろうと芳香族基であろうと、芳香族基であっても、置換基の有無にかかわりなく、また置換基がある場合でも置換基の位置や種類が電子吸引基か電子供与基であるかにかかわらず、様々な種類の末端アルキンとハロゲン化アリールとのカップリング反応に適用可能であると理解される。 そうすると、引用発明において、前記動機付けのもと、反応溶液から触媒を容易に分離、回収し、生成物中の触媒混入の汚染を最低レベルにとどめようとして、均一系触媒である「Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuI」に代えて、刊行物2に記載の不均一系触媒を適用することは、当業者が容易になし得たことである。 (2)本願発明の効果について 本願発明の効果は、本願明細書発明の段落【0010】?【0011】の記載及び実施例1、3の記載(【0039】?【0042】、【0046】?【0049】)より総合的に判断すると、均一系触媒を使用する薗頭カップリング反応における欠点、すなわち、 a 触媒系と反応生成物を分離する必要がある、 b 触媒を全部除去することはほとんどできない、 c 反応が不活性ガス雰囲気下に行われる、 d 触媒の再利用性があまりよくない、 e 再利用すると、収量がしばしば低下する、 f 生成物にパラジウムおよび銅がしばしば混入している、 という欠点を有しない請求項1の式(I)の化合物の生成方法を提供できることであると認められる。 しかしながら、刊行物2には「均一系パラジウム触媒では触媒の分離や回収が不可能ではないにしても煩雑であり、結果として生成物の高パラジウム汚染に繋がる可能性があった。さらに、これらの銅、アミンを含まない方法は、高価で合成が困難な、高パラジウム触媒使用量、パラジウム錯体やリガンドを必要とした。これらの問題を克服する方法は、固体担持金属として不均一系パラジウム触媒を使用することであった。最も容易に入手可能な担持触媒の形態はパラジウム炭素であり・・金属の容易な分離や再生利用、生成物中の最低レベル(通常1ppm以下)の金属混入といったパラジウム炭素触媒系の潜在的利点」(2b)という記載がなされている。 そして、前記欠点aを有しないことについては、前記(1)で述べた、引用発明において、均一系触媒である「Pd(PPh_(3))_(2)Cl_(2)およびCuI」に代えて、刊行物2に記載の不均一系触媒を適用すれば、液体である反応溶液(反応生成物を含む)に対し固体触媒を用いており、物質の状態として固体と液体という相が異なっており触媒と反応生成物とは既に分離されていることから、均一系触媒を用いる場合,両者が液体どうしで両者を分離する必要があるのと異なり、両者を分離する必要はないことは、予測し得ることである。 前記欠点b,fを有しないことについては、刊行物2の前記記載(2b)より、不均一系触媒を液体である反応溶液(反応生成物を含む)から容易に除去可能であり、反応生成物中に最低レベル(通常1ppm以下)の不均一系パラジウム触媒しか混らないこと、及び、刊行物2の記載(2d)より、不均一系触媒を用いる薗頭カップリング反応では均一系触媒を用いる場合と異なり銅触媒を用いないので反応生成物に銅は混入しないことから、刊行物2の記載から予測し得ることである。 前記欠点cを有しないことについては、刊行物2に記載の不均一系触媒を用いて薗頭カップリング反応行う一般的方法(2d)では、当該反応を不活性ガス雰囲気下で行なっていないことから、予測し得ることである。 前記欠点dを有しないことについては、刊行物2の前記記載(2b)より、不均一系触媒は再生利用が可能であるから、予測し得ることである。 さらに、前記欠点eを有しないことについても、不均一系触媒を再生利用すれば、触媒機能は再生されるから、反応生成物の収量はあまり低下しないであろうことは予測し得ることである。 したがって、本願発明の効果は、刊行物1ないし3の記載事項並びに本願優先日前の周知技術から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものとは認められない。 (3)請求人の主張について 請求人は、平成25年10月9日付け意見書及び平成27年4月7日付け手続補正書(方式)において、刊行物2の表2(2c)の化学反応式のR基が電子豊富なメトキシ基である場合(エントリー3、7、11、15)は、R基がその他の置換基(ニトロ基、アセチル基、水素)である場合と比較し、収率が低く、反応時間も同等か長くなっていることが示されていることから、不均一系触媒は電子豊富なジフェニルアセチレンの生成に用いる触媒として適さないことを示唆している旨、主張している。 しかしながら、反応時間については、R基がメトキシ基の場合はR基が水素の場合と全て同等であり、且つ、エントリー15のR基がメトキシ基(電子供与基)の場合はエントリー13のR基がニトロ基(電子吸引基(4a参照))の場合とほぼ同等である。 また、収率については、R基がメトキシ基の場合は他の基の場合より若干低くなっているが、R基がメトキシ基である場合に不均一系触媒を適用することができないことを示す程とはいえず、むしろ不均一系触媒を適用しても目的とするアルキニル化アリールを生成することが可能であることが示されていると理解することができる。たとえ、R基がメトキシ基の場合他の基の場合より収率が若干低くなっているとしても、そもそも均一系触媒を用いて薗頭カップリング反応を行う場合と比較し、不均一系触媒を用いると前記数多の利点があることを勘案すれば、表2にはR基がメトキシ基の場合も薗頭カップリング反応において不均一系触媒を適用できることが示されている以上、電子豊富なジフェニルアセチレンの生成に用いる触媒として不均一系触媒は適さないとまではいえない。 以上のとおりであるから、請求人の前記主張は採用できない。 6 まとめ したがって、本願発明は、その優先日前に頒布された刊行物1ないし3に記載された発明並びに本願優先日前の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、この出願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-30 |
結審通知日 | 2016-05-31 |
審決日 | 2016-06-13 |
出願番号 | 特願2012-521031(P2012-521031) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C07C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 江間 正起 |
特許庁審判長 |
中田 とし子 |
特許庁審判官 |
木村 敏康 齊藤 真由美 |
発明の名称 | 電子豊富な置換ジフェニルアセチレンの生成方法 |
代理人 | 池田 成人 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 山口 和弘 |
代理人 | 野田 雅一 |